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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089192
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】運転評価装置および運転評価システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240626BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240626BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/09 F
G07C5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204398
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】波多野 千昭
【テーマコード(参考)】
3E138
5H181
【Fターム(参考)】
3E138MA06
3E138MB10
3E138MB11
3E138MB14
3E138MB20
3E138MC12
3E138MD05
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC12
5H181CC27
5H181FF10
(57)【要約】
【課題】各運転者が省エネ運転に実際に貢献しているかどうかを正しく評価するために役立つ運転評価装置を提供すること。
【解決手段】車両の運行で収集された運行実績情報を取得する実績情報取得部と、実績情報取得部が取得した運行実績情報に基づいて車両運行を評価する運行評価部とを有し、運行実績情報は少なくとも車両運行毎の実際の積載率と関連する実測積載情報を含み、運行評価部は、車両毎の積載率と燃費との相関に基づいて燃費基準値を把握し(S11~S14)、実測積載情報に応じた実燃費と燃費基準値とを対比可能な状態で出力して各運転者の運行評価に利用する(S19)。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の実際の運行において収集された運行実績情報を取得する実績情報取得部と、
前記実績情報取得部が取得した運行実績情報に基づいて車両運行を評価する運行評価部と、
を有し、
前記運行実績情報は、車両運行毎の実際の積載率と関連のある実測積載情報を含み、
前記運行評価部は、車両毎の積載率と燃費との相関に基づいて燃費基準値を把握し、前記実測積載情報に応じた実燃費と前記燃費基準値とを対比可能な状態で出力して各運転者の運行評価に利用する、
運転評価装置。
【請求項2】
前記運行実績情報は、車両運行毎に計測された車両外部の温度と関連のある実測温度情報を含み、
前記運行評価部は、前記実測温度情報の違いを各運転者の運行評価に反映する、
請求項1に記載の運転評価装置。
【請求項3】
前記運行評価部は、前記運行実績情報の積載率と実燃費とを所定の期間内で平均化した結果を反映した基準値ラインを生成し、前記実測積載情報に応じた運転者毎の実燃費と前記基準値ラインとを対比可能な状態で表示する、
請求項1に記載の運転評価装置。
【請求項4】
評価対象の各車両上に搭載可能な車載器と、
前記各車両の実際の運行において収集された運行実績情報を取得可能なサーバ装置と、
を備え、
前記車載器は、車両運行毎の実際の積載率と関連のある実測積載情報を送信する機能を有し、
前記サーバ装置は、前記各車載器から取得した運行実績情報に基づいて車両運行を評価する運行評価部を有し、
前記運行評価部は、車両毎の積載率と燃費との相関に基づいて燃費基準値を把握し、前記実測積載情報に応じた実燃費と前記燃費基準値とを対比可能な状態で出力して各運転者の運行評価に利用する、
運転評価システム。
【請求項5】
前記運行評価部は、前記運行実績情報の積載率と実燃費とを所定の期間内で平均化した結果を反映した基準値ラインを生成し、前記実測積載情報に応じた運転者毎の実燃費と前記基準値ラインとを対比した結果の数値を含む日報を出力する機能を有する、
請求項4に記載の運転評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運行における省燃費の観点での運転評価に利用可能な運転評価装置および運転評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックなどの業務用車両は、乗務員の労務管理や安全運転管理などに利用可能な運行データを自動的に記録するための車載器として、デジタルタコグラフやドライブレコーダを搭載している場合が多い。また、このような車載器は、近年では乗務員の運転状況を評価するための機能を有する場合もある。
【0003】
また、例えば特許文献1は、車両走行開始後の積荷の状態を運転評価に反映し、評価精度を高めるための技術を開示している。具体的には、荷物が積載された車両の走行状態をS15、S18で検知し、車両の走行開始後に荷物の積載状況をS63~S69で計測し、当該積載状況を反映した荷物監視情報をS63~S69で生成する。走行状態を、荷物監視情報に基づいて設定された規定値とS16及びS19で比較することにより運転評価を実行する。積荷の状態に応じた適正な安全運転が実行されているかを監視することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-131865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばトラックなどの車両で荷物を運送する運送事業者は、車両の運行に伴う燃料消費量の総量を抑制することが求められる。燃料消費量の抑制により、輸送コストの削減や二酸化炭素の排出量削減が期待できる。
【0006】
したがって、各車両を運行する運転者の運転操作に関する評価については、燃料消費量を抑制するような運転操作を実際に行っている場合に、高い評価を与えることが望ましい。しかしながら、運転者の運転操作を評価する場合には、急加速や急減速の回数を減らすことや、一定の速度で走行することに高い評価を与えることが一般的であり、実際の燃料消費量を抑制することに貢献しているか否かと直接関係する点に適切な評価が与えられていないのが実情である。
【0007】
例えば、車両がある区間を走行した場合に、その区間の走行距離と、その区間における車両の燃料消費量とを算出することは可能である。したがって、実際の燃費を単位燃料消費量あたりの走行距離(km/L:リットル)として把握することもできる。しかし、実際の燃費に影響を及ぼす要因については、運転者各個人の運転状況の他にも様々な要因が考えられる。例えば、車種の違い、最大積載重量の違い、荷物の積載率の違い、環境温度の違い、季節要因、地域性の要因、道路環境の要因などに応じて実際の燃費が変動することが予想される。
したがって、実際の燃費の違いだけを運転者毎の省エネ運転評価の良否にそのまま反映することは適切な評価とは言えない。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、各運転者が省エネ運転に実際に貢献しているかどうかを正しく評価するために役立つ運転評価装置および運転評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る運転評価装置および運転評価システムは、下記を特徴としている。
【0010】
車両の実際の運行において収集された運行実績情報を取得する実績情報取得部と、
前記実績情報取得部が取得した運行実績情報に基づいて車両運行を評価する運行評価部と、
を有し、
前記運行実績情報は、車両運行毎の実際の積載率と関連のある実測積載情報を含み、
前記運行評価部は、車両毎の積載率と燃費との相関に基づいて燃費基準値を把握し、前記実測積載情報に応じた実燃費と前記燃費基準値とを対比可能な状態で出力して各運転者の運行評価に利用する、
運転評価装置。
【0011】
評価対象の各車両上に搭載可能な車載器と、
前記各車両の実際の運行において収集された運行実績情報を取得可能なサーバ装置と、
を備え、
前記車載器は、車両運行毎の実際の積載率と関連のある実測積載情報を送信する機能を有し、
前記サーバ装置は、前記各車載器から取得した運行実績情報に基づいて車両運行を評価する運行評価部を有し、
前記運行評価部は、車両毎の積載率と燃費との相関に基づいて燃費基準値を把握し、前記実測積載情報に応じた実燃費と前記燃費基準値とを対比可能な状態で出力して各運転者の運行評価に利用する、
運転評価システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の運転評価装置および運転評価システムは、各運転者が省エネ運転に実際に貢献しているかどうかを正しく評価するために役立てることができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態の運転評価システム構成を示すブロック図である。
図2図2は、積載率の実績データの分布例を示すグラフである。
図3図3は、荷物を輸送する車両における積載率と燃費との相関を示す基準値ラインの例を表すグラフである。
図4図4は、補正前後の2つの基準値ラインと積載率、燃費の実績データ群の例を示すグラフである。
図5図5は、外気温に応じた温度補正係数の変化の例を表すグラフである。
図6図6は、車載器およびサーバの動作の概要を示すフローチャートである。
図7図7は、サーバにおける特徴的な動作の具体的な手順を示すフローチャートである。
図8図8は、運転者の運転評価に利用可能な出力データの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0016】
本発明の実施形態における運転評価システム100の構成例を図1に示す。
本実施形態の運転評価システム100は、荷物を輸送する複数の車両10を対象とする。なお、以下の説明では、複数の車両10を区別する必要がない場合には、図1に示すように1台の車両10を例に説明する。車両10は、車載器20を搭載している。この車載器20は、例えばデジタルタコグラフとして構成され、車両10の運行中に車両運行に関する様々な実績データを収集し、例えば電波を利用して実績データを送信することができる。
【0017】
車両10は、荷重(LI:Load Indicator)センサ21および外気温センサ22を搭載している。荷重センサ21は、車両10の各車軸の位置に設置されており、車両10における荷物の積載重量を計測し出力することができる。外気温センサ22は、車両10の実燃費に影響を及ぼす外気温を検知する。
【0018】
また、車載器20は、GPS(Global Positioning System)受信機を内蔵し、車両10の現在位置を表す緯度経度の位置情報を例えば定期的に測位し出力することができる。また、車両10は、燃料消費量を検出するセンサを備えている。したがって、車載器20は、車両10の位置情報、積載重量、燃料消費量、及び外気温を含む実績データを収集できる。また、車載器20は広域通信網に対応した無線通信モジュールを装備し、収集した実績データをアンテナ23を介して電波として送信する。
【0019】
本発明の運転評価装置に相当するサーバ40は、インターネット網35に接続されている。したがって、各車両10の車載器20が送信する実績データは、広域通信網30、インターネット網35を経由してサーバ40に入力される。サーバ40は、各車両10から送信された実績データを収集してデータベースに蓄積する。更に、サーバ40はデータベースに蓄積した実績データを解析し、例えば運転者毎の運転状況の評価に必要なデータや日報を生成することができる。
【0020】
サーバ40は、例えば所定のデータセンターに設置される。一方、各車両10を管理している運送会社の管理者や、荷主などの顧客は、それぞれインターネット網35に接続した所定のユーザ端末50を利用してサーバ40にアクセスし、サーバ40が提供する通信サービスを利用することができる。
【0021】
本実施形態のサーバ40は、各車両10が荷物を輸送する際の燃費(km/L)の改善に関する運転者毎の貢献度を、実際の積載率を考慮して正しく評価するのに役立つ機能を搭載している。ここで、各車両10の積載率は実際に輸送する荷物全体の重量と、車両毎の最大積載重量との比率として表される。
【0022】
<積載率の分布例>
積載率の実績データD0の日別分布例を図2に示す。
輸送会社が各車両10で荷物の輸送を実施する場合には、各車両10の積載率は、一般には、図2に示すように毎日大きく変動する。
【0023】
一方、各車両10における実燃費は、積載する荷物の重量、すなわち積載率の影響を受けて変動する。つまり、荷物の重量が増えると同じ燃料消費量で走行可能な距離が減少し燃費の数値は下がる。また、図2に示すように積載率に大きなばらつきが発生するので、積載率に応じて実燃費にもばらつきが生じる。そのため、各運転者の運転状況が燃費の改善に貢献しているのかどうかを評価する場合に、実燃費の数値はそのままでは利用できない。
【0024】
<車両の積載率と燃費との関係>
荷物を輸送する車両における積載率と燃費との相関を示す基準値ラインR1の例を図3に示す。
図3に示した基準値ラインR1は、車両における通常の燃費変化の傾向を表している。つまり、積載率が大きくなるに従い、燃費の数値が直線的に低下する傾向がある。
【0025】
実際には、各車両10のカタログスペックから図3のような基準値ラインR1を特定可能である。例えば、車両10毎にカタログ上の最大積載重量(kg)が定まっているので、最大積載重量(積載率:100%)に対する燃費基準値(F1)と、特定の積載重量(例えば、積載率:15%)に対する燃費基準値(F2)とが既知の場合は、これら2点の燃費基準値F1、F2を結ぶ直線として基準値ラインR1を決定できる。
【0026】
<基準値ラインと積載率、燃費の関係>
補正前後の2つの基準値ラインR1、R2と積載率、燃費の実績データ群(D1)の例を図4に示す。
【0027】
カタログスペックに基づいて決定した基準値ラインR1は、あくまでもカタログ上の特性なので実際の荷物輸送業務における基準値として必ずしも最適とは言えない。そこで、実際に測定した燃費・積載率の実績データD1、すなわち過去の複数のデータを利用し、基準値ラインR1をより適切な特性(例えば運用上の平均的な特性)に補正した結果として基準値ラインR2を生成する。
【0028】
サーバ40が各車両10の各運転者の運転状況について評価する場合には、運転者毎に取得した例えば最新の1組の燃費・積載率の実績データD1と、基準値ラインR2とを比較することで、適切な評価が可能になる。
【0029】
例えば、評価対象の運転者の燃費・積載率の実績データD1が燃費・積載率のグラフ上で基準値ラインR2よりも上側にある場合は、当該運転者が平均的な基準(R2)に対して全体の燃費向上に貢献していると評価することができる。また、評価対象の運転者の燃費・積載率の実績データD1が燃費・積載率のグラフ上で基準値ラインR2よりも下側にある場合は、当該運転者が平均的な基準(R2)に対して全体の燃費向上に貢献していないと評価することができる。
【0030】
<外気温の補正>
外気温に応じた温度補正係数Ctの変化の例を図5に示す。
一般的に、各車両10における実際の燃費は外気温の変化に伴って変化する傾向がある。例えばある境界温度Taを境にして、境界温度Ta未満の領域では、外気温の低下に伴って燃費が直線的に低下する傾向があり、境界温度Taを超える領域では、外気温の上昇に伴って燃費が直線的に低下する傾向がある。
【0031】
そこで、評価対象の運転者の燃費・積載率の実績データD1を評価する前に、外気温の影響を排除するための補正を実施する。例えば、図5に示すように外気温に応じて変化する温度補正係数Ctを利用して燃費・積載率の実績データD1、又は基準値ラインR2を補正してから運転評価を実施する。
【0032】
<システム動作の概要>
図1に示した運転評価システム100における車載器20およびサーバ40の動作の概要を図6に示す。図6に示す動作について以下に説明する。
【0033】
車両10が荷物を輸送する際に、車載器20はGPSにより測位した位置データと、荷重センサ21により計測した荷物重量データと、燃料消費量と、外気温センサ22で計測した外気温度データとを含む運行実績情報を例えば定期的に収集し、この情報を広域無線通信を利用してサーバ40へ送信する(S01)。走行距離に基づいて算出した実燃費を燃料消費量の代わりに送信しても良い。走行距離は、車速パルスの数や、位置情報の変化に基づいて把握できる。
【0034】
サーバ40上のDB稼働機能は、各車両10から送信された運行実績情報をS021で受信し、この運行実績情報を該当する車両IDや運転者IDなどと紐付けした状態でデータベース41に蓄積する。
【0035】
なお、各車両10が送信する運行実績情報や、サーバ40が受信して蓄積する運行実績情報の積載率、外気温等については、例えば1日単位で平均化した結果や、1つの走行区間毎に平均化した結果として各実績データを扱っても良い。
【0036】
例えば各車両10を管理している運送会社の管理者は、所定ユーザ端末50を利用してサーバ40にアクセスすることで、サーバ40の運用・管理機能や、日報作成機能のサービスを利用できる。
【0037】
サーバ40は、運用・管理機能において、各運転者を評価するための解析画面を管理者からの入力指示に従ってS022で選択し、ユーザ端末50の画面に表示する。また、サーバ40は、選択された解析画面において、評価対象の運転者や車両を特定し、必要な実績データをデータベース41から取得してデータ解析をS023で実行する。更に、サーバ40はデータ解析の結果をデータベース41に登録すると共に、ユーザ端末50の画面に表示する(S024)。
【0038】
サーバ40は、日報作成機能において、各運転者の実績を表す日報を作成する画面を管理者からの入力指示に従ってS025で選択し、該当する運転者の実績データを集計して所定の日報を作成するための処理をS026で実行する。また、サーバ40は、作成した日報の内容をデータベース41に登録すると共に、S027でユーザ端末50の画面に表示する。更に、所定のプリンタを利用してS028で日報の内容を印刷する。
【0039】
<特徴的な動作の具体例>
サーバ40における特徴的な動作の具体的な手順を図7に示す。図7に示した動作について以下に説明する。
【0040】
サーバ40は、車両毎に事前に用意されたカタログスペックの燃費データをS11でデータベース42から取得する。ここで取得する燃費データの中には、該当する車両が最大積載重量の荷物を積載した状態の燃費基準値(積載率100%)F1と、もう1つの積載率(例えば15%)の状態の燃費基準値F2とが含まれる。
【0041】
サーバ40は、S11で取得したカタログの燃費データに基づき、燃費/積載率特性の基準線の初期値をS12で決定する。つまり、図3図4のグラフ中に示した基準値ラインR1に相当する基準線をS12で決める。
サーバ40は、過去の各車両の運行実績データを蓄積しているデータベース43から、燃費・積載率の複数の実測データをS13で入力する。
【0042】
サーバ40は、S12で決定した初期値の基準線(基準値ラインR1に相当)と、S13で入力した燃費・積載率の複数の実測データ(燃費・積載率の実績データD1に相当)とに基づき、最小二乗法のアルゴリズムを適用して、誤差を最小化するようにS14で基準線を補正する。この補正において、積載率15%の燃費の位置は初期値(カタログスペック)のまま固定し、各実測データの様々な積載率について、燃費の誤差が小さくなるように基準線の傾きを補正する。この補正により、例えば図4中に示す基準値ラインR1が基準値ラインR2のように補正される。
【0043】
サーバ40が図6中に示したS023でデータ処理を行う場合には、図7中のS15~S18の処理を実行する。すなわち、サーバ40は評価対象の各車両10の燃費・積載率の実測値をS15でデータベース41から取得する。また、サーバ40は該当する車両における外気温の実測温度データをS16でデータベース41から取得する。
【0044】
サーバ40は、S15で取得した運行実績の燃費・積載率を、S16で取得した外気温に基づきS17で補正する。この温度補正においては、図5に示したような事前に決定した温度補正係数Ctを利用する。
【0045】
サーバ40は、S17で温度補正した後の運行実績の燃費・積載率と、S14で決定した基準線(基準値ラインR2に相当)とを比較して該当する運転者の燃費貢献度を算出する。例えば、評価対象運転者の運行実績の燃費・積載率の点が、基準線上の同じ積載率の燃費に対して「+0.1[km/L]」であった場合は、この「+0.1[km/L]」を該当する運転者の燃費貢献度とすることができる。その場合、該当する運転者は、平均的な基準に対して「0.1[km/L]」だけ燃費の改善に貢献しているとみなすことができる。
【0046】
逆に、評価対象運転者の運行実績の燃費・積載率の点が、基準線上の同じ積載率の燃費に対して「-0.2[km/L]」であった場合は、この「-0.2[km/L]」を該当する運転者の燃費貢献度とすることができる。その場合、該当する運転者は、平均的な基準に対して「0.2[km/L]」だけ燃費を悪化させた状態で運転しているとみなすことができる。
【0047】
サーバ40は、S15~S18でデータ処理した結果を、S19(S024)で例えばユーザ端末50の画面上に表示する。具体的には、図4に示すようなグラフ上に、燃費・積載率の実績データD1、基準値ラインR2と共に評価対象運転者の運行実績を着色などにより強調して重ねて表示したり、表形式で一覧表示したり、S18で算出した燃費貢献度の数値[km/L]を運転評価結果として出力する。
【0048】
また、サーバ40は該当する運転者の運行実績データを集計して、燃費、積載率、燃費貢献度を含む運行実績の日報をS20(S026)で作成する。作成した日報の内容は、ユーザ端末50の画面上に表示したり、紙の上に印刷した状態で出力される。
【0049】
なお、各車両の燃費の実績データについては、各車両に搭載した燃料センサが検出した燃料消費量から算出した値を用いることもできるし、一定区間走行毎の各車両の給油量に基づいて算出した値を用いることもできる。また、燃費の算出に必要な走行距離については、車速パルスの数や、位置情報の変化に基づいて把握できる。
【0050】
<運転者の運転評価に利用可能な出力データの例>
運転者の運転評価に利用可能な出力データの構成例を図8に示す。すなわち、サーバ40が図7中のS15~S18を実行した結果として、図8のような出力データを生成できる。
【0051】
図8に示した出力データの例では、評価対象の特定の運転者の運行実績データを解析した結果として、車両運行時の積載率(最大積載重量に対する実際の積載重量の比率:%)と、外気温補正済みの実燃費[km/L]と、燃費貢献度の数値[km/L]とが含まれるデータが生成されている。このような出力データの内容は、該当する運転者の日報の内容にも反映される。
【0052】
<外気温と平均燃費との関連の説明>
例えば、財団法人省エネルギーセンターの「ReCoo会員燃費データの季節変動」によると、1年のなかで燃費が良いのは5月頃と10月頃とされ、反対に燃費が悪いのは冬とされている。さらに、地域によっても燃費は変化すると言われている。例えば、温暖地では月別燃費の差は10%強なのに対し、寒冷地では月別燃費の差は30%弱に達すると言われている。また、燃費データの季節変動調査結果から下記の様に考えられる。
【0053】
・春、秋の燃費は良い。
・寒冷地は冬の落ち込みが大きく、夏の落ち込みはない。
・寒冷地では、月別燃費の差は30%弱に達する。
(考えられる原因:冬の低気温での暖房のためのアイドリングの増加、エンジンが温まるまでに使用する燃料の増加、雪道走行による燃費の悪化等)
・温暖地では冬の落ち込みは小さく、夏の落ち込みは比較的大きい。
・温暖地では、月別燃費の差は10%強で、全国平均と変わらない。
(夏のカーエアコン使用による燃費の悪化)
・日平均気温との相関をみると、概ね、20℃前後が最も燃費が良い。
【0054】
<燃費が悪くなる具体的な要因>
1.エアコンの利用。
2.低温時はガソリンが気化しにくい。
3.エンジンが冷えていると暖まるまでに余分に燃料を消費する。
4.低温時はエンジンオイルが硬くなり余分に燃料を消費する。
5.温度要因で空気密度が変化して燃費に影響する。
6.スタッドレスタイヤの影響で燃費が変動する。
【0055】
以上のように、本実施形態の運転評価システム100によれば、実際に荷物を輸送する車両の積載率が図2のように変動する場合であっても、積載率の変化に起因する燃費の変化を考慮したうえで、実燃費を改善するために各運転者が実際に貢献しているかどうかの運転評価を正しく行うことができる。
【0056】
また、運転評価システム100は図7に示した処理のように外気温の実測値を反映して燃費をS17で補正してから運転評価を実施するので、外気温の変動に起因する燃費の変動要因を排除してより正確な運転評価を行うことができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0058】
例えば、各車両10の車載器20から送信する運行実績データの中には、車両運行時の位置情報も含まれているので、運転評価の際にこの位置情報を活用することも可能である。例えば、温暖地、寒冷地のような地域要因で燃費が変動する影響を避けるために、図7中のS13でデータベース43から入力する実測値については、評価対象の地域と同等の地域で計測したデータのみに限定するように処理してもよい。
【0059】
上記と同様に、季節要因で燃費が変動する影響を避けるために、図7中のS13でデータベース43から入力する実測値については、評価対象のデータを計測した季節および時間帯と同等の季節および時間帯で計測したデータのみに限定するように処理してもよい。
なお、サーバ40が生成するデータについては、日付単位の度数の違いを複数の積載率についてグラフ化した運行実績データを更に出力してもよい。
【0060】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る運転評価装置および運転評価システムの特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両の実際の運行において収集された運行実績情報を取得する実績情報取得部(S021)と、
前記実績情報取得部が取得した運行実績情報に基づいて車両運行を評価する運行評価部(S023)と、
を有し、
前記運行実績情報は、車両運行毎の実際の積載率と関連のある実測積載情報を含み、
前記運行評価部は、車両毎の積載率と燃費との相関に基づいて燃費基準値を把握し(S11~S14)、前記実測積載情報に応じた実燃費と前記燃費基準値とを対比可能な状態で出力して各運転者の運行評価に利用する(S19)、
運転評価装置(サーバ40)。
【0061】
上記[1]の構成の運転評価装置によれば、実際に荷物を輸送する車両の積載率が変動する場合であっても、積載率の変化に起因する燃費の変化を考慮したうえで、実燃費を改善するために各運転者が実際に貢献しているかどうかの運転評価を正しく行うことができる。
【0062】
[2] 前記運行実績情報は、車両運行毎に計測された車両外部の温度と関連のある実測温度情報を含み、
前記運行評価部は、前記実測温度情報の違いを各運転者の運行評価に反映する(S16、S17)、
上記[1]に記載の運転評価装置。
【0063】
上記[2]の構成の運転評価装置によれば、実際の車両運行において検知された外気温の影響を運行評価に反映するので、外気温に起因する実燃費の変動を考慮したうえでより正確な運行評価を運転者毎に行うことができる。
【0064】
[3] 前記運行評価部は、前記運行実績情報の積載率と実燃費とを所定の期間内で平均化した結果を反映した基準値ライン(R2)を生成し、前記実測積載情報に応じた運転者毎の実燃費と前記基準値ラインとを対比可能な状態で表示する(S19)、
上記[1]又は[2]に記載の運転評価装置。
【0065】
上記[3]の構成の運転評価装置によれば、過去に蓄積した運行実績情報を平均化して生成した基準値ラインを利用するので、例えば同じ運送会社の社内における平均的な基準を用いて運転者毎の評価を行うことが可能になる。したがって、燃費の改善に実際に貢献している運転者とそれ以外の運転者との区別が容易になる。また、運転者毎の実燃費と前記基準値ラインとを表示することで、燃費の改善への各運転者の貢献の程度を視覚的に把握することが容易になる。
【0066】
[4] 評価対象の各車両(10)上に搭載可能な車載器(20)と、
前記各車両の実際の運行において収集された運行実績情報を取得可能なサーバ装置(サーバ40)と、
を備え、
前記車載器は、車両運行毎の実際の積載率と関連のある実測積載情報を送信する機能(S01)を有し、
前記サーバ装置は、前記各車載器から取得した運行実績情報に基づいて車両運行を評価する運行評価部(S023)を有し、
前記運行評価部は、車両毎の積載率と燃費との相関に基づいて燃費基準値(基準値ラインR2)を把握し、前記実測積載情報に応じた実燃費と前記燃費基準値とを対比可能な状態で出力して各運転者の運行評価に利用する(S19)、
運転評価システム。
【0067】
上記[4]の構成の運転評価システムによれば、実際に荷物を輸送する車両の積載率が変動する場合であっても、積載率の変化に起因する燃費の変化を考慮したうえで、実燃費を改善するために各運転者が実際に貢献しているかどうかの運転評価を正しく行うことができる。
【0068】
[5] 前記運行評価部は、前記運行実績情報の積載率と実燃費とを所定の期間内で平均化した結果を反映した基準値ライン(R2)を生成し、前記実測積載情報に応じた運転者毎の実燃費と前記基準値ラインとを対比した結果の数値を含む日報を出力する機能(S20)を有する、
上記[4]に記載の運転評価システム。
【0069】
上記[5]の構成の運転評価システムによれば、例えば運送会社の管理者やその会社の顧客(荷主)などは、出力された日報の内容から、該当する運転者が燃費の削減に実際に貢献しているか否かを容易に把握可能になる。
【符号の説明】
【0070】
10 車両
20 車載器
21 荷重センサ
22 外気温センサ
23 アンテナ
30 広域通信網
35 インターネット網
40 サーバ
41,42,43 データベース
50 ユーザ端末
100 運転評価システム
Ct 温度補正係数
D0 積載率の実績データ
D1 燃費・積載率の実績データ
R1,R2 基準値ライン
Ta 境界温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8