IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 星歐光學股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特開2024-8921可塑剤、プラスチック組成物及びプラスチック製品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008921
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】可塑剤、プラスチック組成物及びプラスチック製品
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/58 20060101AFI20240112BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240112BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C07C229/58 CSP
C08L101/00
C08K5/18
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112207
(22)【出願日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】111125824
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】516134855
【氏名又は名称】星歐光學股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 偉源
(72)【発明者】
【氏名】陳 柏村
(72)【発明者】
【氏名】盧 子蓉
(72)【発明者】
【氏名】陳 日賢
(72)【発明者】
【氏名】洪 于傑
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 鈞鴻
【テーマコード(参考)】
4H006
4J002
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB50
4H006BJ50
4H006BT32
4H006BU46
4J002AA001
4J002AB041
4J002BB032
4J002BB052
4J002BB122
4J002BC032
4J002BD032
4J002BE021
4J002BG062
4J002BN152
4J002CC182
4J002CE002
4J002CF031
4J002CF062
4J002CF071
4J002CF181
4J002CF191
4J002CG002
4J002CG011
4J002EN096
4J002FD026
4J002GA00
4J002GA01
4J002GB00
4J002GB01
4J002GB02
4J002GG01
4J002GG02
4J002GK03
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】可塑剤、プラスチック組成物及びプラスチック製品を提供する。
【解決手段】本開示内容は、生分解性を有し、式(I)に示す構造を有する可塑剤を提供し、式(I)は明細書に定義されたとおりであり、且つ可塑剤は中心構造を有する。これにより、本開示内容の可塑剤は、生分解可能な特性により、環境と生態への破壊を減少することができ、且つ、フタル酸エステル構造を有さないように設計することで、優れた安全性を有し、可塑剤が正常な生理機能に影響することを防止することができる。更に、アントラニル酸メチルが可食性を有するので、アントラニル酸メチルと類似する構造の可塑剤を設計することで、比較的安全な生化学的性質を有することができる。
【選択図】無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性を有し、式(I)に示す構造を有し、
【化1】
式中、Xは中心構造である可塑剤。
【請求項2】
Xの炭素数はXCであり、1≦XC≦8の条件を満たす請求項1に記載の可塑剤。
【請求項3】
Xは、直鎖構造である請求項2に記載の可塑剤。
【請求項4】
前記可塑剤の分子量はMwであり、300g/mole≦Mwの条件を満たす請求項2に記載の可塑剤。
【請求項5】
前記可塑剤の分解温度はPtであり、100℃≦Ptの条件を満たす請求項4に記載の可塑剤。
【請求項6】
63日目の分解率はDr63であり、且つ、前記可塑剤の63日目の分解率は92%≦Dr63の条件を満たす請求項4に記載の可塑剤。
【請求項7】
少なくとも1つのプラスチックと、
請求項1に記載の可塑剤と、
を含むプラスチック組成物。
【請求項8】
前記プラスチックは前記プラスチック組成物における重量百分率が85%~99.99%であり、前記可塑剤は前記プラスチック組成物における重量百分率が0.01%~15%である請求項7に記載のプラスチック組成物。
【請求項9】
前記プラスチックは生分解性プラスチックである請求項7に記載のプラスチック組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの非生分解性プラスチックを更に含み、前記少なくとも1つの非生分解性プラスチックの前記プラスチック組成物における重量百分率が前記生分解性プラスチックの前記プラスチック組成物における重量百分率より小さい請求項9に記載のプラスチック組成物。
【請求項11】
14日目の分解率はDr14であり、且つ、前記プラスチック組成物の14日目の分解率は1%≦Dr14の条件を満たす請求項7に記載のプラスチック組成物。
【請求項12】
21日目の分解率はDr21であり、且つ、前記プラスチック組成物の21日目の分解率は5%≦Dr21の条件を満たす請求項11に記載のプラスチック組成物。
【請求項13】
28日目の分解率はDr28であり、且つ、前記プラスチック組成物の28日目の分解率は10%≦Dr28の条件を満たす請求項12に記載のプラスチック組成物。
【請求項14】
42日目の分解率はDr42であり、且つ、前記プラスチック組成物の42日目の分解率は20%≦Dr42の条件を満たす請求項13に記載のプラスチック組成物。
【請求項15】
請求項7に記載のプラスチック組成物を含むプラスチック製品。
【請求項16】
少なくとも1つのプラスチックと、
生分解性を有するアミノベンゾイルエステル化合物を含む少なくとも1つの可塑剤と、
を含み、
前記プラスチックは前記プラスチック組成物における重量百分率が85%~99.99%であり、前記可塑剤は前記プラスチック組成物における重量百分率が0.01%~15%であるプラスチック組成物。
【請求項17】
前記可塑剤は式(I)に示す構造を有し、
【化2】
式中、Xは中心構造であり、Xの炭素数はXCであり、1≦XC≦8の条件を満たす請求項16に記載のプラスチック組成物。
【請求項18】
14日目の分解率はDr14であり、且つ、前記プラスチック組成物の14日目の分解率は1%≦Dr14の条件を満たす請求項17に記載のプラスチック組成物。
【請求項19】
42日目の分解率はDr42であり、且つ、前記プラスチック組成物の42日目の分解率は20%≦Dr42の条件を満たす請求項17に記載のプラスチック組成物。
【請求項20】
請求項16に記載のプラスチック組成物を含むプラスチック製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、可塑剤、プラスチック組成物及びプラスチック製品に関し、特に、生分解性を有する可塑剤、プラスチック組成物及びプラスチック製品に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑剤は、製品の可塑性を増加するための材料であり、常にプラスチック製品の可塑化に用いられ、現在一般的に使用されている従来の可塑剤は、例えば、DEHP、DBP、DINP、BBP及びDIDP等のような構造がエストロゲンに類似するフタル酸エステル類の化合物であることが多く、このような可塑剤は非生分解性物質であり、且つ青春期の子供を異常に発育させ、更に乳癌及び卵巣癌の発生率を増加させることがある。可塑剤は、プラスチック製品において非化学結合の形態で他の物質と結合し、プラスチック製品から放出されやすいため、プラスチック製品が食物又は皮膚と接触することで人体に吸収される。
【0003】
近年、環境保護意識が高まりつつあり、従来のプラスチック製品であれば、適切に処理されないと、環境と生態を破壊し、更にますます多くの生分解可能な製品が大量に普及されているが、分解率が高くない。殆どの可塑剤とプラスチックが依然として分解されることができないが、ユーザーは、このような製品が生分解性を有するため、このような製品を任意に処理しても環境と生態に影響を与えないと誤って考えることで、このようなプラスチック製品が適切に処理されずに、環境と生態への破壊を深めるようになり、現在、プラスチック製品は、既に人間の生活に不可欠な一部となっているので、プラスチック製品から放出されにくく又は人体に吸収されにくい可塑剤を探して、生分解性プラスチック製品を開発することは、非常に重要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示内容は、生分解可能な可塑剤の特性により、環境と生態への破壊を減少することができる可塑剤を提供する。フタル酸エステル構造を有さない可塑剤を設計することで、非生分解性を有する従来の可塑剤と異なり、優れた安全性を有し、可塑剤が正常な生理機能に影響することを防止することができる。アントラニル酸メチルは果物に含まれる天然化合物であり、可食性を有するので、アントラニル酸メチルの構造と類似する可塑剤を設計することで、比較的安全な生化学的性質を有することができる。本開示内容はまたプラスチック組成物を提供し、このようなプラスチック組成物は生分解可能な可塑剤を含み、生分解可能な可塑剤の特性により、環境と生態への破壊を減少することができ、且つ特定の混合割合を設計することで、良好な可塑化効果を有することができる。
【0005】
本開示内容によれば、生分解性を有し、式(I)に示す構造を有し、
【化1】
式中、Xは中心構造である可塑剤を提供する。
【0006】
これにより、本開示内容の可塑剤は、生分解可能な特性により、環境と生態への破壊を減少することができ、且つ、フタル酸エステル構造を有さないように設計することで、非生分解性を有する従来の可塑剤と異なり、優れた安全性を有し、可塑剤が正常な生理機能に影響することを防止することができる。更に、アントラニル酸メチルは果物に含まれる天然化合物であり、可食性を有するので、アントラニル酸メチルと類似する構造の可塑剤を設計することで、比較的安全な生化学的性質を有することができる。
【0007】
本開示内容によれば、少なくとも1つのプラスチックと、前述の可塑剤と、を含むプラスチック組成物を提供する。
【0008】
本開示内容によれば、前述のプラスチック組成物を含むプラスチック製品を提供する。
【0009】
これにより、本開示内容のプラスチック組成物及びプラスチック製品は、生分解可能な特性を有する可塑剤を含むように設計することで、環境と生態への破壊を減少することができる。
【0010】
本開示内容によれば、少なくとも1つのプラスチックと、少なくとも1つの可塑剤と、を含むプラスチック組成物を提供する。前記可塑剤は、生分解性を有するアミノベンゾイルエステル化合物を含む。プラスチック組成物におけるプラスチックの重量百分率が85%~99.99%であり、プラスチック組成物における可塑剤の重量百分率が0.01%~15%である。
【0011】
本開示内容によれば、前述のプラスチック組成物を含むプラスチック製品を提供する。
【0012】
これにより、本開示内容のプラスチック組成物及びプラスチック製品は、生分解可能な可塑剤の特性により、環境と生態への破壊を減少することができ、且つ特定の混合割合を設計することで、良好な可塑化効果を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示内容の一実施形態は、生分解性を有し、式(I)に示す構造を有する可塑剤を提供する。
【化2】
(式中、Xは中心構造である。)
これにより、生分解可能な特性により、環境と生態への破壊を減少することができる。また、フタル酸エステル構造を有さないように設計することで、非生分解性を有する従来の可塑剤と異なり、優れた安全性を有し、可塑剤が正常な生理機能に影響することを防止することができる。更に、アントラニル酸メチルは果物に含まれる天然化合物であり、可食性を有するので、アントラニル酸メチルと類似する構造の可塑剤を設計することで、比較的安全な生化学的性質を有することができる。
【0014】
本開示内容の可塑剤によれば、式(I)中、Xの炭素数はXCであり、1≦XC≦8の条件を満たしてよい。これにより、中心構造の炭素数を満たすことで、可塑剤が優れた分解率を有することに寄与する。又は、2≦XC≦7の条件を満たしてよい。又は、2≦XC≦6の条件を満たしてよい。又は、3≦XC≦5の条件を満たしてよい。
【0015】
本開示内容の可塑剤によれば、式(I)中のXは、直鎖構造であってもよい。これにより、直鎖分子が分岐分子より高い沸点を有することで、可塑剤が高温になって気化して人体に吸入されることを防止することができる。
【0016】
本開示内容の可塑剤によれば、可塑剤の分子量はMwであり、300g/mole≦Mwの条件を満たしてよい。これにより、特定の分子量の可塑剤を設計することで、可塑剤が人体に吸収されにくく、優れた安全性を有することができる。又は、305g/mole≦Mw≦500g/moleの条件を満たしてよい。又は、310g/mole≦Mw≦450g/molを満たすことができる。又は、315g/mole≦Mw≦400g/moleの条件を満たしてよい。又は、320g/mole≦Mw≦350g/moleの条件を満たしてよい。又は、325g/mole≦Mw≦330g/moleの条件を満たしてよい。
【0017】
本開示内容の可塑剤によれば、可塑剤の分解温度はPtであり、100℃≦Ptの条件を満たしてよい。これにより、可塑剤の高い分解温度により、可塑剤の高温時の構造安定性に寄与する。又は、150℃≦Ptの条件を満たしてよい。又は、200℃≦Ptの条件を満たしてよい。又は、250℃≦Ptの条件を満たしてよい。又は、300℃≦Pt≦500℃の条件を満たしてよい。
【0018】
本開示内容の可塑剤によれば、63日目の分解率はDr63であり、且つ、可塑剤の63日目の分解率は92%≦Dr63の条件を満たしてよい。これにより、可塑剤の63日目の分解率を満たすことにより、可塑剤の分解率の向上に寄与する。又は、93%≦Dr63の条件を満たしてよい。又は、94%≦Dr63の条件を満たしてよい。又は、94.5%≦Dr63≦100%の条件を満たしてよい。
【0019】
本開示内容の他の実施形態は、少なくとも1つのプラスチックと、前述の可塑剤と、を含むプラスチック組成物を提供する。これにより、生分解可能な特性を有する可塑剤により、環境と生態への破壊を減少することができる。
【0020】
本開示内容の更なる実施形態は、少なくとも1つのプラスチックと、少なくとも1つの可塑剤と、を含むプラスチック組成物を提供する。可塑剤は、生分解性を有するアミノベンゾイルエステル化合物を含む。これにより、生分解可能な特性を有する可塑剤により、環境と生態への破壊を減少することができる。
【0021】
本開示内容のプラスチック組成物によれば、プラスチック組成物におけるプラスチックの重量百分率が85%~99.99%であり、プラスチック組成物における可塑剤の重量百分率が0.01%~15%である。これにより、特定の混合割合を設計することで、プラスチック組成物は良好な可塑化効果を有するようになる。又は、プラスチック組成物におけるプラスチックの重量百分率が87.5%~99.99%であってもよく、プラスチック組成物における可塑剤の重量百分率が0.01%~12.5%であってもよい。又は、プラスチック組成物におけるプラスチックの重量百分率は90%~99.99%であってもよく、プラスチック組成物における可塑剤の重量百分率が0.01%~10%であってもよい。又は、プラスチック組成物におけるプラスチックの重量百分率は92.5%~99.99%であってもよく、プラスチック組成物における可塑剤の重量百分率が0.01%~7.5%であってもよい。又は、プラスチック組成物におけるプラスチックの重量百分率は94%~99.99%であってもよく、プラスチック組成物における可塑剤の重量百分率が0.01%~6%であってもよい。
【0022】
本開示内容のプラスチック組成物によれば、プラスチックは、生分解性プラスチックであってもよい。これにより、生分解性プラスチックと可塑剤の特性により、環境と生態への破壊を減少することができる。
【0023】
本開示内容のプラスチック組成物によれば、少なくとも1つの非生分解性プラスチックを更に含んでもよく、プラスチック組成物における非生分解性プラスチックの重量百分率はプラスチック組成物における生分解性プラスチックの重量百分率より小さい。これにより、プラスチック組成物が非生分解性プラスチックを含むことにより、プラスチック組成物の成形と構造の安定に寄与する。また、プラスチック組成物における非生分解性プラスチックの重量百分率がプラスチック組成物における生分解性プラスチックの重量百分率より小さいことにより、プラスチック組成物が良好な分解率を有することを確保することができる。
【0024】
本開示内容のプラスチック組成物によれば、14日目の分解率はDr14であり、且つ、プラスチック組成物の14日目の分解率は1%≦Dr14の条件を満たしてよい。これにより、プラスチック組成物の14日目の分解率を満たすことにより、プラスチック組成物の初期分解率の向上に寄与する。又は、1.5%≦Dr14の条件を満たしてよい。又は、2%≦Dr14の条件を満たしてよい。又は、2.4%≦Dr14≦100%の条件を満たしてよい。
【0025】
本開示内容のプラスチック組成物によれば、21日目の分解率はDr21であり、且つ、プラスチック組成物の21日目の分解率は5%≦Dr21の条件を満たしてよい。これにより、プラスチック組成物の21日目の分解率を満たすことにより、プラスチック組成物の短期分解率の向上に寄与する。又は、7.5%≦Dr21の条件を満たしてよい。又は、10%≦Dr21の条件を満たしてよい。又は、12.5%≦Dr21の条件を満たしてよい。又は、14%≦Dr21≦100%の条件を満たしてよい。
【0026】
本開示内容のプラスチック組成物によれば、28日目の分解率はDr28であり、且つ、プラスチック組成物の28日目の分解率は10%≦Dr28の条件を満たしてよい。これにより、プラスチック組成物の28日目の分解率を満たすことにより、プラスチック組成物の短中期分解率の向上に寄与する。又は、15%≦Dr28の条件を満たしてよい。又は、20%≦Dr28の条件を満たしてよい。又は、25%≦Dr28の条件を満たしてよい。又は、30%≦Dr28の条件を満たしてよい。又は、35%≦Dr28≦100%の条件を満たしてよい。
【0027】
本開示内容のプラスチック組成物によれば、42日目の分解率はDr42であり、且つ、プラスチック組成物の42日目の分解率は20%≦Dr42の条件を満たしてよい。これにより、プラスチック組成物の42日目の分解率を満たすことにより、プラスチック組成物の中期分解率の向上に寄与する。又は、25%≦Dr42の条件を満たしてよい。又は、30%≦Dr42の条件を満たしてよい。又は、35%≦Dr42の条件を満たしてよい。又は、40%≦Dr42の条件を満たしてよい。又は、45%≦Dr42の条件を満たしてよい。又は、50%≦Dr42≦100%の条件を満たしてよい。
【0028】
本開示内容に記載の可塑剤において、分子量が比較的大きいものとは、可塑剤の分子量が300g/moleより大きいことを意味し、プラスチック材料に限定されず、異なるプラスチックを可塑化することができ、より広範な応用性及び利便性を有する。
【0029】
本開示内容に記載の可塑剤は、アミノベンゾイルエステル化合物であってもよく、アミノベンゾイルエステル化合物は、アシル基、エステル基及びアミノベンゼンを同時に有する化合物を指し、アミノベンゾイルエステル化合物は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルであってもよい。
【0030】
本開示内容に記載の可塑剤において、式(I)中、X構造の原子は、炭素原子、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子のうちの少なくとも1種を含んでもよい。X構造の結合は、炭素-炭素単結合、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、炭素-酸素結合、炭素-窒素結合、二重硫黄結合、硫黄-酸素結合、硫黄-炭素結合、硫黄-窒素結合、二重窒素結合、窒素-酸素結合及び二重酸素結合のうちの少なくとも1種を含んでもよい。X構造の官能基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、アルデヒド基、カーボネート基、カルボキシル基、エーテル基、エステル基、アミド基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、ケチミン基及びアルジミン基のうちの少なくとも1種を含んでもよい。また、X構造の炭素数XCは4であってもよく、すると、可塑剤は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルである。X構造の炭素数XCは1であってもよく、すると、可塑剤は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)メチルである。X構造の炭素数XCは8であってもよく、すると、可塑剤は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)オクチルである。
【0031】
本開示内容に記載のプラスチック組成物は、生分解性可塑剤及び生分解性プラスチックを含むことができ、且つ必要に応じて非生分解性可塑剤及び非生分解性プラスチックを添加し又は置換することで、機能と生分解性効果のバランスを達成する。例えば、プラスチック組成物は生分解性可塑剤及び生分解性プラスチックで構成され、且つ非生分解性プラスチックを加え、ここで、非生分解性プラスチックのプラスチック組成物における重量百分率は生分解性プラスチックのプラスチック組成物における重量百分率より小さい。
【0032】
本開示内容に記載のプラスチック組成物は、少なくとも1種の添加剤を添加することができ、例えば、安定剤、潤滑剤、固定化剤、難燃剤、着色剤、充填剤、静電気防止剤、光安定剤、発泡剤、カップリング剤及び強化剤である。なかでも、安定剤はステアリン酸カルシウムであってもよく、潤滑剤は脂肪酸であってもよく、難燃剤は三酸化アンチモンであってもよく、着色剤は二酸化アンチモンであってもよく、充填剤は炭酸カルシウム、ガラス繊維、石綿繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、二硫化銅、マイカ、石綿、シリカ、ケイ酸塩、金属酸化物、カーボンブラック、ガラスビーズ又は木粉であってもよく、静電気防止剤はステアラミドプロピルジメチル-β-ヒドロキシエチルアミン硝酸塩であってもよく、光安定剤はサリチル酸エステル類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、置換プロピレン類、置換アクリロニトリル類、トリアジン類又は有機錯体類であってもよく、発泡剤は、アゾジカルボンアミドであってもよい。これにより、プラスチックの特性を改質することで、プラスチックの耐衝撃性、耐候性、耐熱性、流動性、弾性、腐食防止性、変形防止性、光透過性、クリープ性、帯電防止性、光分解防止性、比重又は靱性を変えることができる。
【0033】
本開示内容に記載のプラスチック組成物は、生分解性プラスチックがポリ乳酸(Polylactic Acid、PLA)であってもよいし、デンプン(Starch)、ブチレンアジペート・ブチレンテレフタレート共重合体(Poly(butyleneadipate-co-terephthalate)、PBAT)、ポリブチレンサクシネート(Polybutylene succinate、PBS)、ポリメチルエチレンカーボネート(Poly propylene carbonate、PPC)、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル(Polyhydroxyalkanoates、PHA)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone、PCL)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol、PVA)、ポリグリコール酸(Polyglycolide、PGA)、ポリセバシン酸グリセリン(Polyglycerol sebacate、PGS)、ポリヒドロキシ酪酸(Polyhydroxybutyrate、PHB)又は上記ポリマーモノマーからなる共重合体又は混合物であってもよい。
【0034】
本開示内容に記載のプラスチック組成物は、非生分解性プラスチックがポリエチレンテレフタレート-1,4-シクロヘキサンジメタノール(Poly (ethylene terephthalateco-1,4-cylclohexylenedimethylene terephthalate)、PETG)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PET)、高密度ポリエチレン(High-density polyethylene、HDPE)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride、PVC)、低密度ポリエチレン(Low-density polyethylene、LDPE)、ポリプロピレン(Polypropene、PP)、ポリスチレン(Polystyrene、PS)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PC)、ポリメチルメタクリレート(Polymethylmethacrylate、PMMA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(Acrylonitrile Butadiene Styrene、ABS)、シクロオレフィンコポリマー(Cyclic olefin copolymer、COC)又はメラミン-ホルムアルデヒド樹脂(Melamine resin)、又は上記ポリマーモノマーから形成された共重合体又は混合物であってもよい。
【0035】
本開示内容に記載の分解率は、分解条件がASTM-D5338を標準測定方法とし、重量を単位として分解百分率を算出し、分解物と活性汚泥(肥料)を重量割合1:6で互いに混合し、且つパーライトで分解タンクにおける含水率を約50%に保持し、分解タンクを58±2℃に置いて180日間継続して観測する。堆肥の主成分は家畜糞、大豆粉、バガス、木屑、ふすま、キノコ廃培地を含み、パーライトの成分は下記の表1に示す通りである。
【表1】
試験監視過程において新鮮な0.1MのKOH水溶液を調製し、50mLのPPタンクに分注し、それを分解タンクに置き、更に分解タンクを恒温槽(58±2℃)に置いてインキュベートし、KOH水溶液は分解物が分解時に放出したCO2を吸収し、KOHは測定された分解初期(1~30日)に6回/週の交換頻度で交換し、1ヶ月になった後に2回/週に変更し、180日になるまで完了し、また総試験時間は180日より長くてもよい。収集されたKOHをpH測定計(pH meter)でその数値を測定すると共に、制御群(0.1MのKOH水溶液を分解反応を行わない恒温槽に置く)と比較した後に水素イオン濃度を換算し、更に水素イオン濃度でCO2重量を換算し、分解率を推定する。上記に言及された換算式は、水酸基濃度変化=制御群の水酸基濃度-実験群の水酸基濃度=水素イオン濃度、二酸化炭素重量(単位:ミリグラム)=水素イオン濃度×44/2×50mL(44は二酸化炭素の分子量であり、2は二酸化炭素の反応平衡係数であり、50mLは水溶液の体積である)、無機化(分解)百分率=二酸化炭素重量変化/組成物完全分解理論二酸化炭素含有量×100%である。
【0036】
本開示内容に記載のn日目の分解率の定義は、測定物がASTM-D5338を標準測定方法とし、分解タンクに放置された日数を意味し、n日目は7日目、8日目、9日目、10日目、14日目、21日目、24日目、25日目、26日目、28日目、29日目、30日目、31日目、42日目、52日目、56日目、59日目、63日目、66日目、70日目、73日目、77日目、80日目、84日目、87日目、91日目、94日目、98日目、101日目、150日目、154日目、157日目、175日目、178日目、182日目、又は185日目であってもよく、又は1日目~185日目のいずれかの分解率であってもよい。
【0037】
対応する効果を達成するように、上記本開示内容の可塑剤とプラスチック組成物における各技術特徴はいずれも組み合わせて配置されることができる。
【0038】
本開示内容の更なる実施形態は、前述のプラスチック組成物を含むプラスチック製品を提供する。更に、本開示内容のプラスチック製品は、包装フィルム、複合材質紙、使い捨て容器又は収納具、使い捨て食器、食品包装、結束バンド、紐、包帯フィルム、農業用育苗カップトレイ、キノコ類培地バッグ、肥料袋、農業用テープ又はバンド、農業用タイル又は被覆材、農業用穴トレイ、青果物入れ袋、農業用畦面被覆フィルム、手術針、手術フィルム、骨板、薬物担持体、無機混合物、補歯材、生物縫合アンカー、生物組織ブラケット、骨釘、生物組織充填物、生物縫糸、生物実験シャーレ、生物実験容器、生物実験マイクロピペット、生物実験遠心管又は実験用手袋などであってもよい。
【0039】
上記実施形態に基づき、以下に具体的な比較例と実施例を挙げて詳細に説明する。
【0040】
<第1比較例>
【0041】
第1比較例のプラスチック組成物は、プラスチックのみを含み、それに含まれるプラスチックはポリ乳酸である。第1比較例のプラスチック組成物の成分と含有量については表2Aを参照されたい。
【表2A】
【0042】
表2B、表2C及び表2Dを併せて参照し、それは第1比較例のプラスチック組成物の異なる日数での分解率の数値である。
【表2B】
【表2C】
【表2D】
【0043】
<第2比較例>
【0044】
第2比較例のプラスチック組成物は、可塑剤のみを含み、それに含まれる可塑剤はクエン酸アセチルトリブチルである。第2比較例のプラスチック組成物の成分と含有量については表3Aを参照されたい。
【表3A】
【0045】
表3B、表3C及び表3Dを併せて参照し、それは第2比較例のプラスチック組成物の異なる日数での分解率の数値である。
【表3B】
【表3C】
【表3D】
【0046】
<第1実施例>
【0047】
第1実施例のプラスチック組成物はプラスチック及び可塑剤を含み、それに含まれるプラスチックはポリ乳酸であり、且つ可塑剤は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルであり、2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルの細部については表4Aを参照されたい。
【表4A】
【0048】
また、第1実施例のプラスチック組成物の成分と含有量については表4Bを参照されたい。
【表4B】
【0049】
表4C、表4D及び表4Eを併せて参照し、それは第1実施例のプラスチック組成物の異なる日数での分解率の数値である。
【表4C】
【表4D】
【表4E】
【0050】
<第2実施例>
【0051】
第2実施例のプラスチック組成物は、可塑剤のみを含み、それに含まれる可塑剤は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルであり、2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルの細部は表4Aに示す通りで、ここで繰り返し説明しない。第2実施例のプラスチック組成物の成分と含有量については表5Aを参照されたい。
【表5A】
【0052】
表5B、表5C及び表5Dを併せて参照し、それは第2実施例のプラスチック組成物の異なる日数での分解率の数値である。
【表5B】
【表5C】
【表5D】
【0053】
<第3実施例>
【0054】
第3実施例のプラスチック組成物はプラスチック及び可塑剤を含み、それに含まれるプラスチックはポリ乳酸であり、且つ可塑剤は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルであり、2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルの細部は表4Aに示す通りで、ここでは繰り返し説明しない。第3実施例のプラスチック組成物の成分と含有量については表6を参照されたい。
【表6】
【0055】
<第4の実施例>
【0056】
第4実施例のプラスチック組成物はプラスチック及び可塑剤を含み、それに含まれるプラスチックはポリ乳酸であり、且つ可塑剤は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルであり、2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルの細部は表4Aに示す通りで、ここでは繰り返し説明しない。第4実施例のプラスチック組成物の成分と含有量については表7を参照されたい。
【表7】
【0057】
<第5実施例>
【0058】
第5実施例のプラスチック組成物はプラスチック及び可塑剤を含み、それに含まれるプラスチックはポリ乳酸であり、且つ可塑剤は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルであり、2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルの細部は表4Aに示す通りで、ここでは繰り返し説明しない。第5実施例のプラスチック組成物の成分と含有量については表8を参照されたい。
【表8】
【0059】
<第6実施例>
【0060】
第6実施例のプラスチック組成物はプラスチック及び可塑剤を含み、それに含まれるプラスチックはポリ乳酸であり、且つ可塑剤は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルであり、2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルの細部は表4Aに示す通りで、ここでは繰り返し説明しない。第6実施例のプラスチック組成物の成分と含有量については表9を参照されたい。
【表9】
【0061】
<第7実施例>
【0062】
第7実施例のプラスチック組成物はプラスチック及び可塑剤を含み、それに含まれるプラスチックはポリ乳酸であり、且つ可塑剤は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルであり、2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルの細部は表4Aに示す通りで、ここでは繰り返し説明しない。第7実施例のプラスチック組成物の成分と含有量については表10を参照されたい。
【表10】
【0063】
<第8実施例>
【0064】
第8実施例のプラスチック組成物はプラスチック及び可塑剤を含み、それに含まれるプラスチックはポリエチレンテレフタレート-1,4-シクロヘキサンジメタノールであり、且つ可塑剤は2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルであり、2-アミノ安息香酸-4-(2-アミノベンゾイルオキシ)ブチルの細部は表4Aに示す通りで、ここでは繰り返し説明しない。第8実施例のプラスチック組成物の成分と含有量については表11を参照されたい。
【表11】
【0065】
本開示内容を実施形態で上記のように開示したが、本開示内容を限定するものではなく、当業者であれば、本開示内容の精神と範囲から逸脱しない限り、様々な変更及び修正を行うことができ、したがって、本開示内容の保護範囲は、特許請求の範囲で定義したものを基準とすべきである。