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特開2024-89160合金粒子、圧粉磁心、電子素子、電子機器、電動機および発電機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089160
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】合金粒子、圧粉磁心、電子素子、電子機器、電動機および発電機
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/33 20060101AFI20240626BHJP
   H01F 1/20 20060101ALI20240626BHJP
   H01F 1/22 20060101ALI20240626BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20240626BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01F1/33
H01F1/20
H01F1/22
H01F27/255
H01F17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204352
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】塩津 兼一
【テーマコード(参考)】
5E041
5E070
【Fターム(参考)】
5E041AA02
5E041BC01
5E041NN05
5E070AA01
5E070AB10
5E070BB01
(57)【要約】
【課題】渦電流損失が小さく、強度が高い合金粒子を提供する。
【解決手段】鉄、及びシリコンを含む合金からなるコア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、を備えた合金粒子である。前記被覆部は、FeSiOを含有し、前記被覆部をX線回折で測定し、FeOの最強ピーク強度をIAとし、前記FeSiOの最強ピーク強度をIBとした際に、ピーク強度比(IA/IB)の値が0.2以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄、及びシリコンを含む合金からなるコア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、を備えた合金粒子であって、
前記被覆部は、FeSiOを含有し、
前記被覆部をX線回折で測定し、
FeOの最強ピーク強度をIAとし、
前記FeSiOの最強ピーク強度をIBとした際に、
ピーク強度比(IA/IB)の値が0.2以下である、合金粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の合金粒子を複数含有する、圧粉磁心。
【請求項3】
請求項2に記載の圧粉磁心を備える、電子素子。
【請求項4】
前記圧粉磁心と、コイルと、を備える、請求項3に記載の電子素子。
【請求項5】
請求項3に記載の電子素子を備える、電子機器。
【請求項6】
請求項2に記載の圧粉磁心を備える、電動機。
【請求項7】
請求項2に記載の圧粉磁心を備える、発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合金粒子、圧粉磁心、電子素子、電子機器、電動機および発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される圧粉磁心を構成する合金粒子は、Feを含む軟磁性粒子と、軟磁性粒子の隣接間にある粒界層とを備えている。被覆層に含まれる化合物層は、シリコン樹脂とフェライトめっきとを反応させて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-75566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の合金粒子で構成される圧粉磁心は、渦電流損失の低下が不十分であり、強度も低かった。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、渦電流損失が小さく、強度が高い圧粉磁心を構成する合金粒子を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕鉄、及びシリコンを含む合金からなるコア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、を備えた合金粒子であって、
前記被覆部は、FeSiOを含有し、
前記被覆部をX線回折で測定し、
FeOの最強ピーク強度をIAとし、
前記FeSiOの最強ピーク強度をIBとした際に、
ピーク強度比(IA/IB)の値が0.2以下である、合金粒子。
【0006】
〔2〕〔1〕に記載の合金粒子を複数含有する、圧粉磁心。
【0007】
〔3〕〔2〕に記載の圧粉磁心を備える、電子素子。
【0008】
〔4〕圧粉磁心と、コイルと、を備える、〔3〕に記載の電子素子。
【0009】
〔5〕〔3〕に記載の電子素子を備える、電子機器。
【0010】
〔6〕〔2〕に記載の圧粉磁心を備える、電動機。
【0011】
〔7〕〔2〕に記載の圧粉磁心を備える、発電機。
【発明の効果】
【0012】
本開示の合金粒子は、渦電流損失が小さく、強度が高い合金粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の圧粉磁心の断面を表す模式図である。
図2】本実施形態の合金粒子をXRDで測定した結果を示す図である。
図3】本実施形態の圧粉磁心を用いたインダクタの模式図である。
図4】本実施形態の圧粉磁心を用いたインダクタの模式図である。
図5】本実施形態の圧粉磁心を用いたインダクタの模式図である。
図6】本実施形態の圧粉磁心を用いたノイズフィルターの模式図である。
図7】本実施形態の圧粉磁心を用いたリアクトルの模式図である。
図8】本実施形態の圧粉磁心を用いたトランスの模式図である。
図9】本実施形態の圧粉磁心を用いたノイズフィルターの回路図である。
図10】本実施形態の圧粉磁心を用いたモータの模式図である。
図11】本実施形態の圧粉磁心を用いた発電機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0015】
1.合金粒子5
(1)合金粒子5の構成
図1に示すように、合金粒子5は、コア部1と、コア部1の表面に形成された被覆部3と、を備えている。被覆部3は、FeSiOを含有している。本開示の合金粒子5は、25℃において、被覆部3を、XRD(X-ray diffraction)で測定した場合に、FeSiOの最強ピーク強度IBに対する、FeOの最強ピーク強度IAのピーク強度比(IA/IB)の値が0.2以下である。
本開示の圧粉磁心7は、例えば、合金粒子5をプレス成型して作製されている。圧粉磁心7は、複数の合金粒子5を含んでいる。
【0016】
(2)コア部1
コア部1は、鉄、及びシリコンを含む軟磁性の金属粒子である。コア部1として、軟磁性である鉄基合金の粒子等を幅広く用いることができる。鉄基合金としては、Fe-Si合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al合金(センダスト)を好適に用いることができる。これらの中でもFe-Si合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al合金(センダスト)が透磁率、保磁力、周波数特性の観点から好ましい。
Fe-Si合金を用いる場合には、例えば、Si:1質量%-10質量%、残部:Fe及び不可避的不純物の組成の合金を用いることができる。
Fe-Si-Cr合金を用いる場合には、例えば、Si:1質量%-10質量%、Cr:10質量%-20質量%、残部:Fe及び不可避的不純物の組成の合金を用いることができる。
【0017】
コア部1の平均粒子径は、特に限定されない。コア部1の平均粒子径は、10μm以上70μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上40μm以下がさらに好ましい。コア部1の平均粒子径は、使用する周波数帯域によって適宜変更することができる。特に500kHzを超える高周波帯域での使用を想定した場合は10μm以上50μm以下であることが好ましい。
コア部1の平均粒子径は、圧粉磁心7の断面をFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)によって観察した粒子面積から面積円相当径を算出し、平均粒子径とする。具体的には、次のようにして平均円相当径を求める。所定の観察視野(例えば、200μm×200μm)において、欠けることなく観察できる複数のコア部1に着目する。コア部1の各々の粒子画像の面積(投影面積)と等しい面積を有する理想円(真円)の直径(面積円相当径)を各粒子の円相当径として算出する。そして、各粒子の円相当径を算術平均することにより、平均円相当径を求める。ここでは、平均円相当径が平均粒子径に相当する。各粒子の円相当径及び平均円相当径は、一般的な画像解析ソフトウエアを用いて求めることができる。
【0018】
(3)被覆部3
被覆部3の厚みは、特に限定されない。被覆部3の厚みは、十分な強度と、比透磁率を確保する点から、好ましくは0.01μm以上1μm以下である。また、被覆部3の厚みは、コア部1の平均粒子径の0.015%以上10%以下が好ましい。
被覆部3の厚みは、合金粒子5を切断し、その断面をTEM(透過電子顕微鏡)、SEM(走査電子顕微鏡)により観察して測定することができる。測定点は10箇所以上測定し、その平均値を被覆部3の厚みとする。
【0019】
(4)ピーク強度比(IA/IB)
(4.1)ピーク強度比(IA/IB)の値
合金粒子5は、被覆部3を25℃において酸化物をXRDで測定した場合に、FeSiOの最強ピーク強度IBに対する、FeOの最強ピーク強度IAのピーク強度比(IA/IB)の値が0.2以下であり、0.14以下が好ましく、0.09以下がより好ましい。
ピーク強度比(IA/IB)の値を0.2以下とすることは、被覆部3に、FeSiOを多く含み、FeOを多く含んでいないことの指標となる。なお、ピーク強度比(IA/IB)の値は、通常0よりも大きい。
ピークの強度比(IA/IB)は、コア部1表面に、めっき法で被覆部3を形成する際、溶液のpHを変えることで、調整できる。
【0020】
FeSiOを含む被覆部3の最強ピークの強度IA、IBは、合金粒子5を含む圧粉磁心7のXRD(X線回折)測定によって求めることができる。XRD測定は、例えば以下の条件で行う。
・装置:Rigaku SmartLab
・X線:CuKα
・X線波長:1.54059Å(Kα)、1.54441Å(Kα
・管電圧:40kV
・管電流:30mA
・走査速度:5°/min
・サンプリング幅:0.02°
・測定範囲(2θ):10°-80°
・入射スリット:1/2°
・受光スリット1:15.000mm
・受光スリット2:20.000mm
XRD測定で得られた圧粉磁心7の回析パターンにおいて、Kα成分を除去し、コア部1や測定セル等に由来するピークを除いて、FeSiO、FeOに由来するピークを得る。
【0021】
(4.2)最強ピークの強度IA、IBの測定結果の一例
図2にCuKα(Kα+Kα)線を用いて測定したX線回折の測定結果の一例を示す。この測定結果は、回折パターンをKα成分とKα成分に分離し、Kα成分を除去した結果である。図2の横軸は、ピーク位置の回折角2θである。縦軸は、回折強度である。FeO、FeSiOの最強ピークは、それぞれ下記の位置に観察される。

・FeOの最強ピーク…回折角2θ=42.0°±0.2°
・FeSiOの最強ピーク…回折角2θ=35.9°±0.2°
【0022】
(5)合金粒子5の効果
本開示の合金粒子5は、ピーク強度比(IA/IB)の値が0.2以下である。これは、被覆部3に占める、FeOの含有割合が、FeSiOと比較して低いことを示している。よって、合金粒子5を含有する圧粉磁心7は、被覆部3中に、絶縁抵抗率の高いFeSiOを多く含み、絶縁抵抗率の低いFeOを多く含まないことになる。そのため、圧粉磁心7は、渦電流損失が小さく抑えられる。また、合金粒子5を含有する圧粉磁心7は、被覆部3を薄くできるため、圧粉磁心7の比透磁率が向上する。また、本開示の合金粒子5を含有する圧粉磁心7は、被覆部3に含まれるFeSiOの融点(1205℃)は、FeOの融点(1371℃)より低いため、被覆部3同士で焼結し易く、強度を高くできる。
【0023】
2.圧粉磁心7
圧粉磁心7は、上記の合金粒子5を複数含有する。
【0024】
3.合金粒子5、及び圧粉磁心7の製造方法
合金粒子5、及び圧粉磁心7の製造方法の例を以下に示す。
【0025】
A.好ましい製造方法の例(その1)
(1)被覆粉末の作製
コア部1に対して、めっき法により、フェライトの被覆を形成する。被覆を形成する方法は、めっき法の他、ミリング法、噴霧法、ゾルゲル法、共沈法等であってもよい。フェライトは、マグネタイトFeの他、Niフェライト、Znフェライト、Mnフェライト、MnZnフェライト、NiZnフェライト等であってもよい。
めっき法では、コア部1と、鉄イオン等の2価イオンとを含む水溶液に、pHを制御しながら酸化剤(亜硝酸塩)を添加することにより、フェライトの被覆を形成する。作製した水溶液をろ過し、乾燥させることによって、被覆粉末を得る。
【0026】
(2)成形(プレス成形)
得られた被覆粉末をプレス成形して成形体を得る。プレス成形は、例えば0.5GPa-2.0GPaの面圧を加えて成形する。成形性向上のために、少量の有機バインダー(樹脂バインダー)や内部潤滑剤(ステアリン酸塩等)を混合してもよい。また、金型にステアリン酸塩等の離型剤を塗布してもよい。一軸加圧成形の他、CIP(冷間等方圧プレス)成形等を行ってもよい。
【0027】
(3)焼鈍(熱処理)
成形体を焼鈍することで、合金粒子5を複数含有する圧粉磁心7が得られる。
焼鈍過程で、フェライトの被覆と、コア部1中のシリコンとが反応し、FeSiOが生成する。
被覆粉末の成形後の焼鈍は、非酸化雰囲気(N雰囲気、Ar雰囲気またはH雰囲気)で行う。焼鈍の最高温度は、700℃-1050℃が好ましい。これは、FeSiOの形成反応が進み、渦電流損失を小さくできるためである。また、焼鈍により、コア部1内の歪みが小さくなるため、ヒステリシス損失を小さくできる。
焼鈍の最高温度は、900℃-1050℃がより好ましい。これは、コア部1内の歪みがさらに小さくなり、ヒステリシス損失をさらに小さくできるためである。焼鈍の最高温度を1050℃以下とすることで、合金粒子5同士の焼結を抑制し、渦電流損失を小さくできる。焼鈍温度は、1時間以上維持することが好ましい。これは、FeSiOの形成反応が進み、渦電流損失を小さくできるためである。600℃から300℃への冷却過程では、2℃/min以上の冷却速度で冷却することが好ましい。これは、FeSiO中に微量のFeOが固溶している場合にFeOの共析変態によって渦電流損失が増大するのを抑制するためである。
【0028】
B.好ましい製造方法の例(その2)
(1)被覆粉末の作製
上述の「A.好ましい製造方法の例(その1)」における「(1)被覆粉末の作製」の欄で記載した方法によって被覆粉末を作製する。
【0029】
(2)焼鈍(熱処理)
被覆粉末を焼鈍することで、合金粒子5が得られる。焼鈍過程で、フェライトの被覆と、コア部1中のシリコンとが反応し、FeSiOが生成する。
焼鈍は、非酸化雰囲気(N雰囲気、Ar雰囲気またはH雰囲気)で行う。焼鈍の最高温度は、700℃-1050℃が好ましい。これは、FeSiOの形成反応が進み、渦電流損失を小さくできるためである。また、焼鈍により、コア部1内の歪みが小さくなるため、ヒステリシス損失を小さくできる。
焼鈍の最高温度は、900℃-1050℃がより好ましい。これは、コア部1内の歪みがさらに小さくなり、ヒステリシス損失をさらに小さくできるためである。焼鈍の最高温度を1050℃以下とすることで、合金粒子5同士の焼結を抑制し、渦電流損失を小さくできる。焼鈍温度は、1時間以上維持することが好ましい。これは、FeSiOの形成反応が進み、渦電流損失を小さくできるためである。600℃から300℃への冷却過程では、2℃/min以上の冷却速度で冷却することが好ましい。これは、FeSiO中に微量のFeOが固溶している場合にFeOの共析変態によって渦電流損失が増大するのを抑制するためである。
【0030】
(3)成形(プレス成形)
得られた合金粒子5をプレス成形して圧粉磁心7を得る。プレス成形は、例えば0.5GPa-2.0GPaの面圧を加えて成形する。成形性向上のために、少量の有機バインダー(樹脂バインダー)や内部潤滑剤(ステアリン酸塩等)を混合してもよい。また、金型にステアリン酸塩等の離型剤を塗布してもよい。一軸加圧成形の他、CIP(冷間等方圧プレス)成形等を行ってもよい。尚、成形の際に、樹脂バインダーを硬化させるための熱処理を行ってもよい。
【0031】
4.圧粉磁心7の適用例
上記圧粉磁心7は、電子素子に好適に用いられる。電子素子として、例えば、インダクタ、チョークコイル、ノイズフィルター、リアクトル、トランス等が挙げられる。電子素子は、例えば、圧粉磁心7と、コイルと、を備える。
【0032】
図3図5に示すインダクタ10、20、30は、本開示の電子素子の一例である。図3に示すインダクタ10は、圧粉磁心11と、コイル13と、を備える。図4に示すインダクタ20は、圧粉磁心21と、コイル23と、を備える。図5に示すインダクタ30は、圧粉磁心31と、コイル33と、を備える。圧粉磁心11、21、31は、圧粉磁心7と同様の構成である。
【0033】
図6に示すノイズフィルター40は、本開示の電子素子の一例である。ノイズフィルター40は、圧粉磁心41と、一対のコイル43、45と、を備える。圧粉磁心41は、圧粉磁心7と同様の構成である。
【0034】
図7に示すリアクトル50は、本開示の電子素子の一例である。リアクトル50は、圧粉磁心51と、コイル53と、を備える。圧粉磁心51は、圧粉磁心7と同様の構成である。
【0035】
図8に示すトランス60は、本開示の電子素子の一例である。トランス60は、圧粉磁心61と、一対のコイル63、65と、を備える。圧粉磁心61は、上記圧粉磁心7と同様の構成である。
【0036】
上記圧粉磁心7は、電子機器に好適に用いられる。電子機器は、電子素子を備える。電子素子として、例えば、上記電子素子が挙げられる。
【0037】
図9に示すノイズフィルター70は、本開示の電子機器の一例である。ノイズフィルター70は、素子71と、コンデンサ73、75、77と、を備える。素子71は、例えば図6に示すノイズフィルター40と同様の構成の素子である。
【0038】
上記圧粉磁心7は、電動機に好適に用いられる。電動機として、例えば、モータ、リニアアクチュエータ等が挙げられる。
【0039】
図10に示すモータ80は、本開示の電動機の一例である。モータ80は、ロータ80Aと、ステータ80Bと、を備える。ステータ80Bは、圧粉磁心81と、コイル83と、を有する。圧粉磁心81は、上記圧粉磁心7と同様の構成である。
【0040】
図11に示す発電機90は、本開示の発電機の一例である。発電機90は、ロータ90Aと、ステータ90Bと、を備える。ステータ90Bは、圧粉磁心91と、コイル93と、を有する。圧粉磁心91は、上記圧粉磁心7と同様の構成である。
【実施例0041】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
1.圧粉磁心の作製
(1)実施例1-4
実施例1-4では、シリコンを6.5質量%含有し残部が鉄および不可避的不純物からなるコア部(Fe-6.5%Si)を原料粉末に用い、コア部に対してめっき法によりフェライト(Fe)を被覆した。
実施例1では、コア部と、鉄イオン(2価イオン)とを含む水溶液に、酸化剤(亜硝酸塩)を添加することにより、コア部の表面にフェライトを被覆した。めっき法により、コア部を被覆する際の水溶液のpHは10に調整した。めっき時間は、30分で行った。コア部を被覆した後、1GPaでプレス成形し、900℃で1.5時間保持して焼鈍した。冷却過程では、600℃から300℃へ2℃/minの冷却速度で冷却し、実施例1の圧粉磁心を得た。尚、表1には、各実施例及び比較例におけるめっき法により被覆する際のpH(表1中では、単に「pH」と表記)、めっき時間が示されている。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例2では、コア部と、鉄イオン(2価イオン)とを含む水溶液に、酸化剤(亜硝酸塩)を添加することにより、コア部の表面にフェライトを被覆した。めっき法により、コア部を被覆する際の水溶液のpHは6に調整した。めっき時間は、30分で行った。コア部を被覆した後、1GPaでプレス成形し、900℃で1.5時間保持して焼鈍した。冷却過程では、600℃から300℃へ2℃/minの冷却速度で冷却して、実施例2の圧粉磁心を得た。
【0044】
実施例3では、コア部と、鉄イオン(2価イオン)とを含む水溶液に、酸化剤(亜硝酸塩)を添加することにより、コア部の表面にフェライトを被覆した。めっき法により、コア部を被覆する際の水溶液のpHは10に調整した。めっき時間は30分で行った。
得られた被覆粉末を、900℃で1.5時間保持して焼鈍した。冷却過程では、600℃から300℃へ2℃/minの冷却速度で冷却して、実施例3の合金粒子を得た。
その後、合金粒子にアクリル系樹脂バインダーを混合し、1GPaでプレス成型し、120℃で1時間の熱硬化処理を行い、実施例3の圧粉磁心を得た。
【0045】
実施例4では、コア部と、鉄イオン(2価イオン)とを含む水溶液に、酸化剤(亜硝酸塩)を添加することにより、コア部の表面にフェライトを被覆した。めっき法により、コア部を被覆する際の水溶液のpHは10に調整した。めっき時間は5分で行った。コア部を被覆した後、1GPaでプレス成形し、900℃で1.5時間保持して焼鈍した。冷却過程では、600℃から300℃へ2℃/minの冷却速度で冷却して、実施例4の圧粉磁心を得た。
【0046】
(2)比較例1
比較例1は、実施例1-4と同様に、シリコンを6.5質量%含有し残部が鉄および不可避的不純物からなるコア部を原料粉末に用い、コア部に対してめっき法によりフェライト(Fe)を被覆した。
比較例1は、コア部と、鉄イオン(2価イオン)とを含む水溶液に、酸化剤(亜硝酸塩)を添加することにより、コア部の表面にフェライトを被覆した。めっき法により、コア部を被覆する際の水溶液のpHは11に調整した。めっき時間は、30分で行った。コア部を被覆した後、1GPaでプレス成形し、900℃で1.5時間保持して焼鈍した。冷却過程では、600℃から300℃へ2℃/minの冷却速度で冷却し、比較例1の圧粉磁心を得た。比較例1は、コア部を被覆する際の水溶液のpHを11とする以外は、実施例1と同様であった。
【0047】
2.XRD(X線回折)による被覆部のピーク強度の測定
得られたサンプルを乳鉢で細かく粉砕し、細かく粉砕した試料を、試料ホルダーの縁と同じ高さとなるよう、試料ホルダーに詰めた。
試料ホルダーに詰めた粉末試料を、X線回折装置にて、以下の条件で測定した。
・装置:Rigaku SmartLab
・X線:CuKα
・X線波長:1.54059Å(Kα)、1.54441Å(Kα
・管電圧:40kV
・管電流:30mA
・走査速度:5°/min
・サンプリング幅:0.02°
・測定範囲(2θ):10°-80°
・入射スリット:1/2°
・受光スリット1:15.000mm
・受光スリット2:20.000mm
図2にCuKα(Kα+Kα)線のX線回折装置(Rigaku SmartLab)を用いて測定したX線回折の測定結果を示す。XRD測定で得られた圧粉磁心の回析パターンにおいて、Kα成分を除去し、コア部や測定セル等に由来するピークを除いて、被覆部のFeSiO、FeOに由来するピークを得た。
【0048】
FeOの最強ピーク強度IAは、回折角2θ=42.0°における回折ピークの強度とした。
【0049】
FeSiOの最強ピーク強度IBは、回折角2θ=35.9°における回折ピーク強度とした。
【0050】
3.渦電流損失の評価方法
圧粉磁心の渦電流損失を、測定装置(B-Hアナライザ、岩崎通信機製、型番SY-8218)を用いて評価した。下記の鉄損に関する修正steinmetz方程式を用い、0.1T、10kHzの条件で評価した。
【0051】
【数1】
【0052】
4.強度の評価方法
圧粉磁心の試験片(50mm×4mm×3mm厚)を作製して、三点曲げ試験を行うことで強度の指標を得た。
【0053】
5.比透磁率の評価方法
圧粉磁心の比透磁率は、測定装置(B-Hアナライザ、岩崎通信機製、型番SY-8218)を用いて測定した。比透磁率は、0.1T、10kHzの条件で評価した。
【0054】
6.評価結果
評価結果を表1に示す。
実施例1-4は、下記要件(a)-(c)を満たしている。
・要件(a):鉄、及びシリコンを含む合金からなるコア部と、コア部を被覆する被覆部と、を備えた合金粒子を有している。
・要件(b):被覆部は、FeSiOを含有している。
・要件(c):被覆部をX線回折で測定し、FeOの最強ピーク強度をIAとし、FeSiOの最強ピーク強度をIBとした際に、ピーク強度比(IA/IB)の値が0.2以下である。
【0055】
これに対して、比較例1は、上記要件(c)を満たしていない。すなわち、比較例1では、ピーク強度比(IA/IB)の値が0.2より大きかった。
【0056】
上記要件(a)-(c)を満たす実施例1-4は、渦電流損失がそれぞれ1.7kW/m、1.6kW/m、1.8kW/m、1.9kW/mであった。上記要件(c)を満たさない比較例1では、渦電流損失が5.4kW/mであった。実施例1-4は、合金粒子の被覆部に、絶縁抵抗率の高いFeSiOを多く含み、FeOをあまり含んでいないため、合金粒子間の絶縁性が高く、渦電流損失を抑制できたと考えられる。他方で、比較例1は、合金粒子の被覆部に、絶縁抵抗率の高いFeOを多く含み、FeSiOをあまり含んでいないため、渦電流損失が大きくなったと考えられる。
【0057】
上記要件(a)-(c)を満たす実施例1-4では、三点曲げ試験の強度が61MPa、59MPa、71MPa、58MPaでいずれも良好であった。上記要件(c)を満たさない比較例1では、三点曲げ試験の強度が55MPaで、実施例より劣る結果となった。実施例1-4は、合金粒子の被覆部が、酸化鉄よりも融点の低いFeSiOを含むため、被覆部同士で焼結し易いため、強度が高まったと考えられる。実施例3は、合金粉末にアクリル樹脂を混合することにより、特に強度が向上したものと考えられる。
【0058】
実施例1-4、比較例1では、比透磁率が64、67、35、86、74でいずれも良好な結果であった。特に実施例4は、めっき時間を5分とすることで、被覆が薄くなり、比透磁率が良好となることが示唆された。
尚、被覆部の形成する際の水溶液のpHを6-10に調整することで、上記ピーク強度比が0.2以下となることが示唆された。
【0059】
7.実施例の効果
本実施例の圧粉磁心は、渦電流損失が小さく、強度が高かった。
【0060】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の圧粉磁心は、モータ、トランス、リアクトル、インダクタ、ノイズフィルター等の用途に特に好適に使用される。
【符号の説明】
【0062】
1…コア部
3…被覆部
5…合金粒子
7、11、21、31、41、51、61、81、91…圧粉磁心
10、20、30…インダクタ(電子素子)
13、23、33、43、45、53、63、65、83、93…コイル
40…ノイズフィルター(電子素子)
50…リアクトル(電子素子)
60…トランス(電子素子)
70…ノイズフィルター(電子機器)
80…モータ(電動機)
90…発電機
図1
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