(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089134
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】整備支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240626BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240626BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204314
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 千晴
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】故障原因を特定するために有益な情報を提供する。
【解決手段】
一態様に係る整備支援システムは、故障状態を示す情報と、部品を示す情報と、部品が故障の原因である確率とが関連付けられた整備統計情報を記憶する記憶部であり、確率が過去の整備記録を集計して生成された、該記憶部と、整備車両の故障状態を示す情報を取得する故障状態取得部と、取得された故障状態を示す情報に対応する部品を示す情報及び確率を整備統計情報から抽出する抽出部と、抽出された部品を示す情報を故障部品の候補を示す情報として、抽出された確率と共に表示する表示部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障状態を示す情報と、部品を示す情報と、前記部品が故障の原因である確率とが関連付けられた整備統計情報を記憶する記憶部であり、前記確率が過去の整備記録を集計して生成された、該記憶部と、
整備車両の前記故障状態を示す情報を取得する故障状態取得部と、
取得された前記故障状態を示す情報に対応する前記部品を示す情報及び前記確率を前記整備統計情報から抽出する抽出部と、
抽出された前記部品を示す情報を故障部品の候補を示す情報として、抽出された前記確率と共に表示する表示部と、
を備える整備支援システム。
【請求項2】
前記故障状態を示す情報が、故障コード及び症状を示す情報を含む、請求項1に記載の整備支援システム。
【請求項3】
前記抽出部は、複数の前記部品を示す情報、及び、前記複数の前記部品を示す情報に対応する複数の前記確率を前記整備統計情報から抽出し、
前記表示部は、複数の前記部品を示す情報を前記確率の高い順に並べて表示する、請求項2に記載の整備支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の整備支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の高性能化に伴ってシステムが複雑化しており、車両の故障原因も多様化している。これに伴い、車両の故障原因の特定は益々難しくなっており、車両の整備には高度な知識が求められるようになっている。特に、経験の少ない整備士にとって車両を迅速に整備することは容易なことではない。
【0003】
整備士による車両の整備を支援する技術として、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、故障診断コード(DTC)と検出センサからの出力とをディーラー端末装置から受信し、受信した故障診断コード及び検出センサの出力から統計機械学習アルゴリズムを用いて車両の故障原因を推定し、推定した故障原因をディーラー端末装置に出力するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、統計機械学習アルゴリズムで推定される全ての故障原因の候補がディーラー端末装置に出力される。多数の故障原因の候補が提示された場合には、整備士は多数の故障原因の候補の中から実際の故障原因を特定する必要があり、迅速に車両を整備することが難しい。
【0006】
そこで、本開示は、故障原因を特定するために有益な情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る整備支援システムは、故障状態を示す情報と、部品を示す情報と、部品が故障の原因である確率とが関連付けられた整備統計情報を記憶する記憶部であり、確率が過去の整備記録を集計して生成された、該記憶部と、整備車両の故障状態を示す情報を取得する故障状態取得部と、取得された故障状態を示す情報に対応する部品を示す情報及び確率を整備統計情報から抽出する抽出部と、抽出された部品を示す情報を故障部品の候補を示す情報として、抽出された確率と共に表示する表示部と、を備える。
【0008】
本態様では、故障部品の候補と、その故障部品の候補が故障の原因である確率とが表示される。この確率は、過去の整備記録を集計して生成された信頼性の高い確率である。整備士等、整備車両の担当者は、これらの情報に基づいて、故障の原因である可能性の高い部品を容易に特定することができる。したがって、本態様に係る整備支援システムによれば迅速に車両を整備することが可能となる。
【0009】
一態様では、故障状態を示す情報が、故障コード及び症状を示す情報を含んでいてもよい。故障コード及び症状を用いることにより、車両の故障状態を明確に識別することができる。
【0010】
一態様では、抽出部は、複数の部品を示す情報、及び、複数の部品を示す情報に対応する複数の確率を整備統計情報から抽出し、表示部は、複数の部品を示す情報を確率の高い順に並べて表示してもよい。複数の故障部品の候補を確率の高い順に並べて表示することにより、故障の原因である可能性の高い部品を優先的に整備することができる。その結果、整備車両を迅速に整備することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、故障原因を特定するために有益な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る整備支援システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】整備支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】一実施形態に係る整備支援方法を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して種々の実施形態に係る整備支援システムについて詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととし、同一又は相当の部分に対する重複した説明は省略する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る整備支援システム1の機能的構成を示すブロック図である。
図1に示すように、整備支援システム1は、整備支援装置10及び端末装置20を備えている。整備支援装置10は、端末装置20から受信した整備車両2の故障状態を示す情報に基づいて故障部品の候補を特定し、特定された故障部品の候補に関する情報を端末装置20に表示させる。故障部品とは、車両の故障の原因となっている部品を意味する。
【0015】
端末装置20は、例えば車両の販売店又は整備工場に設置されている。端末装置20は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン、PDA等のコンピュータ端末であり、整備支援装置10と互いに通信可能である。端末装置20は、整備車両2を整備する整備士3によって操作される。整備車両2とは、整備対象となる乗用車、トラック、トレーラー又はバス等の車両である。典型的には、整備車両2は不具合のある車両である。
【0016】
端末装置20は、通信部21、入力部22、制御部23及び表示部24を備えている。通信部21は、整備に関する各種情報をネットワークを介して整備支援装置10と送受信する通信装置である。入力部22は、整備に関する各種情報の入力を整備士3から受け付ける。例えば、入力部22は、ボタン、スイッチ、タッチパネル、キーボード又はマウス等である。整備士3は、入力部22を操作して、整備車両2の故障状態を示す情報を端末装置20に入力する。制御部23は、端末装置20を統括的に制御する。表示部24は、例えばディスプレイであり、整備に関する各種情報を整備士3に提示する。
【0017】
整備支援装置10は、記憶部11、統計処理部12、故障状態取得部13、抽出部14、画面生成部15及び送信部16を備えている。なお、
図1では、整備支援装置10が1台のコンピュータで構成されているように示しているが、整備支援装置10の機能は複数台のコンピュータに分散して配置されてもよい。例えば、整備支援装置10は、記憶部11を備えるコンピュータと、その他の機能を備えるコンピュータとによって構成されてもよい。
【0018】
図2は、整備支援装置10のハードウェアの構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、整備支援装置10は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラム等を実行するCPU101と、ROM及びRAMで構成される主記憶部102と、ハードディスク等で構成される補助記憶部103と、ネットワークカードなどで構成される通信制御部104と、キーボードやマウス等の入力装置105と、ディスプレイ等の出力装置106とを備える。整備支援装置10の各機能は、CPU101や主記憶部102の上に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU101の制御の下で通信制御部104や入力装置105、出力装置106などを動作させ、主記憶部102や補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。処理に必要なデータやデータベースは主記憶部102や補助記憶部103内に格納される。
【0019】
図1に示すように、記憶部11は、故障コード情報31、整備記録情報32及び整備統計情報33を記憶している。故障コード情報31は、車型と故障コードとを関連付けて記憶している。車型は、車両の型式である。故障コードは、車両に搭載された自己診断装置によって故障が発見されたときに出力されるエラーコードである。例えば故障コードは、車型に応じて設定されたDTC(Diagnostic Trouble Code)である。なお、車型に関わらず共通の故障コードが使用される場合には、記憶部11は、故障コード情報31を記憶していなくてもよい。
【0020】
整備記録情報32は、過去に整備工場で整備された車両の整備記録を示す情報である。整備工場で実施された車両の修理又は点検等の整備の詳細は、整備記録として記録される。1又は複数の整備工場で記録された整備記録は、整備支援装置10に集約され、整備記録情報として登録される。
【0021】
図3は、整備記録情報32の一例を示している。
図3に示すように、整備記録情報32は、主要な項目として、整備ID、車型、車番、日時、故障コード、症状及び部品を示す情報を含んでいる。整備IDは、整備作業を一意に識別するための識別子である。車型は、車両の型式である。車番は、車両番号である。日時は、故障コードが発生した日時を示す情報である。
【0022】
上記のように、故障コードは、自己診断装置で故障が発見されたときに車両から出力されるエラーコードであり、故障診断装置を車両のECUに接続することで読み取られる。なお、故障コードは、車両に搭載されたセンサの出力データに基づいて検出されるため、故障コードだけでは故障の原因である故障部品を一意で特定できない場合がある。例えば、エンジンに関する故障コードが出力された場合には、エンジンに不具合がある可能性もあるし、センサに不具合がある可能性もある。
【0023】
症状は、故障によって車両に生じた異常な現象を示している。症状は、車両の所有者が申告した現象であってもよいし、点検で発見した現象であってもよい。症状の例としては、「エンジン系統異常表示」、「DPR系統点検表示」、「出力不足」等が挙げられる。「エンジン系統異常表示」は、エンジン警告灯が点灯したときに登録される。「DPR系統点検表示」は、DPR警告灯が点灯したときに登録される。「出力不足」は、通常よりもエンジン出力が低いと判定されたときに登録される。症状は、統計処理が可能なようにコード化されて登録されていてもよい。上述した故障コード及び症状は、車両の故障状態を示す情報である。
【0024】
部品は、整備士3の点検により故障の原因として特定された故障部品を示している。整備記録情報32に記録される部品を示す情報は、部品の名称のみを含んでもよいし、部品の名称及び整備内容を示す情報を含んでいてもよい。例えば、DPR(Diesel Particulate Filter)に異常があった場合には、部品を示す情報として、「DPR」と記録されていてもよいし、「DPR強制再生」と記録されてもよい。「DPR強制再生」は、部品の名称「DPR」と整備内容「強制再生」を含む項目値である。
【0025】
上記のように、整備記録情報32は、過去の整備実績に関する情報である。例えば、
図3の整備ID「0001」に対応する整備記録は、整備士3が車型「AAA」、故障コード「P244B」、症状「エンジン系統異常表示」の車両を点検した結果、「エンジンEUC」の故障であると特定されたことを示している。
【0026】
整備統計情報33は、過去の整備記録を集計して生成された統計情報である。
図4は、整備統計情報33の一例を示している。
図4に示すように、整備統計情報33は、主要な項目として、統計ID、車型、故障コード、症状、部品、確率、及び、実績数/症例数を含んでいる。
【0027】
統計IDは、整備統計情報33のレコードを一意に識別する識別子である。車型は、車両の型式である。故障コードは、車両から出力されたエラーコードである。症状は、故障によって車両に生じた異常な現象を示している。部品は、故障の原因として特定された故障部品を示している。
【0028】
実績数/症例数は、対応する車型、故障コード及び症状を含む整備記録の数である症例数と、対応する対応する車型、故障コード、症状及び部品を含む整備記録の数である実績数との比を示している。確率は、実績数を症例数で除した値である。すなわち、確率は、対応する車型の車両において、対応する故障コード及び症状が発生したときに、対応する部品が故障の原因である確率を表している。
【0029】
統計処理部12は、整備記録情報32を集計して整備統計情報33を生成する。例えば、統計処理部12は、整備記録情報32から共通する車型、故障コード及び症状を含む1又は複数の整備記録を抽出し、抽出した整備記録の数を症例数として記憶する。さらに、統計処理部12は、抽出した1又は複数の整備記録の中から共通する部品を含む整備記録を抽出し、抽出した整備記録の数を実績数として記憶する。そして、実績数/症例数を整備統計情報33に記憶する。統計処理部12は、全ての車型、故障コード、症状及び部品の組み合わせについて、実績数/症例数を算出し、整備統計情報33に保存する。
【0030】
また、統計処理部12は、実績数を症例数で除することで確率を算出する(実績数/症例数×100[%])。統計処理部12は、車型、故障コード、症状、及び実績数/症例数に関連付けて算出した確率を整備統計情報33に保存する。
【0031】
図4の参照して具体的に説明する。まず、統計処理部12は、整備記録情報32から車型「AAA」、故障コード「P244B」及び症状「エンジン系統異常表示」に対応する整備記録を抽出する。抽出された整備記録の数は89件であるとする。次に、統計処理部12は、抽出された89件の整備記録から部品「エンジンECU」に対応する整備記録を抽出する。部品「エンジンECU」に対応する整備記録の数は13件であるとする。この場合には、実績数/症例数は、13/89となる。次に、統計処理部12は、実績数/症例数から「エンジンECU」が故障の原因である確率を算出する。この例では、確率は14%である。そして、統計処理部12は、
図4に示すように、車型「AAA」と、故障コード「P244B」と、症状「エンジン系統異常表示」と、確率「14%」と、実績数/症例数「13/89」とが関連付けられたレコードを統計ID「1001」として生成する。
【0032】
統計処理部12は、車型、故障コード、症状及び部品の全ての組み合わせについて、確率を集計して整備統計情報33を生成する。すなわち、整備統計情報33の確率は、過去の整備記録を集計して生成される。統計処理部12は、定期的に又は新たな整備記録が登録される度に、整備記録情報32に記憶された整備記憶を集計して整備統計情報33を更新する。
【0033】
故障状態取得部13は、整備車両2の故障状態を示す情報を取得する。例えば、整備士3は、整備車両2を点検し、整備車両2で出力された故障コードと、整備車両2の症状を特定する。そして、整備士3は、特定した故障コード及び症状を整備車両2の故障状態を示す情報として端末装置20に入力し、当該故障状態を示す情報を整備支援装置10に送信する。故障状態取得部13は、故障コード及び症状を示す情報を端末装置20から受信する。
【0034】
抽出部14は、故障状態取得部13で受信された故障状態を示す情報に対応する部品を示す情報及び確率を整備統計情報33から抽出する。例えば、端末装置20から故障コード「P0007」及び症状「エンジン系統異常表示」を受信した場合には、抽出部14は、整備統計情報33から故障コード「P244B」及び症状「エンジン系統異常表示」に対応するレコードに含まれる部品「燃料遮断弁」及び確率「12%」を抽出する。抽出された部品「燃料遮断弁」は、故障部品の候補である。
【0035】
画面生成部15は、抽出された部品を示す情報及び確率を含む画面を生成する。上記の例では、画面生成部15は、故障部品の候補として「燃料遮断弁」を示す情報を含み、且つ、確率「12%」を含む画面を生成する。なお、抽出部14によって複数セットの故障部品の候補及び確率が抽出された場合には、画面生成部15は、確率の高い順にソートされた故障部品のリストを含む画面を生成してもよい。送信部16は、画面生成部15によって生成された故障部品の候補及び確率を含む画面を端末装置20に送信する。
【0036】
整備支援装置10から送信された画面は、端末装置20の表示部24に表示される。表示部24に表示される画面には、故障部品の候補と当該故障部品が故障の原因である確率が含まれる。したがって、整備車両2を整備する整備士3は、この情報に基づいて、故障の原因である可能性の高い部品を容易に特定することができる。したがって、迅速に整備車両2を整備することができる。
【0037】
図5は、整備支援システム1を用いた例示的な整備支援方法を示すシーケンス図である。まず、整備車両2を整備する整備士3は、端末装置20を操作して整備支援装置10に整備支援要求を送信する(ステップST1)。整備支援要求を受信すると、整備支援装置10の画面生成部15は、車型を入力するための車型入力画面51を生成し、端末装置20に送信する(ステップST2)。端末装置20は、整備支援装置10から受信した車型入力画面51を表示部24に表示する(ステップST3)。
【0038】
図6は、端末装置20に表示される車型入力画面51の一例を示している。
図6に示すように、車型入力画面51は、整備車両2の車型を入力するための入力欄61と、故障コード取得ボタン62とを含んでいる。整備士3は、端末装置20を操作して整備車両2の車型を入力欄61に入力する。
図6では、車型「AAA」が入力されている。次に、整備士3は、故障コード取得ボタン62を選択し、整備車両2の車型を示す情報を整備支援装置10に送信する(ステップST4)。なお、車型入力画面51には、整備車両2の車番及び登録番号等、他の情報を入力するための入力欄が含まれていてもよい。入力された車番及び登録番号を示す情報は、車型を示す情報と共に整備支援装置10に送信される。
【0039】
次に、整備支援装置10の抽出部14は、記憶部11に記憶された故障コード情報31から車型入力画面51に入力された車型に対応する故障コードの候補を抽出する(ステップST5)。なお、車型に関わらず共通の故障コードが使用される場合には、ステップST2~ステップST4は省略することができる。
【0040】
次に、整備支援装置10の画面生成部15は、故障コードを選択するための故障コード選択画面52を生成し、端末装置20に送信する(ステップST6)。端末装置20は、整備支援装置10から受信した故障コード選択画面52を表示部24に表示する(ステップST7)。
図7は、故障コード選択画面52の一例を示している。
図7に示すように、故障コード選択画面52は、抽出された故障コードの候補の一覧を表示する故障コードリスト71と、症状候補取得ボタン72とを含んでいる。整備士3は、故障コードリスト71の中から整備車両2から出力された故障コードを選択する。
図7では、故障コード「P224B」が選択されている。次に、整備士3は、症状候補取得ボタン72を選択して、整備車両2の故障コードを示す情報を整備支援装置10に送信する(ステップST8)。
【0041】
故障コードを受信すると、整備支援装置10の抽出部14は、ステップST8で受信した故障コードに対応する症状の候補を整備統計情報33から抽出する(ステップST9)。上述した例では、抽出部14は、整備統計情報33から故障コード「P244B」に対応するレコードを抽出し、当該レコードに含まれる症状を症状の候補として特定する。
【0042】
次に、画面生成部15は、故障の症状を選択するための症状選択画面53を生成し、端末装置20に送信する(ステップST10)。端末装置20は、整備支援装置10から受信した症状選択画面53を表示部24に表示する(ステップST11)。
図8は、症状選択画面53の一例を示している。
図8に示すように、症状選択画面53は、抽出された症状の候補の一覧を表示する症状候補リスト81と、故障部品推定ボタン82とを含んでいる。整備士3は、症状候補リスト81の中から整備車両2の症状を選択する。
図8では、症状候補リスト81に表示された複数の症状の中から症状「エンジン系統異常表示」が選択されている。次に、整備士3は、故障部品推定ボタン82を選択して、整備車両2の症状を示す情報を整備支援装置10に送信する(ステップST12)。
【0043】
整備車両2の症状を示す情報を受信すると、整備支援装置10の抽出部14は、ステップST8で受信した故障コード、及び、ステップST12で受信した症状に対応する部品及び確率を示す情報を整備統計情報33から抽出する(ステップST13)。このとき、抽出部14は、部品及び確率を示す情報に加えて、実績数/症例数を示す情報を整備統計情報33から抽出してもよい。
【0044】
上述した例では、抽出部14は、整備統計情報33から故障コード「P244B」、症状「エンジン系統異常表示」に対応するレコードを抽出し、当該レコードに含まれる部品及び確率を特定する。例えば、
図4に示す整備統計情報33では、統計ID「1001」、「1002」、「1003」、「1004」、「1005」、「1006」に対応する6つのレコードが故障コード「P244B」、及び、症状「エンジン系統異常表示」を含んでいる。したがって、抽出部14は、これらのレコードに含まれる部品「エンジンECU」、「DPR」、「燃料遮断弁」、「DPR差圧センサ」、「電子制御ファンクラッチ」、「燃料添加弁」、及び、確率「14%」、「36%」、「13%」、「13%」、「9%」、「9%」をそれぞれ抽出する。上記のように抽出された部品は故障部品の候補であり、確率は故障部品の候補が故障の原因である確率である。
【0045】
次に、画面生成部15は、故障部品の候補及び確率を含む故障部品表示画面54を生成し、端末装置20に送信する(ステップST14)。端末装置20に送信された故障部品表示画面54は、端末装置20の表示部24に表示される(ステップST15)。
図9は、故障部品表示画面54の一例を示している。
図9に示すように、故障部品表示画面54は、ステップST13で抽出された故障部品の候補の一覧と、確率と、実績数/症例数とを対応付けて表示する故障部品候補リスト91を含んでいる。なお、
図9に示すように、故障部品候補リスト91は、故障部品の候補を確率の高い順に並べて表示してもよい。
【0046】
図9では、ステップST13で抽出された「DPR」、「エンジンECU」、「DPR差圧センサ」、「燃料遮断弁」、「電子制御ファンクラッチ」、「燃料添加弁」が故障部品候補リスト91に故障部品の候補として表示されている。これらの故障部品の候補が故障の原因である確率は、それぞれ「36%」、「14%」、「13%」、「13%」、「9%」、「9%」である。これらの確率は、過去の整備実績に基づいて算出されたものであるので信頼性の高い情報である。
【0047】
整備士3は、端末装置20の表示部24に表示された故障部品の候補及び確率を参考に整備車両2を整備する。例えば、整備士3は、故障部品である可能性の高い部品を優先的に点検する。
図9に示す例では、整備士3は、まず故障部品である確率の最も高い「DPR」を点検し、「DPR」に異常がない場合には、次に確率の高い「エンジンECU」を点検する。このように、確率の高い順に部品を点検することで、故障部品を早期に特定することが可能となる。そして、故障部品の修理又は交換等することで整備車両2を修理することができ、その結果、所有者に早期に整備車両2を返却することが可能となる。さらに、故障の確率の高い部品について優先的に点検することで、作業品質及び効率性を向上させることができる。
【0048】
なお、故障部品表示画面54は、故障部品の候補及び確率を示す情報に加えて、整備車両2の車型及び故障コードに関連する整備マニュアルへのリンクを含んでいてもよい。例えば、
図9に示す故障部品表示画面54は、整備車両2の故障状態に応じた整備マニュアルへのリンクを提供するリンクボタン92,93,94を更に含んでいる。例えば、整備士3がリンクボタン92,93,94の何れかを選択すると、選択したリンクボタンに応じて整備車両2の車型及び故障コードに関連する整備マニュアルが表示される。車型及び故障コードに関連する整備マニュアルへのリンクを表示することで、整備マニュアルを参照する際に車型及び故障コードを再入力しなくてよいため、整備の作業効率を向上させることができる。
【0049】
以上、種々の実施形態に係る整備支援システムについて説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。例えば、
図3及び
図4に示す整備記録情報32及び整備統計情報33は、1つの故障コード及び1つの症状を項目として含んでいるが、複数の故障コード及び複数の症状を含んでいてもよい。この場合には、
図7に示す故障コード選択画面52、又は、
図8に示す症状選択画面53で複数の故障コード又は複数の症状を選択し、複数の故障コード又は複数の症状に基づいて故障部品の候補を抽出するようにしてもよい。複数の故障コード及び複数の症状を用いることで、故障部品をより高い精度で推定することができる。
【0050】
また、上述した実施形態では、車両の故障状態を示す情報として故障コード及び故障の症状を使用しているが、一実施形態では、故障コード及び故障の症状の一方のみを用いて故障部品の候補及びその確率を抽出してもよい。また、車両の故障状態を示す情報であれば、故障コード及び症状とは異なる情報を用いて故障部品の候補及びその確率を抽出することもできる。
【0051】
また、上述した実施形態では、端末装置20の表示部24に故障部品表示画面54を表示しているが、整備支援システム1は、端末装置20を備えず、整備支援装置10の表示部に故障部品表示画面54を表示してもよい。例えば、整備支援装置10は入力部及び表示部を備え、当該入力部を用いて故障状態を示す情報を入力して故障部品の候補を示す情報を抽出し、抽出された故障部品の候補を示す情報を整備支援装置10の表示部に表示してもよい。なお、故障部品の候補を示す情報は、整備車両を担当する担当者や整備車両を担当するシステム利用者等、整備士以外の者に提示されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…整備支援システム、2…整備車両、10…整備支援装置、11…記憶部、13…故障状態取得部、14…抽出部、24…表示部、33…整備統計情報。