(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089127
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】イットリウム酸化物材料及びイットリウム酸化物材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/50 20060101AFI20240626BHJP
C04B 35/553 20060101ALI20240626BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
C04B35/50
C04B35/553
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204304
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】深沢 祐司
(72)【発明者】
【氏名】杉山 愛美
(72)【発明者】
【氏名】村田 征隆
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA13
5F004BB22
5F004BB29
5F004BD03
(57)【要約】
【課題】アーキングの防止効果と耐腐食性の双方に優れた、イットリウム酸化物材料及びそのイットリウム酸化物材料の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかるイットリウム酸化物材料は、半導体製造装置に用いられるイットリウム酸化物材料であって、酸素が5重量%以上10重量%以下、イットリウムが60重量%以上70重量%以下、ハロゲン元素が20重量%以上35重量%以下、残部が不可避不純物からなり、密度が少なくとも4.8g/cm3であり、かつ体積抵抗が1×1012Ω以上1×1015Ω以下であることを特徴としている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置に用いられる、焼成体からなるイットリウム酸化物材料であって、
酸素が5重量%以上10重量%以下、イットリウムが60重量%以上70重量%以下、ハロゲン元素が20重量%以上35重量%以下、残部が不可避不純物からなり、
密度が少なくとも4.8g/cm3であり、かつ体積抵抗が1×1012Ω以上1×1015Ω以下であることを特徴とするイットリウム酸化物材料。
【請求項2】
前記請求項1記載のイットリウム酸化物材料の製造方法であって、
イットリウム酸化物とイットリウムフッ化物を混合して作製した成形体を、還元性雰囲気下において800℃以上950℃以下の温度で焼成する工程を含むことを特徴とするイットリウム酸化物材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイットリウム酸化物材料及びイットリウム酸化物材料の製造方法に関し、例えば、半導体製造装置の部材に用いる材料として好適なイットリウム酸化物材料、及びそのイットリウム酸化物材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高密度プラズマを発生させる装置に用いられるセラミックス部材において、異常放電の現象(アーキング)が生じることが知られている。
例えば、半導体ウェハをドライエッチングする装置には、セラミックスからなる静電チャックが用いられている。そして、この静電チャックには異常放電する現象(アーキング)が発生することがあり、前記現象が発生すると、静電チャックからパーティクルが発生し、また半導体ウェハの処理において歩留まり低下が生じるという問題があった。
【0003】
この問題を解決するものとして、特許文献1には、プラズマ密度の高密度化に伴うアーキングの発生を防止できる静電チャックが示されている。
具体的には、特許文献1には、冷却装置と、冷却装置上に配置され、ワーク載置面を有する静電チャック本体を備える半導体製造装置に用いられる静電チャックであって、(イ)冷却装置を貫通して、冷却装置の一方の主面から他方の主面表面に至るように伸びるガス供給孔、ガス供給孔の開口部にガス供給孔よりも大径の主座繰り部が設けられ、(ロ)主座繰り部に、中央にガス供給孔と連通するガス流路を設けた絶縁部材からなるアーキング防止部材が埋め込まれ、(ハ)ワーク載置面には、ガス流路を介してガス供給孔と連通する細孔が設けられている静電チャックが示されている。
【0004】
また、特許文献1には、静電チャック本体の材質として、窒化アルミニウム系セラミックス、窒化アルミニウムを含む複合材料、アルミナ系セラミックス、アルミナを含む複合材料、アルミナと窒化アルミニウムとの複合セラミックスが示されている。更にアーキング防止部材の材質として、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン(登録商標))などの耐熱性フッ素樹脂や、アルミナ等の高融点絶縁性セラミックスが示されている。
【0005】
このように、特許文献1に記載された静電チャックでは、静電チャック本体の材質として窒化アルミニウム系セラミックス等が用いられ、この静電チャックに、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン(登録商標))などの耐熱性フッ素樹脂や、アルミナ等の高融点絶縁性セラミックスからなるアーキング防止部材が埋め込まれ、アーキングが生じやすい箇所を保護する、という対策がなされている。
【0006】
尚、エッチング装置等の半導体製造装置の構成材料であって、ハロゲン系プラズマに対して優れた耐性を示す材料として、特許文献2には、YOF及び/又はY5O4F7であり、焼結体の相対密度が70%以上で開気孔率が10%以下であり、200~400℃における線熱膨張率が2.0×10-6/K以上、8.0×10-6/K以下であり、3点曲げ強度が10MPa以上、300MPa以下であることを特徴とするイットリウムオキシフッ化物焼結体が示されている。
【0007】
また、プラズマエッチング装置内の静電チャックに好適に使用され、体積抵抗率の温度依存性が小さく、かつハロゲン系ガスプラズマに対してパーティクル発生量の少なく緻密な皮膜等が特許文献3に示されている。
具体的には、特許文献3に、希土類元素の酸化物を含む溶射膜からなる下層と、希土類元素のフッ化物及び/又はオキシフッ化物を含む溶射膜からなる表層とを具備する複層構造の皮膜であり、23℃における体積抵抗率が1×109~1×1012Ω・cmで、かつ200℃における体積抵抗率を23℃における体積抵抗率で除した体積抵抗率の温度変数が0.1~10である溶射皮膜が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-218592号公報
【特許文献2】特開2016-98143号公報
【特許文献3】特開2020-29614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載されるようなアーキングが発生する箇所を絶縁部材からなるアーキング防止部材で保護する手法は、セラミックスの作製において工程が複雑になるという課題があった。また、前記アーキング防止部材が、プラズマ処理中に破損する虞もあり、この破損により間隙が生じるとアーキングへの対応が不十分となるという課題があった。
【0010】
そこで、本発明者らは、アーキング防止部材を設けることなく、静電チャック本体等の材質を改良することにより、異常放電の現象(アーキング)を抑制し、パーティクルの発生や歩留まりの低下を抑制することを、鋭意研究した。また、この研究に際しては、静電チャック本体等の材質として、プラズマ耐性が強い酸化イットリウム(イットリア)を前提に検討した。
【0011】
このイットリアは体積抵抗が約1×1016Ωであり、高抵抗な材料である。そのため、イットリアを用いた部材に対して局所的に電荷が集中すると、アーキングが生じやすい。
特に、ドライエッチング装置の高エネルギー化が進む中、ドライエッチング装置に大きい高周波が印加されると、イットリアを用いた静電チャックに、より多くのアーキングが発生する確率が高まる。
【0012】
しかしながら、本発明者らの研究によれば、イットリウム、酸素、ハロゲン元素が特定範囲の含有量を有するイットリウム酸化物材料である場合には、密度が4.8g/cm3以上であり、体積抵抗が1×1012Ω以上1×1015Ω以下となる。
そして、このような性状を有するイットリウム酸化物材料について、優れた耐腐食性を備えつつ、アーキング防止部材のような保護膜を必要とせずに効果的にアーキングを抑制できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
因みに、特許文献2には、イットリウムオキシフッ化物焼結体の体積抵抗の記載はなく、またアーキングを防止する体積抵抗の範囲についても記載されていない。さらには、イットリウムオキシフッ化物の粉末を用いて焼成体を得る場合、その製造コストが高く、製造条件も複雑化するという新たな課題が生じる虞がある。
また、特許文献3には、希土類元素オキシフッ化物を含む溶射膜の体積抵抗について記載されているが、アーキングを防止できる、焼結体の体積抵抗の範囲について記載されていない。
【0014】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、半導体製造装置に用いられるイットリウム酸化物材料であって、アーキングの防止効果と耐腐食性の双方に優れた、イットリウム酸化物材料及びそのイットリウム酸化物材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するためになされた本発明にかかるイットリウム酸化物材料は、半導体製造装置に用いられる、焼成体からなるイットリウム酸化物材料であって、酸素が5重量%以上10重量%以下、イットリウムが60重量%以上70重量%以下、ハロゲン元素が20重量%以上35重量%以下、残部が不可避不純物からなり、密度が少なくとも4.8g/cm3であり、かつ体積抵抗が1×1012Ω以上1×1015Ω以下であることを特徴としている。
【0016】
本発明にかかるイットリウム酸化物材料は、アーキングの防止効果と耐腐食性の双方に優れ、半導体製造装置の部材に用いられる材料として好適な材料である。
【0017】
また、上記目的を達成するためになされた本発明にかかるイットリウム酸化物材料の製造方法は、イットリウム酸化物とイットリウムフッ化物を混合して作製した成形体を、還元性雰囲気下において800℃以上950℃以下の温度で焼成する工程を含むことを特徴としている。
【0018】
このように、還元雰囲気中で焼成することで、構造欠陥の一種である酸素欠陥を増加させ、体積抵抗を小さくでき、所定の体積抵抗を有するイットリウム酸化物材料を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アーキングの防止効果と耐腐食性の双方に優れた、半導体製造装置に好適に用いられるイットリウム酸化物材料及びそのイットリウム酸化物材料の製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明にかかるイットリウム酸化物材料は、酸素が5重量%以上10重量%以下、イットリウムが60重量%以上70重量%以下、ハロゲン元素が20重量%以上35重量%以下、残部が不可避不純物からなる焼成体であって、密度が少なくとも4.8g/cm3であり、かつ体積抵抗が1×1012Ω以上1×1015Ω以下であり、半導体製造装置に好適に用いられるものである。
【0021】
本発明にかかるイットリウム酸化物材料は、イットリウム酸化物であるところから、プラズマ耐性が強く、耐腐食性に優れ、しかも、体積抵抗が従来よりも小さいことで、局所的な電荷の集中を回避し、アーキングを防止できるものである。
また、本発明にかかるイットリウム酸化物材料は、前記したように、酸素が5重量%以上10重量%以下、イットリウムが60重量%以上70重量%以下、ハロゲン元素が20重量%以上35重量%以下含み、残部が不可避不純物からなる。
即ち、本発明にかかるイットリウム酸化物材料は、イットリウム酸化物(酸化イットリウム)の主成分である酸素とイットリウムの他に、ハロゲン元素を加えた3元素以上の成分からなるものである。尚、ハロゲン元素を2種類以上適用して、4元素以上の化合物としても良い。
【0022】
ここで、本発明では、各原料由来の不純物、製造過程で混入する不純物などの、いわゆる不可避不純物を含むものである。この不可避不純物は微量であり、本発明の作用効果への影響は小さいと考えられる。
【0023】
また、前記したように、酸素が5重量%以上10重量%以下、イットリウムが60重量%以上70重量%以下とする理由は、上記した範囲を外れた場合は、化学量論比の酸化イットリウムでみられる耐プラズマ性(プラズマに対する侵食の程度)と同程度の効果が期待できず、ドライエッチング装置等での使用が難しいためである。
【0024】
また、ハロゲン元素の割合は、イットリウム酸化物の20重量%以上35重量%以下である。
ハロゲン元素が20重量%未満では、イットリウム酸化物の体積抵抗が1×1015Ωを超えることとなり、アーキングに対する効果が小さい。
一方、ハロゲン元素がイットリウム酸化物の35重量%を超える場合には、酸素とイットリウムの比率が、酸素5重量%以上10重量%以下、イットリウム60重量%以上70重量%以下の範囲に入らないため、耐プラズマ性が悪化してしまい、半導体製造装置に用いられる部材に適用できなくなる虞がある。
【0025】
本発明にかかるイットリウム酸化物材料の密度は少なくとも4.8g/cm3である。
密度が4.8g/cm3未満では、イットリウム酸化物の中に、多くの気孔が存在しているため、耐プラズマ性の低下や体積抵抗の上昇をもたらし、好ましくない。ここで、密度は、高いほど好ましく、イットリウム酸化物の有する理論密度と同等でもよい。
【0026】
本発明にかかるイットリウム酸化物材料は、酸素が5重量%以上10重量%以下、イットリウムが60重量%以上70重量%以下、ハロゲン元素が20重量%以上35重量%以下であり、いずれかが当該範囲を外れると、焼成時に気孔が充分低減されず、密度が4.8g/cm3を下回る懸念がある。
【0027】
前記密度の調整は、気孔を減らす条件、例えば焼成温度と焼成時間を適時変更することでも可能である。
尚、本発明における密度の測定方法は格別限定されるものではないが、好適には、JIS R1634に規定されている、煮沸法、真空法などが適用できる。
【0028】
本発明にかかるイットリウム酸化物材料の体積抵抗は、1×1012Ω以上1×1015Ω以下である。
この体積抵抗が1×1012Ω未満では、イットリウム酸化物中の電気伝導が大きく、ドライエッチング装置内のプラズマ発生を制御し難いため、好ましくない。一方、体積抵抗が1×1015Ωを超える場合には、アーキング防止の効果が充分に得られないため、好ましくない。
尚、アーキング防止の効果は、1×1013Ω以上1×1015Ω以下の範囲で充分に得られる。また、体積抵抗値が高い方がプラズマの発生をより抑制できる。したがって、この体積抵抗は、1×1013Ω以上1×1015Ω以下であることがより好ましい。
【0029】
尚、本発明にあっては、体積抵抗の測定方法を限定するものではないが、JIS C2139に規定の体積抵抗率の測定方法などが適用できる。
【0030】
このイットリウム酸化物の体積抵抗は、例えば、1価の陰イオンをもつハロゲン元素を付加することで、その値を小さくすることができる。
ここでいうハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含むが、特に、扱いやすさの点でフッ素が好ましい。
【0031】
また、セラミックスの体積抵抗は、その内部に存在する構造欠陥とも関連するため、例えば、セラミックスを還元雰囲気中で焼成することで、構造欠陥の一種である酸素欠陥を増加させ、体積抵抗を小さくしても良い。
具体的には、イットリウム酸化物とイットリウムフッ化物を混合して作製した成形体を、還元性雰囲気で焼成することで、構造欠陥の一種である酸素欠陥を増加させ、イットリウム酸化物の体積抵抗を小さくしても良い。
【0032】
本発明にかかるイットリウム酸化物材料の製造方法は、前記したように、イットリウム酸化物とイットリウムフッ化物を混合して作製した成形体を、還元性雰囲気下において800℃以上950℃以下の温度で焼成する工程を含むことを特徴としている。
【0033】
ここで、還元雰囲気は、真空、水素雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、あるいはこれらの組み合わせ、のいずれかである。なお、製造コストと体積抵抗の低減効果との兼ね合いから、(アルゴン)雰囲気がより好ましい。
【0034】
また、本発明にかかるイットリウム酸化物材料の製造方法では、焼成温度は800℃以上950℃以下の範囲である。
焼成温度が800℃未満の場合には、十分な密度でイットリウム酸化物を焼結することができず、950℃を超える場合には、体積抵抗を本発明の範囲に収めるのが困難となるため、好ましくない。
【0035】
本発明にかかるイットリウム酸化物材料の製造方法にあっては、焼成前の段階ではイットリウムオキシフッ化物は存在せず、焼成の段階でイットリウムフッ化物が分解して生じたフッ素とイットリウム酸化物が反応して、一部はイットリウムオキシフッ化物として生成される。
【0036】
そのため、イットリウムオキシフッ化物原料を焼成して得られる特許文献2に記載の焼結体と、本発明にかかるイットリウム酸化物材料とを比較すると、本発明におけるイットリウムオキシフッ化物の割合はかなり少ない。
その結果、本発明にかかるイットリウム酸化物材料は、イットリウムオキシフッ化物の持つ優れた耐腐食性もある程度有していながら体積抵抗が下げられている、という、2つの特性を両立させた、従来にない優れた材料となる。
【0037】
このように、希土類元素の酸化物にハロゲン元素を所定の割合で付加すること、及び焼成条件を所定の雰囲気・焼成温度で行うことで、体積抵抗の調整を行うことができる。
その結果、耐プラズマ性を確保しながらアーキング防止効果を有するイットリウム酸化物材料を得ることができる。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記に示す実施例により制限されるものではない。
【0039】
(実施例1)
酸素7.5重量%、イットリウム64重量%、フッ素28.5重量%となるように、イットリウム酸化物粉末(純度99.9%)とフッ化イットリウム粉末(純度99.9%)をそれぞれ秤量した。
次に、前記の全粉末重量に対して1重量%となるように、バインダーとしてポリビニルアルコールを秤量した。さらに、純水中において前記の全粉末の重量比が65%となるように純水を秤量した。そして、これらを全て混合した後、スプレードライ装置で造粒して、回収した造粒粉を乾式プレスにて(板状)の形状に成形した。
得られた成形体を、大気中で600℃に加熱し、ポリビニルアルコールを除去した後、アルゴン雰囲気中で900℃の温度で60分焼成して、評価用の焼成体を得た。
【0040】
実施例1で得られた焼成体について密度を測定したところ、5.05g/cm3であった。また、体積抵抗を測定したところ、1×1013Ωであった。ここで、密度は(JIS R1634)に準じて測定し、体積抵抗は(JIS C2139)にて測定した。
【0041】
(実施例2)
酸素5.5重量%、イットリウム62重量%、フッ素32.5重量%となるようにイットリウム酸化物粉末、フッ化イットリウム粉末を秤量した以外は、実施例1と同様に行った。得られた焼成体の密度は5.02g/cm3であり、体積抵抗は5×1012Ωであった。
【0042】
(実施例3)
酸素9.8重量%、イットリウム68重量%、フッ素22.2重量%となるようにイットリウム酸化物粉末、フッ化イットリウム粉末を秤量した以外は、実施例1と同様に行った。得られた焼成体の密度は5.05g/cm3であり、体積抵抗は2×1014Ωであった。
【0043】
(実施例4)
酸素6.0重量%、イットリウム65重量%、フッ素29重量%となるようにイットリウム酸化物粉末、フッ化イットリウム粉末を秤量した以外は、実施例1と同様に行った。得られた焼成体の密度は5.03g/cm3であり、体積抵抗は4×1013Ωであった。
【0044】
(比較例1)
酸素6.5重量%、イットリウム75重量%、フッ素18.5重量%となるようにイットリウム酸化物粉末、フッ化イットリウム粉末を秤量した以外は、実施例1と同様に行った。得られた焼成体の密度は4.76g/cm3であり、体積抵抗は2×1015Ωであった。
【0045】
(比較例2)
酸素12重量%、イットリウム72重量%、フッ素23重量%となるようにイットリウム酸化物粉末、フッ化イットリウム粉末を秤量した以外は、実施例1と同様に行った。得られた焼成体の密度は4.75g/cm3であり、体積抵抗は4×1015Ωであった。
【0046】
(比較例3)
酸素4.5重量%、イットリウム57重量%、フッ素38.5重量%となるようにイットリウム酸化物粉末、フッ化イットリウム粉末を秤量した以外は、実施例1と同様に行った。得られた焼成体の密度は4.78g/cm3であり、体積抵抗は4×1011Ωであった。
【0047】
(比較例4)
焼成時間を実施例1の半分とした以外の条件は、実施例1と同様に行った。得られた焼成体の密度は4.72g/cm3であり、体積抵抗は3×1011Ωであった。
【0048】
(比較例5)
酸素7.5重量%、イットリウム64重量%、フッ素28.5重量%となるようにイットリウム酸化物粉末、フッ化イットリウム粉末を秤量した。焼成温度を750℃とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた焼成体の密度は4.70g/cm3であり、体積抵抗は2×1015Ωであった。
【0049】
(比較例6)
酸素7.5重量%、イットリウム64重量%、フッ素28.5重量%となるようにイットリウム酸化物粉末、フッ化イットリウム粉末を秤量した。焼成温度を980℃とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた焼成体の密度は4.78g/cm3であり、体積抵抗は3×1015Ωであった。
【0050】
(比較例7)
酸素7.5重量%、イットリウム64重量%、フッ素28.5重量%となるようにイットリウム酸化物粉末、フッ化イットリウム粉末を秤量した。焼成雰囲気を大気とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた焼成体の密度は4.70g/cm3であり、体積抵抗は3×1015Ωであった。
【0051】
また、実施例1~4、比較例1~7の各試料をプラズマ発生装置の内部に配置し、0.05Torrの真空度を保ちながら、試料間に850Vの電圧を5分間印加し、印加後に試料を取り出して、アーキングの痕跡を光学顕微鏡または走査電子顕微鏡で確認した。その結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
上記実施例1~4のように、酸素、イットリウム、フッ素の重量比が本発明の範囲内であれば、密度と体積抵抗も本発明の範囲内にある。
これら密度と体積抵抗が本発明の範囲内にある場合には、イットリウム酸化物の持つ耐腐食性と、フッ素添加されたことにより適切化された体積抵抗で得られるアーキング防止効果とを併せ持つものであることが判明した。
【0054】
比較例1では、イットリウムが好ましい範囲より多いので十分緻密化されず、密度が4.8g/cm3を下回った。そして密度が本発明の範囲を下回ったことで、体積抵抗が上昇したものと推察される。
【0055】
比較例2では、酸素が好ましい範囲より多いので十分緻密化されず、密度が4.8g/cm3を下回った。そして密度が本発明の範囲を下回ったことで、体積抵抗が上昇したものと推察される。
【0056】
比較例3では、フッ素が好ましい範囲より多いので十分緻密化されず、密度が4.8g/cm3を下回った。また、フッ素が本発明の範囲を超えて過大に存在するため、導電性が増加して体積抵抗が本発明の範囲を下回るものとなったものと推察される。
【0057】
比較例4は、酸素、イットリウム、フッ素が本発明の範囲内であっても、焼成を十分行わなかったため、気孔が相当量残存して緻密化されなかったものである。
【0058】
比較例5では、焼成温度を750℃と低くしたことにより十分緻密化されず、密度が4.8g/cm3を下回った。そして密度が本発明の範囲を下回ったことで、体積抵抗が上昇したものと推察される。
【0059】
比較例6では、焼成温度を980℃と高くしたことにより十分緻密化されず、密度が4.8g/cm3を下回った。そして密度が本発明の範囲を下回ったことで、体積抵抗が上昇したものと推察される。
【0060】
比較例7では、焼成雰囲気を大気圧したことにより十分緻密化されず、密度が4.8g/cm3を下回った。そして密度が本発明の範囲を下回ったことで、体積抵抗が上昇したものと推察される。
【0061】
このように、比較例1~7は、密度と体積抵抗が本発明の範囲外であるため、耐腐食性と、体積抵抗で得られるアーキング防止効果の双方を併せ持つものではないことが判明した。