(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089187
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】液体分注装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
G01N1/00 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204393
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】田邊 英樹
(72)【発明者】
【氏名】武田 大司
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AD26
2G052CA18
2G052CA32
2G052DA06
2G052JA08
(57)【要約】
【課題】コンタミネーションを抑制することができる液体分注装置を提供する。
【解決手段】液体分注装置2は、ウェルプレート8のウェル22に向けて液体を吐出する吐出部12と、吐出部12とウェルプレート8との間に配置され、ウェル22に対応して開口部36が形成された開口プレート10とを備える。開口プレート10をXY平面視した場合に、開口部36の大きさは、ウェル22の大きさよりも小さい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウェルが形成されたウェルプレートに液体を分注する液体分注装置であって、
前記ウェルに向けて液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部と前記ウェルプレートとの間に配置され、前記ウェルに対応して開口部が形成された開口プレートと、を備え、
前記開口プレートを平面視した場合に、前記開口部の大きさは、前記ウェルの大きさよりも小さい
液体分注装置。
【請求項2】
前記開口プレートを平面視した場合に、前記開口部の大きさは、前記ウェルの大きさよりも小さく、且つ、前記開口部の輪郭は、前記ウェルの輪郭よりも内側に配置されている
請求項1に記載の液体分注装置。
【請求項3】
前記開口プレートの前記ウェルプレートに対向する下面は、撥水性を有している
請求項1又は2に記載の液体分注装置。
【請求項4】
前記開口プレートの前記下面は、接触角90°以上の撥水性を有している
請求項3に記載の液体分注装置。
【請求項5】
前記開口プレートは、導電性材料で形成されている
請求項1又は2に記載の液体分注装置。
【請求項6】
前記開口プレートの前記ウェルプレートに対向する下面において、前記開口部の外周部には第1の電極が配置され、
前記第1の電極は、接地されている
請求項1又は2に記載の液体分注装置。
【請求項7】
前記開口プレートの前記ウェルプレートとは反対側の上面において、前記開口部の外周部には第2の電極が配置され、
前記第2の電極は、接地されている
請求項6に記載の液体分注装置。
【請求項8】
前記開口部の外周部には、前記ウェルに向けて反っている返し部が形成されている
請求項1又は2に記載の液体分注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェルプレートに液体を分注する液体分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェルプレートに試料又は検体等の液体を分注する液体分注装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この液体分注装置では、ウェルプレートの上面に形成された複数のウェルの各々に向けて、インクジェットヘッドから所定量の液滴(液体)が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の液体分注装置では、ウェルに向けて液滴が吐出された際に、当該ウェル内に発生した気流によって、液滴が当該ウェルから浮き上がって当該ウェルの周囲のウェルまで飛散するおそれがある。その結果、各ウェルにおいて異なる液滴が混ざり合う、いわゆるコンタミネーションが発生するという課題が生じる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決しようとするものであり、その目的は、コンタミネーションを抑制することができる液体分注装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る液体分注装置は、上面にウェルが形成されたウェルプレートに液体を分注する液体分注装置であって、前記ウェルに向けて液体を吐出する吐出部と、前記吐出部と前記ウェルプレートとの間に配置され、前記ウェルに対応して開口部が形成された開口プレートと、を備え、前記開口プレートを平面視した場合に、前記開口部の大きさは、前記ウェルの大きさよりも小さい。
【0007】
本態様によれば、開口プレートが吐出部とウェルプレートとの間に配置され、開口プレートを平面視した場合に、開口部の大きさは、ウェルの大きさよりも小さい。これにより、吐出部から開口プレートの開口部を通して当該開口部の直下のウェルに向けて液体が吐出された際に、当該ウェルの内部で発生する気流の大部分は、当該開口部の外周部で跳ね返ることにより、当該ウェルの内部を循環するようになる。そのため、当該開口部を通して当該ウェルの外部に流れる気流はほとんど発生せず、当該ウェルに吐出された液滴の一部が、当該ウェルから浮き上がって例えば当該ウェルの周囲のウェル等まで飛散するのを低減することができる。その結果、コンタミネーションを抑制することができる。
【0008】
例えば、本発明の第2の態様に係る液体分注装置では、第1の態様において、前記開口プレートを平面視した場合に、前記開口部の大きさは、前記ウェルの大きさよりも小さく、且つ、前記開口部の輪郭は、前記ウェルの輪郭よりも内側に配置されているように構成してもよい。
【0009】
本態様によれば、開口プレートの開口部の外周部は、ウェルの全周に亘って、当該ウェルの内側に環状且つ庇状に突出するようになるので、コンタミネーションをより効果的に抑制することができる。
【0010】
例えば、本発明の第3の態様に係る液体分注装置では、第1の態様又は第2の態様において、前記開口プレートの前記ウェルプレートに対向する下面は、撥水性を有しているように構成してもよい。
【0011】
本態様によれば、開口プレートの下面に付着した液滴を、当該液滴の自重でウェルに滴下させることができる。
【0012】
例えば、本発明の第4の態様に係る液体分注装置では、第3の態様において、前記開口プレートの前記下面は、接触角90°以上の撥水性を有しているように構成してもよい。
【0013】
本態様によれば、開口プレートの下面に付着した液滴を、当該液滴の自重でウェルに容易に滴下させることができる。
【0014】
本態様によれば、
例えば、本発明の第5の態様に係る液体分注装置では、第1の態様~第4の態様のいずれか一態様において、前記開口プレートは、導電性材料で形成されているように構成してもよい。
【0015】
本態様によれば、仮に開口プレートが帯電した場合であっても、開口プレートに帯電している電荷を大気中に放電することができる。その結果、吐出部から吐出された液滴に電荷が帯電している場合に、当該液滴が開口プレートに帯電している電荷と反発してウェルの外部に飛散するのを抑制することができる。
【0016】
例えば、本発明の第6の態様に係る液体分注装置では、第1の態様~第5の態様のいずれか一態様において、前記開口プレートの前記ウェルプレートに対向する下面において、前記開口部の外周部には第1の電極が配置され、前記第1の電極は、接地されているように構成してもよい。
【0017】
本態様によれば、仮に開口プレートが帯電した場合であっても、開口プレートに帯電している電荷を第1の電極から接地に流すことができる。その結果、吐出部から吐出された液滴に電荷が帯電している場合に、当該液滴が開口プレートに帯電している電荷と反発してウェルの外部に飛散するのを抑制することができる。
【0018】
例えば、本発明の第7の態様に係る液体分注装置では、第6の態様において、前記開口プレートの前記ウェルプレートとは反対側の上面において、前記開口部の外周部には第2の電極が配置され、前記第2の電極は、接地されているように構成してもよい。
【0019】
本態様によれば、仮に開口プレートが帯電した場合であっても、開口プレートに帯電している電荷を第2の電極から接地に流すことができる。その結果、吐出部から吐出された液滴に電荷が帯電している場合に、当該液滴が開口プレートに帯電している電荷と反発してウェルの外部に飛散するのを抑制することができる。
【0020】
例えば、本発明の第8の態様に係る液体分注装置では、第1の態様~第7の態様のいずれか一態様において、前記開口部の外周部には、前記ウェルに向けて反っている返し部が形成されているように構成してもよい。
【0021】
本態様によれば、吐出部から開口部を通して当該開口部の直下のウェルに向けて液滴が吐出された際に、当該ウェルの内部で発生した気流を、当該開口部の外周部に形成された返し部で効果的に跳ね返すことができる。その結果、コンタミネーションをより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様に係る液体分注装置によれば、コンタミネーションを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施の形態1に係る液体分注装置の内部構造を簡略的に示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る液体分注装置のウェルプレート及び開口プレートを示す分解斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る液体分注装置のウェルプレートを示す平面図である。
【
図4】実施の形態1に係る液体分注装置の開口プレートを示す平面図である。
【
図5】
図4のV-V線による、実施の形態1に係る液体分注装置の要部断面図である。
【
図6】
図4のVI-VI線による、実施の形態1に係る液体分注装置の要部断面図である。
【
図7】比較例に係る液体分注装置を示す要部断面図である。
【
図8】実施の形態1の変形例に係る液体分注装置を示す要部断面図である。
【
図9】実施の形態2に係る液体分注装置を示す要部断面図である。
【
図10】実施の形態3に係る液体分注装置の開口プレートの下面側を示す平面図である。
【
図11】実施の形態3に係る液体分注装置の開口プレートの上面側を示す平面図である。
【
図12】
図11のXII-XII線による、実施の形態3に係る液体分注装置の要部断面図である。
【
図13】
図11のXIII-XIII線による、実施の形態3に係る液体分注装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0025】
(実施の形態1)
[1.液体分注装置の全体構成]
図1~
図3を参照しながら、実施の形態1に係る液体分注装置2の全体構成について説明する。
図1は、実施の形態1に係る液体分注装置2の内部構造を簡略的に示す斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る液体分注装置2のウェルプレート8及び開口プレート10を示す分解斜視図である。
図3は、実施の形態1に係る液体分注装置2のウェルプレート8を示す平面図である。
【0026】
なお、
図1において、液体分注装置2の左右方向をX軸、液体分注装置2の前後方向をY軸、液体分注装置2の上下方向をZ軸とする。また、本明細書において、Z軸のプラス側を「上」、Z軸のマイナス側を「下」とする。
【0027】
図1に示すように、液体分注装置2は、筐体4と、トレイ6と、ウェルプレート8と、開口プレート10と、吐出部12と、駆動機構14と、コントローラ16とを備えている。液体分注装置2は、液体をウェルプレート8に分注するための装置である。液体は、例えば医療分野や理化学分野における試験等で用いられる、試料、検体又は試薬等である。
【0028】
筐体4は、中空状の箱形に形成されている。筐体4の前面には、ウェルプレート8を出し入れするための開口部(図示せず)が形成されている。
【0029】
トレイ6は、ウェルプレート8を載置するためのものであり、筐体4の内部に配置されたガイドプレート(図示せず)に移動可能に支持されている。これにより、トレイ6は、ガイドプレートに沿って、筐体4の内部に収納される収納位置(
図1に示すトレイ6の位置)と、筐体4の開口部を通して手前側(Y軸のマイナス側)に引き出される引き出し位置(図示せず)との間を移動可能である。
【0030】
また、トレイ6の上面には、ウェルプレート8をトレイ6に対して位置決めするための一対のガイド壁18,20が配置されている。一対のガイド壁18,20の各々は、XY平面視で略L字状に形成されている。一対のガイド壁18,20はそれぞれ、ウェルプレート8の4つの隅部のうち対角の一対の隅部に接触する。
【0031】
図2及び
図3に示すように、ウェルプレート8は、例えば、XY平面視で略矩形状の板状に形成され、樹脂等で形成されている。ウェルプレート8は、トレイ6の上面に着脱可能に載置される。ウェルプレート8の上面には、吐出部12から吐出された液滴(液体)を溜めるための複数のウェル22が行列状(例えば、32列×48行)に形成されている。複数のウェル22の各々は、例えばXY平面視で矩形状に形成された凹部である。1つのウェルプレート8に形成されているウェル22の数は、例えば1536個(=32×48)である。また、XY平面視において、各ウェル22の横(X軸方向)の長さD1は例えば1.7mmであり、各ウェル22の縦(Y軸方向)の長さD2は例えば1.7mmである。
【0032】
なお、本実施の形態では、1つのウェルプレート8に形成されているウェル22の数を1536個としたが、これに限定されず、例えば24個(=4×6)、96個(=8×12)又は384個(=16×24)等としてもよい。ウェル22の数が多くなるのに従い、ウェル22の配置間隔は短くなり、且つ、ウェル22の大きさは小さくなる。
【0033】
開口プレート10は、ウェルプレート8におけるコンタミネーションを抑制するためのプレートである。
図1及び
図2に示すように、開口プレート10は、ウェルプレート8の上面を覆うように配置される。すなわち、開口プレート10は、ウェルプレート8と吐出部12との間に配置される。開口プレート10の具体的な構成については、後述する。
【0034】
吐出部12は、ウェルプレート8の複数のウェル22のうち1以上のウェル22に向けて液滴を吐出するためのユニットであり、筐体4の内部に配置されている。吐出部12による液滴の吐出方式は、ミスト状の液滴を吐出するインクジェット方式である。
【0035】
図1に示すように、吐出部12は、キャリッジ24と、カートリッジ26と、ノズル28とを有している。カートリッジ26は、キャリッジ24に着脱可能に搭載されている。カートリッジ26の内部には、ウェルプレート8に分注するための1種類以上の液体が充填されている。ノズル28は、キャリッジ24の下端部に配置されている。ノズル28には、複数の微細なノズル孔が形成されている。吐出部12は、カートリッジ26から供給された液体を、収納位置にあるトレイ6に載置されたウェルプレート8の上面に向けて、ノズル28からミスト状の液滴にして吐出する。
【0036】
駆動機構14は、X軸機構30と、Y軸機構32と、Z軸機構34とを有しており、筐体4の内部に配置されている。X軸機構30は、吐出部12を走査方向(X軸方向)に移動させるための機構である。Y軸機構32は、吐出部12を副走査方向(Y軸方向)に移動させるための機構である。Z軸機構34は、吐出部12を上下方向(Z軸方向)に移動させるための機構である。
【0037】
コントローラ16は、吐出部12及び駆動機構14を制御するためのものであり、筐体4の内部に配置されている。
【0038】
吐出部12が副走査方向に移動しながら、走査方向に往復移動している状態で、吐出部12からウェルプレート8の上面に液滴が吐出されることにより、ウェルプレート8の複数のウェル22の各々に液体が所定量(例えば、ピコリットルオーダーの量)ずつ溜められる。これにより、ウェルプレート8に液体が分注される。なお、吐出部12からの1回の液滴の吐出で、例えば数個~十数個のウェル22の各々にまとめて分注されてもよいし、単一のウェル22にのみ分注されてもよい。
【0039】
なお、ウェルプレート8への液体の分注後、ユーザは、トレイ6を収納位置から引き出し位置に移動させた後に、開口プレート10をウェルプレート8から取り外すことにより、ウェルプレート8をトレイ6から取り出すことができる。ウェルプレート8の複数のウェル22の各々に溜められた液体は、例えば分析等に使用される。
【0040】
[2.開口プレートの構成]
次に、
図4~
図6を参照しながら、開口プレート10の構成について説明する。
図4は、実施の形態1に係る液体分注装置2の開口プレート10を示す平面図である。
図5は、
図4のV-V線による、実施の形態1に係る液体分注装置2の要部断面図である。
図6は、
図4のVI-VI線による、実施の形態1に係る液体分注装置2の要部断面図である。
【0041】
図4に示すように、開口プレート10は、例えば、XY平面視で略矩形状の板状に形成され、樹脂等で形成されている。開口プレート10には、ウェルプレート8の複数のウェル22に対応して、複数の開口部36が行列状(例えば、32列×48行)に形成されている。すなわち、複数の開口部36はそれぞれ、複数のウェル22に1対1で対応しており、1つの開口プレート10に形成されている開口部36の数は、ウェル22の数と同じ例えば1536個(=32×48)である。複数の開口部36の各々は、例えばXY平面視で矩形状に形成されている。
【0042】
なお、例えば、1つのウェルプレート8に形成されているウェル22の数が24個、96個又は384個である場合には、1つの開口プレート10に形成されている開口部36の数はそれぞれ、ウェル22の数と同じ24個、96個又は384個となる。
【0043】
複数の開口部36はそれぞれ、複数のウェル22の各直上に配置されている。具体的には、開口プレート10をXY平面視した場合に、複数の開口部36の各々の大きさ(面積)はそれぞれ、複数のウェル22の各々の大きさ(面積)よりも小さく、且つ、複数の開口部36の各々の輪郭はそれぞれ、複数のウェル22の各々の輪郭よりも内側に配置されている。XY平面視において、各開口部36の横(X軸方向)の長さD3は例えば1.0mm(<D1)であり、各開口部36の縦(Y軸方向)の長さD4は例えば1.0mm(<D2)である。
図5に示すように、開口部36の外周部は、ウェル22の全周に亘って、ウェル22の内側に環状且つ庇状に突出している。これにより、吐出部12からの液滴は、開口プレート10の開口部36を通して、当該開口部36の直下のウェル22に向けて吐出されるようになる。
【0044】
また、開口プレート10の下面(すなわち、ウェルプレート8に対向する側の面)は、撥水性を有している。この場合、開口プレート10の下面に撥水性コーティングを施してもよいし、開口プレート10自体を撥水性材料で形成してもよい。撥水性コーティングとしては、例えばフッ素系界面活性剤等を用いることができる。また、撥水性材料としては、例えばフッ素又はシリコン高分子を樹脂に添加したものを用いることができる。なお、開口プレート10の下面は、接触角90°以上の撥水性を有しているのが好ましい。
【0045】
また、
図6に示すように、開口プレート10の下面において、複数の開口部36のうち隅部に配置された開口部36の外周部には、ウェル22に向けて突出する位置決め突部38が形成されている。開口プレート10をウェルプレート8の上面に載置した際に、位置決め突部38がウェル22に着脱可能に差し込まれることにより、開口プレート10がウェルプレート8に対して位置決めされる。これにより、複数の開口部36がそれぞれ、複数のウェル22の各直上に配置されるようになる。
【0046】
[3.効果]
ここで、
図7を参照しながら、比較例に係る液体分注装置100の構成について説明する。
図7は、比較例に係る液体分注装置100を示す要部断面図である。なお、
図7において、上記実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
図7に示すように、比較例に係る液体分注装置100では、上述した開口プレート10を備えていないため、以下のような問題が生じる。吐出部12からウェルプレート8のウェル22(以下、「ウェル22a」という)に向けて液滴が吐出された際に、ウェル22aの内部には、液滴の吐出に起因する気流が発生するようになる。この気流は、ウェル22aの内部を循環するだけでなく、ウェル22aの外部にも流れるように発生する。そのため、ウェル22aに吐出された液滴の一部は、ウェル22aの外部に流れる気流により、ウェル22aから浮き上がって当該ウェル22aの周囲のウェル22(以下、「ウェル22b」という)まで飛散するおそれがある。その結果、ウェル22bにおいて異なる液滴が混ざり合う、いわゆるコンタミネーションが発生するという問題が生じる。
【0048】
これに対して、本実施の形態に係る液体分注装置2では、開口プレート10を備えているので、次のような効果を奏する。上述したように、開口プレート10の開口部36の外周部は、ウェルプレート8のウェル22の全周に亘って、ウェル22の内側に環状且つ庇状に突出している。
【0049】
これにより、
図5に示すように、吐出部12から開口プレート10の開口部36(以下、「開口部36a」という)を通して当該開口部36aの直下のウェル22(以下、「ウェル22a」)という)に向けて液滴が吐出された際に、ウェル22aの内部で発生する気流の大部分は、開口部36aの外周部で跳ね返ることにより、ウェル22aの内部を循環するようになる。そのため、開口部36aを通してウェル22aの外部に流れる気流はほとんど発生せず、ウェル22aに吐出された液滴の一部が、ウェル22aから浮き上がって当該ウェル22aの周囲のウェル22(以下、「ウェル22b」という)まで飛散するのを低減することができる。その結果、ウェルプレート8においてコンタミネーションが発生するのを抑制することができる。
【0050】
また、上述したように、開口プレート10の下面は、撥水性を有している。これにより、ウェル22aに吐出された液滴の一部が、ウェル22aの内部を循環する気流により運ばれることにより、当該液滴が開口プレート10の下面における開口部36aの外周部に付着した場合であっても、当該液滴をその自重によりウェル22aに滴下させることができる。
【0051】
[4.変形例]
図8を参照しながら、実施の形態1の変形例に係る液体分注装置2Aの構成について説明する。
図8は、実施の形態1の変形例に係る液体分注装置2Aを示す要部断面図である。なお、
図8は、
図4のVI-VI線に対応する切断線により液体分注装置2Aを切断した要部断面図である。また、本変形例において、上記実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
図8に示すように、本変形例の液体分注装置2Aでは、開口プレート10Aの下面には上述した位置決め突部38が形成されていない。すなわち、液体分注装置2Aは、上述した位置決め突部38に代えて、位置決めピン40を備えている。位置決めピン40は、開口プレート10Aの複数の開口部36のうち隅部に配置された開口部36を通して、当該開口部36の直下のウェル22に着脱可能に挿通されている。位置決めピン40の下端部は、ウェル22の底部に接触している。
【0053】
これにより、上記実施の形態1と同様に、開口プレート10Aがウェルプレート8に対して位置決めされる。なお、ユーザは、位置決めピン40を開口部36に挿通した際に、位置決めピン40の下端部がウェル22の底部に接触した感触を得れば、開口プレート10Aが正しく位置決めできていると判断することができる。
【0054】
開口プレート10Aをウェルプレート8に対して位置決めした後は、位置決めピン40をウェル22から抜き取ればよい。これにより、位置決めピン40が挿入されていたウェル22にも、吐出部12からの液滴を吐出することができる。あるいは、開口プレート10Aをウェルプレート8に対して位置決めした後、位置決めピン40をウェル22に挿通したままにしてもよい。
【0055】
(実施の形態2)
図9を参照しながら、実施の形態2に係る液体分注装置2Bの構成について説明する。
図9は、実施の形態2に係る液体分注装置2Bを示す要部断面図である。なお、
図9は、
図4のV-V線に対応する切断線により液体分注装置2Bを切断した要部断面図である。また、以下に示す各実施の形態において、上記実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
図9に示すように、液体分注装置2Bでは、開口プレート10Bは、例えば金属、シリコン又はカーボン等の導電性材料で形成されている。これにより、例えば開口プレート10Bを梱包用のビニール袋等から取り出した際に、開口プレート10Bに電荷(例えばプラス電荷)が帯電した場合であっても、開口プレート10Bに帯電している電荷を大気中に放電することができる。その結果、吐出部12から吐出された液滴に電荷(例えばプラス電荷)が帯電している場合に、当該液滴が開口プレート10Bに帯電している電荷と反発してウェル22の外部に飛散するのを抑制することができる。
【0057】
また、
図9に示すように、液体分注装置2Bでは、開口プレート10Bの複数の開口部36Bの各外周部には、返し部42が形成されている。返し部42は、開口部36Bの全周に亘って、ウェル22に向けて反っている。これにより、吐出部12から開口部36Bを通して当該開口部36Bの直下のウェル22に向けて液滴が吐出された際に、ウェル22の内部で発生した気流を、開口部36Bの返し部42で効果的に跳ね返すことができる。その結果、コンタミネーションをより効果的に抑制することができる。
【0058】
(実施の形態3)
図10~
図13を参照しながら、実施の形態3に係る液体分注装置2Cの構成について説明する。
図10は、実施の形態3に係る液体分注装置2Cの開口プレート10Cの下面側を示す平面図である。
図11は、実施の形態3に係る液体分注装置2Cの開口プレート10Cの上面側を示す平面図である。
図12は、
図11のXII-XII線による、実施の形態3に係る液体分注装置2Cの要部断面図である。
図13は、
図11のXIII-XIII線による、実施の形態3に係る液体分注装置2Cの要部断面図である。
【0059】
液体分注装置2Cでは、開口プレート10Cは、例えばプリント配線基板により構成されている。
図10に示すように、開口プレート10Cの下面(すなわち、ウェルプレート8に対向する面)において、複数の開口部36の各外周部にはそれぞれ、複数の第1の電極44が配置されている。複数の第1の電極44の各々は、例えば銅箔等で形成され、開口部36の全周を取り囲むように、例えばXY平面視で矩形状の環状に形成されている。複数の第1の電極44は、銅箔等で形成された導電パターン46で互いに電気的に接続されている。
【0060】
また、
図11に示すように、開口プレート10Cの上面(すなわち、ウェルプレート8とは反対側の面)において、複数の開口部36の各外周部にはそれぞれ、複数の第2の電極48が配置されている。複数の第2の電極48の各々は、例えば銅箔等で形成され、開口部36の全周を取り囲むように、例えばXY平面視で矩形状の環状に形成されている。複数の第2の電極48は、銅箔等で形成された導電パターン50で互いに電気的に接続されている。
【0061】
図10~
図12に示すように、開口プレート10Cの隅部には、スルーホール52が形成されている。開口プレート10Cの下面に形成された導電パターン46と、開口プレート10Cの上面に形成された導電パターン50とは、スルーホール52を介して電気的に接続されている。また、
図12に示すように、ガイド壁20Cは、支持部54と、接地用電極56とを有している。支持部54は、ガイド壁20Cの側面から突出し、開口プレート10Cの下面を支持する。接地用電極56は、支持部54の上面に形成されており、開口プレート10Cの導電パターン46と電気的に接続されている。接地用電極56は、例えばアース線(図示せず)を介して接地されている。すなわち、複数の第1の電極44及び複数の第2の電極48の各々は、接地用電極56を介して接地されている。
【0062】
例えば開口プレート10Cを梱包用のビニール袋等から取り出した際に、開口プレート10Cに電荷(例えばプラス電荷)が帯電した場合であっても、開口プレート10Cに帯電している電荷を複数の第1の電極44及び複数の第2の電極48の各々を介して接地に流すことができる。その結果、
図13に示すように、吐出部12から吐出された液滴に電荷(例えばプラス電荷)が帯電している場合に、当該液滴が開口プレート10Cに帯電している電荷と反発してウェル22の外部に飛散するのを抑制することができる。
【0063】
なお、図示しないが、開口プレート10Cには、種々の電子部品が実装されていてもよく、例えば加速度センサ及び通信モジュールが実装されていてもよい。加速度センサは、開口プレート10Cの水平面(XY平面)に対する傾きを検出する。通信モジュールは、例えばBLE(Blutooth(登録商標) Low Energy)等の通信方式で、加速度センサからの検出信号をコントローラ16(
図1)に無線で送信する。コントローラ16は、通信モジュールから受信した検出信号に基づいて、開口プレート10Cが水平面に対して傾いていると判定した場合には、吐出部12からの液滴の吐出を停止する。
【0064】
(変形例)
以上、本発明の各実施の形態に係る液体分注装置について説明したが、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0065】
上記各実施の形態では、ウェルプレート8に複数のウェル22が形成されるように構成したが、これに限定されず、ウェルプレート8に単一のウェル22が形成されるように構成してもよい。この場合、開口プレート10(10A,10B,10C)には、単一のウェル22に対応して単一の開口部36(36B)が形成されるように構成してもよい。
【0066】
また、上記各実施の形態では、ウェル22及び開口部36の各形状をXY平面視でともに矩形状としたが、これに限定されず、例えば多角形状や円形状等、任意の形状としてもよい。例えば、ウェル22の形状をXY平面視で多角形状とし、且つ、開口部36の形状をXY平面視で円形状としてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態2及び3のように、開口プレート10B,10Cの帯電を抑制するための構成を有している場合には、ウェル22の大きさに対する開口部36の大きさは、80%以下であるのが好ましい。この場合、ウェルプレート8は、ウェル22の数が384個又は1536個のウェルプレートを対象とする。一方、開口プレート10B,10Cの帯電を抑制するための構成を有していない場合には、液滴が電荷の反発によりウェル22の外部に飛散するのを抑制するために、ウェル22の大きさに対する開口部36の大きさは、60%以下であるのが好ましい。この場合、ウェルプレート8は、ウェル22の数が24個又は96個のウェルプレートを対象とする。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えばウェルプレートに試薬等の液体を分注するための液体分注装置等として適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
2,2A,2B,2C,100 液体分注装置
4 筐体
6 トレイ
8 ウェルプレート
10,10A,10B,10C 開口プレート
12 吐出部
14 駆動機構
16 コントローラ
18,20,20C ガイド壁
22,22a,22b ウェル
24 キャリッジ
26 カートリッジ
28 ノズル
30 X軸機構
32 Y軸機構
34 Z軸機構
36,36a,36B 開口部
38 位置決め突部
40 位置決めピン
42 返し部
44 第1の電極
46,50 導電パターン
48 第2の電極
52 スルーホール
54 支持部
56 接地用電極