(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089204
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】媒体加工装置
(51)【国際特許分類】
B26D 5/00 20060101AFI20240626BHJP
B26D 7/26 20060101ALI20240626BHJP
B26D 5/30 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B26D7/26
B26D5/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204413
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅一
【テーマコード(参考)】
3C021
3C024
【Fターム(参考)】
3C021JA09
3C021JA10
3C024AA03
3C024AA07
3C024AA08
3C024FF01
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で高精度に加工部を動作させる媒体加工装置を提供する。
【解決手段】シート状の媒体(S)を媒体送り方向(Y)に搬送する媒体搬送機構(13、14、17)と、媒体を加工する加工部(56)を支持する支持部(40)を有し、支持部を加工部と共に媒体送り方向と交差する支持部送り方向(X)へ媒体に沿って移動させる第1の動作と、支持部を加工部と共に支持部送り方向に沿った仮想の軸線(C1)を中心として回動させることによって媒体と加工部の距離を変化させる第2の動作と、を実行可能な加工部駆動機構(20)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の媒体を媒体送り方向に搬送する媒体搬送機構と、
前記媒体を加工する加工部を支持する支持部を有し、前記支持部を前記加工部と共に前記媒体送り方向と交差する支持部送り方向へ前記媒体に沿って移動させる第1の動作と、前記支持部を前記加工部と共に前記支持部送り方向に沿った仮想の軸線を中心として回動させることによって前記媒体と前記加工部の距離を変化させる第2の動作と、を実行可能な加工部駆動機構と、
を備えることを特徴とする媒体加工装置。
【請求項2】
前記加工部駆動機構は、前記支持部送り方向に沿った仮想の軸線を中心とする、前記支持部を前記支持部送り方向へと移動可能に案内する軸部材を備え、前記支持部を、前記軸部材を中心に回動させることによって前記第2の動作を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体加工装置。
【請求項3】
前記加工部駆動機構は、前記支持部送り方向へ延設され、駆動手段によって前記軸部材を中心として回動する伝達部材を備え、
前記支持部は、前記第1の動作において前記軸部材及び前記伝達部材に沿って前記支持部送り方向へ移動し、前記第2の動作において前記伝達部材と共に回動する、
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体加工装置。
【請求項4】
前記伝達部材は、前記軸部材の中心軸を含む平面上に位置する平面部を有し、
前記支持部は、前記平面部に接触する接触部を有し、
前記第2の動作で前記加工部を前記媒体に接近させる際に、前記平面部が前記接触部を押圧する、
ことを特徴とする請求項3に記載の媒体加工装置。
【請求項5】
前記伝達部材は、前記平面部と、前記平面部と略平行な平行平面部と、前記平面部と前記平行平面部とを接続する接続平面部と、を備え、
前記接触部は、前記平面部のうち前記平行平面部に接続する角部の近傍に接触する、
ことを特徴とする請求項4に記載の媒体加工装置。
【請求項6】
前記軸部材と前記伝達部材とを前記支持部送り方向の両端で接続する一対の接続部材を備え、前記第2の動作において前記軸部材と前記伝達部材が共に回動する、
ことを特徴とする請求項3に記載の媒体加工装置。
【請求項7】
前記加工部は、前記媒体を切断する切断器具であり、
前記支持部は、前記切断器具を保持するホルダを着脱可能なホルダ着脱部を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の媒体加工装置。
【請求項8】
前記支持部は、前記媒体に設けた位置合わせマークを検出可能なセンサを備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の媒体加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の媒体を加工する加工装置として、媒体に切断加工を施す切断装置が知られている(例えば、特許文献1、2及び3)。切断装置は、カッティングデータに基づいて、媒体を所定の方向に搬送すると共に、切断用のカッターを媒体の搬送方向と直交する方向に移動させる制御を行って、媒体を所定の形状(図形や文字など)に切断する。
【0003】
この種の加工装置は、加工用のツールの種類を選択することによって、媒体に対して様々な加工を行うことができる。例えば、カッターに代えて筆記用具を取り付けることにより、描画用の加工装置として使用が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-193192号公報
【特許文献2】特開2017-100247号公報
【特許文献3】特開2018-167337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工装置では、媒体に対してツールを接近及び離間するように構成し、ツールが媒体を加工する(切断、描画などを行う)領域では媒体にツールを接近させ、ツールが媒体を加工しない領域では媒体からツールを離間させる。従って、媒体の搬送方向に対して交差する方向へのツール送り動作と、媒体との距離を変更する方向へのツール接離動作とをツールに行わせる必要がある。
【0006】
従来の加工装置では、このような複数の方向の動作をツールに行わせるための構造が複雑になってしまうという問題があった。例えば、ツール送り動作の方向にツールを移動させるための第1の駆動機構と、ツール接離動作の方向にツールを移動させるための第2の駆動機構とを備え、第1の駆動機構と第2の駆動機構がそれぞれ独立したガイド構造と駆動手段を備えている場合が多い。
【0007】
そこで、本発明は、簡単な構造で高精度に加工部を動作させる媒体加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る媒体加工装置は、シート状の媒体を媒体送り方向に搬送する媒体搬送機構と、前記媒体を加工する加工部を支持する支持部を有し、前記支持部を前記加工部と共に前記媒体送り方向と交差する支持部送り方向へ前記媒体に沿って移動させる第1の動作と、前記支持部を前記加工部と共に前記支持部送り方向に沿った仮想の軸線を中心として回動させることによって前記媒体と前記加工部の距離を変化させる第2の動作と、を実行可能な加工部駆動機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の態様によれば、簡単な構造で高精度に加工部を動作させる媒体加工装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】媒体加工装置における加工部駆動機構を示す斜視図である。
【
図4】加工部駆動機構を構成する第1ギヤと第2ギヤを示す斜視図である。
【
図5】ナイフホルダを取り付けた加工部ホルダの斜視図である。
【
図8】ナイフホルダに取り付けられる部品の斜視図である。
【
図9】キャリッジが加工位置にある状態の媒体加工装置の断面図である。
【
図10】キャリッジが退避位置にある状態の媒体加工装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び
図2は、本実施形態に係る媒体加工装置10を示す斜視図である。媒体加工装置10におけるX軸方向(左右方向、幅方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)は、互いに垂直な方向である。
【0012】
媒体加工装置10は、シート状の被加工媒体S(
図10)をY軸方向に搬送する媒体搬送動作と、被加工媒体Sに沿って加工部をX軸方向に移動させる第1の動作と、被加工媒体Sと加工部の距離(Z軸方向における間隔)を変化させる第2の動作と、を組み合わせて、被加工媒体Sに対して加工を行う。Y軸方向は、被加工媒体Sを搬送する媒体送り方向である。X軸方向は、媒体送り方向と交差する支持部送り方向である。
【0013】
被加工媒体Sは、台紙T(
図10)の上に重ねて媒体加工装置10に供給される。以下の説明において台紙Tについて言及しない場合でも、被加工媒体Sは台紙Tと重なる状態で搬送や加工が行われる。
【0014】
媒体加工装置10の本体部11は、X軸方向に間隔を空けて配置した一対の側壁11a及び側壁11bと、X軸方向に延びて一対の側壁11a及び側壁11bを接続する下部壁11cと、を有する。なお、媒体加工装置10は、本体部11の外側を覆う外装部材を備えてもよい。本体部11のY軸方向の前部には、被加工媒体Sを載せる台座であるトレー12が設けられている。
【0015】
一対の側壁11a及び側壁11bの間に、X軸方向に延びる搬送ローラ13と搬送ローラ14が支持されている。
図9及び
図10に示すように、搬送ローラ13と搬送ローラ14はZ軸方向に並んで配置されており、それぞれがX軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能である。上側の搬送ローラ13は、側壁11aと側壁11bに対して回動可能な左右一対のローラ支持板15に支持されており、一対のローラ支持板15の回動によって、Z軸方向における搬送ローラ13と搬送ローラ14の間隔が変化する。
【0016】
搬送ローラ13が搬送ローラ14に接近した状態で、搬送ローラ13が備える大径の挟持部13aと搬送ローラ14が備える大径の挟持部14aとの間に被加工媒体Sを挟むことができる。一対のローラ支持板15にはそれぞれローラ付勢バネ16が接続しており、ローラ付勢バネ16の付勢力によって、搬送ローラ13は搬送ローラ14に接近する方向(被加工媒体Sを挟む方向)に付勢されている。
【0017】
下側の搬送ローラ14は、側壁11aの側部に取り付けたローラ駆動モータ17(
図2)が発生させた駆動力によって回転する。挟持部13aと挟持部14aの間に被加工媒体Sを挟んだ状態で搬送ローラ14を回転させると、被加工媒体SがY軸方向に搬送される。ローラ駆動モータ17を制御して搬送ローラ14の回転方向を切り替えることにより、Y軸方向における被加工媒体Sの搬送方向を切り替えることができる。少なくとも搬送ローラ13、搬送ローラ14及びローラ駆動モータ17は、被加工媒体Sを媒体送り方向(Y軸方向)に搬送する媒体搬送機構を構成している。
【0018】
側壁11bに沿って、回動操作可能なリリースレバー18が設けられている。リリースレバー18は一方のローラ支持板15に接続している。ユーザーがリリースレバー18を操作して当該ローラ支持板15を回動させることにより、ローラ付勢バネ16の付勢力に抗して搬送ローラ13を搬送ローラ14から離間させることができる。
【0019】
本体部11の下部壁11cの上面に、支持プレート19が取り付けられている。支持プレート19はX軸方向に長手方向を向けた板状の部材であり、支持プレート19の上面側には、X軸方向へ延びる逃がし溝19aが形成されている。
【0020】
図3に示す加工部駆動機構20によって、被加工媒体Sを加工する加工部を支持し、加工部を被加工媒体Sに沿ってX軸方向(支持部送り方向)へ移動させる第1の動作と、被加工媒体Sと加工部の距離(Z軸方向の間隔)を変化させる第2の動作と、を行わせることができる。なお、
図3には表されていないが、加工部駆動機構20は、後述する駆動ベルト42、プーリ43、プーリ44及びベルト駆動モータ45なども含んでいる。
【0021】
加工部駆動機構20は、X軸方向に延びる軸部材であるガイド軸21と、X軸方向に延びる長尺部材である伝達部材22と、ガイド軸21及び伝達部材22の両端付近を接続する接続部材である一対の接続板23及び接続板24と、を備えている。ガイド軸21は円筒形状の外周面を有しており、ガイド軸21の中心を通りX軸方向に延びる仮想の軸線を中心軸C1とする。
【0022】
ガイド軸21は、本体部11の側壁11a及び側壁11bに対して、中心軸C1を中心として回動可能に支持されている。側壁11a及び側壁11bにはそれぞれ、ガイド軸21を回動可能に支持する軸孔(図示略)が設けられている。ガイド軸21と伝達部材22は、接続板23及び接続板24を介して互いに固定されている。従って、ガイド軸21、伝達部材22、接続板23及び接続板24は、中心軸C1を中心として一体的に回動する。換言すれば、ガイド軸21と伝達部材22は、接続板23及び接続板24を介して共に回動する。
【0023】
側壁11bの側部に、被加工媒体Sと加工部の距離を変化させるための駆動手段である昇降駆動モータ25が取り付けられている。昇降駆動モータ25の出力軸にピニオン25aが設けられ、ピニオン25aが第1ギヤ26の外周面に形成されたギヤ部26aに噛合している。
【0024】
図4に示すように、第1ギヤ26の内側に第2ギヤ27の伝達部27aが支持されている。第1ギヤ26の内部に設けたバネ掛け部26bと、伝達部27aに設けたバネ掛け部27bとに対して、トーションバネ28の一端と他端が係合している。第1ギヤ26が回転するとトーションバネ28の撓み量が大きくなり、トーションバネ28が所定の撓み量に達すると、第1ギヤ26から第2ギヤ27に回転が伝達される。
【0025】
図3に戻って加工部駆動機構20の説明を続ける。第2ギヤ27のギヤ部27cが扇形のセクタギヤ29に噛合している。セクタギヤ29と同軸で一体的に回転する中継ギヤ30が設けられている。中継ギヤ30は、接続板24に固定された扇形のセクタギヤ31に噛合している。第2ギヤ27の回転がセクタギヤ29に伝達され、セクタギヤ29と共に中継ギヤ30が回転する。中継ギヤ30の回転がセクタギヤ31に伝達される。セクタギヤ31が回転すると、ガイド軸21、伝達部材22、接続板23及び接続板24が、中心軸C1を中心として一体的に回動する。
【0026】
このように、昇降駆動モータ25を駆動させると、各ギヤ26、27、29、30及び31によって力が伝達されて、ガイド軸21、伝達部材22、接続板23及び接続板24が、中心軸C1を中心として回動する。昇降駆動モータ25を制御してピニオン25aの回転方向を切り替えることによって、ガイド軸21、伝達部材22、接続板23及び接続板24の回動方向を第1の方向R1と第2の方向R2(
図9及び
図10)に切り替えることができる。
【0027】
第1ギヤ26、第2ギヤ27、セクタギヤ29、中継ギヤ30はそれぞれ、側壁11bに支持されてX軸方向に延びるギヤ軸を中心として回転可能に支持される。第1ギヤ26と第2ギヤ27の間に設けたトーションバネ28により、後述するナイフ56の被加工媒体Sへの押圧荷重を変化させる。
【0028】
ガイド軸21及び伝達部材22を介してキャリッジ40が支持されている。キャリッジ40は、加工部を支持する支持部である。
【0029】
キャリッジ40は、X軸方向に貫通する軸挿通孔40aを有し、軸挿通孔40aにガイド軸21が挿入されている。軸挿通孔40aは円筒状の内周面を有し、軸挿通孔40aの内周面がガイド軸21の外周面に摺接することによって、キャリッジ40は、X軸方向へ移動可能に支持される。また、キャリッジ40は、軸挿通孔40aにガイド軸21を通したことによって、中心軸C1を中心として回動可能に支持される。X軸方向へのキャリッジ40の移動を第1の動作とし、中心軸C1を中心とするキャリッジ40の回動を第2の動作とする。
【0030】
伝達部材22は、それぞれが平面形状の壁部である上面部22aと前面部22bと後面部22cとを有するコ字型の断面形状の部材である。上面部22aの前縁から下方に向けて前面部22bが延設され、上面部22aの後縁から下方に向けて後面部22cが延設されている。
【0031】
図9及び
図10に示すように、伝達部材22の前面部22bは、ガイド軸21の中心軸C1を含む仮想の平面P1上に位置する平面部である。後面部22cは、前面部22bと略平行な平行平面部である。上面部22aは、前面部22bと後面部22cのそれぞれの上端を接続する接続平面部である。
【0032】
図9及び
図10に示すように、キャリッジ40は、本体部40bと、本体部40bの後部に位置する嵌合部40cと、を備えている。軸挿通孔40aは本体部40bの後方下部に形成されている。嵌合部40cは、コ字型の伝達部材22の内側に入り込んで上面部22aと前面部22bと後面部22cの内面に接触しており、伝達部材22に対してY軸方向やZ軸方向の移動が制限されている。また、嵌合部40cは、伝達部材22に対してX軸方向への移動が可能である。
【0033】
キャリッジ40にはベアリング41が設けられている。ベアリング41は、本体部40bに設けた支持軸41aを介して回転可能に支持されており、支持軸41aを中心とする円筒形状の外周面を有する。支持軸41aは、X軸方向に対して略垂直であり、伝達部材22の前面部22bと略平行に延設されている。
【0034】
ベアリング41は、伝達部材22の前面部22bに接触する接触部である。ベアリング41は本体部40bの後面側に配されており、伝達部材22の前面部22bに対してベアリング41の外周面が接触している。より詳しくは、ベアリング41は、前面部22bの上端に近い位置、すなわち前面部22bのうち上面部22aに接続する角部の近傍に接触している。
【0035】
キャリッジ40は、前面部22bに接触するベアリング41を回転又は摺動させながら、伝達部材22に対してX軸方向に移動(第1の動作)が可能である。中心軸C1を中心とする回動である第2の動作については、伝達部材22の前面部22bによってベアリング41が押圧されてキャリッジ40が第1の方向R1へ回動し、伝達部材22から嵌合部40cが力を受けることによってキャリッジ40が第2の方向R2へ回動する。
【0036】
キャリッジ40の本体部40bにベルト接続部40dが設けられている。ベルト接続部40dには駆動ベルト42が接続している。
図2に示すように、駆動ベルト42は、側壁11a側に支持されたプーリ43と、側壁11b側に支持されたプーリ44とに架け渡された無端ベルトであり、プーリ43とプーリ44の間を駆動ベルト42が旋回するループ構造になっている。
【0037】
プーリ43は、側壁11aの側部に取り付けられたベルト駆動モータ45で発生させた駆動力によって回転する。ベルト駆動モータ45の駆動によってプーリ43を回転させると、駆動ベルト42がX軸方向に移動してベルト接続部40dに力を伝達し、キャリッジ40をX軸方向に移動させる。ベルト駆動モータ45を制御してプーリ43の回転方向を切り替えることによって、X軸方向でのキャリッジ40の移動方向を切り替えることができる。
【0038】
以上のように、加工部駆動機構20では、昇降駆動モータ25の駆動によって、中心軸C1を中心とする回動をキャリッジ40に行わせることができる。また、ベルト駆動モータ45の駆動によって、キャリッジ40をX軸方向へ移動させることができる。
【0039】
キャリッジ40は、本体部40bの前部にホルダ着脱部40eを有している。ホルダ着脱部40eは上下に延びる筒型形状を有し、ホルダ着脱部40eに対して加工部ホルダ50を着脱可能である。ホルダ着脱部40eの側面には、X軸方向に間隔を調整可能な二股形状のクランプ部40fが設けられている。クランプ部40fを締め付けることによって、ホルダ着脱部40eに挿入した加工部ホルダ50が固定される。
【0040】
図5に示すように、加工部ホルダ50は、上下に延びる円筒状の保持筒部50aを有している。保持筒部50aの下端に環状突出部50bが形成されている。保持筒部50aは、上端から下端側の環状突出部50bまで通じる貫通孔を有しており、貫通孔の内周面の一部に雌ネジ部(図示略)が形成されている。
【0041】
加工部ホルダ50には、被加工媒体Sを加工するための様々な加工部を取り付けることが可能である。本実施形態は、加工部として、切断器具であるナイフ56(
図6から
図8参照)を適用した場合を示している。ナイフ56はナイフホルダ51を介して加工部ホルダ50に取り付けられる。
【0042】
図6に示すように、ナイフホルダ51は、加工部ホルダ50の保持筒部50aに挿入可能な円柱状の概略形状を有している。ナイフホルダ51のうち、保持筒部50aに挿入可能な下方の一部の外周面には、保持筒部50aの雌ネジ部に螺合する雄ネジ部51aが設けられている。雄ネジ部51aよりも上方のナイフホルダ51の外周面にはローレット51bが形成されている。ユーザーがローレット51bの箇所を把持してナイフホルダ51を回転操作することにより、保持筒部50aの雌ネジ部に対して雄ネジ部51aを螺合又は螺合解除させて、加工部ホルダ50に対してナイフホルダ51を着脱することができる。
【0043】
加工部ホルダ50は、保持筒部50aから上方に突出する嵌合部50cを有している。加工部ホルダ50にナイフホルダ51を取り付けた状態で、嵌合部50cがローレット51bに軽く嵌合して、ナイフホルダ51を安定的に保持できる。この状態では、ナイフホルダ51はクリック感をもって加工部ホルダ50に対して回転させることができる。
【0044】
図7に示すように、ナイフホルダ51の内部には、それぞれが円筒状の内周面を有する上方収容部51cと下方収容部51dとが設けられている。上方収容部51cと下方収容部51dの間には、上方収容部51c及び下方収容部51dよりも内径が小さい小径孔部51eが形成されている。下方収容部51dの下端には、下方収容部51dよりも内径が大きい大径孔部51fが形成されている。
【0045】
ナイフホルダ51の上方収容部51cの内部に、キャップ52とマグネット53が挿入される。上方収容部51cに対してマグネット53が先に上方から挿入されて、上方収容部51cの底部(小径孔部51eとの境界部分)にマグネット53が支持される。
図7及び
図8に示すように、キャップ52は、上方収容部51cに挿入される挿入部52aと、挿入部52aよりも大径でナイフホルダ51の上部に突出する大径部52bと、を備えている。挿入部52aは軽い圧入などの手段によって上方収容部51cの内部に保持され、上方収容部51cからのマグネット53の離脱を制限する。挿入部52aを上方収容部51cに挿入する際や、上方収容部51cから挿入部52aを引き抜く際は、大径部52bを保持して行うことができる。
【0046】
ナイフホルダ51の下方収容部51dの内部に、ナイフユニット55が下方から挿入される。
図7及び
図8に示すように、ナイフユニット55は、棒状の軸部55aを有し、軸部55aの下端に、切断器具であるナイフ56が固定されている。
【0047】
ナイフホルダ51の大径孔部51fの内部に、環状のナイフベアリング57が取り付けられている。ナイフベアリング57は、止め輪58によって、大径孔部51fから下方への離脱が規制されている。ナイフユニット55の軸部55aは、ナイフベアリング57を介して、ナイフホルダ51の中心軸C2を中心とする回転が可能に支持されている。また、ナイフユニット55に嵌合する止め輪59がナイフベアリング57の下面に当接して、下方収容部51dの内部(上方)への軸部55aの最大の挿入量が定められる。
【0048】
図7に示すように、軸部55aの上端は小径孔部51eに挿入されており、上方収容部51cの内部に設置したマグネット53の近傍に位置している。ナイフユニット55(少なくとも軸部55a)は磁性体からなり、マグネット53の磁力によって上方へ引きつけられて、下方収容部51dの内部にナイフユニット55が挿入された状態が維持される。ナイフホルダ51からキャップ52及びマグネット53を取り外すと、マグネット53の磁力による保持が解除されて、ナイフユニット55をナイフホルダ51の下方に引き抜くことができる。
【0049】
図7に示すように、キャップ52、マグネット53及びナイフユニット55をナイフホルダ51に取り付けた状態で、ナイフ56がナイフホルダ51の下端から下方に突出する。この状態のナイフホルダ51を加工部ホルダ50に取り付ける際に、加工部ホルダ50の環状突出部50bの下端面よりもナイフ56の先端が僅かに下方へ突出するように、保持筒部50aの雌ネジ部に対する雄ネジ部51aの螺合量を調整する。より詳しくは、キャリッジ40が後述する加工位置にある状態で、少なくともナイフ56が被加工媒体Sの厚みを貫通するように、ナイフ56の刃先の突出量を設定する。
【0050】
ナイフホルダ51を加工部ホルダ50に取り付け、加工部ホルダ50をキャリッジ40に取り付けた状態では、ナイフ56が支持プレート19の逃がし溝19aの上方に位置する。
【0051】
図9及び
図10に示すように、キャリッジ40の下面には、位置検出センサ46が設けられている。位置検出センサ46は、被加工媒体Sに設けた位置合わせマーク(トンボ)を光学的に検出する非接触式のセンサである。位置検出センサ46は、Y軸方向で軸挿通孔40aとホルダ着脱部40eとの間に位置している。
【0052】
媒体加工装置10は制御部60を有している(
図1参照)。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、記憶部とを有し、記憶部に記憶されているプログラムを読み出してプロセッサが実行することで、媒体加工装置10の各部の動作を制御する。制御部60は、少なくともローラ駆動モータ17と昇降駆動モータ25とベルト駆動モータ45の動作を制御する。
【0053】
媒体加工装置10は、ガイド軸21を中心とする伝達部材22及びキャリッジ40の2つの回動位置を検出する第1検出部61と第2検出部62とを備えている(
図1参照)。例えば、第1検出部61及び第2検出部62はそれぞれ、フォトインタラプタなどの光学センサを有しており、伝達部材22の一部がフォトインタラプタの投光部と受光部の間を通過して光が遮られた瞬間に検出が行われる。
【0054】
第1検出部61によって、伝達部材22及びキャリッジ40の加工位置(
図9)を検出する。加工位置とは、キャリッジ40、加工部ホルダ50及びナイフホルダ51を介して支持されているナイフ56が、媒体加工装置10に取り付けられた被加工媒体Sに接近して切り込む(加工する)高さ位置である。加工位置では、伝達部材22の上面部22aが略水平(Z軸方向に対して略垂直)になり、前面部22b及び後面部22cが略垂直(Y軸方向に対して略垂直)になり、ナイフホルダ51の中心軸C2がZ軸方向に向く。
【0055】
第2検出部62によって、伝達部材22及びキャリッジ40の退避位置(
図10)を検出する。退避位置とは、キャリッジ40、加工部ホルダ50及びナイフホルダ51を介して支持されているナイフ56が、媒体加工装置10に取り付けられた被加工媒体Sに切り込まずに、被加工媒体Sから上方へ退避する高さ位置である。退避位置では、伝達部材22が後面部22c側を下方に下げるように傾き、伝達部材22の当該傾きに伴って、ガイド軸21よりもY軸方向の前方に位置する加工部ホルダ50及びナイフホルダ51が、Z軸方向での被加工媒体Sとの間隔を拡大するように傾く。
【0056】
ガイド軸21、伝達部材22、接続板23及び接続板24を第1の方向R1に回動させることにより、伝達部材22及びキャリッジ40が加工位置に向けて動作する。ガイド軸21、伝達部材22、接続板23及び接続板24を第2の方向R2に回動させることにより、伝達部材22及びキャリッジ40が退避位置に向けて動作する。
【0057】
位置検出センサ46、第1検出部61及び第2検出部62の検出信号は、制御部60に入力される。
【0058】
以上の構成の媒体加工装置10の動作について説明する。媒体加工装置10に被加工媒体Sを取り付ける際には、ユーザーがリリースレバー18を操作して搬送ローラ13を搬送ローラ14から上方に離間させる。また、制御部60は、昇降駆動モータ25を制御して、伝達部材22及びキャリッジ40を退避位置(
図10)に位置させる。
【0059】
続いて、トレー12に被加工媒体Sを載せて、搬送ローラ13と搬送ローラ14の間に被加工媒体Sを挿入する。ユーザーがリリースレバー18を操作して搬送ローラ13を搬送ローラ14に接近させ、挟持部13aと挟持部14aとの間に被加工媒体Sを挟持させる。
【0060】
制御部60は、ローラ駆動モータ17を駆動して被加工媒体SをY軸方向に送ると共に、ベルト駆動モータ45を駆動してキャリッジ40をX軸方向に位置調整して、位置検出センサ46によって被加工媒体Sの位置合わせマークを検出する。被加工媒体Sは、支持プレート19の上面に載った状態でキャリッジ40の下方に支持される。この状態で、媒体加工装置10による被加工媒体Sの切断加工の準備が完了する。
【0061】
位置検出センサ46を用いて被加工媒体Sの位置合わせマークを検出する際に、制御部60は、昇降駆動モータ25を駆動させて、伝達部材22及びキャリッジ40を退避位置と加工位置の間で回動させて、最適な検出精度が得られる位置検出センサ46の焦点位置を調整してもよい。キャリッジ40に位置検出センサ46を備えたことによって、キャリッジ40の回動に伴って被加工媒体Sに対する位置検出センサ46の距離が変化するので、このような調整を行うことができる。
【0062】
なお、位置検出センサ46を用いた被加工媒体Sの位置合わせマークの検出は、切断加工の準備段階だけに限定されず、切断加工の進行中においても適宜行うことが可能である。
【0063】
制御部60には、被加工媒体Sを切断するためのカッティングデータが入力され、カッティングデータに基づいて切断加工が実行される。ベルト駆動モータ45を駆動してキャリッジ40をX軸方向に移動させ、ローラ駆動モータ17を駆動して被加工媒体SをY軸方向に移動させることによって、被加工媒体Sとナイフ56をカッティングラインに沿う軌跡で相対的に移動させることができる。
【0064】
そして、カッティングの対象領域で、制御部60は昇降駆動モータ25を駆動し、伝達部材22及びキャリッジ40を第1の方向R1に回動させて退避位置から加工位置に移動させる。これにより、ナイフ56が下降して被加工媒体Sに接近し、ナイフ56が被加工媒体Sに切り込まれてカッティングが実行される。ナイフ56の下方に支持プレート19の逃がし溝19aが設けられている。そして、被加工媒体Sに切り込まれたナイフ56がその下方の台紙Tを貫通した場合に、ナイフ56の刃先が逃がし溝19aの内部に進入するため、ナイフ56が周囲の部材に干渉することを防止できる。
【0065】
なお、伝達部材22及びキャリッジ40が加工位置に達した状態で、さらに第1の方向R1へ回動させる力を昇降駆動モータ25から受けた場合に、第2ギヤ27のギヤ部27cとの噛合が解除されるようにセクタギヤ29の形成範囲が設定されている。従って、キャリッジ40が加工位置を超えて過剰に第1の方向R1へ回動されることがなく(ナイフ56を支持するホルダ着脱部40eがZ軸方向に下がり過ぎることがなく)、加工部駆動機構20に過負荷がかかることを防止できる。
【0066】
ナイフ56を備えたナイフユニット55は、ナイフホルダ51に対して中心軸C2を中心として回転可能に支持されている。そのため、被加工媒体Sに切り込まれたナイフ56は、被加工媒体Sとの間に作用する摩擦力などによって、常に切断の進行方向に刃先の向きが追従するように向きが変化し、スムーズに切断を実行することができる。
【0067】
特に、マグネット53の磁力によってナイフユニット55を引き付けると共に、ナイフベアリング57を介してナイフユニット55をナイフホルダ51に支持させているので、ナイフユニット55に対する回転抵抗が極めて小さく、切断の進行方向の変化に対するナイフ56の追従性が優れている。
【0068】
カッティングの対象外の領域では、制御部60は昇降駆動モータ25を駆動して、伝達部材22及びキャリッジ40を第2の方向R2に回動させて加工位置から退避位置に移動させる。これにより、ナイフ56が上昇して被加工媒体Sから離間し、ナイフ56が被加工媒体Sに切り込まれない状態になる。
【0069】
カッティングデータに基づく一連の切断動作が完了したら、制御部60は、昇降駆動モータ25を駆動して伝達部材22及びキャリッジ40を第2の方向R2に回動させて退避位置に保持する。ユーザーがリリースレバー18を操作して搬送ローラ13を搬送ローラ14から離間させ、挟持部13aと挟持部14aによる被加工媒体Sの挟持を解除する。
【0070】
以上のように、媒体加工装置10の加工部駆動機構20では、キャリッジ40をナイフ56と共に支持部送り方向(X軸方向)へ移動させる第1の動作と、キャリッジ40をナイフ56と共に支持部送り方向(X軸方向)に沿った仮想の軸線(中心軸C1)を中心として回動させることによって被加工媒体Sとナイフ56の距離を変化させる第2の動作と、を実行可能である。従って、ナイフ56を複数の方向に動作させるための加工部駆動機構20を、ガイド軸の数が少ないシンプルな構造にすることができる。また、加工部駆動機構20の構造がシンプルであるため、機構の各部に累積する精度誤差が少なく、ナイフ56の動作を高精度に行わせることができる。
【0071】
例えば、本実施形態とは異なり、X軸方向のみに移動する第1ステージと、第1ステージに対してZ軸方向のみに移動する第2ステージとを備え、第2ステージに加工部を支持した構成では、第1ステージにZ軸方向へ延びるガイド部(ガイド軸など)を備え、このガイド部に対して第2ステージをスライド可能に取り付けた構造になる。この場合、可動のステージの段数が多くて構造が複雑化する。また、第1ステージを可動に支持する部分の精度誤差に加えて、第1ステージに対して第2ステージを可動に支持する部分(Z軸方向に延びるガイド部の箇所)での精度誤差が累積するため、加工部の位置精度の管理が難しくなる。特に、第2ステージをスムーズに移動させるために、Z軸方向に延びるガイド部と第2ステージとの間にも所定のクリアランスを確保する必要があり、X軸方向やY軸方向での第2ステージの位置がずれやすい。
【0072】
これに対して、本実施形態の媒体加工装置10では、X軸方向へのナイフ56の移動と、被加工媒体Sに対するナイフ56の接近及び離間の方向(Z軸方向に近似した方向)の移動とを、いずれもキャリッジ40の動作として行うので、これらの移動を多段階のステージを介して行わせる構成に比べて、部品点数が少なく構造が簡単である。
【0073】
また、キャリッジ40に対して加工部ホルダ50及びナイフホルダ51が固定されて一体化しているので、キャリッジ40を基準とした加工部ホルダ50及びナイフホルダ51の位置ずれが生じにくい。
【0074】
ガイド軸21の中心軸C1を中心として回動する力は、伝達部材22からキャリッジ40に伝達される。伝達部材22とキャリッジ40は、中心軸C1からガイド軸21の半径方向に離れた位置で接触しており、中心軸C1を中心とする回動方向におけるキャリッジ40の姿勢を安定させやすいと共に、伝達部材22からキャリッジ40に対して効率的に回動する力を伝達することができる。
【0075】
また、伝達部材22を介してキャリッジ40に回動を伝達するので、キャリッジ40の軸挿通孔40aとガイド軸21は、回動伝達用の複雑な形状を備えないシンプルな円筒形状の面として構成することができる。
【0076】
上面部22aと前面部22bと後面部22cを含むコ字型の断面形状の伝達部材22は、X軸方向に長い長尺部材でありながら、高い剛性を備えている。さらに、ガイド軸21と伝達部材22の両端を一対の接続板23及び接続板24で固定しており、ガイド軸21、伝達部材22、接続板23及び接続板24の組み合わせによって非常に高い剛性を備えている。これにより、昇降駆動モータ25を駆動した際に、ガイド軸21及び伝達部材22の捻じれが抑制されて、キャリッジ40を高い精度で支持しながら安定して回動させることができる。
【0077】
キャリッジ40は、ベルト駆動モータ45を駆動してX軸方向へ移動する際にはスムーズに移動を行い、昇降駆動モータ25を駆動して回動する際には伝達部材22と共に確実に回動することが求められる。
【0078】
キャリッジ40は、軸挿通孔40aがガイド軸21による支持を受けつつ、ベアリング41が伝達部材22の前面部22bに接触して案内を受けるため、ガイド軸21及び伝達部材22に対する傾きやガタつきが抑制されてスムーズにX軸方向へ移動することができる。
【0079】
また、ベアリング41が伝達部材22の前面部22bに接触すると共に、嵌合部40cが伝達部材22の内側に接触するので、伝達部材22からキャリッジ40に対して、ガイド軸21を中心とする回動方向への力が確実に伝達される。
【0080】
特に、ベアリング41が接触する伝達部材22の前面部22bは、ガイド軸21の中心軸C1を含む仮想の平面P1上に位置している。すなわち、前面部22bは、中心軸C1からガイド軸21の半径方向に延びる平面部として構成されている。これにより、伝達部材22が第1の方向R1へ回動する際に、前面部22bは常に回動の進行方向に対して略垂直な面としてベアリング41に当接して、ベアリング41を押圧する。その結果、伝達部材22が回動する際に、余分な分力を生じずに効率良く前面部22bからベアリング41に力を伝達して(ベアリング41を押圧して)、キャリッジ40を安定して加工位置に移動させることができる。
【0081】
また、ベアリング41は、前面部22bのうち上面部22aに接続する角部の近傍に対して接触している。伝達部材22における当該箇所は精度と剛性が高く、前面部22bとベアリング41の接触を高い精度で管理して、キャリッジ40を安定して加工位置に移動させることができる。
【0082】
従って、ナイフ56を下降させて被加工媒体Sに切り込ませる際に、ナイフ56を切り込む力(キャリッジ40を押し込む力)が安定し、精度の高い加工を実現できる。
【0083】
以上に説明したように、本実施形態の媒体加工装置10は、加工部であるナイフ56を支持して動作させる加工部駆動機構20を簡単な構造にすると共に、ナイフ56を高精度に且つ安定して動作させることが可能である。
【0084】
なお、被加工媒体Sに対して行う加工の種類は、ナイフ56による切断には限定されない。例えば、加工部ホルダ50からナイフホルダ51を取り外し、代わりに加工部ホルダ50に筆記用具を取り付けて、被加工媒体Sに対して筆記用具を用いた描画加工を行うことも可能である。さらにナイフや筆記用具以外の加工部を選択して、切断や描画以外の加工を被加工媒体Sに対して行わせることも可能である。
【0085】
また、キャリッジ40のホルダ着脱部40eから加工部ホルダ50を取り外し、ホルダ着脱部40eに対して直接的に筆記用具などの加工部を取り付ける構成を採用することも可能である。
【0086】
以上の実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0087】
上記実施形態の媒体加工装置10では、加工部駆動機構20において、キャリッジ40をガイド軸21に沿ってX軸方向(支持部送り方向)へ移動させて第1の動作を実行させ、ガイド軸21の中心を通る中心軸C1を中心としてキャリッジ40を回動させて第2の動作を実行させている。つまり、第2の動作に関して支持部(キャリッジ40)の回動の中心となる仮想の軸線(中心軸C1)が、第1の動作に関して支持部(キャリッジ40)を支持部送り方向に案内する部材(ガイド軸21)の中心を通る構造である。しかし、支持部を支持部送り方向に移動可能に案内する手段として、ガイド軸21のような軸部材以外の構成を適用することも可能である。
【0088】
例えば、変形例として、伝達部材22の前面部22bに相当する平面部に、支持部送り方向に延びるガイドレールを設け、当該ガイドレールを介して支持部(上記実施形態のキャリッジ40に相当する部材)を支持部送り方向に移動可能に案内してもよい。この場合、上記実施形態のガイド軸21を設けず、伝達部材22が本体部11の側壁11a及び側壁11bに対して直接的に(ガイド軸21を介さずに)回動可能に支持される構成にしてもよい。
【0089】
このような変形例においても、支持部送り方向に沿った仮想の軸線を中心として支持部を回動させることによって、媒体(被加工媒体S)と加工部(ナイフ56など)の距離を変化させる第2の動作を行わせることができる。換言すれば、第1の動作において支持部を支持部送り方向に移動可能に案内する部分と、支持部の第2の動作の中心となる仮想の軸線とは、設けられる位置が互いに異なっていてもよい。
【0090】
上記実施形態の媒体加工装置10では、被加工媒体Sを搬送する媒体送り方向(Y軸方向)に対して略垂直に支持部送り方向(X軸方向)を設定しているが、支持部送り方向が媒体送り方向に対して垂直ではない構成にも適用が可能である。つまり、支持部送り方向は、少なくとも媒体送り方向と交差する方向であればよい。
【0091】
上記実施形態の媒体加工装置10では、ガイド軸21の外周面とキャリッジ40の軸挿通孔40aの内周面がそれぞれ円筒形状(円形断面形状)であり、ガイド軸21とキャリッジ40の間では、第1の方向R1や第2の方向R2へ回動する力が伝達されない。しかし、ガイド軸21の外周面とキャリッジ40の軸挿通孔40aの内周面をそれぞれ非円筒形状(非円形断面形状)にして、ガイド軸21とキャリッジ40の間で第1の方向R1や第2の方向R2へ回動する力が伝達されるように構成することも可能である。
【0092】
上記実施形態の媒体加工装置10では、ガイド軸21と伝達部材22が一対の接続板23及び接続板24を介して互いに固定されており、高い剛性を有している。しかし、ガイド軸21に代えて、本体部11の側壁11a及び側壁11bに対して固定された(回動しない)ガイド軸を設け、この固定されたガイド軸に対して一対の接続板23及び接続板24を回動可能に支持した構成を採用することも可能である。つまり、キャリッジ40をX軸方向に移動可能に案内する軸部材(ガイド軸)は、伝達部材22と共に回動する部材であってもよいし、回動は行わずに伝達部材22を回動可能に支持する部材であってもよい。そして、本発明における軸部材を中心とする回動とは、軸部材(ガイド軸)自体が伝達部材22やキャリッジ40などと共に回動する構成と、軸部材(ガイド軸)は回動せずに伝達部材22やキャリッジ40などが回動する構成の両方を含む概念である。
【符号の説明】
【0093】
10 :媒体加工装置
11 :本体部
11a :側壁
11b :側壁
11c :下部壁
12 :トレー
13 :搬送ローラ(媒体搬送機構)
14 :搬送ローラ(媒体搬送機構)
17 :ローラ駆動モータ(媒体搬送機構)
20 :加工部駆動機構
21 :ガイド軸(軸部材)
22 :伝達部材
22a :上面部(接続平面部)
22b :前面部(平面部)
22c :後面部(平行平面部)
23 :接続板(接続部材)
24 :接続板(接続部材)
25 :昇降駆動モータ(駆動手段)
26 :第1ギヤ
27 :第2ギヤ
28 :トーションバネ
29 :セクタギヤ
30 :中継ギヤ
31 :セクタギヤ
40 :キャリッジ(支持部)
40a :軸挿通孔
40b :本体部
40c :嵌合部
40d :ベルト接続部
40e :ホルダ着脱部
40f :クランプ部
41 :ベアリング(接触部)
42 :駆動ベルト
43 :プーリ
44 :プーリ
45 :ベルト駆動モータ
46 :位置検出センサ
50 :加工部ホルダ
51 :ナイフホルダ
52 :キャップ
53 :マグネット
55 :ナイフユニット
55a :軸部
56 :ナイフ(加工部、切断器具)
57 :ナイフベアリング
60 :制御部
61 :第1検出部
62 :第2検出部
C1 :中心軸(仮想の軸線)
S :被加工媒体(媒体)
T :台紙
X :X軸方向(支持部送り方向)
Y :Y軸方向(媒体送り方向)
Z :Z軸方向