(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089184
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】液圧回転機械
(51)【国際特許分類】
F04B 1/2007 20200101AFI20240626BHJP
F04B 1/2014 20200101ALI20240626BHJP
F03C 1/253 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F04B1/2007
F04B1/2014
F03C1/253
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204390
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】駒田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大槻 聡
(72)【発明者】
【氏名】小松 賢司
(72)【発明者】
【氏名】奥中 勇太
【テーマコード(参考)】
3H070
3H084
【Fターム(参考)】
3H070BB04
3H070BB06
3H070CC07
3H070CC32
3H070DD05
3H070DD96
3H084AA08
3H084AA16
3H084BB09
3H084BB24
3H084CC02
3H084CC56
(57)【要約】
【課題】シリンダブロックが振れ回ってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる液圧回転機械を提供する。
【解決手段】液圧回転機械は、流入路と流出路とが形成されているケーシングと、所定の回転軸線まわりに回転可能にケーシングに軸支されている軸部材と、軸線方向一端に複数のシリンダボアが形成され、軸部材が相対回転不能に挿通されているシリンダブロックと、シリンダブロックの各々に挿入され、シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するようにケーシングに固定され、流入路に繋がる流入側ポートと流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、軸部材とシリンダブロックとの間に配置されるスペーサ部材と、を備えシリンダブロックは、結合部によって軸部材と相対回転不能に結合され、スペーサ部材は、結合部に対して軸線方向に離して配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、
所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、
軸線方向一端に複数のシリンダボアが形成され、前記軸部材が相対回転不能に挿通されているシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、
前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、
前記軸部材と前記シリンダブロックとの間に配置されるスペーサ部材と、を備え、
前記シリンダブロックは、結合部によって前記軸部材と相対回転不能に結合され、
前記スペーサ部材は、前記結合部に対して軸線方向に離して配置されている、液圧回転機械。
【請求項2】
前記結合部は、前記シリンダブロックの軸線方向一端側に形成され、
前記スペーサ部材は、前記シリンダブロックの軸線方向他端側に配置されている、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項3】
前記スペーサ部材は、前記軸部材及び前記シリンダブロックの一方に対して嵌り、且つ前記軸部材及び前記シリンダブロックの他方に対して隙間を空けて配置されている、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項4】
前記スペーサ部材は、環状に形成されている、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項5】
前記スペーサ部材は、断面矩形状に形成されている、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項6】
前記スペーサ部材は、外周側が湾曲する断面D型形状に形成されている、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項7】
前記スペーサ部材は、断面円形状に形成されている、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項8】
作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、
所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、
軸線方向一端に複数のシリンダボアが形成され、前記軸部材が相対回転不能に挿通されているシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、
前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、を備え、
前記シリンダブロックは、結合部によって前記軸部材と相対回転不能に結合され、
前記軸部材及び前記シリンダブロックの少なくとも一方には、他方に向かって突出する凸部が形成され、
前記凸部は、前記結合部に対して軸線方向に離して配置されている、液圧回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーシングに軸支される軸部材にシリンダブロックが相対回転不能に結合される液圧回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧回転機械の一例として、例えば特許文献1の液圧ポンプが知られている。液圧ポンプでは、ケーシングに軸支される軸部材がシリンダブロックに相対回転不能に結合されている。他方、軸部材は、シリンダブロックと一体的に回転することによって撓む。軸部材の撓みに対してシリンダブロックが追従しないようにするために、シリンダブロックは軸部材にスプライン結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液圧ポンプでは、ピストンに作用する圧力及び遠心力等によってシリンダブロックに転倒モーメントが作用することによって軸部材が撓む。そして、軸部材が撓んだ状態で回転することによってシリンダブロックが振れ回る。ピストンに作用する圧力及び遠心力が大きくなると、シリンダブロックの振れ回りが大きくなる。そうすると、シリンダブロックが弁板から乖離する。これにより、作動液の漏れが大きくなるので、吐出効率が低下する。
【0005】
そこで本開示は、シリンダブロックが振れ回ってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる液圧回転機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の液圧回転機械は、作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、軸線方向一端に複数のシリンダボアが形成され、前記軸部材が相対回転不能に挿通されているシリンダブロックと、前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、前記軸部材と前記シリンダブロックとの間に配置されるスペーサ部材と、を備え、前記シリンダブロックは、結合部によって前記軸部材と相対回転不能に結合され、前記スペーサ部材は、前記結合部に対して軸線方向に離して配置されている。
【0007】
本開示の第1の液圧回転機械に従えば、スペーサ部材が軸部材とシリンダブロックとの間に配置され、且つ結合部から軸線方向に離して配置されている。それ故、シリンダブロックが軸線方向に離れた2点で軸部材に対する径方向の動きが制限されている。これにより、シリンダブロックが軸部材に対して振れ回ることを抑制することができる。従って、シリンダブロックが振れ回ることによってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる。
【0008】
本開示の第2の液圧回転機械は、作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、軸線方向一端に複数のシリンダボアが形成され、前記軸部材が相対回転不能に挿通されているシリンダブロックと、前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、を備え、前記シリンダブロックは、結合部によって前記軸部材と相対回転不能に結合され、前記軸部材及び前記シリンダブロックの少なくとも一方には、他方に向かって突出する凸部が形成され、前記凸部は、前記結合部に対して軸線方向に離して配置されている。
【0009】
本開示の第2の液圧回転機械に従えば、軸部材及びシリンダブロックの少なくとも一方には、他方に向かって突出する凸部が形成されている。そして、凸部は、結合部に対して軸線方向に離して配置されている。それ故、シリンダブロックが軸線方向に離れた2点で軸部材に対する径方向の動きが制限されている。これにより、シリンダブロックが軸部材に対して振れ回ることを抑制することができる。従って、シリンダブロックが振れ回ることによってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の第1の液圧回転機械によれば、シリンダブロックが振れ回ってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる。
【0011】
また、本開示の第2の液圧回転機械によれば、シリンダブロックが振れ回ってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る液圧回転機械を示す断面図である。
【
図2】
図1の領域Xを拡大して示す拡大断面図である。
【
図3】本開示の第2実施形態に係る液圧回転機械の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図4】本開示の第3実施形態に係る液圧回転機械の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】本開示の第4実施形態に係る液圧回転機械の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6】本開示の他の実施形態に係る液圧回転機械の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る第1乃至第4実施形態の液圧回転機械1,1A~1Cについて前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する液圧回転機械1,1A~1Cは、本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0014】
[第1実施形態]
<液圧回転機械>
図1に示す液圧回転機械1は、ショベルやクレーン等の建設機械、フォークリフト等の産業機械、トラクター等の農業機械、及びプレス機等の油圧機械等、種々の機械に備わっている。液圧回転機械1は、例えば斜板形液圧回転機械であって、液圧ポンプ及び液圧モータの少なくとも一方として機能する。本実施形態において、液圧回転機械1は、可変容量形の斜板形液圧ポンプである。但し、液圧回転機械1は、固定容量形の斜板形液圧ポンプであってよい。液圧回転機械1は、図示しない駆動源(例えば電動機、エンジン、又はその両方であって、本実施形態では電動機)により駆動されることによって作動液(油及び水等の液体)を吐出する。液圧回転機械1は、ケーシング10と、軸部材11と、シリンダブロック12と、複数のピストン13と、斜板14と、レギュレータ15と、弁板16と、スペーサ部材17と、を備えている。
【0015】
<ケーシング>
ケーシング10には、軸部材11、シリンダブロック12、複数のピストン13、斜板14、レギュレータ15、及び弁板16が収容されている。より詳細に説明すると、ケーシング10には、収容空間21が形成されている。軸部材11、シリンダブロック12、複数のピストン13、斜板14、レギュレータ15、及び弁板16は、収容空間21に収容されている。また、収容空間21は、開口21aを有している。開口21aは、ケーシング10の軸線方向一方側の端面(即ち、軸線方向一端面)に形成されている。なお、軸線方向は、所定の軸線L1が延在する方向である。
【0016】
ケーシング10には、吸入路22と、吐出路23とが形成されている。流入路の一例である吸入路22には、作動液が導かれる。他方、流出路の一例である吐出路23には、作動液が吐出される。吸入路22及び吐出路23は、例えばケーシング10において収容空間21の軸線方向他方側に形成されている。そして、吸入路22及び吐出路23は、収容空間21の軸線方向他方側の端面(即ち、軸線方向他端面)において開口している。
【0017】
<軸部材>
軸部材11は、回転軸線の一例である軸線L1まわりに回転可能にケーシング10に軸支されている。より詳細に説明すると、軸部材11は、鋼鉄等の金属から成る。軸部材11は、軸線L1に沿って延在している。軸部材11は、ケーシング10を貫通しており、その軸線方向一方側の部分が開口21aからケーシング10外に突き出ている。軸部材11の軸線方向一方側の部分には、駆動源(図示せず)が連結されている。軸部材11は、駆動源によって軸線L1まわりに回転駆動される。
【0018】
<シリンダブロック>
シリンダブロック12には、軸部材11が相対回転不能に挿通されている。より詳細に説明すると、シリンダブロック12は、例えば鋳鉄又は鋼鉄等の金属から成る。また、シリンダブロック12は、大略円筒状に形成されている。即ち、シリンダブロック12は、その軸線L1に沿って形成される挿通孔12aを有している。挿通孔12aには、軸部材11が挿通されている。更に詳細に説明すると、挿通孔12aは、軸部材11より大径に形成されている。それ故、挿通孔12aには、シリンダブロック12との間に隙間を空けて軸部材11が挿入されている。また、シリンダブロック12(より詳細に説明すると、挿通孔12a)には、軸線方向一方側の部分に結合部12bが形成される。そして、シリンダブロック12は、結合部12bによって軸部材11と相対回転不能に結合されている。本実施形態では、軸部材11の外周面には、内歯である結合部12bに対応する位置に外歯が形成されている。そして、シリンダブロック12と軸部材11とは、内歯と外歯とによって互いに相対回転不能にスプライン結合されている。これにより、シリンダブロック12は、軸線L1まわりに軸部材11と一体的に回転するようにケーシング10に設けられている。
【0019】
また、シリンダブロック12には、複数のシリンダボア12cが形成されている。複数のシリンダボア12cは、シリンダブロック12の軸線方向一端面に形成されている。複数のシリンダボア12cは、軸部材11の周り(即ち、軸線L1の周り)に周方向に互いに間隔をあけて配置されている。なお、シリンダブロック12には、9つのシリンダボア12cが形成されている。但し、前述するシリンダボア12cの数は一例に過ぎず、8つ以下であってもよく、また10個以上であってもよい。
【0020】
更に、シリンダブロック12には、軸線方向他端に複数のシリンダポート12dが形成されている。複数のシリンダポート12dは、シリンダボア12cに夫々繋がっている。より詳細に説明すると、各シリンダポート12dは、シリンダボア12cの各々に対応させて形成されており、対応するシリンダボア12cに繋がっている。即ち、シリンダブロック12には、シリンダボア12cと同数のシリンダポート12dが形成されている。シリンダポート12dは、シリンダブロック12の軸線方向他端面にて開口している。そして、シリンダブロック12は、軸線方向他端面を収容空間21の軸線方向他端面に対向させるようにして収容空間21に収容されている。
【0021】
<ピストン>
複数のピストン13は、シリンダブロック12のシリンダボア12cの各々に挿入されている。即ち、液圧回転機械1には、シリンダボア12cと同数のピストン(本実施形態において、9つのピストン)13が備わっている。そして、ピストン13の各々は、各シリンダボア12cにおいて往復運動する。また、ピストン13の先端部分には、摺動回転可能にシュー18が取り付けられている。
【0022】
<斜板>
斜板14は、シリンダブロック12の軸線方向一方側に間隔をあけて配置されている。斜板14は、シュープレート19を有している。なお、斜板14は、必ずしもシュープレート有している必要はない。シュープレート19は、シリンダブロック12の方に傾倒している。斜板14は、シュープレート19を介して複数のシュー18を軸線方向一方側から支持している。また、複数のシュー18は、押え板20によってシュープレート19に押えられており、シュープレート19上を軸線L1まわりに摺動回転する。それ故、シリンダブロック12が回転すると、ピストン13がシリンダボア12cを往復運動する。また、斜板14は、軸線L1に直交する軸線L2まわりに傾倒することができる。即ち、斜板14は、傾転角を変えることができる。それ故、ピストン13のストローク量を変えることができる。これにより、各シリンダボア12cから吐出される作動液の量、即ち吐出量を変えることができる。
【0023】
<レギュレータ>
レギュレータ15は、斜板14を軸線L2まわりに回動させることによって斜板14の傾転角を変える。より詳細に説明すると、レギュレータ15は、図示しないサーボピストンが連結部材15aを介して斜板14と連結されている。そして、レギュレータ15は、入力される信号(例えば、パイロット圧)に応じてサーボピストンを動かす。これにより、斜板14の傾転角が調整される。
【0024】
<弁板>
弁板16は、シリンダブロック12の軸線方向他端が摺動するようにケーシング10に固定されている。より詳細に説明すると、弁板16は、収容空間21の軸線方向他端面とシリンダブロック12との間に介在している。具体的に説明すると、弁板16は、収容空間21の軸線方向他端面に固定されている。弁板16には、シリンダブロック12の軸線方向他端面が押し付けられている。そして、シリンダブロック12は、弁板16上を摺動するように軸線L1まわりに回転する。
【0025】
また、弁板16には、吸入ポート16a及び吐出ポート16bが夫々形成されている。流入側ポートの一例である吸入ポート16aは、吸入路22に繋がっている。流出側ポートの一例である吐出ポート16bは、吐出路23に繋がっている。そして、吸入ポート16a及び吐出ポート16bの各々には、シリンダポート12dを介して各シリンダボア12cが接続されている。各シリンダボア12cは、シリンダブロック12が回転することによって吸入ポート16a及び吐出ポート16bに交互接続される。吸入ポート16aは、接続されるシリンダポート12dを介して各シリンダボア12cに吸入路22の作動液を導く。また、吐出ポート16bは、接続されるシリンダポート12dを介してシリンダボア12cから吐出路23に作動液を吐出させる。
【0026】
<スペーサ部材>
スペーサ部材17は、軸部材11とシリンダブロック12との間に配置される。また、スペーサ部材17は、結合部12bに対して軸線方向に離して配置されている。より詳細に説明すると、スペーサ部材17は、鋼鉄等の金属から成る。そして、スペーサ部材17は、環状に形成されている。スペーサ部材17は、本実施形態において円環状に形成されている。なお、環状は、完全に閉じたものに限定されず、一部が開口するC字状のものも含む。また、スペーサ部材17は、例えば断面矩形状に形成されている。スペーサ部材17は、軸部材11の軸線方向他方側に外嵌されている。即ち、スペーサ部材17は、軸部材11の軸線方向他方側に全周にわたって設けられている。そして、スペーサ部材17は、挿通孔12aに配置され、且つ結合部12bに対して軸線方向に離れている。本実施形態において、結合部12bは、挿通孔12aにおいてシリンダブロック12の軸線方向一端側に形成され、スペーサ部材17は、挿通孔12aにおいてシリンダブロック12の軸線方向他端側に配置されている。
【0027】
更に詳細に説明すると、
図2に示すように軸部材11の外周面には、軸線方向他方側において周方向全周にわたって取付部11aが形成されている。取付部11aは、例えば軸部材11の外周面を切り欠くように形成されている。なお、取付部11aは、溝であってもよい。スペーサ部材17は、軸部材11の取付部11aにすきま嵌めすることによって軸部材11に外嵌されている。なお、スペーサ部材17には、軸部材11の外周面であってスペーサ部材17の軸線方向他方側に止め輪等の係止部材が設けられてもよい。
【0028】
更に、スペーサ部材17は、以下のように構成されている。即ち、スペーサ部材17の外径は、シリンダブロック12の挿通孔12aの内径より小さく形成されている。これにより、スペーサ部材17は、シリンダブロック12の内周面との間に僅かな隙間hが形成される。本実施形態において、隙間hは、10μm以上500μm以下である。このような隙間hを形成することによって、スペーサ部材17に対してシリンダブロック12が動くことが許容される。即ち、軸部材11に対してシリンダブロック12が動くことが許容される。但し、隙間hは、必ずしも形成される必要はない。
【0029】
<液圧回転機械の動作>
液圧回転機械1は、以下のように動作する。即ち、駆動源(図示せず)が軸部材11を駆動することによって、シリンダブロック12が軸線L1まわりに回転する。そうすると、シリンダポート12dの接続先が吸入ポート16a及び吐出ポート16bの間で切り替わる。また、シリンダブロック12が回転することによって、複数のピストン13が軸線L1まわりに回転すると共にシリンダボア12cを往復運動する。これにより、吸入ポート16aを介してシリンダボア12cに作動液が吸引され、その後シリンダボア12cから吐出ポート16bに作動液が吐出される。このようにして、液圧回転機械1は、作動液を吐出する。なお、液圧回転機械1では、レギュレータ15によって斜板14の傾転角が調整される。そうすると、ピストン13のストローク量が調整される。これにより、液圧回転機械1の吐出量を調整することができる。
【0030】
また、液圧回転機械1では、シリンダブロック12が軸線L1まわりに回転することによって、各ピストン13が遠心力によって径方向外方に引っ張られる。また、液圧回転機械1では、各ピストン13の軸線方向位置がずれているので、シリンダブロック12に対して転倒モーメントが生じる。これにより、軸部材11が結合部12bを支点に下死点側(即ち、紙面下側)へと撓む。なお、下死点とは、軸線L1まわりにおいてピストン13がシリンダボア12cで最も後退する位置である。他方、軸部材11とシリンダブロック12との間には、結合部12bに対して軸線方向(本実施形態において軸線方向他方)に離してスペーサ部材17が配置されている。シリンダブロック12は、スペーサ部材17によって軸部材11に対する径方向の動きが制限されている。それ故、シリンダブロック12は、結合部12b及びスペーサ部材17によって軸線方向に離れた2点で軸部材11に対する径方向の動きが制限されている。それ故、前述する転倒モーメントによってシリンダブロック12が軸部材11に対して振れ回ることが抑制される。これにより、シリンダブロック12が振れ回ることによってシリンダブロック12が弁板16から乖離することを抑制することができる。そうすると、弁板16とシリンダブロック12との間から作動液が漏れることが抑制されるので、液圧回転機械1の吐出効率が低下することを抑制することができる。
【0031】
本実施形態の液圧回転機械1において、スペーサ部材17が軸部材11とシリンダブロック12との間に配置され、且つ結合部12bから軸線方向に離して配置されている。それ故、シリンダブロック12は、軸線方向に離れた2点で軸部材11に対する径方向の動きが制限されている。これにより、シリンダブロック12が軸部材11に対して振れ回ることを抑制することができる。従って、シリンダブロック12が振れ回ることによってシリンダブロック12が弁板16から乖離することを抑制することができる。
【0032】
例えば、作動液の圧力が高かったり、軸部材11の回転速度が大きくなるにつれて、シリンダブロック12の振れ回りが大きくなる。それ故、シリンダブロック12が弁板16から乖離しやすくなる。そうすると、弁板16とシリンダブロック12との間から作動液が漏れて吐出効率を低下する。しかし、液圧回転機械1では、シリンダブロック12が振れ回ることによってシリンダブロック12が弁板16から乖離することを抑制することができるので、弁板16とシリンダブロック12との間から作動液が漏れることが抑制される。それ故、液圧回転機械1の吐出効率の低下を抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態の液圧回転機械1において、結合部12bは、シリンダブロック12の軸線方向一端側に形成されている。また、スペーサ部材17は、シリンダブロック12の軸線方向他端側に配置されている。それ故、シリンダブロック12において、結合部12bとスペーサ部材17とをより離すことができるので、シリンダブロック12の振れ回りを更に抑制することができる。従って、シリンダブロック12が振れ回ることによってシリンダブロック12が弁板16から乖離することを更に抑制することができる。
【0034】
更に、本実施形態の液圧回転機械1において、スペーサ部材17は、軸部材11に外嵌されている。それ故、スペーサ部材17は、シリンダブロック12と軸部材11との間にリジットに配置される。他方、スペーサ部材17は、シリンダブロック12に対して隙間hを空けて配置されている。それ故、軸部材11が回転して撓んだ際に、軸部材11に対してシリンダブロック12がある程度の自由度をもって径方向に動くができる。これにより、軸部材11の撓みをある程度許容することができる。それ故、軸部材11が撓むことによってシリンダブロック12が弁板16に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0035】
更に、本実施形態の液圧回転機械1において、スペーサ部材17は、環状に形成されている。それ故、軸部材11に対してシリンダブロック12の動きを径方向の全方向において制限することができる。これにより、シリンダブロック12の振れ回りを全方向において抑制することができる。
【0036】
更に、本実施形態の液圧回転機械1において、スペーサ部材17は、断面矩形状に形成されている。それ故、それ故、軸部材11に対するシリンダブロック12の動きを制限することができる。これにより、シリンダブロック12の振れ回りを更に抑制することができる。
【0037】
<第2実施形態>
図3に示す第2実施形態の液圧回転機械1Aは、第1実施形態の液圧回転機械1と構成が夫々類似している。従って、第2実施形態の液圧回転機械1Aの構成については、主に第1実施形態の液圧回転機械1と異なる点が説明され、同一の構成については同一の符号を付して説明が省略される。後で説明する、第3実施形態の液圧回転機械1Bについても同様である。
【0038】
第2実施形態の液圧回転機械1Aは、ケーシング10と、軸部材11と、シリンダブロック12と、複数のピストン13と、斜板14と、レギュレータ15と、弁板16と、スペーサ部材17Aと、を備えている。
【0039】
スペーサ部材17Aは、外周側が湾曲する断面D型形状に形成されている。即ち、スペーサ部材17Aの内周面は、平坦に形成されている。そして、スペーサ部材17Aは、その内周面を軸部材11の取付部11aに当てるようにして軸部材11の軸線方向他方側に外嵌されている。他方、スペーサ部材17Aの外周面は、径方向外方に突出するように湾曲している、それ故、スペーサ部材17Aは、断面視でシリンダブロック12と点で接触する。それ故、シリンダブロック12と軸部材11との間の距離を維持しつつ、シリンダブロック12は、軸部材11の撓みをある程度許容することができる。これにより、スペーサ部材17Aは、シリンダブロック12の振れ回りを抑制しつつ、軸部材11が撓むことによってシリンダブロック12が弁板16に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0040】
本実施形態の液圧回転機械1Aにおいて、スペーサ部材17Aは、外周側が湾曲する断面D型形状に形成されている。それ故、スペーサ部材17Aの内周面、即ち軸部材11側が平面で形成されるので、スペーサ部材17Aを軸部材11に嵌合させやすい。他方、スペーサ部材17Aの外周面、即ちシリンダブロック12側が湾曲しているので、シリンダブロック12がスペーサ部材17Aに対して点接触する。それ故、シリンダブロック12と軸部材11との間の距離を維持しつつシリンダブロック12が軸部材11の撓みをある程度許容することができる。それ故、スペーサ部材17Aは、シリンダブロック12の振れ回りを抑制しつつ、軸部材11が撓むことによってシリンダブロック12が弁板16に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0041】
その他、第2実施形態の液圧回転機械1Aは、第1実施形態の液圧回転機械1と同様の作用効果を奏する。
【0042】
<第3実施形態>
図4に示す第3実施形態の液圧回転機械1Bは、ケーシング10と、軸部材11と、シリンダブロック12と、複数のピストン13と、斜板14と、レギュレータ15と、弁板16と、スペーサ部材17Bと、を備えている。
【0043】
スペーサ部材17Bは、断面円形状に形成されている。そして、軸部材11の取付部11aは、スペーサ部材17Bが嵌り込むように溝状に形成されている。このように形成されるスペーサ部材17Bは、断面視で軸部材11及びシリンダブロック12の両方と点で接触する。それ故、シリンダブロック12は、軸部材11の撓みを更に許容することができる。これにより、スペーサ部材17Bは、シリンダブロック12の振れ回りを抑制しつつ、軸部材11が撓むことによってシリンダブロック12が弁板16に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0044】
本実施形態の液圧回転機械1Bにおいて、スペーサ部材17Bは、断面円形状に形成されている。それ故、シリンダブロック12及び軸部材11が共にスペーサ部材17Bに対して点接触する。これにより、シリンダブロック12と軸部材11との間の距離を維持しつつシリンダブロック12が軸部材11の撓みを更に許容することができる。それ故、スペーサ部材17Bは、シリンダブロック12の振れ回りを抑制しつつ、軸部材11が撓むことによってシリンダブロック12が弁板16に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0045】
その他、第3実施形態の液圧回転機械1Bは、第1実施形態の液圧回転機械1と同様の作用効果を奏する。
【0046】
<第4実施形態>
図5に示す第4実施形態の液圧回転機械1Cは、ケーシング10と、軸部材11Cと、シリンダブロック12と、複数のピストン13と、斜板14と、レギュレータ15と、弁板16と、を備えている。
【0047】
軸部材11Cには、凸部11bが形成されている。凸部11bは、軸部材11Cにおいて挿通孔12aに挿通されている部分の外周面に形成されている。本実施形態において、凸部11bは、環状に形成されており、軸部材11Cの外周面において周方向全周にわたって形成されている。また、凸部11bは、シリンダブロック12(より詳細に説明すると、挿通孔12aの内周面)に向かって突出している。そして、凸部11bの外径は、シリンダブロック12の挿通孔12aの内径より小さく形成されている。これにより、凸部11bは、シリンダブロック12の内周面との間に僅かな隙間hが形成される。更に、凸部11bは、シリンダブロック12の結合部12bから離して配置されている。本実施形態において、凸部11bは、挿通孔12aにおいてシリンダブロック12の軸線方向他端側に位置するように軸部材11Cに形成されている。また、凸部11bは、例えば断面D型形状に形成されている。
【0048】
本実施形態の液圧回転機械1Cは、軸部材11Cには、軸部材11Cとシリンダブロック12との間にシリンダブロック12に向かって突出する凸部11bが形成されている。そして、凸部11bは、結合部12bに対して軸線方向に離して配置されている。それ故、シリンダブロック12が軸線方向に離れた2点で軸部材11Cに対する径方向の動きが制限されている。これにより、シリンダブロック12が軸部材11Cに対して振れ回ることを抑制することができる。従って、シリンダブロック12が振れ回ることによってシリンダブロック12が弁板16から乖離することを抑制することができる。
【0049】
その他、液圧回転機械1Cは、第1実施形態の液圧回転機械1と同様の作用効果を奏する。
【0050】
<その他の実施形態について>
第1乃至第4実施形態の液圧回転機械1,1A~1Cは、斜板形の液圧ポンプを一例として挙げて説明されているが、前述の通り斜板形の液圧モータであってもよい。また、スペーサ部材17,17A,17Bは、必ずしも前述する断面状である必要はなく、その他の形状であってもよい。例えば、スペーサ部材17,17A,17Bは、軸部材11側及びシリンダブロック12側に夫々平坦な面を有する断面多角形に形成されてもよい。また、スペーサ部材17,17A,17Bは、必ずしも円環状である必要はなく、複数の部品から成る構造であってもよい。また、スペーサ部材17は、必ずしも軸部材11に外嵌されている必要はない。例えば、
図6に示す液圧回転機械1Dのようにシリンダブロック12の挿通孔12aの内周面に形成される取付溝12eにスペーサ部材17Dが内嵌されていてもよい。この場合、スペーサ部材17Dは、軸部材11との間に僅かな隙間hを形成する。但し、隙間hは、必ずしも形成される必要はない。更に、スペーサ部材17は、必ずしも挿通孔12aの軸線方向他端に寄せて配置されている必要はなく、挿通孔12aの軸線方向中間部分に配置されていてもよい。このような実施形態もまた、液圧回転機械1,1A,1Bと同様の作用効果を奏する。
【0051】
また、凸部11bは、必ずしも軸部材11に形成されている必要はなく、シリンダブロック12(より詳細には、挿通孔12a)に形成されてもよい。また、凸部11bは、必ずしも断面D型形状である必要はない。凸部11bの断面形状は、三角形や矩形等の多角形状及び半円形状等、その他の形状であってもよい。また、凸部11bは、必ずしも環状である必要はない。複数の凸部11bが軸部材11Cの外周面に周方向に間隔をあけて配置されるように軸部材11Cに形成されてもよい。このような実施形態もまた、液圧回転機械1Cと同様の作用効果を奏する。
【0052】
<例示的な実施形態>
第1の局面における液圧回転機械は、作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、軸線方向一端に複数のシリンダボアが形成され、前記軸部材が相対回転不能に挿通されているシリンダブロックと、前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、前記軸部材と前記シリンダブロックとの間に配置されるスペーサ部材と、を備え、前記シリンダブロックは、結合部によって前記軸部材と相対回転不能に結合され、前記スペーサ部材は、前記結合部に対して軸線方向に離して配置されている。
【0053】
上記局面に従えば、スペーサ部材が軸部材とシリンダブロックとの間に配置され、且つ結合部から軸線方向に離して配置されている。それ故、シリンダブロックが軸線方向に離れた2点で軸部材に対する径方向の動きが制限されている。これにより、シリンダブロックが軸部材に対して振れ回ることを抑制することができる。従って、シリンダブロックが振れ回ることによってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる。
【0054】
第2の局面における液圧回転機械では、第1の局面の液圧回転機械において、前記結合部が、前記シリンダブロックの軸線方向一端側に形成され、前記スペーサ部材が、前記シリンダブロックの軸線方向他端側に配置されている。
【0055】
上記局面に従えば、結合部は、シリンダブロックの軸線方向一端側に形成されている。また、スペーサ部材は、シリンダブロックの軸線方向他端側に配置されている。それ故、シリンダブロックにおいて結合部とスペーサ部材とをより離すことができるので、シリンダブロックの振れ回りを更に抑制することができる。従って、シリンダブロックが振れ回ることによってシリンダブロックが弁板から乖離することを更に抑制することができる。
【0056】
第3の局面における液圧回転機械では、第1又は2の局面の液圧回転機械において、前記スペーサ部材が、前記軸部材及び前記シリンダブロックの一方に対して嵌り、且つ前記軸部材及び前記シリンダブロックの他方に対して隙間を空けて配置されている。
【0057】
上記局面に従えば、スペーサ部材は、軸部材及びシリンダブロックの一方に嵌っている。それ故、スペーサ部材は、シリンダブロックと軸部材との間にリジットに配置される。他方、スペーサ部材は、軸部材及びシリンダブロックの他方に対して隙間を空けて配置されている。それ故、軸部材が回転して撓んだ際に、軸部材に対してシリンダブロックがある程度の自由度をもって径方向に動くことができる。これにより、軸部材の撓みをある程度許容することができる。それ故、軸部材が撓むことによってシリンダブロックが弁板に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0058】
第4の局面における液圧回転機械では、第1乃至3の何れかの局面の液圧回転機械において、前記スペーサ部材が、環状に形成されている。
【0059】
上記局面に従えば、スペーサ部材は、環状に形成されている。それ故、軸部材に対するシリンダブロックの動きを径方向の全方向において制限することができる。これにより、シリンダブロックの振れ回りを全方向において抑制することができる。
【0060】
第5の局面における液圧回転機械では、第1乃至4の何れかの局面の液圧回転機械において、前記スペーサ部材が、断面矩形状に形成されている。
【0061】
上記局面に従えば、スペーサ部材は、断面矩形状に形成されている。それ故、軸部材に対するシリンダブロックの動きを制限することができる。これにより、シリンダブロックの振れ回りを更に抑制することができる。
【0062】
第6の局面における液圧回転機械では、第1乃至5の何れかの局面の液圧回転機械において、前記スペーサ部材が、外周側が湾曲する断面D型形状に形成されている。
【0063】
上記局面に従えば、スペーサ部材は、外周側が湾曲する断面D型形状に形成されている。それ故、スペーサ部材の内周面、即ち軸部材側が平面で形成されるので、スペーサ部材を軸部材に嵌合させやすい。他方、スペーサ部材の外周面、即ちシリンダブロック側が湾曲しているので、シリンダブロックがスペーサ部材に対して点接触する。それ故、シリンダブロックと軸部材との間の距離を維持しつつシリンダブロックが軸部材の撓みをある程度許容することができる。それ故、スペーサ部材は、シリンダブロックの振れ回りを抑制しつつ、軸部材が撓むことによってシリンダブロックが弁板に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0064】
第7の局面における液圧回転機械では、第1乃至6の何れかの局面の液圧回転機械において、前記スペーサ部材が、断面円形状に形成されている。
【0065】
上記局面に従えば、スペーサ部材は、断面円形状に形成されている。それ故、シリンダブロック及び軸部材が共にスペーサ部材に対して点接触する。これにより、シリンダブロックと軸部材との間の距離を維持しつつシリンダブロックが軸部材の撓みを更に許容することができる。それ故、スペーサ部材は、シリンダブロックの振れ回りを抑制しつつ、軸部材が撓むことによってシリンダブロックが弁板に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0066】
第8の局面における液圧回転機械は、作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、軸線方向一端に複数のシリンダボアが形成され、前記軸部材が相対回転不能に挿通されているシリンダブロックと、前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、を備え、前記シリンダブロックは、結合部によって前記軸部材と相対回転不能に結合され、前記軸部材及び前記シリンダブロックの少なくとも一方には、他方に向かって突出する凸部が形成され、前記凸部は、前記結合部に対して軸線方向に離して配置されている。
【0067】
上記局面に従えば、軸部材及びシリンダブロックの少なくとも一方には、他方に向かって突出する凸部が形成されている。そして、凸部は、結合部に対して軸線方向に離して配置されている。それ故、シリンダブロックが軸線方向に離れた2点で軸部材に対する径方向の動きが制限されている。これにより、シリンダブロックが軸部材に対して振れ回ることを抑制することができる。従って、シリンダブロックが振れ回ることによってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
1,1A,1B 液圧回転機械
10 ケーシング
11 軸部材
12 シリンダブロック
12b 結合部
12c シリンダボア
13 ピストン
16 弁板
16a 吸入ポート(流入側ポート)
16b 吐出ポート(流出側ポート)
17,17A,17B スペーサ部材
22 吸入路(流入路)
23 吐出路(流出路)