(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089186
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】液圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 53/16 20060101AFI20240626BHJP
F04B 1/30 20200101ALI20240626BHJP
【FI】
F04B53/16 C
F04B53/16 A
F04B53/16 E
F04B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204392
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 忠裕
(72)【発明者】
【氏名】白井 敦士
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伊吹
【テーマコード(参考)】
3H070
3H071
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070AA03
3H070BB06
3H070CC01
3H070CC03
3H070DD68
3H070DD82
3H070DD85
3H070DD86
3H071AA01
3H071AA03
3H071BB01
3H071CC21
3H071CC23
3H071CC25
3H071DD08
3H071DD31
3H071DD35
3H071DD37
(57)【要約】
【課題】幅広い範囲の周波数帯において脈動を低減でき、且つ大型化を抑制することができる液圧回転機器を提供する。
【解決手段】液圧ポンプは、吸入路と吐出路が形成されるケーシングと、吸入ポートと吐出ポートとが形成される弁板と、複数のシリンダボが形成されるシリンダブロックと、シリンダボアの各々に往復運動可能に挿入□れる複数のピストンと、を備え、ケーシングには、第1絞りを有する第1連通路と、チャンバーと、第2絞りを有し且つ前記弁板まで延在する第2連通路とが更に形成され、吐出路とチャンバーとを連通し、チャンバーは、第1連通路を介して吐出路から導かれる作動液を貯留し、第2連通路は、前記弁板の前記吸入ポートと前記吐出ポートとの間にある下死点側閉塞面にて開口し且つ前記チャンバーに接続され、第1絞りは、第2絞りより大きい流路断面積を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液が導かれる吸入路と、作動液が吐出される吐出路とが形成されるケーシングと、
前記ケーシングに設けられ、前記吸入路に繋がる吸入ポート及び前記吐出路に繋がる吐出ポートが夫々形成される弁板と、
複数のシリンダボアを含み、前記弁板上を摺動するシリンダブロックと、
前記シリンダボアの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、を備え、
前記ケーシングには、第1絞りを有する第1連通路と、チャンバーと、前記弁板まで延在する第2連通路とが更に形成され、
前記第1連通路は、前記吐出路と前記チャンバーとを連通し、
前記チャンバーは、前記第1連通路を介して前記吐出路から導かれる作動液を貯留し、
前記第2連通路は、第2絞りを有し、前記弁板の前記吸入ポートと前記吐出ポートとの間にある下死点側閉塞面にて開口し、且つ前記チャンバーに接続され、
前記第1絞りは、前記第2絞りより大きい流路断面積を有している、液圧ポンプ。
【請求項2】
前記ケーシングは、ケーシング本体と、チャンバーブロックとを含み、
前記ケーシング本体には、前記吸入路と前記吐出路とが形成され、
前記チャンバーブロックは、前記ケーシング本体と別体であり、
前記チャンバーは、前記チャンバーブロックに形成されている、請求項1に記載の液圧ポンプ。
【請求項3】
前記チャンバーブロックには、前記第1連通路と収容開口とが形成され、
前記第1連通路は、互いに交差するように配置される通路部分及び絞り収容部分と、前記第1絞りを形成する絞り部材とを有し、
前記絞り収容部分は、所定方向一方に延在し、且つ前記絞り部材を収容し、
前記収容開口は、前記チャンバーブロックにおいて前記絞り収容部分の延長線上に形成されている、請求項2に記載の液圧ポンプ。
【請求項4】
前記弁板には、前記第2絞りが形成されている、請求項1に記載の液圧ポンプ。
【請求項5】
前記第1絞りは、前記ケーシングに絞り部材を取り付けることによって前記ケーシングに形成される、請求項1に記載の液圧ポンプ。
【請求項6】
前記ケーシングは、前記チャンバーの容積を変更する容積調整機構を更に備えている、請求項1に記載の液圧ポンプ。
【請求項7】
前記チャンバーは、前記シリンダボアより大きい容積を有している、請求項1に記載の液圧ポンプ。
【請求項8】
作動液が導かれる吸入路と、作動液が吐出される吐出路とが形成されるケーシングと、
前記ケーシングに設けられ、前記吸入路に繋がる吸入ポート及び前記吐出路に繋がる吐出ポートとが夫々形成される弁板と、
複数のシリンダボアを含み、前記弁板上を摺動するシリンダブロックと、
前記シリンダボアの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、
前記ケーシングは、第1絞りを有する第1連通路と、チャンバーと、前記弁板まで延在する第2連通路とを含み、
前記第1連通路は、前記吐出路と前記チャンバーとを連通し、
前記チャンバーは、前記第1連通路を介して前記吐出路から導かれる作動液を貯留し、
前記第2連通路は、第2絞りを有し、前記弁板の前記吸入ポートと前記吐出ポートとの間にある下死点側閉塞面にて開口し、且つ前記チャンバーに接続され、
前記チャンバーは、前記第1連通路と共に前記吐出路を流れる作動液の脈動を低減する共鳴器を構成し、且つ前記第2連通路及び前記第2絞りと共に前記シリンダボアへの逆流を抑制することによって前記吐出路を流れる作動液の脈動を低減する逆流抑制機構を構成し、
前記逆流抑制機構は、低い周波数帯の脈動を低減し、
前記共鳴器は、高い周波数帯の脈動を低減する、液圧ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吐出路に作動液を吐出する液圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
液圧ポンプの一例として、例えば特許文献1の可変容量形ピストン機械が知られている。特許文献1の可変容量形ピストンポンプは、吐出路と下死点付近のシリンダボアとに繋がるチャンバーを有している。そして、可変容量形ピストンポンプは、チャンバーによって騒音の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の可変容量形ピストンポンプの騒音は、吐出路を流れる作動液の脈動に起因している。作動液の脈動は、シリンダブロックの回転速度に応じた周波数で振動する。液圧ポンプでは、シリンダブロックの幅広い回転速度の範囲で使用されることが望まれている。それ故、幅広い周波数帯の脈動を抑制することが望まれている。これに関して、特許文献1の可変容量形ピストンポンプでは、低い周波数帯の脈動に関して低減を図ることができるが、高い周波数帯の脈動に関して低減の効果が低い。
【0005】
そこで本開示は、幅広い範囲の周波数帯において脈動を低減することができる液圧回転機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の液圧ポンプは、作動液が導かれる吸入路と、作動液が吐出される吐出路とが形成されるケーシングと、前記ケーシングに設けられ、前記吸入路に繋がる吸入ポート及び前記吐出路に繋がる吐出ポートが夫々形成される弁板と、複数のシリンダボアを含み、前記弁板上を摺動するシリンダブロックと、前記シリンダボアの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、を備え、前記ケーシングには、第1絞りを有する第1連通路と、チャンバーと、前記弁板まで延在する第2連通路とが更に形成され、前記第1連通路は、前記吐出路と前記チャンバーとを連通し、前記チャンバーは、前記第1連通路を介して前記吐出路から導かれる作動液を貯留し、前記第2連通路は、第2絞りを有し、前記弁板の前記吸入ポートと前記吐出ポートとの間にある下死点側閉塞面にて開口し、且つ前記チャンバーに接続され、前記第1絞りは、前記第2絞りより大きい流路断面積を有している。
【0007】
本開示の第1の液圧ポンプに従えば、チャンバーは、第1連通路を介して吐出路に接続されている。それ故、チャンバーが第1連通路と共に共鳴器を構成する。そして、共鳴器の吸振機能によって、吐出路を流れる作動液の脈動を抑制することができる。また、チャンバーは、第2絞りを有し且つ下死点側閉塞面にて開口する第2連通路に接続されている。それ故、チャンバー25は、下死点側において吸入ポートと吐出ポートとの間に位置するシリンダボアに第2連通路を介して接続される。それ故、チャンバーは、第2連通路と共に逆流抑制機構を構成する。逆流抑制機構は、シリンダボアの接続先が吸入ポートから吐出ポートに切換るまでの間にシリンダボアの内圧を高めることができる。これにより、シリンダボアの接続先が吐出ポートに切換った際に作動液が吐出路からシリンダボアに逆流することを抑制する(即ち、逆流抑制機能を達成する)ことができる。従って、シリンダボアへの作動液の逆流に起因する脈動を低減することができる。更に、第1絞りは、第2絞りより大きい流路断面積を有している。それ故、逆流抑制機構は、主に低い周波数帯域の脈動を低減させる。他方、共鳴器は、主に逆流抑制機構より高い周波数帯域の脈動を低減させる。従って、1つのチャンバーによって幅広い周波数帯の脈動を低減することができる。また、1つのチャンバーによって共鳴器及び逆流抑制機構を構成することができる。
【0008】
本開示の第2の液圧ポンプは、作動液が導かれる吸入路と、作動液が吐出される吐出路とが形成されるケーシングと、前記ケーシングに設けられ、前記吸入路に繋がる吸入ポート及び前記吐出路に繋がる吐出ポートとが夫々形成される弁板と、複数のシリンダボアを含み、前記弁板上を摺動するシリンダブロックと、前記シリンダボアの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、前記ケーシングは、第1絞りを有する第1連通路と、チャンバーと、前記弁板まで延在する第2連通路とを含み、前記第1連通路は、前記吐出路と前記チャンバーとを連通し、前記チャンバーは、前記第1連通路を介して前記吐出路から導かれる作動液を貯留し、前記第2連通路は、第2絞りを有し、前記弁板の前記吸入ポートと前記吐出ポートとの間にある下死点側閉塞面にて開口し、且つ前記チャンバーに接続され、前記チャンバーは、前記第1連通路と共に前記吐出路を流れる作動液の脈動を低減する共鳴器を構成し、且つ前記第2連通路及び前記第2絞りと共に前記シリンダボアへの逆流を抑制することによって前記吐出路を流れる作動液の脈動を低減する逆流抑制機構を構成し、前記逆流抑制機構は、低い周波数帯の脈動を低減し、前記共鳴器は、高い周波数帯の脈動を低減する。
【0009】
本開示の第2の液圧ポンプに従えば、チャンバーは、第1連通路と共に共鳴器を構成し、且つ第2連通路及び第2絞り共に逆流抑制機構を構成する。共鳴器は、高い周波数帯において逆流抑制機構よりも脈動を低減する。逆流抑制機構は、低い周波数帯において共鳴器よりも脈動を低減する。それ故、幅広い周波数帯の脈動を低減することができる。また、1つのチャンバーによって共鳴器及び逆流抑制機構を構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、幅広い範囲の周波数帯において脈動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る液圧ポンプを示す断面図である。
【
図2】
図1の液圧ポンプを切断線II-IIで切断して示す断面図である。
【
図3】
図1のポンプに備わる弁板を示す正面図である。
【
図4】
図1の液圧ポンプにおける吐出側の作動液の流れの概略を示す回路図である。
【
図5】
図1の液圧ポンプにおける吐出側の通路を示す斜視図である。
【
図6】
図1の液圧ポンプにおけるチャンバーブロックを示す断面図である。
【
図7】
図1の液圧ポンプにおける吐出側の通路を示す底面図である。
【
図8】
図1の液圧ポンプの脈動抑制機構によって抑制される脈動の周波数と脈動低減効果との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る実施形態の液圧ポンプ1について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する液圧ポンプ1は、本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0013】
<液圧ポンプ>
図1に示す液圧ポンプ1は、ショベルやクレーン等の建設機械、フォークリフト等の産業機械、トラクター等の農業機械、及びプレス機等の油圧機械等、種々の機械に備わっている。液圧ポンプ1は、例えば可変容量形の斜板ポンプである。但し、液圧ポンプ1は、固定容量形の斜板ポンプであってよく、また斜軸ポンプであってもよい。液圧ポンプ1は、図示しない駆動源(例えば電動機、エンジン、又はその両方であって、本実施形態では電動機)により駆動されることによって作動液(油及び水等の液体)を吐出する。
【0014】
液圧ポンプ1は、ケーシング11と、シリンダブロック12と、複数のピストン13と、斜板14と、レギュレータ15と、弁板16と、を備えている。
【0015】
<ケーシング>
ケーシング11には、シリンダブロック12、複数のピストン13、斜板14、レギュレータ15、及び弁板16等が収容されている。より詳細に説明すると、ケーシング11には、収容空間21が形成されている。ケーシング11では、収容空間21にシリンダブロック12、複数のピストン13、斜板14、レギュレータ15、及び弁板16等が収容されている。収容空間21は、ケーシング11において、軸線方向一方側の端面(即ち、軸線方向一端面)において開口21aを有している。なお、軸線方向は、所定の軸線L1が延在する方向である。
【0016】
ケーシング11には、
図2に示すように吸入路22と、吐出路23とが形成されている。吸入路22には、作動液が導かれる。他方、吐出路23には、作動液が吐出される。吸入路22及び吐出路23は、例えばケーシング11において収容空間21の軸線方向他方側に形成されている。そして、吸入路22及び吐出路23は、収容空間21の軸線方向他方側の端面において開口している。
【0017】
後で詳述するが、ケーシング11には、第1連通路24と、チャンバー25と、第2連通路26とが更に形成されている。また、ケーシング11は、ケーシング本体11aと、チャンバーブロック11bと、容積調整機構11c(後で詳述する
図6参照)とを含んでいる。
【0018】
<シリンダブロック>
シリンダブロック12は、複数のシリンダボア12aを含んでいる。シリンダブロック12は、ケーシング11内、即ち収容空間21に回転可能に収容されている。より詳細に説明すると、シリンダブロック12は、円筒状に形成されている。そして、シリンダブロック12は、軸線方向他方側の端面(即ち、軸線方向他端面)を収容空間21の軸線方向他端面に対向させるようにして収容空間21に収容されている。また、シリンダブロック12には、その軸線L1に沿って回転軸17が貫挿されている。また、回転軸17は、スプライン結合等によって相対回転しないようなっている。回転軸17は、所定の軸線L1まわりに回転可能にケーシング11に支持されている。また、回転軸17の一端部は、開口21aから突き出ており、駆動源(図示せず)に連結されている。そして、駆動源が回転軸17を回転させることによって、シリンダブロック12が軸線L1まわりに回転する。
【0019】
複数のシリンダボア12aは、シリンダブロック12においての軸線方向一方側の端面(即ち、軸線方向一端面)に形成されている。そして、複数のシリンダボア12aは、回転軸17の周り(即ち、軸線L1の周り)に周方向に互いに間隔をあけて配置されている。また、シリンダボア12aの各々には、シリンダポート12bが形成されている。シリンダボア12aは、シリンダポート12bを介して軸線方向他方側の端面(即ち、軸線方向他端)にて開口している。なお、本実施形態において、シリンダブロック12には、9つのシリンダボア12aが形成されている。但し、前述するシリンダボア12aの数は一例に過ぎず、8つ以下であってもよく、また10個以上であってもよい。
【0020】
<ピストン>
複数のピストン13は、シリンダブロック12のシリンダボア12aの各々に挿入されている。そして、ピストン13の各々は、各シリンダボア12aを往復運動する。また、ピストン13の先端部分には、摺動回転可能にシュー18が取り付けられている。
【0021】
<斜板>
斜板14はシリンダブロック12の軸線方向一方側に間隔をあけて配置されている。斜板14は、シュープレート19を有している。なお、斜板14は、必ずしもシュープレート19を備えている必要はない。シュープレート19は、シリンダブロック12の方に傾倒している。斜板14は、シュープレート19を介して複数のシュー18を軸線方向一方側から支持している。また、複数のシュー18は、押え板20によってシュープレート19に押えられており、シュープレート19上を軸線L1まわりに摺動回転する。それ故、シリンダブロック12が回転すると、ピストン13がシリンダボア12aを往復運動する。また、斜板14は、軸線L1に直交する軸線L2まわりに傾倒することができる。即ち、斜板14は、傾転角を変えることができる。それ故、ピストン13のストローク量を変えることができる。これにより、各シリンダボア12aから吐出される作動液の量、即ち吐出量を変えることができる。
【0022】
<レギュレータ>
レギュレータ15は、斜板14を軸線L2まわりに回動させることによって斜板14の傾転角を変える。より詳細に説明すると、レギュレータ15は、図示しないサーボピストンが連結部材15aを介して斜板14と連結されている。そして、レギュレータ15は、入力される信号(例えば、パイロット圧)に応じてサーボピストンを動かす。これにより、斜板14の傾転角が調整される。
【0023】
<弁板>
弁板16は、ケーシング11に設けられている。より詳細に説明すると、弁板16は、収容空間21の軸線方向他端面とシリンダブロック12との間に介在している。そして、弁板16は、収容空間21の軸線方向他方側の端面に固定されている。弁板16には、シリンダブロック12の軸線方向他端面が押し付けられている。そして、シリンダブロック12は、弁板16上を摺動するように軸線L1まわりに回転する。
【0024】
また、弁板16には、吸入ポート16a及び吐出ポート16bが夫々形成されている。吸入ポート16aは、吸入路22に繋がっている。また、吐出ポート16bは、吐出路23に繋がっている。そして、吸入ポート16a及び吐出ポート16bの各々には、シリンダポート12bを介して各シリンダボア12aが接続されている。そして、各シリンダボア12aは、シリンダブロック12が回転することによって吸入ポート16a及び吐出ポート16bに交互接続される。吸入ポート16aは、接続されるシリンダポート12bを介して各シリンダボア12aに吸入路22の作動液を導く。また、吐出ポート16bは、接続されるシリンダポート12bを介してシリンダボア12aから吐出路23に作動液を吐出させる。
【0025】
更に詳細に説明すると、弁板16は、
図3に示すように円板状に形成されている。弁板16は、その軸線が軸線L1と一致するように収容空間21の軸線方向他端面に取り付けられている(
図2参照)。また、吸入ポート16a及び吐出ポート16bは、
図3に示すように軸線L1を中心とする同心円弧状に形成されている。また、吸入ポート16a及び吐出ポート16bは、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。これにより、吸入ポート16aと吐出ポート16bと間には、上死点側閉塞面16c及び下死点側閉塞面16dが夫々形成されている。上死点側閉塞面16cは、上死点付近にあるシリンダボア12aを閉塞し、且つ下死点側閉塞面16dは、下死点付近にあるシリンダボア12aを閉塞する。なお、上死点付近とは、上死点及びその付近の位置を意味し、下死点付近とは、下死点及びその付近の位置、例えば吸入ポート16aと吐出ポート16bと間を意味する。また、上死点は、ピストン13が弁板16に最も近づく位置である。下死点は、ピストン13が弁板16から最も遠ざかる位置である。
【0026】
<脈動抑制機構>
ケーシング11には、
図2に示すように第1連通路24と、チャンバー25と、第2連通路26とが形成されている。そして、第1連通路24と、チャンバー25と、第2連通路26とは、脈動抑制機構28を構成している。脈動抑制機構28は、下死点側において弁板16の吸入ポート16aと吐出ポート16bとの間に位置する(即ち、下死点付近にある)シリンダボア12aと吐出路23とを連通する。そして、脈動抑制機構28は、吸振機能、及び逆流抑制機能によって吐出路23を流れる作動液の脈動を低減している。
【0027】
以下では、脈動抑制機構28の構成、即ち、第1連通路24、チャンバー25、及び第2連通路26が更に詳細に説明される。
図4にも示すように第1連通路24は、吐出路23とチャンバー25とを連通する。また、第1連通路24は、第1絞り24aを有している。第1絞り24aは、その上流側及び下流側の部分より小さい流路断面積で形成されている。更に、第1絞り24aは、後で詳述する第2絞り26aより大きい流路断面積を有している(
図5参照)。
【0028】
チャンバー25は、第1連通路24を介して吐出路23から導かれる作動液を貯留する。また、チャンバー25は、各シリンダボア12aより大きい容積を有している。より詳細に説明すると、チャンバー25は、シリンダボア12aに吸入可能な最大容量より大きい容積を有している。チャンバー25は、第1連通路24と共に共鳴器31を構成する。チャンバー25と第1連通路24とによって構成される共鳴器31は、例えばヘルムホルツ共鳴器と同じように機能する。即ち、共鳴器31は、吸振機能を有する。これにより、吐出路23を流れる作動液の脈動を低減することができる。なお、本実施形態において、第2連通路26もまた共鳴器31の一部を成している。
【0029】
第2連通路26は、チャンバー25に接続されている。また、第2連通路26は、弁板16の下死点側閉塞面16dまで延在している。そして、第2連通路26は、弁板16の下死点側閉塞面16dにて開口している。それ故、第2連通路26は、下死点付近にあるシリンダボア12aと繋がる。また、第2連通路26は、第2絞り26aを有している。第2絞り26aは、例えば弁板16に形成されている。より詳細に説明すると、第2絞り26aは、弁板16の下死点側閉塞部16eに形成されている。ここで、下死点側閉塞部16eは、吸入ポート16aと吐出ポート16bと間の部分である。そして、第2絞り26aは、下死点付近にあるシリンダボア12aと接続される。
【0030】
第2連通路26は、チャンバー25と共に逆流抑制機構32を構成する。本実施形態において、第1連通路24もまた、吐出路23からチャンバー25に作動液を貯留すべく、第2連通路26及びチャンバー25と共に逆流抑制機構32を構成している。そして、逆流抑制機構32は、チャンバー25に貯留する作動液を下死点付近のシリンダボア12eに供給する。これにより、シリンダボア12aの接続先が吸入ポート16aから吐出ポート16bに切換った際に吐出路23からシリンダボア12aに作動液が逆流することを抑制する。これにより、吐出路23を流れる作動液の脈動が低減される。また、第2絞り26aの流路断面積は、第1絞り24aの流路断面積より小さくなっている。本実施形態において、第2絞り26aは、例えばチョークのようになっており、軸線方向に延在している。
【0031】
<ケーシングの具体的構成>
ケーシング11は、前述の通り、ケーシング本体11aと、チャンバーブロック11bと、容積調整機構11cとを含んでいる。ケーシング本体11aには、収容空間21が形成されている。そして、ケーシング本体11aの収容空間21にシリンダブロック12、複数のピストン13、斜板14、レギュレータ15、及び弁板16が収容されている。また、ケーシング本体11aには、吸入路22と吐出路23とが少なくとも形成されている。ケーシング本体11aは、シリンダブロック12、複数のピストン13、斜板14、レギュレータ15、及び弁板16と共に液圧ポンプ本体29を構成する。
【0032】
チャンバーブロック11bには、
図6に示すように少なともチャンバー25が形成されている。本実施形態において、チャンバーブロック11bには、第1連通路24が更に形成されている。また、第2連通路26は、本実施形態においてチャンバーブロック11bからケーシング本体11aにわたって形成されている。チャンバーブロック11bは、例えば第1方向に長尺の直方体状に形成されている。そして、チャンバーブロック11bは、例えばケーシング本体11aの第2方向一方側の側面に取り付けられている。ここで、第1方向は、軸線方向に直交する方向である。第1方向は、例えば軸線L1及び軸線L2に夫々直交する方向である。また、第2方向は、軸線L2が延在する方向であって、軸線方向及び第1方向に夫々直交する方向である。本実施形態において、軸線方向は前後方向、第1方向は上下方向、第2方向は、左右方向である。
【0033】
また、本実施形態において、ケーシング本体11a及びチャンバーブロック11bには、各通路が以下のように形成されている。即ち、吸入路22及び吐出路23の各々は、
図2に示すように第2方向一方側及び他方側に互いに間隔をあけて夫々配置されている。吸入路22は収容空間21から第2方向他方に折れ曲がっている。そして、吸入路22は、ケーシング本体11aの第2方向他方側の側面にて開口している。吐出路23は収容空間21から第2方向一方に折れ曲がっている。吐出路23は、ケーシング本体11aの第2方向一方側の側面に延びている。ケーシング本体11aの第2方向一方側の側面には、吐出路23に対応する位置にチャンバーブロック11bが取り付けられている。そして、吐出路23は、ケーシング本体11aからチャンバーブロック11bへと延在し、チャンバーブロック11bを第2方向一方へと貫通している。
【0034】
図6に示すようにチャンバー25は、例えばチャンバーブロック11bに以下のように形成されている。即ち、チャンバー25は、第1方向に延在する断面円形状に形成されている。そして、チャンバー25は、吐出路23に軸線方向に隣接するように配置されている。
【0035】
第1連通路24は、
図5に示すように第2方向他方側から見てL字状に形成されている。第1連通路24の一端は、吐出路23に繋がっている。第1連通路24の他端は、チャンバー25の周面であって第1方向他方側にある端部側、即ち第1方向他端部側に繋がっている。更に詳細に説明すると、第1連通路24は、通路部分24bと、絞り収容部分24cと、絞り部材24dと、を有している。通路部分24b及び絞り収容部分24cは、互いに交差するようにチャンバーブロック11bに形成されている。より詳細に説明すると、通路部分24bが吐出路23から第1方向他方に延在する。そして、絞り収容部分24cは、通路部分24bに交差(本実施形態において、直交)し且つ軸線方向一方(所定方向一方に相当)に延在している。絞り収容部分24cは、例えば断面円形状に形成されている。また絞り収容部分24cの中間部分は、後述する絞り部材24dを収容できるようになっている。本実施形態において、絞り収容部分24cの中間部分には、絞り部材24dを螺合すべく雌ねじが形成されている。また、チャンバーブロック11bには、絞り収容部分24cの延長線上(より詳細に説明すると、絞り収容部分24cの軸線方向他方側の延長線上)において収容開口24eが形成されている。絞り部材24dは、第1絞り24aを形成する部材である。絞り部材24dは、円筒状に形成されており、内孔が第1絞り24aを成している。絞り部材24dは、収容開口24eから挿入される。そして、絞り部材24dは、絞り収容部分24cに収容される。本実施形態において、絞り部材24dは、絞り収容部分24cの中間部分において螺合される。これにより、絞り収容部分24cの中間部分に第1絞り24aを介在させることができる。また、収容開口24eは、プラグ24fによって閉塞される。
【0036】
図5及び7に示すように第2連通路26は、前述の通り、ケーシング11から弁板16の下死点側閉塞面16dまで延在している。そして、第2連通路26は、下死点側閉塞面16dにて開口している。第2連通路26は、下死点付近にあるシリンダボア12aとチャンバー25とを連通する。なお、第2連通路26もまた、第1連通路24と同様に、チャンバー25の周面の第1方向他端部側であって、第1連通路24より第2方向一方側に繋がっている。なお、
図7では、説明の便宜上、吐出路23、各通路24,26、チャンバー25にハッチが施されている。
【0037】
第2連通路26は、ブロック側部分26bと、本体側部分26cと、第2絞り26aとを有している。ブロック側部分26bは、チャンバーブロック11bに形成されている部分であって、L字状に形成されている。なお、ブロック側部分26bは、L字状に限定されず、例えば、曲線状に形成されていてもよい。即ち、ブロック側部分26bは、チャンバー25に繋がり、且つ第1連通路24の絞り収容部分24cに平行するように軸線方向に延在している。そして、ブロック側部分26bは、軸線方向他方側に折れ曲がって第2方向に延在している。本体側部分26cは、ケーシング本体11aに形成されている部分であって、本体側部分26cもまたL字状に形成されている。なお、本体側部分26cは、L字状に限定されず、例えば、曲線状に形成されていてもよい。本体側部分26cの一端は、ブロック側部分26bに繋がっている。また、本体側部分26cは、第2方向に延在している。そして、本体側部分26cは、
図2に示すように平面視で回転軸17に重なる位置にて折れ曲がって軸線方向一方に延在している。そして、本体側部分26cの他端は、第2絞り26aに繋がっている。第2絞り26aは、前述の通り、弁板16の下死点側閉塞部16eに形成されている。そして、第2絞り26aは、下死点側閉塞面16dにて開口している。これにより、第2連通路26は、下死点付近にあるシリンダボア12aに第2絞り26aを介して繋がっている。
【0038】
容積調整機構11cは、チャンバー25の容積を変更する。本実施形態において、容積調整機構11cは、ピストン30及び調整ねじ31を有している。ピストン30は、第1方向に進退可能にチャンバー25に挿入されている。調整ねじ31は、回すことによってピストン30を第1方向に進退させる。そして、容積調整機構11cは、調整ねじ31によってピストン30を進退させることによってチャンバー25の容積を変更することができる。
【0039】
<液圧ポンプの動作>
液圧ポンプ1(より詳細には、液圧ポンプ本体29)は、以下のように動作する。即ち、駆動源(図示せず)が回転軸17を駆動することによって、シリンダブロック12が軸線L1まわりに回転する。そうすると、シリンダポート12bの接続先が吸入ポート16a及び吐出ポート16bの間で切り替わる。また、シリンダブロック12が回転することによって、複数のピストン13が軸線L1まわりに回転すると共にシリンダボア12aを往復運動する。これにより、吸入ポート16aを介してシリンダボア12aに作動液が吸引され、その後シリンダボア12aから吐出ポート16bに作動液が吐出される。このようにして、液圧ポンプ1は、作動液を吐出する。なお、液圧ポンプ1では、レギュレータ15によって斜板14の傾転角が調整される。そうすると、ピストン13のストローク量が調整される。これにより、液圧ポンプ1の吐出量を調整することができる。
【0040】
また、液圧ポンプ1では、脈動抑制機構28が以下のような吸振機能及び逆流抑制機能を達成している。即ち、本実施形態の脈動抑制機構28では、主に第1連通路24とチャンバー25とによって共鳴器31が構成されている。共鳴器31は、例えばヘルムホルツ共鳴器と同じよう機能する。即ち、共鳴器31は、吸振機能によって吐出路23を流れる作動液の脈動を低減する。また、本実施形態の脈動抑制機構28では、主にチャンバー25と第2連通路26とによって逆流抑制機構32が構成されている。逆流抑制機構32は、チャンバー25に貯留される作動液(より詳細に説明すると、圧液)を下死点付近にあるシリンダボア12aに第2連通路26を介して供給する。それ故、下死点付近にあるシリンダボア12aの内圧を高めることができる。そうすると、シリンダボア12aが吐出ポート16bと繋がる際に吐出路23の作動液がシリンダボア12aに逆流することを抑制することができる。それ故、逆流抑制機構32は、逆流抑制機能によって吐出路23を流れる作動液の脈動を低減する。
【0041】
また、脈動抑制機構28では、第2連通路26が第2絞り26aを有している。それ故、逆流抑制機構32は、
図8に示すようなシリンダブロック12が低速回転(例えば、1000rpm~3000rpmの範囲)で回転する際の吐出路23を流れる作動液の脈動を低減させることができる。より詳細に説明すると、逆流抑制機構32は、低速回転域(即ち、低周波帯域)に関して作動液の脈動を脈動抑制機構28より優位に低減させることができる。他方、脈動抑制機構28では、共鳴器31を構成する第1絞り24aが第2絞り26aより大きい流路断面積を有している。それ故、共鳴器31において、
図8においてシリンダブロック12が高速回転(例えば、3000rpm以上、)で回転する際の吐出路23を流れる作動液の脈動を低減させることができる。即ち、共鳴器31は、高速回転域(即ち、高周波帯域)に関して作動液の脈動を逆流抑制機構32より優位に低減させることができる。
【0042】
また、脈動抑制機構28では、容積調整機構11cによってチャンバー25の容積を変えることによって、共鳴器31において低減させる脈動の大きさを調整することができる。また、チャンバー25の容積を大きくすることによって共鳴器31において脈動を低減可能な速度域が小さい方(即ち、脈動の周波数帯域が低い方)へと推移する。逆に、チャンバー25の容積を小さくすることによって共鳴器31において脈動を低減可能な速度域が大きい方(即ち、脈動の周波数帯域が高い方)へと推移する。また、脈動抑制機構28では、第1絞り24aの流路断面積(例えば、絞り径)が調整される。本実施形態において、内孔の流路断面積が異なる絞り部材24dが絞り収容部分24cに挿入されることによって、第1絞り24aの流路断面積(例えば、絞り径)が調整される。これにより、脈動抑制機構28では、低減させる脈動の周波数帯域(より詳細に説明すると、周波数帯のピーク)を調整することができる。従って、チャンバー25の容積を変えることによって脈動の低減の大きさを調整し、且つ第1絞り24aの流路断面積によって失させる脈動の周波数帯を調整することができる。このように、脈動抑制機構28は、1つのチャンバー25によって共鳴器31及び逆流抑制機構32を構成している。それ故、液圧ポンプ1が大型化することを抑制することができる。
【0043】
本実施形態の液圧ポンプ1において、チャンバー25は、第1連通路24を介して吐出路23に接続されている。それ故、チャンバー25が第1連通路24と共に共鳴器31を構成する。そして、共鳴器31の吸振機能によって吐出路23を流れる作動液の脈動を抑制することができる。また、チャンバー25は、第2絞り26aを有し且つ下死点側閉塞面16dにて開口している第2連通路26に接続されている。それ故、チャンバー25は、第2連通路26を介して下死点付近にあるシリンダボア12aに接続される。それ故、チャンバー25は、第2連通路26と共に逆流抑制機構32を構成する。逆流抑制機構32は、シリンダボア12aの接続先が吸入ポート16aから吐出ポート16bに切換るまでの間にシリンダボア12aの内圧を高めることができる。これにより、シリンダボア12aの接続先が吐出ポート16bに切換った際に作動液が吐出路23からシリンダボア12aに逆流することを抑制する(即ち、逆流抑制機能を達成する)ことができる。従って、シリンダボア12aへの作動液の逆流に起因する脈動を低減することができる。更に、第1絞り24aは、第2絞り26aより大きい流路断面積を有している。それ故、逆流抑制機構32は、主に低い周波数帯域の脈動を低減させる。他方、共鳴器31は、逆流抑制機構32より高い周波数帯域の脈動を低減させる。従って、1つのチャンバー25によって幅広い周波数帯域の脈動を低減することができる。
【0044】
また、本実施形態の液圧ポンプ1において、チャンバーブロック11bはケーシング本体11aと別体である。そして、チャンバー25は、チャンバーブロック11bに形成されている。それ故、高周波数帯域の脈動を低減させる必要がある場合にはチャンバーブロック11bをケーシング本体11aに取り付け、必要がない場合にはチャンバーブロック11bをケーシング本体11aから取り外すことができる。
【0045】
更に、本実施形態の液圧ポンプ1において、絞り部材24dは、収容開口24eから挿入されて絞り収容部分24cに収容されている。それ故、絞り部材24dを取り換えることができ、且つ取り換えが容易である。また、取り換えることによって、第1絞り24aの流路断面等を変えることができる。これにより、低減させる脈動の周波数帯域を調整することができる。
【0046】
更に、本実施形態の液圧ポンプ1において、弁板16には、第2絞り26aが形成されている。ケーシング11とは別体の弁板16に第2絞り26aが形成されているので、第2絞り26aの形成が容易である。
【0047】
更に、本実施形態の液圧ポンプ1において、第1絞り24aは、ケーシング11に絞り部材24dを取り付けることによってケーシング11に形成される。それ故、絞り部材24dを取り換えることによって、第1絞り24aの流路断面等を変えることができる。これにより、低減させる脈動の周波数帯域を調整することができる。
【0048】
更に、本実施形態の液圧ポンプ1において、チャンバー25の容積を変更する容積調整機構11cが更に備わっている。それ故、容積調整機構11cによってチャンバー25の容積を変えることができる。これにより、脈動の低減の大きさ及び低減可能な脈動の周波数帯域を調整することができる。
【0049】
更に、本実施形態の液圧ポンプ1において、チャンバー25は、シリンダボア12aより大きい容積を有している。これにより、吐出路23を流れる作動液の脈動に関して大きな低減効果、特に吸振機能による大きな低減効果を得ることができる。
【0050】
更に、本実施形態の液圧ポンプ1において、チャンバー25は、第1連通路24と共に共鳴器31を構成し、且つ第2連通路26及び第2絞り26a共に逆流抑制機構32を構成する。そして、共鳴器31は、逆流抑制機構32より高い周波数帯の脈動を低減する。逆流抑制機構32は、低い周波数帯において共鳴器31よりも脈動を低減する。それ故、幅広い周波数帯の脈動を低減することができる。
【0051】
<その他の実施形態>
本実施形態の液圧ポンプ1は、固定容量形の液圧ポンプ及び斜軸ポンプであってもよい。また、本実施形態の液圧ポンプ1は、液圧ポンプ1を直列に並べて構成されるタンデムポンプ及び液圧ポンプ1を並列に並べて構成されるパラレルポンプに適用されてもよい。
【0052】
本実施形態では、ケーシング11が互いに別体で構成されるケーシング本体11aとチャンバーブロック11bによって構成されているが、それらが一体的に構成されていてもよい(即ち、ケーシング11が1つで構成されていてもよい)。
【0053】
ケーシング11は、容積調整機構11cを必ずしも有している必要はなく、チャンバー25は固定容量であってもよい。また、チャンバー25は、必ずしもシリンダボア12aより大きい容積を有している必要はない。
【0054】
本実施形態の液圧ポンプ1では、第2絞り26aが弁板16に形成されているが、ケーシング11に形成されてもよい。また、第1連通路24は、第2連通路26のようにケーシング本体11aからチャンバーブロック11bにわたって形成されてもよい。更に、第1絞り24aは、必ずしも絞り部材24dによって構成されている必要はなく、チャンバーブロック11bに直接的に形成されてもよい。
【0055】
<例示的な実施形態>
第1の局面における液圧ポンプは、作動液が導かれる吸入路と、作動液が吐出される吐出路とが形成されるケーシングと、前記ケーシングに設けられ、前記吸入路に繋がる吸入ポート及び前記吐出路に繋がる吐出ポートが夫々形成される弁板と、複数のシリンダボアを含み、前記弁板上を摺動するシリンダブロックと、前記シリンダボアの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、を備え、前記ケーシングには、第1絞りを有する第1連通路と、チャンバーと、前記弁板まで延在する第2連通路とが更に形成され、前記第1連通路は、前記吐出路と前記チャンバーとを連通し、前記チャンバーは、前記第1連通路を介して前記吐出路から導かれる作動液を貯留し、前記第2連通路は、第2絞りを有し、前記弁板の前記吸入ポートと前記吐出ポートとの間にある下死点側閉塞面にて開口し、且つ前記チャンバーに接続され、前記第1絞りは、前記第2絞りより大きい流路断面積を有している。
【0056】
上記局面に従えば、チャンバーは、第1連通路を介して吐出路に接続されている。それ故、チャンバーが第1連通路と共に共鳴器を構成する。そして、共鳴器の吸振機能によって、吐出路を流れる作動液の脈動を抑制することができる。また、チャンバーは、第2絞りを有し且つ下死点側閉塞面にて開口する第2連通路に接続されている。それ故、チャンバー25は、下死点側において吸入ポートと吐出ポートとの間に位置するシリンダボアに第2連通路を介して接続される。それ故、チャンバーは、第2連通路と共に逆流抑制機構を構成する。逆流抑制機構は、シリンダボアの接続先が吸入ポートから吐出ポートに切換るまでの間にシリンダボアの内圧を高めることができる。これにより、シリンダボアの接続先が吐出ポートに切換った際に作動液が吐出路からシリンダボアに逆流することを抑制する(即ち、逆流抑制機能を達成する)ことができる。従って、シリンダボアへの作動液の逆流に起因する脈動を低減することができる。更に、第1絞りは、第2絞りより大きい流路断面積を有している。それ故、逆流抑制機構は、主に低い周波数帯域の脈動を低減させる。他方、共鳴器は、主に逆流抑制機構より高い周波数帯域の脈動を低減させる。従って、1つのチャンバーによって幅広い周波数帯の脈動を低減することができる。また、1つのチャンバーによって共鳴器及び逆流抑制機構を構成することができる。
【0057】
第2の局面における液圧ポンプでは、第1の局面の液圧ポンプにおいて、前記ケーシングは、ケーシング本体と、チャンバーブロックとを含み、前記ケーシング本体には、前記吸入路と前記吐出路とが形成され、前記チャンバーブロックは、前記ケーシング本体と別体であり、前記チャンバーは、前記チャンバーブロックに形成されている。
【0058】
上記局面に従えば、チャンバーブロックはケーシング本体と別体である。そして、チャンバーは、チャンバーブロックに形成されている。それ故、脈動を低減させる必要がある場合にはチャンバーブロックをケーシング本体に取り付け、必要がない場合にはケーシング本体から取り外すことができる。
【0059】
第3の局面における液圧ポンプは、第2の局面の液圧ポンプにおいて、前記チャンバーブロックには、前記第1連通路と収容開口とが形成され、前記第1連通路は、互いに交差するように配置される通路部分及び絞り収容部分と、前記第1絞りを形成する絞り部材とを有し、前記絞り収容部分は、所定方向一方に延在し、且つ前記絞り部材を収容し、前記収容開口は、前記チャンバーブロックにおいて前記絞り収容部分の延長線上に形成されている。
【0060】
上記局面に従えば、収容開口は、前記チャンバーブロックにおいて前記絞り収容部分の延長線上に形成されている。それ故、絞り部材を収容開口から挿入して絞り収容部分に収容することができる。それ故、絞り部材を取り換えることができ、且つ取り換えが容易である。また、取り換えることによって、第1絞りの流路断面等を変えることができる。これにより、低減させる脈動の周波数帯を調整することができる。
【0061】
第4の局面における液圧ポンプでは、第1乃至3の何れかの局面の液圧ポンプにおいて、前記弁板には、前記第2絞りが形成されている。
【0062】
上記局面に従えば、弁板には、第2絞りが形成されている。ケーシングとは別体の弁板に第2絞りが形成されているので、第2絞りの形成が容易である。
【0063】
第5の局面における液圧ポンプでは、第1乃至4の何れかの局面の液圧ポンプにおいて、前記第1絞りは、前記ケーシングに絞り部材を取り付けることによって前記ケーシングに形成される。
【0064】
上記局面に従えば、第1絞りは、ケーシングに絞り部材を取り付けることによってケーシングに形成される。それ故、絞り部材を取り換えることによって、第1絞りの流路断面等を変えることができる。これにより、低減させる脈動の周波数帯域を調整することができる。
【0065】
第6の局面における液圧ポンプでは、第1乃至5の何れかの局面の液圧ポンプにおいて、前記ケーシングは、前記チャンバーの容積を変更する容積調整機構を更に備えている。
【0066】
上記局面に従えば、チャンバーの容積を変更する容積調整機構が更に備わっている。それ故、容積調整機構によってチャンバーの容積を変えることができる。これにより、脈動の低減の大きさ及び低減可能な脈動の周波数帯域を調整することができる。
【0067】
第7の局面における液圧ポンプでは、第1乃至6の何れかの局面の液圧ポンプにおいて、前記チャンバーは、前記シリンダボアより大きい容積を有している。
【0068】
上記局面に従えば、チャンバーは、シリンダボアより大きい容積を有している。それ故、吐出路を流れる作動液の脈動に関して大きな低減効果、特に吸振機能による大きな低減効果を得ることができる。
【0069】
第8の局面における液圧ポンプは、作動液が導かれる吸入路と、作動液が吐出される吐出路とが形成されるケーシングと、前記ケーシングに設けられ、前記吸入路に繋がる吸入ポート及び前記吐出路に繋がる吐出ポートとが夫々形成される弁板と、複数のシリンダボアを含み、前記弁板上を摺動するシリンダブロックと、前記シリンダボアの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、前記ケーシングは、第1絞りを有する第1連通路と、チャンバーと、前記弁板まで延在する第2連通路とを含み、前記第1連通路は、前記吐出路と前記チャンバーとを連通し、前記チャンバーは、前記第1連通路を介して前記吐出路から導かれる作動液を貯留し、前記第2連通路は、第2絞りを有し、前記弁板の前記吸入ポートと前記吐出ポートとの間にある下死点側閉塞面にて開口し、且つ前記チャンバーに接続され、前記チャンバーは、前記第1連通路と共に前記吐出路を流れる作動液の脈動を低減する共鳴器を構成し、且つ前記第2連通路及び前記第2絞りと共に前記シリンダボアへの逆流を抑制することによって前記吐出路を流れる作動液の脈動を低減する逆流抑制機構を構成し、前記逆流抑制機構は、低い周波数帯の脈動を低減し、前記共鳴器は、高い周波数帯の脈動を低減する。
【0070】
上記局面に従えば、チャンバーは、第1連通路と共に共鳴器を構成し、且つ第2連通路及び第2絞り共に逆流抑制機構を構成する。共鳴器は、高い周波数帯において逆流抑制機構よりも脈動を低減する。逆流抑制機構は、低い周波数帯において共鳴器よりも脈動を低減する。それ故、幅広い周波数帯の脈動を低減することができる。また、1つのチャンバーによって共鳴器及び逆流抑制機構を構成することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 液圧ポンプ
11 ケーシング
11a ケーシング本体
11b チャンバーブロック
11c 容積調整機構
12 シリンダブロック
12a シリンダボア
13 ピストン
16 弁板
16a 吸入ポート
16b 吐出ポート
22 吸入路
23 吐出路
24 第1連通路
24a 第1絞り
24c 絞り収容部分
24d 絞り部材
24e 収容開口
25 チャンバー
26 第2連通路
26a 第2絞り
31 共鳴器
32 逆流抑制機構