(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089122
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム製造用組成物、及びポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/72 20060101AFI20240626BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240626BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20240626BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20240626BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240626BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
C08G18/72
C08G18/42 069
C08G18/73 ZBP
C08G18/75
C08L101/16
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204299
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】小島 貫也
【テーマコード(参考)】
4J034
4J200
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB04
4J034DF01
4J034DF11
4J034DF12
4J034HA06
4J034HA08
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB11
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC45
4J034HC46
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4J034HC67
4J034HC71
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4J034KA01
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4J034KE02
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4J034NA06
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4J034NA08
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4J034RA10
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4J200AA06
4J200BA10
4J200BA35
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4J200DA12
4J200DA23
4J200DA24
4J200DA28
4J200EA04
(57)【要約】
【課題】生分解性を有するにも関わらず、良好なフォーム形状のポリウレタンフォームを製造する技術を提供すること。
【解決手段】本技術では、ラクトン系ポリエステルポリオールと、イソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートと、を含有する、ポリウレタンフォーム製造用組成物を提供する。本技術では、また、本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物から製造されるポリウレタンフォームを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトン系ポリエステルポリオールと、
イソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートと、
を含有する、ポリウレタンフォーム製造用組成物。
【請求項2】
前記イソシアネートが、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートである、請求項1に記載のポリウレタンフォーム製造用組成物。
【請求項3】
前記イソシアネートが、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートのトリマー体である、請求項2に記載のポリウレタンフォーム製造用組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム製造用組成物が用いられたポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記ポリウレタンフォームの生分解度が10%以上である、請求項4に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ポリウレタンフォーム製造用組成物、及びポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、ソファーや椅子等の家具、マットレスや枕等の寝具、下着等の衣類、食器用や掃除用スポンジ等の生活必需品、車内シート等の車両・航空機内装用製品、玩具、雑貨に至るまで、様々な分野で幅広く使用されている。そして、それぞれの分野や目的に応じて、品質を向上させたり、新たな機能を付与したりと、様々な開発が進められている。
【0003】
また、近年、環境に配慮する目的で、生分解性の高い発泡体を製造する技術も提案されている。例えば、特許文献1では、コーヒー豆抽出残渣などの植物残渣の存在下に、ポリオール成分およびポリイソシアネート成分を反応させて発泡体を得ることで、植物残渣を液化することなく使用することが可能で、ポリウレタン発泡体としたときに、植物残渣の脱落を起こしがたい生分解性発泡体を製造する技術が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2では、ポリオール成分およびポリイソシアネート成分を発泡条件下に反応させて発泡体を得るに際し、ポリオール成分100重量部に対し15~150重量部の単糖類を共存させることにより、生分解性を有する単糖類を液化することなく使用することが可能で、発泡体としたときに粉体の脱落を起こしがたく、しかも生分解速度の速い生分解性ポリウレタン系発泡体を製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-73285号公報
【特許文献2】特開平6-157799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、生分解性を有する発泡体を製造する技術が開発されつつあるが、生分解性を有する発泡体は、製造時の反応性が悪く、良好なフォーム形状を得られないといった問題があった。
【0007】
そこで、本技術では、生分解性を有するにも関わらず、良好なフォーム形状のポリウレタンフォームを製造する技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術では、まず、ラクトン系ポリエステルポリオールと、
イソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートと、
を含有する、ポリウレタンフォーム製造用組成物を提供する。
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物に用いる前記イソシアネートとしては、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートを用いることができる。
この場合、前記イソシアネートとしては、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートのトリマー体を用いることができる。
【0009】
本技術では、次に、本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物が用いられたポリウレタンフォームを提供する。
本技術に係るポリウレタンフォームの生分解度は、10%以上とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例における実施例1及び比較例1の生分解度の経時的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0012】
1.ポリウレタンフォーム製造用組成物
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物は、ラクトン系ポリエステルポリオールと、イソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートと、を含有する。また、本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物には、必要に応じて、発泡剤、触媒、整泡剤、生分解促進剤等を含有させることもできる。以下、各成分について、詳細に説明する。
【0013】
(1)ラクトン系ポリエステルポリオール
本技術に用いることができるラクトン系ポリエステルポリオールとは、ラクトンの開環重合によって得られるポリエステルポリオールであり、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができるラクトン系ポリエステルポリオールを、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、炭素数2~15、好適には炭素数4~10の環状エステルであるラクトンを開環重合し、官能基数2~4、例えば分子量400以上、好ましくは500以上が例示でき、分子量の上限は、例えば8000以下、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下のラクトン系ポリエステルポリオールが例示できる。具体的には、例えば、ε-カプロラクトン、メチルバレロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンポリオール、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられ、より具体的には、下記の化学式(1)で表されるポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトントリオール等を挙げることができる。なお、ポリオールとして、ラクトン系ポリエステルポリオールを用いることが好ましいが、他のポリオールを混合して用いてもよい。
【0014】
【0015】
(2)イソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネート
本技術に用いることができるイソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートは、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができるイソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートを、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び脂環族イソシアネート等のトリマー体や、分子中にイソシアネート基(NCO基)を3以上含む芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び脂環族イソシアネート等が挙げられる。なお、イソシアネートのトリマー体を用いる場合、ヌレート型トリマー体であっても、ビュレット型トリマー体であっても、アダクト型トリマー体であってもよい。
【0016】
本技術に用いることができる芳香族イソシアネートのトリマー体としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等のトリマー体が挙げられる。
【0017】
本技術では、イソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートとして、イソシアネート基(NCO基)を3以上含む脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートを用いることが好ましい。脂肪族イソシアネートや脂環族イソシアネートは、分解性が高いといった特徴を有するため、環境面で貢献することができる。本技術に係るポリウレタンフォームは、ポリオール由来のエステル結合部分が加水分解し、ポリオール及びイソシアネート由来のウレタン結合が加水分解することによりイソシアネート由来のアミンとポリオールに分解される。本技術では、イソシアネートとして、分解性を有する脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートを用いることで、分解性の高いポリウレタンフォームを製造することができる。
【0018】
脂肪族イソシアネートのトリマー体としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネ-ト、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプエート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、デカメチレンジイソシアネート等のトリマー体が挙げられる。
【0019】
分子中にイソシアネート基(NCO基)を3以上含む脂肪族イソシアネートとしては、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、2,6-ジイソシアネートヘキサン酸2-イソシアネートエチルエステル(LTI(2,6-Diisocyanato hexanoic acid 2-isocyanatoethyl ester))等が挙げられる。
【0020】
脂環族イソシアネートのトリマー体としては、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネ-ト、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート(水添TDI)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート(水加TMXDI)等の単環式脂環族イソシアネート;ノルボルネンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、ジイソシアナートメチルビシクロヘプタン等の架橋環式脂環族イソシアネート等のトリマー体が挙げられる。
【0021】
分子中にイソシアネート基(NCO基)を3以上含む脂環族イソシアネートとしては、例えば、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の架橋環式脂環族イソシアネートが挙げられる。
【0022】
この中でも、本技術では、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のトリマー体である下記化学式(2)で表されるHDIイソシアヌレート(HDIトリマー、2,4,6-トリオキソ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリイルトリス(6,1-ヘキサンジイル)トリイソシアナート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)のトリマー体である下記化学式(3)で表される1,5-PDIイソシアヌレート、下記化学式(4)で表される2,6-ジイソシアネートヘキサン酸2-イソシアネートエチルエステル(LTI(2,6-Diisocyanato hexanoic acid 2-isocyanatoethyl ester))を選択することが好ましい。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
本技術に用いるイソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートのNCO基以外の炭素数は特に限定されないが、例えば、炭素数7以上が好ましく、炭素数8以上がより好ましく、炭素数12以上がさらに好ましい。また、イソシアネートのトリマー体を用いる場合は、モノマーであるイソシアネートの炭素数が4以上であることが好ましい。
【0027】
本技術に用いるイソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネート中のイソシアネート基(NCO基)含有率(NCO%)は、例えば50%以下、40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。
【0028】
本技術に用いるイソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートの量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中のイソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートの下限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは40質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは80質量部以上、特に好ましくは90質量部以上である。組成物中のイソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートの含有量の下限値を、この範囲とすることにより、製造されるポリウレタンフォームのフォーム形状を更に良好にすることができる。
【0029】
本技術では、組成物中のイソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートの含有量の上限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、300質量部以下、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。組成物中のイソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートの含有量の上限値を、この範囲とすることにより、コスト削減のメリットがある。
【0030】
本技術において、イソシアネートインデックスも、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、イソシアネートインデックスの下限値は、例えば60以上、好ましくは70以上、より好ましくは80以上である。ポリウレタンフォームのイソシアネートインデックスの下限値を、この範囲とすることにより、製造するポリウレタンフォームの強度を向上させることができる。
【0031】
本技術では、イソシアネートインデックスの上限値は、例えば130以下、好ましくは120以下、より好ましくは110以下である。ポリウレタンフォームのイソシアネートインデックスの含有量の上限値を、この範囲とすることにより、コスト削減のメリットがあり、また、ポリウレタンフォームの硬度が硬くなりすぎて脆くなり柔軟性が損なわれることを防止し、ポリウレタンフォームの弾性を向上させることができる。
【0032】
なお、本技術において、イソシアネートインデックスは、[(ポリウレタンフォーム製造用組成物中のイソシアネート当量/ポリウレタンフォーム製造用組成物中の活性水素の当量)×100]で算出した値である。
【0033】
(3)発泡剤
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物には、発泡剤を用いることができる。本技術に用いることができる発泡剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる発泡剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0034】
発泡剤としては、例えば、水、炭化水素、ハロゲン系化合物等を挙げることができる。炭化水素としては、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等を挙げることができる。前記ハロゲン系化合物としては、塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ヘプタフルオロイソプロピルメチルエーテル等を挙げることができる。本技術では、これらの中でも発泡剤として水を用いることが好ましい。水は、イオン交換水、水道水、蒸留水等の何れでもよい。
【0035】
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物に用いる発泡剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ポリウレタンフォーム製造用組成物中の発泡剤の含有量の下限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。ポリウレタンフォーム製造用組成物中の発泡剤の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、発泡性を向上させることができ、その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0036】
本技術では、ポリウレタンフォーム製造用組成物中の発泡剤の含有量の上限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。ポリウレタンフォーム製造用組成物中の発泡剤の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、発泡過剰による形成不良を抑制することができ、また、コスト削減に貢献することもできる。
【0037】
(4)触媒
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物には、触媒を用いることができる。本技術に用いることができる触媒としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる触媒を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0038】
触媒としては、例えば、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の錫触媒や、フェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒)が挙げられる。また、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、テトラメチルグアニジン、ジエタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N′,N″,N″-ペンタメチルジエチレントリアミン、イミダゾール系化合物、ジメチルピペラジン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノ)エチルピペラジン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン系アミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のモルホリン系アミン、1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ-[4,3,0]-ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ-[5,3,0]-デセン-7(DBD)、1,4-ジアザビシクロ-[3,3,0]オクテン-4(DBO)等のDBU同属体と称されるアミン等のアミン触媒も用いることができるが、これらのアミン触媒のうち、3級アミン触媒、2級アミン触媒が好ましく、さらに分子量700未満が好ましく、分子量500未満がより好ましく、分子量300未満がさらに好ましい。
【0039】
本技術では、ポリオールとして、一般的な生分解性ポリオールに比べて反応性が高いラクトン系ポリエステルポリオールを用いているため、金属触媒を用いなくても十分に製造が可能である。また、一般的な生分解性ポリオールを用いた場合に比べて、触媒量を低減することができる。
【0040】
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物に用いる触媒の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ポリウレタンフォーム製造用組成物中の触媒の含有量の下限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。ポリウレタンフォーム製造用組成物中の触媒の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応や泡化反応を促進させることができ、その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0041】
本技術では、ポリウレタンフォーム製造用組成物中の触媒の含有量の上限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。ポリウレタンフォーム製造用組成物中の触媒の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応や泡化反応の不安定化を防止し、樹脂化反応と泡化反応のバランスを良好に保つことができる。その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0042】
(5)整泡剤
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物には、整泡剤を用いることができる。本技術に用いることができる整泡剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる整泡剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0043】
整泡剤としては、例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤、界面活性剤等を挙げることができる。シリコーン系整泡剤としては、シロキサン鎖主体からなるもの、シロキサン鎖とポリエーテル鎖が線状の構造をとるもの、分岐し枝分かれしたもの、ポリエーテル鎖がシロキサン鎖にペンダント状に変性されたもの等が挙げられる。
【0044】
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物に用いる整泡剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ポリウレタンフォーム製造用組成物中の整泡剤の含有量の下限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。ポリウレタンフォーム製造用組成物中の整泡剤の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、発泡反応を安定化することができ、その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0045】
本技術では、ポリウレタンフォーム製造用組成物中の整泡剤の含有量の上限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。ポリウレタンフォーム製造用組成物中の整泡剤の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、コスト削減に貢献することができる。
【0046】
(6)生分解促進剤
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物には、生分解促進剤を用いることができる。生分解促進剤を用いることで、本技術に係るポリウレタンフォームの原料として生分解性の原料を用いた場合に、生分解性を向上させることができる。
【0047】
本技術に用いることができる生分解促進剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームに用いることができる生分解促進剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0048】
生分解促進剤としては、例えば、グルコース、キシロース、ガラクトース、マルトース、スクロース、キチン、セルロース等の糖類;澱粉類;アミノ酸;ペプチド;タマリンドガム等のガム質;リグニン等を挙げることができる。
【0049】
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物に用いる生分解促進剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ポリウレタンフォーム製造用組成物中の生分解促進剤の含有量の下限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。
【0050】
本技術では、ポリウレタンフォーム製造用組成物中の生分解促進剤の含有量の上限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0051】
(7)その他
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物には、本技術の目的や効果を損なわない限り、その他の成分として、ポリウレタンフォーム製造用組成物に用いることができる各種成分を、目的に応じて1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
【0052】
本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物に用いることができる成分としては、例えば、難燃剤、安定剤、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、架橋剤、抗菌剤、分散剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0053】
2.ポリウレタンフォーム
本技術に係るポリウレタンフォームは、前述した本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物を用いて製造される。
【0054】
本技術に係るポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォームのいずれであっても良いが、特に、軟質ポリウレタンフォームとすることが好ましい。具体的には、伸びが50%以上のものが好ましく、伸びが90%以上のものがより好ましい。この範囲の伸びを有するポリウレタンフォームは、半硬質、硬質ポリウレタンフォームに比べ、十分に柔軟であり、軟質ポリウレタンフォームといえる。
【0055】
また、本技術に係るポリウレタンフォームの硬度は、本技術の目的や効果を損なわない限り特に限定されないが、その下限値は、例えば10以上、好ましくは15以上、より好ましくは20以上である。また、ポリウレタンフォームの硬度の上限値は、例えば100以下、好ましくは95以下、より好ましくは90以下である。なお、本技術において、硬度は、アスカーゴム硬度計F型にて測定された値である。
【0056】
本技術に係るポリウレタンフォームのフォーム密度は、本技術の目的や効果を損なわない限り、特に限定されないが、20~200g/m3の範囲であることが好ましい。フォーム密度をこの範囲とすることにより、ポリウレタンフォームの外観が更に良好になる。
【0057】
3.ポリウレタンフォームの用途
本技術に係るポリウレタンフォームは、その品質の高さを利用して、あらゆる分野であらゆる用途に用いることができる。例えば、ソファーや椅子等の家具、マットレスや枕等の寝具、下着等の衣類、食器や掃除用スポンジ等の生活必需品、車内シート等の車両・航空機内装用製品、建築目地材、建築用緩衝材、建築用シール材、家電用シール材、防音材、梱包材、車両用断熱材、結露防止材、内装材、家電断熱材、配管断熱材、各種カバー、クッション材、玩具、雑貨等に好適に用いることができる。
【0058】
4.ポリウレタンフォームの製造方法
本技術に係るポリウレタンフォームは、前述した本技術に係るポリウレタンフォーム製造用組成物の各成分を混合して組成物を調製し、樹脂化反応及び泡化反応を進行させることにより製造することができる。樹脂化反応及び泡化反応の方法は、本技術の目的や効果を損なわない限り、一般的は方法を自由に組み合わせて採用することができる。
【0059】
本技術に係るポリウレタンフォームの製造方法における発泡は、スラブ発泡及びモールド発泡のいずれを採用することもできる。スラブ発泡は、ポリウレタンフォーム製造用組成物(ポリウレタンフォームの原料)を混合してベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。一方、モールド発泡は、モールド(金型)のキャビティにポリウレタンフォーム製造用組成物(ポリウレタンフォームの原料)を混合して注入し、キャビティ形状に発泡させる方法である。
【0060】
生分解性ポリウレタンフォームを製造する場合、難分解性のポリウレタンフォームを製造する場合に比べて、製造時の反応性が悪いため、キュアタイム(硬化時間)も長くなり、一般的なモールド成型が難しかった。そのため、量産性が悪く、製造されたポリウレタンフォームの意匠性も悪くなるといった問題があった。しかし、本技術では、ラクトン系ポリエステルポリオールと、イソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートを用いることで、初期の増粘(クリームタイム)を早め、内部発熱を促進し、樹脂化反応の反応性を向上させると共に、泡化反応の反応性を高めてライズタイムも短縮することができる。その結果、例えば、製造時の反応性が悪い原料を用いた場合であっても、キュアタイム(クリームタイム+ライズタイム)を短縮することができる。このように、本技術を用いれば、環境に配慮した原料を用いた場合であっても、量産性が高く、機械的特定、及び意匠性の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【実施例0061】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0062】
(1)ポリウレタンフォームの製造
下記表1に示す各原料を混合して組成物を調製後した後、まず、発泡箱(蓋なしの開放状態で)に注入し、フリー発泡させて、反応性・フォームの成形性(外観・フォーム状態)を確認した。次いで、モールドに移して発泡させることにより、各ポリウレタンフォームを製造した。
【0063】
(2)評価
製造したポリウレタンフォームについて、下記の方法を用いて各物性の評価を行った。
【0064】
[フォーム形状]
下記表1に示す各原料を混合して組成物を調製後した後、発泡箱(蓋なしの開放状態で)に注入し、フリー発泡させて、フォームの成形性を確認した。
×:フォームの発泡成形時に、フォームがダウンし、又は、外観にクラックが入り、外観不良。若しくは、フォーム内部をカット面におけるセルが荒れるもの。
〇:フォームの発泡成形性、外観、セルもほぼ均一で、いずれも良好のもの。
【0065】
[密度]
フリー発泡させた際、及びモールド成形後に、それぞれ100mm角×厚み20mmに裁断して得られたサンプルに対し、JIS K7222:2005に基づいて密度を測定した。
【0066】
[硬さ]
アスカーゴム硬度計F型にて測定した。
【0067】
[土壌埋没試験]
鶏糞堆肥4kg、牛糞堆肥1kg、過リン酸石灰20g、菌種100gを混合してコンポストを調製し、コンポスト:水=1:1の重量比で水を加えて混合した後、蓋をして、常温24時間で培養後、更に58℃24時間培養を行った。培養後の完熟コンポストが、水分蒸発によって重量損失があった場合には、水を補充して水分量が50~75%となるように、また、pHが9以上の場合は酢酸で中和してpH7~9となるように調整し、完熟コンポストを調製した。
【0068】
調製した完熟コンポストに、製造したポリウレタンフォームの試験片(100×150×20mm)を、完熟コンポスト:試験片=15:1の重量比(乾燥重量比6:1)で混合し、密栓した状態で、58℃にて放置した。定期的に重量及びpHを確認し、水分蒸発によって重量損失があった場合には、水を補充して水分量が常に50~75%となるように、コンポストの減少が見られた場合は、バーミキュライトと水(重量比1:1)の混合物を追加した。また、pHが9以上の場合は酢酸で中和して常にpH7~9となるように調整し、1週間に1回以上、内部の撹拌を行った。
【0069】
試験片を埋没してから45日後に、崩壊に注意しながら試験片を取り出した。土壌等の付着物を水で洗浄した後、60℃の恒温槽にて、24時間乾燥し、下記の数式を用いて、重量損失率を算出した。
{(埋没前重量-45日後の重量)/(埋没前重量)}×100=重量損失率(%)
【0070】
[生分解度]
ISO14855-2に準拠して、180日後の生分解度を測定した。
【0071】
(3)結果
結果を下記の表1に示す。また、実施例1及び比較例1の生分解度の経時的変化を
図1のグラフに示す。
【表1】
【0072】
(4)考察
表1に示す通り、ラクトン系ポリエステルポリオール及びイソシアネート基(NCO基)を3以上含むイソシアネートを用いた実施例1~4は、フォーム形状が良好であった。また、表1及び
図1に示す通り、実施例1は比較例1に比べて、生分解性が非常に高いことが証明された。