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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089199
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】セル積層体
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/50 20210101AFI20240626BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20240626BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20240626BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20240626BHJP
【FI】
H01M50/50 201Z
H01M50/211
H01M50/548 301
H01M50/562
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204407
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】武富 春美
(72)【発明者】
【氏名】森井 壮一
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA01
5H040AS07
5H040AT04
5H040NN01
5H043AA05
5H043AA13
5H043BA19
5H043BA20
5H043CA08
5H043CA21
5H043DA08
5H043DA11
5H043DA13
5H043DA17
5H043FA02
5H043FA24
5H043HA11F
5H043JA06D
5H043KA08D
5H043KA09D
5H043LA02D
5H043LA13D
5H043LA22D
(57)【要約】
【課題】バスバーを介在させずに、並列接続された複数の第1ラミネート型セルと並列接続された複数の第2ラミネート型セルとを直列接続できるセル積層体を提供する。
【解決手段】積層方向に隣り合い且つ電気的に並列接続された複数のラミネート型セルA1、A2と複数のラミネート型セルB1、B2とは、電気的に直列に接続されている。ラミネート型セルB1の負極タブリード22の折り曲げ部222は、ラミネート型セルA2の正極タブリード21の折り曲げ部212に重なるように延びており、複数のラミネート型セルA1、A2の複数の正極タブリード21、21の各折り曲げ部212、212は、複数のラミネート型セルB1、B2の複数の負極タブリード22、22の少なくとも1つの折り曲げ部222に重なって直接接合されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のラミネート型セルを備えるセル積層体であって、
各ラミネート型セルは、周縁にシール部を有し、正極又は負極の一方の極である第1極タブリード及び他方の極である第2極タブリードが前記シール部から延出するように構成され、
前記複数のラミネート型セルは、積層方向に隣り合い且つ電気的に並列接続された複数の第1ラミネート型セルと、前記積層方向に隣り合い且つ電気的に並列接続された複数の第2ラミネート型セルと、を含み、
前記複数の第1ラミネート型セルと前記複数の第2ラミネート型セルとは電気的に直列に接続されており、
前記複数の第1ラミネート型セルの各第1極タブリードは、同一の長さであり、
前記複数の第2ラミネート型セルの各第2極タブリードは、同一の長さであり、
前記複数の第2ラミネート型セルの各第2極タブリードは、前記複数の第1ラミネート型セルの各第1極タブリードよりも長く、
前記複数の第1ラミネート型セルの各第1極タブリード及び前記複数の第2ラミネート型セルの各第2極タブリードは、
前記シール部から前記積層方向と直交する方向に延出する延出部と、
前記積層方向に折り曲げられた折り曲げ部と、を有し、
前記複数の第2ラミネート型セルのうち前記複数の第1ラミネート型セルに最も近い第2ラミネート型セルの第2極タブリードの折り曲げ部は、前記複数の第1ラミネート型セルのうち前記複数の第2ラミネート型セルに最も遠い第1ラミネート型セルの第1極タブリードの折り曲げ部に重なるように延びており、
前記複数の第1ラミネート型セルの前記複数の第1極タブリードの各折り曲げ部は、前記複数の第2ラミネート型セルの前記複数の第2極タブリードの少なくとも1つの折り曲げ部に重なって直接接合されている、
セル積層体。
【請求項2】
請求項1に記載のセル積層体であって、
前記複数の第1ラミネート型セルの前記複数の第1極タブリードの各折り曲げ部は、互いに重ならない、
セル積層体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセル積層体であって、
前記複数の第2ラミネート型セルの各折り曲げ部は、
前記複数の第1ラミネート型セルのうち前記複数の第2ラミネート型セルに最も近い第1ラミネート型セルの第1極タブリードの折り曲げ部に重なるように延びており、
前記複数の第2ラミネート型セルに最も近い前記第1ラミネート型セルの前記折り曲げ部に重なって直接接合される、
セル積層体。
【請求項4】
請求項3に記載のセル積層体であって、
前記複数の第2ラミネート型セルに最も近い前記第1ラミネート型セルの前記折り曲げ部に重なる前記複数の第2ラミネート型セルの第2極タブリードの数は、前記複数の第2ラミネート型セルから最も遠い前記第1ラミネート型セルの前記折り曲げ部に重なる前記複数の第2ラミネート型セルの第2極タブリードの数よりも大きい、
セル積層体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のセル積層体であって、
前記複数の第1ラミネート型セルの前記複数の第1極タブリードと前記複数の第2ラミネート型セルの前記複数の第2極タブリードとは、前記折り曲げ部において溶接により直接接合されている、
セル積層体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のセル積層体であって、
前記第2極タブリードは、前記第1極タブリードよりも薄い、
セル積層体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のセル積層体であって、
前記第2極タブリードは、前記第1極タブリードよりも低密度の材料で形成されている、
セル積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された複数のラミネート型セルを備えるセル積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。
【0003】
二次電池として、ラミネート型セルが知られている。例えば、特許文献1には、複数のラミネート型電池セルが積層され、電気的に接続されているラミネート型電池モジュールが記載されている。特許文献1では、各ラミネート型電池セルは、バスバー等の接続部材を介さずに、直接的に電気接続されている。具体的には、各ラミネート型電池セルの正極端子及び負極端子は折り曲げ加工されており、隣り合ったラミネート型電池セルの異極端子に重なって溶接接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-145476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のラミネート型セルを接続するとき、特許文献1では複数のラミネート型電池セルを直列接続しているが、場合によっては、並列接続と直列接続とを併用することがある。並列接続と直列接続とを併用する場合、一般には正極端子と負極端子との接合にバスバーを用いる。
【0006】
しかしながら、バスバーを設けることで、バスバーのためのスペースが必要となったり、全体の重量が増加したりする。また、並列接続と直列接続とを併用する場合に正極端子と負極端子とを直接的に接合する方法は、特許文献1には開示されておらず、検討の余地があった。
【0007】
本発明は、バスバーを介在させずに、並列接続された複数の第1ラミネート型セルと並列接続された複数の第2ラミネート型セルとを直列接続できるセル積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
積層された複数のラミネート型セルを備えるセル積層体であって、
各ラミネート型セルは、周縁にシール部を有し、正極又は負極の一方の極である第1極タブリード及び他方の極である第2極タブリードが前記シール部から延出するように構成され、
前記複数のラミネート型セルは、積層方向に隣り合い且つ電気的に並列接続された複数の第1ラミネート型セルと、前記積層方向に隣り合い且つ電気的に並列接続された複数の第2ラミネート型セルと、を含み、
前記複数の第1ラミネート型セルと前記複数の第2ラミネート型セルとは電気的に直列に接続されており、
前記複数の第1ラミネート型セルの各第1極タブリードは、同一の長さであり、
前記複数の第2ラミネート型セルの各第2極タブリードは、同一の長さであり、
前記複数の第2ラミネート型セルの各第2極タブリードは、前記複数の第1ラミネート型セルの各第1極タブリードよりも長く、
前記複数の第1ラミネート型セルの各第1極タブリード及び前記複数の第2ラミネート型セルの各第2極タブリードは、
前記シール部から前記積層方向と直交する方向に延出する延出部と、
前記積層方向に折り曲げられた折り曲げ部と、を有し、
前記複数の第2ラミネート型セルのうち最も前記複数の第1ラミネート型セルに近い第2ラミネート型セルの第2極タブリードの折り曲げ部は、前記複数の第1ラミネート型セルのうち最も前記複数の第2ラミネート型セルに遠い第1ラミネート型セルの第1極タブリードの折り曲げ部に重なるように延びており、
前記複数の第1ラミネート型セルの複数の第1極タブリードの各折り曲げ部は、前記複数の第2ラミネート型セルの複数の第2極タブリードの少なくとも1つの折り曲げ部に重なって直接接合されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バスバーを介在させずに、並列接続された複数の第1ラミネート型セルと並列接続された複数の第2ラミネート型セルとを直列接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態のセル積層体1の概略平面図であり、セル積層体1の電気流路を模式的に示す。
図2】ラミネート型セル2の斜視図である。
図3図1中のX部分の拡大図であり、隣り合う4つのラミネート型セルA1、A2、B1、B2の正極タブリード21及び負極タブリード22の接続を示した図である。
図4】セル積層体1の製造方法を説明する図である。
図5】隣り合う6つのラミネート型セルA1、A2、A3、B1、B2、B3の正極タブリード21及び負極タブリード22の接続を示した図である。
図6】正極タブリード21が負極タブリード22よりも長い場合において、隣り合う4つのラミネート型セルA1、A2、B1、B2の正極タブリード21及び負極タブリード22の接続を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態のセル積層体を、添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態のセル積層体1の概略平面図である。セル積層体1は、水平方向(図1中の左右方向)に積層された複数のラミネート型セル2を備える。図示は省略するが、セル積層体1は、バッテリケースに収容されて、例えば、車両の床下(フロアパネルの下方)に配置される。
【0013】
図2は、ラミネート型セル2の斜視図である。ラミネート型セル2は、例えば、固体電池である。固体電池からなるラミネート型セル2は、正極タブリード21が連結された正極と、負極タブリード22が連結された負極と、正極と負極との間に配置された固体電解質と、これらを収容するラミネートフィルム23と、を有しており、固体電解質を介した正極と負極との間のリチウムイオンの授受により充放電を行う。また、ラミネート型セル2の周縁にはシール部20が設けられている。
【0014】
正極タブリード21は、ラミネート型セル2の長手方向の一端部にあるシール部20から延出しており、負極タブリード22は、ラミネート型セル2の長手方向の他端部にあるシール部20から延出している。本実施形態では、各ラミネート型セル2の負極タブリード22は、正極タブリード21よりも長く構成されている。ここで、本実施形態では、正極タブリード21及び負極タブリード22のうち短いタブリードである正極タブリード21が本発明の「第1極タブリード」に相当し、長いタブリードである負極タブリード22が本発明の「第2極タブリード」に相当する。
【0015】
正極タブリード21を含む正極は、例えば、アルミニウムを材料として形成される。負極タブリード22を含む負極は、例えば、銅を材料として形成される。
【0016】
固体電池の固体電解質としては、リチウムイオン伝導性及び絶縁性を有するものであれば特に制限は無く、一般的に全固体型リチウムイオン電池に用いられる材料を用いることができる。例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料、リチウム含有塩などの無機固体電解質や、ポリエチレンオキシドなどのポリマー系の固体電解質、リチウム含有塩やリチウムイオン伝導性のイオン液体を含むゲル系の固体電解質等を挙げることができる。固体電解質材料の形態としては、特に制限は無いが、例えば粒子状を挙げることができる。
【0017】
本実施形態では、セル積層体1を構成する複数のラミネート型セル2は、全て同一の構成を有し、寸法も全て同一である。すなわち、1種類のラミネート型セルのみを用いている。
【0018】
図1に戻り、複数のラミネート型セル2は、セル積層体1の電気流路始端11(正極)から電気流路終端12(負極)にかけて電気的に直列接続されている。電気流路始端11及び電気流路終端12は、例えば、導電接続部材(例えばバスバー)を介して各種配線部品が実装されたジャンクションボックスや他のセル積層体に接続される。
【0019】
図3は、セル積層体1において、隣り合う4つのラミネート型セル2の正極タブリード21及び負極タブリード22の接続を示した図であり、一例として図1中のX部分の接続を示す。なお、X部分以外のタブリードの接続も同様に行われる。以下では説明の都合上、隣り合う4つのラミネート型セル2をそれぞれ区別し、別の符号(A1、A2、B1、B2)を付して説明するが、各ラミネート型セルA1、A2、B1、B2は、前述したラミネート型セル2の構成と同一である。
【0020】
隣り合う4つのラミネート型セルA1、A2、B1、B2のうち、ラミネート型セルA1とラミネート型セルA2とは並列接続されており、また、ラミネート型セルB1とラミネート型セルB2とは並列接続されている。並列接続されたラミネート型セルA1、A2と並列接続されたラミネート型セルB1、B2とが、電気的に直列接続されている。
【0021】
各ラミネート型セルA1、A2の正極タブリード21は、シール部20から積層方向と直交する方向(すなわち各ラミネート型セルA1、A2の長手方向)に延出する延出部211と、積層方向に折り曲げられた折り曲げ部212と、を有する。折り曲げ部212は、ラミネート型セルB1、B2の負極タブリード22、22に向けて正極タブリード21を90°折り曲げることにより形成される。なお、前述した正極タブリード21の長さは、延出部211の長さ及び折り曲げ部212の長さの合計で定義される。
【0022】
同様に、各ラミネート型セルB1、B2の負極タブリード22は、シール部20から積層方向と直交する方向に延出する延出部221と、積層方向に折り曲げられた折り曲げ部222と、を有する。折り曲げ部222は、ラミネート型セルA1、A2の正極タブリード21、21に向けて負極タブリード22を90°折り曲げることにより形成される。なお、前述した負極タブリード22の長さは、延出部221の長さ及び折り曲げ部222の長さの合計で定義される。
【0023】
ラミネート型セルB1、B2のうちラミネート型セルA1、A2に最も近いラミネート型セルB1の負極タブリード22の折り曲げ部222は、ラミネート型セルA1、A2のうちラミネート型セルB1、B2に最も遠いラミネート型セルA2の正極タブリード21の折り曲げ部212に重なるように延びている。前述のとおり、ラミネート型セル2の負極タブリード22は正極タブリード21より長いので、ラミネート型セルB1の折り曲げ部222を、ラミネート型セルA1の折り曲げ部212を越えてラミネート型セルA2の折り曲げ部212に重なるように形成することが可能となる。
【0024】
ラミネート型セルA1、A2の正極タブリード21、21の各折り曲げ部212、212は、ラミネート型セルB1、B2の負極タブリード22、22の少なくとも1つの折り曲げ部222に重なって直接接合されている。ここで、「直接接合されている」とは、バスバー等の導電接続部材を介在させずに正極タブリード21及び負極タブリード22が電気的に接続されていることを意味する。具体的に説明すると、ラミネート型セルA2の正極タブリード21の折り曲げ部212は、ラミネート型セルB1の負極タブリード22の折り曲げ部222に重なり、例えばレーザー溶接等で接合される。また、ラミネート型セルA1の正極タブリード21の折り曲げ部212は、ラミネート型セルB1、B2の負極タブリード22、22の折り曲げ部222、222に重なり、例えばレーザー溶接等で接合される。
【0025】
以上説明した正極タブリード21及び負極タブリード22の接続方法によると、導電接続部材を介在させずに、並列接続されたラミネート型セルA1、A2と並列接続されたラミネート型セルB1、B2とを直列接続できる。これにより、導電接続部材を介在させた場合と比較して、積層方向と直交する方向におけるセル積層体1の寸法は小さくなり、且つセル積層体1は軽量化される。よって、セル積層体1のエネルギー密度が向上する。
【0026】
さらに、前述のとおり、積層される複数のラミネート型セル2は全て同一の構成を有するので、隣り合う4つのラミネート型セルA1、A2、B1、B2の正極タブリード21及び負極タブリード22を並列接続と直列接続とを併用して接続する際に、1種類のラミネート型セルを用意するだけでよい。したがって、例えば、ラミネート型セルA1、A2の正極タブリードの長さをそれぞれ異なるものにしたり(すなわち2種類のラミネート型セルを用意する)、ラミネート型セルB1、B2の負極タブリードの長さをそれぞれ異なるものにしたりする(すなわち2種類のラミネート型セルを用意する)必要がなく、セル積層体1の組立性も向上する。
【0027】
本実施形態では、ラミネート型セルA1、A2の正極タブリード21、21の各折り曲げ部212、212は、互いに重ならない。このような構成により、ラミネート型セルA1、A2の各折り曲げ部212、212が互いに重なっている場合と比較して、セル積層体1の積層方向に直交する方向の寸法を小さくできる。
【0028】
また、ラミネート型セルB1、B2の各折り曲げ部222、222は、ラミネート型セルA1、A2のうちラミネート型セルB1、B2に最も近いラミネート型セルA1の正極タブリード21の折り曲げ部212に重なるように延びている。そして、ラミネート型セルB1、B2の各折り曲げ部222、222は、ラミネート型セルB1、B2に最も近いラミネート型セルA1の折り曲げ部212に重なって直接接合されている。ラミネート型セルB2の折り曲げ部222がラミネート型セルA1の折り曲げ部212に重ならない場合、例えばラミネート型セルB2の折り曲げ部222とラミネート型セルB1の折り曲げ部222とを接合する必要がある。しかしながら、上述の構成によれば、ラミネート型セルB1、B2の各折り曲げ部222、222がラミネート型セルA1の折り曲げ部212に重なって直接接合されているので、ラミネート型セルB1、B2の負極タブリード22、22同士のみを接合する必要がない。よって、接合時間を短縮できる。
【0029】
また、ラミネート型セルB1、B2に最も近いラミネート型セルA1の折り曲げ部212に重なるラミネート型セルB1、B2の負極タブリード22の数は、ラミネート型セルB1、B2から最も遠いラミネート型セルA2の折り曲げ部212に重なるラミネート型セルB1、B2の負極タブリード22の数よりも大きい。本実施形態では、ラミネート型セルA1の折り曲げ部212に重なるラミネート型セルB1、B2の負極タブリード22の数は2つであり、ラミネート型セルA2の折り曲げ部212に重なるラミネート型セルB1、B2の負極タブリード22の数は1つである。
【0030】
各ラミネート型セルA1、A2、B1、B2に電流が流れるとき、ラミネート型セルA1、A2とラミネート型セルB1、B2との間の領域に通過電流が集中する。本実施形態において、ラミネート型セルA1、A2とラミネート型セルB1、B2との間の領域では、重なる折り曲げ部212、222の数が多いので、この領域での折り曲げ部212、222、222の断面積の合計は大きくなる。よって、本領域での損失を低下させることができる。
【0031】
なお、前述のとおり、負極タブリード22は銅で形成され、正極タブリード21はアルミニウムで形成されている。銅で形成されたタブリードの厚さとアルミニウムで形成されたタブリードの厚さを比較した場合、銅で形成されたタブリードの方が薄くなる。すなわち、本実施形態では、負極タブリード22は、正極タブリード21よりも薄い。したがって、長い負極タブリード22が薄いので、積層方向と直交する方向におけるセル積層体1の寸法をより小さくすることができる。
【0032】
続いて、複数のラミネート型セル2を並列接続と直列接続とを併用して接続したセル積層体1の製造方法について、図4を参照して説明する。
【0033】
図4は、セル積層体1の製造方法を説明する図である。セル積層体1の製造方法は、曲げ工程、積層工程、重ね工程、及び接合工程を含む。曲げ工程では、各ラミネート型セル2の正極タブリード21及び負極タブリード22を折り曲げて、延出部211、221及び折り曲げ部212、222を形成する。曲げ工程の後、積層工程では、複数のラミネート型セル2を水平方向に積層する。積層工程の後、重ね工程では、隣り合う4つのラミネート型セル2について、正極タブリード21の折り曲げ部212及び負極タブリード22の折り曲げ部222を、前述した構成で重ねていく。重ね工程の後、接合工程では、正極タブリード21の折り曲げ部212及び負極タブリード22の折り曲げ部222を重ねた箇所で例えばレーザー溶接を行い、接合する。以上により、セル積層体1が製造される。なお、曲げ工程及び積層工程の順序は入れ替えてもよい。
【0034】
《変形例1》
前述した実施形態では、隣り合う2つのラミネート型セルA1、A2(及びB1、B2)を並列接続したが、隣り合う3つ以上のラミネート型セル2を並列接続してもよい。本変形例1では、隣り合う3つのラミネート型セル2を並列接続する場合について説明する。
【0035】
図5は、隣り合う6つのラミネート型セルA1、A2、A3、B1、B2、B3の正極タブリード21及び負極タブリード22の接続を示した図である。前述した実施形態と同様に、ラミネート型セルB1、B2、B3のうちラミネート型セルA1、A2、A3に最も近いラミネート型セルB1の負極タブリード22の折り曲げ部222は、ラミネート型セルA1、A2、A3のうちラミネート型セルB1、B2、B3に最も遠いラミネート型セルA3の正極タブリード21の折り曲げ部212に重なるように延びている。そして、ラミネート型セルA1、A2、A3の正極タブリード21、21、21の各折り曲げ部212、212、212は、ラミネート型セルB1、B2、B3の負極タブリード22、22、22の少なくとも1つの折り曲げ部222に重なって直接接合されている。
【0036】
このように、隣り合う3つのラミネート型セル2を並列接続する場合であっても、導電接続部材を介在させずに、並列接続されたラミネート型セルA1、A2、A3と並列接続されたラミネート型セルB1、B2、B3とを直列接続できる。
【0037】
《変形例2》
前述した実施形態及び変形例1では、各ラミネート型セル2の負極タブリード22を正極タブリード21よりも長く構成したが、正極タブリード21を負極タブリード22よりも長く構成してもよい。
【0038】
図6は、正極タブリード21が負極タブリード22よりも長い場合において、隣り合う4つのラミネート型セルA1、A2、B1、B2の正極タブリード21及び負極タブリード22の接続を示した図である。ラミネート型セルA1、A2のうちラミネート型セルB1、B2に最も近いラミネート型セルA1の正極タブリード21の折り曲げ部212は、ラミネート型セルB1、B2のうちラミネート型セルA1、A2に最も遠いラミネート型セルB2の負極タブリード22の折り曲げ部222に重なるように延びている。そして、ラミネート型セルB1、B2の負極タブリード22、22の各折り曲げ部222、222は、ラミネート型セルA1、A2の正極タブリード21、21の少なくとも1つの折り曲げ部212に重なって直接接合されている。ここで、本変形例2では、正極タブリード21及び負極タブリード22のうち短いタブリードである負極タブリード22が本発明の「第1極タブリード」に相当し、長いタブリードである正極タブリード21が本発明の「第2極タブリード」に相当する。
【0039】
正極の材料であるアルミニウムは、負極の材料である銅よりも低密度である。よって、低密度の正極タブリード21を長くし、高密度の負極タブリード22を短くすることによりセル積層体1を軽量化できる。また、アルミニウムは銅よりも安価であるので、長い側の正極タブリード21をアルミニウムで安価に形成し、短い側の負極タブリード22を銅で形成することで、セル積層体1の製造コストを削減できる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0041】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0042】
(1) 積層された複数のラミネート型セル(複数のラミネート型セル2)を備えるセル積層体(セル積層体1)であって、
各ラミネート型セルは、周縁にシール部(シール部20)を有し、正極又は負極の一方の極である第1極タブリード(正極タブリード21、負極タブリード22)及び他方の極である第2極タブリード(負極タブリード22、正極タブリード21)が前記シール部から延出するように構成され、
前記複数のラミネート型セルは、積層方向に隣り合い且つ電気的に並列接続された複数の第1ラミネート型セル(ラミネート型セルA1、A2)と、前記積層方向に隣り合い且つ電気的に並列接続された複数の第2ラミネート型セル(ラミネート型セルB1、B2)と、を含み、
前記複数の第1ラミネート型セルと前記複数の第2ラミネート型セルとは電気的に直列に接続されており、
前記複数の第1ラミネート型セルの各第1極タブリードは、同一の長さであり、
前記複数の第2ラミネート型セルの各第2極タブリードは、同一の長さであり、
前記複数の第2ラミネート型セルの各第2極タブリードは、前記複数の第1ラミネート型セルの各第1極タブリードよりも長く、
前記複数の第1ラミネート型セルの各第1極タブリード及び前記複数の第2ラミネート型セルの各第2極タブリードは、
前記シール部から前記積層方向と直交する方向に延出する延出部(延出部211、221)と、
前記積層方向に折り曲げられた折り曲げ部(折り曲げ部212、222)と、を有し、
前記複数の第2ラミネート型セルのうち前記複数の第1ラミネート型セルに最も近い第2ラミネート型セルの第2極タブリードの折り曲げ部は、前記複数の第1ラミネート型セルのうち前記複数の第2ラミネート型セルに最も遠い第1ラミネート型セルの第1極タブリードの折り曲げ部に重なるように延びており、
前記複数の第1ラミネート型セルの前記複数の第1極タブリードの各折り曲げ部は、前記複数の第2ラミネート型セルの前記複数の第2極タブリードの少なくとも1つの折り曲げ部に重なって直接接合されている、
セル積層体。
【0043】
(1)によれば、導電接続部材を介在させずに、並列接続された第1ラミネート型セルと並列接続された第2ラミネート型セルとを直列接続できる。これにより、第1極タブリードと第2極タブリードとの接続に導電接続部材を介在させた場合と比較して、積層方向と直交する方向におけるセル積層体の寸法は小さくなり、且つセル積層体は軽量化される。よって、セル積層体1のエネルギー密度が向上する。
【0044】
(2) (1)に記載のセル積層体であって、
前記複数の第1ラミネート型セルの前記複数の第1極タブリードの各折り曲げ部は、互いに重ならない、
セル積層体。
【0045】
(2)によれば、セル積層体の積層方向に直交する方向の寸法を小さくできる。
【0046】
(3) (1)又は(2)に記載のセル積層体であって、
前記複数の第2ラミネート型セルの各折り曲げ部は、
前記複数の第1ラミネート型セルのうち前記複数の第2ラミネート型セルに最も近い第1ラミネート型セルの第1極タブリードの折り曲げ部に重なるように延びており、
前記複数の第2ラミネート型セルに最も近い前記第1ラミネート型セルの前記折り曲げ部に重なって直接接合される、
セル積層体。
【0047】
(3)によれば、複数の第2ラミネート型セルの各折り曲げ部が、第2ラミネート型セルに最も近い第1ラミネート型セルの折り曲げ部に重なって直接接合されているので、複数の第2ラミネート型セルの第2極タブリード同士を直接接合する必要がない。よって、接合時間を短縮できる。
【0048】
(4) (3)に記載のセル積層体であって、
前記複数の第2ラミネート型セルに最も近い前記第1ラミネート型セルの前記折り曲げ部に重なる前記複数の第2ラミネート型セルの第2極タブリードの数は、前記複数の第2ラミネート型セルから最も遠い前記第1ラミネート型セルの前記折り曲げ部に重なる前記複数の第2ラミネート型セルの第2極タブリードの数よりも大きい、
セル積層体。
【0049】
複数の第1ラミネート型セル及び複数の第2ラミネート型セルに電流が流れるとき、第1ラミネート型セルと第2ラミネート型セルとの間の領域に通過電流が集中する。(4)によれば、この領域において重なる折り曲げ部の数が多いので、この領域での折り曲げ部の断面積の合計は大きくなる。よって、本領域での損失を低下させることができる。
【0050】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載のセル積層体であって、
前記複数の第1ラミネート型セルの前記複数の第1極タブリードと前記複数の第2ラミネート型セルの前記複数の第2極タブリードとは、前記折り曲げ部において溶接により直接接合されている、
セル積層体。
【0051】
(5)によれば、溶接によって複数の第1極タブリードと複数の第2極タブリードとを直接接合できる。
【0052】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載のセル積層体であって、
前記第2極タブリードは、前記第1極タブリードよりも薄い、
セル積層体。
【0053】
(6)によれば、第1極タブリードよりも長い第2極タブリードが薄いので、積層方向と直交する方向におけるセル積層体の寸法をより小さくすることができる。
【0054】
(7) (1)から(5)のいずれかに記載のセル積層体であって、
前記第2極タブリードは、前記第1極タブリードよりも低密度の材料で形成されている、
セル積層体。
【0055】
(7)によれば、第1極タブリードよりも長い第2極タブリードが低密度の材料で形成されているので、セル積層体を軽量化できる。
【符号の説明】
【0056】
1 セル積層体
2 ラミネート型セル
20 シール部
21 正極タブリード(第1極タブリード、第2極タブリード)
211 延出部
212 折り曲げ部
22 負極タブリード(第1極タブリード、第2極タブリード)
221 延出部
222 折り曲げ部
A1、A2、A3 ラミネート型セル(第1ラミネート型セル)
B1、B2、B3 ラミネート型セル(第2ラミネート型セル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6