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  • 特開-自動二輪車用タイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089176
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20240626BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20240626BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B60C9/18 J
B60C9/20 E
B60C9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204376
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】生田 知且
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA39
3D131AA44
3D131AA45
3D131AA48
3D131AA49
3D131BA02
3D131BB06
3D131BC12
3D131BC31
3D131BC51
3D131CB07
3D131DA52
3D131DA57
(57)【要約】
【課題】直進走行時にブレーキをかけた際におけるバックリングの発生を抑制して、ブレーキング性能の向上を図った自動二輪車用タイヤを提供する。
【解決手段】一対のビード部13間に跨ってトロイド状に延在するカーカス1を骨格とし、カーカスのタイヤ半径方向外側に、ベルトコードがタイヤ周方向に螺旋状に巻回されて形成されたスパイラルベルト2を備える自動二輪車のフロント用タイヤ10である。ベルトコードが1×N構造を有するとともに、タイヤから取り出したベルトコードに対して50Nを負荷した際の伸びが、0.3~0.85%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間に跨ってトロイド状に延在するカーカスを骨格とし、該カーカスのタイヤ半径方向外側に、ベルトコードがタイヤ周方向に螺旋状に巻回されて形成されたスパイラルベルトを備える自動二輪車のフロント用タイヤであって、
前記ベルトコードが1×N構造を有するとともに、タイヤから取り出した該ベルトコードに対して50Nを負荷した際の伸びが、0.3~0.85%であることを特徴とする自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記ベルトコードがN本のスチールフィラメントを撚り合わせて形成されており、かつ、加硫前のゴム被覆されていない前記ベルトコードの撚りピッチが、5.2~8.8mmである請求項1記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記スパイラルベルトにおける前記ベルトコードの打ち込み数が、10~23本/25mmである請求項1記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記スパイラルベルトのタイヤ表面に沿って測ったベルト幅が、110mm~150mmである請求項1記載の自動二輪車用タイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、スパイラルベルトに用いるベルトコードの改良に係る自動二輪車のフロント用タイヤ、特には、自動二輪車用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車用タイヤのトレッド踏面部を補強するベルトとしては、コード方向が層間で互いに交錯するように配置された2枚以上の傾斜ベルト層、または、タイヤ周方向に螺旋状に巻回されたゴム被覆コードからなる1枚以上のスパイラルベルトが用いられている。
【0003】
このうちスパイラルベルトを用いた自動二輪車用タイヤに係る先行技術としては、例えば、特許文献1に、モノスパイラルベルトに特定の引っ張り破断強度を有するスチールコードを用いるとともに、そのショルダー部における打ち込み本数をタイヤ赤道における打ち込み本数よりも小さく設定し、モノスパイラルベルトの配設幅を特定の範囲とし、モノスパイラルベルトとその両端部に配設されたテキスタイル補強層とのオーバーラップ量を所定に規定した自動二輪車用空気入りラジアルタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/098112号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスパイラルベルトを用いたフロント用タイヤでは、直進走行時において、自動二輪車のブレーキング性能が不十分となる場合があった。これは、ブレーキ時に接地圧の抜け、いわゆるバックリングという現象が発生するためである。
【0006】
これに対し、特許文献1に開示されているような打ち込み本数をタイヤ幅方向において部分的に低減する技術を用いて、センター部におけるスパイラルベルトのコードの打ち込み本数を減らすことにより、ある程度までバックリングを改善することは可能である。しかしながら、コードの打ち込み本数を減らすと耐久性や剛性の低下を招くため、この技術ではバックリング変形を大幅に低減することはできなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、直進走行時にブレーキをかけた際におけるバックリングの発生を抑制して、ブレーキング性能の向上を図った自動二輪車用タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、自動二輪車のフロント用タイヤのスパイラルベルトに用いるベルトコードの伸びを所定に規定することで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一対のビード部間に跨ってトロイド状に延在するカーカスを骨格とし、該カーカスのタイヤ半径方向外側に、ベルトコードがタイヤ周方向に螺旋状に巻回されて形成されたスパイラルベルトを備える自動二輪車のフロント用タイヤであって、
前記ベルトコードが1×N構造を有するとともに、タイヤから取り出した該ベルトコードに対して50Nを負荷した際の伸びが、0.3~0.85%であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明のタイヤにおいては、前記ベルトコードがN本のスチールフィラメントを撚り合わせて形成されており、かつ、加硫前のゴム被覆されていない前記ベルトコードの撚りピッチが、5.2~8.8mmであることが好ましい。
【0011】
また、本発明のタイヤにおいては、前記スパイラルベルトにおける前記ベルトコードの打ち込み数が、10~23本/25mmであることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のタイヤにおいては、前記スパイラルベルトのタイヤ表面に沿って測ったベルト幅が、110mm~150mmであることが好ましい。
【0013】
ここで、本発明においてタイヤの諸寸法は、特に断りのない限り、タイヤが生産され、使用される地域において有効な産業規格で規定されたリムにタイヤを組み付け、かかる産業規格において規定された内圧を充填した無負荷状態で測定した値をいうものとする。また、上記産業規格とは、例えば、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会) YEAR BOOKであり、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation) STANDARD MANUALであり、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.) YEAR BOOKである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記構成としたことにより、直進走行時にブレーキをかけた際におけるバックリングの発生を抑制して、ブレーキング性能の向上を図った自動二輪車用タイヤを実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の自動二輪車用タイヤの一例を示す幅方向断面図である。
図2】本発明に係るスパイラルベルトに用いるベルトコードの一構成例を示す幅方向断面図である。
図3】ベルトコードの応力-歪曲線の一例を示すグラフ(模式図)である。
図4】コード断面においてスチールフィラメントが偏って配置された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の自動二輪車用タイヤの一例を示す幅方向断面図である。図示する自動二輪車用タイヤ10は、自動二輪車のフロント用タイヤであって、環状に形成されたトレッド部11と、そのタイヤ半径方向内側に順次配設された一対のサイドウォール部12およびビード部13を備えている。また、図示する自動二輪車用タイヤ10は、一対のビード部13間に跨ってトロイド状に延在するカーカス1を骨格とし、そのタイヤ半径方向外側に、ベルトコードがタイヤ周方向に螺旋状に巻回されて形成されたスパイラルベルト2を備えている。
【0018】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいては、スパイラルベルト2に用いるベルトコードとして、1×N構造を有し、タイヤから取り出したベルトコードに対して50Nを負荷した際の伸びが、0.3~0.85%であるものを用いる。本発明のタイヤにおいては、このような伸縮性の高いベルトコードを用いることで、バックリングの発生を抑制できる。そのため、本発明のタイヤにおいては、十分なブレーキ力が得られる。また、本発明によれば、コードの打ち込み本数をセンター部において減らした場合のように、耐久性や剛性の低下を招くこともない。
【0019】
図3に、タイヤから取り出したベルトコードの応力-歪曲線の一例のグラフ(模式図)を示す。本発明に係るベルトコードは伸縮性に優れるものであり、具体的には、図3に示すような応力-歪特性を示す。図示する応力-歪曲線は変曲点Pを有しており、原点から変曲点Pに至るまでの低弾性率領域では相対的に低い弾性率を、変曲点Pを超える高弾性率領域では相対的に高い弾性率を示している。ここでいう弾性率とは、引張弾性率を意味する。
【0020】
本発明において、スパイラルベルト2に用いるベルトコードとしては、タイヤから取り出したベルトコードに対して50Nを負荷した際の伸びが、0.3~0.85であることが必要であり、0.4~0.7%であることが好ましい。上記伸びが、0.3%未満であると、バックリングの発生が抑制できず、0.85%を超えると、剛性が低下するため、いずれにしても本発明の所期の効果が得られない。
【0021】
ここで、本発明において、タイヤから取り出したベルトコードとは、加硫済みの製品タイヤの内部から切り出した、ゴムが付着した状態のベルトコードを意味する。
【0022】
また、本発明において、スパイラルベルト2に用いるベルトコードとしては、N本のフィラメント、特には、型付けされたスチールフィラメントを互いに撚り合わせて形成された1×N構造(N=2~7)の撚りコードを用いる。本発明において1×N構造の単撚りのベルトコードを用いるのは、N×M構造等の複撚りのコードよりも、上述のような高い伸縮性を有するコード特性が得られやすいためである。本発明に係るベルトコードとしては、最も好ましくは、図2に断面構造を示すような、型付けされた5本のスチールフィラメント101を撚り合わせて形成された1×5構造のスチールコード100を用いることができる。
【0023】
また、本発明に係るベルトコードの、加硫前のゴム被覆されていない状態での直径は、好適には0.59~0.71mmであり、より好適には0.64~0.69mmである。このようなベルトコードを用いることで、本発明の効果をより適切に得ることができる。
【0024】
さらに、本発明に係るベルトコードの、加硫前のゴム被覆されていない状態での撚りピッチは、好適には5.2~8.8mmであり、より好適には5.5~7.5mmである。ベルトコードの撚りピッチが小さすぎる場合、生産安定性が悪化する。一方、ベルトコードの撚りピッチが大きすぎる場合、必要な伸張性を確保しようとすると、図4に示すように、コード製造時に、スチールコード200の断面においてスチールフィラメント201が均一に配置されずに偏って配置される不良が発生する。
【0025】
さらにまた、本発明に係るベルトコードにおいて、加硫前のゴム被覆されていない状態でのスチールフィラメントの型付け高さは、好適には0.70~0.80mmであり、より好適には0.71~0.74mmである。このようなベルトコードを用いることで、本発明の効果をより適切に得ることができる。
【0026】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいては、上記条件を満足するベルトコードを、スパイラルベルト2に用いる。スパイラルベルト2は、ベルトコードをタイヤ周方向に螺旋状に巻回することにより形成されるが、ここでいうタイヤ周方向とは、タイヤ赤道面CLに対して実質的に平行であることを意味する。
【0027】
本発明において、スパイラルベルト2におけるベルトコードの打ち込み数は、好適には10~23本/25mm、より好適には11~21本/25mmである。ベルトコードの打ち込み数が、少なすぎると耐久性や剛性が不十分となるおそれがある。
【0028】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいては、スパイラルベルト2のベルトコードについて上記条件を満足するのであればよく、それ以外のタイヤ構造や使用材料の詳細などについては特に制限されるものではないが、例えば、以下のように構成することができる。
【0029】
カーカス1は、少なくとも1枚のカーカスプライからなり、比較的高弾性のテキスタイルコードを互いに平行に配列させて形成される。カーカスプライの枚数は、1枚でも2枚でもよく、3枚以上でもかまわない。図示する例では、2枚のカーカスプライが配置されている。カーカスプライの両端部は、ビード部13において、ビード部13に埋設されたビードコア3の周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止しても、両側からビードワイヤで挟み込んで係止してもよく、いずれの固定方法を用いてもよい。
【0030】
スパイラルベルト2は、少なくとも1枚で配置することができ、2枚以上であってもよい。図示する例では、1枚のスパイラルベルト2が配置されている。また、スパイラルベルトのタイヤ表面に沿って測ったベルト幅は、好適には110mm~150mmであり、より好適には120mm~145mmである。このようなベルト幅とすることで、本発明の効果をより適切に得ることができる。
【0031】
また、図示はしないが、本発明においては、スパイラルベルト2に加えて、さらに、コード方向が層間で互いに交錯するように配置された2層以上の傾斜ベルト層を配置してもよい。傾斜ベルト層を構成する補強材としては、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド(商品名:ケブラー)、スチール等が挙げられる。中でも、芳香族ポリアミドやスチールは、高温時においても伸長せずにトレッド部分の膨張を抑制することができる補強材である。
【0032】
さらに、本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、ビードコア3のタイヤ半径方向外側にはビードフィラー4を配置することができ、タイヤの最内層には、図示しないインナーライナーを配置することができる。
【0033】
図示するタイヤ10は、ラジアル構造およびバイアス構造のいずれのタイヤにも適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 カーカス
2 スパイラルベルト
3 ビードコア
4 ビードフィラー
10 自動二輪車用タイヤ
11 トレッド部
12 サイドウォール部
13 ビード部
100,200 スチールコード
101,201 スチールフィラメント
図1
図2
図3
図4