IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メビウスパッケージング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-複合蓋 図1
  • 特開-複合蓋 図2
  • 特開-複合蓋 図3
  • 特開-複合蓋 図4
  • 特開-複合蓋 図5
  • 特開-複合蓋 図6
  • 特開-複合蓋 図7
  • 特開-複合蓋 図8
  • 特開-複合蓋 図9
  • 特開-複合蓋 図10
  • 特開-複合蓋 図11
  • 特開-複合蓋 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089208
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】複合蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20240626BHJP
   B65D 47/32 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B65D47/20 111
B65D47/32 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204424
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩光
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB09
3E084DC03
3E084FC04
3E084GA08
3E084GB06
3E084KA05
3E084KB01
3E084LD03
3E084LE01
(57)【要約】
【課題】容器を圧搾する際の力の強さによらず、内容物を穏やかに排出することのできる新規の複合蓋を提供すること。
【解決手段】排出流路18の断面積の最小値に対する連通開口80の面積を所要とおりに設定する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する内側層と該内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器のための複合蓋であって、
閉塞壁と該閉塞壁の外周縁部から垂下する筒形状の装着壁とを含み、該閉塞壁には排出開口及び該排出開口の外周縁を囲繞して上方に延出する排出筒が形成されている蓋本体と、
該蓋本体の該閉塞壁の下面に装着され且つ連通開口を有する中栓部材と、
該中栓部材に組み合わされ、常態においては該連通開口を閉じる逆止弁部材と、
を具備する複合蓋において、
該排出筒の内側には該排出開口を始点とする排出流路が規定されており、該排出流路の断面積の最小値に対する該連通開口の面積が20%以下である、ことを特徴とする複合蓋。
【請求項2】
容器内圧が上昇すると該逆止弁部材は該連通開口を開く、請求項1に記載の複合蓋。
【請求項3】
該排出筒の内周面には、内周面が円筒形状である環状の突部が形成されており、該突部の内周面にて該排出流路の断面積は最小となる、請求項1に記載の複合蓋。
【請求項4】
該排出流路の断面積の最小値に対する該連通開口の面積は13.7%以下である、請求項1に記載の複合蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容する内側層とこの内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器のための複合蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
近時においては、調味料、特に醤油のための容器として、内容物を収容する内側層とこの内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器が広く実用に供されている。そして、かような容器のための容器蓋として、下記特許文献1には、閉塞壁とこの閉塞壁の外周縁部から垂下する筒形状の装着壁とを含む蓋本体と、蓋本体の閉塞壁の下面に装着される中栓部材と、中栓部材に組み合わされる逆止弁部材とを具備する複合蓋が開示されている。蓋本体の閉塞壁には排出開口及びこの排出開口の外周縁を囲繞して上方に延出する排出筒が形成されている。また、中栓部材には連通開口が形成されている。逆止弁部材は中栓部材と蓋本体の閉塞壁の下面との間で下方に弾性的に付勢せしめられた状態で配設されており、状態においては連通開口を閉じるが容器内圧が上昇すると連通開口を開く。従って、上記のとおりの複合蓋を容器の口頸部に装着して容器内の内容物を排出するには、蓋本体の排出筒の端縁を下方に向けた状態で容器を圧搾する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-152425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上記特許文献1に開示された複合蓋にあっては、適切な力で容器を圧搾した場合には、内容物は排出筒の内周面に沿って移動した後に排出筒の端縁から吐出されるため内容物の狙いを容易に定めることが可能で且つ排出された内容物の跳ねもある程度回避可能であるが、過剰に強い力で容器を圧搾した場合には、内容物は排出筒の内周面から離隔して勢いよく飛び出すつまり噴射してしまうため内容物の狙いを定めるのが困難となり、また排出された内容物が跳ねて台上或いは衣服に付着してしまい好ましくない。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、容器を圧搾する際の力の強さによらず、内容物を穏やかに排出することのできる、新規且つ改良された複合蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究及び実験の結果、排出流路の断面積の最小値に対する連通開口の面積を所要とおりに設定することで、上記主たる技術的課題を解決できることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決する複合蓋として、内容物を収容する内側層と該内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器のための複合蓋であって、
閉塞壁と該閉塞壁の外周縁部から垂下する筒形状の装着壁とを含み、該閉塞壁には排出開口及び該排出開口の外周縁を囲繞して上方に延出する排出筒が形成されている蓋本体と、
該蓋本体の該閉塞壁の下面に装着され且つ連通開口を有する中栓部材と、
該中栓部材に組み合わされ、常態においては該連通開口を閉じる逆止弁部材と、
を具備する複合蓋において、
該排出筒の内側には該排出開口を始点とする排出流路が規定されており、該排出流路の断面積の最小値に対する該連通開口の面積が20%以下である、ことを特徴とする複合蓋が提供される。
【0008】
好ましくは、容器内圧が上昇すると該逆止弁部材は該連通開口を開く。該排出筒の内周面には、内周面が円筒形状である環状の突部が形成されており、該突部の内周面にて該排出流路の断面積は最小となるのが好適である。該排出流路の断面積の最小値に対する該連通開口の面積は13.7%以下であるのがよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合蓋にあっては、排出筒の内側において排出開口を基端とする排出流路の断面積の最小値に対する連通開口の面積が20%以下であることに起因して、後の評価結果からも明らかなとおり、容器を圧搾する際の力の強さによらず、内容物を排出筒の内側から噴射させることなく排出筒の端縁から穏やかに吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に従って構成された複合蓋の好適実施形態の断面図。
図2図1に示す複合蓋における蓋本体の断面図。
図3図1に示す複合蓋における蓋本体の平面図。
図4図1に示す複合蓋における蓋本体の底面図。
図5図1に示す複合蓋における中栓部材の断面図。
図6図1に示す複合蓋における中栓部材の平面図。
図7図1に示す複合蓋における中栓部材の底面図。
図8図1に示す複合蓋における逆止弁部材の断面図。
図9図1に示す複合蓋における逆止弁部材の平面図。
図10図1に示す複合蓋における逆止弁部材の底面図。
図11図1に示す複合蓋が容器の口頸部に装着されて外蓋が開位置にあるときに容器が傾斜せしめられ且つ圧搾された状態の断面図。
図12】表1の結果の欄で各符号が示す内容物の排出形態の様子を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された複合蓋の好適実施形態について、更に詳述する。本明細書及び特許請求の範囲で使用する語句「上」及び「下」は、特に指定しない限り図1(a)及び(b)に示す状態(即ち容器が正立して且つ後述する外蓋が閉位置にある状態)での上及び下を意味する。
【0012】
主に図1を参照して説明すると、全体を番号2で示す複合蓋は、蓋本体4と、中栓部材6と、逆止弁部材8とを具備している。後述するとおり、図1(a)は外蓋58が開位置にある状態、図1(b)は外蓋58が閉位置にある状態を夫々示す。蓋本体4は適宜の合成樹脂から射出成形又は圧縮成形することで形成され、平面視において円形の閉塞壁10とこの閉塞壁10の外周縁から垂下する円筒形状の装着壁12とを含んでいる。図1と共に図2乃至図4を参照して説明を続けると、閉塞壁10は上下方向に見て上方に位置する円形の中央部10aと、下方に位置する円環形状の外周部10bと、中央部10aと外周部10bとを接続する円錐台形状の中間部10cとを備えている。中央部10aの中央には円形の排出開口14が形成されており、中央部10aの上面には排出開口14の外周縁を囲繞して上方に延びる排出筒16が形成されている。排出筒16の内側には排出開口14を始点とする排出流路18が規定されている。排出筒16の上下方向中間部の内周面には径方向内側に突出する円環状の突部20が形成されており、排出流路18の断面積は突部20の内周面にて最小となる。閉塞壁10の外周縁部の上面には略円筒形状の係止壁22が形成されている。係止壁22の外周面上端には半径方向外方に突出した環状係止突条24が形成されている。閉塞壁10の外周部10bにおける排出開口14と後述するヒンジ部との間には、上下方向に貫通する円形の吸引孔26が形成されている。閉塞壁10の上面には吸引孔26の外周縁を囲繞して上方に延出する円筒形状の延出筒28が形成されている。延出筒28については後述する。閉塞壁10の中央部10aにおける外周縁部の下面には下方に向かって突出する円環形状の微小突条29が形成されている。閉塞壁10の中間部10cの下面には下方に向かって延びる円筒形状の係合壁30が形成されている。係合壁30の下端には半径方向内方に突出した環状係合突条32が形成されている。閉塞壁10の外周部10bにおける内周縁部の下面には下方に向かって延びる略円筒形状のシール壁34が形成されている。シール壁34の外周面は後述する容器の内側層の内周面に密接する。閉塞壁10の外周縁部の下面には下方に膨出する円環形状の膨出部36が形成されている。膨出部36の外周面は装着壁12の内周面にも接続されている。膨出部36の下面は後述する容器の外側層の上面に当接する。
【0013】
主に図2を参照して説明すると、延出筒28の内周面には半径方向に突出した円環状の弁座38が形成されている。延出筒28の内周面における弁座38よりも上方の部位には周方向に間隔をおいて上下方向に延びる複数個(図示の実施形態においては6個)の案内リブ40が形成されている。案内リブ40は弁座38の上面から延出筒28の上端部まで直線状に延びており、延出筒28内には上下方向に移動自在に弁部材42が組み込まれる。
【0014】
主に図1(a)を参照して説明を続けると、弁部材42は、上下方向に延在し且つ延出筒28の内周面に形成された弁座38の内径より小さい外径を有する円柱部44と、円柱部44の中間部乃至下部において半径方向外方に突出する弁部46と、円柱部44の上部において半径方向外方に突出する突出部48とを有している。突出部48の上面の中央には凹所50が形成されている。
【0015】
図1と共に図2乃至図4を参照して説明を続けると、装着壁12の内周面下端部には、径方向内側に向かって突出して周方向に弧状に延びる被嵌合突条52が形成されている。装着壁12には上端が開放された円筒形状の分離溝54が形成されている。分離溝54等の存在に起因して、複合蓋2は内容物の排出が完了した後に後述する容器の口頸部から離脱せしめることが可能となり、容器と複合蓋2とを分別廃棄をすることができる。かような分離溝54を含む装着壁12の分別機構は既に周知であり、その詳細については、例えば特開2007-22567号公報を参照されたい。
【0016】
蓋本体4の装着壁12の上端にはヒンジ手段56を介して外蓋58が接続されている。外蓋58は蓋本体4と一体に形成され(従って外蓋58も合成樹脂製である)、蓋本体4の閉塞壁10を覆う閉位置(図1(a)に示す状態)と閉塞壁10を露呈せしめる開位置(図1(b)に示す状態)との間で旋回自在である。外蓋58は円形天面壁60とこの天面壁60の外周縁部から垂下する円筒形状スカート壁62とを有する。天面壁60の下面の中央には下方に延出する円柱形閉塞栓64が形成されている。図1(b)に示すとおり、閉塞栓64は、外蓋58が閉位置にあるとき、閉塞壁10に形成された排出筒16の内側に挿通され、閉塞栓64の先端部の外周面が排出筒16の突部20の内周面と密着する。閉塞栓64の基端部の外周には、天面壁60の下面から下方に垂下する略円筒形状の垂下片66が形成されている。垂下片66は外蓋58が閉位置にあるときに、排出筒16の上端部の外周縁を囲繞する。垂下片66の内周縁部には、外蓋58を閉位置から開位置に旋回せしめる際に天面壁60の下面に付着した内容液の飛散を防止するための二重円環溝68も形成されている。天面壁60の下面の径方向中間部には、下方に垂下する筒状支持壁70が形成されている。図3に示すとおり、支持壁70は平面視において略D字形状であって、外蓋58が閉位置のときに閉塞壁10に形成された延出筒28と干渉することを回避している。外蓋58が閉位置にあるときに、支持壁70の下面の一部が閉塞壁10の中央部10aの上面に当接することで、天面壁60の上面に付加された外力によって天面壁60が下方に変形することは防止される。スカート壁62の内周面の下端部には、径方向内側に向かって突出して周方向に円弧状に延びる被係止突条72が本実施形態においては2つ形成されている。かかる2つの被係止突条72は、周方向に連続する円環形状の被係止突条に軸方向に延びるスリットを2つ形成することで設けられる。ヒンジ手段56の直径方向反対側における、スカート壁62の外周面下端部には、外蓋58を旋回動せしめる際に指を掛けることができる鍔部74が形成されている。
【0017】
続いて、図1と共に図5乃至図7を参照して、中栓部材6について説明する。中栓部材6は適宜の合成樹脂から射出成形又は圧縮成形することで形成され、蓋本体4の閉塞壁10の下面に装着されている。中栓部材6は円形の中栓底壁76と中栓底壁76の外周縁から上方に向かって径方向外側に傾斜して延びる椀形状の中栓外周壁78とを備えている。中栓底壁76の外周縁部には上下方向に貫通し且つ周方向に延在する円弧形状の連通開口80が形成されている。ここで、本発明の複合蓋にあっては、連通開口80の面積は排出流路18の断面積の最小値に対して20%以下であることが重要であり、13.7%以下であるのが好ましい。なお、図示の実施形態においては、上述したとおり排出流路18の断面積は、突部20が形成されている部分において最小となる。中栓底壁76の上面の中央には上方に延びる断面円形のガイドロッド82が形成されている。中栓外周壁78の上端部の外周面には径方向外側に向かって実質上水平に延出する円環形状の接続壁84が接続されており、接続壁84の外周縁部の下面には下方に垂下する略円筒形状の被係合壁86が設けられている。図1に示すとおり、中栓部材6は、接続壁84の上面が蓋本体4の閉塞壁10の下面に形成された微小突条29が当接せしめられると共に被係合壁86の下端が蓋本体4の閉塞壁10の下面から垂下する係合壁30の下端に形成された係合突条32によって係合支持されることで、蓋本体4の閉塞壁10の下面に装着される。なお、後述するとおり、中栓部材6が蓋本体4の閉塞壁10の下面に装着されるに先立ち、中栓部材6に逆止弁部材8が組み合わさされる。
【0018】
次に、図1と共に図8乃至図10を参照して逆止弁部材8について説明する。逆止弁部材8はゴム、エラストマー、シリコン等の如き比較的軟質である合成樹脂を射出成形することで形成され、中栓部材6に組み合わされる。逆止弁部材8は円形の頂壁88と頂壁88の外周縁から下方に垂下する円筒形状のガイド壁90とガイド壁90の下端から上方に径方向外側に向かって傾斜して延びる椀状の逆止弁部92と備えている。頂壁88の上面には上方に延びる円柱形状の被押圧部94が形成されている。逆止弁部92の上端面には切欠き96が本実施形態においては周方向に等角度間隔をおいて6個形成されている。逆止弁部材8はガイド壁90の内側に中栓部材6のガイドロッド82が挿入された状態で蓋本体4の閉塞壁10の下方に配置される。そして、外蓋58が開位置にあるとき、逆止弁部材8は逆止弁部92の外周面が中栓部材6の中栓外周壁78の内周面に当接する降下位置と、逆止弁部92の上面が蓋本体4の閉塞壁10の下面に当接する上昇位置(図11を参照されたい)との間を上下方向に往復移動自在となる。ガイド壁90の内側にガイドロッド82が挿入されているため逆止弁部材8は安定した姿勢で上下方向に移動することができる。また、上昇位置では逆止弁部92の上面が蓋本体4の閉塞壁10の下面に当接するため、逆止弁部材8が上昇位置を超えて上昇することは制限される。また、外蓋58が閉位置にあるときには、図1(b)に示すとおり、外蓋58の天面壁60に形成された閉塞栓64が被押圧部94を下方に押圧して逆止弁部材8は閉位置に保持される。
【0019】
図1には、複合蓋2が装着される容器100の口頸部も二点鎖線で示されている。容器100は内容物を収容する内側層102とこれを囲繞する外側層104とを備えた積層構造容器であり、内側層102と外側層104との間には層間空間106が規定されている。容器100は、外側層104を形成するための基材(外側プリフォーム)の内側に内側層102を形成するための基材(内側プリフォーム)を予め積層させた状態で、外側プリフォームと内側プリフォームとを一体にブローして共押し出しすることで形成される。かような容器100の成形方法は周知であり、詳細については例えば特許第2586294号公報を参照されたい。内側層102及び外側層104の原料は共にポリエチレンテレフタレート(PET)の如き適宜の合成樹脂であり、内側層102と外側層104との間では静電気等による相互吸着力が生じにくく、内側層102と外側層104とは剥離容易である。
【0020】
容器100の口頸部は円筒形状である。換言すれば、内側層102及び外側層104の上端部は円筒形状である。外側層104の上端部の外周面には半径方向外方に突出する環状嵌合突条108が形成されており、嵌合突条108と蓋本体4の装着壁12の内周面に形成された被嵌合突条52との嵌合によって、複合蓋2は容器100の口頸部に装着される。嵌合突条108の下方には、容器を運搬する際に使用される公知のサポートリング110も形成されている。外側層104の上端部の内周面には上方を向いた円環形状の肩面112が形成されている。内側層102の上端部には、共に円環形状である上方フランジ114及び下方フランジ116が上下方向に間隔をおいて形成されている。下方フランジ116の下面の外周縁部が外側層104の内周面に形成された肩面112と当接することで、外側層104は内側層102によって上下方向に支持されている。更に、上方フランジ114及び下方フランジ116の外周面は共に外側層104の内周面と対向することで、外側層104に対して内側層102が傾動することは規制されている。そして、上方フランジ114及び下方フランジ116には周方向に間隔をおいて複数個の切欠118が形成されており、この切欠118及び吸引孔26を介して層間空間106は容器100の外部に連通する。
【0021】
醤油の如き液体内容物が内側層102内に充填された容器100に複合蓋2を装着する際には、外蓋58が閉位置にある状態の複合蓋2の装着壁12を容器100の口頸部に被嵌し、複合蓋2を容器100に対して下方に強制せしめる。複合蓋2は、その装着壁12の内周面に形成された被嵌合突条52が容器100の口頸部の外周面に形成された嵌合突条108を弾性的に乗り越えてこれに嵌合されることで、容器100の口頸部に装着される(図1(b)を参照されたい)。複合蓋2が容器100の口頸部に装着されると、蓋本体4の係合壁30及びシール壁34が容器100の内側層102の内部、さらに詳しくは内側層102の内部に進入し、シール壁34の外周面が内側層102の内周面を半径方向外方に弾性的に押圧する(換言すれば、シール壁34は内側層102の内側に圧入される)。これにより、シール壁34の外周面が内側層102の内周面の上端部と密着し、内容物がシール壁34の外側を通過して内側層102(即ち容器100)の外部に流出することが阻止される。
【0022】
複合蓋2が容器100の口頸部に装着されると更に、図1に示すとおり、容器100の上端(更に詳しくは内側層102の上端)が吸引孔26の下方に位置し、弁部材42が容器100の上端に当接することによって弁部材42が上方に移動され、弁部46の上面は弁座38の下面よりも下方に位置するが突出部48の環状下面が弁座38の環状上面よりも上方に離間して位置する。
【0023】
容器の内容物を消費する際には、先ず、外蓋58の鍔部74に指を掛けて外蓋58を上方に強制し、外蓋58の被係止突条72を蓋本体4の係止突条24から弾性的に離脱させる。次いで、外蓋58を開位置に向けて旋回動せしめて閉塞壁10を露呈させる。その後に、容器100の側面を把持して適宜に傾斜せしめ、容器100の側面を圧搾する。容器100が圧搾されると層間空間106が加圧され、図11に示すとおり、蓋本体4の延出筒28内に組み込まれた弁部材42は上方に偏倚される(図1(a)と図11とを比較参照されたい)。そして、弁部46の上面が弁座38の下面に密接して、層間空間106内の空気が吸引孔26を通過して外部に流出することが規制される。容器100が更に圧搾されると内側層102が加圧される。これにより、逆止弁部材8が降下位置から上昇位置へ移動して連通開口80が開放され、内側層102内に充填された内容物は連通開口80を通過して中栓部材6と逆止弁部材8との間に進入し、次いで切欠き96及び排出開口14を順次に通過して蓋本体4の排出筒16の内側に進入して排出される。
【0024】
このとき、本発明の複合蓋にあっては、排出流路18の断面積の最小値に対する連通開口80の面積が20%以下であることに起因して、後の評価結果からも明らかなとおり、容器を圧搾する際の力の強さによらず、内容物を排出筒16の内側から噴射させることなく排出筒16の端縁から穏やかに吐出させることができる。排出流路18の断面積の最小値に対する連通開口80の面積が13.7%以下である場合には、後に示す評価結果から明らかなとおり、容器を圧搾する力の強さによらず、内容物を排出筒16の端縁の略直下に吐出させることができる。
【0025】
内容物の排出を停止するには、容器100の側面の圧搾を解除する。容器100の側面の圧搾が解除されたことで、容器内圧の上昇は解除され、これにより逆止弁部材8が下方に移動せしめられ、逆止弁部92が中栓外周壁78の内周面と密着し、連通開口80が閉じられる。従って、内容物の排出が停止すると共に内側層102は密閉される。容器100の側面の圧搾が解除されると更に、外側層104は自身の有する弾性力により復元、即ち圧搾された状態から圧搾される前の状態に膨張し、これによって外側層104と内側層102との間の層間空間106は負圧となる(層間空間106が減圧される)。そうすると、弁部材42は、図11に示す上方に偏倚された状態から降下して図1(a)に示す状態となり、再び下端が容器100の上端に当接し、弁部46の上面は弁座38の下面よりも下方に位置するが環状突出部48の下面は弁座38の上面から上方に離間することとなる。これにより、外気が吸引孔26を通過して層間空間106に流入することで層間空間106は大気圧と等しくなる。その後に外蓋58を開位置から閉位置へ閉旋回動せしめて図1(b)に示す状態にする。かくすると、外蓋58の天面壁60の下面に形成された閉塞栓64が蓋本体4の閉塞壁10に形成された排出筒16の内側に進入した後に閉塞栓64の下端面が逆止弁部材8に形成された被押圧部94の上端面と当接してこれを下方に押圧する。これにより、逆止弁部材8は閉位置に保持され、内容物が連通開口80を通過したとしても逆止弁部材8と中栓部材6との間で堰き止められる。
【0026】
続いて、本発明に従って構成された複合蓋の評価方法及び評価結果並びに考察について説明する。
【0027】
<評価方法>
図2乃至図4に示すとおりの形態のポリエチレン製蓋本体4及び図8乃至図10に示すとおりの形態の逆止弁部材8を夫々射出成形した。蓋本体4の呼び径は36.3mmで、閉塞壁10に形成された排出開口14の面積は19.6mm、排出流路18の断面積の最小値S1は7.07mmであった。一方、中栓部材に関しては、上記排出流路18の断面積の最小値S1に対する連通開口80の面積S2の比率が段階的に変化するように連通開口80の周方向延在長さを調整したものを4個射出成形し、夫々を中栓部材6-1乃至6-4とした。中栓部材6-1乃至6-4夫々の連通開口80の面積は表1に示すとおりであり、中栓部材6-2が図5乃至図7に示す形態のものである。そして、中栓部材6-1乃至6-4を順次に上記のとおりに成形した蓋本体4及び逆止弁部材8と組み合わせて複合蓋を構成し、かかる複合蓋を外側層104の外径が60mmで内側層102の容量が240mmlである容器100の口頸部に装着した。内側層102には内用物として200mlの醤油を充填した。その後に、蓋本体4の外蓋58を開位置にし、排出筒16の端縁が台上から100mmの高さ位置にて容器の中心軸線が水平に対して45°の角度で排出筒16の端縁が下方を向くよう傾斜せしめ、容器100の側面を圧搾したときに排出筒16から排出される内容物の様子を観察した。容器100の内側層102には内容物として醤油を充填し、容器100の側面を比較的強い50Nの力で圧搾した場合と、中程度である30Nの力で圧搾した場合と、比較的弱い20Nの力で圧搾した場合とについて夫々観察した。なお、上記比較的強い力及び中程度の力並びに比較的弱い力の値は、平均的な成人男性が上記のとおりの形態の容器100の側面を圧搾する際に想定される力の大きさをもとに設定した。
【0028】
<評価結果>
上記評価方法に基づく評価結果を表1の結果の欄に示す。表1の結果の欄におけるa乃至cは夫々排出筒16から排出された内容物の様子の分類を示すものである。上記aに分類される状態を模式的に示したのが図12(a)である。なお、同図中一点鎖線で示される線が容器の中心軸線である(図12(b)及び(c)も同じ)。この状態にあっては、内容物200は排出筒16の端縁の直下乃至略直下に吐出つまり穏やかに吐出される。そのため、容易に内容物の排出先の狙いを定めることができ且つ排出された内容物に勢いはないため内容物の跳ねも生じにくい。上記bに分類される状態を模式的に示したのが図12(b)である。この状態にあっては、内容物200は排出筒16の端縁の略直下に吐出されるわけではないものの、放物線を描いて台上に到達する。そのため、排出された内容物の勢いはある程度低下せしめられており内容物の跳ねは生じにくい。上記cに分類される状態を模式的に示したのが図12(c)である。この状態にあっては、排出された内容物200の軌跡は放物線状ではなく直線状であり、内容物は排出筒16の内側から噴射される。そのため、排出された内容物200の勢いは低下せず維持されており内容物の跳ねが生じる。
【0029】
【表1】
【0030】
<考察>
表1を参照するに、排出流路18の断面積の最小値S1に対する連通開口80の面積S2の比率(以下「S2/S1」とする)が20.9%より高い中栓部材6-1にあっては、強い力で容器100を圧搾すると排出された内容物が跳ねる虞があり好ましくない。一方、S2/S1が20.9%以下である中栓部材6-2乃至6-4にあっては、強い力で容器100を圧搾しても排出された内容物が跳ねる虞はない。S2/S1が13.7%以下である中栓部材6-3及び6-4にあっては更に、容器100を圧搾する力の強さによらず内容物は排出筒16の端縁の略直下に吐出されるため、内容物が跳ねる虞が無いことは勿論のこと内容物の排出先の狙いを容易に定めることができる。
【0031】
以上、本発明に従って構成された複合蓋について添付した図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において適宜の修正や変更が可能である。例えば、図示の実施形態においては、逆止弁部材8にはこれを蓋本体4の閉塞壁10の下面と協働して中栓部材6に常時押し付ける弾性手段は含まれていなかったが、上記特許文献1のように、逆止弁部材に弾性手段を設けてこれを蓋本体の閉塞壁の下面と協働させ、逆止弁部材を常時中栓部材に押し付けるようにしてもよい。また、蓋本体4の閉塞壁10に吸引孔26及びこれの外周縁を囲繞する延出筒28を形成すると共に延出筒28の内側に所要弁部材42を組み込んで容器100の内側層102と外側層104との間の層間空間106の圧力を調整することに替えて、上記特許文献1のように蓋本体の閉塞壁の下面に可撓性を有するフラップ片を設けて上記圧力を調整してもよい。
【符号の説明】
【0032】
2:複合蓋
4:蓋本体
6:中栓部材
8:逆止弁部材
10:閉塞壁
12:装着壁
14:排出開口
16:排出筒
18:排出流路
80:連通開口
100:容器
102:内側層
104:外側層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12