(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089180
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】車両の乗降口構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/07 20060101AFI20240626BHJP
B62D 31/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B62D25/07
B62D31/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204384
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】村藤 正幸
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB60
3D203CB26
3D203DA32
(57)【要約】
【課題】乗降口付近への雨水の飛散を抑制することができる、車両の乗降口構造を提供する。
【解決手段】車両100の乗降口構造20は、車両100のボディ部10に形成された乗降口21と、乗降口21を開閉する乗降用扉22と、乗降口21の幅方向に沿ってボディ部10の乗降口上方に取り付けられたモール部23と、ボディ部10において乗降口21の幅方向端部側で上下方向に延設されて、乗降用扉22の縁部が接触するクッション材24、25とを備え、モール部23は、乗降口21の幅方向中心側から幅方向端部側まで延出され、クッション材24、25は、ボディ部10に対し車両100の外側に隙間cをもって取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディ部に形成された乗降口と、
前記乗降口を開閉する乗降用扉と、
前記乗降口の幅方向に沿って前記ボディ部の前記乗降口上方に取り付けられたモール部と、
前記ボディ部において前記乗降口の幅方向端部側で上下方向に延設されて、前記乗降用扉の縁部が接触するクッション材と、
を備え、
前記モール部は、前記乗降口の幅方向中心側から幅方向端部側まで延出され、
前記クッション材は、前記ボディ部に対し前記車両の外側に隙間をもって取り付けられることを特徴とする、車両の乗降口構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗降口構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両天井部から流れてくる雨水などを受けるため、下記特許文献1に記載のように、車両にはドリップレール(モール部)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
雨天における車両(例えば路線バス)への乗降の際、乗降口上部のドリップレール(モール部)から流れた雨水が乗降口側へ飛散し、乗客にかかる懸念がある。
【0005】
そこで、本発明は、乗降口付近への雨水の飛散を抑制することができる、車両の乗降口構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0007】
本適用例に係る車両の乗降口構造は、車両のボディ部に形成された乗降口と、前記乗降口を開閉する乗降用扉と、前記乗降口の幅方向に沿って前記ボディ部の前記乗降口上方に取り付けられたモール部と、前記ボディ部において前記乗降口の幅方向端部側で上下方向に延設されて、前記乗降用扉の縁部が接触するクッション材と、を備え、前記モール部は、前記乗降口の幅方向中心側から幅方向端部側まで延出され、前記クッション材は、前記ボディ部に対し前記車両の外側に隙間をもって取り付けられることを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、クッション材がボディ部に対して隙間をもって取り付けられるため、モール部から下方にたれ落ちてくる雨水をクッション材とボディ部との隙間に落下させることができる。これにより、モール部から下方にたれ落ちてくる雨水がクッション材の上面に落下することを抑制することができるため、雨水がクッション材の上面から乗降口付近に飛散することも抑制することができる。また、モール部から下方にたれ落ちてくる雨水が地面に落下して飛散しても、飛散した雨水はクッション材が妨げとなって乗降口付近まで到達しにくいため、雨水が地面から跳ね返って乗降口付近に飛散することも抑制することができる。
【0009】
このように、本発明によれば、乗降口付近への雨水の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る車両の乗降口構造の一実施形態を適用したバスの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、
図1~
図3を適宜参照しつつ、本発明に係る車両の乗降口構造の一実施形態における構成及び効果について説明する。なお、
図1のB-B線に沿う断面図においては、
図1に示す第1モール部23が示されないが、
図3においては、説明の便宜上の理由により第1モール部23を点線により示している。
【0012】
(車両の乗降口構造の構成)
まず、本発明に係る車両の乗降口構造の一実施形態における構成について説明する。バス100は、本発明に係る車両の乗降口構造の一実施形態を適用した車両であり、ボディ部10と、第1乗降口構造20と、第2乗降口構造30とを備えている。第1乗降口構造20は、第1乗降口21と、第1乗降用扉22と、第1モール部23と、第1前側クッション材24と、第1後側クッション材25とを備えている。第2乗降口構造30は、第2乗降口31と、第2乗降用扉32と、第2モール部33と、第2前側クッション材34と、第2後側クッション材35とを備えている。
【0013】
第1乗降口構造20及び第2乗降口構造30は、本発明に係る車両の乗降口構造における一実施形態に相当する。以下において、バス100の前後方向を「車両前後方向」と言及し、バス100の前方を「車両前方」と言及し、バス100の後方を「車両後方」と言及し、バス100の車幅方向を単に「車幅方向」と言及する。
【0014】
ボディ部10は、図示しないシャシフレーム上にて複数のパネル材及び柱材によって略直方体状をなしている。ボディ部10の下部にはタイヤTが取り付けられている。
【0015】
第1乗降口21は、バス100の車両前後方向中央部に位置し、乗客がバス100に乗ったりバス100から降りたりするための乗降口である。第1乗降口21は、バス100の左側面側において形成されている。
【0016】
第1乗降用扉22は、車両後方に向かって摺動することにより開動作を行い、車両前方に向かって摺動することにより閉動作を行う片開きスライド式扉である。
【0017】
第1モール部23は、第1乗降口21の上方においてボディ部10に取り付けられており、車両前後方向にわたって延在している。具体的には、
図2に示すように、第1モール部23は、底壁23aと、底壁23aに対して車幅方向両側に位置する一対の側壁23b、23cとからなる。
【0018】
つまり、第1モール部23は、上方、車両前方及び車両後方に向かって開口しており、上方の開口から流入する雨水を車両前方及び車両後方の開口から流出させるための溝gが形成された断面U字状部材である。第1モール部23の前端は、第1乗降口21の前縁よりもわずかに車両前方に位置しており、第1モール部23の後端は、第1乗降口21の後縁よりもわずかに車両後方に位置している。溝gから雨水を飛散させないためには、溝gの幅よりも溝gの深さが長いことが好ましい。
【0019】
第1前側クッション材24は、第1乗降口21の前縁においてボディ部10に取り付けられており、上下方向に延在している。具体的には、第1前側クッション材24は、例えばゴムからなり、
図3に示すように、ボディ部10のパネル材10aと柱材10bを車幅方向において把持する形で取り付けられている。
【0020】
詳しくは、第1前側クッション材24は、基部24aの車幅方向内側から内側延出部24bが車両前方に延出しており、基部24aの車幅方向外側から外側延出部24cが車両前方に延出している。内側延出部24bと外側延出部24cとの間にパネル材10aと柱材10bとが挟み込まれている。基部24aは、第1乗降用扉22の前縁の扉側クッション材22aと直接接触する部分である。
【0021】
外側延出部24cは、パネル材10aより車両外側に厚みを有しており、車両前方部分は、パネル材10aと接している面から段差を有していることで、車両前方に開口した隙間cを形成している。隙間cは第1乗降口21の前縁に沿って上下方向に延在している。隙間cの底面(隙間cの車両方向後側の面)は、第1モール部23の前端よりも車両後方に位置している。つまり、第1モール部23から流れ落ちた水滴を隙間cで捕らえることが可能であり、風等により車両前方から後方にパネル材10a表面を伝って流れてきた水滴も隙間cで捕らえることが可能である。
【0022】
第1後側クッション材25は、図示はしないが、第1乗降用扉22が収納される関係上、柱材10bを挟持していないが、第1乗降口21の後縁に沿ってボディ部10のパネル材10aを把持する構成で設けられている。そして、第1後側クッション材25も第1前側クッション材24と同じように、外側延出部により、車両後方に開口した隙間が形成されている。この隙間は車両後方に開口している。
【0023】
第1乗降用扉22は、その縁部が第1乗降用扉22の閉動作時に第1前側クッション材24の外側延出部24cに接触し、その縁部が第1乗降用扉22の開動作時に第1後側クッション材25の外側延出部に接触するような位置関係で配置されている。
【0024】
第2乗降口31は、バス100の車両前後方向前部に位置し、乗客がバス100に乗ったりバス100から降りたりするための乗降口である。第2乗降口31は、バス100の左側面側において第1乗降口21の車両前方に形成されている。
【0025】
第2乗降用扉32は、片開き折畳式扉であって、前後分割された折り畳み可能な扉板からなり、前側の扉板が第2乗降口31の前縁側にて車両上下方向に延びる支持軸に軸支されている。第2乗降用扉32は、折り畳まれつつ車両後方に向かって摺動することにより開動作を行い、展開されつつ車両前方に向かって摺動することにより閉動作を行う。
【0026】
第2モール部33の構成は、第1モール部23の構成と同様である。第2前側クッション材34の構成は、第1前側クッション材24の構成と同様である。第2後側クッション材35の構成は、第1後側クッション材25の構成と同様である。ボディ部10、第2乗降口31、閉鎖状態の第2乗降用扉32、第2モール部33、第2前側クッション材34及び第2後側クッション材35の位置関係は、ボディ部10、第1乗降口21、閉鎖状態の第1乗降用扉22、第1モール部23、第1前側クッション材24及び第1後側クッション材25の位置関係と同様である。よって、ボディ部10と第2前側クッション材34及び第2後側クッション材35との間にもそれぞれ隙間が形成されている。
【0027】
(車両の乗降口構造の効果)
バス100の第1乗降口構造20によれば、第1前側クッション材24がボディ部10に対して隙間cをもって取り付けられるため、第1モール部23から下方にたれ落ちてくる雨水を隙間cに落下させることができる。
【0028】
これにより、第1モール部23から下方にたれ落ちてくる雨水が第1前側クッション材24の上面に落下することを抑制することができるため、雨水が第1前側クッション材24の上面から第1乗降口21付近に飛散することも抑制することができる。
【0029】
また、第1モール部23から下方にたれ落ちてくる雨水が地面に落下して飛散しても、飛散した雨水は第1前側クッション材24の外側延出部24cが妨げとなって第1乗降口21付近まで到達しにくいため、雨水が地面から跳ね返って第1乗降口21付近に飛散することも抑制することができる。
【0030】
なお、これらの効果については、第1後側クッション材25、第2前側クッション材34及び第2後側クッション材35についても同様である。
【0031】
このように、第1乗降口21及び第2乗降口31付近への雨水の飛散を抑制することができる。
【0032】
さらに、第1乗降口構造20によれば、第1乗降口21付近への雨水の飛散抑制手段として、第1モール部23を車両前後方向に長くして第1モール部23の車両前後方向各端部(雨水流出部)を第1乗降口21から遠ざけることではなく、隙間cを形成することを採用しているため、第1モール部23の製造コストの増大を回避しつつ第1乗降口21付近への雨水の飛散を抑制することができる。
【0033】
同様の理由により、第2モール部33の製造コストの増大を回避しつつ第2乗降口31付近への雨水の飛散を抑制することができる。
【0034】
(その他)
本発明に係る車両の乗降口構造は、バス以外の車両(例えば、トラック又は電車)に適用可能なものであり、1つの車両に対して単数箇所又は複数箇所に適用可能なものである。
【0035】
乗降用扉の開閉方式について、上記一実施形態においては第1乗降用扉22が片開きスライド式であって第2乗降用扉32が片開き折畳式であるが、これら以外の方式(例えば両開き折畳式)であってもよい。
【0036】
上記一実施形態においては、第1モール部23及び第2モール部33の車両前後方向各端部における開口から雨水が流出する構成となっているが、第1モール部23及び第2モール部33の下面に貫通口を形成し、この貫通孔から落下する雨水が隙間cに流入するような構成にしてもよい。
【0037】
上記一実施形態において、第1モール部23、第1前側クッション材24及び第1後側クッション材25が一体であってもよく、第2モール部33、第2前側クッション材34及び第2後側クッション材35が一体であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 車両の乗降口構造
10 ボディ部
20 第1乗降口構造
21 第1乗降口
22 第1乗降用扉
22a 扉側クッション材
23 第1モール部
23a 底壁
23b、23c 側壁
24 第1前側クッション材
24a 基部
24b 内側延出部
24c 外側延出部
25 第1後側クッション材
30 第2乗降口構造
31 第2乗降口
32 第2乗降用扉
33 第2モール部
34 第2前側クッション材
35 第2後側クッション材
100 バス(車両)
c 隙間
g 溝
T タイヤ