(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089169
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20240626BHJP
A61K 31/665 20060101ALI20240626BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240626BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240626BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240626BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K31/665
A61K47/20
A61K8/46
A61Q11/00
A61P1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204363
(22)【出願日】2022-12-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花田 栄
(72)【発明者】
【氏名】有田 卓矢
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB23
4C076CC16
4C076DD57
4C076DD57Q
4C076FF36
4C076FF63
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC901
4C083AC902
4C083CC41
4C083EE33
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA37
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA57
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZA67
(57)【要約】 (修正有)
【課題】dl-α-トコフェロール、2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩、及びラウリル硫酸塩を含み、好ましい抗酸化力と殺菌力とを兼ね備えた口腔用組成物を提供すること。
【解決手段】(A)dl-α-トコフェロール、2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩、及び(B)ラウリル硫酸塩を0.05~5質量%含有する、口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩、及び
(B)ラウリル硫酸塩を0.05~5質量%
含有する、ヒト用の口腔用組成物。
【請求項2】
(A)1質量部に対して(B)が50質量部以下含有される、
請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(A)を0.003質量%以上含有し、
(B)を0.05~5質量%含有する、
請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(A)を0.003~0.2質量%含有し、
(B)を0.1~5質量%含有する、
請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔用組成物等に関し、より詳細には、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩及びラウリル硫酸塩を含む、口腔用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、Porphyromonas gingivalisなどの歯周病菌によってもたらされる感染症である。
【0003】
dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル(EPC)は、口腔分野での応用が期待されているものの、実際に口腔領域においてどのような効果を発揮するかについては未だ報告がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/196852号
【特許文献2】特開平08-012568号公報
【特許文献3】特開平10-067639号公報
【特許文献4】特開2013-091617号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Periodontol 2000. 2015 Oct;69(1):7-17. Molecular aspects of the pathogenesis of periodontitis
【非特許文献2】J Periodontal Res. 2016 Dec;51(6):748-757. Influence of retinoic acid on human gingival epithelial barriers
【非特許文献3】Int J Dent. 2012; 2012: 821383.Published online 2012 Jul 26. Host-Bacteria Crosstalk at the Dentogingival Junction
【非特許文献4】Arch Oral Biol. 2016 Jun;66:30-7. The traditional Japanese medicine hangeshashinto alleviates oral ulcer-induced pain in a rat model.
【非特許文献5】Aust Dent J. 2009 Dec;54(4):347-54. Localization of matrix metalloproteinases (MMPs-2, 8, 9 and 20) in normal and carious dentine.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
歯周ポケットにおいて、歯周病菌が感染すると、それを排除するため、好中球をはじめとする白血球が感染患部に集積する。歯周病菌は、集積した好中球により貪食され、その後、好中球内の活性酸素などにより、殺菌される。しかし、感染した歯周病菌が多くなると、集積する好中球も多くなり、歯周ポケット内の活性酸素が過剰になる。この過剰な活性酸素が、歯周組織の破壊など歯周病の重症化につながることが知られている。
このため、歯周病の予防や治療には、原因菌である歯周病菌の殺菌もさることながら、組織破壊につながる活性酸素の除去も重要となる。
そこで、本発明者らは、高い殺菌効果と抗酸化効果とを併せ持つ口腔用組成物を開発するために検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず、本発明者らは、高い抗酸化効果を有する成分を探索した。その結果、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル(本明細書において、「EPC」と称することがある)が特に高い抗酸化力を有することを見いだした。EPCは、アスコルビン酸(ビタミンC)とトコフェロール(ビタミンE)とがリン酸を介してエステル結合した化合物であり、抗酸化作用、保湿作用を有し、育毛剤等の化粧料に使用されている(特許文献1)。
そこで次に、本発明者らは、高い殺菌効果を有するラウリル硫酸塩(特にラウリル硫酸ナトリウム)を、EPCと組み合わせて用いることで、高い殺菌効果と抗酸化効果とを併せ持つ口腔用組成物を開発することを試みた。
ところが、EPCとラウリル硫酸塩とを組み合わせて検討したところ、当該組み合わせを行うと、EPCが有する抗酸化力が低下する場合や、ラウリル硫酸塩が有する殺菌力が低下してしまう場合があることが分かった。
そこで、これらの2成分を組み合わせても、このような効果の低下が起こらない組成物を得ることを目的に、さらに検討を行った。その結果、ラウリル硫酸塩の配合量を適切な範囲とすることによって、好ましい抗酸化力と殺菌力とを兼ね備えた組成物が得られる可能性を見いだし、さらに検討を重ねた。
【0008】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(A)dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩、及び
(B)ラウリル硫酸塩を0.05~5質量%
含有する、(好ましくはヒト用の)口腔用組成物。
項2.
(A)1質量部に対して(B)が50質量部以下含有される、
項1に記載の口腔用組成物。
項3.
(A)を0.003質量%以上含有し、
(B)を0.05~5質量%含有する、
項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4.
(A)を0.003~0.2質量%含有し、
(B)を0.1~5質量%含有する、
項1又は2に記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
EPCとラウリル硫酸塩とを含有しつつも、EPCが有する抗酸化力とラウリル硫酸塩が有する殺菌力が大きく低下することの無い、口腔用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1a】EPC-K(dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩)、及びその他のビタミンE誘導体について、抗酸化能(活性酸素除去能)を検討した結果を示す。
【
図1b】EPC-K(dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩)、及びその他のビタミンC誘導体について、抗酸化能(活性酸素除去能)を検討した結果を示す。
【
図1c】EPC-K(dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩)の濃度を振って、抗酸化能(活性酸素除去能)を検討した結果を示す。
【
図2a】EPC-KとSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)を組み合わせて用いた場合の、SLSの殺菌効果を検討した結果を生菌数で示す。
【
図2b】EPC-KとSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)を組み合わせて用いた場合の、SLSの殺菌効果を検討した結果を生菌数で示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本開示に包含される組成物は、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩、並びにラウリル硫酸塩を含む。本明細書において当該組成物を、「本開示の組成物」と表記することがある。本開示の組成物は、例えば口腔用組成物として好適に用いることができる。また、本開示の組成物に含まれるdl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩を(A)成分、ラウリル硫酸塩を(B)成分と表記することがある。
【0012】
dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル(EPC)は、アスコルビン酸(ビタミンC)とトコフェロール(ビタミンE)とがリン酸を介してエステル結合した化合物であり、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸とも称される。化学式を以下に示す。
【0013】
【0014】
dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルのアルカリ金属塩としては、例えば、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルナトリウム塩、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルリチウム塩等が挙げられる。中でも、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩が好ましい。
また、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルアルカリ金属塩は、モノ塩であってもよく、ジ塩であってもよい。
【0015】
本開示の組成物に含まれるdl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩の含有量は、例えば、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.003~0.5質量%程度がさらに好ましい。当該範囲(0.003~0.5質量%)の上限又は下限は、例えば0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、又は0.4質量%程度であってもよい。より具体的には、例えば、0.003~0.2質量%程度であってもよい。
【0016】
ラウリル硫酸塩としては、ラウリル硫酸アルカリ金属塩であることが好ましく、中でもラウリル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸カリウムがより好ましく、ラウリル硫酸ナトリウムが特に好ましい。
本開示に組成物に含まれるラウリル硫酸塩の含有量は、0.05~5質量%であることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、又は4.5質量%であってもよい。当該範囲は例えば0.1~5質量%若しくは0.1~4.5質量%程度であってもよい。
【0017】
また、本開示の組成物には、(A)成分1質量部に対して(B)成分が50質量部以下含有されることが好ましい。当該質量部比の下限は、効果が奏される範囲であれば特に限定はされないが、例えば(A)成分1質量部に対して(B)成分が0.1質量部以上が好ましい。当該範囲(0.1~50質量部)の上限又は下限は、例えば0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、又は49質量部であってもよい。当該範囲は例えば0.5~50質量部又は0.5~40質量部であってもよい。
【0018】
特に限定はされないが、本開示の組成物としては、(A)成分を0.003質量%以上含有し、(B)成分を0.05~5質量%含有する組成物が好ましい。当該(A)成分及び(B)成分の含有量範囲については、上記の通りさらに限定されていてもよい。またさらに、(A)1質量部に対して(B)が50質量部以下という質量部比を満たし、且つ、前記含有量範囲を満たす組成物が、さらに好ましい。
【0019】
本開示の組成物の適用対象としては、ヒトを含む哺乳動物(例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ヒツジ、ウマ、ウシ、サル等)等が例示される。中でもヒトが好ましい。
本開示の組成物の適用対象となるヒトとしては、例えば、歯周病患者又はその疑いがあるヒトが挙げられる。
【0020】
本開示の組成物は、例えば、固形組成物、液体組成物等で有り得る。また、本開示の組成物(特に口腔用組成物)は、常法に従って例えば軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、ガム剤、タブレット、ドロップ等の形態(剤形)にすることができる。なかでも、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、軟膏剤、ペースト剤、液剤、ジェル剤であることが好ましい。
【0021】
本開示の組成物は、(A)成分及び(B)成分の他、効果を損なわない範囲で、例えば口腔用組成物に配合し得る任意成分を単独で又は2種以上さらに含有してもよい。
【0022】
例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、例えば、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;グリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1~5質量%である。
なお、本開示の組成物は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含まなくてもよい。
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとしては、例えば、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1~40であり、アルキル基の炭素数が7~30であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1~40であり、アルキル基の炭素数が1~18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、例えば、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1~40であり、アルキル基の炭素数が1~20であるポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0023】
また、香味剤として、例えば、メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等の香料を用いることができる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して例えば0.001~1.5質量%配合することができる。
【0024】
また、甘味剤として、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等を用いることができる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して例えば0.01~1質量%配合することができる。
【0025】
さらに、湿潤剤として、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3―ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0026】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウムなどのセルロース誘導体、キサンタンガムなどの微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、デキストリン、寒天、ペクチン、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウムなどの天然高分子または天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウムなどの合成高分子、増粘性シリカ、ビーガムなどの無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン性粘結剤が挙げられる。これら粘結剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を配合することができる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を配合してもよい。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが4~8、好ましくは5~7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01~2重量%であってよい。
【0030】
なお、本開示の組成物には、さらに、薬効成分として酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、ラウロイルサルコシンナトリウム等のアニオン系殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン系殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、硝酸カリウム、パラチニット等を、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0031】
また、基剤として、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を添加することも可能である。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
本開示の組成物は、公知の方法または公知の方法から容易に想到する方法により調製することができる。例えば、(A)成分、(B)成分、及び必要に応じてその他の成分等を適宜混合することによって調製することができる。
【0033】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件の任意の組み合わせを全て包含する。
【0034】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0035】
本開示の内容を以下の実験例を用いて具体的に説明する。しかし、本開示はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、成分量を示す「%」は「質量%」を意味する。
【0036】
抗酸化試験
99.5%エタノールを蒸留水を用いて希釈し調製した50v%エタノールを溶媒とし、各種濃度の薬剤(EPC-K(dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩)、EPC-K以外のビタミンC・E誘導体)が含まれた薬剤組成物を調製した。
また、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)を蒸留水に溶解させ、NaOHを用いてpHを6.0に調整した後、さらに蒸留水を加え0.2M MES緩衝液を調製した。
ラジカル物質DPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル)を99.5v%エタノールに溶解させ、400μM DPPHを調製した。そして、調製しておいた各薬剤組成物に0.2M MES 緩衝液、400μM DPPHの順で、それぞれ薬剤組成物に対し1/2質量を添加した。
DPPHのラジカル体から非ラジカル体への変化に伴う変色を定量するため、室温で20分間静置した後、吸光光度計(Cytation 5)を用いて波長520nmでの吸光度を測定した。そして、当該測定値から以下の式を用いて、薬剤による活性酸素除去率を算出した。
【数1】
【0037】
結果を
図1a、
図1b、及び
図1cに示す。これらの図においては、VEAは酢酸dl-α-トコフェロールを、VEはdl-α-トコフェロールを、APMはアスコルビン酸リン酸マグネシウム塩を、EPCはdl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩を、それぞれ示す。
図1aから、EPC又はその塩は、他のビタミンE誘導体に比べて著しく高い抗酸化能を有することが分かった。
図1bから、EPC又はその塩は、他のアスコルビン酸(ビタミンC)誘導体に比べて著しく高い抗酸化能を有することが分かった。
図1cから、EPC又はその塩は、濃度依存的に抗酸化能が高まることが分かった。
【0038】
またさらに、50v%エタノールを溶媒とし、EPC-KとSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)とを各濃度で含有する組成物を調製した。そして、各組成物において、SLSが含有していない場合に奏される活性酸素除去率を100%としたときの、活性酸素除去率の割合(%)を検討した。言い換えれば、各濃度のEPC-K組成物において奏される活性酸素除去率(
図1cに示されている)を100%としたときの、各組成物の奏する活性酸素除去率の割合(%)を検討した。結果を次の表に示す。
【0039】
【0040】
殺菌試験
各薬剤と蒸留水とを混合して、各濃度の薬剤(EPC-K、SLS、及びその混合物)を含む薬剤組成物を調製した。
【0041】
また、P.g菌(P.gingivalis W83)を変法GAM培地にて培養し、O.D(600)=1.0に調製して、菌液とした。そして、各薬剤組成物に対し、1/10質量の菌液を添加して、3分間静置した。
その後、殺菌剤不活化培地(0.07%レシチン+0.5%Tween 80を加えた変法GAM培地)に、上記の菌駅添加後静置させた液を1/10量加えて薬剤の殺菌効果を停止させた。そして、これを、平板生培地(CDC嫌気性菌用ヒツジ血液寒天培地)に播種し、37℃嫌気条件下で7日間培養した。培養後、コロニー数をカウントし、殺菌効果を判定した。
結果を
図2a及び
図2bに示す。これらの図においては、EPCはdl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩を、SLSはラウリル硫酸ナトリウムを、それぞれ示す。また、これらの図における生菌数(CFU)を示す数値1.E+0N(Nは0~6の整数)は、1×10
Nを意味する。本検討においては、例えば1.E+02以下になった場合は99.9%以上殺菌されたことを意味している。
図2a及び
図2bから、ラウリル硫酸塩は、EPC又はそのアルカリ金属塩と組み合わせて用いるにあたっては、EPC又はそのアルカリ金属塩の含有量にもよるが、概ね0.05質量%以上の含有量で用いることが好ましい(EPC又はそのアルカリ金属により殺菌力が低下せずにすむ)ことが分かった。