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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089136
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】液圧システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/08 20060101AFI20240626BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20240626BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F15B11/08 C
F15B11/00 N
F15B11/02 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204317
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 良
(72)【発明者】
【氏名】田中 英紀
(72)【発明者】
【氏名】三井 広明
【テーマコード(参考)】
3H089
【Fターム(参考)】
3H089AA86
3H089BB11
3H089BB21
3H089CC01
3H089DA02
3H089DA03
3H089DA06
3H089DA14
3H089DB03
3H089DB33
3H089DB37
3H089DB44
3H089DB48
3H089DB54
3H089DC02
3H089DC04
3H089EE36
3H089FF07
3H089GG02
(57)【要約】
【課題】第1両方向ポンプに対して第2両方向ポンプが付加された構成においてロッド側およびヘッド側のうちの圧力の低い方に圧力の閉じ込みが発生することを簡易的に防止することができる液圧システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る液圧システム1Aは、ヘッド側ライン21およびロッド側ライン22により片ロッドシリンダ4と接続される第1両方向ポンプ2と、第1給排ライン31によりヘッド側ライン21と接続される第2両方向ポンプ3と、第2給排ライン71により第2両方向ポンプ3と接続されるアキュムレータ7を含む。さらに、液圧システム1Aは、ヘッド側ライン21、ロッド側ライン22および第2給排ライン71と接続される低圧選択弁6を含む。第2給排ライン71は、中継ライン72により、ヘッド側ライン21とロッド側ライン22とを接続するブリッジライン54における一対のチェック弁55,56の間の部分と接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド側室およびロッド側室を含む片ロッドシリンダ用の液圧システムであって、
ヘッド側ラインにより前記ヘッド側室と接続されるとともに、ロッド側ラインにより前記ロッド側室と接続される第1両方向ポンプと、
第1給排ラインにより前記ヘッド側ラインと接続される第2両方向ポンプと、
第2給排ラインにより前記第2両方向ポンプと接続されるアキュムレータと、
前記第1両方向ポンプおよび前記第2両方向ポンプを同方向に駆動する電動モータと、
第1排出ラインにより前記ヘッド側ラインと接続され、第2排出ラインにより前記ロッド側ラインと接続され、第3排出ラインにより前記第2給排ラインと接続され、前記ロッド側室の圧力が前記ヘッド側室の圧力よりも低いときは前記第2排出ラインを前記第3排出ラインと連通させ、前記ヘッド側室の圧力が前記ロッド側室の圧力よりも低いときは前記第1排出ラインを前記第3排出ラインと連通させる低圧選択弁と、
前記ヘッド側ラインと前記ロッド側ラインとを接続するブリッジラインに設けられた、互いに逆向きの一対のチェック弁と、を備え、
前記第2給排ラインは、中継ラインにより前記ブリッジラインにおける前記一対のチェック弁の間の部分と接続されている、液圧システム。
【請求項2】
吸入ラインによりタンクと接続されるとともに、吐出ラインにより前記第2給排ライン、前記第3排出ラインおよび前記中継ラインのいずれかと接続されるチャージポンプをさらに備える、請求項1に記載の液圧システム。
【請求項3】
前記吐出ラインから分岐して前記タンクにつながるリリーフラインに設けられたリリーフ弁をさらに備える、請求項2に記載の液圧システム。
【請求項4】
前記第2給排ライン、前記第3排出ラインおよび前記中継ラインのいずれかから分岐して前記タンクにつながるリリーフラインに設けられたリリーフ弁をさらに備える、請求項2に記載の液圧システム。
【請求項5】
前記チャージポンプと前記アキュムレータとの間に介在するクーラーをさらに備え、
前記リリーフ弁は、前記アキュムレータを挟んで前記クーラーと反対側に位置する、請求項4に記載の液圧システム。
【請求項6】
前記第3排出ラインに設けられたリリーフ弁をさらに備える、請求項1~5の何れか一項に記載の液圧システム。
【請求項7】
前記低圧選択弁は、電磁式の三位置弁である、請求項1~5の何れか一項に記載の液圧システム。
【請求項8】
前記低圧選択弁は、電磁式の二位置弁である第1電磁弁および第2電磁弁を含み、前記第1電磁弁に前記第1排出ラインおよび前記第3排出ラインが接続され、前記第2電磁弁に前記第2排出ラインおよび前記第3排出ラインが接続される、請求項1~5の何れか一項に記載の液圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、片ロッドシリンダ用の液圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、片ロッドシリンダと閉ループを形成するように接続される両方向ポンプを含む片ロッドシリンダ用の液圧システムが知られている。例えば、特許文献1には、図7に示すような液圧システム100が開示されている。
【0003】
この液圧システム100は、第1両方向ポンプ110および第2両方向ポンプ120を含む。第1両方向ポンプ110は、ヘッド側ライン111により片ロッドシリンダ200のヘッド側室210と接続されるとともに、ロッド側ライン112により片ロッドシリンダ200のロッド側室220と接続される。第2両方向ポンプ120は、片ロッドシリンダ200のヘッド側室210とロッド側室220の間の流量差、すなわち流入流量と流出流量との差を解消するためのものであり、給排ライン121によりヘッド側ライン111と接続される。
【0004】
第1両方向ポンプ110および第2両方向ポンプ120は、電動モータ130により同方向に駆動される。より詳しくは、電動モータ130は、片ロッドシリンダ200を伸長させる際、すなわちロッドを前進させる際に第1両方向ポンプ110および第2両方向ポンプ120を第1方向に駆動し、片ロッドシリンダ200を短縮させる際、すなわちロッドを後退させる際に第1両方向ポンプ110および第2両方向ポンプ120を第1方向と反対の第2方向に駆動する。第1両方向ポンプ110および第2両方向ポンプ120が第1方向に駆動されるとそれらがヘッド側室210へ作動液を吐出し、第1両方向ポンプ110および第2両方向ポンプ120が第2方向に駆動されるとそれらがヘッド側室210から作動液を吸入する。また、液圧システム100では、第2両方向ポンプ120が可変容量型ポンプであり、第2両方向ポンプ120の容量がレギュレータ140によって変更される。
【0005】
液圧システム100では、片ロッドシリンダ200への流入流量または片ロッドシリンダ200からの流出流量に過不足がないときの第2両方向ポンプ120の容量を基準容量とすると、片ロッドシリンダ200の伸長時に第2両方向ポンプ120の容量が基準容量よりも多い場合はロッド側およびヘッド側のうちの圧力の低い方に圧力の閉じ込みが発生する。ロッド側はロッド側室220およびロッド側ライン112であり、ヘッド側はヘッド側室210およびヘッド側ライン111である。逆に、片ロッドシリンダ200の伸長時に第2両方向ポンプ120の容量が基準容量よりも少ない場合はロッド側およびヘッド側のうちの圧力の低い方にキャビテーションが発生する。また、片ロッドシリンダ200の短縮時には、第2両方向ポンプ120の容量が基準容量よりも多い場合はロッド側およびヘッド側のうちの圧力の低い方にキャビテーションが発生し、第2両方向ポンプ120の容量が基準容量よりも少ない場合はロッド側およびヘッド側のうちの圧力の低い方に圧力の閉じ込みが発生する。レギュレータ140は、これらの圧力の閉じ込みまたはキャビテーションが抑制されるように、片ロッドシリンダ200のヘッド側室210またはロッド側室220の圧力に基づいて制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-245740号公報
【特許文献2】特開2002-54602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1の液圧システム100では、ロッド側およびヘッド側のうちの圧力の低い方に圧力の閉じ込みが発生することが制御的に抑制される。これに対し、ロッド側およびヘッド側のうちの圧力の低い方に圧力の閉じ込みが発生することを簡易的に防止したいという要望がある。
【0008】
なお、特許文献2の図2には、従来技術として、片ロッドシリンダに対して両方向ポンプが1つだけ用いられるとともに、ヘッド側ラインとロッド側ラインのうちの圧力の低い方からタンクへの作動液の排出を可能とする低圧選択弁(特許文献2では「フラッシング弁」と称呼)が採用された液圧回路が開示されている。しかし、この液圧回路は、特許文献1の液圧システム100のように第1両方向ポンプに対して第2両方向ポンプが付加されたものではない。
【0009】
そこで、本開示は、第1両方向ポンプに対して第2両方向ポンプが付加された構成においてロッド側およびヘッド側のうちの圧力の低い方に圧力の閉じ込みが発生することを簡易的に防止することができる液圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、ヘッド側室およびロッド側室を含む片ロッドシリンダ用の液圧システムであって、ヘッド側ラインにより前記ヘッド側室と接続されるとともに、ロッド側ラインにより前記ロッド側室と接続される第1両方向ポンプと、第1給排ラインにより前記ヘッド側ラインと接続される第2両方向ポンプと、第2給排ラインにより前記第2両方向ポンプと接続されるアキュムレータと、前記第1両方向ポンプおよび前記第2両方向ポンプを同方向に駆動する電動モータと、第1排出ラインにより前記ヘッド側ラインと接続され、第2排出ラインにより前記ロッド側ラインと接続され、第3排出ラインにより前記第2給排ラインと接続され、前記ロッド側室の圧力が前記ヘッド側室の圧力よりも低いときは前記第2排出ラインを前記第3排出ラインと連通させ、前記ヘッド側室の圧力が前記ロッド側室の圧力よりも低いときは前記第1排出ラインを前記第3排出ラインと連通させる低圧選択弁と、前記ヘッド側ラインと前記ロッド側ラインとを接続するブリッジラインに設けられた、互いに逆向きの一対のチェック弁と、を備え、前記第2給排ラインは、中継ラインにより前記ブリッジラインにおける前記一対のチェック弁の間の部分と接続されている、液圧システムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、第1両方向ポンプに対して第2両方向ポンプが付加された構成においてロッド側およびヘッド側のうちの圧力の低い方に圧力の閉じ込みが発生することを簡易的に防止することができる液圧システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る液圧システムの概略構成図である。
図2】第2実施形態に係る液圧システムの概略構成図である。
図3】第3実施形態に係る液圧システムの概略構成図である。
図4】第4実施形態に係る液圧システムの概略構成図である。
図5】変形例の低圧選択弁を示す図である。
図6】別の変形例の低圧選択弁を示す図である。
図7】従来の液圧システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
図1に、第1実施形態に係る液圧システム1Aを示す。この液圧システム1Aは、ヘッド側室4hおよびロッド側室4rを含む片ロッドシリンダ4用の液圧システムである。液圧システム1Aに用いられる作動液は、典型的には油である。
【0014】
具体的に、液圧システム1Aは、片ロッドシリンダ4と閉ループを形成するように接続される第1両方向ポンプ2と、片ロッドシリンダ4のヘッド側室4hとロッド側室4rの間の流量差、すなわち流入流量と流出流量との差を解消するための第2両方向ポンプ3を含む。また、液圧システム1Aは、加圧された作動液を貯留するアキュムレータ7を含む。片ロッドシリンダ4、第1両方向ポンプ2、第2両方向ポンプ3およびアキュムレータ7は、後述する複数のラインと共に閉回路を構成する。
【0015】
より詳しくは、第1両方向ポンプ2は、ヘッド側ライン21により片ロッドシリンダ4のヘッド側室4hと接続されるとともに、ロッド側ライン22により片ロッドシリンダ4のロッド側室4rと接続される。第2両方向ポンプ3は、第1給排ライン31によりヘッド側ライン21と接続されるとともに、第2給排ライン71によりアキュムレータ7と接続される。
【0016】
アキュムレータ7の設定圧は、例えば0.1-2MPaの範囲内である。ここで、「アキュムレータ7の設定圧」とは、アキュムレータ7への作動液の流入が可能となる圧力である。
【0017】
ヘッド側ライン21およびロッド側ライン22には、開閉弁であるロック弁23,24がそれぞれ設けられている。ロック弁23,24は、制御装置10により制御される。なお、図1では、図面の簡略化のために一部の信号線の作図を省略する。制御装置10は、片ロッドシリンダ4を動作させるとき、すなわち伸長または短縮させるときにロック弁23,24を開き、それ以外のときはロック弁23,24を閉じる。
【0018】
ヘッド側ライン21とロッド側ライン22とは、第1ブリッジライン51および第2ブリッジライン54により互いに接続されている。第1ブリッジライン51には一対のリリーフ弁52,53が互いに逆向きに設けられ、第2ブリッジライン54には一対のチェック弁55,56が互いに逆向きに設けられている。
【0019】
図例では第1ブリッジライン51および第2ブリッジライン54がロック弁23,24と第1両方向ポンプ2との間でヘッド側ライン21およびロッド側ライン22と接続されているが、第1ブリッジライン51および第2ブリッジライン54はロック弁23,24と片ロッドシリンダ4との間でヘッド側ライン21およびロッド側ライン22と接続されてもよい。また、第1ブリッジライン51と第2ブリッジライン54の一部同士、例えば両端部同士および中央部同士が互いに合流して共通の流路となってもよい。
【0020】
リリーフ弁52はヘッド側ライン21の圧力が高くなりすぎたときに開き、リリーフ弁53はロッド側ライン22の圧力が高くなりすぎたときに開く。リリーフ弁52,53のリリーフ圧は、例えば25-35MPaの範囲内と比較的に高く設定される。
【0021】
チェック弁55は、第2ブリッジライン54の中央からヘッド側ライン21へ向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止する。チェック弁56は、第2ブリッジライン54の中央からロッド側ライン22へ向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止する。
【0022】
第1ブリッジライン51におけるリリーフ弁52,53の間の部分および第2ブリッジライン54におけるチェック弁55,56の間の部分は、中継ライン72により第2給排ライン71と接続されている。
【0023】
第1両方向ポンプ2および第2両方向ポンプ3は、例えば、アキシャルピストンポンプである。アキシャルピストンポンプは、例えば、斜板ポンプまたは斜軸ポンプである。本実施形態では、第1両方向ポンプ2が固定容量型ポンプであり、第2両方向ポンプ3が可変容量型ポンプである。ただし、第1両方向ポンプ2は可変容量型ポンプであってもよい。あるいは、第1両方向ポンプ2と第2両方向ポンプ3の双方が固定容量型ポンプであってもよい。
【0024】
第2両方向ポンプ3の容量は、レギュレータ35により変更される。レギュレータ35は、制御装置10により制御される。例えば、第2両方向ポンプ3が斜板ポンプである場合、レギュレータ35は、第2両方向ポンプ3の斜板と連結されたサーボピストンに作用する液圧を電気的に変更するものであってもよいし、第2両方向ポンプ3の斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。
【0025】
第1両方向ポンプ2および第2両方向ポンプ3は、電動モータ9により同方向に駆動される。第1両方向ポンプ2および第2両方向ポンプ3は、それらの中心軸が同軸上に並ぶように配置されもよいし、それらの中心軸が平行に並ぶように配置されてもよい。前者はタンデム型、後者はパラレル型である。
【0026】
電動モータ9は、制御装置10により制御される。電動モータ9は、片ロッドシリンダ4を伸長させる際に第1両方向ポンプ2および第2両方向ポンプ3を第1方向に駆動し、片ロッドシリンダ4を短縮させる際に第1両方向ポンプ2および第2両方向ポンプ3を第1方向と反対の第2方向に駆動する。第1両方向ポンプ2および第2両方向ポンプ3が第1方向に駆動されるとそれらがヘッド側室4hへ作動液を吐出し、第1両方向ポンプ2および第2両方向ポンプ3が第2方向に駆動されるとそれらがヘッド側室4hから作動液を吸入する。
【0027】
さらに、本実施形態では、第1排出ライン61によりヘッド側ライン21と接続されるとともに第2排出ライン62によりロッド側ライン22と接続された低圧選択弁6が採用されている。低圧選択弁6は、第3排出ライン63により第2給排ライン71と接続されている。
【0028】
本実施形態では、第3排出ライン63にリリーフ弁64が設けられている。リリーフ弁64は、片ロッドシリンダ4、ヘッド側ライン21、ロッド側ライン22および第1両方向ポンプ3で構成される閉ループ内の低圧をある程度高く保つ役割を果たす。リリーフ弁64のリリーフ圧は、例えば0.1-2MPaの範囲内と比較的に低く設定される。閉ループ内の低圧はアキュムレータ7の設定圧とリリーフ弁64の設定圧の和であり、例えば1-2MPaである。なお、アキュムレータ7の設定圧が比較的に高い場合、リリーフ弁64は省略可能である。
【0029】
低圧選択弁6は、中立位置とヘッド側排出位置とロッド側排出位置との間で切り換えられる。図1では、中央位置が中立位置、右側位置がヘッド側排出位置、左側位置がロッド側排出位置である。中立位置では低圧選択弁6が第1排出ライン61および第2排出ライン62をブロックする。ヘッド側排出位置では低圧選択弁6が第2排出ライン62をブロックしつつ第1排出ライン61を第3排出ライン63と連通させる。ロッド側排出位置では低圧選択弁6が第1排出ライン61をブロックしつつ第2排出ライン62を第3排出ライン63と連通させる。
【0030】
本実施形態では、低圧選択弁6がパイロット式の三位置弁である。このため、低圧選択弁6には、第1パイロットライン65を通じてヘッド側室4hの圧力Phが導かれるとともに、第2パイロットライン66を通じてロッド側室4rの圧力Prが導かれる。第1パイロットライン65は低圧選択弁6を中立位置からロッド側排出位置へ切り換えるためのものであり、第2パイロットライン66は低圧選択弁6を中立位置からヘッド側排出位置へ切り換えるためのものである。図例では第1パイロットライン65および第2パイロットライン66が第1排出ライン61および第2排出ライン62からそれぞれ分岐しているが、第1パイロットライン65がヘッド側ライン21から分岐してもよいし、第2パイロットライン66がロッド側ライン22から分岐してもよい。
【0031】
低圧選択弁6は、ロッド側室4rの圧力Prがヘッド側室4hの圧力Phよりも低いときにロッド側排出位置に切り換えられ、ヘッド側室4hの圧力Phがロッド側室4rの圧力Prよりも低いときにヘッド側排出位置に切り換えられる。本実施形態では、ヘッド側室4hの圧力Phとロッド側室4rの圧力Prとの差圧ΔP、すなわち圧力Phと圧力Prの偏差の絶対値が閾値Pt以上となったときに、低圧選択弁6が中立位置からロッド側排出位置またはヘッド側排出位置に切り換えられる。例えば、閾値Ptは、0.5-3MPaの範囲内である。なお、閾値Ptは、シリンダ伸長時とシリンダ短縮時とで異なってもよい。
【0032】
次に、制御装置10が行う制御の一例を説明する。ただし、制御装置10が行う制御は以下で説明するものに限られず、制御装置10は別の制御を行ってもよい。
【0033】
制御装置10に関し、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウエアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウエアである。ハードウエアは、本明細書に開示されているハードウエアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウエアであってもよい。ハードウエアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウエアとソフトウエアの組み合わせであり、ソフトウエアはハードウエアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0034】
制御装置10には、片ロッドシリンダ4に対する伸長指令である第1操作信号と、片ロッドシリンダ4に対する短縮指令である第2操作信号が入力される。また、制御装置10には、圧力センサで計測されるヘッド側室4hの圧力Phおよびロッド側室4rの圧力Pr、または差圧計で計測されるヘッド側室4hの圧力Phとロッド側室4rの圧力Prとの差圧ΔPが入力される。
【0035】
1.シリンダ伸長
制御装置10へ第1操作信号が入力されると、制御装置10は電動モータ9を第1方向に回転させる。これにより、第1両方向ポンプ2および第2両方向ポンプ3が第1方向に駆動され、第1両方向ポンプ2がロッド側ライン22を通じて作動液を吸入するとともに、第2両方向ポンプ3が第2給排ライン71を通じて作動液を吸入する。また、第1両方向ポンプ2はヘッド側ライン21を通じて作動液を吐出し、第2両方向ポンプ3は第1給排ライン31を通じて作動液を吐出する。
【0036】
ヘッド側室4hの圧力Phとロッド側室4rの圧力Prとの差圧ΔPが閾値Pt未満である場合、制御装置10は第2両方向ポンプ3の容量q2が基準容量qrとなるようにレギュレータ35を制御する。基準容量qrは、第1両方向ポンプ2の容量q1にロッド側室4rの受圧面積Arに対する片ロッドシリンダ4のロッドの断面積Acの比を乗算したものである。qr=Ac/Ar×q1。すなわち、q2=qrである場合、理論的には片ロッドシリンダ4への流入流量または片ロッドシリンダ4からの流出流量に過不足がない。このため、第2ブリッジライン54の一部および中継ライン72および第2給排ライン71の一部を通じたアキュムレータ7からヘッド側ライン21またはロッド側ライン22への作動液の供給、および第1排出ライン61または第2排出ライン62を通じたヘッド側ライン21またはロッド側ライン22からの作動液の排出は行われない。
【0037】
一方、差圧ΔPが閾値Pt以上である場合、制御装置10は第2両方向ポンプ3の容量q2が基準容量qrよりも第1所定量Δq1だけ多くなるようにレギュレータ35を制御する。q2=qr+Δq1。例えば、Δq1は、qrの1-10%の範囲内である。
【0038】
例えば、片ロッドシリンダ4に短縮方向への負荷がかかっている場合にはヘッド側室4hの圧力Phがロッド側室4rの圧力Prよりも閾値Pt以上高くなり、片ロッドシリンダ4に伸長方向への負荷がかかっている場合にはロッド側室4rの圧力Prがヘッド側室4hの圧力Prよりも閾値Pt以上高くなる。
【0039】
ヘッド側室4hの圧力Phがロッド側室4rの圧力Prよりも閾値Pt以上高くなる場合、低圧選択弁6がロッド側排出位置に切り換えられる。これにより、第1所定量Δq1に応じた余剰分がロッド側ライン22から第2排出ライン62、低圧選択弁6、第3排出ライン63および第2給排ライン71の一部を通じてアキュムレータ7へ排出される。
【0040】
逆に、ロッド側室4rの圧力Prがヘッド側室4hの圧力Prよりも閾値Pt以上高くなる場合、低圧選択弁6がヘッド側排出位置に切り換えられる。これにより、第1所定量Δq1に応じた余剰分がヘッド側ライン21から第1排出ライン61、低圧選択弁6、第3排出ライン63および第2給排ライン71の一部を通じてアキュムレータ7へ排出される。
【0041】
2.シリンダ短縮
制御装置10へ第2操作信号が入力されると、制御装置10は電動モータ9を第2方向に回転させる。これにより、第1両方向ポンプ2および第2両方向ポンプ3が第2方向に駆動され、第1両方向ポンプ2がヘッド側ライン21を通じて作動液を吸入するとともに、第2両方向ポンプ3が第1給排ライン31を通じて作動液を吸入する。また、第1両方向ポンプ2はロッド側ライン22を通じて作動液を吐出し、第2両方向ポンプ3は第2給排ライン71を通じて作動液を吐出する。
【0042】
ヘッド側室4hの圧力Phとロッド側室4rの圧力Prとの差圧ΔPが閾値Pt未満である場合、制御装置10は第2両方向ポンプ3の容量q2が基準容量qrとなるようにレギュレータ35を制御する。すなわち、q2=qrである場合、理論的には片ロッドシリンダ4への流入流量または片ロッドシリンダ4からの流出流量に過不足がない。このため、第2ブリッジライン54の一部および中継ライン72および第2給排ライン71の一部を通じたアキュムレータ7からヘッド側ライン21またはロッド側ライン22への作動液の供給、および第1排出ライン61または第2排出ライン62を通じたヘッド側ライン21またはロッド側ライン22からの作動液の排出は行われない。
【0043】
一方、差圧ΔPが閾値Pt以上である場合、制御装置10は第2両方向ポンプ3の容量q2が基準容量qrよりも第2所定量Δq2だけ少なくなるようにレギュレータ35を制御する。q2=qr-Δq2。第2所定量Δq2は、上述した第1所定量Δq1と同じであっても異なってもよい。例えば、Δq2は、qrの1~10%の範囲内である。
【0044】
例えば、片ロッドシリンダ4に伸長方向への負荷がかかっている場合にはロッド側室4rの圧力Prがヘッド側室4hの圧力Phよりも閾値Pt以上高くなり、片ロッドシリンダ4に短縮方向への負荷がかかっている場合にはヘッド側室4hの圧力Phがロッド側室4rの圧力Prよりも閾値Pt以上高くなる。
【0045】
ロッド側室4rの圧力Prがヘッド側室4hの圧力Prよりも閾値Pt以上高くなる場合、低圧選択弁6がヘッド側排出位置に切り換えられる。これにより、第2所定量Δq2に応じた余剰分がヘッド側ライン21から第1排出ライン61、低圧選択弁6、第3排出ライン63および第2給排ライン71の一部を通じてアキュムレータ7へ排出される。
【0046】
逆に、ヘッド側室4hの圧力Phがロッド側室4rの圧力Prよりも閾値Pt以上高くなる場合、低圧選択弁6がロッド側排出位置に切り換えられる。これにより、第2所定量Δq2に応じた余剰分がロッド側ライン22から第2排出ライン62、低圧選択弁6、第3排出ライン63および第2給排ライン71の一部を通じてアキュムレータ7へ排出される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の液圧システム1Aでは、低圧選択弁6が設けられているので、第1両方向ポンプ2に対して第2両方向ポンプ3が付加された構成においてロッド側およびヘッド側のうちの圧力の低い方に圧力の閉じ込みが発生することを簡易的に防止することができる。ロッド側はロッド側室4rおよびロッド側ライン22であり、ヘッド側はヘッド側室4hおよびヘッド側ライン21である。
【0048】
しかも、第2両方向ポンプ3は第2給排ライン71によりアキュムレータ7と接続されているので、第2両方向ポンプ3が第1給排ライン31を通じて作動液を吐出する方向に回転し始めるときに第2両方向ポンプ3の吸入側での圧力の低下によるキャビテーションを防止することができる。さらには、第1両方向ポンプ2の回転開始時に吸入側への作動液の戻りの遅れによって吸入側の圧力が低下したときには、アキュムレータ7から加圧された作動液がチェック弁55または56を介して吸入側に供給されるので、第1両方向ポンプ2の吸入側でのキャビテーションも防止することができる。
【0049】
また、本実施形態では、第3排出ライン63にリリーフ弁64が設けられているので、ヘッド側ライン21またはロッド側ライン22から第1排出ライン61または第2排出ライン62を通じて作動液が排出されるときの圧力を、アキュムレータ7の設定圧とは別に設定することができる。
【0050】
<第2実施形態>
図2に、第2実施形態に係る液圧システム1Bを示す。なお、本実施形態ならびに後述する第3実施形態および第4実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0051】
液圧システム1Bが第1実施形態の液圧システム1Aと異なる点は、タンク11およびチャージポンプ8をさらに含む点である。チャージポンプ8は、吸入ライン81によりタンク11と接続されるとともに、吐出ライン82により第2給排ライン71と接続されている。ただし、吐出ライン82は必ずしも第2給排ライン71に接続される必要はなく、リリーフ弁64と第2給排ライン71の間で第3排出ライン63に接続されてもよいし、中継ライン72に接続されてもよい。
【0052】
吐出ライン82には、チャージポンプ8から第2給排ライン71へ向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止するチェック弁83が設けられている。また、吐出ライン82からはチャージポンプ8とチェック弁83の間でリリーフライン84が分岐しており、リリーフライン84はタンク11へつながっている。
【0053】
リリーフライン84には、リリーフ弁85が設けられている。リリーフ弁85のリリーフ圧は、例えば0.1-2MPaの範囲内である。
【0054】
本実施形態のようにチャージポンプ8が設けられていれば、片ロッドシリンダ4、第1両方向ポンプ2、第2両方向ポンプ3およびアキュムレータ7で構成される閉回路内の作動液の量が減少したときに、作動液を補給することができる。例えば、第1両方向ポンプ2および第2両方向ポンプ3が外部ドレン式である場合には、閉回路内の作動液の量が徐々に減少する。
【0055】
チャージポンプ8は手動で操作されてもよいが、制御装置10がチャージポンプ8を制御する場合、例えば、アキュムレータ7内の作動液の量が所定値を下回った場合や、閉回路内の所定位置の圧力が所定値を下回った場合に、制御装置10がチャージポンプ8を稼働させてもよい。
【0056】
なお、吐出ライン82は、必ずしも第2給排ライン71に常時接続されている必要はなく、作動液を補給するときにだけ第2給排ライン71に接続されてもよい。また、第1実施形態で説明したのと同様に、アキュムレータ7の設定圧が比較的に高い場合、リリーフ弁64は省略可能である。リリーフ弁64が省略可能である点は、後述する第3実施形態および第4実施形態でも同様である。
【0057】
<第3実施形態>
図3に、第3実施形態に係る液圧システム1Cを示す。液圧システム1Cが第2実施形態の液圧システム1Bと異なる点は、吐出ライン82がリリーフ弁64と第2給排ライン71の間で第3排出ライン63に接続されている点と、リリーフライン84が第2給排ライン71から分岐する点である。換言すれば、リリーフライン84は第3排出ライン63の一部および第2給排ライン71の一部を挟んで吐出ライン82と反対側で第2給排ライン71から分岐している。
【0058】
ただし、リリーフライン84は、第3排出ライン63の一部、第2給排ライン71の一部および中継ライン72の一部を挟んで吐出ライン82と反対側で中継ライン72から分岐してもよい。あるいは、図3とは逆に、吐出ライン82が第2給排ライン71または中継ライン72に接続され、リリーフライン84がリリーフ弁64と第2給排ライン71の間で第3排出ライン63から分岐してもよい。
【0059】
本実施形態では、チャージポンプ8が常時稼働する。つまり、第2両方向ポンプ3が停止中は、図3中に実線の矢印で示すように、チャージポンプ8から吐出された作動液がアキュムレータ7へ流入し、アキュムレータ7が満杯となった後は、タンク11内の作動液が吸入ライン81、チャージポンプ8、吐出ライン82、第3排出ライン63の一部、第2給排ライン71の一部、リリーフライン84をこの順に通過するように循環する。
【0060】
一方、第2両方向ポンプ3が第1給排ライン31を通じて作動液を吐出する方向に回転すると、図3中に破線の矢印で示すように、第2両方向ポンプ3にはチャージポンプ8およびアキュムレータ7から作動液が供給される。
【0061】
本実施形態のような構成であれば、チャージポンプ8によって、作動液を吐出ライン82から、片ロッドシリンダ4、第1両方向ポンプ2、第2両方向ポンプ3およびアキュムレータ7で構成される閉回路の一部を通ってリリーフライン84へ流れるように循環させることができる。これにより、閉回路内の作動液を冷却することができる。
【0062】
<第4実施形態>
図4に、第4実施形態に係る液圧システム1Dを示す。液圧システム1Dが第3実施形態の液圧システム1Cと異なる点は、アキュムレータ7が第2両方向ポンプ3の近傍に配置されている点と、チャージポンプ8とアキュムレータ7との間にクーラー12が介在する点と、リリーフライン84が中継ライン72から分岐する点である。
【0063】
本実施形態では、クーラー12が第3排出ライン63に設けられている。また、本実施形態では、リリーフ弁85がアキュムレータ7を挟んでクーラー12と反対側に位置する。つまり、チャージポンプ8から吐出されてクーラー12を通過した作動液は、第2給排ライン71におけるアキュムレータ7に隣接する部分を流れた後に、中継ライン72の一部を経てリリーフライン84に流入する。
【0064】
本実施形態では、第3実施形態で説明した閉回路内の作動液の冷却効果をクーラー12によって向上させることができる。しかも、アキュムレータ7がクーラー12とリリーフ弁85の間にあるので、作動液が循環する際に、アキュムレータ7に貯留される作動液も冷却することができる。
【0065】
さらに、本実施形態ではクーラー12が第3排出ライン63に設けられているので、作動液が第3排出ライン63を通じてアキュムレータ7へ戻される際にも冷却される。ただし、作動液の循環時の冷却効果を向上させるという観点からは、クーラー12は吐出ライン82などに設けられてもよい。
【0066】
<その他の実施形態>
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0067】
例えば、パイロット式の低圧選択弁6に換えて、図5に示すような電磁式の三位置弁である低圧選択弁6Aが採用されてもよい。あるいは、図6に示すような電磁式の二位置弁である第1電磁弁6aおよび第2電磁弁6bを含む低圧選択弁6Bが採用されてもよい。第1電磁弁6aには第1排出ライン61および第3排出ライン63が接続され、第2電磁弁6bには第2排出ライン62および第3排出ライン63が接続される。
【0068】
<まとめ>
第1の態様として、本開示は、ヘッド側室およびロッド側室を含む片ロッドシリンダ用の液圧システムであって、ヘッド側ラインにより前記ヘッド側室と接続されるとともに、ロッド側ラインにより前記ロッド側室と接続される第1両方向ポンプと、第1給排ラインにより前記ヘッド側ラインと接続される第2両方向ポンプと、第2給排ラインにより前記第2両方向ポンプと接続されるアキュムレータと、前記第1両方向ポンプおよび前記第2両方向ポンプを同方向に駆動する電動モータと、第1排出ラインにより前記ヘッド側ラインと接続され、第2排出ラインにより前記ロッド側ラインと接続され、第3排出ラインにより前記第2給排ラインと接続され、前記ロッド側室の圧力が前記ヘッド側室の圧力よりも低いときは前記第2排出ラインを前記第3排出ラインと連通させ、前記ヘッド側室の圧力が前記ロッド側室の圧力よりも低いときは前記第1排出ラインを前記第3排出ラインと連通させる低圧選択弁と、前記ヘッド側ラインと前記ロッド側ラインとを接続するブリッジラインに設けられた、互いに逆向きの一対のチェック弁と、を備え、前記第2給排ラインは、中継ラインにより前記ブリッジラインにおける前記一対のチェック弁の間の部分と接続されている、液圧システムを提供する。
【0069】
上記の構成によれば、低圧選択弁が設けられているので、第1両方向ポンプに対して第2両方向ポンプが付加された構成においてロッド側およびヘッド側のうちの圧力の低い方に圧力の閉じ込みが発生することを簡易的に防止することができる。しかも、第2両方向ポンプは第2給排ラインによりアキュムレータと接続されているので、第2両方向ポンプが第1給排ラインを通じて作動液を吐出する方向に回転し始めるときに第2両方向ポンプの吸入側での圧力の低下によるキャビテーションを防止することができる。さらには、第1両方向ポンプの回転開始時に吸入側への作動液の戻りの遅れによって吸入側の圧力が低下したときには、アキュムレータから加圧された作動液がチェック弁を介して吸入側に供給されるので、第1両方向ポンプの吸入側でのキャビテーションも防止することができる。
【0070】
第2の態様として、第1の態様において、上記の液圧システムは、吸入ラインによりタンクと接続されるとともに、吐出ラインにより前記第2給排ライン、前記第3排出ラインおよび前記中継ラインのいずれかと接続されるチャージポンプをさらに備えてもよい。この構成によれば、閉回路内の作動液の量が減少したときに、作動液を補給することができる。
【0071】
第3の態様として、第2の態様において、例えば、上記の液圧システムは、前記吐出ラインから分岐して前記タンクにつながるリリーフラインに設けられたリリーフ弁をさらに備えてもよい。
【0072】
第4の態様として、第2の態様において、上記の液圧システムは、前記第2給排ライン、前記第3排出ラインおよび前記中継ラインのいずれかから分岐して前記タンクにつながるリリーフラインに設けられたリリーフ弁をさらに備えてもよい。この構成によれば、チャージポンプによって、作動液を吐出ラインから閉回路の一部を通ってリリーフラインへ流れるように循環させることができる。これにより、閉回路内の作動液を冷却することができる。
【0073】
第5の態様として、第4の態様において、上記の液圧システムは、前記チャージポンプと前記アキュムレータとの間に介在するクーラーをさらに備え、前記リリーフ弁は、前記アキュムレータを挟んで前記クーラーと反対側に位置してもよい。この構成によれば、クーラーによって、閉回路内の作動液の冷却効果を向上させることができる。しかも、アキュムレータがクーラーとリリーフ弁の間にあるので、作動液が循環する際に、アキュムレータに貯留される作動液も冷却することができる。
【0074】
第6の態様として、第1乃至第5の態様の何れかにおいて、上記の液圧システムは、前記第3排出ラインに設けられたリリーフ弁をさらに備えてもよい。この構成によれば、ヘッド側ラインまたはロッド側ラインから第1排出ラインまたは第2排出ラインを通じて作動液が排出されるときの圧力を、アキュムレータの設定圧とは別に設定することができる。
【0075】
第7の態様として、第1乃至第6の態様の何れかにおいて、例えば、前記低圧選択弁は、電磁式の三位置弁であってもよい。
【0076】
第8の態様として、第1乃至第7の態様の何れかにおいて、例えば、前記低圧選択弁は、電磁式の二位置弁である第1電磁弁および第2電磁弁を含み、前記第1電磁弁に前記第1排出ラインおよび前記第3排出ラインが接続され、前記第2電磁弁に前記第2排出ラインおよび前記第3排出ラインが接続されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1A乃至1D 液圧システム
11 タンク
12 クーラー
2 第1両方向ポンプ
21 ヘッド側ライン
22 ロッド側ライン
3 第2両方向ポンプ
31 第1給排ライン
4 片ロッドシリンダ
4h ヘッド側室
4r ロッド側室
51,54 ブリッジライン
55,56 チェック弁
6,6A,6B 低圧選択弁
61 第1排出ライン
62 第2排出ライン
63 第3排出ライン
64 リリーフ弁
7 アキュムレータ
71 第2給排ライン
72 中継ライン
8 チャージポンプ
81 吸入ライン
82 吐出ライン
84 リリーフライン
85 リリーフ弁
9 電動モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7