(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089149
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】蓄電装置用外装材及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/122 20210101AFI20240626BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240626BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240626BHJP
H01M 50/126 20210101ALI20240626BHJP
H01M 50/117 20210101ALI20240626BHJP
H01M 50/145 20210101ALI20240626BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240626BHJP
【FI】
H01M50/122
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/126
H01M50/117
H01M50/145
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204337
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】村田 光司
(72)【発明者】
【氏名】今元 惇哉
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA10
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H011KK02
5H029AJ14
5H029AM01
5H029AM11
5H029HJ01
(57)【要約】
【課題】水分バリア性を向上させることができる蓄電装置用外装材及び蓄電装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも基材層、バリア層、接着層、及び、シーラント層をこの順に備えた、蓄電装置用の外装材であって、接着層及びシーラント層の少なくとも一方が、層状粘土鉱物を含むフィラーを含有するフィラー含有層を含む、蓄電装置用外装材。フィラー含有層は、樹脂及び前記フィラーを含む樹脂組成物を用いて得られてもよい。接着層及びシーラント層のうち接着層はフィラー含有層を含み、樹脂組成物の樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層、バリア層、接着層、及び、シーラント層をこの順に備えた、蓄電装置用の外装材であって、
前記接着層及び前記シーラント層の少なくとも一方が、層状粘土鉱物を含むフィラーを含有するフィラー含有層を含む、蓄電装置用外装材。
【請求項2】
前記フィラー含有層が、樹脂及び前記フィラーを含む樹脂組成物を用いて得られる、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項3】
前記接着層及び前記シーラント層のうち前記接着層が前記フィラー含有層を含み、前記樹脂組成物の前記樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含む、請求項2に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項4】
前記樹脂組成物が多官能イソシアネート化合物をさらに含む、請求項3に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項5】
前記樹脂組成物がカルボジイミド化合物をさらに含む、請求項4に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項6】
前記層状粘土鉱物が有機変性モンモリロナイトを含む、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項7】
前記有機変性モンモリロナイトが4級アンモニウム変性モンモリロナイトを含む、請求項6に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項8】
前記変性ポリオレフィン樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂である、請求項3に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項9】
前記多官能イソシアネート化合物がイソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物を含む、請求項4に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項10】
前記樹脂組成物中の前記フィラーの含有率が0.1~40質量%である、請求項2に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項11】
前記バリア層の一方又は両方の面に腐食防止処理層をさらに備える、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項12】
前記蓄電装置が全固体電池である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項13】
前記全固体電池が硫化物系固体電解質を含む、請求項12に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項14】
電池要素と、
前記電池要素を収容する外装袋とを備え、
前記外装袋が、請求項1~11のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材を有する、蓄電装置。
【請求項15】
全固体電池である、請求項14に記載の蓄電装置。
【請求項16】
前記電池要素が硫化物系固体電解質を含む、請求項15に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置用外装材及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の二次電池は、携帯電子機器や、電気を動力源とする電気自動車及びハイブリッド電気自動車等に広く用いられている。リチウムイオン電池の安全性を高めた電池として、有機溶媒電解質に代えて無機固体電解質を用いた全固体リチウム電池が検討されている。全固体リチウム電池は、短絡等による熱暴走が生じ難いという点でリチウムイオン電池よりも安全性に優れている。
【0003】
全固体電池、特に硫化物系固体電解質を用いた全固体電池では、水分が侵入すると、硫化物系固体電解質が水分と反応し、硫化水素が発生する。硫化水素は毒性があるため、硫化水素の発生を抑制し、発生した場合には速やかに無害化(消臭)することが必要である。硫化水素の発生を抑制するために、ゼオライト、シリカゲル、石灰などの水分吸着物質を外装材の各層に添加することが検討されている。例えば、下記の特許文献1には、水分吸着物質としてゼオライト等を用いた外装材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の外装材は、水分バリア性の点で改善の余地を有していた。
したがって、水分バリア性を向上させることができる外装材が求められていた。
また、全固体電池以外の蓄電装置においても、水分バリア性を向上させることができる外装材を用いることが、水分による電池性能の低下を抑制する観点からは望ましい。
【0006】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、水分バリア性を向上させることができる蓄電装置用外装材及び蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示は、少なくとも基材層、バリア層、接着層、及び、シーラント層をこの順に備えた、蓄電装置用の外装材であって、前記接着層及び前記シーラント層の少なくとも一方が、層状粘土鉱物を含むフィラーを含有するフィラー含有層を含む、蓄電装置用外装材を提供する。
【0008】
上記外装材によれば、水分バリア性を向上させることができる。
上記効果が得られる理由について本開示の発明者らは以下のように推測する。
すなわち、フィラーに含まれる層状粘土鉱物を含むフィラーは、フィラー含有層中で厚さ数nmの平板状薄片になる。この平板状薄片は水蒸気を通さないため、フィラー含有層中に分散され、透過してきた水分が平板状薄片でブロックされることで水分の経路が蛇行する迷路効果が発現し、結果としてフィラー含有層の水分バリア性が向上するのではないかと考えられる。
なお、本開示の外装材においては、フィラー含有層において、層状粘土鉱物を含むフィラーは、水分を蛇行させることによって水分バリア性を向上させるため、長期間使用しても、水分の吸着能力の飽和による水分バリア性の低下が起こりにくくなると考えられる。
【0009】
上記蓄電装置用外装材において、前記フィラー含有層が、樹脂及び前記フィラーを含む樹脂組成物を用いて得られるものであってよい。
【0010】
上記蓄電装置用外装材において、前記接着層及び前記シーラント層のうち前記接着層が前記フィラー含有層を含み、前記樹脂組成物の前記樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含んでよい。
この場合、接着層及びシーラント層のうち接着層がフィラー含有層を含み、樹脂組成物樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含むことで、バリア層及びシーラント層に対する接着層の接着性がより向上する。
【0011】
上記樹脂組成物は多官能イソシアネート化合物をさらに含むことが好ましい。
この外装材によれば、樹脂組成物が多官能イソシアネート化合物をさらに含むことで、シール強度をより向上させながら、水分バリア性をさらに向上させることができる。
【0012】
上記樹脂組成物はカルボジイミド化合物をさらに含むことが好ましい。
この外装材によれば、上記樹脂組成物がカルボジイミド化合物をさらに含むことで、上記樹脂組成物がカルボジイミド化合物を含まない場合に比べて、シール強度をより向上させながら、水分バリア性をさらに向上させることができる。
【0013】
上記蓄電装置用外装材において、上記層状粘土鉱物が有機変性モンモリロナイトを含むことが好ましい。
この外装材によれば、層状粘土鉱物が有機変性モンモリロナイトを含むことで、フィラー含有層における層状粘土鉱物が良好に分散されるため、水分バリア性がさらに向上する。
【0014】
上記蓄電装置用外装材において、上記有機変性モンモリロナイトが4級アンモニウム変性モンモリロナイトを含むことが好ましい。
この外装材によれば、有機変性モンモリロナイトが4級アンモニウム変性モンモリロナイトを含むことで、フィラー含有層において層状粘土鉱物が特に良好に分散されるため、水分バリア性がさらに向上する。
【0015】
上記蓄電装置用外装材において、上記変性ポリオレフィン樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
この外装材によれば、層状粘土鉱物を含むフィラーが、変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂中で良好に分散されるため、水分バリア性がさらに向上する。
【0016】
上記蓄電装置用外装材において、上記多官能イソシアネート化合物がイソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物を含むことが好ましい。
この外装材によれば、多官能イソシアネート化合物がイソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物を含むことで、接着層が、優れた密着性及び耐熱性を有することが可能となり、高いシール強度及び耐熱性を有し、優れたバリア性を有することが可能となる。
【0017】
上記蓄電装置用外装材においては、上記樹脂組成物中の前記フィラーの含有率が0.1~40質量%であることが好ましい。
この外装材によれば、樹脂組成物中のフィラーの含有率が0.1質量%未満である場合に比べて、水分バリア性をより向上させることができる。また、樹脂組成物中のフィラーの含有率が40質量%を超える場合に比べて、シール強度及び密着性の低下をより抑制できる。
【0018】
上記蓄電装置用外装材は、上記バリア層の一方又は両方の面に腐食防止処理層を備えてもよい。
この外装材によれば、腐食防止処理層によって、外装材の信頼性をより長期間にわたり維持することができる。
【0019】
上記蓄電装置用外装材において、前記蓄電装置が全固体電池であってよい。
【0020】
上記蓄電装置用外装材において、全固体電池が硫化物系固体電解質を含んでよい。
この場合、外装材において、水分バリア性を向上させることができる。このため、外装材を蓄電装置としての全固体電池に用いると、外装材の内部への水分の浸入が抑制される。このため、外装材の内部において、硫化物系固体電解質中の硫黄と水分との反応による硫化水素の発生を抑制することができる。
【0021】
また、本開示は、電池要素と、上記電池要素を収容する外装袋とを備え、前記外装袋が、上述した蓄電装置用外装材を有する、蓄電装置を提供する。
本開示の蓄電装置によれば、外装材において、水分バリア性を向上させることができるため、外装袋の内部への水分の浸入が抑制され、外装袋の内部に収容される電池要素の性能の低下を抑制することができる。
【0022】
上記蓄電装置が全固体電池であってよい。
【0023】
上記蓄電装置が全固体電池である場合に、前記電池要素が硫化物系固体電解質を含んでよい。
この場合、外装材において、水分バリア性を向上させることができるため、外装袋の内部への水分の浸入が抑制される。このため、硫化物系固体電解質中の硫黄と水分との反応による硫化水素の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、水分バリア性を向上させることができる蓄電装置用外装材及び蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る蓄電装置の斜視図である。
【
図4】実施例及び比較例におけるシール強度測定用サンプルの作製方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0027】
[蓄電装置用外装材]
まず、本開示の一実施形態に係る蓄電装置用外装材について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態の蓄電装置用外装材(以下、単に「外装材」ともいう)10は、蓄電装置に用いられる外装材であり、基材層11と、第1接着剤層12aと、バリア層13と、接着層としての第2接着剤層12bと、シーラント層16とをこの順に備える。
【0028】
第2接着剤層12b及びシーラント層16はいずれも、層状粘土鉱物を含むフィラーを含有するフィラー含有層を含む。
【0029】
外装材10は、基材層11とバリア層13との間に第1の腐食防止処理層14aを有し、バリア層13と第2接着剤層12bとの間には第2の腐食防止処理層14bを有する。
外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置の外部側、シーラント層16を蓄電装置の内部側に向けて使用される。
【0030】
外装材10によれば、水分バリア性を向上させることができる。
【0031】
以下、外装材10を構成する各層について具体的に説明する。
【0032】
<基材層11>
基材層11は、蓄電装置を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途の蓄電装置の外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
【0033】
基材層11は、絶縁性を有する樹脂により形成された層であることが好ましい。樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、アセチルセルロース樹脂等を使用することができる。
【0034】
これらの樹脂の中でも、基材層11としては、成型性に優れることから、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,ナイロン9T、ナイロン10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
【0035】
基材層11は、必要に応じて、例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、脱水剤、結晶核剤並びに粘着付与剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0036】
基材層11は、延伸又は未延伸のフィルム形態でも、コーティング被膜としての形態のどちらでも構わない。また。基材層11は単層でも多層でもよく、多層の場合は異なる樹脂を組み合わせて使用できる。基材層11がフィルムである場合には、基材層11としては、複数の層を共押し出ししたもの、もしくは複数の層を、接着剤を介して積層したものが使用できる。基材層11がコーティング被膜である場合は、基材層11としては、コーティング液を積層回数分コーティングしてなるものが使用でき、フィルムとコーティング被膜を組み合わせて多層としたものを使用することもできる。
【0037】
これらの樹脂をフィルム形態で使用する場合は、基材層11は二軸延伸フィルムであることが好ましい。基材層11が二軸延伸フィルムである場合における延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、チューブラー二軸延伸法、同時二軸延伸法等が挙げられる。二軸延伸フィルムは、より優れた深絞り成型性が得られる観点から、チューブラー二軸延伸法により延伸されたものであることが好ましい。
【0038】
基材層11の厚さは、6~40μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。基材層11の厚さが6μm以上であることにより、外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。基材層11の厚さが40μm以下とすることにより、外装材10の総厚を小さくすることができる。
【0039】
基材層11の融点は、シール時の基材層11の変形を抑制するため、シーラント層16の融点より高く、さらにはシーラント層16の融点よりも30℃以上高いことが好ましい。
【0040】
<第1接着剤層12a>
第1接着剤層12aは、基材層11とバリア層13とを接着する層である。第1接着剤層12aは、第1接着剤層形成用樹脂組成物を用いて得られる。第1接着剤層形成用樹脂組成物は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤と、2官能以上のイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)とを含む。上述した各種ポリオールは、外装材10に求められる機能や性能に応じて、単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、第1接着剤層12aを形成する第1接着剤層形成用樹脂組成物としては、上記第1接着剤層形成用樹脂組成物以外にも、エポキシ樹脂などの主剤と、硬化剤とを含む第1接着剤層形成用樹脂組成物も使用可能であるが、第1接着剤層形成用樹脂組成物は、これに限らない。
【0041】
第1接着剤層形成用樹脂組成物は、第1接着剤層12aに求められる性能に応じて、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、脱水剤、結晶核剤並びに粘着付与剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0042】
第1接着剤層12aの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmが好ましく、2~7μmがより好ましい。
【0043】
<バリア層13>
バリア層13は、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、バリア層13は、深絞り成型をするために延展性を有していてもよい。バリア層13としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどを用いることができる。蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムを使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バリア層13としては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
【0044】
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐腐食性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理を施す場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
【0045】
バリア層13の厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9~200μmとすることが好ましく、15~100μmとすることがより好ましい。
【0046】
<第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b>
第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bは、バリア層13を構成する金属箔(金属箔層)等の腐食を防止するために設けられる層である。また、第1の腐食防止処理層14aは、大気中に含まれる腐食性ガスによるバリア層13の腐食を防ぐと共に、バリア層13と第1接着剤層12aとの密着力を高める役割を果たす。また、第2の腐食防止処理層14bは、電解質や、電池内部から発生するガス(例えば硫化水素ガス)によるバリア層13の腐食を防ぐことにより電解質や電池内部から発生するガスに対する耐性をより向上させると共に、バリア層13と第2接着剤層12bとの密着力を高める役割を果たす。第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bによって、外装材10の信頼性をより長期間にわたり維持することができる。第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b(以下、単に「腐食防止処理層14a,14b」ともいう)は、例えば、バリア層13を構成する金属箔に対して脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
【0047】
脱脂処理としては、酸脱脂及びアルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸を単独で使用する方法、又はこれらの混合液を使用する方法などが挙げられる。また、酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いる処理を行うことが好ましい。この処理によれば、特にバリア層13にアルミニウム箔を用いた場合に、アルミニウムの脱脂効果が得られるだけでなく、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成させることができる。このため、この処理は耐腐食性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを使用する方法が挙げられる。
【0048】
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
【0049】
化成処理としては、浸漬型、塗布型が挙げられる。浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、セリアゾル処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。一方、塗布型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤をバリア層13上に塗布する方法が挙げられる。
【0050】
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、バリア層13として焼鈍工程を通した金属箔など脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14a,14bの形成において改めて脱脂処理する必要はない。
【0051】
塗布型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
【0052】
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理では、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いたバリア層13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成した形態が得られるので、上記処理は化成処理の定義に包含される。一方、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14a,14bを形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、且つ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
【0053】
上記希土類元素酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。中でも、水系のゾルが好ましい。
【0054】
上記希土類元素酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸又はその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は、外装材10において、(1)ゾルの分散安定化、(2)リン酸のアルミキレート能力を利用したバリア層13との密着性の向上、(3)アルミニウムイオンを捕獲(不動態形成)することよる腐食耐性の付与、(4)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層(酸化物層)14a,14bの凝集力の向上などが期待される。
【0055】
上記希土類元素酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14a,14bは、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14a,14bは、凝集力を補うために、アニオン性ポリマー、又はカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
【0056】
腐食防止処理層14a,14bは、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類元素酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止処理層14a,14bを腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
【0057】
腐食防止処理層14a,14bの単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005~0.200g/m2が好ましく、0.010~0.100g/m2がより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m2以上であれば、バリア層13に腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/m2を超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類元素酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不十分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14a,14bの厚さについては、その比重から換算できる。
【0058】
腐食防止処理層14a,14bは、シーラント層とバリア層との密着性を保持しやすくなる観点から、例えば、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1~100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されている態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む態様であってもよい。
【0059】
<第2接着剤層12b>
第2接着剤層12bは、バリア層13とシーラント層16とを接着する層である。第2接着剤層12bは、樹脂と、層状粘土鉱物を含むフィラー(以下、「層状粘土鉱物フィラー」ということもある)とを含む第2接着剤層形成用樹脂組成物を用いて得られるフィラー含有層を含む。第2接着剤層12bが複数の層により構成されている場合、すべての層がフィラー含有層であってもよく、複数の層のうちの一部の層のみがフィラー含有層であってもよい。
【0060】
(層状粘土鉱物フィラー)
層状粘土鉱物フィラーは、層状をなしており、第2接着剤層12b中で層間が広がり、最終的には各層を分離させることができる。分離後は、層状粘土鉱物フィラーは、厚さ数nmの平板状薄片となり、この平板状薄片が存在することにより水分の侵入に対して水分の経路が蛇行する迷路効果を発現し、水分バリア性がより向上することが可能となる。
層状粘土鉱物フィラーは、層状粘土鉱物のみならなるフィラーでも、層状粘土鉱物を一部に含むフィラーであってもよい。
このような層状粘土鉱物フィラーとしては、スメクタイト族粘土鉱物及びベントナイトが挙げられる。ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする岩石名であり、モンモリロナイトとほぼ同様の性質を有する。
【0061】
スメクタイト族粘土鉱物としては、モンモリロナイト、サポナイト及びヘクトライトなどが挙げられる。中でも、スメクタイト族粘土鉱物としては、コスト及び取扱い安さの点で、モンモリロナイトが好ましい。
モンモリロナイトは、非変性モンモリロナイトでも変性モンモリロナイトでもよい。変性モンモリロナイトは、有機変性モンモリロナイトを含むことが好ましい。変性モンモリロナイトが有機変性モンモリロナイトを含むと、第2接着剤層12bにおいて層状粘土鉱物が良好に分散されるため、外装材10の水分バリア性がさらに向上する。
有機変性モンモリロナイトとしては、4級アンモニウム変性モンモリロナイト、ホスホニウム変性モンモリロナイト、イミダゾリウム変性モンモリロナイトなどが挙げられる。中でも、4級アンモニウム変性モンモリロナイトが好ましい。この場合、第2接着剤層12bにおいて層状粘土鉱物が特に良好に分散されるため、水分バリア性がさらに向上する。
【0062】
(第2接着剤層形成用樹脂組成物)
上記第2接着剤層形成用樹脂組成物の樹脂は変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂は、層状粘土鉱物フィラーにおいて、より層間に入りやすくなり、層状粘土鉱物フィラーをより良好に樹脂中に分散させることができる。また上記第2接着剤層形成用樹脂組成物の樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含むことで、第2接着剤層12bは、バリア層13及びシーラント層16に対して高い密着性を有することができ、外装材10のラミネート強度を向上させることができる。
変性ポリオレフィン樹脂としては、水酸基変性ポリオレフィン樹脂、グリシジル変性ポリオレフィン樹脂及び酸変性ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。中でも、バリア層13に対する密着性の点から、酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物及び不飽和エステルなどから導かれる不飽和カルボン酸誘導体により、グラフト変性されたポリオレフィン樹脂である。
【0063】
不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0064】
不飽和カルボン酸の酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸の酸無水物などが挙げられる。
【0065】
不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0066】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、及びプロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0067】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、バリア層13と第2接着剤層12bとの間で優れた密着性が得られる観点から、無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂には、例えば、三井化学株式会社製の「アドマー」、三菱化学株式会社製の「モディック」、東洋紡株式会社製の「トーヨータック」、三洋化成工業株式会社製の「サンスタック」などが適している。このような変性ポリオレフィン樹脂は、各種金属及び各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用して第2接着剤層12bに密着性を付与することができる。
【0068】
ポリオレフィン樹脂としては、シーラント層16を形成するシーラント層形成用樹脂組成物が樹脂としてポリオレフィン樹脂を含む場合には、そのポリオレフィン樹脂と同様のポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。例えばシーラント層形成用樹脂組成物が樹脂としてポリプロピレンを含む場合には、第2接着剤層形成用樹脂組成物の酸変性ポリオレフィン樹脂のポリオレフィンは、ポリプロピレンであることが好ましい。この場合、第2接着剤層12bは、シーラント層16に対して高い密着性を有することができるとともに、外装材10の耐熱性を向上させることもできる。
【0069】
第2接着剤層形成用樹脂組成物が変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、第2接着剤層形成用樹脂組成物は、硬化剤として多官能イソシアネート化合物をさらに含むことが好ましい。この場合、第2接着剤層12bが多官能イソシアネート化合物をさらに含むことで、外装材10の水分バリア性がさらに向上する。
多官能イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート又はその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート又はその水素添加物、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート類;あるいはこれらのイソシアネート類を、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと反応させたアダクト体、水と反応させることで得られたビューレット体、あるいは三量体であるイソシアヌレート体(イソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物)等のポリイソシアネート類;あるいはこれらのポリイソシアネート類をアルコール類、ラクタム類、オキシム類等でブロック化したブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。
中でも、多官能イソシアネート化合物は、イソシアヌレート体(イソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物)を含むことが好ましい。この場合、多官能イソシアネート化合物がイソシアヌレート体を含むことで、第2接着剤層12bが、優れた密着性及び耐熱性を有することが可能となり、外装材10が、高いシール強度及び耐熱性を有することが可能となる。
【0070】
上記第2接着剤層形成用樹脂組成物は、硬化剤としてカルボジイミド化合物をさらに含むことが好ましい。この場合、上記第2接着剤層形成用樹脂組成物がカルボジイミド化合物をさらに含むことで、上記第2接着剤層形成用樹脂組成物がカルボジイミド化合物を含まない場合に比べて、外装材10のシール強度をより向上させることができ、水分バリア性をさらに向上させることができる。
カルボジイミド化合物としては、例えば、N,N’-ジ-o-トルイルカルボジイミド、N,N’-ジフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ジオクチルデシルカルボジイミド、N-トリイル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,2-ジ-t-ブチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
バリア層13上に腐食防止処理層14bが設けられており、且つ、第2の腐食防止処理層14bが上述したカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含む層を有する場合、上記第2接着剤層形成用樹脂組成物は、第2の腐食防止処理層14bに含まれる上記ポリマーと反応性を有する化合物(以下、「反応性化合物」とも言う)を含むことが好ましい。
【0072】
例えば、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマーを含む場合、上記第2接着剤層形成用樹脂組成物はカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。第2の腐食防止処理層14bがアニオン性ポリマーを含む場合、上記第2接着剤層形成用樹脂組成物はアニオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。また、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含む場合、上記第2接着剤層形成用樹脂組成物はカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物と、アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物とを含む。ただし、上記第2接着剤層形成用樹脂組成物は必ずしも上記2種類の化合物を含む必要はなく、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの両方と反応性を有する化合物を含んでいてもよい。ここで、「反応性を有する」とは、カチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーと共有結合を形成することである。
【0073】
カチオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記多官能イソシアネート化合物も、カチオン性ポリマーと反応性を有する化合物の一例である。
【0074】
グリシジル化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類と、エピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類と、エピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸と、エピクロルヒドリンとを作用させたエポキシ化合物等が挙げられる。
【0075】
カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、脂肪族カルボン酸化合物、芳香族ジカルボン酸化合物、及びこれらの塩が挙げられる。また、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ(土類)金属塩を用いてもよい。
【0076】
オキサゾリン基を有する化合物としては、例えば、オキサゾリンユニットを2つ以上有する低分子化合物、イソプロペニルオキサゾリンのような重合性モノマーを用いる場合には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等のアクリル系モノマーを共重合させたものが挙げられる。
【0077】
アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、グリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示したグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、アニオン性ポリマーとの反応性が高い点で、グリシジル化合物が好ましい。
【0078】
上記第2接着剤層形成用樹脂組成物が変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、反応性化合物は、変性ポリオレフィン樹脂とも反応性を有する(すなわち、変性ポリオレフィン樹脂と共有結合を形成する)ことが好ましい。これにより、第2の腐食防止処理層14bとの接着性がより高まる。加えて、変性ポリオレフィン樹脂が架橋構造となり、外装材10の耐溶剤性がより向上する。
【0079】
上記変性ポリオレフィン樹脂が例えば酸変性ポリオレフィン樹脂である場合、反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基に対し、等量から10倍等量であることが好ましい。反応性化合物の含有量が等量以上であれば、反応性化合物が酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基と十分に反応する。一方、反応性化合物の含有量が10倍等量以下であると、酸変性ポリオレフィン樹脂と反応性化合物との架橋反応において未反応物が存在しにくくなり、各種性能が低下しにくくなる。したがって、例えば、反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5~20質量部(固形分比)であることが好ましい。
【0080】
上記第2接着剤層形成用樹脂組成物は、硫化水素等の腐食性ガスや電解液が関与する場合のラミネート強度の低下を抑制する観点及び絶縁性の低下をさらに抑制する観点から、例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物と、カルボジイミド化合物とを含むことが好ましい。
【0081】
また、第2接着剤層12bを形成する第2接着剤層形成用樹脂組成物として、例えば、水添ダイマー脂肪酸及びジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートと、層状粘土鉱物フィラーとを配合したポリウレタン系接着剤を用いることもできる。第2接着剤層形成用樹脂組成物として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、二官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂や、エポキシ基を有する主剤にアミン化合物などを作用させたエポキシ樹脂等が挙げられ、耐熱性の観点から好ましい。
【0082】
上記第2接着剤層形成用樹脂組成物において、樹脂組成物中の層状粘土鉱物フィラーの含有率は特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~40質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、特に好ましくは2~15質量%である。
樹脂組成物中の層状粘土鉱物フィラーの含有率が0.1~40質量%であると、樹脂組成物中の層状粘土鉱物フィラーの含有率が0.1質量%未満である場合に比べて、層状粘土鉱物フィラーによる迷路効果が得られやすくなり、水分バリア性をより向上させることができる。また、樹脂組成物中の層状粘土鉱物フィラーの含有率が40質量%を超える場合に比べて、第2接着剤層12bが脆くなりにくくなり、外装材10のシール強度の低下や、バリア層13及びシーラント層16に対する密着性の低下をより抑制できる。
【0083】
上記第2接着剤層形成用樹脂組成物は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、脱水剤、結晶核剤等の各種添加剤を必要に応じてさらに含んでもよい。
【0084】
第2接着剤層12bの厚さは、特に限定されるものではないが、0.05~30μmであることが好ましい。この場合、第2接着剤層12bの厚さが0.05μm未満である場合に比べて、十分な接着性が得られる。また、第2接着剤層12bの厚さが30μmを超える場合に比べて、蓄電装置の体積エネルギー密度をより高めることができる。また、第2接着剤層12bの厚さは、0.1~10μmであることよりが好ましい。
【0085】
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層であり、蓄電装置の組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。
シーラント層16は、樹脂と、層状粘土鉱物フィラーとを含むシーラント層形成用樹脂組成物を用いて得られるフィラー含有層を含む。シーラント層16は、単層フィルム及び多層フィルムのいずれであってもよい。シーラント層16が多層フィルムである場合、すべての層がフィラー含有層であってもよく、一部の層のみがフィラー含有層であってもよい。例えばシーラント層16が2層フィルムである場合、2層フィルムのいずれもがフィラー含有層であってもよく、2層フィルムのうちの第2接着剤層12b側の層のみがフィラー含有層であってもよく、2層フィルムのうちの第2接着剤層12bと反対側の層のみがフィラー含有層であってもよい。
【0086】
(層状粘土鉱物フィラー)
層状粘土鉱物フィラーは、層状をなしており、シーラント層16中で層間が広がり、最終的には各層を分離させることができる。分離後は、層状粘土鉱物フィラーは、厚さ数nmの平板状薄片となり、この平板状薄片が存在することにより水分の侵入に対して水分の経路が蛇行する迷路効果を発現し、水分バリア性がより向上することが可能となる。
層状粘土鉱物フィラーは、層状粘土鉱物のみならなるフィラーでも、層状粘土鉱物を一部に含むフィラーであってもよい。
このような層状粘土鉱物フィラーとしては、スメクタイト族粘土鉱物及びベントナイトが挙げられる。ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする岩石名であり、モンモリロナイトとほぼ同様の性質を有する。
【0087】
スメクタイト族粘土鉱物としては、モンモリロナイト、サポナイト及びヘクトライトなどが挙げられる。中でも、スメクタイト族粘土鉱物としては、コスト及び取扱い安さの点で、モンモリロナイトが好ましい。
層状粘土鉱物フィラーとしては、スメクタイト族粘土鉱物、及び、ベントナイトが挙げられる。ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする岩石名であり、モンモリロナイトとほぼ同様の性質を有する。
モンモリロナイトは、非変性モンモリロナイトでも変性モンモリロナイトでもよい。変性モンモリロナイトは、有機変性モンモリロナイトを含むことが好ましい。変性モンモリロナイトが有機変性モンモリロナイトを含むと、シーラント層16において層状粘土鉱物が良好に分散されるため、外装材10の水分バリア性がさらに向上する。
有機変性モンモリロナイトとしては、4級アンモニウム変性モンモリロナイト、ホスホニウム変性モンモリロナイト、イミダゾリウム変性モンモリロナイトなどが挙げられる。中でも、4級アンモニウム変性モンモリロナイトが好ましい。この場合、シーラント層16において層状粘土鉱物が特に良好に分散されるため、水分バリア性がさらに向上する。
【0088】
(シーラント層形成用樹脂組成物)
上記シーラント層形成用樹脂組成物に含まれる樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。これらのシーラント層16を構成する樹脂(以下、「ベース樹脂」とも言う)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE又はLLDPE)、中密度ポリエチレン又は高密度のポリエチレンなどのポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン又はランダムポリプロピレンなどのポリプロピレン;プロピレンを共重合成分として含むブロック又はランダム共重合体;ポリブテン;及び、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、耐熱性及び柔軟性の観点から、ポリプロピレンが好ましく、ブロックポリプロピレンがより好ましい。
【0090】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂、及び、それらの共重合体等が挙げられる。
【0091】
上記樹脂は、ポリオレフィン系エラストマーを含んでいてもよい。ポリオレフィン系エラストマーは、上述したベース樹脂に対して相溶性を有するものであっても、相溶性を有さないものであってもよいが、相溶性を有する相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、相溶性を有さない非相溶系ポリオレフィン系エラストマーの両方を含んでいてもよい。相溶性を有する(相溶系)とは、ベース樹脂中に分散相サイズ1nm以上500nm未満で分散することを意味する。相溶性を有さない(非相溶系)とは、ベース樹脂中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散することを意味する。
【0092】
ベース樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体が挙げられ、非相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン-ブテン-1ランダム共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
上記樹脂は変性ポリオレフィン樹脂をさらに含むことが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂は、層状粘土鉱物フィラーにおいて、より層間に入りやすくなり、層状粘土鉱物フィラーをより良好に樹脂中に分散させることができる。また上記樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含むことで、シーラント層16が第2接着剤層12bに対して高い密着性を有することが可能となり、外装材10のラミネート強度を向上させることができる。
変性ポリオレフィン樹脂としては、水酸基変性ポリオレフィン樹脂、グリシジル変性ポリオレフィン樹脂及び酸変性ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。中でも、酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物及び不飽和エステルなどから導かれる不飽和カルボン酸誘導体により、グラフト変性されたポリオレフィン樹脂である。
【0094】
不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0095】
不飽和カルボン酸の酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸の酸無水物などが挙げられる。
【0096】
不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0097】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、及びプロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0098】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、第2接着剤層12bとシーラント層16との間で優れた密着性が得られる観点から、無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂には、例えば、三井化学株式会社製の「アドマー」、三菱化学株式会社製の「モディック」、東洋紡株式会社製の「トーヨータック」、三洋化成工業株式会社製の「サンスタック」などが適している。このような変性ポリオレフィン樹脂は、各種金属及び各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用してシーラント層16に密着性を付与することができる。
酸変性ポリオレフィン樹脂のポリオレフィンとしては、第2接着剤層12bを形成する第2接着剤層形成用樹脂組成物において酸変性ポリオレフィン樹脂を用いる場合には、酸変性ポリオレフィン樹脂のポリオレフィンと同様のポリオレフィンを用いることが好ましい。例えば第2接着剤層12bを形成する樹脂組成物が酸変性ポリプロピレンを含む場合には、シーラント層16を形成するシーラント層形成用樹脂組成物中の酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸変性ポリプロピレンであることが好ましい。この場合、シーラント層16が、第2接着剤層12bに対して高い密着性を有することが可能になるとともに、外装材10の耐熱性を向上させることもできる。
【0099】
シーラント層16において、樹脂組成物中の層状粘土鉱物フィラーの含有率は特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~40質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、特に好ましくは2~15質量%である。
樹脂組成物中の層状粘土鉱物フィラーの含有率が0.1~40質量%であると、樹脂組成物中の層状粘土鉱物フィラーの含有率が0.1質量%未満である場合に比べて、迷路効果が得られやすくなり、水分バリア性をより向上させることができる。また、樹脂組成物中の層状粘土鉱物フィラーの含有率が40質量%を超える場合に比べて、シーラント層16が脆くなりにくくなり、外装材10のシール強度の低下や第2接着剤層12bに対する密着性の低下をより抑制できる。
【0100】
また、シーラント層16は、添加成分として、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、脱水剤、粘着性付与剤、結晶核剤等を含んでいてもよい。これらの添加成分の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量部とした場合、5質量部以下であることが好ましい。
【0101】
シーラント層16の厚さは、特に限定されるものではないが、20~150μmの範囲であることが好ましく、30~150μmの範囲であることがより好ましく、40~100μmの範囲であることが更に好ましい。
シーラント層16の厚さが20μm以上であると、外装材10のシール強度がより向上する。シーラント層16の厚さが150μm以下であると、蓄電装置の体積エネルギー密度をより高めることができる。
【0102】
図1では、バリア層13の両面に腐食防止処理層14a,14bが設けられている場合を示したが、腐食防止処理層14a,14bのいずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0103】
図1では、第2接着剤層12bを接着層としてバリア層13とシーラント層16とが積層されている場合を示したが、
図2に示す外装材20のように、接着性樹脂層15が接着層としてバリア層13とシーラント層16との間に積層されていてもよい。また、
図2に示す外装材20において、バリア層13と接着性樹脂層15との間に第2接着剤層12bをさらに設けてもよい。
【0104】
<接着性樹脂層15>
接着性樹脂層15は、接着性樹脂層形成用樹脂組成物を用いて得られるフィラー含有層を含む。接着性樹脂層形成用樹脂組成物は、樹脂と、層状粘土鉱物フィラーとを含む。接着性樹脂層15は、単層フィルム及び多層フィルムのいずれであってもよい。接着性樹脂層15が多層フィルムである場合、すべての層がフィラー含有層であってもよく、一部の層のみがフィラー含有層であってもよい。
【0105】
(層状粘土鉱物フィラー)
層状粘土鉱物フィラーは、層状をなしており、接着性樹脂層15中で層間が広がり、最終的には各層を分離させることができる。分離後は、層状粘土鉱物フィラーは、厚さ数nmの平板状薄片となり、この平板状薄片が存在することにより水分の侵入に対して水分の経路が蛇行する迷路効果を発現し、水分バリア性がより向上することが可能となる。
層状粘土鉱物フィラーは、層状粘土鉱物のみならなるフィラーでも、層状粘土鉱物を一部に含むフィラーであってもよい。
このような層状粘土鉱物フィラーとしては、スメクタイト族粘土鉱物及びベントナイトが挙げられる。ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする岩石名であり、モンモリロナイトとほぼ同様の性質を有する。
【0106】
スメクタイト族粘土鉱物としては、モンモリロナイト、サポナイト及びヘクトライトなどが挙げられる。中でも、スメクタイト族粘土鉱物としては、コスト及び取扱い安さの点で、モンモリロナイトが好ましい。
層状粘土鉱物フィラーとしては、スメクタイト族粘土鉱物、及び、ベントナイトが挙げられる。ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする岩石名であり、モンモリロナイトとほぼ同様の性質を有する。
モンモリロナイトは、非変性モンモリロナイトでも変性モンモリロナイトでもよい。変性モンモリロナイトは、有機変性モンモリロナイトを含むことが好ましい。変性モンモリロナイトが有機変性モンモリロナイトを含むと、第2接着剤層12bにおいて層状粘土鉱物が良好に分散されるため、外装材10の水分バリア性がさらに向上する。
有機変性モンモリロナイトとしては、4級アンモニウム変性モンモリロナイト、ホスホニウム変性モンモリロナイト、イミダゾリウム変性モンモリロナイトなどが挙げられる。中でも、4級アンモニウム変性モンモリロナイトが好ましい。この場合、接着性樹脂層15において層状粘土鉱物が特に良好に分散されるため、水分バリア性がさらに向上する。
【0107】
(接着性樹脂層形成用樹脂組成物)
上記接着性樹脂層形成用樹脂組成物に含まれる樹脂は、特に制限されるものではないが、バリア層13との密着性を向上させる観点から、変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂は、層状粘土鉱物フィラーにおいて、より層間に入りやすくなり、層状粘土鉱物フィラーをより良好に樹脂中に分散させることができる。また上記接着性樹脂層形成用樹脂組成物の樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含むことで、接着性樹脂層15は、バリア層13及びシーラント層16に対して高い密着性を有することができ、外装材20のラミネート強度を向上させることができる。
変性ポリオレフィン樹脂としては、水酸基変性ポリオレフィン樹脂、グリシジル変性ポリオレフィン樹脂及び酸変性ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。中でも、バリア層13に対する密着性の点から、酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物及び不飽和エステルなどから導かれる不飽和カルボン酸誘導体により、グラフト変性されたポリオレフィン樹脂である。
【0108】
不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0109】
不飽和カルボン酸の酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸の酸無水物などが挙げられる。
【0110】
不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0111】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、及びプロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0112】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、バリア層13と接着性樹脂層15との間で優れた密着性が得られる観点から、無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂には、例えば、三井化学株式会社製の「アドマー」、三菱化学株式会社製の「モディック」、東洋紡株式会社製の「トーヨータック」、三洋化成工業株式会社製の「サンスタック」などが適している。このような変性ポリオレフィン樹脂は、各種金属及び各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用して接着性樹脂層15に密着性を付与することができる。
【0113】
ポリオレフィン樹脂としては、シーラント層16を形成するシーラント層形成用樹脂組成物が樹脂としてポリオレフィン樹脂を含む場合には、そのポリオレフィン樹脂と同様のポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。例えばシーラント層形成用樹脂組成物が樹脂としてポリプロピレンを含む場合には、接着性樹脂層形成用樹脂組成物の酸変性ポリオレフィン樹脂のポリオレフィンは、ポリプロピレンであることが好ましい。この場合、接着性樹脂層15は、シーラント層16に対して高い密着性を有することができるとともに、外装材10の耐熱性を向上させることもできる。
【0114】
接着性樹脂層15は、必要に応じて、例えば、各種相溶系及び非相溶系の、エラストマー、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、脱水剤、結晶核剤並びに粘着付与剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0115】
接着性樹脂層15の厚さは、特に限定されないが、1~30μmであることが好ましい。接着性樹脂層15の厚さが1μm以上であると、十分な接着性が得られる。接着性樹脂層15の厚さが30μm以下であると、外装材10の総厚が小さくなり、外装材10を用いて電池を作製したときの電池の体積エネルギー密度の低下を抑制することができる。バリア層13に対して第2の腐食防止処理層14bを介して接着性樹脂層15がドライラミネート法により貼り付けられる場合には、接着性樹脂層15の厚さは、1~10μmであることが好ましい。バリア層13に対して第2の腐食防止処理層14bを介して接着性樹脂層15が押出し法により貼り付けられる場合には、接着性樹脂層15の厚さは、5~30μmであることが好ましい。接着性樹脂層15の厚さは、応力緩和や水分透過の観点から、シーラント層16と同じ又はそれ未満であってもよい。
【0116】
また、外装材20においては、接着性樹脂層15及びシーラント層16の合計の厚さは、薄膜化と高温環境下でのシール強度の向上とを両立する観点から、5~180μmの範囲であることが好ましく、10~120μmの範囲であることがより好ましく、20~100μmの範囲であることがより一層好ましい。
【0117】
[外装材の製造方法]
次に、
図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0118】
本実施形態の外装材10の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、第2接着剤層12bを介してシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。
【0119】
(バリア層13への腐食防止処理層14a,14bの積層工程)
本工程は、バリア層13に対して、腐食防止処理層14a,14bを形成する工程である。その方法としては、上述したように、バリア層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗布したりする方法などが挙げられる。
【0120】
また、腐食防止処理層14a,14bが多層の場合、腐食防止処理層14a,14bは、例えば、下層側(バリア層13側)の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)をバリア層13に塗布し、焼き付けて第一層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を第一層に塗布し、焼き付けて第二層を形成し、これを繰り返すことにより形成することができる。
【0121】
脱脂処理は、スプレー法又は浸漬法にて行うことができる。熱水変成処理及び陽極酸化処理は、浸漬法にて行うことができる。化成処理は、化成処理のタイプに応じて、浸漬法、スプレー法、コート法等を適宜選択して行うことができる。
【0122】
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等の各種方法を用いることが可能である。
【0123】
上述したように、各種処理は、バリア層13を構成する金属箔の両面又は片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面はシーラント層16を積層する側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材層11の表面にも上記処理を施してもよい。
【0124】
また、第一層及び第二層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005~0.200g/m2、又は0.010~0.100g/m2であってもよい。
【0125】
また、乾燥キュアが必要な場合は、乾燥は、用いる腐食防止処理層14a,14bの乾燥条件に応じて、母材温度として60~300℃の範囲で行うことができる。
【0126】
(基材層11とバリア層13との貼り合わせ工程)
本工程は、腐食防止処理層14a,14bを設けたバリア層13と、基材層11とを、第1接着剤層12aを介して貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーション等の手法を用い、上述した第1接着剤層12aを構成する材料にて両者を貼り合わせる方法が挙げられる。第1接着剤層12aは、ドライ塗布量として1~10g/m2の範囲、又は2~7g/m2の範囲で設けてもよい。
【0127】
(第2接着剤層12b及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、バリア層13の第2の腐食防止処理層14b側に、第2接着剤層12bを介してシーラント層16を貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットラミネーション、ドライラミネーション等が挙げられる。
【0128】
例えばドライラミネーションでシーラント層16の貼り合わせを行う場合、第2接着剤層12bを形成するための第2接着剤層形成用樹脂組成物を、第2の腐食防止処理層14b上に塗工し、所定の温度で溶媒を飛ばして乾燥させた後、シーラント層16を積層する。第2接着剤層形成用樹脂組成物の塗工方法としては、先に例示した各種塗工方法が挙げられる。第2接着剤層形成用樹脂組成物の好ましいドライ塗布量は、第1接着剤層12aを形成するための第1接着剤層形成用樹脂組成物と同様である。
【0129】
また、第2接着剤層形成用樹脂組成物は、溶剤に、樹脂、層状粘土鉱物フィラー等を溶解又は分散させることにより得ることができる。なお、第2接着剤層形成用樹脂組成物は、まず溶剤に層状粘土鉱物フィラーを分散させ、その後に樹脂や硬化剤を配合することが好ましい。
【0130】
上記第2接着剤層形成用樹脂組成物は分散剤をさらに含むことが好ましい。この場合、分散剤により層状粘土鉱物フィラーの分散性を高めることができると共に、第2接着剤層12bの機能(例えば、密着強度等)の低下を抑制し易くなる。
分散剤としては、例えば金属石鹸(ステアリン酸亜鉛等)などの界面活性剤が用いられる。樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含む場合には、変性ポリオレフィン樹脂が分散剤として機能することも可能である。層状粘土鉱物フィラーを含む第2接着剤層形成用樹脂組成物が室温で液状である場合、層状粘土鉱物フィラーの分散性を高める観点から、層状粘土鉱物フィラーは、ビーズミル等の分散装置を用いて分散させることが好ましい。層状粘土鉱物フィラーを含む第2接着剤層形成用樹脂組成物が室温で固体状である場合、第2接着剤層形成用樹脂組成物を溶融させながら分散する混錬機等の分散装置を用いて、層状粘土鉱物フィラーを分散させることが好ましい。
【0131】
上記第2接着剤層形成用樹脂組成物中の層状粘土鉱物フィラーの平均粒径は特に制限されるものではないが、20μm以下であることが好ましい。層状粘土鉱物フィラーの平均粒径が20μm以下であることで層状粘土鉱物フィラーの分散状態を良好に維持することができ、製膜後の第2接着剤層12bの塗膜としての凝集力の低下も抑制することができる。層状粘土鉱物フィラーの平均粒径、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。層状粘土鉱物フィラーの平均粒径は0.01μm以上であることが好ましい。この場合、層状粘土鉱物フィラーの平均粒径が0.01μm未満である場合に比べて、粒子間で凝集が進みにくくなり、また分散中にも凝集体を形成しにくく、平均粒径が安定する。
なお、平均粒径は、電子顕微鏡により、複数個のフィラーを拡大した写真を撮影し、その後、画像解析により各フィラーの粒径を求め、これらの粒径の平均値を算出することで求められる。なお、各フィラーの粒径は、具体的には画像解析により求められる各フィラーの面積Sを円の面積とし、この円の面積Sから求められる半径r(r=(S/π)1/2)を2倍した値である。
【0132】
また、シーラント層16は、例えば、上述したシーラント層16を形成するためのシーラント層形成用樹脂組成物を用いて、Tダイを用いた溶融押出成形機により製造することができる。溶融押出成形機では、生産性の観点から、加工速度を80m/分以上とすることができる。
【0133】
シーラント層16を形成する際には、予め樹脂と層状粘土鉱物フィラーとを混合してマスターバッチを用意し、このマスターバッチを押出ラミネート等を行う際に上述したベース樹脂と混ぜ合わせて得られるシーラント層形成用樹脂組成物を用いてもよい。
このとき、ベース樹脂としては、例えばマスターバッチに含まれる樹脂とMFR等の特性が同程度の樹脂が用いられる。
マスターバッチを用意する際に層状粘土鉱物フィラーと混合される樹脂は、変性ポリオレフィン樹脂であってよい。変性ポリオレフィン樹脂としては、ベース樹脂に対する分散性を向上させる観点から、特に酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
さらに、シーラント層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度は、例えば5~50質量%とすればよい。シーラント層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度が5質量%以上であると、マスターバッチをシーラント層16中に均一に分散させることができる。また、シーラント層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度が50質量%以下であると、押出時の混練で分散が十分に行われ、膜切れ等の不具合が発生しにくくなる。
【0134】
また、シーラント層16を形成する際には、上記シーラント層形成用樹脂組成物は分散剤をさらに含むことが好ましい。この場合、分散剤により層状粘土鉱物フィラーの分散性を高めることができると共に、シーラント層16の機能(例えば、密着強度やシール強度等)の低下を抑制し易くなる。
分散剤としては、例えば金属石鹸(ステアリン酸亜鉛等)などの界面活性剤が用いられる。樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含む場合には、変性ポリオレフィン樹脂が分散剤として機能することも可能である。層状粘土鉱物フィラーを含むシーラント層形成用樹脂組成物が室温で液状である場合、層状粘土鉱物フィラーの分散性を高める観点から、層状粘土鉱物フィラーは、ビーズミル等の分散装置を用いて分散させることが好ましい。層状粘土鉱物フィラーを含むシーラント層形成用樹脂組成物が室温で固体状である場合、シーラント層形成用樹脂組成物を溶融させながら分散する混錬機等の分散装置を用いて、層状粘土鉱物フィラーを分散させることが好ましい。
【0135】
上記シーラント層形成用樹脂組成物中の層状粘土鉱物フィラーの平均粒径は特に制限されるものではないが、20μm以下であることが好ましい。層状粘土鉱物フィラーの平均粒径が20μm以下であることで層状粘土鉱物フィラーの分散状態を良好に維持することができる。層状粘土鉱物フィラーの平均粒径、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。層状粘土鉱物フィラーの平均粒径は0.01μm以上であることが好ましい。この場合、層状粘土鉱物フィラーの平均粒径が0.01μm未満である場合に比べて、粒子間で凝集が進みにくくなり、また分散中にも凝集体を形成しにくく、平均粒径が安定する。
なお、平均粒径は、電子顕微鏡により、複数個のフィラーを拡大した写真を撮影し、その後、画像解析により各フィラーの粒径を求め、これらの粒径の平均値を算出することで求められる。なお、各フィラーの粒径は、具体的には画像解析により求められる各フィラーの面積Sを円の面積とし、この円の面積Sから求められる半径r(r=(S/π)1/2)を2倍した値である。
【0136】
(エージング処理工程)
本工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/第2接着剤層12b/シーラント層16間の接着を促進させることができる。エージング処理は、室温~100℃の範囲で行うことができる。エージング時間は、例えば、1~10日である。
【0137】
このようにして、
図1に示すような、本実施形態の外装材10を製造することができる。
【0138】
次に、
図2に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0139】
本実施形態の外装材20の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、接着性樹脂層15及びシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体を熱処理する工程とを含んで概略構成されている。なお、基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
【0140】
(接着性樹脂層15及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、先の工程により形成された第2の腐食防止処理層14b上に、接着性樹脂層15及びシーラント層16を形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて接着性樹脂層15をシーラント層16とともにサンドラミネーションする方法が挙げられる。さらには、接着性樹脂層15とシーラント層16とを押し出すタンデムラミネート法、共押出法でも接着性樹脂層15及びシーラント層16を積層することが可能である。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成では、例えば、上述した接着性樹脂層形成用樹脂組成物及びシーラント層形成用樹脂組成物が用いられる。
【0141】
接着性樹脂層15を形成する際には、予め樹脂と層状粘土鉱物フィラーとを混合してマスターバッチを用意し、このマスターバッチを押出ラミネート等を行う際にベースとなる樹脂と混ぜ合わせて得られる接着性樹脂層形成用樹脂組成物を用いてもよい。
このとき、ベースとなる樹脂としては、例えばマスターバッチに含まれる樹脂とMFR等の特性が同程度の樹脂が用いられる。
マスターバッチを用意する際に層状粘土鉱物フィラーと混合される樹脂は、変性ポリオレフィン樹脂であってよい。変性ポリオレフィン樹脂としては、ベースとなる樹脂に対する分散性を向上させる観点から、特に酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
さらに、接着性樹脂層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度は、例えば5~50質量%とすればよい。接着性樹脂層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度が5質量%以上であると、マスターバッチを接着性樹脂層15中に均一に分散させることができる。また、接着性樹脂層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度が50質量%以下であると、押出時の混練で分散が十分に行われ、膜切れ等の不具合が発生しにくくなる。
【0142】
また、接着性樹脂層15を形成する際には、上記接着性樹脂層形成用樹脂組成物は分散剤をさらに含むことが好ましい。この場合、分散剤により層状粘土鉱物フィラーの分散性を高めることができると共に、接着性樹脂層15の機能(例えば、密着強度等)の低下を抑制し易くなる。
分散剤としては、例えば金属石鹸(ステアリン酸亜鉛等)などの界面活性剤が用いられる。樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含む場合には、変性ポリオレフィン樹脂が分散剤として機能することも可能である。層状粘土鉱物フィラーを含む接着性樹脂層形成用樹脂組成物が室温で液状である場合、層状粘土鉱物フィラーの分散性を高める観点から、層状粘土鉱物フィラーは、ビーズミル等の分散装置を用いて分散させることが好ましい。層状粘土鉱物フィラーを含む接着性樹脂層形成用樹脂組成物が室温で固体状である場合、接着性樹脂層形成用樹脂組成物を溶融させながら分散する混錬機等の分散装置を用いて、層状粘土鉱物フィラーを分散させることが好ましい。
【0143】
上記接着性樹脂層形成用樹脂組成物中の層状粘土鉱物フィラーの平均粒径は特に制限されるものではないが、20μm以下であることが好ましい。層状粘土鉱物フィラーの平均粒径が20μm以下であることで層状粘土鉱物フィラーの分散状態を良好に維持することができる。層状粘土鉱物フィラーの平均粒径、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。層状粘土鉱物フィラーの平均粒径は0.01μm以上であることが好ましい。この場合、層状粘土鉱物フィラーの平均粒径が0.01μm未満である場合に比べて、粒子間で凝集が進みにくくなり、平均粒径が安定する。
【0144】
シーラント層16の形成方法については、外装材10の製造方法におけるシーラント層16の形成方法と同様である。
【0145】
本工程により、
図2に示すような、基材層11/第1接着剤層12a/第1の腐食防止処理層14a/バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16の順で各層が積層された積層体が得られる。
【0146】
なお、接着性樹脂層15は、上述した材料配合組成になるように、ドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押し出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒した造粒物を、押出ラミネート機を用いて押し出すことで積層させてもよい。
【0147】
シーラント層16は、シーラント層形成用樹脂組成物の構成成分として上述した材料配合組成になるようにドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押し出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15及びシーラント層16は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を用いて、押出ラミネート機で接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、又は共押出法で積層させてもよい。また、シーラント層16は、シーラント層形成用樹脂組成物を用いて、事前にキャストフィルムとしてシーラント単膜を製膜し、このフィルムを接着性樹脂とともにサンドラミネーションする方法により積層させてもよい。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成速度(加工速度)は、生産性の観点から、例えば、80m/分以上であることができる。
【0148】
(熱処理工程)
本工程は、積層体を熱処理する工程である。積層体を熱処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16間での密着性を向上させることができる。熱処理の方法としては、少なくとも接着性樹脂層15の融点以上の温度で処理することが好ましい。
【0149】
このようにして、
図2に示すような、本実施形態の外装材20を製造することができる。
【0150】
以上、本開示の蓄電装置用外装材の好ましい実施形態について詳述したが、本開示はこれらの特定の実施形態に限定されるものではない。例えば外装材10においては、第2接着剤層12b及びシーラント層16がいずれも、層状粘土鉱物フィラーを含有するフィラー含有層を有しているが、外装材10においては、第2接着剤層12b及びシーラント層16の少なくとも一方が、層状粘土鉱物フィラーを含有するフィラー含有層を有していればよく、第2接着剤層12b及びシーラント層16のいずれか一方のみがフィラー含有層を有していてもよい。また、外装材20においても、接着性樹脂層15及びシーラント層16がいずれも、層状粘土鉱物フィラーを含有するフィラー含有層を有しているが、接着性樹脂層15及びシーラント層16のいずれか一方のみがフィラー含有層を有していてもよい。
【0151】
また、上述した外装材10,20は、水分バリア性を向上させることができるため、電解質が固体電解質である全固体電池のみならず、電解質が液体である蓄電装置にも適用できる。
【0152】
[蓄電装置]
次に、本開示の一実施形態に係る蓄電装置について
図3を参照しながら説明する。
図3は、本開示の一実施形態に係る蓄電装置の斜視図である。
図3に示されるように、蓄電装置50は、電池要素52と、電池要素52から延在し、電流を外部に取り出すための2つの金属端子(電流取出し端子)53と、金属端子53を挟持し、電池要素52を気密状態で収容する外装袋54とを含んで構成される。
【0153】
外装袋54は、外装材10を有している。外装材10では、基材層11が最外層であり、シーラント層16が最内層である。外装袋54は、基材層11を蓄電装置50の外部側、シーラント層16を蓄電装置50の内部側となるように、1つの外装材10を2つ折りにして周縁部を熱融着することにより、又は、2つの外装材10を重ねて周縁部を熱融着することにより形成される。
金属端子53は、シーラント層16を内側として容器を形成する外装袋54によって挟持され、密封されている。金属端子53は、タブシーラントを介して、外装材10によって挟持されていてもよい。
【0154】
蓄電装置50によれば、外装材10において、水分バリア性を向上させることができるため、外装袋54の内部への水分の浸入が抑制され、外装袋54の内部に収容される電池要素52の性能の低下を抑制することができる。
【0155】
電池要素52は、正極と、負極と、電解質とを有する。電解質は、少なくとも正極と負極との間に配置されている。
電解質は、液体電解質でも固体電解質でもよい。固体電解質としては、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質が挙げられる。
【0156】
蓄電装置50は、固体電解質が硫化物系固体電解質である場合に特に有用である。この場合、外装材10において、水分バリア性を向上させることができるため、外装袋54の内部への水分の浸入が抑制される。このため、硫化物系固体電解質中の硫黄と水分との反応による硫化水素の発生を抑制することができる。
【0157】
金属端子53は、集電体の一部が外装材10の外部に取り出されたものであり、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる。
なお、蓄電装置50では、外装材10に代えて外装材20を用いてもよい。
【実施例0158】
以下、実施例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0159】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
<基材層(厚さ15μm)>
ナイロン(Ny)フィルム(東洋紡社製)を用いた。
【0160】
<第1接着剤層形成用樹脂組成物>
第1接着剤層形成用樹脂組成物としては、ポリエステルポリオール系主剤と、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤とを含むポリウレタン系接着剤(東洋インキ株式会社製)を用いた。
【0161】
<第1の腐食防止処理層(基材層側)及び第2の腐食防止処理層(シーラント層側)の形成用材料>
第1の腐食防止処理層(基材層側)及び第2の腐食防止処理層(シーラント層側)の形成用材料としては、以下の(CL-1)及び(CL-2)を用いた。
(CL-1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度が10質量%になるように調整して得られる「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」
なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
(CL-2):溶媒として蒸留水を用い固形分濃度が5質量%になるように調整して得られる「ポリアリルアミン(日東紡社製)」90質量%と、「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」10質量%からなる組成物
【0162】
<バリア層(厚さ40μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
【0163】
<接着層形成用樹脂組成物>
接着層形成用樹脂組成物として、第2接着剤層形成用樹脂組成物及び接着性樹脂層形成用樹脂組成物を以下のようにして用意した。
(第2接着剤層形成用樹脂組成物)
第2接着剤層形成用樹脂組成物は、以下のようにして用意した。
すなわち、メチルシクロヘキサン及びメチルエチルケトンからなる溶剤中に、下記フィラーを必要に応じて分散させた後、下記の酸変性ポリオレフィン樹脂含有液、多官能イソシアネート化合物含有液及びカルボジイミド化合物含有液を添加することにより用意した。
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂含有液
日本製紙株式会社製、製品名:150S、酸変性ポリオレフィン樹脂:無水マレイン酸変性ポリプロピレン
(2)多官能イソシアネート化合物含有液
東ソー株式会社製、製品名:コロネートHXR、多官能イソシアネート化合物:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアヌレート樹脂
(3)カルボジイミド化合物含有液
日清紡ケミカル株式会社製、製品名:V-03
(4)層状粘土鉱物フィラー
A:エスベンNZ(製品名、日本有機粘土株式会社製、4級アンモニウム変性モンモリロナイト、平均粒径:1μm)
B:エスベンNZ70(製品名、日本有機粘土株式会社製、4級アンモニウム変性モンモリロナイト、平均粒径:1μm)
C:エスベンNX(製品名、日本有機粘土株式会社製、4級アンモニウム変性モンモリロナイト、平均粒径:1μm)
D:ゼオライト(株式会社シナネンゼオミック製、製品名:ダッシュライトZH、平均粒径:1μm)
上記第2接着剤層形成用樹脂組成物において、固形分に占めるフィラーの含有率は、表1に示すとおりとした。表1において、「%」は「質量%」である。また、使用したフィラーの種類は、表1に示すとおりである。
また、固形分においては、酸変性ポリオレフィン樹脂、多官能イソシアネート化合物及びカルボジイミド化合物の質量比が100:1:1となるようにした。
【0164】
(接着性樹脂層形成用樹脂組成物)
二軸押出機を用いて、接着性樹脂(ランダムポリプロピレン(PP)ベースの酸変性ポリプロピレン樹脂組成物、三井化学社製)と、表1に示す種類のフィラーとを含む接着性樹脂層形成用樹脂組成物を用意した。このとき、接着性樹脂層形成用樹脂組成物中のフィラーの含有率は、表1に示すとおりとした。表1において、「%」は「質量%」である。
【0165】
<シーラント層形成用樹脂組成物>
二軸押出機を用いて、ポリプロピレン-ポリエチレンランダム共重合体(プライムポリマー社製、商品名:F744NP)と、表1に示す種類のフィラーとを含むシーラント層形成用樹脂組成物を用意した。このとき、シーラント層形成用樹脂組成物の固形分中のフィラーの含有率は、表1に示すとおりとした。表1において、「%」は「質量%」である。
【0166】
[外装材の作製]
<実施例1及び3~16>
まずバリア層に、第1及び第2の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、バリア層の両方の面に(CL-1)を、ドライ塗布量として70mg/m2となるようにマイクログラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL-2)を、ドライ塗布量として20mg/m2となるようにマイクログラビアコートにより塗布することで、(CL-1)からなる層と(CL-2)からなる層で構成される複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL-1)と(CL-2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
【0167】
次に、第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第1接着剤層形成用樹脂組成物)を用いて基材層に貼りつけた。バリア層と基材層との積層は、第1の腐食防止処理層のうちバリア層と反対側の面上にポリウレタン系接着剤を、硬化後の厚さが5μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、基材層とラミネートし、60℃で72時間エージングすることで行った。こうして、バリア層及び基材層を含む第1積層体を得た。
【0168】
ついで、上記のようにして得られた第1積層体を押出ラミネート機の巻出部にセットし、第2の腐食防止処理層上に、フィラーの種類及び含有率を表1に示すとおりとした第2接着剤層形成用樹脂組成物を硬化後の厚さが5μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥した後、ドライラミネート用シーラント層とラミネートし、40℃、72時間エージングした。このとき、ドライラミネート用シーラント層としては、内側のシーラント層(厚さ40μm)、及び外側のシーラント層(厚さ40μm)をこの順で積層してなるドライラミネート用シーラント層を用いた。このドライラミネート用シーラント層は、フィラーの種類及び含有率を表1に示すとおりとした内側のシーラント層形成用樹脂組成物及び外側のシーラント層形成用樹脂組成物を270℃、100m/minの加工条件で共押出しすることで作製した。
【0169】
こうして外装材(基材層/第1接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2接着剤層/内側のシーラント層/外側のシーラント層)を作製した。
【0170】
(実施例2)
実施例1と同様にして、バリア層及び基材層を含む第1積層体を得た。
【0171】
次いで、上記のようにして得られた第1積層体を押出ラミネート機の巻出部にセットし、第2の腐食防止処理層上に、フィラーの種類及び含有率を表1に示すとおりとした接着性樹脂樹脂組成物、内側のシーラント層形成用樹脂組成物及び外側のシーラント層形成用樹脂組成物を270℃、100m/minの加工条件で共押出しすることで、接着性樹脂層(厚さ20μm)、内側のシーラント層(厚さ30μm)、及び外側のシーラント層(厚さ30μm)をこの順で積層し、第2積層体を得た。
【0172】
このようにして得られた第2積層体を、該第2積層体の最高到達温度が190℃になるように、熱処理を施した。こうして、外装材(基材層/第1接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/内側のシーラント層/外側のシーラント層)を作製した。
【0173】
(比較例1)
フィラーの種類及び含有率を表1に示すとおりとした第2接着剤層形成用樹脂組成物を用いて第2接着剤層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、外装材(基材層/第1接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2接着剤層/内側のシーラント層/外側のシーラント層)を作製した。
【0174】
(比較例2)
フィラーの種類及び含有率を表1に示すとおりとした接着性樹脂層形成用樹脂組成物を用いて接着性樹脂層を形成したこと以外は実施例2と同様にして、外装材(基材層/第1接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/内側のシーラント層/外側のシーラント層)を作製した。
【0175】
(比較例3)
フィラーの種類及び含有率を表1に示すとおりとした第2接着剤層形成用樹脂組成物を用いて第2接着剤層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、外装材(基材層/第1接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2接着剤層/内側のシーラント層/外側のシーラント層)を作製した。
【0176】
<評価>
(1)シール強度
(1-1)シール強度測定用サンプルの作製
作製した外装材を50mm(TD)×100mm(MD)のサイズにカットしたサンプルを、50mm×50mmのサイズにカットした化成処理済みアルミニウム箔を挟み込むように2つに折りたたみ、折りたたんだ部分とは反対側の端部を180℃/0.6MPa/10秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、ヒートシール部の長手方向中央部を15mm幅で切り出し(
図4を参照)、シール強度測定用サンプルを作製した。
(1-2)シール強度(室温)
上記のようにして作製したシール強度測定用サンプルに対し、室温(25℃)環境下で、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて、外装材と化成処理済みアルミニウム箔とを剥離するT字剥離試験を行い、シール強度を測定した。
(1-3)シール強度(80℃)
上記のようにして作製したシール強度測定用サンプルを、80℃の高温環境下で5分間放置した。その後、このシール強度測定用サンプルに対し、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて、外装材と化成処理済みアルミニウム箔とを剥離するT字剥離試験を行い、シール強度を測定した。
(1-4)評価
上記(1-2)及び(1-3)で得られたシール強度から、下記の基準に基づいてシール強度(バースト強度)について判定した。シール強度及び評価の結果を表1に示す。
(基準)
A:シール強度が20N/15mm以上
B:シール強度が15N/15mm以上、20N/15mm未満
C:シール強度が15N/15mm未満
【0177】
(2)ラミネート強度
幅15mm、長さ120mmにカットした外装材について、外装材の金属箔層とシーラント層との間で剥離するT字剥離試験を、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用い、室温環境下、引張速度50mm/分の条件にて行うことでラミネート強度を測定した。そして、得られたラミネート強度から、下記の基準に基づいてラミネート強度について判定した。ラミネート強度及び判定の結果を表1に示す。
(基準)
A:ラミネート強度が10N/15mm以上、又は、剥離不可
B:ラミネート強度が3N/15mm以上10N/15mm未満
C:ラミネート強度が3N/15mm未満
【0178】
(3)水分バリア性
作製した外装材を2枚切り出し、シーラント層を対向させ、内包サイズが100mm×45mmとなるように三辺をヒートシールにより接合した。開放された一辺からリチウム塩を含まない電解液を3g注入し、開放された一辺をヒートシールして密閉した。その後、ヒートシール幅が5mmとなるように周縁をトリミングし、40℃90%RH(相対湿度)の環境下で1日放置した。その後、内包された電解液中の含有水分量をカールフィッシャー水分計にて測定し、測定した含有水分量から透過水分量を算出した。得られた水分量から、下記の基準に基づいて水分バリア性について判定した。水分量及び判定の結果を表1に示す。
(基準)
◎:水分透過率が10-2g/m2・day未満
○:水分透過率が10-1g/m2・day未満、10-2g/m2・day以上
×:水分透過率が10-1g/m2・day以上
【0179】
【0180】
表1に示す結果より、実施例1~16では、水分バリア性の判定が「◎」又は「○」であったのに対して、比較例1~3では、水分バリア性の判定が「×」であった。
【0181】
以上のことから、本開示の蓄電装置用外装材によれば、水分バリア性を向上させることができることが確認された。
【0182】
なお、本開示の概要は以下のとおりである。
[1]少なくとも基材層、バリア層、接着層、及び、シーラント層をこの順に備えた、蓄電装置用の外装材であって、前記接着層及び前記シーラント層の少なくとも一方が、層状粘土鉱物を含むフィラーを含有するフィラー含有層を含む、蓄電装置用外装材。
[2]前記フィラー含有層が、樹脂及び前記フィラーを含む樹脂組成物を用いて得られる、[1]に記載の蓄電装置用外装材。
[3]前記接着層及び前記シーラント層のうち前記接着層が前記フィラー含有層を含み、前記樹脂組成物の前記樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含む、[2]に記載の蓄電装置用外装材。
[4]前記樹脂組成物が多官能イソシアネート化合物をさらに含む、[2]又は[3]に記載の蓄電装置用外装材。
[5]前記樹脂組成物がカルボジイミド化合物をさらに含む、[2]~[4]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
[6]前記層状粘土鉱物が有機変性モンモリロナイトを含む、[2]~[5]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
[7]前記有機変性モンモリロナイトが4級アンモニウム変性モンモリロナイトを含む、[6]に記載の蓄電装置用外装材。
[8]前記変性ポリオレフィン樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂である、[3]に記載の蓄電装置用外装材。
[9]前記多官能イソシアネート化合物がイソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物を含む、[4]に記載の蓄電装置用外装材。
[10]前記樹脂組成物中の前記フィラーの含有率が0.1~40質量%である、[2]~[9]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
[11]前記バリア層の一方又は両方の面に腐食防止処理層をさらに備える、[1]~[10]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
[12]前記蓄電装置が全固体電池である、[1]~[11]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
[13]前記全固体電池が硫化物系固体電解質を含む、[12]に記載の蓄電装置用外装材。
[14]電池要素と、前記電池要素を収容する外装袋とを備え、前記外装袋が、[1]~[11]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材を有する、蓄電装置。
[15]全固体電池である、[14]に記載の蓄電装置。
[16]前記電池要素が硫化物系固体電解質を含む、[15]に記載の蓄電装置用外装材。
10,20…外装材(蓄電装置用外装材)、11…基材層、12b…第2接着剤層(接着層)、13…バリア層、14a…第1の腐食防止処理層、14b…第2の腐食防止処理層、15…接着性樹脂層(接着層)、16…シーラント層、50…蓄電装置、52…電池要素、54…外装袋。