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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089148
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】医療用噴霧デバイスの先端部分
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20240626BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61B17/00 400
B05B7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204335
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】松田 和久
(72)【発明者】
【氏名】入江 俊也
(72)【発明者】
【氏名】大河内 竣介
【テーマコード(参考)】
4C160
4F033
【Fターム(参考)】
4C160MM18
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB17
4F033QD02
4F033QD15
4F033QD23
4F033QE06
4F033QE09
4F033QE14
(57)【要約】
【課題】複数の液状物を体内の目的とする部位へ安定して噴射することのできる、新規な構造の医療用噴霧デバイスの先端部分を提供する。
【解決手段】液流路30とガス流路32とを組み合わせた複合流路34が並列的に複数設けられたチューブ状の流路部材14の先端部分を構成して体内に挿入され、流路部材14の各複合流路34の液流路30で供給される液状物36a,36bをガス流路32で供給されるガスによって霧状にして体内で吐出させる医療用噴霧デバイス12の先端部分10であって、各複合流路34の先端側には先端内部空間68が設けられており、先端内部空間68の基端部には液流路30とガス流路32の各先端開口部70,72が開口しており、先端内部空間68の先端は先端壁26によって閉じられており、先端内部空間68の周壁24には、側方に向かって開口する噴射孔28が設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液流路とガス流路とを組み合わせた複合流路が並列的に複数設けられたチューブ状の流路部材の先端部分を構成して体内に挿入され、該流路部材の各該複合流路の該液流路で供給される液状物を該ガス流路で供給されるガスによって霧状にして体内で吐出させる医療用噴霧デバイスの先端部分であって、
前記各複合流路の先端側には先端内部空間が設けられており、
該先端内部空間の基端部には前記液流路と前記ガス流路の各先端開口部が開口しており、
該先端内部空間の先端は先端壁によって閉じられており、
該先端内部空間の周壁には、側方に向かって開口する噴射孔が設けられている医療用噴霧デバイスの先端部分。
【請求項2】
前記複数の複合流路において、それぞれの前記先端内部空間の前記周壁に設けられた前記噴射孔の開口方向が、互いに交差する方向に向けられている請求項1に記載の医療用噴霧デバイスの先端部分。
【請求項3】
前記先端内部空間の前記周壁に設けられた前記噴射孔が、該先端内部空間の該周壁の内面から外面に向けて先端側に傾斜している請求項1又は2に記載の医療用噴霧デバイスの先端部分。
【請求項4】
前記先端壁と前記周壁を備えて、内部に前記先端内部空間を有し且つ該周壁には前記噴射孔が形成されており、
前記複合流路が並列的に複数設けられた前記チューブ状の流路部材に対して別部材として取り付けられるアタッチメント部材からなる請求項1又は2に記載の医療用噴霧デバイスの先端部分。
【請求項5】
前記複合流路の外周壁部が先端側に延び出しており、
先端側に延び出した該外周壁部の先端開口が閉じられることで前記先端壁が形成されていると共に、
先端側に延び出した該外周壁部の内部に前記先端内部空間が形成されており、
先端側に延び出した該外周壁部に前記噴射孔が形成されている請求項1又は2に記載の医療用噴霧デバイスの先端部分。
【請求項6】
前記複合流路が2重管構造とされており、
かかる2重管構造の内側流路と外側流路の一方が前記液流路とされていると共に、他方が前記ガス流路とされている請求項1又は2に記載の医療用噴霧デバイスの先端部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の液状物を体内で霧状に吐出させる医療用噴霧デバイスの先端部分に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、体内の損傷部位(患部)を塞ぐための手段の1つとして、複数の液状物を混合させることによってゲル化反応が開始される生体接着剤が用いられている。生体接着剤は、体内の損傷部位に付着された状態で硬化する必要があり、生体接着剤を構成する複数の液状物を予め混合しておくことはできない。
【0003】
そこで、特開2003-159255号公報(特許文献1)に開示されている生体接着剤噴霧ノズルのような、液状物を霧状に吐出させて患部に吹き付けることで、それら複数の液状物を吐出後に混合させながら患部に付着させる医療用噴霧デバイスが提案されている。特許文献1の生体接着剤噴霧ノズルは、薬液供給管に対する内周側及び外周側にガス供給管が同軸的に配されており、薬液供給管から吐出される液状物(薬液)が、ガス供給管から噴出するガスによって吹き飛ばされて噴霧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-159255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の医療用噴霧デバイス(生体接着剤噴霧ノズル)の先端構造では、体内に使用される場合、患部の位置や医療用噴霧デバイスの体内への挿入方向によっては、目的とする部位へ安定して薬液を噴射させることが困難となるおそれがある。
【0006】
本発明の解決課題は、複数の液状物を体内の目的とする部位へ安定して噴射することのできる、新規な構造の医療用噴霧デバイスの先端部分を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第1の態様は、液流路とガス流路とを組み合わせた複合流路が並列的に複数設けられたチューブ状の流路部材の先端部分を構成して体内に挿入され、該流路部材の各該複合流路の該液流路で供給される液状物を該ガス流路で供給されるガスによって霧状にして体内で吐出させる医療用噴霧デバイスの先端部分であって、前記各複合流路の先端側には先端内部空間が設けられており、該先端内部空間の基端部には前記液流路と前記ガス流路の各先端開口部が開口しており、該先端内部空間の先端は先端壁によって閉じられており、該先端内部空間の周壁には、側方に向かって開口する噴射孔が設けられているものである。
【0009】
本態様によれば、各複合流路の先端側に設けられる先端内部空間の周壁には、側方に向かって開口する噴射孔が設けられている。それ故、前記特許文献1の構造では液状物を医療用噴霧デバイスの体内への挿入方向にしか噴射できなかったが、本態様では、液状物を医療用噴霧デバイスの挿入方向とは異なる方向へ噴射させることができる。これにより、医療用噴霧デバイスにおいて先端部分の中心軸回りの周方向における任意の位置で液状物を噴射させることができることから、医療用噴霧デバイスの体内への挿入用の開口を小さくすることもできて、より低侵襲的な治療を行うこともできる。特に、例えば医療用噴霧デバイスを中心軸回りに回転させることなどにより、液状物を体内の広い範囲に噴射することができて、対象となる患部が広い領域にわたる場合にも、液状物をより容易に噴射させることができる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に記載された医療用噴霧デバイスの先端部分において、前記複数の複合流路において、それぞれの前記先端内部空間の前記周壁に設けられた前記噴射孔の開口方向が、互いに交差する方向に向けられているものである。
【0011】
本態様によれば、噴射孔の開口方向が互いに交差する方向に向けられていることから、例えば複数の液状物が生体接着剤とされて複数の液状物の混合により効果が発揮される場合などでも、各噴射孔から噴射された液状物がより確実に混合され得る。
【0012】
第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された医療用噴霧デバイスの先端部分において、前記先端内部空間の前記周壁に設けられた前記噴射孔が、該先端内部空間の該周壁の内面から外面に向けて先端側に傾斜しているものである。
【0013】
本態様によれば、液状物の噴射孔が周壁の内面から外面に向けて先端側に傾斜していることから、ガス流路を通じて基端側から先端側へ供給されるガスの流動方向を大きく変更することがなく、所定の圧力で形成されるガスの気流を利用して噴射孔を通じて液状物を噴射することができる。
【0014】
第4の態様は、第1~第3の何れか1つの態様に記載された医療用噴霧デバイスの先端部分において、前記先端壁と前記周壁を備えて、内部に前記先端内部空間を有し且つ該周壁には前記噴射孔が形成されており、前記複合流路が並列的に複数設けられた前記チューブ状の流路部材に対して別部材として取り付けられるアタッチメント部材からなるものである。
【0015】
本態様によれば、医療用噴霧デバイスの先端部分が別部材として取り付けられるアタッチメント部材からなるものであることから、例えば噴射孔の数や位置、形状等を異ならせた複数のアタッチメント部材を準備して択一的に流路部材に取り付けることで、噴射孔の数や位置、形状等を異ならせた医療用噴霧デバイスを容易に形成することができる。
【0016】
第5の態様は、第1~第3の何れか1つの態様に記載された医療用噴霧デバイスの先端部分において、前記複合流路の外周壁部が先端側に延び出しており、先端側に延び出した該外周壁部の先端開口が閉じられることで前記先端壁が形成されていると共に、先端側に延び出した該外周壁部の内部に前記先端内部空間が形成されており、先端側に延び出した該外周壁部に前記噴射孔が形成されているものである。
【0017】
本態様によれば、複合流路の外周壁部において直接的に先端内部空間及び噴射孔が形成されていることから、例えば上記第4の態様のような別部材のアタッチメント部材を採用することがなく、部品点数の増加等の不具合が回避され得る。
【0018】
第6の態様は、第1~第5の何れか1つの態様に記載された医療用噴霧デバイスの先端部分において、前記複合流路が2重管構造とされており、かかる2重管構造の内側流路と外側流路の一方が前記液流路とされていると共に、他方が前記ガス流路とされているものである。
【0019】
本態様によれば、液流路とガス流路とを組み合わせてなる複合流路が内側流路と外側流路からなる2重管構造とされていることから、例えば液流路とガス流路とが各流路の長さ方向に対して直交する方向で並列的に形成される場合に比べて、複合流路、ひいては医療用噴霧デバイスの小型化が図られる。
【発明の効果】
【0020】
医療用噴霧デバイスにおいて、本発明に係る先端部分の形状を採用することで、複数の液状物を体内における目的とする部位へ安定して噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態としての医療用噴霧デバイスの先端部分を平面側から示す斜視図
図2図1に示された先端部分を底面側から示す斜視図
図3図1におけるIII-III断面を拡大して示す横断面図
図4図1に示された先端部分を備える医療用噴霧デバイスを示す斜視図
図5図4に示された医療用噴霧デバイスの平面図
図6図5におけるVI-VI断面の要部を拡大して示す縦断面図
図7】本発明の第2実施形態としての医療用噴霧デバイスの先端部分を底面側から示す斜視図
図8図7に示された医療用噴霧デバイスの底面図
図9図7におけるIX-IX断面図
図10図7におけるX-X断面図
図11図7におけるXI-XI断面図
図12図7におけるXII-XII断面図
図13】本発明の第3実施形態としての医療用噴霧デバイスの先端部分を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0023】
図1図3には、本発明の第1実施形態としての医療用噴霧デバイスの先端部分10(以下、先端部分10)が示されている。この先端部分10は、図4図6に示される医療用噴霧デバイス12におけるチューブ状の流路部材14の先端部分を構成しており、本実施形態では、先端部分10が、流路部材14に対して別部材として取り付けられるアタッチメント部材からなっている。そして、医療用噴霧デバイス12は、先端部分10を含む先端側が患者の体内に挿入されて、流路部材14を通じて体外から供給される後述する液状物36a,36bを体内で霧状に吐出させるようになっている。なお、以下の説明において、原則として、上下方向とは図3中の上下方向を、前後方向とは医療用噴霧デバイス12の軸方向である図5中の左右方向を、左右方向とは図3中の左右方向を、それぞれいう。また、原則として、先端側とは使用時の患者側(遠位側)である図5中の左側を、基端側とは使用時の施術者側(近位側)である図5中の右側を、それぞれいう。
【0024】
より詳細には、先端部分10は、流路部材14を構成する後述する複合流路34の先端側の開口を覆蓋する略有底の円筒形状とされた筒状部16を備えており、並列的に配置される一対の複合流路34,34に対応して、一対の筒状部16,16が並列的に配置されている。先端部分10が流路部材14に取り付けられた状態において、一対の筒状部16,16は左右方向で並んで配置されており、左右方向中央部分の接続部18により接続されている。接続部18は、左右両側の各筒状部16と略等しい軸方向(前後方向)寸法を有しており、一対の筒状部16,16と接続部18とが一体的に形成されている。なお、接続部18の外面(上面又は下面)には、左右両側の筒状部16,16にまたがる補強部20が軸方向で部分的に設けられてもよい。かかる先端部分10は、後述する液状物36a,36bに対する耐性等も考慮して形成材料が選択されるが、例えば硬質又は軟質の合成樹脂や、医療用ステンレス等の金属などによって形成され得る。
【0025】
図6に示されるように、各筒状部16は、基端部に基端側開口22を有する略円筒状の周壁24を有しているとともに、周壁24の先端が先端壁26によって閉じられている。そして、左右方向で並ぶ一対の先端壁26,26が上述の接続部18によって接続されている。また、周壁24における内面24aにおいて、軸方向中間部分には、軸直角方向に広がる環状の段差面27が形成されている。これにより、各筒状部16の内径寸法は、段差面27よりも先端側に比して段差面27よりも基端側の方が大きくされている。
【0026】
また、各筒状部16の周壁24には、側方に向かって開口する噴射孔28が、周壁24を厚さ方向で貫通して形成されている。かかる噴射孔28は、各筒状部16における周壁24の段差面27よりも先端側に設けられている。これにより、各筒状部16の内部空間と外部空間とが、各噴射孔28を通じて連通されている。これら各噴射孔28は、先端部分10が流路部材14に取り付けられた状態において、周壁24における下方部分に設けられており、下方に開口している。即ち、先端部分10における下方部分において、各噴射孔28が左右方向で相互に離隔して設けられている。かかる噴射孔28の位置や形状、数等は後述する液状物36a,36bの粘度やガス流路32を通じて供給されるガスの圧力等に応じて設定されるものであり、限定されるものではないが、本実施形態では、噴射孔28が円形の断面形状を有している。そして、各筒状部16において1つの噴射孔28が、各筒状部16の先端からある程度基端側に離隔した位置に設けられている。
【0027】
本実施形態では、図3にも示されるように、各噴射孔28の開口方向が、互いに交差する方向に向けられている。ここで、噴射孔28の開口方向とは、図3に示される横断面図において、周壁24(後述する先端内部空間68)の中心軸Aと噴射孔28における外面24b側の開口部の中心C1とを繋ぐ直線L1の延出方向をいう。即ち、図3に示されるように、各噴射孔28における外面24b側の開口部の中心C1は各周壁24の中心軸Aよりも左右方向内方に位置しており、各噴射孔28は、真下よりも左右方向内方に向かって開口している。これにより、各噴射孔28の開口方向を示す直線L1は、先端部分10(医療用噴霧デバイス12)よりも下方において相互に交差するようになっている。
【0028】
各噴射孔28の開口方向(即ち、直線Lの延出方向)は限定されるものではなく、直線L1における上下方向(垂直軸)に対する傾斜角度θ1は、後述する液状物36a,36bの種類や、液状物36a,36bの噴射部位、噴射範囲等に応じて適切に設定され得るが、例えば0°≦θ1≦20°の範囲内に設定されて、好ましくは0°<θ1≦10°の範囲内に設定される。また、液状物36a,36bの噴射対象(例えば患部)Oは、上記直線L1の交点P上に位置することが好ましいが、噴射対象Oは、交点Pよりも先端部分10(医療用噴霧デバイス12)側にある程度近くてもよいし、交点Pよりもある程度遠くてもよい。なお、図3において、左右両側の直線L1における上下方向に対する傾斜角度θ1は相互に異ならされてもよく、一方の傾斜角度θ1が0°とされると共に、他方の傾斜角度θ1がある程度の角度を有して、各噴射孔28の開口方向が互いに交差するようになっていてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、図6にも示されるように、各噴射孔28が上下方向に対して傾斜しており、特に本実施形態では、周壁24の内面24aから外面24bに向けて先端側に傾斜している。即ち、図6に示される縦断面図において、噴射孔28における外面24b側の開口部の中心C1と内面24a側の開口部の中心C2とを繋ぐ直線L2が上下方向に対して傾斜している。かかる直線L2におけるデバイス挿入方向(軸方向)に対する傾斜角度θ2は、後述する液状物36a,36bの種類や、液状物36a,36bの噴射部位、噴射範囲等に応じて適切に設定され得るが、例えば10°<θ2<170°の範囲内に設定されて、好ましくは15°≦θ2<90°、より好ましくは20°≦θ2≦50°の範囲内に設定される。なお、左右両側の各噴射孔28において、直線L2におけるデバイス挿入方向に対する傾斜角度θ2は、相互に異ならされていてもよい。また、図3において各噴射孔28の内周面が湾曲して図示されているが、これは各噴射孔28が、左右方向内方、且つ先端側に傾斜しているためであり、各噴射孔28の長さ方向(図3中のL1方向や図6中のL2方向)において、各噴射孔28の断面形状は略一定の円形状である。
【0030】
かかる先端部分10は、図4図6に示されるように、流路部材14の先端に取り付けられて医療用噴霧デバイス12を構成している。流路部材14は、液流路30とガス流路32とを組み合わせた複合流路34が並列的に複数設けられた構造を有しており、本実施形態では、一対の複合流路34,34が左右方向で並列的に設けられている。そして、医療用噴霧デバイス12は、流路部材14の各複合流路34において液流路30で供給される液状物36a,36bをガス流路32で供給されるガスによって霧状にして体内で吐出させるようになっている。
【0031】
具体的には、流路部材14は、先端側の吐出管路38と、基端側の供給管路40とが、接続部材42によって接続された構造を有している。吐出管路38は、図6に示されるように、相互に内外挿された内チューブ44と外チューブ46とを備えている。本実施形態では、2本の内チューブ44,44と、2本の外チューブ46,46とを備えており、各内チューブ44と各外チューブ46とが相互に内外挿されている。これら各内チューブ44と各外チューブ46とは相互に内外挿された状態において、ある程度の可撓性を有していてもよい。
【0032】
そして、各内チューブ44の内腔(内側流路)により液状物36a,36bが流動する液流路30が構成されている。各内チューブ44は、内腔(液流路30)を流動する液状物36a,36bに対する耐性等も考慮して形成材料が選択され、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂や医療用ステンレス等の金属などによって形成され得る。各内チューブ44は、左右方向で相互に離隔して配置されており、それぞれ前後方向で略ストレートに延びている。
【0033】
また、前述のように各内チューブ44と各外チューブ46とは相互に内外挿されており、各外チューブ46の内腔に各内チューブ44が挿通されている。それ故、各外チューブ46は、各内チューブ44に合わせて左右方向で相互に離隔して配置されており、それぞれ前後方向で略ストレートに延びている。そして、これら各内チューブ44と各外チューブ46との径方向間において略円環形状の断面をもって軸方向に延びる空間(外側流路)によりガスが流動するガス流路32が形成されている。各外チューブ46は、内腔(ガス流路32)を流動するガスに対する耐性等も考慮して形成材料が選択され、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂や医療用ステンレス等の金属などによって形成され得る。即ち、本実施形態では、複合流路34が各内チューブ44と各外チューブ46との2重管構造とされており、かかる2重管構造の内側流路(各内チューブ44の内腔)が液流路30とされていると共に、外側流路(各内チューブ44と各外チューブ46との径方向間の空間)がガス流路32とされている。
【0034】
このように相互に内外挿された各内チューブ44及び各外チューブ46は、それらの基端部分が、接続部材42において前方に開口する略円筒状の先端側接続部48に挿入されて、圧入や溶着、接着等の公知の固定方法により、各内チューブ44及び各外チューブ46の基端部分が、先端側接続部48に対して径方向及び軸方向で位置決めされた状態で固定されている。なお、各内チューブ44の長さ寸法は各外チューブ46の長さ寸法よりも小さくされており、各内チューブ44及び各外チューブ46の基端部分が先端側接続部48に対して位置決めされて固定された状態では、各外チューブ46に内層された各内チューブ44の先端は、各外チューブ46の先端よりも基端側に位置している。尤も、各内チューブ44及び各外チューブ46の長さ寸法は限定されるものではなく、例えば内チューブ44が外チューブ46よりも長くされて、内チューブ44が外チューブ46の先端よりも先端側に突出していてもよい。
【0035】
また、各内チューブ44及び各外チューブ46の先端部分は、図4~6に示されるように、先端部分10における各筒状部16の基端側開口22から挿入されて、圧入や溶着、接着等の公知の固定方法により固定されている。具体的には、各外チューブ46における各筒状部16への挿入は、各外チューブ46における先端面が各内チューブ44の内面24aに設けられた段差面27に当接するまで行われて、各外チューブ46における先端面と段差面27との当接により各外チューブ46における各筒状部16へのそれ以上の挿入が制限される。そして、各筒状部16へ各外チューブ46が圧入されたり、各筒状部16と各外チューブ46との径方向の重ね合わせ面において必要に応じて溶着や接着等を施すことにより、各筒状部16と各外チューブ46とが固定されている。各内チューブ44は、先端側接続部48及び各外チューブ46を介して、各筒状部16に間接的に固定されている。なお、左右方向で隣接する各外チューブ46,46のそれぞれの外周面は、例えば先端に取り付けられる先端部分10よりもある程度基端側において、相互に重ね合わされる左右方向内面が接着等により固着されるようになっていてもよい。
【0036】
供給管路40は、図4,5に示されるように、2本の液供給チューブ50,50と、1本のガス供給チューブ52とを備えている。各液供給チューブ50は、各内チューブ44と同様に、内腔を流動する液状物36a,36bに対する耐性を有する合成樹脂や金属等により形成されている。また、ガス供給チューブ52は、各外チューブ46と同様に、内腔を流動するガスに対する耐性を有する合成樹脂や金属等により形成されている。これら各液供給チューブ50及びガス供給チューブ52は、ある程度の可撓性を有していてもよいし、容易に撓み変形しない程度の剛性を有していてもよい。
【0037】
各液供給チューブ50の基端部には、メスコネクタ54が取り付けられている。メスコネクタ54は全体として略円筒状とされており、軸方向に貫通する内腔が液供給チューブ50の内腔に連通されている。メスコネクタ54は、基端部分に対してシリンジ等の液供給装置56が接続されるようになっており、その構造は液供給装置56側の接続構造に応じて変更され得るが、例えばルアーテーパや螺合によるロック機構などを備えている。本実施形態では、各液供給装置56がそれぞれシリンジであり、各バレル58の内部に液状物36a,36bが収容されており、プランジャ60をバレル58に対して先端側へ押し込むことにより、液状物36a,36bが先端チップ62から吐出される。先端チップ62は、メスコネクタ54に挿入されて接続されており、先端チップ62から吐出された液状物36a,36bがメスコネクタ54を通じて液供給チューブ50の内腔に流入するようになっている。
【0038】
また、ガス供給チューブ52の基端部には、各液供給チューブ50と同様にメスコネクタ54が取り付けられている。そして、ガス供給チューブ52に取り付けられるメスコネクタ54は図示しないガス供給装置に接続されるようになっており、要するにガス供給チューブ52はメスコネクタ54を介してガス供給装置に接続されている。ガス供給装置は、公知の送風機又は圧縮機であって、ガス供給チューブ52の内腔に基端側から先端側へ向けたガスの流れ(気流)を形成可能とされている。なお、ガス供給装置が供給するガスは、体内への吹付けに際して人体に悪影響を及ぼすものでなければよく、限定されるものではないが、例えば空気や窒素ガス等が好適に採用される。また、ガス供給装置によって形成される気流の圧力は、液状物36a,36bの粘性等を考慮して適切に設定され得る。
【0039】
そして、これら各液供給チューブ50及びガス供給チューブ52の先端部は、それぞれ接続部材42において後方に開口する略円筒状の液チューブ接続部64及びガスチューブ接続部66に挿入されて、圧入や溶着、接着等の公知の固定方法により、各液供給チューブ50及びガス供給チューブ52の先端部が、それぞれ液チューブ接続部64及びガスチューブ接続部66に固定されている。即ち、接続部材42は、先端側に開口する1つの先端側接続部48と、基端側に開口する2つの液チューブ接続部64,64と1つのガスチューブ接続部66とを備えており、本実施形態では、接続部材42の基端側において、左右方向両側に各液チューブ接続部64が設けられていると共に、左右方向中央にガスチューブ接続部66が設けられている。
【0040】
かかる接続部材42の内部において、各液流路30を構成する各内チューブ44の内腔が各液供給チューブ50の内腔に接続されているとともに、各ガス流路32を構成する各外チューブ46と各内チューブ44との径方向間の空間がガス供給チューブ52に連通されている。即ち、各液流路30は、各内チューブ44の内腔に加えて、各液供給チューブ50の内腔を含んで構成されている。また、各ガス流路32は、各外チューブ46と各内チューブ44との径方向間の空間に加えて、各ガス供給チューブ52の内腔を含んで構成されている。
【0041】
ここにおいて、上述のように、流路部材14の先端にはアタッチメント部材である先端部分10が取り付けられるようになっており、先端部分10の各筒状部16に対して、流路部材14において吐出管路38を構成する各外チューブ46の先端部分が挿し入れられる。これにより、図6に示されるように、先端部分10(各筒状部16)の内部空間において、各複合流路34(各液流路30及び各ガス流路32)の先端側には先端内部空間68が設けられている。即ち、先端部分10には、左右方向で並んで一対の先端内部空間68,68が設けられているが、これら各先端内部空間68が、各筒状部16の周壁24の左右方向内方部分や接続部18で仕切られて相互に独立している。そして、かかる各先端内部空間68の基端部において、各液流路30の先端開口部70(要するに、内チューブ44の先端開口部)と各ガス流路32の先端開口部72(要するに、外チューブ46の先端開口部)とが開口している。この結果、各液流路30及び各ガス流路32が、先端部分10における各先端内部空間68に連通している。
【0042】
また、かかる各先端内部空間68の先端が前述の先端壁26によって閉じられていると共に、各先端内部空間68(筒状部16)の周壁24において側方に向かって開口する各噴射孔28が設けられている。これにより、各噴射孔28を通じて、各先端内部空間68の内部空間と外部空間とが相互に連通されている。
【0043】
上記の如き先端部分10を備えた医療用噴霧デバイス12は、例えば内視鏡を用いた手術に際して、内視鏡のワーキングチャンネルを通じて先端部分10を含む先端部を体内へ挿入して、体内の目的とする部位に液状物36a,36bを混合しながら吹き付ける際に使用される。具体的には、例えば2液の混合によってゲル化反応が開始される生体接着剤を体内の創傷に吹き付けて創傷を塞ぐ及び/又は覆う際などに使用することができ、生体接着剤を構成する液状物36a,36bを、非混合状態で別々に体内へ吐出させると共に、吐出後に創傷等の目標部位(患部)において液状物36a,36bを混合してゲル化反応等を発現させることができる。
【0044】
すなわち、図示しないガス供給装置から各ガス流路32へガスが供給されて、各ガス流路32において先端側へ流れる気流が所定の圧力で形成された状態で、各液供給装置(シリンジ)56から供給された液状物36a,36bが各液流路30の先端開口部70から吐出される。これにより、液状物36a,36bが各ガス流路32の気流によって吹き飛ばされて、各先端内部空間68から各噴射孔28を通じて外部空間へと霧状に吐出される。
【0045】
各液状物36a,36bは、互いに独立した各液流路30によって先端側へ流れることから、各液流路30内では相互の接触によるゲル化等の反応が生じない。一方、各液流路30から吐出された各液状物36a,36bは、霧状に噴出されることで相互に接触し、ゲル化等の反応が開始される。このように、各液状物36a,36bの接触(混合)による反応が、各液流路30から吐出された後で開始されるようになっており、例えば各液流路30内でゲル化反応が開始されて各液流路30が閉塞されるといった不具合が防止される。
【0046】
霧状に吐出されて混合による反応が開始された各液状物36a,36bは、速やかに体内の創傷等の目標部位(噴射対象O)に付着し、反応の継続によって目的とする効果を発揮する。具体的には、例えば生体接着剤を創傷へ吹き付ける場合には、霧状に吐出されてゲル化反応が開始された各液状物36a,36bは、粘性が増大してゲル状となりながら創傷に付着する。そして、創傷を覆いながらゲル化反応が継続されることにより、創傷を覆って或いは塞いで、生体接着剤としての止血効果等を発揮する。
【0047】
以上の如き構造とされた本実施形態における医療用噴霧デバイスの先端部分10によれば、各複合流路34の先端側に先端内部空間68が設けられていると共に、各先端内部空間68の周壁24には側方に向かって開口する噴射孔28が設けられている。これにより、各複合流路34から供給される霧状の液状物36a,36bを、各複合流路34の延出方向とは異なる方向に噴射させることができて、各噴射孔28の形成方向によって各液状物36a,36bの噴射方向を任意に設定することができる。特に、医療用噴霧デバイス12を中心軸回りに回転させることで、各液状物36a,36bをより広い範囲に噴射させることができる。それ故、医療用噴霧デバイス12を体内へ挿入するための開口をより小さくすることもできて、より低侵襲的な治療を行うことも可能となる。
【0048】
また、本実施形態において、各噴射孔28の開口方向が、互いに交差する方向に向けられている。これにより、例えば各液状物36a,36bが混合されることで硬化が開始される生体接着剤である場合にも、各液状物36a,36bが噴射対象Oへと噴射された際に混合せず硬化反応が生じないといった不具合が回避され得る。
【0049】
さらに、各噴射孔28は、各先端内部空間68の周壁24の内面24aから外面24bに向けて先端側に傾斜している。これにより、医療用噴霧デバイス12において各複合流路34(特に、ガス流路32)内を流動するガスの流動方向に各液状物36a,36bを噴射することができて、各液状物36a,36bをスムーズに噴射させることができる。
【0050】
更にまた、本実施形態では、先端部分10がチューブ状の流路部材14に対して別部材として取り付けられるアタッチメント部材から構成されている。これにより、使用される各液状物36a,36bに応じて、各噴射孔28の数や位置、形状等が異ならされた複数の異なる先端部分(アタッチメント部材)10のうちからその1つを適宜選択して、流路部材14に取り付けることができる。
【0051】
また、各複合流路34は2重管構造とされており、内側流路と外側流路の一方(本実施形態では内側流路)が液流路30とされていると共に、他方(本実施形態では外側流路)がガス流路32とされている。即ち、各複合流路34が径方向内外で組み合わされる2重管(内チューブ44と外チューブ46)により構成されることから、例えば各複合流路を構成する液流路とガス流路とが各流路の長さ方向に対して直交する方向で並列的に設けられる場合に比べて、各複合流路の外径寸法を小さくすることができて、医療用噴霧デバイス12の小型化を図ることができる。
【0052】
次に、図7図12には、本発明の第2実施形態としての医療用噴霧デバイスの先端部分80(以下、先端部分80)が示されている。本実施形態においても、先端部分80がチューブ状の流路部材14に対して別部材として取り付けられるアタッチメント部材として構成されている。本実施形態の先端部分80における基本的な構造は、第1の実施形態と同様であるが、液状物36a,36bを噴射する噴射孔28が3つ設けられている点で、第1実施形態と異なっている。以下の説明において、第1実施形態と実質的に同一の部材又は部位には、図中に、第1実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施形態では、第1実施形態と同様に左右方向で並んで配置される筒状部16,16の上方に、これら各筒状部16とは別の筒状部82が設けられており、この筒状部82が、各筒状部16よりも先端側にまで延び出している。そして、筒状部82において、各筒状部16よりも先端側に延び出した部分に、下方に開口する噴射孔28が設けられている。
【0054】
すなわち、図9に示されるように、筒状部82の基端側開口84からはチューブ状の流路部材14(液流路30とガス流路32とを組み合わせた複合流路34)が挿入されるようになっており、筒状部82の内部空間において流路部材14(複合流路34)よりも先端側が先端内部空間86とされている。したがって、本実施形態では、流路部材14において、各筒状部16に挿入される各複合流路34と筒状部82に挿入される複合流路34とが並列的に設けられている。特に、本実施形態では、各筒状部16を構成する周壁24と筒状部82を構成する周壁88とが一体的に形成されており、先端部分80が1つの部材として構成されている。
【0055】
そして、先端内部空間86の基端部において液流路30とガス流路32の各先端開口部70,72が開口していると共に、先端内部空間86の先端が先端壁26によって閉じられている。また、先端内部空間86(筒状部82)の周壁88において、側方(下方)に向かって開口する噴射孔28が設けられている。これにより、本実施形態では、各筒状部16(各先端内部空間68)に設けられた各噴射孔28に加えて、筒状部82(先端内部空間86)に設けられた噴射孔28からも、液状物36a(36b)がガスによって霧状とされて体内に吐出されるようになっている。
【0056】
なお、各筒状部16に設けられる各噴射孔28は、前述のように、左右方向で相互に離隔しており、各噴射孔28の開口方向が互いに交差する方向に向けられていると共に、周壁24の内面24aから外面24bに向けて先端側に傾斜しているが、筒状部82に設けられる噴射孔28は真っ直ぐ下方に向かって開口している。このように、各筒状部16における各噴射孔28が先端側に傾斜していると共に、各筒状部16よりも先端側に突出する筒状部82から真っ直ぐ下方に向かって開口する噴射孔28が設けられることで、3つの噴射孔28から噴射される液状物36a,36bが噴射対象Oにおける略同位置に噴霧されるようになっている。
【0057】
なお、3つの噴射孔28から噴射される液状物36a,36bは、例えば第1実施形態と同様に2液の混合により硬化が開始される生体接着剤で、例えば各筒状部16における各噴射孔28から一方の液状物36aが噴射されてもよいし、筒状部82における噴射孔28から他方の液状物36bが噴射されてもよい。或いは、3液の混合により硬化が開始される生体接着剤である場合は、3つの噴射孔28からそれぞれ別の液状物が噴射されてもよいし、例えば各筒状部16における各噴射孔28から2液混合により硬化が開始される生体接着剤(液状物36a,36b)が噴射されて、筒状部82における噴射孔28からは生体接着剤とは異なる用途の液状物(例えば炎症を抑制する薬剤等)が噴射されてもよい。なお、筒状部82における噴射孔28から噴射される液状物が単体で効果を発揮する場合、3つの噴射孔28は噴射対象Oにおける略同位置に向かって開口している必要はなく、例えば筒状部82における噴射孔28も、各筒状部16に設けられる各噴射孔28と同様に先端側に周壁88の内面から外面に向けて先端側に傾斜していてもよい。
【0058】
本実施形態の医療用噴霧デバイスの先端部分80においても、各先端内部空間68,86の周壁24,88に、側方(下方)に向かって開口する各噴射孔28が設けられていることから、第1実施形態と同様の効果が発揮され得る。特に、複合流路34は第1実施形態のように左右方向で並列的に設けるだけでなく、本実施形態のように、上下方向で並列的に設けてもよく、例えば3つ以上の筒状部が設けられて、各筒状部に1つ以上の噴射孔が設けられてもよい。
【0059】
次に、図13には、本発明の第3実施形態としての医療用噴霧デバイスの先端部分90(以下、先端部分90)が示されている。本実施形態の先端部分90は、アタッチメント部材として構成されておらず、医療用噴霧デバイス12の流路部材14自体により構成されている。なお、先端部分90の形状は、第1実施形態における先端部分10と同様であることから、図13において縦断面図のみを示す。
【0060】
すなわち、本実施形態では、内チューブ92と外チューブ94との2重管構造からなる複合流路96において、複合流路96の外周壁部98(要するに、外チューブ94の周壁)が先端側に延び出しており、当該外周壁部98の先端開口が閉じられることで先端壁100が形成されている。これにより、先端側に延び出した外周壁部98の内部に先端内部空間102が形成されていると共に、先端内部空間102の周壁(要するに、外周壁部98)において、側方(下方)に向かって開口する噴射孔28が形成されている。
【0061】
なお、先端部分90の形状は、第1実施形態における先端部分10と同様であることから、複合流路96(先端内部空間102)が左右方向で並列的に設けられており、各先端内部空間102に設けられる噴射孔28も左右方向で並列的に設けられている。そして、左右方向で離隔して設けられている各噴射孔28は、各開口方向が互いに交差する方向に向けられているとともに、各先端内部空間102の周壁(外周壁部98)の内面から外面に向けて先端側に傾斜している。
【0062】
本実施形態の医療用噴霧デバイスの先端部分90においても、各先端内部空間102の周壁(外周壁部98)において、側方(下方)に向かって開口する噴射孔28が設けられていることから、第1実施形態と同様の効果が発揮され得る。特に、本実施形態の先端部分90は、第1及び第2実施形態のようなアタッチメント部材でないことから、医療用噴霧デバイス12において部品点数が増加することがなく、別部材(アタッチメント部材)を取り付ける手間等も省かれ得る。
【0063】
以上、本発明の第1~第3実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。
【0064】
前記第1及び第2実施形態では、複合流路34が、径方向内外で組み合わされた内チューブ44と外チューブ46とによる2重管構造とされていたが、例えば液流路とガス流路のそれぞれを構成する2本の筒状体(ルーメン)が各筒状体の長さ方向に対して直交する方向で並列的に設けられた態様であってもよく、上記2本の筒状体を含んで構成される流路部材の先端部分に対して、アタッチメント部材が上記2本の筒状体の先端開口部を覆うように取り付けられてもよい。更に、前記実施形態では、各複合流路34,96を構成する2重管構造において、内側流路が液流路30とされると共に、外側流路がガス流路32とされていたが、内側流路がガス流路とされて、外側流路が液流路とされてもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、各噴射孔28が円形断面を有していたが、噴射孔の形状は限定されるものではなく、楕円や長円、スリット形状や多角形状等であってもよく、噴射される液状物の粘度等に応じて適切に設定され得る。なお、複数の噴射孔においてそれぞれの噴射孔の形状は同じである必要はなく、噴射される液状物の粘度等に応じて、適切に変更されてもよい。
【0066】
さらに、前記第1及び第3実施形態において、各噴射孔28は、周壁の内面から外面に向けて先端側に傾斜していたが、例えば第2実施形態の筒状部82における噴射孔28のように、筒状部(先端内部空間)の軸方向に対して直交する方向に向けて開口していてもよいし、周壁の内面から外面に向けて基端側に傾斜して開口していてもよい。例えば、一対の先端内部空間が左右方向で並列的に配置される場合、一方の噴射孔を周壁の内面から外面に向けて先端側に傾斜して開口させると共に、他方の噴射孔を周壁の内面から外面に向けて基端側に傾斜して開口させることで、一対の噴射孔を軸方向の位置を異ならせて配置することもできる。
【0067】
更にまた、前記実施形態では、1つの筒状部(先端内部空間68,86,102)において1つの噴射孔28が設けられていたが、1つの筒状部(先端内部空間)において、複数の噴射孔が、周方向及び/又は軸方向で異なる位置に設けられてもよい。
【0068】
また、例えば前記第1実施形態では、各噴射孔28が、各筒状部16の先端からある程度基端側に離隔した位置に設けられており、これにより、各先端内部空間68において、各噴射孔28よりも先端側に空間が生じていたが、かかる空間は設けられなくてもよい。
【0069】
さらに、前記第1及び第3実施形態では、一対の先端内部空間68,68(噴射孔28,28)が左右方向で並んで設けられていたが、一対の先端内部空間が設けられる場合、前記第2実施形態のように上下方向で並んで設けられてもよく、一方の先端内部空間が他方の先端内部空間よりも先端側まで延び出して、一対の噴射孔が各先端内部空間の軸方向(前後方向)で相互に離隔して設けられてもよい。これにより、医療用噴霧デバイスの先端部分における左右方向寸法を小さく抑えることもできる。
【0070】
更にまた、前記第2実施形態では、左右方向で並列的に配置された各筒状部16に対して上方に配置された筒状部82がより先端側まで延び出しており、各筒状部16と筒状部82に設けられる各噴射孔28の位置が軸方向で異ならされていたが、例えば3つの噴射孔28が軸方向で略同じ位置に形成されてもよい。即ち、図3に示される横断面において左右両側に設けられて相互に交差するように左右方向内方に向かって傾斜して開口する各噴射孔28に対して、左右方向中央に設けられる噴射孔は真っ直ぐ下方に開口していてもよい。かかる場合、各噴射孔は、例えば何れも周壁の内面から外面に向けて先端側に傾斜していてもよい。
【0071】
なお、医療用噴霧デバイスの先端部分において複数の噴射孔が設けられる場合、各噴射孔は、何れも噴射対象における略同じ位置に向かって開口している必要はない。即ち、前記第2実施形態では、各筒状部16と筒状部82に設けられる各噴射孔28の位置が軸方向で異ならされていたが、各噴射孔は、例えば何れも真っ直ぐ下方に向かって開口していてもよく、例えば複数の液状物が混合されることで硬化が開始される生体接着剤が噴射される場合、1つの液状物を噴射した後に、又は噴射しながら、医療用噴霧デバイスを軸方向で移動させて、他の液状物を上記1つの液状物の付着位置に向かって噴射するようになっていてもよい。同様に、前記第1及び第3実施形態において、左右両側の各噴射孔28は何れも噴射対象における略同じ位置に向かって開口していたが、例えば複数の噴射孔が周方向の異なる方向に向かって開口していてもよく、1つの液状物を噴射した後に、又は噴射しながら、医療用噴霧デバイスを中心軸回りで回転させて、他の液状物を上記1つの液状物の付着位置に向かって噴射するようになっていてもよい。尤も、各液状物が単体で効果が発揮されるものである場合にも、各噴射孔は、何れも噴射対象における略同じ位置に向かって開口している必要はない。
【0072】
本発明に係る先端部分が適用される医療用噴霧デバイスの形状は、前記実施形態の記載に限定されるものではない。例えば、医療用噴霧デバイスは、内視鏡のワーキングチャンネルなどを経由して体内へ挿入される態様に限定されるものではなく、例えば開腹手術の切開部位から先端部分を含む先端側を患者の体内へ挿入して、液状物を体内へ噴霧するようにしてもよい。即ち、前記第1実施形態において示した医療用噴霧デバイス12は、流路部材14における吐出管路38が長くされて、内視鏡のワーキングチャンネルへ挿通可能とされていたが、開腹手術の切開部位から挿入される場合等には、吐出管路をより短くすることも可能となる。このように、医療用噴霧デバイスの形状は、例えば吐出管路の長さを変更するなど、噴霧対象となる体内の目標部位の位置や目標部位に至る経路などに応じて適宜に設定され得る。
【符号の説明】
【0073】
10 (医療用噴霧デバイスの)先端部分(アタッチメント部材)(第1実施形態)
12 医療用噴霧デバイス
14 流路部材
16 筒状部
18 接続部
20 補強部
22 基端側開口
24 周壁
24a 内面
24b 外面
26 先端壁
27 段差面
28 噴射孔
30 液流路(内側流路)
32 ガス流路(外側流路)
34 複合流路
36a,36b 液状物
38 吐出管路
40 供給管路
42 接続部材
44 内チューブ
46 外チューブ
48 先端側接続部
50 液供給チューブ
52 ガス供給チューブ
54 メスコネクタ
56 液供給装置(シリンジ)
58 バレル
60 プランジャ
62 先端チップ
64 液チューブ接続部
66 ガスチューブ接続部
68 先端内部空間
70,72 先端開口部
80 (医療用噴霧デバイスの)先端部分(アタッチメント部材)(第2実施形態)
82 筒状部
84 基端側開口
86 先端内部空間
88 周壁
90 (医療用噴霧デバイスの)先端部分(第3実施形態)
92 内チューブ
94 外チューブ
96 複合流路
98 外周壁部
100 先端壁
102 先端内部空間
A 周壁の中心軸
C1 外面側の中心
C2 内面側の中心
L1 中心軸と外面側の中心を繋ぐ直線
L2 外面側の中心と内面側の中心を繋ぐ直線
O 噴射対象
P 直線L1の交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13