(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089109
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】カップ容器及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240626BHJP
B65D 3/22 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B65D81/34 V
B65D3/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204278
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】591007295
【氏名又は名称】株式会社アプリス
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】田邉 敦士
(72)【発明者】
【氏名】三堂地 広晶
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA01
3E013BB06
3E013BC01
3E013BC02
3E013BC04
3E013BC05
3E013BC13
3E013BC14
3E013BC15
3E013BE01
(57)【要約】
【課題】発泡樹脂層の発泡ムラを抑制したカップ容器と製造方法を提供する。
【解決手段】カップ容器1は、一端開口及び他端有底のインナーカップ2と、紙を基材とし、前記インナーカップの胴部外周に巻回されるアウタースリーブ3とを備えるようにした。アウタースリーブ2は、外表面3aに積層される発泡樹脂層4を備える。また、アウタースリーブ2は、内表面3bに沿って交互に並ぶ内表側エンボス凸部34と内表側エンボス凹部35とを備えるようにした。このアウタースリーブ3は、内表側エンボス凸部34でインナーカップ2と接触する。内表面側エンボス凸部34は、少なくとも周縁が丸みを帯びており、内表側エンボス凹部35は連通し、内表側エンボス凹部35間が繋がっているようにした。発泡樹脂層4は、インナーカップ2に飲食物を入れた後、オーブンで、当該飲食物を加熱するときに発泡させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端開口及び他端有底のインナーカップと、
紙を基材とし、前記インナーカップの胴部外周に巻回されるアウタースリーブと、
を備え、
前記アウタースリーブは、
当該アウタースリーブの外表面に積層される発泡樹脂層と、
当該アウタースリーブの内表面に沿って交互に並ぶ内表側エンボス凸部と内表側エンボス凹部と、
を有し、
前記アウタースリーブは、前記内表側エンボス凸部で前記インナーカップと接触し、
前記内表面側エンボス凸部は、少なくとも周縁が丸みを帯びており、
前記内表側エンボス凹部は連通し、前記内表側エンボス凹部間が繋がっていること、
を特徴とするカップ容器。
【請求項2】
前記アウタースリーブの内表面には、高軟化点樹脂層がコーティングされていること、
を特徴とする請求項1記載のカップ容器。
【請求項3】
前記アウタースリーブは、当該アウタースリーブの外表面に沿って交互に並ぶ外表側エンボス凸部と外表側エンボス凹部を有すること、
を特徴とする請求項1又は2記載のカップ容器。
【請求項4】
一端開口及び他端有底のインナーカップと、当該インナーカップの胴部外周に巻回されるアウタースリーブを有するカップ容器の製造方法であって、
前記アウタースリーブの内表面に沿って交互に並ぶ内表側エンボス凸部と内表側エンボス凹部を形成するエンボス加工工程と、
前記アウタースリーブの他面に熱可塑性樹脂層を形成するコーティング工程と、
前記アウタースリーブを、前記内表側エンボス凸部と前記内表側エンボス凹部が形成された面を前記インナーカップの胴部に向けて、前記インナーカップに装着する組み立て工程と、
前記インナーカップに飲食物を入れた後、オーブンで、当該飲食物を加熱すると同時に、前記熱可塑性樹脂層を発泡させる加熱工程と、
を含むこと、
を特徴とするカップ容器の製造方法。
【請求項5】
前記コーティング工程では、前記熱可塑性樹脂層の形成面とは反対の面に、高軟化点樹脂層をコーティングすること、
を特徴とする請求項4記載のカップ容器の製造方法。
【請求項6】
前記エンボス加工工程では、前記アウタースリーブの外表面に沿って交互に並ぶ外表側エンボス凸部と外表側エンボス凹部を更に形成すること、
を特徴とする請求項4又は5記載のカップ容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品又は飲料が収容され、飲食前に電子レンジで加熱されるカップ容器及びこのカップ容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジで加熱されることを予定されている調理済みの食品又は飲料等の飲食物が、コンビニエンスストア等で陳列及び販売されている。これら飲食物は、電子レンジによる加熱対応の使い捨てカップ容器に収容され、容器から取り出さずに電子レンジに収容及び加熱される。
【0003】
喫食者がカップ容器を把持しても飲食物の熱が喫食者に伝わり難いように、カップ容器は断熱処理がされている。断熱処理方法としては、湿気を有する紙製のカップ容器の外表面にポリエチレン樹脂等の熱可塑性の発泡樹脂層をコーティングし、カップ容器の紙に含有の水分の蒸気圧によって発泡樹脂層を発泡させる方法がある(例えば、特許文献1参照。)。発泡層がカップ容器と喫食者の手や指との間に介在する。この発泡樹脂層が断熱層となり、飲食物から喫食者への伝熱を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡させる際、カップ容器に含有されている水分の分布にムラがあったり、カップ容器に加わる熱分布にムラがあると、発泡樹脂層が均一に発泡しないことがある。また、カップ容器内には、加熱され易い食材と加熱され難い食材とが混じっていることがある。また、カップ容器内には、水蒸気が発生し易い食材が混じっていることがある。このため、オーブンでカップ容器内の飲食物に焼き目を付ける製造工程や、喫食者の電子レンジによる調理時、加熱され易い食材に近い領域や水蒸気が発生し易い食材に近い領域では、局所的に二次発泡したり溶融する虞がある。そのため、カップ容器は、見栄えが悪くなるだけでなく、発泡樹脂層の断熱効果を著しく悪化する虞がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、発泡樹脂層の発泡ムラを抑制したカップ容器と製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係るカップ容器は、一端開口及び他端有底のインナーカップと、紙を基材とし、前記インナーカップの胴部外周に巻回されるアウタースリーブと、を備え、前記アウタースリーブは、当該アウタースリーブの外表面に積層される発泡樹脂層と、当該アウタースリーブの内表面に沿って交互に並ぶ内表側エンボス凸部と内表側エンボス凹部と、を有し、前記アウタースリーブは、前記内表側エンボス凸部で前記インナーカップと接触し、前記内表面側エンボス凸部は、少なくとも周縁が丸みを帯びており、前記内表側エンボス凹部は連通し、前記内表側エンボス凹部間が繋がっている。
【0008】
前記アウタースリーブの内表面には、高軟化点樹脂層がコーティングされているようにしてもよい。
【0009】
前記アウタースリーブは、当該アウタースリーブの外表面に沿って交互に並ぶ外表側エンボス凸部と外表側エンボス凹部を有するようにしてもよい。
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係るカップ容器の製造方法は、一端開口及び他端有底のインナーカップと、当該インナーカップの胴部外周に巻回されるアウタースリーブを有するカップ容器の製造方法であって、前記アウタースリーブの内表面に沿って交互に並ぶ内表側エンボス凸部と内表側エンボス凹部を形成するエンボス加工工程と、前記アウタースリーブの他面に熱可塑性樹脂層を形成するコーティング工程と、前記アウタースリーブを、前記内表側エンボス凸部と前記内表側エンボス凹部が形成された面を前記インナーカップの胴部に向けて、前記インナーカップに装着する組み立て工程と、前記インナーカップに飲食物を入れた後、オーブンで、当該飲食物を加熱すると共に、前記熱可塑性樹脂層を発泡させる加熱工程と、を含む。
【0011】
前記コーティング工程では、前記熱可塑性樹脂層の形成面とは反対の面に、高軟化点樹脂層をコーティングするようにしてもよい。
【0012】
前記エンボス加工工程では、前記アウタースリーブの外表面に沿って交互に並ぶ外表側エンボス凸部と外表側エンボス凹部を更に形成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発泡樹脂層に発泡ムラが発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】カップ容器の製造工程を示すフローチャートである。
【
図4】オーブン内及び電子レンジ内での空気の流動を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係るカップ容器について図面を参照しつつ詳細に説明する。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。以下、カップ容器の底面側を下方又は下側といい、口縁側を上方又は上側といい、カップ容器が拡がる方向を径方向という。
【0016】
図1は、カップ容器1の平面図である。カップ容器1は、上方へ向けて漸次拡径する逆錐台状の有底筒形状を有し、喫食前に電子レンジで温められる飲食品を内部に収容している。飲食品はカップ容器1に収容されたまま、電子レンジに入れられて温められる。このカップ容器1は、インナーカップ2とアウタースリーブ3とを備えている。アウタースリーブ3は、インナーカップ2の外周面に巻回されている。
【0017】
インナーカップ2は、上方へ向けて漸次拡径する逆錐台状の有底容器である。インナーカップ2とアウタースリーブ3の筒の環形状には、例えば、真円、楕円、角丸長方形、卵形、その他のオーバル状を含む各種円形状、及び多角形状が含まれる。インナーカップ2は、紙製又はプラスチック製である。紙基材としては、通常の抄紙工程で抄造して得ることがあげられる。坪量が100g/m2~400g/m2の範囲を使用できる。また、両面ラミネート加工をしてある原紙を使用してもよい。
【0018】
インナーカップ2は、底面部21と胴部22を有する。底面部21はインナーカップ2の底を塞ぐ平坦面である。胴部22は、底面部21の周縁全周に沿って無端状に延在し、底面部21の周縁から上方へ立ち上がっている。胴部22は、全体的には上方に向けて漸次拡径している。インナーカップ2は上端に開口24を有する。胴部22の上端は径方向外方へカールしてフランジ状の口縁23が形成されており、この口縁23は開口24を取り囲んで、開口24の強度を保っている。
【0019】
底面部21と胴部22で囲まれる容器内部に飲食物が収容され、喫食の際にインナーカップ2の上端に形成された開口24から飲食物の取り出しが可能になっている。尚、このインナーカップ2は、口縁23に嵌合する蓋体や口縁23に貼着されるフィルムに閉じられ、インナーカップ2内部へのホコリや紙粉等の異物の混入、また飲食物の飛び出しが阻止されている。
【0020】
アウタースリーブ3は、インナーカップ2の胴部22に巻回されている。アウタースリーブ3は、インナーカップ2に巻回された際、上方へ向けて漸次拡径する逆錐台状の円筒になっており、上下端部が開口している。このアウタースリーブ3は環状扇形(annular sector)の紙製シートである。環状扇形の両端部を貼り合わせることで、逆錐台状の円筒が形作られる。アウタースリーブ3の紙基材は、通常の抄紙工程で抄造して得ることがあげられる。坪量が100g/m2~400g/m2の範囲を使用できる。また、両面ラミネート加工をしてある原紙を使用してもよい。
【0021】
アウタースリーブ3は、インナーカップ2の胴部22と同一の傾倒率を有して拡径している。もっとも、インナーカップ2にアウタースリーブ3を外嵌できれば、アウタースリーブ3はインナーカップ2に対して異形であってもかまわない。例えば、アウタースリーブ3は、インナーカップ2の胴部22より径方向外側へ高い傾倒率を有して拡径してもよい。アウタースリーブ3の上端部を内側にカールさせてもよい。アウタースリーブ3の下端縁とカールを接触させ、間に断熱空間を作出してもよい。
【0022】
このアウタースリーブ3は、エンボス加工により、凹凸が上下及び周方向に沿って交互に並んだ格子状のエンボス面31を備えている。エンボス面31は、アウタースリーブ3の全面であってもよいし、喫食者の把持が想定される限定された領域であってもよい。
【0023】
図2は、カップ容器1の断面拡大図である。アウタースリーブ3のエンボス面31は、外表側エンボス凸部32と外表側エンボス凹部33を交互に有する。外表側エンボス凸部32と外表側エンボス凹部33は、アウタースリーブ3の外表面3aに形成されている。外表面3aは、カップ容器1の最外面であり、インナーカップ2の胴部22に対面する内表面3bとは反対側の面であり、喫食者によって把持される面である。外表側エンボス凸部32と外表側エンボス凹部33は、エンボス面31に沿って上下及び周方向に交互に並び、エンボス面31の格子模様を形成している。
【0024】
外表側エンボス凸部32及び外表側エンボス凹部33は、エンボス面31に拡がる真円、楕円、角丸長方形、卵形、その他のオーバル状を含む各種円形状、細長い線状を含む多角形状の領域である。典型的には、四角形である。外表側エンボス凸部32及び外表側エンボス凹部33は、同大同形状、相似形状又は異形状であってもよい。この外表側エンボス凸部32は、外表面3aにおいて、外表側エンボス凹部33よりも径方向外側に相対的に押し出された領域である。外表側エンボス凹部33は、外表面3aにおいて、外表側エンボス凸部32よりも径方向内側に相対的に凹んだ領域である。
【0025】
外表側エンボス凹部33の深さである外表側凹部深さD33は、0.23mm以上であることが好ましい。外表側凹部深さD33が0.23mm以上であると、エンボス面31の凹凸が明確になり、喫食者がカップ容器1を把持しても、指や手のひらへの伝熱を抑制できる。
【0026】
アウタースリーブ3の内表面3bにもエンボス加工による凹凸形状が表れている。即ち、内表面3bには、内表側エンボス凸部34と内表側エンボス凹部35を交互に有する。内表側エンボス凸部34と内表側エンボス凹部35は、内表面3bに沿って上下及び周方向に交互に並んで、内表面3bに格子模様を形成している。
【0027】
内表側エンボス凸部34と内表側エンボス凹部35は、内表面3bに拡がる真円、楕円、角丸長方形、卵形、その他のオーバル状を含む各種円形状、細長い線状を含む多角形状の領域である。典型的には、四角形である。内表側エンボス凸部34及び内表側エンボス凹部35は、同大同形状、相似形状又は異形状であってもよい。この内表側エンボス凸部34は、内表面3bにおいて、内表側エンボス凹部35よりも径方向内側に相対的に押し出された領域である。内表側エンボス凹部35は、内表面3bにおいて、の内表側エンボス凸部34よりも径方向外側に相対的に凹んだ領域である。
【0028】
外表側エンボス凸部32と内表側エンボス凹部35は表裏に位置し、外表側エンボス凹部33と内表側エンボス凸部34は表裏に位置している。即ち、外表側エンボス凸部32の真裏に内表側エンボス凹部35が位置し、外表側エンボス凹部33の真裏に内表側エンボス凸部34が位置する。内表側エンボス凸部34の縁周囲は丸み部34aを有する。
【0029】
内表側エンボス凸部34の周縁は丸み部34aになっている。そのため、隣接する内表側エンボス凹部35同士は、内表側エンボス凸部34の周縁とインナーカップ2の胴部22との隙間を介して繋がっている。即ち、アウタースリーブ3の内表面3b全域の全内表側エンボス凹部35は連通している。
【0030】
このアウタースリーブ3の外表面3a及び内表面3bは、樹脂コーティングされている。外表面3a、即ち喫食者によって把持される面には、発泡樹脂層4がコーティングされ、内表面3b、即ちインナーカップ2との対面には、高軟化点樹脂層5がコーティングされている。
【0031】
発泡樹脂層4及び高軟化点樹脂層5に含まれる熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、などポリオレフィンを挙げることができる。ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスフィルド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどを挙げることができるが、特にポリオレフィンが好ましい。
【0032】
但し、発泡樹脂層4と高軟化点樹脂層5の熱可塑性樹脂としては軟化点に差があるものが用いられる。発泡樹脂層4には高軟化点樹脂層5よりも軟化点が低い熱可塑性樹脂が用いられ、高軟化点樹脂層5には発泡樹脂層4よりも軟化点が高い樹脂が用いられる。そして、発泡樹脂層4は、アウタースリーブ3の紙基材内水分の蒸発により発泡しており、高軟化点樹脂層5は未発泡となっている。
【0033】
このカップ容器1は、これに限らないが次のように方法により精度良く製造することができる。
図3は、カップ容器の製造工程を示すフローチャートである。まず、アウタースリーブ3の紙基材に対するコーティング工程を行う(ステップS01)。ステップS01のコーティング工程では、アウタースリーブ3の紙基材の外表面3aに発泡樹脂層4となる熱可塑性樹脂層をコーティングし、アウタースリーブ3の紙基材の内表面3bとなる面に高軟化点樹脂層5をコーティングする。発泡樹脂層4と高軟化点樹脂層5は、樹脂を熱溶融して塗布する押し出しコーティング法、又はフィルムになったものを貼り合わせるラミネート法などを用いて、コーティングされる。
【0034】
次に、アウタースリーブ3に対するエンボス加工工程を行う(ステップS02)。ステップS02のエンボス加工工程では、アウタースリーブ3を両面から金型で挟み込み、外表側エンボス凸部32、外表側エンボス凹部33、内表側エンボス凸部34及び内表側エンボス凹部35を形成する。内表面3b側に当接する金型は、外表側エンボス凹部33間に突起が立設し、外表側エンボス凸部32の真裏に内表側エンボス凸部34を形成する。この突起は、内表面3bを押し込んだときに、内表側エンボス凸部34の周縁に丸み部34aが残るように、外表側エンボス凹部33間よりも幅狭とすることが好ましい。
【0035】
尚、先にエンボス加工工程を行い、後にコーティング工程を行ってもよい。もっとも、コーティング工程がエンボス加工前の前工程であると、表面が平坦な紙基材にコーティング作業が可能となり、発泡樹脂層4となる熱可塑性樹脂を均一の厚みでコーティングし、高軟化点樹脂層5を均一の厚みでコーティングすることができる。また、コーティング工程がエンボス加工前の前工程であると、外表側エンボス凹部33内の熱可塑性樹脂の量をコントロールできる。そのため、発泡樹脂層4の発泡ムラを抑制することができる。
【0036】
アウタースリーブ3の加工が終了すると、カップ容器1の組み立て工程に移る(ステップS03)。ステップS03におけるカップ容器1の組み立て工程では、紙製シート状のアウタースリーブ3をインナーカップ2の胴部22に巻き付ける。そして、アウタースリーブ3の両端をオーバーラップさせて接着剤で接着し、環形状に成型する。
【0037】
このカップ容器1は食品工場に出荷される。食品工場では、カップ容器1に飲食物が収容される。飲食物が入ったカップ容器1は、加熱工程に移される(ステップS04)。ステップS04の加熱工程では、カップ容器1をオーブンに入れ、例えばグラタンに焼き目を付ける等の飲食物の調理を行いつつ、発泡樹脂層4を発泡させる。
【0038】
図4は、アウタースリーブ3の内表面3bとインナーカップ2の胴部22の外表面との間の模式図であり、空気の流動を示している。飲食物を加熱させると、飲食物から水蒸気が発生したり、加熱され易い飲食物が先んじて高温になる。このように、飲食物の存在により、インナーカップ2の胴部22の温度分布にムラが発生し、インナーカップ2の胴部22の外表面に局所的な高温領域Htが生じる。但し、このカップ容器1は、インナーカップ2とアウタースリーブ3の二重構造であり、周縁に丸み部34aである内表側エンボス凸部34と内表側エンボス凹部35が、交互に面状に拡がっている。
【0039】
そのため、高温領域Htの加熱空気Haは、内表側エンボス凹部35を通じて、アウタースリーブ3の内表面3bとインナーカップ2の胴部22との間を流通し、インナーカップ2の胴部22の全域、換言すると、アウタースリーブ3の内表面3bの全域に拡散する。そして、アウタースリーブ3の発泡樹脂層4の直下全域は、温度分布が均一となる。アウタースリーブ3の発泡樹脂層4の直下全域は、温度分布が均一になるので、発泡樹脂層4は均一に発泡する。
【0040】
仮に、カップ容器1がインナーカップ2とアウタースリーブ3で構成されているが、内表面3bにエンボス加工がされていない場合、内表面3bはインナーカップ2の胴部22に密着し、発泡樹脂層4の直下領域の温度分布のムラは解消さらず、高温領域Htの直上にある発泡樹脂層4が過剰に発泡する虞がある。反対に、高温領域Htの熱エネルギーが高軟化点樹脂層5を溶解するために消費され、高温領域Htの直上にある発泡樹脂層4の発泡が過小となる虞がある。
【0041】
ここで、このカップ容器1は、飲食物をオーブンで調理する加熱工程で生じる熱を、内表側エンボス凹部35を通じて、インナーカップ2の胴部22の全域、換言すると、アウタースリーブ3の内表面3bの全域に拡散させる。そのため、この飲食物をオーブンで調理する加熱工程で局所的な低温領域Ltも発生し難く、発泡が過小又は未発泡の発泡樹脂層4が局所的に発生する虞も低減される。従って、飲食物をオーブンで調理する加熱工程を、発泡樹脂層4を発泡させる発泡工程として併用できる。即ち、飲食物をカップ容器1に収容する前に、発泡樹脂層4を発泡させるための加熱工程を排除することも可能となる。
【0042】
また、高軟化点樹脂層5がコーティングされていると、高軟化点樹脂層5がアウタースリーブ3の内表面3bを塞ぐ。そのため、アウタースリーブ3内の水分が内表面3b側から抜けることを阻止し、発泡樹脂層4側へ水蒸気が効率良く向かう。
【0043】
空気の流動性のためには、丸み部34aの丸み半径である内表側凸部丸みR34は、これに限られないが、2.0mm以上であることが好ましい。丸み半径が2.0mm以上の丸み部34aが内表側エンボス凸部34に形成されていると、内表側エンボス凸部34とインナーカップ2の胴部22との密着性が下がり、空気の流動性が大きく向上する。更に、内表側エンボス凸部34は半球状又はドーム形状とし、内表側エンボス凸部34をインナーカップ2の胴部22に点接触させるようにしてもよい。
【0044】
このカップ容器1は、喫食者に購入され、電子レンジで加熱される。電子レンジによる加熱調理の際にも、
図4に示すように、高温領域Htが生じる可能性があるが、加熱空気Haは、内表側エンボス凹部35を通じて、インナーカップ2の胴部22の全域、換言すると、アウタースリーブ3の内表面3bの全域に拡散する。従って、高温領域Htの直上で二次発泡が生じたり、溶融が生じたりする虞も抑制できる。そのため、カップ容器1の見栄えを保つことができる。また、二次発泡で外表側エンボス凸部32及び外表側エンボス凹部33が潰れる虞が低減するため、喫食者がカップ容器1を把持したとき、皮膚とアウタースリーブ3の外表面3aとの間に断熱層が生まれ、喫食者にカップ容器1から伝わる熱が低減する。
【0045】
以上のように、このカップ容器1は、一端開口及び他端有底のインナーカップ2と、紙を基材とし、前記インナーカップの胴部外周に巻回されるアウタースリーブ3とを備えるようにした。アウタースリーブ3は、外表面3aに積層される発泡樹脂層4を備える。また、アウタースリーブ3は、内表面3bに沿って交互に並ぶ内表側エンボス凸部34と内表側エンボス凹部35とを備えるようにした。このアウタースリーブ3は、内表側エンボス凸部34でインナーカップ2と接触する。内表側エンボス凸部34は、少なくとも周縁が丸みを帯びており、内表側エンボス凹部35は連通し、内表側エンボス凹部35間が繋がっているようにした。
【0046】
これにより、局所的に高温領域Htが発生しても、加熱空気Haが内表側エンボス凹部35を通して内表面3b全域に拡散する。従って、発泡樹脂層4の直下全域の温度分布は均一になり易く、発泡樹脂層4が均一に発泡し、溶融や発泡ムラが抑制される。また、電子レンジで加熱した際に二次発泡が生じることも抑制される。
【0047】
また、アウタースリーブ3の内表面3bには、高軟化点樹脂層5がコーティングされているようにした。これにより、アウタースリーブ3の紙基材内の水分を発泡樹脂層4側に効率よく要求でき、良好な発泡樹脂層4を形成できる。尚、局所的な高温領域Htは速やかに解消されるため、この高軟化点樹脂層5が溶解するために熱エネルギーが消費されることを阻止できる。そのため、高軟化点樹脂層5の存在により発泡樹脂層4の発泡が過小になることを阻止でき、高軟化点樹脂層5をコーティング可能となっている。
【0048】
また、アウタースリーブ3は、当該アウタースリーブ3の外表面3aに沿って交互に並ぶ外表側エンボス凸部32と外表側エンボス凹部33を有するようにした。このカップ容器1は発泡樹脂層4の発泡ムラが少ないため、外表面3aのエンボス面31が潰れることなく明確になる。そのため、このエンボス面31により、喫食者の指や手のひらとカップ容器1との接触面積が小さくなり、喫食者に伝わる熱を抑制できる。
【0049】
このカップ容器1は、インナーカップ2に飲食物を入れた後、オーブンで、当該飲食物を加熱すると共に、熱可塑性樹脂層を発泡させて発泡樹脂層4を形成するようにした。飲食物を収容して加熱すると、特に局所的な高温領域Htが発生し易く、発泡樹脂層4に発泡ムラや溶融が生じ易くなる。しかし、このカップ容器1は、インナーカップ2とアウタースリーブ3で構成し、アウタースリーブ3の内表面3bに丸み部34aを有する内表側エンボス凸部34と内表側エンボス凹部35を形成するようにしたため、局所的な高温領域Htを速やかに解消できる。そのため、飲食物をオーブンで調理する工程で、発泡樹脂層4を発泡させることが可能となった。もっとも、このインナーカップ2を飲食物に入れた後の加熱よりも前工程で、発泡樹脂層4を発泡させる工程を加えてもよい。
【0050】
このほか、本発明の実施形態及び実施例は例として提示したものであって、上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。上記実施形態及び実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態、実施例及びその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 カップ容器
2 インナーカップ
21 底面部
22 胴部
23 口縁
24 開口
3 アウタースリーブ
3a 外表面
3b 内表面
31 エンボス面
32 外表側エンボス凸部
33 外表側エンボス凹部
34 内表側エンボス凸部
34a 丸み部
35 内表側エンボス凹部
4 発泡樹脂層
5 高軟化点樹脂層
R34 内表側凸部丸み
Ht 高温領域
Ha 高温空気
La 低温領域