(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089193
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】耐電圧試験装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/16 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
G01R31/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204400
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】徳永 裕太
【テーマコード(参考)】
2G015
【Fターム(参考)】
2G015AA06
2G015BA01
2G015BA04
2G015CA05
2G015CA06
(57)【要約】
【課題】チャンバーのケーブル孔を通した結線作業の負担を軽減しつつ、高電圧負荷をかけた場合にケーブル孔内での放電を回避する。
【解決手段】耐電圧試験装置10は、ケーブル孔25を有し、供試体Sを配置可能なチャンバー12と、電源部14と、チャンバー12のケーブル孔25に配置される絶縁体からなるブロック32と、ブロック32内に配置される外部コネクタを有するとともに電源部14に接続されて電源部14による電圧を受ける外部配線28と、ブロック23内に配置されるとともに外部コネクタと電気的に接続される内部コネクタを有する一方で、供試体Sに接続されるチャンバー内配線29と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル孔を有し、供試体を配置可能なチャンバーと、
電源部と、
前記チャンバーの前記ケーブル孔に配置される絶縁体からなるブロックと、
前記ブロック内に配置される外部コネクタを有するとともに前記電源部に電気的に接続されて前記電源部による電圧を受ける外部配線と、
前記ブロック内に配置されるとともに前記外部コネクタと電気的に接続される内部コネクタを有する一方で、前記供試体に電気的に接続されるチャンバー内配線と、を備えている耐電圧試験装置。
【請求項2】
前記外部コネクタを接続可能な外側コネクタ部と、前記内部コネクタを接続可能な内側コネクタ部と、を有する金属導体が、前記ブロック内に配置されている、請求項1に記載の耐電圧試験装置。
【請求項3】
前記金属導体の前記外側コネクタ部と前記外部配線の前記外部コネクタとの接続部分を前記ブロック内の所定位置に決めるための外側絶縁体スペーサと、
前記金属導体の前記内側コネクタ部と前記チャンバー内配線の前記内部コネクタとの接続部分を前記ブロック内の所定位置に決めるための内側絶縁体スペーサと、を備えている請求項2に記載の耐電圧試験装置。
【請求項4】
前記ブロックの周囲に電磁シールドが設けられている、請求項1~3の何れか1項に記載の耐電圧試験装置。
【請求項5】
前記ブロックが、前記チャンバーの内面から内側に向けて突出している、請求項1~3の何れか1項に記載の耐電圧試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐電圧試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気製品、電気部品、半導体部品等において、使用電圧に対して十分な絶縁耐力があるかどうか、すなわち絶縁破壊をしないかどうかを確認する、あるいは、絶縁抵抗を測定するための耐電圧試験装置が知られている。耐電圧試験装置は、高電圧(たとえば1kV以上の高電圧)を発生する電源部と、電源部と供試体を互いに接続する配線と、を有し、供試体に高電圧を印加できるように構成されている。また、供試体が高温に晒された状態で試験を行って試験を加速させるべく、供試体をチャンバー内に配置することもある。この場合、チャンバーに設けられたケーブル孔を通して配線がチャンバー内に引き込まれる。
【0003】
配線をチャンバーのケーブル孔に通す場合には、下記特許文献1に開示されたケーブル接続治具80を用いることが可能かもしれない。この接続治具80は、
図6に示すように、外部配線を接続可能な外側端子81aが設けられた外端子台81と、チャンバー内配線を接続可能な内側端子82aが設けられた内端子台82と、チャンバーのケーブル孔84に挿通されるとともに両端子81a,82aを電気的に接続するコネクタ手段85と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたケーブル接続治具80は、外部配線を外側端子81aに接続する一方で、チャンバー内配線を内側端子82aに接続するだけで済むため、配線をケーブル孔84内に挿通させるための作業を回避できる。このため結線作業の負担を軽減できる。しかしながら、特許文献1のケーブル接続治具80は、供試体の環境試験を行う試験装置に設けられるものであるため、耐電圧試験で行われるような高電圧に対する対策までは施されていない。たとえば配線を接続するための端子81a,82aがむき出しになっているため、配線の接続部分からの放電が生ずる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チャンバーのケーブル孔を通した結線作業の負担を軽減しつつ、高電圧負荷をかけた場合にケーブル孔内での放電を回避できる耐電圧試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る耐電圧試験装置は、ケーブル孔を有し、供試体を配置可能なチャンバーと、電源部と、前記チャンバーの前記ケーブル孔に配置される絶縁体からなるブロックと、前記ブロック内に配置される外部コネクタを有するとともに前記電源部に電気的に接続されて前記電源部による電圧を受ける外部配線と、前記ブロック内に配置されるとともに前記外部コネクタと電気的に接続される内部コネクタを有する一方で、前記供試体に電気的に接続されるチャンバー内配線と、を備えている。
【0008】
本発明に係る耐電圧試験装置では、チャンバーのケーブル孔に絶縁体からなるブロックが配置されていて、外部配線とチャンバー内配線との接続部分を構成する外部コネクタ及び内部コネクタがこのブロック内に配置されている。このため、電源部から外部配線を通してチャンバー内配線に高電圧が印加される場合においても、前記接続部分での放電を回避できる。特に、チャンバーのケーブル孔の寸法が限られていることから、ケーブル孔に複数の配線を通す場合には、配線同士が近づく場合もあるが、その場合でも絶縁体からなるブロックの存在により、配線同士が互いに影響を及ぼし合うことを抑制し、また放電を防止することができる。このため、たとえば1kV以上(5kV以上あるいは10kV以上)の高電圧、または供試体の設計電圧の10倍以上の高電圧を供試体に印加する耐電圧試験を行うことも可能である。また、電源部と供試体とを接続するための配線を、外部配線とチャンバー内配線とに分けているため、外部配線及びチャンバー内配線のうち、劣化してしまった方の配線のみを交換することもできる。したがって、電源部と供試体を1つの配線で接続するような場合のように配線全体を交換しないといけないという事態を回避できる。
【0009】
前記外部コネクタを接続可能な外側コネクタ部と、前記内部コネクタを接続可能な内側コネクタ部と、を有する金属導体が、前記ブロック内に配置されていてもよい。
【0010】
この態様では、ブロック内に配置された金属導体を介して、外部配線とチャンバー内配線とが接続される。すなわち、ブロック内において外部配線とチャンバー内配線とを直接接続するのではないため、外部配線の外部コネクタ及びチャンバー内配線の内部コネクタをブロック内の奥まで差し込む必要がない。したがって、外部配線及びチャンバー内配線の結線作業の負担を低減できる。
【0011】
前記耐電圧試験装置は、前記金属導体の前記外側コネクタ部と前記外部配線の前記外部コネクタとの接続部分を前記ブロック内の所定位置に決めるための外側絶縁体スペーサと、前記金属導体の前記内側コネクタ部と前記チャンバー内配線の前記内部コネクタとの接続部分を前記ブロック内の所定位置に決めるための内側絶縁体スペーサと、を備えていてもよい。
【0012】
この態様では、外側絶縁体スペーサにより、金属導体と外部配線との接続部分がブロック内の所定位置に決められ、また、内側絶縁体スペーサにより、金属導体とチャンバー内配線との接続部分がブロック内の所定位置に決められる。このため、接続部分がブロック表面の近くに配置されることが防止される。したがって、接続部分からの放電を防止できる。
【0013】
前記ブロックの周囲に電磁シールドが設けられていてもよい。この態様では、チャンバーのケーブル孔の内周面に段差がある場合に、当該段差によって、外部配線、チャンバー内配線及びそれらの接続部分によって生ずる電界が不均一になる影響を抑制できる。
【0014】
前記ブロックは、前記チャンバーの内面から内側に向けて突出していてもよい。この態様では、チャンバー内配線とチャンバーの内面との間の絶縁距離をより長くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、チャンバーのケーブル孔を通した結線作業の負担を軽減しつつ、高電圧負荷をかけた場合にケーブル孔内での放電を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る耐電圧試験装置を側方から見た状態で示す断面図である。
【
図2】前記耐電圧試験装置を前方から見た図である。
【
図3】チャンバーの背面壁に設けられるブロックを説明するための図である。
【
図4】ブロックへの導電棒、外側絶縁体スペーサ、内側絶縁体スペーサの組み付けを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本実施形態に係る耐電圧試験装置は、電気部品等の供試体に高電圧を印加して、供試体が絶縁破壊しないかどうかを確認するための試験装置である。すなわち、供試体には絶縁部が含まれており、この絶縁部の耐電圧性を評価するために耐電圧試験装置が用いられる。
【0019】
図1及び
図2に示すように、耐電圧試験装置10は、供試体Sが配置される試験室TRを有するチャンバー12と、試験室TR内に配置された供試体Sに印加する電圧を発生させる電源部14と、を備えている。チャンバー12は、前面が開口した試験室TRを形成する槽本体12aと、試験室TRの前面開口を開閉する扉体12bと、槽本体12aに隣接する機械室16と、を有する。
【0020】
チャンバー12は、試験室TRを有するものであれば、どのようなタイプのチャンバー12でもよいが、本実施形態では、試験室TR内をたとえば100℃以上の温度環境やマイナスの温度環境に設定可能なチャンバーによって構成されている。試験室TR内の温度を設定するには、機械室16の前面に設けられた操作部16aで試験温度を設定することができる。
【0021】
電源部14は、たとえば10kV以上の直流電圧及び交流電圧の少なくとも一方を発生させるように構成されている。電源部14の一方の接続端には、第1導電材21が接続され、他方の接続端には、第2導電材22が接続される。そして、第1導電材21及び第2導電材22が、供試体Sにそれぞれ接続される。これにより、電源部14と供試体Sとの間に閉回路が形成される。このため、供試体Sの絶縁部が正常に機能している場合には閉回路に電流は流れないが、供試体Sが絶縁破壊すると閉回路に電流が流れることになる。このため、図略の電流計で電流の有無を監視することにより、供試体Sの耐電圧性を試験することができる。
【0022】
電源部14が直流電圧を発生させるものである場合には、第1導電材21が、供試体Sに向けて高電圧を印加するための導電体である印加側導電体となり、第2導電材22が、供試体Sに電流が流れた場合に当該電流を電源部14に流れさせるための導電体である非印加側導電体となる。一方、電源部14が交流電圧を発生させるものである場合には、第1導電材21及び第2導電材22は、何れも印加側導電体及び非印加側導電体となり得る。この場合であっても、導電材21,22の一方を接地する場合には、電源部14が直流電圧を発生させるものである場合と同様に、他方が印加側導体となる。たとえば、第2導電材22側を接地する場合、第1導電材21が、供試体Sに向けて高電圧を印加するための導電体である印加側導電体となり、第2導電材22が、供試体Sに電流が流れた場合に当該電流を電源部14に流れさせるための導電体である非印加側導電体となる。また、中間接地を設ける(第1導電材21及び第2導電材22とは別に基準電位を作る)場合には、第1導電材21及び第2導電材22が互いにプラスとマイナスを反転する形になるため、いずれも印加側導電体及び非印加側導電体となる。なお、本実施形態では、電源部14が直流電圧を発生させるものとして説明する。
【0023】
槽本体12aの背面壁12c及び側面壁12dには、第1導電材21又は第2導電材22を挿通させるためのケーブル孔25,26が設けられている。背面壁12cのケーブル孔25は、第1導電材21を挿通させるために用いられ、側面壁12dのケーブル孔26は、第2導電材22を挿通させるために用いられる。本実施形態では、電源部14が直流電圧を発生させる構成であるため、背面壁12cのケーブル孔25に印加側導電体となる第1導電材21が挿通され、側面壁12dのケーブル孔26に非印加側導電体となる第2導電材22が挿通されることとなる。なお、背面壁12cのケーブル孔25と側面壁12dのケーブル孔26とは、この逆の使い方をしてもよい。
【0024】
第1導電材21は、外部配線28とチャンバー内配線29と導電棒30(
図4参照)とを含んでいる。外部配線28は、電源部14に接続されて電源部14が発生する電圧を受ける配線であり、チャンバー12の外側に設けられる。外部配線28は、芯線、絶縁材、シールド及び被覆を有するシールド線からなる。外部配線28の電源部14とは逆側の先端には、外部コネクタ28aが設けられている(
図4参照)。
【0025】
図1及び
図2に示す例では、一度に12個の供試体Sに高電圧を印加できる構成であるため、電源部14には、12本の外部配線28が並列で接続されることになる。なお、耐電圧試験装置10は、複数の供試体Sを一度に試験するものに限られず、1つの供試体Sの試験を行う構成であってもよい。
【0026】
チャンバー内配線29は、試験室TR内に配置される配線であり、供試体Sに電気的に接続される。チャンバー内配線29は、芯線及び被覆を有する線材からなる。なお、チャンバー内配線29もシールド線で構成してもよい。
【0027】
チャンバー内配線29も12本設けられており、各チャンバー内配線29の一端には、それぞれ内部コネクタ29aが設けられ(
図4参照)、各チャンバー内配線29の他端には、供試体Sに電気的に接続するためのクリップ状の接続部29bが取り付けられている。すなわち、チャンバー内配線29は、供試体Sに直接的に接続される。ただし、これに代え、チャンバー内配線29は、供試体Sに対して間接的に接続されてもよい。たとえば、チャンバー内配線29は、図外の別の配線を介して供試体Sに接続されてもよい。
【0028】
導電棒30は、外部配線28とチャンバー内配線29とを互いに電気的に接続するための金属導体であり、外部配線28の外部コネクタ28aを接続可能な外側コネクタ部30aが一方の端部(外端部)に設けられ、チャンバー内配線29の内部コネクタ29aを接続可能な内側コネクタ部30bが他方の端部(内端部)に設けられている。
【0029】
導電棒30は、チャンバー12の背面壁12cに形成されたケーブル孔25内に配置される。具体的には、ケーブル孔25には、絶縁体からなるブロック32が配置されているため、導電棒30は、このブロック32内に埋め込まれている。このブロック32により、試験室TRの内部と試験室TRの外部との間をケーブル孔25を通して空気が行き来することが防止される。ブロック32は、テフロン(登録商標)、エンジニアリングプラスチック、シリコン系材料等の耐熱性のある絶縁性の素材で構成されている。このため、導電棒30及び接続部分からチャンバー12の背面壁12cの内面への気中放電を含む放電を回避できる。
【0030】
ブロック32は、ケーブル孔25の形状に対応した断面を有しており、
図1及び
図2の例では、円柱状に形成されている。ブロック32の軸方向の長さは、背面壁12cの厚みよりも長くなっている。このため、ブロック32は、背面壁12cの内面よりも内側に突出するように配置されている。なお、ブロック32は耐熱パテによって背面壁12cに固定されているが、ブロック32の固定方法はこれに限られるものではない。
【0031】
図3及び
図4に示すように、導電棒30は、ブロック32を軸方向(背面壁12cの厚み方向)に貫通する貫通孔32a内に配置されている。導電棒30の長さは、ブロック32における軸方向の長さよりも短い。このため、導電棒30の外端部に設けられた外側コネクタ部30aは、ブロック32における外側の端面よりも所定距離だけブロック32内側に位置し、導電棒30の内端部に設けられた内側コネクタ部30bは、ブロック32における内側の端面よりも所定距離だけブロック32内側に位置している。すなわち、外側コネクタ部30a及び内側コネクタ部30bは、何れもブロック32内に収容されている。
【0032】
貫通孔32aの両端部はそれぞれ拡径されており、軸方向の外端において拡径された部位には、外側絶縁体スペーサ33が配置され、軸方向の内端において拡径された部位には、内側絶縁体スペーサ34が配置されている。外側絶縁体スペーサ33及び内側絶縁体スペーサ34は何れも絶縁体で構成されている。
【0033】
外側絶縁体スペーサ33及び内側絶縁体スペーサ34は何れも円筒状に形成されており、外側絶縁体スペーサ33には外部配線28が挿通され、内側絶縁体スペーサ34にはチャンバー内配線29が挿通される。
【0034】
外側絶縁体スペーサ33の内端部には、導電棒30の外側コネクタ部30aが当接し、内側絶縁体スペーサ34の外端部(ブロック32内に位置する端部)には、導電棒30の内側コネクタ部30bが当接している。すなわち、外側絶縁体スペーサ33がブロック32内に固定されていることにより、外側コネクタ部30aが試験室TR外側に向けて移動することが規制され、また、内側絶縁体スペーサ34がブロック32内に固定されていることにより、内側コネクタ部30bが試験室TR内側に向けて移動することが規制されている。したがって、導電棒30の外側コネクタ部30a及び内側コネクタ部30bは、いずれもブロック32の軸方向端面から所定距離だけブロック32内側に入り込んだ位置に配置されることが維持される。
【0035】
ブロック32の軸方向外側の端面には、外側押え板37が取り付けられ、ブロック32の軸方向内側の端面には、内側押え板38が取り付けられている。外側押え板37は、外側絶縁体スペーサ33が抜け出ないように保持するために用いられ、内側押え板38は、内側絶縁体スペーサ34が抜け出ないように保持するために用いられている。外側押え板37は、背面壁12cに固定されることによって所定の位置に固定されてもよく、あるいは、図外の部材に固定されることによって所定の位置に固定されてもよい。
【0036】
ブロック32の周囲には、アルミテープ等からなる電磁シールド39が巻き付けられ、この電磁シールド39の外側には、絶縁性を有し且つ耐熱性のある被覆40が施されている。ケーブル孔25の内周面には、背面壁12cの厚み方向の一部が内側に出っ張るように凹凸が形成されていることがあるが、ブロック32の周囲が電磁シールド39で覆われることにより、印加側導電体に高電圧が印加されるときに生ずる電界が、凹凸の影響を受けてしまうことを防止できる。電磁シールド39は、結束バンド41によってブロック32の周面に固定され、また被覆40は、耐熱バンド42によって電磁シールド39の外面に固定されている。
【0037】
チャンバー12の側面壁12dに形成されたケーブル孔26は、
図1及び
図2に示すように、非印加側導電体である第2導電材22を挿通可能な栓部材44で塞がれている。すなわち、本実施形態では、電源部14が直流電圧を発生させるものとして構成されているため、非印加側導電体である第2導電材22には高電圧がかからない。したがって、背面壁12cのケーブル孔25に設けられるようなブロック32を配置しなくてもよい。一方、電源部14が交流電圧を印加可能に構成されている場合には、チャンバー12の側面壁12dに形成されたケーブル孔26にも、絶縁体からなるブロック(図示省略)が配置されてもよい。このブロックは、背面壁12cのケーブル孔25に設けられたブロック32と同様な構成とされるのが好ましい。なお、背面側とは異なり、導電棒、絶縁体スペーサが設けられない構成としてもよい。すなわち、ブロック32内で導電棒を介することなく直接配線同士の接続を行うように構成されていてもよい。
【0038】
試験室TR内には、供試体Sを配置するための棚板46が設けられており、供試体Sは、この棚板46の上に配置された絶縁部材47の上に載置される。なお、供試体Sは、絶縁材からなる箱の中に貯溜された絶縁性の液中に浸されてもよい。
【0039】
棚板46の上には、チャンバー内配線29を所定位置に保持するための槽内配線治具49が設けられている。槽内配線治具49は、絶縁材で構成されており、たとえば、一方向に細長い直方体形状に形成されていてもよい。そして、
図5にも示すように、槽内配線治具49の上面には、長さ方向に延びるように切り込み49aが設けられている。この切り込み49aは、チャンバー内配線29の数に応じた数だけ設けられており、各切り込み49aは互いに平行に延びている。各チャンバー内配線29はそれぞれ異なる切り込み49aに埋め込まれる。これにより、チャンバー内配線29は互いに間隔を保った状態で所定の位置に保持されることになる。また、チャンバー内配線29は部分的に絶縁材の中に埋め込まれることになるため、チャンバー内配線29から棚板46への気中放電を含む放電を抑制できる。なお、
図5には、各切り込み49aの長さが異なるように形成された例を示しているが、これに限られず、何れの切り込み49aも同じ長さに形成されていてもよい。また、槽内配線治具49を省略してもよい。
【0040】
本実施形態に係る耐電圧試験装置10を用いて、供試体Sの耐電圧試験を行うには以下の順序で試験準備及び試験を行うことができる。
【0041】
まず、供試体Sを試験室TR内の所定位置に配置するとともに、供試体Sを電源部14と電気的に接続する。すなわち、外部配線28(第1導電材21)を電源部14の一方の接続端(正極の接続端)に接続するとともに、外部配線28の外部コネクタ28aをブロック32内に配置された導電棒30の外側コネクタ部30aに接続する。また、チャンバー内配線29を供試体Sの一方の端子に接続するとともに、チャンバー内配線29の内部コネクタ29aを導電棒30の内側コネクタ部30bに接続する。このとき、チャンバー内配線29の一部は、槽内配線治具49の切り込み49aに埋め込まれる。また、第2導電材22を供試体Sの他方の端子に接続するとともに、電源部14の他方の接続端(負極の接続端)に接続する。
【0042】
続いて、チャンバー12を起動して、試験室TRを所定の温度環境に調整する。試験室TRが所定の温度環境に調整されると、電源部14を起動し、供試体Sに所定電圧を印加する。このとき、試験目的に応じて、所定時間だけ電圧を印加したり、供試体Sが絶縁破壊するまで電圧を印加したりする。そして、試験終了の条件が満たされると、試験を終える。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る耐電圧試験装置10では、チャンバー12のケーブル孔25に絶縁体からなるブロック32が配置されていて、外部配線28とチャンバー内配線29との接続部分を構成する外部コネクタ28a及び内部コネクタ29aがこのブロック32内に配置されている。このため、電源部14から外部配線28を通してチャンバー内配線29に高電圧が印加される場合においても、前記接続部分での放電を回避できる。特に、チャンバー12のケーブル孔25の寸法が限られていることから、ケーブル孔25に複数の配線を通す場合には、配線同士が近づく場合もあるが、その場合でも絶縁体からなるブロック32の存在により、配線同士が互いに影響を及ぼし合うことを抑制し、また放電を防止することができる。このため、たとえば1kV以上(5kV以上あるいは10kV以上)の高電圧、または供試体Sの設計電圧の10倍以上の高電圧を供試体Sに印加する耐電圧試験を行うことも可能である。また、ケーブル孔25がブロック32によって塞がれるため、チャンバー12内の温度環境、湿度環境等をチャンバー12の外部の環境から隔離することができる。また、電源部14と供試体Sとを接続するための配線を、外部配線28とチャンバー内配線29とに分けているため、外部配線28及びチャンバー内配線29のうち、劣化してしまった方の配線のみを交換することもできる。したがって、電源部14と供試体Sを1つの配線で接続するような場合のように配線全体を交換しないといけないという事態を回避できる。
【0044】
また本実施形態では、ブロック32内に配置された導電棒30を介して、外部配線28とチャンバー内配線29とが接続される。すなわち、ブロック32内において外部配線28とチャンバー内配線29とを直接接続するのではないため、外部配線28の外部コネクタ28a及びチャンバー内配線29の内部コネクタ29aをブロック32内の奥まで差し込む必要がない。したがって、外部配線28及びチャンバー内配線29の結線作業の負担を低減できる。
【0045】
また本実施形態では、外側絶縁体スペーサ33により、導電棒30と外部配線28との接続部分がブロック32内の所定位置に決められ、また、内側絶縁体スペーサ34により、導電棒30とチャンバー内配線29との接続部分がブロック32内の所定位置に決められる。このため、接続部分がブロック32表面の近くに配置されることが防止される。したがって、接続部分からの放電を防止できる。
【0046】
また本実施形態では、ブロック32の周囲に電磁シールド39が設けられているため、チャンバー12のケーブル孔25の内周面に段差がある場合に、当該段差によって、外部配線28、チャンバー内配線29及びそれらの接続部分によって生ずる電界が不均一になる影響を抑制できる。
【0047】
また本実施形態では、ブロック32が、チャンバー12の内面から内側に向けて突出しているため、チャンバー内配線29とチャンバー12の内面との間の絶縁距離をより長くすることができる。
【0048】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。たとえば、前記実施形態では、第1導電材21が外部配線28とチャンバー内配線29と導電棒30とを含む構成となっているが、導電棒30を省略することが可能である。すなわち、外部配線28とチャンバー内配線29とを、ブロック32内で直接接続するようにしてもよい。また、導電棒30に代え、導電性の線材(金属導体)で構成されてもよい。
【0049】
また、導電棒30が設けられる場合であっても、外側コネクタ部30a及び内側コネクタ部30bの少なくとも一方が放電しにくいようであれば、外側絶縁体スペーサ33及び内側絶縁体スペーサ34の少なくとも一方を省略することも可能である。
【0050】
また、ブロック32内の導電棒30(第1導電材21)によって生ずる電界が、チャンバー12の背面壁12c及びケーブル孔25を構成する部材の影響を受けないようであれば、ブロック32の周囲の電磁シールド39を省略してもよい。この場合、被覆40も省略可能である。
【0051】
また、ブロック32が背面壁12cの内面から内側に向けて突出する大きさに形成されているが、これに限られない。たとえば、ブロック32の内端面が背面壁12c(チャンバー12)の内面と略面一の状態になるように配置されていてもよい。また、ブロック32が背面壁12cの外面から外側に向けて突出する大きさに形成されて配置されているが、これに限らない。たとえば、ブロック32の外端面が背面壁12cの外面と略面一の状態になるように配置されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 :耐電圧試験装置
12 :チャンバー
14 :電源部
25 :ケーブル孔
28 :外部配線
28a :外部コネクタ
29 :チャンバー内配線
29a :内部コネクタ
30 :導電棒(金属導体の一例)
30a :外側コネクタ部
30b :内側コネクタ部
32 :ブロック
33 :外側絶縁体スペーサ
34 :内側絶縁体スペーサ
39 :電磁シールド
S :供試体