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特開2024-8916不透明境界構成を含むガラスアセンブリおよびガラスアセンブリの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008916
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】不透明境界構成を含むガラスアセンブリおよびガラスアセンブリの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023112016
(22)【出願日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】17/860488
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519196036
【氏名又は名称】エージーシー オートモーティヴ アメリカズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジャンピン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ディー.ペック
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル トーマス マチ
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン ジョーンズ
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA26
4G061BA02
4G061CA01
4G061CA05
4G061CB16
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA23
4G061DA30
4G061DA32
4G061DA38
(57)【要約】
【課題】不透明境界構成を有するガラスアセンブリを製造する改良された方法を提供する。
【解決手段】不透明境界構成を有するようにガラスアセンブリを製造する方法が、湾曲した第1のガラス基板および湾曲した第2のガラス基板を形成するステップを含み、第1のガラス基板は、外面(P1)および対向する内面(P2)を有し、第2のガラス基板は、内面(P3)および対向する外面(P4)を有する。本方法は、P2表面およびP3表面のうちの少なくとも1つの上にマスクを用いないで有機インクをデジタル的に塗布するステップも含む。本方法は、有機インクを硬化させて、P2表面およびP3表面のうちの少なくとも1つの上に不透明境界構成を形成するステップをさらに含む。本方法は、P2表面とP3表面との間にポリマ中間層を配置するステップも含む。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明境界構成を有するようにガラスアセンブリを製造する方法であって、
外面(P1)および対向する内面(P2)を有する、湾曲した第1のガラス基板と、内面(P3)および対向する外面(P4)を有する、湾曲した第2のガラス基板とを形成するステップと、
前記第1の湾曲したガラス基板の前記P2表面および前記第2の湾曲したガラス基板の前記P3表面のうちの少なくとも1つの上にマスクを用いないで有機インクをデジタル的に塗布するステップと、
前記有機インクを硬化させて、前記第1の湾曲したガラス基板の前記P2表面および前記第2の湾曲したガラス基板の前記P3表面のうちの少なくとも1つの上に前記不透明境界構成を形成するステップと、
前記第1のガラス基板の前記P2表面と前記第2のガラス基板の前記P3表面との間にポリマ中間層を配置するステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記不透明境界構成は、前記ガラスアセンブリの周縁に隣接して配置される光学センサ境界を含み、前記光学センサ境界は、前記ガラスアセンブリに取り付けられる光学センサの視野と整列される感知窓を画定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガラスアセンブリは、前記感知窓内で100ミリジオプタ未満の光学的ひずみを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記不透明境界構成は、前記ガラスアセンブリの周縁全体の周囲に延在するバンドとして形成され、かつ/あるいは、
前記ガラスアセンブリは、セラミックフリットがない、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
セラミックフリットを含むエナメルを前記第1の湾曲したガラス基板および前記第2の湾曲したガラス基板のうちの少なくとも1つのガラス基板の表面の上に塗布することによって、ならびに前記エナメルを含む前記第1の湾曲したガラス基板および前記第2の湾曲したガラス基板のうちの前記少なくとも1つのガラス基板を焼成して、前記エナメルを前記第1の湾曲したガラス基板および前記第2の湾曲したガラス基板のうちの前記少なくとも1つのガラス基板に融合させて、前記不透明境界構成の第1の部分を形成することによって、前記不透明境界構成の前記第1の部分を形成するステップと、
前記第1の湾曲したガラス基板の前記P2表面および前記第2の湾曲したガラス基板の前記P3表面のうちの少なくとも1つの表面の上にマスクを用いないで前記有機インクをデジタル的に塗布することによって、ならびに前記有機インクを硬化させて、前記第1の湾曲したガラス基板の前記P2表面および前記第2の湾曲したガラス基板の前記P3表面のうちの少なくとも1つの表面の上に前記不透明境界構成の第2の部分を形成することによって、前記不透明境界構成の前記第2の部分を形成するステップと、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有機インクをデジタル的に塗布する前記ステップは、前記P2表面および前記P3表面のうちの少なくとも1つの表面の上に前記有機インクをインクジェット印刷するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機インクは、熱劣化温度を有し、前記有機インクを硬化させて前記不透明境界構成を形成する前記ステップは、前記有機インクの前記熱劣化温度より下で起こり、かつ/あるいは、
前記有機インクを硬化させて前記不透明境界構成を形成する前記ステップは、UV硬化デバイスを用いて前記有機インクを光硬化することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記有機インクを硬化させる前記ステップは、前記有機インクをデジタル的に塗布する前記ステップ後の5秒内に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プリントヘッドとUV硬化デバイスとを含むロボットアプリケータを提供するステップと、前記ロボットアプリケータを前記P2表面および前記P3表面のうちの少なくとも1つの表面に隣接して位置決めするステップとをさらに含み、
前記有機インクをデジタル的に塗布する前記ステップは、前記ロボットアプリケータが前記プリントヘッドを前記P2表面および前記P3表面のうちの少なくとも1つの表面に沿って移動させるときに、前記ロボットアプリケータの前記プリントヘッドからの前記有機インクを、マスクを用いないで前記P2表面および前記P3表面のうちの少なくとも1つの表面の上にデジタル的に塗布することを含み、
前記有機インクを硬化させて前記不透明境界構成を形成する前記ステップは、前記ロボットアプリケータが前記P2表面および前記P3表面のうちの少なくとも1つの表面に沿って移動するときに、前記ロボットアプリケータの前記UV硬化デバイスを活性化させて、前記デジタル的に塗布される有機インクを光硬化させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記不透明境界構成は、前記P2表面および前記P3表面のうちの少なくとも1つの表面の上に15μm未満の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記有機インクをデジタル的に塗布する前記ステップは、1インチ当たり400ドットよりも大きい解像度で前記有機インクをデジタル的に塗布することをさらに含み、かつ/あるいは、
前記不透明境界構成は、1インチ当たり200ドットよりも大きい解像度を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によって形成されるガラスアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2022年7月8日に出願された米国特許出願第17/860,488号に対する優先権を主張し、その出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般的には、ガラスアセンブリおよびガラスアセンブリを製造する方法に関し、より具体的には、不透明境界構成を含むガラスアセンブリおよび不透明境界構成を含むようにガラスアセンブリを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車の脈絡で使用されるガラスアセンブリは、しばしば、不透明な境界構成(opaque boundary features)を含む。これらの不透明境界構成は、自動車用の積層板の周縁の周囲に延在する「ブラックバンド(black bands)」または光学センサの視野と整列された感知窓を画定する光学センサ境界を含む。これらの不透明境界構成は、典型的には、顔料とセラミックフリットとを含むエナメルを平坦なガラス基板上に堆積させ、引き続き、500℃を超える温度でガラス基板を焼成して、エナメルのセラミックフリットをガラス基板中に融合させることによって形成される。融合されたセラミックフリットを含むガラス基板は、典型的には、ガラス基板を所望の形状に曲げるために、600℃を超える温度で焼成される。問題として、セラミックフリットを含むガラスアセンブリがこれらの高温で焼成されるときに、セラミックフリットを含むガラスアセンブリの部分は、セラミックフリットを含まないガラスアセンブリの残部とは異なる熱吸収をする。例えば、セラミックフリットを含むガラスアセンブリの部分は、650℃の温度にあることがある一方で、(セラミックフリットを含まない)ガラスアセンブリの残部は、640℃の温度にあることがある。従って、セラミックフリットを含むガラスアセンブリの部分は、セラミックフリットを含まないガラスアセンブリの残部分の柔らかさとは異なる柔らかさを有する。セラミックフリットを含むガラスアセンブリの部分およびガラスアセンブリの残部の異なる柔らかさは、ガラスアセンブリの各部分の異なる変形を引き起こし、それによって、ガラスアセンブリの顕著な光学的ひずみ(optical distortion)を引き起こし、ガラスアセンブリの強度に影響を及ぼす。この光学的ひずみは、カメラおよびLIDARセンサを含む、半自律的または自律的駆動のために使用される光学センサの性能に対して特に悪影響を有する。
【0004】
加えて、エナメルを堆積させるための従来のアナログ印刷プロセス(例えば、スクリーン印刷、マスクを用いたスプレー印刷など)は、一般に、約200ドット/インチの最大解像度に制限され、典型的には、マスクを必要とする。一例として、従来のスクリーン印刷プロセスでは、印刷されるべき所望のエリアに対応する空隙を画定するマスク(すなわち、「スクリーン」)が、基板上に配置される。エナメルは、ローラ、スキージ(squeegee)、ブラシ、スプレーなどのような、手動プロセスでマスク上に堆積される。これらの手動プロセスは、マスクの空隙の全てが十分に満たされることを確実にするために、しばしば、マスクの上に余分なエナメルを堆積させることを必要とする。さらに、従来のアナログ印刷プロセスは、典型的には、平坦な基板上で実行される。何故ならば、湾曲した基板上に正確かつ反復可能に印刷することは困難だからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の観点から、不透明境界構成を有するガラスアセンブリを製造する改良された方法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、不透明境界構成を有するようにガラスアセンブリを製造する方法を含む。本方法は、湾曲した第1のガラス基板および湾曲した第2のガラス基板を形成するステップを含み、第1のガラス基板は、外面(P1)および対向する内面(P2)を有し、第2のガラス基板は、内面(P3)および対向する外面(P4)を有する。本方法は、P2表面およびP3表面のうちの少なくとも1つの上にマスクを用いないで有機インクをデジタル的に塗布するステップも含む。本方法は、有機インクを硬化させて、P2表面およびP3表面のうちの少なくとも1つの上に不透明境界構成を形成するステップをさらに含む。本方法は、P2表面とP3表面との間にポリマ中間層を配置するステップも含む。有利には、第1および第2の湾曲したガラス基板を形成した後に有機インクをデジタル的に塗布することによって、セラミックフリットを含む従来のエナメルを含むガラスアセンブリを焼成することによって生じる光学的ひずみが防止される。さらに、有機インクをデジタル的に塗布することによって与えられる精密な制御の故に、有機インクは、従来のアナログ印刷プロセスよりも有意に厳しい公差で堆積され、有意に詳細な構成(detailed features)を形成することがある。
【0007】
本開示の利点は、添付の図面に関連して考察されたときに、本開示が以下の詳細な記述を参照することによってよく理解されるようになるので、容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の方法を示すフローチャートである。
【0009】
図2】不透明境界構成を含む前面ガラスアセンブリを含む車両の部分正面図である。
【0010】
図3】湾曲した第1のガラス基板および湾曲した第2のガラス基板を形成するステップを表す断面概略図である。
【0011】
図4A】第1の湾曲したガラス基板上に有機インクをデジタル的に塗布し、有機インクを硬化させて不透明境界構成を形成するステップの正面概略図である。
【0012】
図4B図4Aの頂面斜視図である。
【0013】
図5A】第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲したガラス基板との間にポリマ中間層を配置するステップの断面概略図である。
図5B】第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲したガラス基板との間にポリマ中間層を配置するステップの断面概略図である。
図5C】第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲したガラス基板との間にポリマ中間層を配置するステップの断面概略図である。
【0014】
図6A】不透明境界構成を含む線6~6に沿って取られた図2のガラスアセンブリの例の断面概略図である。
図6B】不透明境界構成を含む線6~6に沿って取られた図2のガラスアセンブリの例の断面概略図である。
図6C】不透明境界構成を含む線6~6に沿って取られた図2のガラスアセンブリの例の断面概略図である。
【0015】
図7A】バンドとして形成された不透明境界構成を含むガラスアセンブリの正面図である。
【0016】
図7B】バンドとして形成された不透明境界構成を含むガラスアセンブリの正面図であり、バンドは、第1のエッジで第1の不透明度を有し、第2のエッジで第2の不透明度を有する。
【0017】
図8A】光学センサ境界として形成された不透明境界構成を含む線8~8に沿って取られた図2のガラスアセンブリの例の断面概略図である。
図8B】光学センサ境界として形成された不透明境界構成を含む線8~8に沿って取られた図2のガラスアセンブリの例の断面概略図である。
図8C】光学センサ境界として形成された不透明境界構成を含む線8~8に沿って取られた図2のガラスアセンブリの例の断面概略図である。
【0018】
図9A】バンドとして形成された不透明境界構成と、感知窓を画定する光学センサ境界とを含み、感知窓は可視光に対して透明である、ガラスアセンブリの正面図である。
【0019】
図9B】バンドとして形成された不透明境界構成と、感知窓を画定する光学センサ境界とを含み、感知窓は可視光に対して不透明であり、赤外光に対して透明である、ガラスアセンブリの正面図である。
【0020】
図9C】セラミックフリットを含むエナメルから形成された第1の部分と有機インクから形成された第2の部分とを含む不透明境界構成を含む、ガラスアセンブリの正面図である。
【0021】
図10A】不透明境界構成とグラフィックを包含する情報とを含む線10~10に沿って取られた図2のガラスアセンブリの例の断面概略図である。
図10B】不透明境界構成とグラフィックを包含する情報とを含む線10~10に沿って取られた図2のガラスアセンブリの例の断面概略図である。
【0022】
図11A】不透明境界構成とグラフィックを包含する情報とを含むガラスアセンブリの正面図である。
図11B】不透明境界構成とグラフィックを包含する情報とを含むガラスアセンブリの正面図である。
図11C】不透明境界構成とグラフィックを包含する情報とを含むガラスアセンブリの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照すると、様々な図において同様または同一のコンポーネント(構成要素)を識別するために同様の参照番号が使用されており、図1は、不透明境界構成26(opaque boundary feature)を有するようにガラスアセンブリ20を形成する方法100を概略的に示す。一例において、ガラスアセンブリ20は、フロントガラス、サイドウインドウ(横窓)、クォータウインドウ(三角窓)、リアウインドウ(後部窓)などのような、自動車用のウインドウとして、自動車の脈絡において使用されることがある。例えば、図2は、不透明境界構成26を含むように方法100に従って形成されたフロントガラスアセンブリ20を含む車両18を示す。もちろん、ガラスアセンブリ20を形成する方法100は、自動車の脈絡の外側にあり得ることが理解されるべきである。
【0024】
図1図5Cを参照すると、ガラスアセンブリ20を形成する方法100は、湾曲した第1のガラス基板22および湾曲した第2のガラス基板24を形成するステップS1と、第1の湾曲したガラス基板22の内面および第2の湾曲したガラス基板24の内面のうちの少なくとも1つにマスクを用いずに有機インクOIをデジタル的に塗布するステップS2と、有機インクOIを硬化させて、第1の湾曲したガラス基板22の内面および第2の湾曲したガラス基板24の内面のうちの少なくとも1つに不透明境界構成26を形成するステップS3と、第1のガラス基板22の内面と第2のガラス基板24の内面との間にポリマ中間層28を配置するステップS4とを含む。方法100のステップS1、S2、S3の各々の記述は、以下のさらなる詳細に含まれる。
【0025】
上述のように、方法100のステップS1は、湾曲した第1のガラス基板22および湾曲した第2のガラス基板24を形成するステップを含む。図3を参照すると、第1の湾曲したガラス基板22は、外面(P1)および対向する内面(P2)を有するように形成される。同様に、第2の湾曲したガラス基板24は、内面(P3)および対向する外面(P4)を有するように形成される。一例において、P4表面は、車両に装着されるときに車両の内部に面するように配置されることがある一方で、P1表面は、車両に装着されるときに車両から外向きに面するように配置されることがある。
【0026】
引き続き図3を参照すると、ステップS1の一例では、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24の両方が、最初は第1の平坦なガラスシート22Fおよび第2の平坦なガラスシート24Fとして形成されてよい。第1の平坦なガラスシート22Fおよび第2の平坦なガラスシート24Fは、フロートプロセス(flat process)を含むが、これに限定されない、任意の適切な平坦ガラス製造プロセスを用いて製造されてよい。第1の平坦なガラスシート22Fおよび第2の平坦なガラスシート24Fは、ソーダ石灰ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ホウアルミノケイ酸塩ガラスなどを含むが、これらに限定されない、任意の適切なガラス組成から構成されてよい。第1の平坦なガラスシート22Fおよび第2の平坦なガラスシート24Fは、同じまたは異なるガラス組成から構成されてよいことが理解されるべきである。
【0027】
引き続き図3を参照すると、第1の平坦なガラスシート22Fおよび第2の平坦なガラスシート24Fを形成した後、第1の平坦なガラスシート22Fおよび第2の平坦なガラスシート24Fを屈曲させて、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24を形成する。第1の平坦なガラスシート22Fおよび第2の平坦なガラスシート24Fは、限定されるわけではないが、プレス曲げ、重力曲げ(すなわち、たるみ曲げ(sag bending))、ロール成形、または冷間曲げを含む、任意の適切なガラス曲げプロセスを用いて曲げられてよい。第1の平坦なガラスシート22Fおよび第2の平坦なガラスシート24Fは、所望の用途に適した任意の幾何学的形状に曲げられてよい。第1の平坦なガラスシート22Fおよび第2の平坦なガラスシート24Fは、一緒に曲げられてよく(すなわち、互いに隣接して配置される間に曲げられてよく)、あるいは別個に曲げられてよいことが理解されるべきである。
【0028】
有利には、曲げプロセスの間に、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24は、特にひずみ(distortion)を最小限に抑えることが重要であるガラスアセンブリ20の部分(例えば、光学センサの視野)上に、セラミックフリット(ceramic frit)を含む従来のエナメルを含まないことがある。従って、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24は、セラミックフリットを含む従来のエナメルを含む基板よりも均一に熱を吸収し、それによって、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24の不均一な変形(すなわち、光学的ひずみ)を防止する。代わりに、ステップS2およびS3の脈絡において以下に記載するように、有機インクOIを第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24の表面に塗布し、硬化させて、ステップS1後に不透明境界構成26を形成する。
【0029】
ステップS1の他の例において、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24は、平坦なガラスシート22F,24Fを製造し、引き続き、曲げることとは対照的に、最初から湾曲した基板として形成されてよい。例えば、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24は、ガラスブロー成形を含むが、これに限定されない、任意の適切な湾曲したガラスを製造するプロセスを使用して製造されてよい。上述の平坦なガラスシート22F、24Fと同様に、この例において、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24は、ソーダ石灰ガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、ホウ珪酸塩ガラス、ホウアルミノ珪酸塩ガラスなどを含むが、これらに限定されない、任意の適切なガラス組成から構成されてよい。同様に、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24は、同じまたは異なるガラス組成から構成されてよいことも理解されるべきである。
【0030】
幾つかの例において、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24は、透明である。この文脈において、(「実質的に透明(substantially transparent)」とも呼ぶ)「透明」(transparent)という用語は、貫通して移動する所定の可視光範囲内の70%以上の光透過率を可能にする材料を指す。特に断らない限り、所定の可視光範囲は、人間の眼が見ることができる電磁スペクトルのセグメントである。より簡単に言えば、この範囲の波長は、可視光と呼ばれる。典型的には、人間の眼は、約380~約780ナノメートルの波長を検出することができ、よって、本明細書で定義されるような所定の可視光の範囲は、特に断らない限り、約380~約780ナノメートルの光の波長を指す。幾つかの例において、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24は、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24の透過率を変化させるために様々な添加剤を含むことがあり、例えば、添加剤は、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24が上述のように「透明」または「実質的に透明」に維持しながら、様々なレベルの色合い(tint)または着色(coloration)を提供することがある。
【0031】
他の例において、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24の一方または両方は、上述したよりも透明性が少ない。例えば、ガラスアセンブリ20がプライバシーガラスである場合、ガラスアセンブリ20の透明度は、実質的に低下し、よって、ガラスアセンブリ20は、所定の波長範囲での0~70%の光透過のような、所定の波長範囲での70%未満の光透過を可能にする。
【0032】
第1の湾曲したガラス基板22は、厚さT1を有し、第2の湾曲したガラス基板24は、厚さT2を有する。第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24の厚さT1、T2は、それぞれ、用途に適した厚さであってよい。例えば、自動車用積層板(automotive laminate)の用途において、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24の厚さT1、T2は、それぞれ、約0.3mm~約4.1mmであることがある。より具体的には、厚さT1、T2は、各々、約0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、3.0mm、3.1mm、3.2mm、3.3mm、3.4mm、3.5mm、3.6mm、3.7mm、3.8mm、3.9mm、4.0mm、または4.1mmであることがある。厚さT1および厚さT2は、同じものであることも異なるものであることもできることが理解されるべきである。一例において、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24は、ガラスアセンブリ20が「対称的な」積層板とみなされるように、同じ厚さを有する(すなわち、T1がT2に等しい)。しかしながら、別の例において、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24は、ガラスアセンブリ20が「非対称的な」積層板とみなされるように、異なる厚さを有する(すなわち、T1がT2に等しくない)。上記の例示的なT1およびT2値の全ての組み合わせならびにそれらの間の全ての分数値が想定される。
【0033】
方法100のステップS2は、第1の湾曲したガラス基板22のP2表面および第2の湾曲したガラス基板24のP3表面のうちの少なくとも1つに、マスクを用いずに有機インクOIをデジタル的に塗布することを含む。例えば、図4A図4Bは、第1の湾曲したガラス基板22のP2表面に有機インクOIをデジタル的に塗布することを図示している。しかしながら、「第1の湾曲したガラス基板22のP2表面および第2の湾曲したガラス基板24のP3表面のうちの少なくとも1つ」とは、P2表面のみ、P3表面のみ、またはP2表面およびP3表面の両方に有機インクOIをデジタル的に塗布することを含むことが理解されるべきである。
【0034】
注目すべきことに、有機インクOIは、典型的には、ステップS2においてデジタル的に塗布されるときに液体である。しかしながら、有機インクOIは、粉末を含むが、これに限定されない、他の形態において塗布されることもあることが理解されるべきである。加えて、有機インクOIは、セラミックフリットがないことがあり、よって、幾つかの例において、方法100に従って形成されるガラスアセンブリ20は、セラミックフリットがないことがある。以下にさらに詳細に記載するように、方法100は、有機インクOIを硬化させて、有機インクOIを固化させて、不透明境界構成26を形成するステップS3を含む。
【0035】
注目すべきことに、有機インクOIは、それが塗布される基板上で、焼成されるのではなく、固化されるので、有機インクOIは、セラミックフリットを含むエナメルのように基板に融合しない。有利には、方法100に従って形成されるガラスアセンブリ20は、有機インクOIを第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24に融合するように焼成されないので、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24の強度は、影響を受けない。しかしながら、有機インクOIは、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24に融合しないので、不透明境界構成26は、セラミックフリットを含むエナメルから形成される従来の不透明境界構成よりも脆弱なことがある。従って、(ステップS4の脈絡において以下に記載する)ガラスアセンブリ20の積層後に、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24が不透明境界構成26を周囲の環境から保護するように、不透明境界構成26がガラスアセンブリ20内に挟まれるように、第1の湾曲したガラス基板22のP2表面および第2の湾曲したガラス基板24のP3表面の少なくとも1つに有機インクOIをデジタル的に塗布することは、有利である。
【0036】
有機インクOIの別の利点は、ガラスアセンブリ20がリサイクル可能であることを可能にすることである。従来のエナメルを含むガラスアセンブリを溶融されるならば、エナメルは、溶融ガラスが車両のガラスアセンブリとしての再利用に適さないように、溶融ガラスを汚染するであろう。しかしながら、ガラスアセンブリ20が方法100に従って形成されるときには、有機インクOIはガラスアセンブリ20が溶融されるときに燃え尽き、よって、溶融ガラスを汚染しない。
【0037】
「デジタル的に塗布する(digitally-applying」という用語は、従来のアナログ印刷プロセスとは対照的に、有機インクOIの塗布が、デジタルベースの画像に従って有機インクOIを基板上に堆積させるためにデジタル的に制御される、任意の適切な塗布プロセスを指す。有機インクOIをデジタル的に塗布するための例示的なプロセスは、インクジェット印刷、電気流体力学的印刷、レーザ印刷などを含むが、これらに限定されない。注目すべきことには、方法100のステップS2に従って有機インクOIをデジタル的に塗布することによって与えられる精密な制御の故に、有機インクOIは、従来のアナログ印刷プロセスよりも有意に高い解像度で堆積されることがある。例えば、有機インクOIは、200ドット/インチより大きい、300ドット/インチより大きい、400ドット/インチより大きい、500ドット/インチより大きい、600ドット/インチより大きい、700ドット/インチより大きい、800ドット/インチより大きい、900ドット/インチより大きい、1000ドット/インチより大きい、1100ドット/インチより大きい、1200ドット/インチより大きい、1300ドット/インチより大きい、1400ドット/インチより大きい、1500ドット/インチより大きい、1600ドット/インチより大きい、1700ドット/インチより大きい、1800ドット/インチより大きい、1900ドット/インチより大きい、2000ドット/インチより大きい、2100ドット/インチより大きい、2200ドット/インチより大きい、2300ドット/インチより大きい、2400ドット/インチより大きい、2500ドット/インチより大きい、または2600ドットより大きい解像度で、P2表面およびP3表面のうち少なくとも1つの上にデジタル的に塗布されてよい。
【0038】
従って、ステップS2のデジタル塗布プロセスのより高い解像度は、有機インクOIを堆積させて、従来のアナログ印刷プロセスよりも有意により詳細な構成(more detailed features)を形成し、有意に厳しい公差を達成することを可能にする。換言すれば、「より詳細な」構成は、従来のアナログ印刷プロセスで達成可能であるよりも小さな幾何学的形状を有する不透明境界構成26のコンポーネント(構成要素)を形成することを含むことがある。加えて、スクリーン印刷のような従来のアナログ印刷プロセスを使用するならば、不透明境界構成26は、±1.5ミリメートルの公差内でのみ反復可能に配置されることができる。対照的に、方法100のステップS2に従った有機インクOIをデジタル的に塗布することによって与えられる精密な制御の故に、不透明境界構成26は、従来のアナログスクリーン印刷プロセスよりも製造において反復可能に配置されることがある。例えば、ステップS2のデジタル塗布プロセスを使用するならば、不透明境界構成26は、±0.1ミリメートルの公差内で反復可能に配置されることがある。
【0039】
加えて、従来のアナログ印刷プロセスにおいて典型的に必要とされるようなマスクが、有機インクOIをデジタル的に塗布するときには必要とされないことは、注目に値する。例えば、図4Aおよび図4Bに示すように、方法100のステップS2に従って有機インクOIをデジタル的に塗布するとき、有機インクOIは、デジタルベースの画像に従ってP2表面およびP3表面のうちの少なくとも一方に直接堆積されて、マスクの必要性を排除し、マスクを利用する従来のアナログ印刷のために必要とされる余分なインクよりも少ないインクを使用する。さらに、有機インクOIをデジタル的に塗布することによって与えられる制御の増加の故に、従来のアナログ印刷プロセスで可能であったよりもずっと薄い層として有機インクOIをデジタル的に塗布することが可能である。一例として、有機インクOIは、P2表面およびP3表面のうちの少なくとも1つで、0.1マイクロメートルよりも大きく、15マイクロメートルよりも少ない、厚さを有することがある。加えて、有機インクOIは、可変の厚さでデジタル的に適用される場合がありかつ可変の厚さを有する不透明境界構成26を形成するように硬化される場合があることが想定される。
【0040】
さらに、本方法100に従って有機インクOIをデジタル的に塗布することは、従来のアナログ印刷プロセスに対して有利である。何故ならば、デジタル塗布プロセスを制御するために使用されるデジタルベースの画像は、迅速かつ電子的に変更されることができるのに対し、従来のアナログ印刷プロセスのための設計を変更することは、(スクリーン印刷のためのスクリーンのような)新しい物理的な印刷ツールを生成することを必要とするからである。従って、方法100のステップS2に従って有機インクOIをデジタル的に塗布することは、新しいアナログ印刷ツールを生成するのとは対照的に、デジタルベースの画像を変更することのみによって、不透明境界構成26の多くの異なる配置の迅速なプロトタイプ製造(prototyping)を可能にする。
【0041】
一例において、有機インクOIをデジタル的に塗布するステップS2は、有機インクOIをP2表面およびP3表面のうちの少なくとも1つにインクジェット印刷することを含む。一般に、「インクジェット印刷(inkjet-printing)」という用語は、デジタル制御されたプリントヘッドがデジタルベースの画像に従って基板上にインクの液滴を推進する印刷プロセスを指す。インクジェット印刷プロセスの例は、連続インクジェット印刷、サーマルインクジェット印刷、ピエゾインクジェット印刷、ドロップ・オン・デマンドインクジェット印刷などを含むが、これらに限定されない。P2表面およびP3表面のうちの少なくとも1つに有機インクOIをインクジェット印刷することは、200ドット/インチより大きい、300ドット/インチより大きい、400ドット/インチより大きい、500ドット/インチより大きい、600ドット/インチより大きい、700ドット/インチより大きい、800ドット/インチより大きい、900ドット/インチより大きい、1000ドット/インチより大きい、1100ドット/インチより大きい、1200ドット/インチより大きい、1300ドット/インチより大きい、1400ドット/インチより大きい、1500ドット/インチより大きい、1600ドット/インチより大きい、1700ドット/インチより大きい、1800ドット/インチより大きい、1900ドット/インチより大きい、2000ドット/インチより大きい、2100ドット/インチより大きい、2200ドット/インチより大きい、2300ドット/インチより大きい、2400ドット/インチより大きい、2400ドット/インチより大きい、1300ドット/インチより大きい、1400ドット/インチより大きい、2500ドット/インチより大きい、または2600ドット/インチより大きい解像度で実行されることがある。
【0042】
別の例において、有機インクOIをデジタル的に塗布するステップS2は、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24の表面に有機インクOIを電気流体力学的に印刷することを含む。一般に、「電気流体力学的印刷(electro-hydrodynamic printing)」という用語は、デジタル制御され、電気的に帯電されたプリントヘッドが、デジタルベースの画像に従ってノズルを通じてインクを基板上に方向付ける、印刷プロセスを指す。幾つかの例において、ノズルの幅は、パス(経路)当たり形成される不透明境界構成26の幅Wが、同様に10マイクロメートルであるように、10マイクロメートル程度であることがある。もちろん、10マイクロメートルよりも広いノズルの幅が選択されてよいことが理解されるべきである。加えて、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24の表面に有機インクOIを電気流体力学的に印刷することは、200ドット/インチより大きい、300ドット/インチより大きい、400ドット/インチより大きい、500ドット/インチより大きい、600ドット/インチより大きい、700ドット/インチより大きい、800ドット/インチより大きい、900ドット/インチより大きい、1000ドット/インチより大きい、1100ドット/インチより大きい、1200ドット/インチより大きい、1300ドット/インチより大きい、1400ドット/インチより大きい、1500ドット/インチより大きい、1600ドット/インチより大きい、1700ドット/インチより大きい、1800ドット/インチより大きい、1900ドット/インチより大きい、2000ドット/インチより大きい、2100ドット/インチより大きい、2200ドット/インチより大きい、2300ドット/インチより大きい、2400ドット/インチより大きい、2500ドット/インチより大きい、または2600ドット/インチより大きい解像度で実行されてよいことが想定される。
【0043】
上述のように、湾曲した基板上にデジタル的にインクを塗布することには困難がある。従って、一例において、有機インクOIをデジタル的に塗布するステップS2は、プリントヘッド32を含むロボットアプリケータ30を提供することを含む。この例において、有機インクOIをデジタル的に塗布するステップS2は、第1の湾曲したガラス基板22のP2表面および第2の湾曲したガラス基板24のP3表面のうちの少なくとも1つに隣接してロボットアプリケータ30を位置決めすることをさらに含む。例示の目的のために、図4Aおよび図4Bは、第1の湾曲したガラス基板22のP2表面に隣接して位置決めされたロボットアプリケータ30およびプリントヘッド32の概略図を示す。引き続き図4Aおよび図4Bを参照すると、本例の脈絡において、有機インクOIをデジタル的に塗布するステップS2は、ロボットアプリケータ30がP2表面に沿ってプリントヘッド32を移動するときに、マスクを用いずにロボットアプリケータ30のプリントヘッド32から有機インクOIをデジタル的に塗布することを含む。
【0044】
湾曲した基板の表面に沿ってプリントヘッド32を移動させることができる任意の適切なロボットアプリケータ30が想定される。換言すれば、ロボットアプリケータ30が第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24の表面に沿ってプリントヘッド32を移動させるときに、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24の湾曲とともに湾曲するパスを辿るように構成される、ロボットアプリケータ30が望まれる。より具体的には、プリントヘッド32と湾曲した基板の表面との間の特定の距離を維持しかつ湾曲した基板の表面に対して実質的に垂直な角度にプリントヘッド32を維持するのに適したロボットアプリケータ30が望まれる。例えば、ロボットアプリケータ30は、湾曲した基板の表面に沿ってプリントヘッド32を移動させるように構成される6軸ロボット、デカルトロボットなどであってよい。
【0045】
有機インクOIは、ロボットアプリケータ30の各パス当たりの幅Wでデジタル的に塗布されることが想定される。プリントヘッド32が有機インクOIを塗布することがあるパス当たりの最大幅Wは、プリントヘッド32の設計および/または設定に基づく。マスクなしで有機インクOIをデジタル的に塗布することができる任意の適切なプリントヘッド32が想定される。一例において、プリントヘッド32は、ロボットアプリケータ30のパス当たり30ミリメートル~70ミリメートルの幅Wで有機インクOIをデジタル的に塗布する。他のプリントヘッド32が想定される。ロボットアプリケータ30は、ロボットアプリケータ30がパス毎に有機インクOIをデジタル的に塗布することがある幅を増加させるために、互いに隣接して配置される複数のプリントヘッド32を含む場合があることも想定される。
【0046】
方法100のステップS3は、有機インクOIを硬化させて、第1の湾曲したガラス基板22のP2表面および第2の湾曲したガラス基板24のP3表面のうちの少なくとも1つの表面に不透明境界構成26を形成することを含む。注目すべきことには、デジタル塗布後、有機インクOIは、有機インクOIを硬化させるステップS3の前に、湾曲したガラス基板22の表面で広がったり、あるいは分散したりすることがある。例えば、有機インクOIは、ステップS2において、400ドット/インチの解像度でデジタル的に塗布されてよい。しかしながら、硬化させるステップS3の前に、400ドット/インチでデジタル的に塗布された有機インクOIは、硬化させるステップS3の完了後に、不透明境界構成26が、最初のデジタル塗布時の解像度よりも低い、例えば、200ドット/インチの解像度を有するように、湾曲したガラス基板22の表面で広がることがある。加えて、硬化させるステップS3自体は、不透明境界構成26の解像度に影響を及ぼすことがある。例えば、有機インクOIは、硬化させるステップS3の間に膨張または収縮して、不透明境界構成26の解像度に影響を与えることがある。
【0047】
従って、ステップS2においてデジタル的に塗布されるときの有機インクOIの解像度は、デジタル的に塗布された有機インクOIを硬化させるステップS3の完了後の不透明境界構成26の解像度と異なることがある。よって、デジタル的に塗布された有機インクOIを硬化させるステップS3の完了後に、不透明境界構成26は、200ドット/インチより大きい解像度を有することがある。具体的には、不透明境界構成26は、200ドット/インチより大きい、300ドット/インチより大きい、400ドット/インチより大きい、500ドット/インチより大きい、600ドット/インチより大きい、700ドット/インチより大きい、800ドット/インチより大きい、900ドット/インチより大きい、1000ドット/インチより大きい、1100ドット/インチより大きい、1200ドット/インチより大きい、1300ドット/インチより大きい、1400ドット/インチより大きい、1500ドット/インチより大きい、1600ドット/インチより大きい、1700ドット/インチより大きい、1800ドット/インチより大きい、1900ドット/インチより大きい、2000ドット/インチより大きい、2100ドット/インチより大きい、2200ドット/インチより大きい、2300ドット/インチより大きい、2400ドット/インチより大きい、2500ドット/インチより大きい、または2600ドットより大きい解像度を有する場合があることが想定される。
【0048】
上述のように、有機インクOIを硬化させることは、有利である。何故ならば、有機インクOIは、典型的には、ステップS2においてデジタル的に塗布されるときに液体であるからである。従って、有機インクOIを硬化させるステップS3は、有機インクOIの走行または汚れを防止するために、有機インクをデジタル的に塗布するステップS2の直ぐ後に開始されてよい。例えば、硬化させるステップS3は、P2表面およびP3表面のうちの少なくとも1つに有機インクOIをデジタル的に塗布するステップS2の後の0秒~5秒の時間期間内に開始されてよい。より具体的には、硬化させるステップS3は、ステップS2後の5秒未満内、ステップS2後の4秒未満内、ステップS2後の3秒未満内、ステップS2後の2秒未満内、またはステップS2後の1秒未満内に開始されてよい。
【0049】
一例において、方法100のステップS3は、不透明境界構成26を形成するために有機インクOIを熱硬化させることを含む。オーブン、ヒートガン、またはIRヒータを含むが、これらに限定されない、任意の適切な熱硬化デバイスが、有機インクOIを熱硬化させるために想定される。本開示の脈絡における熱硬化は、ガラスアセンブリ20を焼成するレベルまで上昇しないことが理解されるべきである。上述のように、典型的な焼成プロセスは、セラミックフリットを含むエナメルをガラス基板内に融合させるために、および/またはガラス基板を所望の形状に曲げるために、500℃を超える温度までガラス基板を加熱することを含む。他方、本開示の脈絡における熱硬化は、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24を、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24の表面上の有機インクOIを硬化させるのに十分な温度(ただし、500℃の焼成温度より下)に置くこと(subjecting)を含む。
【0050】
幾つかの例において、有機インクOIを硬化させる硬化温度は、有機インクOIの熱劣化温度(thermal degradation temperature)の観点から選択される。より具体的には、有機インクOIがP2表面および/またはP3表面から焼け尽きるのを防止し、ガラスアセンブリ20の光学的ひずみを最小限に抑えるために、有機インクOIの熱劣化温度を下回る硬化温度が選択される。例えば、有機インクOIは、熱硬化性有機モノマーおよび顔料を含んでよい。他の例において、有機モノマーは、代わりに、オリゴマーまたはモノマーおよびオリゴマーとの組み合わせであり得ることが理解されるべきである。この例において、有機インクOIは、210℃の熱劣化温度を有することがある。従って、200℃のような210℃未満の硬化温度が選択されることがある。注目すべきことに、有機インクOIを硬化させる硬化温度は、セラミックフリットを含むエナメルを焼成するために必要とされる温度よりも有意に低い。従って、ガラスアセンブリ20は、ガラスアセンブリ20が有意に変形するように、ガラスアセンブリ20を軟化させるのに十分な温度を受けない。従って、有機インクOIを硬化させるステップS3は、ガラスアセンブリ20に有意な光学的ひずみを導入する可能性が低い。
【0051】
他の例において、方法100のステップS3は、UV硬化デバイス34を用いて有機インクOIを光硬化させるステップを含む。この例において、有機インクOIは、光硬化性有機インクOIである。例えば、有機インクOIは、光開始剤(photoinitiator)、有機モノマー、および顔料を含んでよい。他の例において、有機モノマーは、代わりに、オリゴマーまたはモノマーとオリゴマーとの組み合わせであり得ることが理解されるべきである。光開始剤は、UV光への曝露に応答して有機モノマーの重合を開始する任意の適切な化合物を含んでよい。例えば、光開始剤は、有機モノマーおよび/またはオリゴマーの重合を開始するUV光に曝露されると反応性種(例えば、フリーラジカル(遊離基)、カチオン、またはアニオン)を生成する化合物であってよい。したがって、本例において、有機インクOIを硬化させて不透明境界構成26を形成するステップS3は、有機インクOIをUV硬化デバイス34に曝露させて、光開始剤を活性化させて、有機モノマーの重合を開始させて、有機インクOIを硬化させることを含む。この例において、有機インクOIを硬化させるステップS3は、いかなる外部からの熱の適用も伴わず、よって、ステップS3のこの例は、ガラスアセンブリ20に有意な光学的ひずみを導入する可能性が低い。
【0052】
一例において、UV硬化デバイス34は、UV光を放射するUV発光ダイオードである。例えば、UV硬化デバイス34は、(一般にUV-Aスペクトルとして知られる)315ナノメートル~400ナノメートルの波長を有するUV光を放射することがある。UV発光ダイオードは、実質的に385ナノメートルの波長を有するUV光を発することのような、より狭いスペクトルを有するUV光を放射することがある。UVスペクトル内の任意の波長が想定される。
【0053】
図4Aは、ステップS3の一例を示す。図4Aの例において、ロボットアプリケータ30は、UV硬化デバイス34をさらに含む。必要とはされないが、UV硬化デバイス34は、ロボットアプリケータ30がP2表面およびP3表面のうちの少なくとも1つに沿ってプリントヘッド32を移動させるのと同じ一般的なパスをUV硬化デバイス34が辿るように、プリントヘッド32に隣接して配置されることがある。従って、本例において、不透明境界構成26を形成するために有機インクOIを硬化させるステップS3は、ロボットアプリケータ30のUV硬化デバイス34を活性化させて、ロボットアプリケータ30がP2表面およびP3表面のうちの少なくとも1つに沿って移動するときにデジタル的に塗布された有機インクOIの光硬化を開始させることを含む。そのように行う際に、有機インクOIを硬化させるステップS3は、有機インクOIの走行または汚れを防止するために、有機インクをデジタル的に塗布するステップS2の直ぐ後に起こる。
【0054】
図5A図5Cは、ステップS4の概略図を示す。ステップS4は、第1の湾曲したガラス基板22のP2表面と第2の湾曲したガラス基板24のP3表面との間にポリマ中間層28を配置することを含む。従って、第1の湾曲したガラス基板22のP2表面および第2の湾曲したガラス基板24のP3表面のうちの少なくとも1つにステップS2およびS3において形成された不透明境界構成26は、ガラスアセンブリ20内に挟装される。図5Aは、不透明境界構成26を含む第1の湾曲したガラス基板22のP2表面と第2の湾曲したガラス基板24のP3表面との間にポリマ中間層28を配置することを図示する。図5Bは、不透明境界構成26を含む第2の湾曲したガラス基板24のP3表面とP2表面との間にポリマ中間層28を配置することを図示する。図5Cは、不透明境界構成26を含む第1の湾曲したガラス基板22のP2表面と、不透明境界構成26も含む第2の湾曲したガラス基板24のP3表面との間にポリマ中間層28を配置することを図示する。
【0055】
一例において、ステップS4は、積層ガラスアセンブリ20が形成される積層プロセスを構成する。ポリマ中間層28は、ガラスアセンブリ20の衝撃または破損の事態においてポリマ中間層28が第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24を保持するように、第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24を結合する。ポリマ中間層28は、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などのような、ポリマまたは熱可塑性樹脂を含む。ポリマ中間層28を実装するための他の適切な材料を利用して、光学的ヘイズ、ガラスへの接着、および構造的剛性に関する必要な性能特性を提供してよい。第1の湾曲したガラス基板22および第2の湾曲したガラス基板24と同様に、ポリマ中間層28も、光に対して実質的に透明であるか、あるいは他の方法で透明である。従って、第1の湾曲したガラス基板22と第2の湾曲したガラス基板24との間にポリマ中間層28を含む積層ガラスアセンブリ20も、光に対して実質的に透明であるか、あるいは他の方法で透明である。
【0056】
積層プロセスの一例は、第1の湾曲したガラス基板22、第2の湾曲したガラス基板24、ポリマ中間層28、およびガラスアセンブリ20の一部であることがある任意の他の中間層を積み重ねて整列させるステップを含む。これらのコンポーネントを積み重ねて整列させた後に、ガラスアセンブリ20は、脱気プロセス(de-airing process)に曝されてよく、脱気プロセスで、ガラスアセンブリ20は、第1の湾曲したガラス基板22と、第2の湾曲したガラス基板24と、ポリマ中間層28と、任意の他の中間層との間に捕捉されることがあるあらゆる空気を除去するために真空に曝される。脱気プロセスの後に、ガラスアセンブリ20は、オートクレーブプロセスに曝され、オートクレーブプロセスで、ガラスアセンブリ20は、ポリマ中間層28をポリマ中間層28に隣接する層の各々に結合させて積層ガラスアセンブリ20を形成するように、高温および/または高圧に曝される。注目すべきことに、オートクレーブ内の温度は、有機インクOIに対する損傷を防止するために、有機インクOIの熱劣化温度を下回らなければならない。
【0057】
幾つかの例において、方法100のステップS3は、上記で想定される硬化プロセスのうちの1つのプロセスの間に、ガラスアセンブリ20を高湿度および/または高圧に曝すことをさらに含むことがある。
【0058】
次に図6A図9Bを参照すると、不透明境界構成26を含むガラスアセンブリ20の様々な例が図示されている。先ず、図6A図6Cは、不透明境界構成26を含むガラスアセンブリ20の断面概略図を示す。図6Aに示す例において、ガラスアセンブリ20は、第1の湾曲したガラス基板22と、第1の湾曲したガラス基板22のP2表面に形成された不透明境界構成26と、第2の湾曲したガラス基板24と、P2表面とP3表面との間に配置されたポリマ中間層28とを含む。図6Bに示す例において、ガラスアセンブリ20は、第1の湾曲したガラス基板22と、第2の湾曲したガラス基板24と、第2の湾曲したガラス基板24のP3表面に形成された不透明境界構成26と、P2表面とP3表面との間に配置されたポリマ中間層28とを含む。図6Cに示す例において、ガラスアセンブリ20は、第1の湾曲したガラス基板22と、第1の湾曲したガラス基板22のP2表面に形成された1つの不透明境界構成26と、第2の湾曲したガラス基板24と、第2の湾曲したガラス基板24のP3表面に形成された別の不透明境界構成26と、P2表面とP3表面との間に配置されたポリマ中間層28とを含む。
【0059】
図7Aおよび図7Bは、各々、方法100に従って形成されたガラスアセンブリ20の正面図を示す。これらの例において、不透明境界構成26は、ガラスアセンブリ20の周縁38全体の周囲に延在するバンド36として形成される。図7Aおよび図7Bにおいて、ガラスアセンブリ20は、フロントガラスである。しかしながら、ガラスアセンブリ20の周縁38全体の周囲に延在するバンド36として形成された不透明境界構成26は、サイドウインドウ、クォータウインドウ、リアウインドウなどのような、ガラスアセンブリ20の他の例において形成される場合があることが想定される。ガラスアセンブリ20の周縁38全体の周囲に延在するバンド36は、多くの機能を果たす。バンド36は、周縁38全体の周囲に延在するガラスアセンブリ20の領域を通じる光の透過を妨げる。そのように行う際に、バンド36は、UV光線がガラスアセンブリ20を車両に結合することがある下に位置する接着剤を劣化させるのを防止する。別の例として、バンド36は、ガラスアセンブリ20の上部39からさらに下方に延びて、運転手の眼を日光から遮る日よけとして機能することがある。バンド36は、外部観察者への下に位置する接着剤の可視性を遮断して、改良された審美的な外観を提供してもよい。別の例として、バンド36は、ドットパターン、製造者ロゴ、または(FMVSS205によって要求される情報のような)政府が要求する情報のような、審美的に心地良い装飾パターンを画定してよい。
【0060】
図7Aを参照すると、一例において、不透明境界構成26は、不透明境界構成26全体を通じて均一である不透明度を有する。この脈絡において、不透明度とは、不透明境界構成26のサンプル領域を通じる可視光の平均透過率を意味する。不透明境界構成26の不透明度は、不透明境界構成26が吸収、散乱、または反射する光の量を決定するために、(例えば、ISO9050および/またはISO13837による)光透過率計を用いて測定されてよい。一例において、不透明境界構成26は、可視光の透過率が1%未満である、あるいは可視光の透過率が0.1%未満でさえある不透明度を有してよい。
【0061】
他の例では、図7Bを参照すると、不透明境界構成26は、第1のエッジ40と、第1のエッジ40とは反対の第2のエッジ42とを有する。第1のエッジ40は、ガラスアセンブリ20の周縁38であってよく、不透明境界構成26は、不透明境界構成26が1のエッジ40から内向きに延びるときに、第2のエッジ42で終端する。図7Bの例において、不透明境界構成は、不透明境界構成26全体を通じて均一である不透明度を有さない。むしろ、不透明境界構成26は、第1のエッジ40で第1の不透明度を有し、第2のエッジ42で第2の不透明度を有する。図7Bの例において、第2の不透明度は、第1の不透明度よりも少ない。
【0062】
注目すべきことに、有機インクOIは、インチ当たり400ドットでデジタル的に塗布されるので、幾つかの例において、有機インクOIは、不透明境界構成26の不透明度に影響を与えるために、従来のアナログ印刷よりも有意により詳細な構成を形成するようにデジタル的に塗布される。例えば、有機インクOIは、不透明境界構成26の第1の不透明度が可視光の1%未満の透過率であるように、第1のエッジ40でほぼ完全な被覆率で塗布されてよく、有機インクOIは、不透明境界構成26の第2の不透明度が可視光の1%よりも大きい透過率であるように、第2のエッジ42で完全な被覆率未満で塗布されてよい。従って、幾つかの構成において、第1の不透明度は、可視光の1%未満の透過率であってよく、あるいは可視光の0.1%未満の透過率であってさえもよく、第2の不透明度は、可視光の99%よりも大きい超透過率であってよく、あるいは可視光の99.9%よりも大きい透過率がであってさえもよい。第1の不透明度および第2の不透明度は、可視光の0.1%の透過率可視光の99.9%の透過率との間の任意の値から独立して選択されてよいことが想定される。加えて、(例えば、勾配パターンを形成する)第1の不透明度と第2の不透明度との間の滑らかな移行、または第1の不透明度と第2の不透明度との間の段階的な移行を含むが、これらに限定されない、第1の不透明度と第2の不透明度との間の任意の適切な移行も想定される。
【0063】
上述のように、ガラスアセンブリの周縁の周囲に形成されるバンドは、従来、黒色である。しかしながら、本開示において、有機インクOIの顔料は、任意の色であってよく、不透明境界構成26を含むガラスアセンブリ20の設計においてより自由な設計選択を可能にすることが想定される。図7A図8Cに示すバンド36は、黒色であるが、不透明境界構成26は、黒色、灰色の色合い、白色、任意の原色、またはそれらの組み合わせのような、任意の色を有するように形成されてよいことが想定される。
【0064】
次に図7A図9Bを参照すると、幾つかの例において、不透明境界構成26は、ガラスアセンブリ20の周縁38に隣接して配置された光学センサ境界44を含む。具体的には、光学センサ境界44は、ガラスアセンブリ20の周縁38の上または近くに配置されてよい。車両18の運転手の視界を不明瞭にしない光学センサ境界44の任意の適切な場所が想定される。光学センサ境界44は、ガラスアセンブリ20に取り付けられる光学センサ48の視野FOVと整列される感知窓46を画定することがある。光学センサは、任意の適切な方法でガラスアセンブリ20に取り付けられてよいことが理解されるべきである。例えば、図8A図8Cは、P4表面のガラスアセンブリ20に取り付けられた光学センサ48の例の断面概略図を示す。図8Aを参照すると、幾つかの例において、光学センサ境界44は、ガラスアセンブリ20のP2表面のみに形成されることがある。図8Bを参照すると、幾つかの例において、光学センサ境界44は、ガラスアセンブリ20のP3表面のみに形成される。図8Cを参照すると、幾つかの例において、光学センサ境界44は、ガラスアセンブリ20のP2表面およびP3表面の両方に形成される。
【0065】
図9Aおよび図9Bは、各々、方法100に従って形成されたガラスアセンブリ20の一例の正面図を示す。これらの例において、ガラスアセンブリ20の不透明境界構成26は、ガラスアセンブリ20の周縁38全体の周囲に延在するバンド36と、光学センサ48の視野FOVを取り囲んで感知窓46を画定するようにバンド36の頂部内縁50から下方に延びる光学センサ境界44とを含む。しかしながら、バンド36および光学センサ境界44は、全ての構成において互いに当接し合わない場合があることが想定される。例えば、光学センサ境界44は、バンド36から離間することがある。加えて、他の構成において、ガラスアセンブリ20は、バンド36を画定する不透明境界構成26のみを含むことがある。さらなる構成において、ガラスアセンブリ20は、光学センサ境界44を画定する不透明境界構成26のみを含むことがある。
【0066】
図8A図8Cおよび図9Aに示す例を参照すると、光学センサ境界44は、有機インクOIがなく、従って、可視光に対して透明である、感知窓46を画定する。注目すべきことには、感知窓46が可視光に対して透明であることが重要であり、その場合、光学センサ48は、カメラであるので、カメラは、感知窓46を通じて「見る」ことができる。しかしながら、光学センサ48がLIDARセンサであるときには、感知窓46は、赤外光に対して透明である。従って、幾つかの構成において、赤外光に対しては透明であるが可視光に対しては不透明である有機インクOIが、選択されることがある。よって、図9Bを参照すると、幾つかの構成において、光学センサ境界44は、感知窓46が可視光に対して不透明であるように有機インクOIが堆積される、感知窓46を含むことがある。しかしながら、この例では、有機インクOIは、赤外光に対して透明であるので、LIDARセンサは、感知窓46を通じて依然として「見る」であろう。
【0067】
上述のように、セラミックフリットを含む従来のエナメルを使用して形成される不透明境界構成は、有意な光学的ひずみを示す傾向があり、光学的ひずみは、ひずみが光学センサの視野内にあるときに、光学センサの性能に特に有害である。よって、幾つかの例において、方法100によって形成される不透明境界構成26を含むガラスアセンブリ20全体は、セラミックフリットを含まず、よって、印刷後の焼成を受けないことがあり、それによって、ガラスアセンブリ20の光学的ひずみを実質的に低減させることがある。従って、ガラスアセンブリ20の光学ひずみは、カメラまたはLIDARセンサのような光学センサ48、ならびにヘッドアップディスプレイのような光学投影デバイスの最適な性能に要求される仕様を満たすには十分に低い。例えば、方法100に従って形成されるガラスアセンブリ20は、感知窓46内で100ミリジオプタ未満の光学的ひずみを示すことがある。
【0068】
しかしながら、他の例において、不透明境界構成26は、焼成を受けるセラミックフリットを含むエナメルから部分的に形成されることがある。図9Cを参照すると、ガラスアセンブリ20は、第1の湾曲したガラス基板22および/または第2の湾曲したガラス基板24のうちの少なくとも1つの基板の表面にセラミックフリットを含むエナメルを塗布し、引き続き、焼成することによって形成される、不透明境界構成26の第1の部分26’を含むことがある。ガラスアセンブリ20は、有機インクOIをデジタル的に塗布して硬化させることによって形成される第2の部分26”をさらに含むことがある。図示の例において、第1の部分26’は、ガラスアセンブリ20の周縁38全体の周囲に延在するバンド36を画定し、第2の部分26”は、ガラスアセンブリ20の周縁38に隣接して配置され、感知窓46を画定する、光学センサ境界44を画定する。有利には、光学センサ境界44は、方法100に従って形成されるので、感知窓46内のガラスアセンブリ20の光学的ひずみは、光学センサ48の最適な性能に必要とされる仕様を満たす程に十分に低い。より具体的には、この例では、感知窓46が第1の部分26’から離間されているので、第1の部分26’を形成するためにガラスアセンブリ20を焼成することによって生じる光学的ひずみは、感知窓46と整列されるガラスアセンブリ20の部分に影響を及ぼさない。従って、本例のガラスアセンブリ20は、感知窓46内で100ミリジオプタ未満の光学的ひずみを示すことがある。光学的ひずみが重要でないガラスアセンブリ20の部分にセラミックフリットを含むエナメルから第1の部分26’を形成すること、および光学的ひずみが重要であるガラスアセンブリ20の部分に有機インクOIから第2の部分26’を形成することは、方法100に従って不透明境界構成26全体を形成することと比較して、ガラスアセンブリ20を形成するプロセス時間を短縮することがある。第1の部分26’および第2の部分26”は、不透明境界構成26の任意の個々の部分である場合があることが想定される。
【0069】
加えて、幾つかの構成において、方法100は、インクをデジタル的に塗布して、ガラスアセンブリ20のP1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面のうちの少なくとも1つに、情報を含むグラフィック52(information-containing graphic)を形成することをさらに含む。図10Aおよび図10Bは、情報を含むグラフィック52の配置の幾つかの例の概略図を示す。例えば、図10Aは、情報を含むグラフィック52が不透明境界構成26から離間する、ガラスアセンブリ20上の情報を含むグラフィック52の潜在的配置を示しており、情報を含むグラフィック52の潜在的配置の各々は、仮想線によって画定される。他方、図10Bは、情報を含むグラフィック52が不透明境界構成26と整列される、情報を含むグラフィック52の潜在的な配列を示しており、情報を含むグラフィック52の潜在的な配列の各々は、仮想線によって画定される。情報を含むグラフィック52は、所望の情報を伝達するために、ガラスアセンブリ20の任意の適切な場所または表面に配置される場合があることが想定される。加えて、情報を含むグラフィック52のためのインクは、有機インクOIと同じであり得るかあるいは異なり得ることが想定される。
【0070】
図11A図11Cは、情報を含むグラフィック52の非限定的な例を示す。例えば、図11Aは、バーコード54としての情報を含むグラフィック52を示す。バーコード54は、従来のバーコードまたはQRコード(登録商標)である場合があることが想定される。別の例において、図11Bは、情報を含むグラフィック52をシリアル番号56として示す。シリアル番号56は、ガラスアセンブリのバッチもしくは個々のシリアル番号または車両のVIN番号に関連するシリアル番号である場合が想定される。図11Cは、情報を含むグラフィック52をグラフィック58として示す。グラフィック58は、装飾目的または情報目的のために、任意の所望のデザインとして形成される場合があることが想定される。非限定的な例として、グラフィック58は、製造者ロゴまたは(例えば、FMVSS205によって要求される情報のような)政府が要求する情報を含むことがある。注目すべきことに、図11Aおよび図11Bは、不透明境界構成から離間した情報を含むグラフィック52の例を示す一方で、図11Cは、不透明境界構成26と整列した情報を含むグラフィック52の例を示す。
【0071】
幾つかの実施形態を前述の記述において記載した。しかしながら、本明細書に記載される実施形態は、網羅的であることを意図せず、本発明を如何なる特定の形態に限定することを意図しない。使用されてきた用語は、限定の言葉の性質ではなく、記述の言葉の性質を有することを意図する。多くの修正および変更が上記教示に照らして可能であり、本発明は具体的に記載された以外の方法で実施されることがある。
【0072】
本明細書で既に記載したものを超える様々な追加の修正および変更を上述の実施形態に対して行うことができる。この開示は、例示のために提示されており、全ての実施形態の網羅的な記述として解釈されるべきでなく、あるいは特許請求の範囲をこれらの実施形態に関連して図示または記載される特定の要素に限定するように解釈されるべきでない。例えば、限定されることなく、記載された実施形態の任意の個々の要素は、実質的に同様の機能性を提供するかあるいは他の方法で適切な動作を提供する代替要素と置換されてよい。これは、例えば、当業者に現在知られているもののような、現在知られている代替的な要素と、当業者が開発時に代替として認識するもののような、将来開発されることがある代替的な要素とを含む。例えば、冠詞「a」、「an」、「the」または「seed」を用いる、単数形における請求項の要素への言及は、当該要素を単数形に限定するものと解釈されてならない。「含む(include)」、「含む(include)」および「含む(including)」という用語は、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」という用語と同じ意味を有することがさらに理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
【外国語明細書】