(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089120
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
B25J9/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204296
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】菊池 尊行
(72)【発明者】
【氏名】中西 大介
(72)【発明者】
【氏名】永松 昌一
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS06
3C707AS12
3C707AS14
3C707BS12
3C707BS15
3C707BS26
3C707BT14
3C707CT05
3C707CU08
3C707CX01
3C707DS01
3C707HS27
3C707HT17
3C707MT05
(57)【要約】
【課題】十分な強度を有しかつ軽量化を図ることができるロボットを提供すること。
【解決手段】基台と、基台に対し、第1回転軸回りに回転可能に接続される第1アームと、枠状部材で構成されるベースを有し、第1アームに対し、第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回転する第2アームと、第2アームの第1アームと反対側に設置されたシャフトと、第2アームを第1アームに対し第2回転軸回りに回転駆動する駆動部と、シャフトを第2回転軸と平行な第3回転軸回りに回転しかつ第3回転軸の軸方向に沿って移動するように支持する支持部とを備え、ベースは、駆動部が設置される第1設置部と、支持部が設置される第2設置部と、第1設置部と第2設置部との間に架け渡された第1ビームと、第1設置部と第2設置部との間に架け渡され、第1ビームに対し、第2回転軸の軸方向に向かって突出する突出部を有する第2ビームと、を有することを特徴とするロボット。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に対し、第1回転軸回りに回転可能に接続される第1アームと、
枠状部材で構成されるベースを有し、前記第1アームに対し、前記第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回転する第2アームと、
前記第2アームの前記第1アームと反対側に設置されたシャフトと、
前記第2アームを前記第1アームに対し前記第2回転軸回りに回転駆動する駆動部と、
前記シャフトを前記第2回転軸と平行な第3回転軸回りに回転しかつ前記第3回転軸の軸方向に沿って移動するように支持する支持部とを備え、
前記ベースは、
前記駆動部が設置される第1設置部と、
前記支持部が設置される第2設置部と、
前記第1設置部と前記第2設置部との間に架け渡された第1ビームと、
前記第1設置部と前記第2設置部との間に架け渡され、前記第1ビームに対し、前記第2回転軸の軸方向に向かって突出する突出部を有する第2ビームと、を有することを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記第1ビームは、前記第1設置部および前記第2設置部の中心部同士を結ぶ線分を介して一対設けられている請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記第2ビームは、前記第1設置部および前記第2設置部の中心部同士を結ぶ線分を介して一対設けられている請求項1に記載のロボット。
【請求項4】
一対の前記第2ビームの各前記突出部は、前記第1ビームから離間するに連れて互いの離間距離が大きくなっている請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
前記ベースは、前記第2ビームを補強する第3ビームを有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項6】
前記ベースの重心は、前記第2設置部よりも前記第1設置部側に偏在している請求項1ないし4のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項7】
前記突出部の頂部は、前記第2設置部よりも前記第1設置部側に偏在している請求項1ないし4のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項8】
前記第1ビームおよび前記第2ビームは、中空体で構成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、基台と、基台に対し、第1回転軸回りに回転可能に接続される第1アームと、第1アームに対し、第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回転可能に接続される第2アームと、第2アームに支持される作業ヘッドと、を備えるロボットが知られている。このうち、第1アームと第2アームとで、ロボットアームが構成される。このようなロボットでは、ロボットアームの慣性力を減らし、より高速な移動に対応できるようにする、消費電力を抑制する等の観点から、ロボットアーム各部の軽量化、特に第2アームの軽量化が求められている。
【0003】
特許文献1には、ボールスプラインナットとボールねじナットをハウジングによって支持するのではなく、別個に離間・配置され6本の支柱を介して連結されたメインフレームとサブフレームによって内装・支持し、メインフレームとサブフレーム間に側壁がない構造とした第2アームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているロボットでは、第2アームの軽量化が不十分であるとともに、強度、特に、捻じれ方向の剛性が不十分である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロボットは、基台と、
前記基台に対し、第1回転軸回りに回転可能に接続される第1アームと、
枠状部材で構成されるベースを有し、前記第1アームに対し、前記第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回転する第2アームと、
前記第2アームの前記第1アームと反対側に設置されたシャフトと、
前記第2アームを前記第1アームに対し前記第2回転軸回りに回転駆動する駆動部と、
前記シャフトを前記第2回転軸と平行な第3回転軸回りに回転しかつ前記第3回転軸の軸方向に沿って移動するように支持する支持部とを備え、
前記ベースは、
前記駆動部が設置される第1設置部と、
前記支持部が設置される第2設置部と、
前記第1設置部と前記第2設置部との間に架け渡された第1ビームと、
前記第1設置部と前記第2設置部との間に架け渡され、前記第1ビームに対し、前記第2回転軸の軸方向に向かって突出する突出部を有する第2ビームと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のロボットの第1実施形態に係るロボットシステムの全体図である。
【
図2】
図1に示すロボットが有する第2アームのベースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のロボットを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明のロボットの第1実施形態に係るロボットシステムの全体図である。
図2は、
図1に示すロボットが有する第2アームのベースの斜視図である。
図3は、
図2中矢印A方向(Z軸方向)から見た図である。
図4は、
図2中矢印B方向(X軸方向)から見た図である。
【0009】
図1中では、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸が設定されており、
図2~
図4中にもそれぞれ同様の3軸が示されている。3軸のうちZ軸方向は鉛直方向を示し、X-Y平面は水平面を示す。
【0010】
図1、
図2および
図4中の上下方向は、鉛直方向と一致している。
図1、
図2および
図4中の上側(+Z軸側)を「上」、下側(-Z軸側)を「下」とも言い、ロボットアーム22、第1アーム23および第2アーム24等については、
図1、
図2および
図3中の右側(+X軸側)を「基端」または「基端部」、左側(-X軸側)を「先端」または「先端部」と言う。
【0011】
本明細書において、「鉛直」とは、鉛直と一致している場合のみならず、鉛直に対して若干、例えば±10°以内傾斜している場合も含む意味である。また、本明細書において、「平行」とは、2つの対象が平行と一致している場合のみならず、平行から若干、例えば±10°以内傾斜している場合も含む意味である。
【0012】
図1に示すロボットシステム1は、ロボット2と、ロボット2の駆動を制御するロボット制御装置9と、を有している。
【0013】
本実施形態におけるロボット2は、スカラロボット、すなわち水平多関節ロボットであり、例えば、電子部品等のワークの保持、搬送、組立、加工および検査等の種々の作業(以下単に「作業」と言うことがある)に用いられる。ただし、ロボット2の用途は、特に限定されない。また、本発明のロボットは、スカラロボット以外、例えば、6軸多関節ロボット、双腕ロボット等であってもよい。
【0014】
図1に示すように、ロボット2は、基台21と、基台21に対し回転可能に接続されているロボットアーム22と、を有している。基台21は、水平面と平行な床面10に固定されている。基台21の内部には、ロボット制御装置9が設置されている。なお、図示の構成と異なり、ロボット制御装置9は、基台21の外部に設置されていてもよい。
【0015】
ロボットアーム22は、基端部が基台21に接続され、基台21に対して鉛直方向に沿う第1回転軸J1回りに回転する第1アーム23と、基端部が第1アーム23の先端部に接続され、第1アーム23に対して鉛直方向に沿う第2回転軸J2回りに回転する第2アーム24と、を有している。第1アーム23は、水平面内で第1回転軸J1回りに所定角度の範囲内で回転し、第2アーム24は、第1アーム23より上方の水平面内で第2回転軸J2回りに所定角度の範囲内で回転する。
【0016】
第2アーム24の先端部には作業ヘッド25が設けられている。作業ヘッド25は、第2アーム24の先端部に、互いに同軸で配置されているスプラインナット251およびボールネジナット252と、スプラインナット251およびボールネジナット252に挿通されているスプラインシャフト253と、を有している。スプラインナット251は、ボールネジナット252の上部に位置し、ボールネジナット252に対し固定されている。スプラインシャフト253は、第2アーム24に対して、その中心軸であり、かつ鉛直方向に沿う第3回転軸J3回りに回転可能であるとともに、第3回転軸J3に沿って上下方向に移動可能である。
【0017】
スプラインシャフト253の下端部には、エンドエフェクター26が装着されている。エンドエフェクター26は、着脱自在であり目的の作業に適したものが適宜選択される。エンドエフェクター26としては、例えば、組み立てまたは加工の対象物であるワークを把持するハンド、チャック、孔あけ、研削、研磨等を行う工具、スプレーガン等の塗装具等が挙げられる。
【0018】
ロボット2は、基台21と第1アーム23とを連結し、基台21に対して第1アーム23を第1回転軸J1回りに回転させる関節部としての第1関節アクチュエーター27と、第1アーム23と第2アーム24とを連結し、第1アーム23に対して第2アーム24を第2回転軸J2回りに回転させる関節部としての第2関節アクチュエーター28と、を有している。
【0019】
第1アーム23は、第1関節アクチュエーター27によって、基台21の上面210に対し、所定距離離間した状態で基台21に接続されている。第2アーム24は、第2関節アクチュエーター28によって、第1アーム23の上面230に対し、所定距離離間した状態で第1アーム23に接続されている。
【0020】
また、ロボット2は、スプラインナット251を回転させてスプラインシャフト253を第3回転軸J3回りに回転させる第1駆動機構291と、ボールネジナット252を回転させてスプラインシャフト253を第3回転軸J3に沿った方向に昇降させる第2駆動機構292と、を有する。第1駆動機構291の作動によりスプラインシャフト253が第3回転軸J3回りに所定方向に回転し、これに伴いエンドエフェクター26が同方向に回転する。第2駆動機構292の作動によりスプラインシャフト253が第3回転軸J3の軸方向に移動し、これに伴いエンドエフェクター26が同方向に移動、すなわち上昇または下降する。
【0021】
また、第1関節アクチュエーター27、第2関節アクチュエーター28、第1駆動機構291および第2駆動機構292は、それぞれ、モーター、減速機、エンコーダー等を有する。これらのうち各モーターおよび各エンコーダーは、それぞれ、ロボット制御装置9と電気的に接続されている。各エンコーダーは、対応するモーターの回転位置情報を検出し、ロボット制御装置9に送信する。ロボット制御装置9は、各エンコーダーから受信した各モーターの回転位置情報に基づいて、図示しないモータードライバーを介して各モーターへの通電条件を制御する。これにより、第1アーム23、第2アーム24およびスプラインシャフト253がそれぞれ作動し、予め定められたプログラムに従いロボットアーム22の姿勢が経時的に変化して、所望の作業を行うことができる。
【0022】
以下では、第2関節アクチュエーター28のモーターをモーター281と言い、第2関節アクチュエーター28の減速機を減速機282と言い、第2関節アクチュエーター28のエンコーダーをエンコーダー283と言う。
【0023】
図1に示すように、減速機282、モーター281およびエンコーダー283は、下方から上方へ向かって、すなわち+Z軸方向に向かってこの順で配置され、接続されている。モーター281およびエンコーダー283は、後述する第1設置部31に設置されている。モーター281は、-Z軸側に出力軸281Aを有する。減速機282は、出力軸281Aに固定されるとともに、第1アーム23に固定されている。
【0024】
次に、第2アーム24の構造について説明する。
図1~
図4に示すように、第2アーム24は、第2アーム24の基本骨格をなす枠状部材で構成されるベース3を有する。ベース3は、前述した第2関節アクチュエーター28、第1駆動機構291および第2駆動機構292等、第2アーム24に搭載される搭載物(以下単に「搭載物」と言うことがある)を支持するとともに保護する機能を有する。
【0025】
図2に示すように、ベース3は、第1設置部31と、第2設置部32と、第1ビーム33と、第2ビーム34と、第3ビーム35と、第4ビーム36とを有し、これらを適宜組み合わせて所望の3次元形状とした枠状部材で構成される。ベース3をこのような枠状部材とすることにより、従来の板状のベースに比べ、第2アーム24の軽量化を図ることができる。また、ベース3を枠状部材としても、後述する理由から、十分な強度を確保することができる。以下、詳細に説明する。
【0026】
第1設置部31と第2設置部32とは、X軸方向に沿って離間して配置されている。第1設置部31は、ベース3の基端部に位置し、内側に挿通孔310を有する環状、特に円環状の部材で構成されている。挿通孔310は、第1設置部31の中心部に形成され、Z軸方向に貫通する貫通孔で構成されている。
図2中矢印A方向から見たとき、挿通孔310の中心は、第1設置部31全体の中心にほぼ等しく、第2回転軸J2とも一致している。
【0027】
第1設置部31は、上面311、下面312および挿通孔310の内周面313を有し、上面311および内周面313には、第2関節アクチュエーター28を構成するモーター281のモーターケースの肩部が直接または間接的に当て付けられている。モーター281は、モーターケースの肩部が例えば挿通孔310に嵌合された状態で固定されている。また、モーター281の出力軸281Aは、内周面313と非接触で挿通孔310を挿通し、減速機282の図示しない入力軸に固定されている。
【0028】
第1設置部31が環状の部材、特に円環状の部材で構成されていることにより、第1に、第1設置部31の強度を高めることができ、特に、相当の大きな重量を有する第2関節アクチュエーター28を保持する第1設置部31が、ロボットアーム22の作動に伴い水平面上の各方向から受ける慣性力、遠心力、衝撃力等の力に対し十分な強度で対抗することができる。第2に、第2関節アクチュエーター28を構成するモーター281を全周にわたって均等の力で適正に保持することができ、ロボットアーム22の作動時、停止時に係わらず第2関節アクチュエーター28を安定的に支持することができる。
【0029】
本実施形態における第1設置部31は、内縁および外縁が円形をなしている。ただし、この構成に限定されず、例えば、内縁、外縁の少なくとも一方が楕円形をなしていてもよく、矩形等の多角形をなしていてもよい。
【0030】
また、第1設置部31は、上記構成に限定されず、例えば、環状の一部が切り欠かれた円弧上の部材であってもよく、さらには、その全部または一部が、板状の部材、棒状または網状の部材であってもよい。また、第1設置部31は、中実の部材、中空の部材のいずれで構成されていてもよく、これらが適宜組み合わされていてもよい。
【0031】
本実施形態における第1設置部31の挿通孔310の内径は、Z軸方向に沿って一定である。ただし、この構成に限定されず、挿通孔310の内径は、Z軸方向に沿って段階的または連続的に変化していてもよい。すなわち、挿通孔310の内周面313の形状、寸法等は、保持するモーター281のモーターケースの形状等に応じて適宜決定される。挿通孔310の内径がZ軸方向に沿って段階的または連続的に変化している場合、第1設置部31自体の強度向上に寄与し、ひいてはベース3全体の強度向上にも寄与する。
【0032】
第2設置部32は、ベース3の先端部に位置し、支持部であるスプラインナット251およびボールネジナット252が設置、固定される部分である。第2設置部32は、内側に挿通孔320を有する環状、特に円環状の部材で構成されている。挿通孔320は、第2設置部32の中心部に形成され、Z軸方向に貫通する貫通孔で構成されている。矢印A方向から見たとき、挿通孔320の中心は、第2設置部32全体の中心にほぼ等しく、第3回転軸J3とも一致している。
【0033】
第2設置部32は、上面321、下面322および挿通孔320の内周面323を有し、上面321には、ボールネジナット252の下部が直接または間接的に当て付けられ、固定されている。なお、ボールネジナット252の下部は、内周面323に当て付けられていてもよい。また、スプラインシャフト253は、内周面323と非接触で挿通孔320を挿通している。
【0034】
第2設置部32が環状の部材、特に円環状の部材で構成されていることにより、第1に、第2設置部32の強度を高めることができ、特に、相当の大きな重量を有する作業ヘッド25およびそれより先端側のエンドエフェクター26等を保持する第2設置部32が、ロボットアーム22の作動に伴い水平面上の各方向およびZ軸方向から受ける慣性力、遠心力、衝撃力等の種々の外力に対し十分な強度で対抗することができる。第2に、支持部を構成するボールネジナット252を広範囲にわたって適正に保持することができ、ロボットアーム22の作動時、停止時に係わらず作業ヘッド25等を安定的に支持することができる。よって、スプラインシャフト253を、ブレ等を生じることなく安定して回転および上下動することができる。
【0035】
また、第1設置部31および第2設置部32が、いずれも円環状の部材で構成されていることにより、ベース3の下部の強度をより高めることができる。
【0036】
なお、図示の構成と異なり、スプラインナット251とボールネジナット252の位置関係が上下逆であってもよい。すなわち、ボールネジナット252がスプラインナット251の上部に固定されていてもよい。この場合には、スプラインナット251が第2設置部32に支持、固定されることとなるが、この場合でも、前述した第1および第2の効果と同様の効果を発揮することができる。
【0037】
本実施形態における第2設置部32は、内縁および外縁が円形をなしている。ただし、この構成に限定されず、例えば、内縁、外縁の少なくとも一方が楕円形をなしていてもよく、矩形等の多角形をなしていてもよい。
【0038】
また、第2設置部32は、上記構成に限定されず、例えば、環状の一部が切り欠かれた円弧上の部材であってもよく、さらには、その全部または一部が、板状の部材、棒状または網状の部材であってもよい。また、第2設置部32は、中実の部材、中空の部材のいずれで構成されていてもよく、これらが適宜組み合わされていてもよい。
【0039】
本実施形態における第2設置部32の挿通孔320の内径は、Z軸方向に沿って一定である。ただし、この構成に限定されず、挿通孔320の内径は、Z軸方向に沿って段階的または連続的に変化していてもよい。すなわち、挿通孔320の内周面323の形状、寸法等は、保持するボールネジナット252の形状等に応じて適宜決定される。挿通孔320の内径がZ軸方向に沿って段階的または連続的に変化している場合、第2設置部32自体の強度向上に寄与し、ひいてはベース3全体の強度向上にも寄与する。
【0040】
本実施形態では、第2設置部32の外径は、第1設置部31の外径未満となっており、これに伴い、挿通孔320の内径は、挿通孔310の内径未満となっている。これにより、第1設置部31、第2設置部32およびこれらに掛け渡された一対の第1ビーム33A、33Bで構成される部分の形状は、基端から先端に向かって先細りの形状をなしており、ベース3は、十分な強度を確保しつつ全体としてムダのない効率的な重量配分を達成している。ただし、これに限定されず、挿通孔320の内径は、挿通孔310の内径以上であってもよく、特に、一対の第1ビーム33A、33Bは、平行であってもよい。
【0041】
第1設置部31および第2設置部32の中心部同士を結ぶ線分、すなわち、挿通孔310の中心と、挿通孔320の中心とを結ぶ線分SLは、X軸と平行である。
【0042】
第1ビーム33は、第1設置部31と第2設置部32との間に架け渡された梁である。すなわち、第1ビーム33は、第1設置部31と第2設置部32とを連結しており、第1設置部31と第2設置部32との位置関係を固定している。この第1ビーム33は、第1設置部31および第2設置部32とともにベース3の下部の基本骨格を担っている。第1ビーム33は、ほぼX軸方向に沿って延在する棒状をなし、本実施形態では、第1ビーム33は、矢印A方向から見て、線分SLを介して一対設けられている。これにより、ベース3の強度を高めることができる。
【0043】
本明細書では、線分SLより+Y軸側に位置する第1ビーム33を「第1ビーム33A」と言い、線分SLより-Y軸側に位置する第1ビーム33を「第1ビーム33B」と言う。また、「ベース3の下部」とは、同一の水平面上に位置している、第1設置部31、第2設置部32、第1ビーム33A、第1ビーム33Bおよび後述する2本の第4ビーム36で構成される部分を言う。
【0044】
第1ビーム33Aおよび第1ビーム33Bは、直線状をなしている。第1ビーム33Aおよび第1ビーム33Bは、+X軸側に行くに従って互いの離間距離が増大するよう、線分SLに対し傾斜している。
【0045】
本実施形態では、第1ビーム33Aおよび第1ビーム33Bは、矢印A方向で見て、線分SLに対し対称に配置されている。ただし、これに限定されず、第1ビーム33Aおよび第1ビーム33Bは、線分SLに対し非対称であってもよい。
【0046】
第1ビーム33Aおよび第1設置部31、第1ビーム33Bおよび第1設置部31、第1ビーム33Aおよび第2設置部32、第1ビーム33Bおよび第2設置部32は、それぞれ、直接連結されている。これらの接続部は、例えば溶接、半田付け等のろう接、接着剤による接着、リベット止め、ビス止め、ボルト止め等の方法により接合され、固定されていてもよく、図示しない固定部材を介して固定されていてもよい。また、これらの間には、別の部材、例えば後述する第3ビーム35、第4ビーム36、その他の任意の連結部材を介して間接的に接続されていてもよい。
【0047】
なお、第1ビーム33は、図示のような直線形状に限定されず、例えば、第1ビーム33Aおよび第1ビーム33Bの少なくとも一方は、+Z軸側、-Z軸側、+X軸側、-X軸側、+Y軸側または-Y軸側に突出するように湾曲または屈曲(以下「湾曲」で代表する)した部分を1か所または2か所以上有していてもよい。例えば、第1ビーム33Aおよび第1ビーム33Bは、それらの長手方向中央付近で、互いに接近しあるいは接続するように湾曲した部分を有していてもよい。
【0048】
第1ビーム33は、その途中または端部付近において複数に分岐した分岐部を有する形状や、複数の線材が交差した交差部を有する形状であってもよい。これらの場合、第1ビーム33は、その一端が第2ビーム34、第3ビーム35または第4ビーム36と接続されているか、あるいは第3ビーム35または第4ビーム36を介して第1設置部31または第2設置部32と接続されていてもよい。
【0049】
また、第1ビーム33Aおよび第1ビーム33Bは、同じ方向に突出するよう湾曲していてもよく、互いに反対方向に湾曲するよう突出していてもよい。
【0050】
図3に示すように、第1設置部31と第1ビーム33Aとの接続部30Aは、第1設置部31の外縁のうち-X軸側でかつ+Y軸側に位置している。第1設置部31と第1ビーム33Bとの接続部30Bは、第1設置部31の外縁のうち-X軸側でかつ-Y軸側に位置している。
【0051】
このように、第1ビーム33Aおよび第1ビーム33Bが第1設置部31の異なる位置に接続されていることにより、ベース3の強度を高めることができる。
【0052】
また、第2設置部32と第1ビーム33Aとの接続部30Cは、第2設置部32の外縁のうち+X軸側でかつ+Y軸側に位置している。第2設置部32と第1ビーム33Bとの接続部30Dは、第2設置部32の外縁のうち+X軸側でかつ-Y軸側に位置している。
【0053】
このように、第1ビーム33Aおよび第1ビーム33Bが第2設置部32の異なる位置に接続されていることにより、ベース3の強度を高めることができる。
【0054】
第2ビーム34は、第1ビーム33の上部の位置において、第1設置部31と第2設置部32との間に架け渡された梁である。第2ビーム34は、ベース3の強度を高めるとともに、第2アーム24の搭載物を保護する機能を有する。
【0055】
図2および
図3に示すように、本実施形態では、第2ビーム34は、連続する1本の線材で構成され、当該線材の一端部および他端部が、それぞれ第1設置部31の同一または異なる箇所に接続され、当該線材の長手方向中央部が、Z軸方向から見て、第2設置部32を-X軸側に若干超えた位置で折り返された形状をなしている。
【0056】
第2ビーム34は、第1ビーム33Aおよび第1ビーム33Bに対し第2回転軸J2の軸方向に向かって、すなわち、+Z軸側に湾曲して突出するアーチ状をなしている。換言すれば、第2ビーム34は、第1ビーム33Aおよび第1ビーム33Bに対し、+Z軸側に突出する突出部340を有する。
【0057】
本明細書では、第2ビーム34のうち、矢印A方向から見て、線分SLより+Y軸側に位置する部分を「第2ビーム34A」と言い、線分SLより-Y軸側に位置する部分を「第2ビーム34B」と言う。換言すれば、矢印A方向から見て、線分SLを介して第2ビーム34Aと第2ビーム34Bとが一対設けられている。このような構成により、ベース3の強度を高めることができる。
【0058】
本実施形態では、第2ビーム34Aおよび第2ビーム34Bは、矢印A方向で見て、線分SLに対し対称な形状をなしている。ただし、これに限定されず、第2ビーム34Aおよび第2ビーム34Bは、線分SLに対し非対称であってもよい。
【0059】
図3に示すように、ベース3の重心Gは、第2設置部32よりも第1設置部31側に偏在している。すなわち、ベース3の重心Gは、矢印A方向から見て、線分SLの中点SPより基端側(+X軸側)に位置している。これにより、第2アーム24の基端側(+X軸側)の部分に比して先端側(-X軸側)の部分の軽量化を図ることができる。その結果、第2アーム24の第2回転軸J2回りの回転の慣性力(イナーシャ)を低減することができる。すなわち、第2アーム24の回転速度を高速化して作業をより迅速に行うことができるか、または第2アーム24の回転駆動に要するエネルギーを低減することができる。
【0060】
第2ビーム34Aおよび第2ビーム34Bの突出部340の頂部341は、搭載物を突出部340の内側に収納するように囲い、該搭載物を良好に保護することができる程度の高さに位置している。各頂部341は、X軸方向における位置が同じである。
【0061】
図3に示すように、第2ビーム34Aおよび第2ビーム34Bの各頂部341は、第2設置部32よりも第1設置部31側に偏在している。すなわち、各頂部341は、矢印A方向から見て、線分SLの中点SPより基端側(+X軸側)に位置している。
【0062】
ベース3のうち+X軸側に偏在した位置には、比較的大きい搭載物、すなわちZ軸方向の高さが高い、Y軸方向の幅が大きいまたはその両方に該当する搭載物が配置される傾向がある。本実施形態では、この搭載物は、第2関節アクチュエーター28である。各頂部341が第2設置部32よりも第1設置部31側に偏在していることにより、このような大きい搭載物をも両突出部340の間に確実に収納するように囲い、保護することができる。
【0063】
第2ビーム34Aおよび第2ビーム34Bにおいて、突出部340の頂部341よりも基端側(+X軸側)の部分は、突出部340の頂部341よりも先端側(-X軸側)の部分よりも湾曲の度合い、すなわち湾曲の曲率の平均値が大きい。ただし、この構成に限定されず、突出部340の頂部341よりも基端側の部分および突出部340の頂部341よりも先端側の部分は、湾曲の曲率の平均値が同じであってもよく、少なくとも一方が直線状をなしていてもよい。
【0064】
図2および
図4に示すように、第2ビーム34Aおよび34Bの各突出部340は、第1ビーム33Aおよび33Bから離間するに連れて、すなわちZ軸方向の位置が+Z軸側に行くに従って、互いの離間距離が大きくなるような形状をなしている。これにより、比較的大きい搭載物、例えばモーター281およびエンコーダー283等を第2ビーム34A、第2ビーム34B間、特にそれらの突出部340間の上部側空間に収納、配置することができ、かかる大きい搭載物でも十分に保護することができる。上述の通り、第2アーム24が伸びる方向をX軸とし、第1アーム23および第2アーム24が回転する平面内でX軸に垂直な方向がY軸とする。このとき、一対の突出部340間のY軸に沿った距離において、頂部341が最も大きい。
【0065】
このように、比較的大きい搭載物や比較的重い搭載物を第2アーム24の基端側に搭載する場合、第2アーム24の基端側の部分に比して先端側の部分の軽量化を図ることができる。その結果、第2アーム24の第2回転軸J2回りの回転の慣性力(イナーシャ)を低減することができる。すなわち、第2アーム24の回転速度を高速化して作業をより迅速に行うことができるか、または第2アーム24の回転駆動に要するエネルギーを低減することができる。
【0066】
第2ビーム34Aおよび第1設置部31と、第2ビーム34Bおよび第1設置部31とは、それぞれ、直接連結されている。これらの接続部は、例えば溶接、半田付け等のろう接、接着剤による接着、リベット止め、ビス止め、ボルト止め等の方法により接合され、固定されていてもよく、図示しない固定部材を介して固定されていてもよい。また、これらの間には、別の部材、例えば後述する第3ビーム35、第4ビーム36、その他の任意の連結部材を介して間接的に接続されていてもよい。
【0067】
図3に示すように、第1設置部31と第2ビーム34Aとの接続部30Eは、第1設置部31の外縁のうち+X軸側でかつ+Y軸側に位置している。第1設置部31と第2ビーム34Bとの接続部30Fは、第1設置部31の外縁のうち+X軸側でかつ-Y軸側に位置している。
【0068】
このように、第2ビーム34Aの基端と第2ビーム34Bの基端とが、第1設置部31の異なる位置に接続されていることにより、ベース3の強度を高めることができる。なお、図示の構成と異なり、第2ビーム34Aの基端と第2ビーム34Bの基端とが、第1設置部31の同じ箇所に接続されていてもよい。
【0069】
第2ビーム34は、その途中または端部付近において複数に分岐した分岐部を有する形状や、複数の線材が交差した交差部を有する形状であってもよい。これらの場合、第2ビーム34は、その一端が第1ビーム33、第3ビーム35または第4ビーム36と接続されているか、あるいは第3ビーム35または第4ビーム36を介して第1設置部31または第1ビーム33と接続されていてもよい。
【0070】
第3ビーム35は、第2ビーム34を補強するものである。すなわち、第3ビーム35の設置により、ベース3に加わる種々の外力に対し、第2ビーム34全体の湾曲形状、特に突出部340の形状をより確実に保持することができる。これにより、第2ビーム34の強度、ひいては、ベース3全体の強度を十分に高めることができる。図示の構成では、第3ビーム35は、概ねZ軸方向またはZ軸に対し若干傾斜した方向に沿って延在し、ほぼ直線状をなしている。また、図示の構成では、第3ビーム35は、13本設けられている。各第3ビーム35の中には、第1設置部31と第2ビーム34とを接続するものと、第1ビーム33と第2ビーム34とを接続するものと、第2設置部32と第2ビーム34とを接続するものとが含まれている。このように、第3ビーム35は、第2ビーム34と、第1設置部31、第2設置部32または第1ビーム33のような相手体とを接続しているため、第2ビーム34のみならず、前記相手体を補強する機能をも有している。すなわち、各第3ビーム35の設置によって、ベース3全体の強度を十分に確保している。
【0071】
なお、第3ビーム35の長さ、径等の寸法、配置、接続箇所、設置本数等の条件は、図示の構成に限定されない。
【0072】
図3に示すように、第2設置部32と第2ビーム34とを接続する第3ビーム35の下端は、接続部30Cおよび接続部30Dとは異なる部位に位置している。これにより、接続部30Cおよび接続部30Dの上部空間を確保しつつ、ベース3の強度を十分に得ることができる。なお、第3ビーム35の下端は、接続部30Cおよび接続部30Dに接続されていてもよい。
【0073】
第1設置部31および第1ビーム33Aの接続部30A付近の部位と、第2ビーム34Aの突出部340とを接続する3本の第3ビーム35が設けられている。これら3本の第3ビーム35は、長手方向のZ軸に対する角度が異なっており、3本のうちの真ん中の第3ビーム35の上端は、第2ビーム34Aの頂部341付近に接続されている。
【0074】
一方、第1設置部31および第1ビーム33Bの接続部30B付近の部位と、第2ビーム34Bの突出部340とを接続する3本の第3ビーム35が設けられている。これら3本の第3ビーム35は、長手方向のZ軸に対する角度が異なっており、3本のうちの真ん中の第3ビーム35の上端は、第2ビーム34Bの頂部341付近に接続されている。
【0075】
このような構成により、第2ビーム34のうち、比較的高い強度が必要とされる突出部340、特に頂部341付近の強度を高めることができ、外力を受けた際の第2ビーム34の変形、ひいてはベース3全体の変形をより効果的に防止または抑制することができる。その結果、搭載物、特に第1設置部31への搭載物を十分に保護することができる。
【0076】
なお、第3ビーム35は、図示のような直線形状に限定されず、例えば、X軸方向またはY軸方向に突出するように湾曲した部分を1か所または2か所以上有していてもよい。
【0077】
また、第3ビーム35は、その途中または端部付近において複数に分岐した分岐部を有する形状や、複数の線材が交差した交差部を有する形状であってもよい。これらの場合、第3ビーム35は、その一端が他の第3ビーム35または第4ビーム36と接続されているか、あるいは他の第3ビーム35または第4ビーム36を介して第1設置部31、第2設置部32または第1ビーム33と接続されていてもよい。
【0078】
また、第1ビーム33と第2ビーム34との間には、第3ビーム35に代え、第1ビーム33と第2ビーム34とを接続する他の接続部材が設置されていてもよい。この接続部材としては、例えば、格子状部材、網状部材、ハニカム構造体、多孔質体、板厚方向に貫通する複数の小孔またはスリットを有する板状部材等が挙げられる。
【0079】
第4ビーム36は、第1ビーム33Aと第1ビーム33Bとを接続するものである。第4ビーム36の設置により、ベース3の下部の強度を高めることができ、ひいてはベース3全体の強度を高めることができる。第4ビーム36は、図示の構成では、2本設けられている。なお、第4ビーム36の長さ、径等の寸法、配置、接続箇所、設置本数等の条件は、図示の構成に限定されない。
【0080】
また、第4ビーム36は、第2アーム24の搭載物、例えば第1関節アクチュエーター27および第2関節アクチュエーター28を、その上部に載置し固定する機能を有する。第4ビーム36は、第1関節アクチュエーター27および第2関節アクチュエーター28等を固定するための図示しないネジ孔またはボルト孔を有している。
【0081】
このような第4ビーム36により、ベース3全体の強度、特にベース3の下部の強度を高めることができるとともに、搭載物をより安定して支持することができる。特に、ベース3が線分SLを中心とする捩じれの外力を受けたとき、それに対抗する強度を高めることができる。
【0082】
なお、第4ビーム36は、その途中または端部付近において複数に分岐した分岐部を有する形状や、複数の線材が交差した交差部を有する形状であってもよい。また、第4ビーム36は、その一端が第1設置部31、第2設置部32または第3ビーム35と接続されていてもよい。
【0083】
第1設置部31、第2設置部32、第1ビーム33、第2ビーム34、第3ビーム35とおよび第4ビーム36の各部材は、それぞれ、中実体で構成されていてもよく、中空体で構成されていてもよい。中実体で構成されている場合、当該部材およびベース3の強度をさらに高めることができる。中空体で構成されている場合、当該部材およびベース3全体の強度を十分に確保しつつ、ベース3のさらなる軽量化を図ることができる。特に、第1ビーム33の全部または一部を中空体で構成した場合、前記効果がより顕著に発揮され、第2ビーム34の全部または一部を中空体で構成した場合、前記効果がより顕著に発揮される。
【0084】
このように、第1ビーム33および第2ビーム34は、中空体で構成されている。これにより、第1ビーム33および第2ビーム34の強度、ベース3全体の強度を十分に確保しつつ、ベース3のさらなる軽量化を図ることができる。
【0085】
なお、図示されていないが、本発明のロボット2では、第1設置部31または第2設置部32と、第1ビーム33とを接続する少なくとも1本の第5ビーム、第2ビーム34Aと第2ビーム34Bとを接続する少なくとも1本の第6ビーム、第1ビーム33Aと第2ビーム34Bまたは第1ビーム33Bと第2ビーム34Aとを接続する少なくとも1本の第7ビーム、第3ビーム35同士、第4ビーム36同士または第3ビーム35と第4ビーム36とを接続する少なくとも1本の第8ビーム等を有していてもよい。
【0086】
ベース3を構成する枠状部材または該枠状部材の各構成物である第1設置部31、第2設置部32、第1ビーム33、第2ビーム34、第3ビーム35および第4ビーム36等の構成材料としては、特に限定されないが、ベース3の強度向上と軽量化との両立を図る上で好ましい材料として、例えば、鉄またはステンレス鋼のような鉄系合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、銅または銅系合金、チタンまたはチタン系合金のような各種金属材料、各種セラミックス材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリアミド、フッ素樹脂等の各種樹脂材料(特に硬質樹脂材料)、アラミド、ケブラー(登録商標)、ザイロン(登録商標)、金属繊維、炭素繊維等の高強度繊維材料またはそれを含む材料(例えば繊維強化プラスチック)、各種セラミックス材料、各種炭素材料等を挙げることができる。また、これらのうちの2以上を任意に組み合わせた複合材料であってもよい。上記各構成物は、全て同一の材料で構成されていても、一部が他と異なる材料で構成されていてもよい。
【0087】
ベース3を構成する枠状部材または該枠状部材の各構成物は、例えば成形時、加工時、溶接等による接続時、組み立て時等に生じた残留応力を残したままの状態でも、例えば熱処理を施すことにより残留応力を除去また緩和させた状態でもよい。前者の場合、主に圧縮の残留応力を有した状態とすることにより、ベース3全体の強度をさらに高めることができ、好ましい。後者の場合、主に引っ張りの残留応力を除去することにより、接合部の接合強度やベース3全体の強度をさらに高めることができ、好ましい。また、ベース3全体、第2ビーム34全体または突出部340に対し、例えば熱処理を施して第2ビーム34に残る引っ張りまたは曲げの残留応力を除去または緩和した状態とすることができ、これにより、接続部30E、30Fの接合強度、第3ビーム35との接合強度、第2ビーム34自体の強度、ひいてはベース3全体の強度をさらに高めることができる。
【0088】
ベース3を構成する枠状部材の各構成物、すなわち、第1設置部31、第2設置部32、第1ビーム33、第2ビーム34、第3ビーム35および第4ビーム36等のうちの全部または一部は、接合によらず一体的に形成されていてもよい。これにより、前記構成物同士を接合する場合に比べ接合部の強度を高めることができる。ベース3を構成する枠状部材またはその構成物は、例えば、圧延、転造、鍛造、プレス成形、圧縮成形、押し出し成形、引っ張り成形、伸線加工、引き抜き加工、絞り加工、曲げ加工等の冷間または熱間による各種の塑性加工、鋳造、射出成形、熱間等方圧加圧成形(HIP)、冷間等方圧加圧成形(CIP)、切削加工、研削加工、削り出し加工、放電加工、レーザー加工、鋳造、3Dプリンターによる造形、粉体焼結、メタルインジェクションモールディング(MIM)等の種々の方法、またはこれらを適宜組み合わせた方法を経て製造することができる。また、プレス加工用型、射出成形用型等の種々の型を3Dプリンターによる造形により作製し、この型を用いて前記枠状部材またはその各構成物を製造してもよい。
【0089】
以上説明したように、ロボット2は、基台21と、基台21に対し、第1回転軸J1回りに回転可能に接続される第1アーム23と、枠状部材で構成されるベース3を有し、第1アーム23に対し、第1回転軸J1と平行な第2回転軸J2回りに回転する第2アーム24と、第2アーム24の第1アーム23と反対側に設置されたシャフトであるスプラインシャフト253と、第2アーム24を第1アーム23に対し前記第2回転軸J2回りに回転駆動する駆動部である第2関節アクチュエーター28と、スプラインシャフト253を第2回転軸J2と平行な第3回転軸J3回りに回転しかつ第3回転軸J3の軸方向に沿って移動するように支持する支持部であるスプラインナット251およびボールネジナット252とを備える。また、ベース3は、第2関節アクチュエーター28が設置される第1設置部31と、スプラインナット251およびボールネジナット252が設置される第2設置部32と、第1設置部31と第2設置部32との間に架け渡された第1ビーム33と、第1設置部31と第2設置部32との間に架け渡され、第1ビーム33に対し、第2回転軸J2の軸方向に向かって突出する突出部340を有する第2ビーム34と、を有する。これにより、ベース3の十分な強度、特に、第2アームの延在方向回りに捩じれる方向の強度を確保しつつ、第2アーム24の軽量化を図ることができる。すなわち、ベース3の強度向上と軽量化との両立を図ることができる。その結果、ロボット2が作業を行うに際し、作業速度の向上、消費電力の節減に寄与する。
【0090】
なお、第2ビーム34は、-Z軸側に突出する形状をなしていてもよい。
また、第1ビーム33は、第1設置部31および第2設置部32の中心部同士を結ぶ線分SLを介して一対設けられている。これにより、ベース3の強度をさらに高めることができる。
【0091】
第2ビーム34は、第1設置部31および第2設置部32の中心部同士を結ぶ線分SLを介して一対設けられている。これにより、ベース3の強度をさらに高めることができる。
【0092】
一対の第2ビーム34の各突出部340は、第1ビーム33から離間するに連れて互いの離間距離が大きくなっている。すなわち、上述の通り、第2アーム24が伸びる方向をX軸とし、第1アーム23および第2アーム24が回転する平面内でX軸に垂直な方向がY軸とする。このとき、一対の突出部341間のY軸に沿った距離において、頂部341が最も大きい。これにより、比較的大きい搭載物、比較的重い搭載物を一対の第2ビーム34の突出部340の内側に収納、配置することができる。
【0093】
なお、一対の第2ビーム34は、第1ビーム33から離間するに連れて互いの離間距離が小さくなっていてもよく、一対の第2ビーム34は、第1ビーム33からの距離によらず離間距離が同じであってもよい。
【0094】
また、ベース3は、第2ビーム34を補強する第3ビーム35を有する。これにより、ベース3の強度をさらに高めることができる。
なお、第3ビーム35は、省略されていてもよい。
【0095】
また、ベース3の重心Gは、第2設置部32よりも第1設置部31側に偏在している。これにより、第2アーム24は、先端側の部分が基端側の部分に対し相対的に軽量化され、第2アーム24の第2回転軸J2回りの回転の慣性力を低減することができる。すなわち、第2アーム24の回転速度を高速化して作業をより迅速に行うことができるか、または第2アーム24の回転駆動に要するエネルギーを低減することができる。
【0096】
なお、ベース3の重心は、第1設置部31よりも第2設置部32側に偏在していてもよく、第1設置部31および第2設置部32の中間付近、すなわち線分SLの中点SP付近に位置していてもよい。
【0097】
また、突出部340の頂部341は、第2設置部32よりも第1設置部31側に偏在している。これにより、比較的大きい搭載物、特にZ軸方向の高さが比較的高い搭載物である第2関節アクチュエーター28をベース3の基端側に配置したとしても、第2ビーム34の突出部340の内側に第2関節アクチュエーター28を十分に収納、保護することができる。そのため、第2アーム24は、先端側の部分が基端側の部分に対し相対的に軽量化され、第2アーム24の第2回転軸J2回りの回転の慣性力を低減することができる。すなわち、第2アーム24の回転速度を高速化して作業をより迅速に行うことができるか、または第2アーム24の回転駆動に要するエネルギーを低減することができる。
【0098】
第2アーム24は、ベース3に対し着脱可能に装着される図示しないカバーを有していてもよい。このカバーをベース3に装着した状態では、ベース3および搭載物がカバーにより覆われ、塵、埃等の侵入が防止される。このカバーとしては、例えば透明または不透明なプラスチック製のカバー、すなわち比較的軽量であるが十分な強度を有するカバーを用いることができる。
【0099】
前述した第1実施形態では、ベース3にカバーは装着されていない。これにより、カバーの着脱の手間が省けるという第1の利点、カバーの重量分第2アーム24をさらに軽量化することができるという第2の利点、および第2アーム24の放熱性、特に第2アーム24の搭載物の放熱性が優れるという第3の利点がある。
【0100】
なお、上述したベース3の構成は、第2アーム24のみならず、第1アーム23のベースに適用してもよい。これにより、ロボットアーム22全体をさらに軽量化することができ、作業速度の向上、消費電力の節減に寄与する。
【0101】
以上、本発明のロボットを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明のロボットは、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…ロボットシステム、2…ロボット、3…ベース、9…ロボット制御装置、10…床面、21…基台、22…ロボットアーム、23…第1アーム、24…第2アーム、25…作業ヘッド、26…エンドエフェクター、27…第1関節アクチュエーター、28…第2関節アクチュエーター、30A…接続部、30B…接続部、30C…接続部、30D…接続部、30E…接続部、30F…接続部、31…第1設置部、32…第2設置部、33…第1ビーム、33A…第1ビーム、33B…第1ビーム、34…第2ビーム、34A…第2ビーム、34B…第2ビーム、35…第3ビーム、36…第4ビーム、10…床面、210…上面、230…上面、251…スプラインナット、252…ボールネジナット、253…スプラインシャフト、281…モーター、281A…出力軸、282…減速機、283…エンコーダー、291…第1駆動機構、292…第2駆動機構、310…挿通孔、311…上面、312…下面、313…内周面、320…挿通孔、321…上面、322…下面、323…内周面、340…突出部、341…頂部、G…重心、J1…第1回転軸、J2…第2回転軸、J3…第3回転軸、SL…線分、SP…中点