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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089198
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240626BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B29C45/76
B22D17/32 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204405
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木束 裕太
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JL01
4F206JL03
4F206JP17
4F206JP23
4F206JP27
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】射出成形機において、ユーザが行う操作に関連付けられた情報の共有を円滑化することである。
【解決手段】複数種類の設定項目ごとに設定された設定値に基づいて射出成形処理を行う射出成形機である。射出成形機は、所定の設定項目に対して設定値を設定するための設定画面を表示可能な表示装置と、所定の設定項目に関連付けられたオブジェクトを表示装置に表示させる制御装置とを備える。制御装置は、オブジェクトがユーザによって選択されたとき所定の設定項目に対して設定値を設定し、ユーザによって入力された情報であって所定の設定項目と関連付けられた入力情報をオブジェクトとともに表示装置に表示させる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の設定項目ごとに設定された設定値に基づいて射出成形処理を行う射出成形機であって、
所定の設定項目に対して設定値を設定するための設定画面を表示可能な表示装置と、
前記所定の設定項目に関連付けられたオブジェクトを前記表示装置に表示させる制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記オブジェクトがユーザによって選択されたとき、前記所定の設定項目に対して設定値を設定し、
ユーザによって入力された情報であって、前記所定の設定項目と関連付けられた入力情報を前記オブジェクトとともに前記表示装置に表示させる、射出成形機。
【請求項2】
前記入力情報を前記所定の設定項目と関連付けて記憶する記憶装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記オブジェクトを表示する命令を受け付けた場合、前記所定の設定項目と関連付けられた前記入力情報を前記記憶装置から取得し、
前記入力情報を含む表示領域を前記オブジェクトとともに前記表示装置に表示させる、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記入力情報の全てを前記表示領域内に表示することができない場合、前記表示領域内に前記入力情報の全てが表示されていないことを表示する、請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記制御装置は、第1権限または第2権限をユーザごとに設定し、
前記第1権限は、所定の範囲の操作および設定が許可される権限であり、
前記第2権限は、前記所定の範囲よりも広い範囲の操作および設定が許可される権限であり、
前記制御装置は、前記入力情報が前記第1権限を有するユーザによって入力された場合、前記表示装置に表示可能ではない状態で前記入力情報を前記記憶装置に記憶させ、
前記第2権限を有するユーザによって前記入力情報の内容が承認された場合、前記入力情報の状態を前記表示装置に表示可能である状態に変化させる、請求項2または請求項3に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第2権限が設定されたユーザによって前記入力情報が入力された場合、前記表示装置に表示可能である状態で前記入力情報を前記記憶装置に記憶させる、請求項4に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記入力情報を編集可能である態様で表示する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記オブジェクトは、テンキーによって入力された数字を決定するボタン、またはリストボックスによって表示されている選択項目である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項8】
射出材料を加熱するヒータをさらに備え、
前記所定の設定項目に設定された設定値は、前記ヒータの目標温度、前記ヒータの制御手法、前記ヒータに電力を供給するか否かのうちのいずれか1つである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の設定項目ごとに設定された設定値に基づいて、プラスチックの樹脂等を基材とする成形品を成形する射出成形機が工場などに設置されている。特許文献1(特開2014-8655号公報)には、タッチパネルを備えた射出成形機が開示されている。
【0003】
射出成形機は、工場に勤務する複数のユーザによって操作される。ユーザは、タッチパネルを介して、射出成形機の動作状態の確認、成形条件に関する設定などの種々の操作を行う。このような射出成形機では、全てのユーザが操作するタッチパネルに対して、紙媒体のメモ等が貼り付けられることにより、複数のユーザ間における情報共有が行われる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-8655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のユーザ間で情報共有を行う手段として、共有すべき情報をテキスト形式のデータとして射出成形機内に保存するという手段も考えられる。入力された共有情報には、全てのユーザに対して共有されるべき情報と、特定の操作を行うユーザに対してのみ共有されるべき情報とが含まれ得る。特定の操作を行おうとするユーザは、特定の操作を行う前に、特定の操作に関連する共有情報が存在するか否かを確認する必要があるため、ユーザの作業負担は増大してしまう。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、射出成形機において、ユーザが行う操作に関連付けられた情報の共有を円滑化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る射出成形機は、複数種類の設定項目ごとに設定された設定値に基づいて射出成形処理を行う射出成形機である。射出成形機は、所定の設定項目に対して設定値を設定するための設定画面を表示可能な表示装置と、所定の設定項目に関連付けられたオブジェクトを表示装置に表示させる制御装置とを備える。制御装置は、オブジェクトがユーザによって選択されたとき、所定の設定項目に対して設定値を設定し、ユーザによって入力された情報であって、所定の設定項目と関連付けられた入力情報をオブジェクトとともに表示装置に表示させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る射出成形機によれば、ユーザが行う操作に関連付けられた情報の共有を円滑化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】射出成形機の外観図である。
図2】射出成形機の概略ブロック図である。
図3】表示装置に表示される画面を説明するための図である。
図4】ヒータの温度設定を説明するための図である。
図5】ヒータの制御手法の設定を説明するための図である。
図6】ヒータのオンオフ制御の設定を説明するための図である。
図7】ヒータの制御手法の設定における変形例を示す図である。
図8】設定項目とオブジェクトとを関連付けるデータベースの一例を示す図である。
図9】メモ内容を記憶するデータベースの一例を示す図である。
図10】決定ボタンおよびメモ内容をともに表示するための処理手順を示すフローチャートである。
図11】メモ内容の新規入力の処理手順を示すフローチャートである。
図12】メモ内容の承認の処理手順を示すフローチャートである。
図13】メモ内容の表示例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
[実施の形態]
<射出成形機の構成>
以下では、図1を用いて射出成形機100について説明する。本実施の形態の射出成形機100は、複数種類の設定項目ごとに設定された設定値に基づいて射出成形処理を行う。複数種類の設定項目は、たとえば、射出材料を加熱するヒータの温度、ヒータの制御方法、モータの回転速度などの様々な種類の設定項目を含む。
【0012】
本実施の形態の射出成形機100は、複数のユーザから操作を受け付ける。本実施の形態における射出成形機100では、ユーザの認証処理を行い、ユーザごとに操作および設定が許可される範囲が定められている。以下では、図1を用いて、射出成形機100の構成を説明する。
【0013】
図1は、射出成形機100の外観図である。射出成形機100は、XY平面上に載置されている。XY平面に垂直な方向をZ軸方向とする。以下では、図1におけるZ軸の正方向を上面側または上方、負方向を下面側または下方と称する場合がある。なお、図1に示される射出成形機100は横型の射出成形機として示されているが、本実施の形態の射出成形機100は横型に限られず、竪型の射出成形機であってもよい。
【0014】
射出成形機100によって実行される射出成形処理は、型閉工程、射出工程、保圧工程、型開工程、冷却工程、突出工程、および可塑化工程を含む。射出成形機100は、上記の射出成形処理のサイクルを繰り返し実行する。射出成形機100は、種々の形状、材質の成形品を成形可能であり、成形品の形状および材質の種類に応じた射出成形処理を行う。
【0015】
射出成形機100は、金型を型締めする型締装置10と、射出材料を溶融して射出する射出装置20と、操作盤30とを備える。型締装置10は、ベッド11のZ軸の正方向側に配置されている。射出装置20は、基台21のZ軸の正方向側に配置されている。型締装置10は、射出装置20に対して、X軸の負方向側に配置されている。
【0016】
<型締装置>
本実施の形態の型締装置10は、固定盤12と、型締ハウジング13と、可動盤14と、タイバー15と、型締機構16と、金型17,18と、ボールねじ19と、サーボモータ80C,80Dと、ベッド11とを備える。ベッド11は、固定盤12、型締ハウジング13、可動盤14等を保持する。型締ハウジング13および可動盤14の各々は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能に構成されている。
【0017】
タイバー15は、固定盤12と型締ハウジング13との間に配置され、固定盤12と型締ハウジング13とを連結する。図1における射出成形機100は、4本のタイバー15を有する。なお、射出成形機100が有するタイバー15の数は、4本に限られず、たとえば5本以上であってもよい。
【0018】
可動盤14は、固定盤12と型締ハウジング13との間でX軸方向にスライド可能に構成される。型締機構16は、型締ハウジング13と可動盤14との間に設けられる。本実施の形態における型締ハウジング13は、トグル機構を含んで構成される。なお、型締機構16は、直圧式の型締機構を含んで構成されてもよい。直圧式の型締機構とは、すなわち型締シリンダを意味する。
【0019】
サーボモータ80Cは、型締ハウジング13内に設けられている。サーボモータ80Cは、ボールねじ19を介して型締機構16を駆動させる。ボールねじ19は、サーボモータ80Cからの回転運動を直線運動に変換して型締機構16を駆動させる。金型17,18は、固定盤12と可動盤14との間に設けられている。金型17,18は、型締機構16が駆動することにより開閉される。すなわち、金型17はボールねじ19によって可動する金型であり、金型18は固定盤12によって固定されている金型である。
【0020】
金型17,18とが離れている状態から密着する状態へと移行する工程を「型閉工程」と称する。また、金型17,18とが密着している状態から離れている状態へと移行する工程を「型開工程」と称する。サーボモータ80Cは、型閉工程および型開工程に用いられるモータである。
【0021】
射出成形機100は、型開工程の後に「突出工程」と称される工程を行う。突出工程は、金型17,18内に充填された後に固化された樹脂などの射出材料を金型17から取り外す工程である。具体的には、サーボモータ80Dの回転によって図示されないピンなどが突出することによって、金型17に密着している成形品は取り外される。可動盤14内に設けられているサーボモータ80Dは、突出工程に用いられるモータである。
【0022】
<射出装置>
射出装置20は、シリンダ22と、スクリュ23と、駆動機構24と、ホッパ25と、射出ノズル26と、ノズルタッチ装置27と、サーボモータ80A,80Bと、ヒータH1,H2,H3と、温度センサSr1,Sr2,Sr3とを備える。
【0023】
シリンダ22は、内部に射出材料を混練するスクリュ23を有する。シリンダ22は、ノズル側とホッパ側とに端部を有する円柱形状を有する。射出成形機100は、スクリュ23を用いて「可塑化工程」と称される工程を行う。可塑化工程は、シリンダ22による加熱とスクリュ23の回転とによって、射出する樹脂を混錬する工程である。
【0024】
駆動装置24内のサーボモータ80BはX軸方向を中心軸としてスクリュ23を回転させる。すなわち、サーボモータ80Bは可塑化工程に用いられるモータである。射出成形機100は「射出工程」と称される工程と「保圧工程」と称される工程とを行う。射出工程は、可塑化工程によって可塑化された樹脂を金型17,18内へと射出する工程である。
【0025】
保圧工程とは、射出工程によって射出された樹脂を金型17,18内に保持するために圧力を加える工程である。サーボモータ80Aの駆動によって、スクリュ23はX軸方向の負方向側にスライドする。これにより、可塑化された樹脂は金型17,18内へと射出される。サーボモータ80Aは射出工程または保圧工程に用いられるモータである。
【0026】
ホッパ25は、シリンダ22のZ軸の正方向側に設けられており、可塑化前の粒形状の射出材料を格納している。ホッパ25に格納されている射出材料は、スクリュ23の駆動により、シリンダ22の内部へと運搬される。
【0027】
ヒータH1,H2,H3は、シリンダ22の一部分を覆うバンドヒータである。射出材料は、ヒータH1,H2,H3から加熱され、混練される。温度センサSr1,Sr2,Sr3は、ヒータH1,H2,H3によって加熱される領域の温度をそれぞれ測定する。温度センサSr1,Sr2,Sr3は、たとえば、熱電対である。制御装置40は、温度センサSr1,Sr2,Sr3の検出温度を取得し、取得した検出温度に基づいてヒータH1,H2,H3をそれぞれ制御する。
【0028】
混練された射出材料は、射出ノズル26へと運搬される。ノズルタッチ装置27は、射出装置20をX軸方向にスライドさせて、射出ノズル26を金型18のスプルーブッシュに接触させる。これにより、射出材料は、金型18へと注入される。
【0029】
<操作盤>
操作盤30は、射出成形処理に関連する情報を表示し、ユーザからの操作を受け付ける。操作盤30は、制御装置40と電気的に接続されている。図1の例では、操作盤30は、射出成形機100のY軸の負方向側に設けられている。ある局面では、操作盤30は、射出成形機100と別体として設けられてもよく、たとえば、射出成形機100が配置されている部屋と異なる部屋に配置されてもよい。
【0030】
操作盤30は、表示装置31と入力装置32とを備える。表示装置31は、典型的には、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。入力装置32は、たとえば、複数のボタンおよびマウスを含んで構成され得る。ユーザは、マウスを移動させることにより表示装置31に示されているポインタを移動させることができる。ある局面では、表示装置31および入力装置32はタッチパネルとして一体的に設けられてもよい。また、操作盤30は、マイクおよびスピーカを含み、音声を用いてユーザからの操作を受け付けてもよい。
【0031】
<射出成形機の概略ブロック図>
図2は、射出成形機100の概略ブロック図である。図2に示されるように、本実施の形態における射出成形機100は、ヒータH1~H3と、温度センサSr1~Sr3と、操作盤30と、制御装置40と、サーボモータ80A~80Dとを備える。
【0032】
制御装置40は、制御部41と、入力インターフェイス42と、出力インターフェイス43と、記憶装置44とを備える。制御部41は、CPU41aとメモリ41bとを備える。
【0033】
CPU41aは、ROM(Read Only Memory)に格納されているプログラムをRAM(Random Access Memory)に展開して実行する。メモリ41bは、ROMおよびRAMを含み、CPU41aにより実行されるプログラム等を記憶する。
【0034】
ある局面では、制御部41は、専用のハードウェア回路により構成され得る。すなわち、制御部41は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等により実現され得る。また、制御部41は、プロセッサおよびメモリ、ASIC、FPGA等を適宜組み合わせて実現されてもよい。記憶装置44は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Flash Solid State Drive)等を含んで構成され得る。
【0035】
制御部41は、入力インターフェイス42および出力インターフェイス43を介して、ネットワークNWと接続する。制御部41は、ネットワークNWを介して、外部機器と接続可能である。
【0036】
制御部41は、出力インターフェイス43を介してヒータH1~H3、サーボモータ80A~80D、および操作盤30と接続されている。すなわち、制御装置40は、表示装置31の表示内容を制御する。制御部41は、入力インターフェイス42を介して、温度センサSr1~Sr3および入力装置32と接続されている。
【0037】
<設定画面>
図3は、表示装置31に表示される画面DS1を説明するための図である。画面DS1は、動作監視画面R1と、設定画面R2とを含む。動作監視画面R1は、射出成形機100の状態をリアルタイムで示す画面の一例である。図3に示されているように、動作監視画面R1には、たとえば、サーボモータ80A~80Dの回転速度、シリンダ内の圧力、温度センサSr1,Sr2,Sr3の検出温度などの射出成形機100における動作状態を示す数値が表示されている。図3における動作監視画面R1は、画面構成の例示を目的としているため、動作状態を示す数値として実際の数値ではなく「0」が表示されている。
【0038】
設定画面R2は、シリンダ22におけるヒータH1,H2,H3に関する設定を行うための画面である。設定画面R2は、リストボックスLiB1、ボタンBt1,Bt2,Bt3、テキストボックスTxB1~TxB3を含む。以下では、リストボックス、ボタン、テキストボックス、およびラジオボタンなどのユーザによって選択可能な画面内の構成を「オブジェクト」と称する。
【0039】
ユーザは、入力装置32の一例であるマウスを用いて、表示装置31に表示されているポインタの位置を操作する。以下では、特定のオブジュクトにポインタが重畳されている状態でマウスがクリックされることを「特定のオブジェクトを選択する」と称する。なお、表示装置31および入力装置32がタッチパネルとして構成されている場合、表示装置31に示されている特定のオブジェクトがユーザの指でタッチされることが「特定のオブジェクトを選択する」ことに対応する。
【0040】
テキストボックスTxB1~TxB3は、ヒータH1~H3の目標温度を設定するためのテキストボックスである。射出成形機100では、テキストボックスTxB1~TxB3に入力された温度をヒータH1~H3の目標温度としてそれぞれ設定する。ヒータH1~H3の目標温度は、本開示における「所定の設定項目」の一例に対応し得る。また、図3のテキストボックスTxB1~TxB3内に表示されている実際の温度(210.0℃、200.0℃、および200.0℃)は、本開示における「設定値」の一例に対応し得る。
【0041】
リストボックスLiB1は、ヒータH1~H3の制御手法に関する設定値を設定するためのリストボックスである。射出成形機100では、ヒータH1~H3の制御手法として「PID(Proportional-Integral-Differential)制御」と「同期昇温制御」とをリストボックスLiB1を用いてユーザに決定させることができる。図3に示される例では、射出成形機100にはヒータH1~H3の制御手法として「PID制御」が設定されている。ヒータH1~H3の制御手法は、本開示における「所定の設定項目」の一例に対応し得る。また、「PID制御」または「同期昇温制御」は、本開示における「設定値」の一例に対応し得る。
【0042】
ボタンBt1~Bt3は、ヒータH1~H3のオンオフ制御を設定するためのボタンである。換言すれば、ボタンBt1~Bt3は、ヒータH1~H3に電力を供給するか否かを定めるためのボタンである。各ボタンBt1~Bt3内の円形状のオブジェクトが点灯している場合、ヒータH1~H3はオン状態であり、円形状のオブジェクトが点灯していない場合、ヒータH1~H3はオフ状態である。図3に示される例では、ヒータH1~H3は全てオン状態であり、ヒータH1~H3には電力が供給されている。ヒータH1~H3のオンオフ制御は、本開示における「所定の設定項目」の一例に対応し得る。また、「オン状態」または「オフ状態」は、本開示における「設定値」の一例に対応し得る。
【0043】
このように、射出成形機100では、設定画面R2からヒータH1~H3に関する種々の設定を行うことができる。また、射出成形機100は、設定画面R2の他に、たとえばサーボモータ80A~80Dに関する設定が可能な画面を別途表示できる。以下では、「設定」という場合には、データの更新、追加、変更、削除のいずれかを含む。
【0044】
<各設定値の設定に関する情報共有>
以下では、図4図6を用いて上述で説明した設定項目の設定方法の具体例を説明する。図4は、ヒータH1の温度設定を説明するための図である。図4には、画面DS2が表示されている。画面DS2は、図3に示されているテキストボックスTxB1がユーザに選択されることに基づいて画面DS1から遷移する画面である。
【0045】
画面DS2には、動作監視画面R1、設定画面R2に加えて、テンキー画面Cu1が表示されている。テンキー画面Cu1は、ヒータH1の目標温度を設定するための画面である。テンキー画面Cu1は、動作監視画面R1に重畳した状態で表示されている。
【0046】
ユーザは、テンキー画面Cu1に表示されている数字を選択してヒータH1の目標温度を設定する。決定ボタンDBt1は、ユーザが入力した数字の入力を確定するボタンであって、「Enter」という文字が付されている。たとえば、テンキー内の数字が選択されることによって「200」が入力された後に、決定ボタンDBt1が選択されることによって、ヒータH1の目標温度は「200℃」に設定される。
【0047】
このように、決定ボタンDBt1はヒータH1の目標温度の設定を決定するボタンである。制御装置40は、表示装置31に表示された決定ボタンDBt1がユーザによって選択されたとき、ヒータH1の目標温度を設定する。
【0048】
図4に示されているように、本実施の形態における制御装置40は、ヒータH1の目標温度の設定を決定する決定ボタンDBt1とともに表示領域MR1を表示する。表示領域MR1は、共有されるべき情報としてユーザから入力されたデータを表示する領域である。以下では、ユーザから入力された共有情報を「メモ内容」と称する場合がある。
【0049】
図4の例では、「メモ:ヒータH1の目標温度変更は禁止。」というテキスト形式のメモ内容が表示されている。なお、メモ内容は、テキスト形式のデータに限られず、画像データ、動画データ、音声データなどであってもよく、これらの組合せであってもよい。
【0050】
「メモ:ヒータH1の目標温度変更は禁止。」というテキスト形式のデータは、射出成形機100を使用する複数のユーザのうちの1人によって入力されたデータである。以下では、メモ内容を入力したユーザを、「入力者」と称する場合がある。
【0051】
図3,4の例において、ヒータH1の目標温度を設定するためテキストボックスTxB1がユーザによって選択されたとき、制御装置40は「メモ:ヒータH1の目標温度変更は禁止。」というメモ内容を表示する。これにより、入力者以外のユーザは、ヒータH1の目標温度の設定変更が禁止されていることを把握することができる。このように、射出成形機100では、ヒータH1の目標温度の設定変更が禁止されていることを複数のユーザ間において情報共有させることができる。
【0052】
また、図4に示されるように、「メモ:ヒータH1の目標温度変更は禁止。」というメモ内容は、ヒータH1の目標温度を設定する決定ボタンDBt1とともに表示されている。より具体的には、制御装置40は、決定ボタンDBt1に隣接させた位置に表示領域MR1を表示する。
【0053】
このように、制御装置40は、ヒータH1の目標温度の設定という操作に関連したメモ内容を決定ボタンDBt1とともに表示装置31に表示させる。これにより、本実施の形態の射出成形機100において、ヒータH1の温度設定という操作を行おうとする全てのユーザに対して、当該操作に関連したメモ内容を自動的に表示することができる。すなわち、ユーザは、ヒータH1の温度を設定する際に、ヒータH1の温度設定に関連するメモ内容が射出成形機100に保存されているか否かを確認するという作業をする必要がない。これにより、射出成形機100では、ユーザが行う操作に関連付けられた情報の共有を円滑化できる。
【0054】
表示領域MR1は、メモ内容を編集可能なテキストボックスであってもよい。すなわち、ユーザは、表示領域MR1に表示されているメモ内容を表示領域MR1から編集できる。制御装置40は、メモ内容を編集可能である態様で表示する。なお、制御装置40は、表示されているメモ内容の入力者と同一のユーザを認証している場合にのみ、メモ内容を編集可能である態様で表示してもよい。
【0055】
図5は、ヒータH1の制御手法の設定を説明するための図である。図5には、画面DS3が表示されている。画面DS3は、図3に示されているリストボックスLiB1がユーザに選択されることに基づいて画面DS1から遷移する画面である。
【0056】
図5に示されているように、リストボックスLiB1は、ユーザに選択されたことに基づいて選択項目DBt2,DBt3を展開する。選択項目DBt2には、「PID」というテキストが表示されている。選択項目DBt3には、「同期昇温」というテキストが表示されている。制御装置40は、ユーザが選択項目DBt3を選択した場合、ヒータH1~H3の制御手法として設定されている設定値を「PID制御」から「同期昇温」に切り替える。また、制御装置40は、ユーザが選択項目DBt2を選択した場合、ヒータH1~H3の制御手法として設定されている設定値を「PID制御」の状態に保持する。
【0057】
図5において、制御装置40は、ヒータH1の制御手法を決定する選択項目DBt2,DBt3とともに、ヒータH1の制御手法に関連するメモ内容を表示する。図5の例では、表示領域MR2に「メモ:PIDから変更しないこと!」というテキストが表示されている。
【0058】
このように、射出成形機100では、ヒータH1の制御手法をPIDから変更してはいけないことを複数のユーザ間で情報共有させることができる。また、図5に示されるように、「メモ:PIDから変更しないこと!」というテキスト形式のデータは、ヒータH1の制御手法を決定する選択項目DBt2,DBt3とともに表示されている。
【0059】
すなわち、制御装置40は、ヒータH1の制御手法の設定という操作に関連したメモ内容を選択項目DBt2,DBt3とともに表示装置31に表示させている。本実施の形態の射出成形機100において、ヒータH1の制御手法の設定という操作を行おうとする全てのユーザに対して、当該操作に関連したメモ内容を表示することができる。これにより、射出成形機100では、ユーザが行う操作に関連付けられた情報の共有を円滑化できる。
【0060】
図6は、ヒータH2のオンオフ制御の設定を説明するための図である。図6には、画面DS4が表示されている。画面DS4は、図3に示されているボタンBt2がユーザに選択されることに基づいて画面DS1から遷移する画面である。言い換えれば、制御装置40は、図3の画面DS1におけるボタンBt2上にポインタが重畳している状態でマウスのクリック操作を受け付けたとき、図6の画面DS4を表示装置31に表示させる。
【0061】
図6に示されているように、制御装置40は、ボタンBt2が選択されたことに応じて、設定画面R2に重畳する画面Pp1および表示領域MR3を表示装置31に表示させる。画面Pp1には、「ヒータH2をOFFにしますか?」というテキストと、決定ボタンDBt4と、キャンセルボタンNBt4が示されている。決定ボタンDBt4には「YES」というテキストが表示され、キャンセルボタンNBt4には「NO」というテキストが表示されている。
【0062】
図6に示される画面DS4において、制御装置40は、ユーザが決定ボタンDBt4を選択した場合、ヒータH2の状態をオフ状態に設定する。すなわち、制御装置40は、決定ボタンDBt4上にポインタが重畳している状態でマウスのクリック操作を受け付けたとき、ヒータH2への電力の供給を停止し、画面Pp1を非表示にする。また、制御装置40は、キャンセルボタンNBt4上にポインタが重畳している状態でマウスのクリック操作を受け付けたとき、ヒータH2への電力の供給を停止せずに、画面Pp1を非表示にする。
【0063】
制御装置40は、ヒータH2の状態をオフ状態へと設定する決定ボタンDBt4とともに、ヒータH2のオンオフ制御に関連するメモ内容を表示する。図6の例では、表示領域MR3に「H2をOFFにしないこと。」というテキストが表示されている。
【0064】
このように、射出成形機100では、ヒータH2をオフ状態に設定してはいけないということを複数のユーザ間において情報共有させることができる。また、図6に示されるように、「H2をOFFにしないこと。」というテキスト形式のデータは、ヒータH2のオンオフ制御を設定する決定ボタンDBt4とともに表示されている。
【0065】
本実施の形態の射出成形機100において、ヒータH2のオンオフ状態の設定という操作を行おうとする全てのユーザに対して、当該操作に関連したメモ内容を表示することができる。これにより、射出成形機100では、ユーザが行う操作に関連付けられた情報の共有を円滑化できる。
【0066】
<変形例>
図7は、ヒータH1の制御手法の設定における変形例を示す図である。図5において、リストボックスLiB1を用いて、ヒータH1の制御手法の設定する例を説明した。しかしながら、ヒータH1の制御手法の設定は、リストボックスLiB1を用いた方法に限られない。図7の変形例では、ラジオボタンを用いて、ヒータH1の制御手法の設定を行う例を説明する。
【0067】
図7には、リストボックスLiB1に代えて、PID制御を設定するラジオボタンDBt5および、同期昇温制御を設定するラジオボタンDBt6が示されている。図7には、PID制御および同期昇温制御のうち、PID制御が選択されている状態が示されている。変形例における制御装置40は、ユーザによってラジオボタンDBt6が選択された場合、ヒータH1~H3の制御手法として設定されている設定値を「PID制御」から「同期昇温制御」に切り替える。換言すれば、制御装置40は、ラジオボタンDBt6上にポインタが重畳している状態でクリック操作を受け付けたときに設定値を「PID制御」から「同期昇温制御」に切り替える。制御装置40は、ユーザによってラジオボタンDBt5が選択された場合、ヒータH1~H3の制御手法として設定されている設定値を「PID制御」の状態に保持する。
【0068】
図7では、制御装置40は、ラジオボタンDBt6上にポインタが重畳した状態でクリック操作を受け付けたことに基づいて、画面Pp2および表示領域MR2を表示装置31に表示させる。画面Pp2には、「同期昇温に変更しますか?」というテキストと、決定ボタンDBt7と、キャンセルボタンNBt7が示されている。
【0069】
図7に示される画面DS5において、制御装置40は、ユーザが決定ボタンDBt7を選択した場合、ヒータH1~H3の制御手法として設定されている設定値を「PID制御」から「同期昇温制御」に切り替える。また、制御装置40は、キャンセルボタンNBt7上にポインタが重畳している状態でマウスのクリック操作を受け付けたとき、ヒータH1~H3の制御手法として設定されている設定値を「PID制御」のまま保持する。
【0070】
これにより、変形例における射出成形機100においても、ヒータH1~H3の制御手法の設定という操作を行おうとする全てのユーザに対して、当該操作に関連したメモ内容を表示することができる。すなわち、変形例における射出成形機100においても、ユーザが行う操作に関連付けられた情報の共有を円滑化できる。
【0071】
<記憶装置内のデータベース>
図8は、設定項目とオブジェクトとを関連付けるデータベースの一例を示す図である。図8に示されるデータベースに対する更新、追加、変更、削除などの処理は、射出成形機100のメンテナンス時におけるシステムのアップデートなどを除いて行われない。すなわち、図8に示されるデータベースの内容は、射出成形機100を製造する製造者によって変更可能である一方で、射出成形機100を使用するユーザによっては変更されない。
【0072】
図8のデータベースは、記憶装置44に格納されている。図8のデータベースは、少なくとも「設定項目」および「オブジェクト」の列を有する。図8のデータベースは、さらに「設定値」の列を有しているが、「設定値」は他のデータベースによって管理されてもよい。
【0073】
図8に示されるように、設定項目「ヒータH1の温度」には、設定値として「200℃」が設定されている。設定項目「ヒータH1~H3の制御手法」には、設定値として「PID制御」が設定されている。設定項目「ヒータH2のオンオフ制御」には、設定値として「オン状態」が設定されている。
【0074】
設定項目「ヒータH1の温度」には、「ヒータH1の温度」の設定値を設定する決定ボタンDBt1が関連付けられている。設定項目「ヒータH1~H3の制御手法」には、「ヒータH1~H3の制御手法」の設定値を設定する選択項目DBt2,DBt3が関連付けられている。設定項目「ヒータH2のオンオフ制御」には、「ヒータH2のオンオフ制御」の設定値を設定する決定ボタンDBt4が関連付けられている。図8のデータベースには、図8に示されている3種類の設定項目以外の各設定項目に対して、設定値とオブジェクトとが関連付けられている。
【0075】
図9は、メモ内容を記憶するデータベースの一例を示す図である。図8のデータベースは、図8のデータベースと同様に記憶装置44に格納されている。図9に示されているデータベースには、ユーザによって入力されたメモ内容が記憶されている。図9に示されるデータベースは、図8に示されるデータベースとは異なり、射出成形機100のユーザの操作によってデータの更新、追加、変更、削除が行われる。
【0076】
図9に示されるデータベースは、「設定項目」、「入力者」、「権限レベル」、「メモ内容」、「入力日」、「承認」の列を有する。図9に示される「設定項目」は、図8に示される「設定項目」と同様のデータ構造を有する。「入力者」の列は、メモ内容の入力者を識別するためのデータを格納する列である。「権限レベル」の列は、入力者に設定された権限レベルを識別するためのデータを格納する列である。
【0077】
本実施の形態において、図1に示されている制御装置40は、ユーザごとに「権限レベル1」、「権限レベル2」、「権限レベル3」として示される3種類の異なる権限レベルを設定する。なお、設定される権限レベルの種類は、3種類に限られず、3種類以上であってもよく、たとえば5種類、または10種類であり得る。権限レベル1は、本開示における「第1権限」に対応し得る。権限レベル2または権限レベル3は、本開示における「第2権限」に対応し得る。
【0078】
権限レベル1は、権限レベル1~3のうち、最も狭い範囲の操作および設定が許可される権限である。権限レベル1は、たとえば、ヒータH1~H3の温度設定の操作だけが許可される。すなわち、権限レベル1が設定されたユーザは、ヒータH1~H3の制御手法、ヒータH1~H3のオンオフ制御の状態を設定できない。権限レベル1は、たとえば、役職などを有さない一般ユーザに対して設定される。
【0079】
権限レベル2は、権限レベル1に許可された範囲よりも広い範囲の操作および設定が許可された権限レベルである。権限レベル2は、たとえば、ヒータH1~H3の温度設定に加えて、ヒータH1~H3のオンオフ制御の設定操作が許可される。権限レベル2は、たとえば、一般的なユーザに対して監督責任を負う主任、課長などの役職を有するユーザに対して設定される。
【0080】
権限レベル3は、権限レベル1~3のうち、操作可能な範囲が最も広い権限レベルである。権限レベル3は、射出成形機100において設定可能な全ての設定の操作を行うことが可能な権限レベルである。権限レベル3は、たとえば、射出成形機100の管理責任を負うユーザ、射出成形機100を製造する製造者などに対して設定される。制御装置40は、入力装置32を操作するユーザを認証する際に、認証したユーザに予め定められている権限レベルを取得する。以下では、権限レベル1を、権限レベル1~3のうち、最も低いレベルの権限レベルと称し、権限レベル3を、権限レベル1~3のうち、最も高いレベルの権限レベルと称する場合がある。
【0081】
「メモ内容」の列は、ユーザによって入力されたメモ内容をテキスト形式で格納する列である。図9では、メモ内容として含まれるテキストの一部だけが図示されている。なお、制御装置40は、図9のデータベースを表示装置31に表示させる場合、テキストの上にポインタをもってくるとテキストの全文がポップアップで表示させてもよいし、スクロールバーを設けてもよい。これにより、ユーザは、図9のデータベースに含まれているテキストの全文を確認可能である。「入力日」の列は、ユーザによってメモ内容が入力された日付を格納する列である。なお、「入力日」の列には、日付に加えて時分が格納されてもよい。「承認」の列は、メモ内容が権限レベルの高い他のユーザに承認されたか否かの状態を示す。メモ内容の列に格納されているデータは、本開示における「入力情報」に対応し得る。
【0082】
以下では、図9のデータベースにデータが追加される一例を説明する。制御装置40は、メモ内容を入力するための入力画面からメモ内容の入力を受け付けることによって、図9のデータベースに新たなデータを追加する。当該入力画面は、メモ内容に加えて、入力されるメモ内容と関連する設定項目を受け付ける。
【0083】
制御装置40は、新たに追加したデータに対して、入力用の画面にて受け付けたメモ内容および当該メモ内容と関連する設定項目、入力者の識別情報、入力者の権限レベル、および入力日を書き込む。さらに、制御装置40は、入力者が有する権限レベルに応じてメモ内容の承認状態を書き込む。承認状態は、メモ内容が表示領域MR1に表示可能か否かを示す状態である。
【0084】
本実施の形態における制御装置40は、図8のデータベースと図9のデータベースとを用いることによって、メモ内容を、メモ内容と関連する設定項目の設定値を設定可能なオブジェクトとともに表示する。以下では、オブジェクトとメモ内容とをともに表示する例を、フローチャートを用いて説明する。
【0085】
<メモ内容と決定ボタンと表示処理>
図10は、決定ボタンおよびメモ内容をともに表示するための処理手順を示すフローチャートである。制御装置40は、設定値を設定するオブジェクトを表示する命令を受け付けたか否かを判断する(ステップS110)。設定値を設定するオブジェクトを表示する命令とは、たとえば、決定ボタンDBt1を含むテンキー画面Cu1(図4参照)を表示する命令である。
【0086】
制御装置40は、オブジェクトを表示する命令を受け付けていない場合(ステップS110でNO)、ステップS110の処理を繰り返す。オブジェクトを表示する命令を受け付けた場合(ステップS110でYES)、制御装置40は、表示されるオブジェクトに関連付けられている設定項目を取得する(ステップS120)。たとえば、ステップS110にて決定ボタンDBt1を表示する命令を受け付けた場合、制御装置40は、図8のデータベースを参照して、決定ボタンDBt1に関連付けられている設定項目「ヒータH1の温度」を取得する。
【0087】
制御装置40は、S120にて取得した設定項目に関連付けられているメモ内容を取得する(ステップS130)。たとえば、S120にて設定項目「ヒータH1の温度」を取得した場合、制御装置40は、図9を参照して設定項目「ヒータH1の温度」に関連付けられている「温度は上げすぎず…」というメモ内容と、「温度変更時は、…」というメモ内容の2つのメモ内容を取得する。
【0088】
制御装置40は、ステップS130にて取得したメモ内容には、承認されているメモ内容が含まれているか否かを判断する(ステップS140)。承認されているメモ内容が含まれていない場合(ステップS140でNO)、制御装置40は、メモ内容を表示することなく処理を終了する。承認されているメモ内容が含まれている場合(ステップS140でYES)、制御装置40は、決定ボタンとともにS130にて取得したメモ内容を表示する(ステップS150)。
【0089】
図9の「承認」の列を参照して、「温度は上げすぎず…」というメモ内容には、承認済みであることを示すデータが関連付けられている。「温度変更時は、…」というメモ内容には、未承認であることを示すデータが関連付けられている。そのため、図9の例では、制御装置40は、承認されているデータが含まれていると判断し(ステップS140でYES)、「温度は上げすぎず…」というメモ内容だけを表示領域MR1内に表示する(ステップS150)。
【0090】
<メモ内容の新規入力処理>
図11は、メモ内容の新規入力の処理手順を示すフローチャートである。制御装置40は、メモ内容の新規入力を受け付けたか否かを判断する(ステップS210)。メモ内容の新規入力を受け付けていない場合(ステップS210でNO)、制御装置40は、ステップS210の処理を繰り返す。
【0091】
制御装置40は、メモ内容の入力者に権限レベル3が設定されているか否かを判断する(ステップS220)。制御装置40は、入力者に権限レベル3が設定されていない場合(ステップS220でNO)、新たに追加されるメモ内容が未承認であると判断する(ステップS230)。すなわち、制御装置40は、図9に示される「承認」の列に「未」というデータを追加する。
【0092】
一方で、入力者に権限レベル3が設定されている場合(ステップS220でYES)、新たに追加されるメモ内容に承認が不要であると判断する(ステップS240)。すなわち、制御装置40は、図9に示される「承認」の列に「済」というデータを追加する。
【0093】
このように、制御装置40は、最も高い権限を有する入力者によって新たなメモ内容が入力されたとき、当該新たなメモ内容の「承認」の列に「済」を入力する。これにより、射出成形機100では、メモ内容の承認処理を簡素化することができ、処理負担を軽減させることができる。
【0094】
<メモ内容の承認処理>
図12は、メモ内容の承認の処理手順を示すフローチャートである。制御装置40は、未承認のメモ内容を承認する命令を受け付けたか否かを判定する(ステップS310)。承認する命令を受け付けていない場合(ステップS310でNO)、制御装置40は、処理を終了する。
【0095】
承認する命令を受け付レけた場合(ステップS310でYES)、制御装置40は、承認命令を行うユーザの権限レベルが承認可能な権限レベルであるか否かを判定する(ステップS320)。承認可能な権限レベルとは、たとえば、メモ内容の入力者の権限レベルよりも高いレベルの権限レベルである。
【0096】
承認可能な権限レベルではない場合(ステップS320でNO)、制御装置40は、エラーメッセージを表示装置31に表示させ(ステップS325)、承認処理を行わずに処理を終了する。エラーメッセージには、「承認する権限がありません。」といったテキストが含まれ得る。承認可能な権限レベルである場合(ステップS320でYES)、制御装置40は、承認する命令の対象となったメモ内容の「承認」の列に格納されているデータを「未」から「済」に変更する(ステップS330)。すなわち、制御装置40は、承認する命令の対象となったメモ内容を表示可能である状態に変化させる。ステップS330の後、制御装置40は、承認が完了したことを示すメッセージを表示装置31に表示させる(ステップS335)。承認が完了したことを示すメッセージには、「承認処理が完了しました。」といったテキストが含まれ得る。これにより、制御装置40は、高い権限を有するユーザに承認されたメモ内容だけを表示領域MR1~MR3内に表示させることができ、射出成形機100では、メモ内容の信頼性が向上する。
【0097】
<表示領域内にメモ内容の表示例>
図13は、メモ内容の表示例を説明するための図である。図13では、表示領域MR1内に収容できない長さのテキスト形式のメモ内容を表示する例を説明する。図13の例では、「メモ:設定変更できる場合はユーザAの承認を得た場合に限る。」というテキスト形式のデータを表示領域MR1に表示する例を説明する。表示領域MR1は、「メモ:設定変更できる場合はユーザAの承認を得た場合に限る。」というテキスト形式のデータに含まれる全てのテキストを一括で表示する大きさを有していない。
【0098】
制御装置40は、テキスト形式のデータの一部分を5秒経過するごとに順番に表示することによって、全てのテキストをユーザに把握させる。図13(A)に示されているように、制御装置40は、「メモ:設定変更できる場合は」というテキストに加えて「(1/3)」というテキストを表示する。
【0099】
すなわち、制御装置40は、表示領域MR1内にメモ内容の全てが表示されていないことを表示する。これにより、射出成形機100では、図13(A)に示されているメモ内容が全部で3頁から構成されており、現在1頁目が表示さていることをユーザに把握させることができる。すなわち、射出成形機100は、「(1/3)」というテキストを表示することにより、メモ内容の全てが表示されていないことをユーザに把握させる。なお、制御装置40は、「(1/3)」というテキストに代えて「未表示データあり」などのテキストを表示させてもよい。
【0100】
5秒経過したことに基づいて制御装置40は、表示領域MR1を図13(B)に示される態様に変化させる。すなわち、制御装置40は、表示領域MR1内に「…ユーザAの承認が…(2/3)」というテキストを表示させる。さらに5秒経過したことに基づいて制御装置40は、表示領域MR1を図13(C)に示される態様に変化させる。すなわち、制御装置40は、表示領域MR1内に「…を得た場合に限る…(3/3)」というテキストを表示させる。さらに5秒後には、図13(D)に示されるように、制御装置40は、図13(A)と同様のテキストを表示領域MR1に表示させる。
【0101】
このように、本実施の形態の射出成形機100では、表示領域MR1にて全てのテキストを表示できない場合は、一部分を順番に表示させる。これにより、射出成形機100では、表示領域MR1内に収容できない長いテキストを含むメモ内容であっても、メモ内容の全てをユーザに把握させることができる。
【0102】
また、射出成形機100では、テキストの全てが表示されていないことを示す(1/3)などの表示を加えることによって、ユーザにテキストの全てが表示されていないことを容易に把握させることができる。制御装置40は、(1/3)という表示を点滅させて、テキストの全てが表示されていないことを強調させてもよい。
【0103】
また、表示が切り替わる間隔は、5秒に限られず、ある局面では、2秒または3秒であってもよい。さらに、制御装置40は、図13に示されるように、テキストの一部分を順番に表示させるのではなく、表示領域MR1の大きさを拡大させてもよいし、表示領域MR1内にスクロールバーを設けてもよい。
【0104】
なお、本実施の形態では、権限レベル1は、ヒータH1~H3の温度設定の操作だけが許可されることを説明したが、射出成形機100に設定可能な全ての設定が許可されなくてもよい。具体的には、権限レベル1が設定されるユーザは、射出成形機100に射出成形処理を実行させる操作を行うこと、射出成形機100の動作状態を確認することが可能である一方で、複数種類の設定項目に対する設定については許可されていなくともよい。
【0105】
[付記]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0106】
(第1項) 一態様に係る射出成形機は、複数種類の設定項目ごとに設定された設定値に基づいて射出成形処理を行う射出成形機である。射出成形機は、所定の設定項目に対して設定値を設定するための設定画面を表示可能な表示装置と、所定の設定項目に関連付けられたオブジェクトを表示装置に表示させる制御装置とを備える。制御装置は、オブジェクトがユーザによって選択されたとき所定の設定項目に対して設定値を設定し、ユーザによって入力された情報であって、所定の設定項目と関連付けられた入力情報をオブジェクトとともに表示装置に表示させる。
【0107】
第1項に記載の射出成形機によれば、ユーザが行う操作に関連付けられた情報の共有を円滑化することができる。
【0108】
(第2項) 第1項に係る射出成形機は、入力情報を所定の設定項目と関連付けて記憶する記憶装置をさらに備える。制御装置は、オブジェクトを表示する命令を受け付けた場合、所定の設定項目と関連付けられた入力情報を記憶装置から取得し、入力情報を含む表示領域をオブジェクトとともに表示装置に表示させる。
【0109】
第2項に記載の射出成形機によれば、制御装置は、記憶装置に記憶されている情報を用いて、入力情報をオブジェクトとともに表示装置に表示させることができる。
【0110】
(第3項) 第2項に係る制御装置は、入力情報の全てを表示領域内に表示することができない場合、表示領域内に入力情報の全てが表示されていないことを表示する。
【0111】
第3項に記載の射出成形機によれば、表示領域内にテキストの一部分しか表示されていないにもかかわらず、表示領域内のテキストが全体のテキストであるとユーザに誤認させてしまうことを抑制できる。
【0112】
(第4項) 第2項または第3項に係る制御装置は、第1権限または第2権限をユーザごとに設定する。第1権限は、所定の範囲の操作および設定が許可される権限である。第2権限は、所定の範囲よりも広い範囲の操作および設定が許可される権限である。制御装置は、入力情報が第1権限を有するユーザによって入力された場合、表示装置に表示可能ではない状態で入力情報を記憶装置に記憶させ、第2権限を有するユーザによって入力情報の内容が承認された場合、入力情報の状態を表示装置に表示可能である状態に変化させる。
【0113】
第4項に記載の射出成形機によれば、高い権限が設定されたユーザによって承認された信頼性の高いメモ内容だけを表示装置に表示させることができる。
【0114】
(第5項) 第4項に係る制御装置は、第2権限が設定されたユーザによって入力情報が入力された場合、表示装置に表示可能である状態で入力情報を記憶装置に記憶させる。
【0115】
第5項に記載の射出成形機によれば、高い権限が設定されたユーザによってメモ内容が入力された場合は、承認処理を行うことなく、当該メモ内容を表示装置に表示させることができる。
【0116】
(第6項) 第1項~第5項のいずれか1項に係る制御装置は、入力情報を編集可能である態様で表示する。
【0117】
第6項に記載の射出成形機によれば、オブジェクトとともに表示されている表示領域内からメモ内容を編集させることができる。
【0118】
(第7項) 第1項~第6項のいずれか1項に係るオブジェクトは、テンキーによって入力された数字を決定するボタン、またはリストボックスによって表示されている選択項目である。
【0119】
第7項に記載の射出成形機によれば、数字の入力、リストボックスからの選択がユーザよって行われるときにメモ内容を表示することができる。
【0120】
(第8項) 第1項~第7項のいずれか1項に係る射出成形機は、射出材料を加熱するヒータをさらに備える。所定の設定項目に設定された設定値は、ヒータの目標温度、ヒータの制御手法、ヒータに電力を供給するか否かのうちのいずれか1つである。
【0121】
第8項に記載の射出成形機によれば、ヒータの目標温度、ヒータの制御手法、ヒータに電力を供給するか否かがユーザによって設定されるときにメモ内容を表示することができる。
【符号の説明】
【0122】
10 型締装置、11 ベッド、12 固定盤、13 型締ハウジング、14 可動盤、15 タイバー、16 型締機構、17,18 金型、19 ボールねじ、20 射出装置、21 基台、22 シリンダ、23 スクリュ、24 駆動機構、25 ホッパ、26 射出ノズル、27 ノズルタッチ装置、30 操作盤、31 表示装置、32 入力装置、40 制御装置、41 制御部、41b メモリ、42 入力インターフェイス、43 出力インターフェイス、44 記憶装置、80A~80D サーボモータ、100 射出成形機、Bt1~Bt3 ボタン、Cu1 テンキー画面、DBt1,DBt4 決定ボタン、NBt4,NBt7 キャンセルボタン、DBt2,DBt3 選択項目、DBt5,DBt6,DBt7 ラジオボタン、DS1~DS4,Pp1,Pp2 画面、H1~H3 ヒータ、LiB1 リストボックス、MR1~MR3 表示領域、R1 動作監視画面、R2 設定画面、Sr1~Sr3 温度センサ、TxB1~TxB3 テキストボックス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13