(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089220
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/312 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
H01L21/312 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204443
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110003764
【氏名又は名称】弁理士法人OMNI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】宮本 泰治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸史
【テーマコード(参考)】
5F058
【Fターム(参考)】
5F058AA10
5F058AB06
5F058AB07
5F058AC10
5F058AF04
5F058AG10
(57)【要約】
【課題】膜欠陥の発生の抑制又は低減により、緻密性及び保護性能に優れた自己組織化単分子膜を、短時間で効率よく基板表面に成膜することが可能な基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の基板処理方法は、SAM分子を含む第1処理液を、基板Wの表面Wfに接触させてSAM分子を化学吸着させる第1接触工程と、基板Wの表面Wfから、化学吸着していないSAM分子を除去する除去工程と、除去工程後の表面WfにおけるSAM分子が存在しない領域を、SAM分子による化学吸着が可能な領域に表面改質する表面改質工程と、表面改質された領域に、SAM分子を含み、かつ、第1処理液と同種又は異種の第2処理液を接触させ、SAM分子を化学吸着させる第2接触工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に自己組織化単分子膜を形成する基板処理方法であって、
前記自己組織化単分子膜の形成が可能な分子を含む第1処理液を、前記表面に接触させて前記分子を化学吸着させる第1接触工程と、
前記基板の表面から、化学吸着していない前記分子を除去する除去工程と、
前記除去工程後の前記表面における前記分子が存在しない領域を、前記分子による化学吸着が可能な領域に表面改質する表面改質工程と、
前記表面改質された領域に、前記分子を含み、かつ、前記第1処理液と同種又は異種の第2処理液を接触させ、前記分子を化学吸着させる第2接触工程と、
を含む基板処理方法。
【請求項2】
前記第1接触工程は、前記第1処理液を前記基板の表面に接触させることにより、化学吸着が可能な領域に前記分子を化学吸着させて自己組織化させ、前記自己組織化単分子膜を形成する工程であり、
前記第2接触工程は、前記表面改質工程で表面改質された領域に前記分子を化学吸着させて、前記自己組織化単分子膜に緻密化処理を施す工程である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板は、少なくとも前記表面が二酸化ケイ素からなるものであり、
前記分子は、水酸基とのシロキサン結合が可能な官能基を有しており、
前記表面改質工程における表面改質は、前記分子が存在しない領域に水酸基を生成させ、
前記第1接触工程及び前記第2接触工程における前記分子の化学吸着は、前記基板の表面の水酸基とのシロキサン結合を介して、前記分子を前記表面に結合させるものである、請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記表面改質工程は、前記除去工程後の前記表面における前記分子が存在しない領域に、表面改質液を接触させる工程であり、
前記表面改質液として、前記二酸化ケイ素からなる前記表面に水酸基を生成させる溶液を用いる、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記表面改質工程は、前記表面における前記分子が存在しない領域にオゾンガスを接触させる工程、前記表面における前記分子が存在しない領域に紫外線を照射する工程、及び前記表面における前記分子が存在しない領域に水分を含むガスを接触させる工程の少なくとも何れか1つである、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記分子がオクタデシルトリクロロシランを含む、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項7】
基板の表面に自己組織化単分子膜を形成する基板処理装置であって、
前記自己組織化単分子膜の形成が可能な分子を含む処理液を、前記表面に供給する供給部と、
前記処理液の供給後の前記表面に除去液を供給して、化学吸着していない前記分子を除去する除去液供給部と、
前記除去液供給部による前記分子の除去後の前記表面であって、前記分子が存在しない領域を、前記分子による化学吸着が可能な領域に表面改質する表面改質部と、
を備え、
前記供給部は、前記表面改質部による表面改質後の基板の表面にも、前記処理液を供給する、基板処理装置。
【請求項8】
前記基板は、少なくとも前記表面が二酸化ケイ素からなるものであり、
前記分子は、水酸基とのシロキサン結合が可能な官能基を有しており、
前記表面改質部は、前記分子が存在しない領域に表面改質液を供給する表面改質液供給部であり、
前記表面改質液として、前記二酸化ケイ素からなる前記表面に水酸基を生成させる溶液を用いる、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板は、少なくとも前記表面が二酸化ケイ素からなるものであり、
前記分子は、水酸基とのシロキサン結合が可能な官能基を有しており、
前記表面改質部は、前記表面における前記分子が存在しない領域にオゾンガスを供給するオゾンガス供給部、前記表面における前記分子が存在しない領域に紫外線を照射する紫外線照射部、及び前記表面における前記分子が存在しない領域に水分を含むガスを供給するガス供給部の少なくとも何れか1つである、請求項7に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緻密性及び保護性能に優れた自己組織化単分子膜を、短時間で効率よく成膜することが可能な基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造に於いて、基板の特定の表面領域に選択的に膜を形成する技術として、フォトリソグラフィ技術が広く用いられている。例えば、下層配線形成後に絶縁膜を成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、トレンチ及びビアホールを有するデュアルダマシン構造を形成し、トレンチ及びビアホールにCu等の導電膜を埋め込んで配線を形成する。
【0003】
しかし、近時、半導体デバイスの微細化が益々進んでおり、フォトリソグラフィ技術では位置合わせ精度が十分でない場合も生じている。このため、フォトリソグラフィ技術に替えて、基板表面の特定領域に高精度で選択的に膜を形成する手法が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、シリコン窒化(SiN)膜とシリコン酸化(SiO2)膜とが面内に設けられた基板に於いて、シリコン窒化膜を選択的にエッチングするために、シリコン酸化膜表面に熱リン酸耐性材料をSAMとして予め形成しておく方法が開示されている。
【0005】
ここで、シリコン酸化膜をエッチング液から十分に保護するためには、緻密性に優れたSAMを形成することが必要となる。しかし、従来のSAMの成膜方法では、そのような緻密性に優れたSAMを短時間で成膜することが困難であり、生産効率に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、膜欠陥の発生の抑制又は低減により、緻密性及び保護性能に優れた自己組織化単分子膜を、短時間で効率よく基板表面に成膜することが可能な基板処理方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る基板処理方法は、前記の課題を解決するために、基板の表面に自己組織化単分子膜を形成する基板処理方法であって、前記自己組織化単分子膜の形成が可能な分子を含む第1処理液を、前記表面に接触させて前記分子を化学吸着させる第1接触工程と、前記基板の表面から、化学吸着していない前記分子を除去する除去工程と、前記除去工程後の前記表面における前記分子が存在しない領域を、前記分子による化学吸着が可能な領域に表面改質する表面改質工程と、前記表面改質された領域に、前記分子を含み、かつ、前記第1処理液と同種又は異種の第2処理液を接触させ、前記分子を化学吸着させる第2接触工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
前記の構成によれば、第1接触工程で、自己組織化単分子膜(以下、「SAM」という場合がある。)の形成が可能な分子(以下、「SAM分子」という場合がある。)を、基板の表面に化学吸着させ、その後、除去工程で、化学吸着していないSAM分子を除去する。これにより、SAM分子が化学吸着できなかった領域に対する表面改質が阻害されるのを抑制する。さらに、表面改質工程でSAM分子が化学吸着することが可能な領域に表面改質を施し、第2接触工程で表面改質を施した領域にSAM分子を化学吸着させる。このように前記構成では、第1接触工程でSAM分子を化学吸着させることができなかった領域を、SAM分子の化学吸着が可能となるように表面改質を施した上で、再度SAM分子を化学吸着させるので、従来の基板処理方法のように、緻密なSAMの形成のために、SAM分子を基板表面に長時間接触させるのを低減することできる。その結果、膜欠陥の発生を抑制し、緻密性及び保護性能に優れたSAMを短時間で効率よく形成することができる。
【0010】
前記の構成に於いて、前記第1接触工程は、前記第1処理液を前記基板の表面に接触させることにより、化学吸着が可能な領域に前記分子を化学吸着させて自己組織化させ、前記自己組織化単分子膜を形成する工程であり、前記第2接触工程は、前記表面改質工程で表面改質された領域に前記分子を化学吸着させて、前記自己組織化単分子膜に緻密化処理を施す工程とすることができる。
【0011】
前記の構成によれば、第1接触工程に於いてSAMを形成した後、除去工程で基板の表面に化学吸着していないSAM分子を除去し、さらにSAM分子が存在しない領域に、当該SAM分子が化学吸着できるように表面改質を施す。その後、第2接触工程に於いて、SAM分子を含む第2処理液をSAM分子が存在しない領域に接触させる。ここで、第1接触工程で形成されたSAMに於いては、局所的にSAM分子が基板の表面に化学吸着できないなどして、膜欠陥が生じる場合がある。しかし前記構成では、第1接触工程でのSAMの形成後、膜欠陥が生じている領域から、化学吸着していないSAM分子を除去した上で表面改質を施し、膜欠陥が生じている領域にSAM分子を化学吸着させ、SAMの緻密性の向上ないし改善を可能にしている。その結果、従来のSAMの成膜方法のように、SAM分子を基板表面に長時間接触させる必要がなく、短時間で効率よく緻密性及び保護性能に優れたSAMを形成することができる。
【0012】
前記の構成に於いて、前記基板は、少なくとも前記表面が二酸化ケイ素からなるものであり、前記分子は、水酸基とのシロキサン結合が可能な官能基を有しており、前記表面改質工程における表面改質は、前記分子が存在しない領域に水酸基を生成させ、前記第1接触工程及び前記第2接触工程における前記分子の化学吸着は、前記基板の表面の水酸基とのシロキサン結合を介して、前記分子を前記表面に結合させるものであってもよい。
【0013】
前記の構成によれば、少なくとも表面が二酸化ケイ素からなる基板に対し、当該表面に水酸基が生成されるように表面改質を行うことで、水酸基とのシロキサン結合が可能な官能基を有する分子を、当該シロキサン結合を介して基板表面に化学吸着させることができる。
【0014】
前記の構成に於いて、前記表面改質工程は、前記除去工程後の前記表面における前記分子が存在しない領域に、表面改質液を接触させる工程であり、前記表面改質液として、前記二酸化ケイ素からなる前記表面に水酸基を生成させる溶液を用いるものであってもよい。
【0015】
また前記の構成に於いて、前記表面改質工程は、前記表面における前記分子が存在しない領域にオゾンガスを接触させる工程、前記表面における前記分子が存在しない領域に紫外線を照射する工程、及び前記表面における前記分子が存在しない領域に水分を含むガスを接触させる工程の少なくとも何れか1つであってもよい。
【0016】
さらに前記の構成に於いては、前記分子がオクタデシルトリクロロシランを含むことが好ましい。
【0017】
また本発明の基板処理装置は、前記の課題を解決するために、基板の表面に自己組織化単分子膜を形成する基板処理装置であって、前記自己組織化単分子膜の形成が可能な分子を含む処理液を、前記表面に供給する供給部と、前記処理液の供給後の前記表面に除去液を供給して、化学吸着していない前記分子を除去する除去液供給部と、前記除去液供給部による前記分子の除去後の前記表面であって、前記分子が存在しない領域を、前記分子による化学吸着が可能な領域に表面改質する表面改質部と、を備え、前記供給部は、前記表面改質部による表面改質後の基板の表面にも、前記処理液を供給することを特徴とする。
【0018】
前記の構成によれば、供給部は、SAM分子を含む処理液を基板の表面に供給することで、SAM分子の化学吸着が可能な領域にこれを化学吸着させることができる。また除去液供給部は、基板の表面に化学吸着していないSAM分子を除去することで、SAM分子が化学吸着していない領域を十分に露出させることができる。さらに表面改質部は、SAM分子が化学吸着していない領域に表面改質を施すことで、SAM分子の当該領域への化学吸着を可能にする。すなわち、前記の構成であると、表面改質を施した領域に、再度供給部が処理液を供給することで、当該領域にもSAM分子を化学吸着させることができ、従来の基板処理装置と比較して、緻密性及び保護性能に優れたSAMを、短時間で効率よく形成することが可能な基板処理装置を提供することができる。
【0019】
前記の構成に於いて、前記基板は、少なくとも前記表面が二酸化ケイ素からなるものであり、前記分子は、水酸基とのシロキサン結合が可能な官能基を有しており、前記表面改質部は、前記分子が存在しない領域に表面改質液を供給する表面改質液供給部であり、前記表面改質液として、前記二酸化ケイ素からなる前記表面に水酸基を生成させる溶液を用いてもよい。
【0020】
また前記の構成に於いて、前記基板は、少なくとも前記表面が二酸化ケイ素からなるものであり、前記分子は、水酸基とのシロキサン結合が可能な官能基を有しており、前記表面改質部は、前記表面における前記分子が存在しない領域にオゾンガスを供給するオゾンガス供給部、前記表面における前記分子が存在しない領域に紫外線を照射する紫外線照射部、及び前記表面における前記分子が存在しない領域に水分を含むガスを供給するガス供給部の少なくとも何れか1つであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、膜密度が高く緻密性に優れ、膜欠陥の発生が良好に抑制又は低減されており、保護性能に優れた自己組織化単分子膜を、従来の成膜方法よりも短時間で効率よく基板表面に成膜することが可能な基板処理方法及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2(a)は第1実施形態に於いて、第1処理液を基板表面に供給する様子を表す模式図であり、
図2(b)はSAM分子が基板表面に化学吸着する様子を表す模式図であり、
図2(c)はSAM分子が基板表面で自己組織化してSAMを形成する様子を表す模式図である。
【
図3】
図3(a)は第1実施形態に於いて、未吸着のSAM分子や逆ミセルを除去した後の基板表面の様子を表す模式図であり、
図3(b)はSAM分子が存在しない領域に表面改質が施され、水酸基が生成される様子を表す模式図であり、
図3(c)は、SAMが緻密化される様子を表す模式図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を表す説明図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置に於いて、供給部に設けられた処理液貯留部の概略構成を表す説明図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置に於いて、供給部に設けられた他の処理液貯留部の概略構成を表す説明図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置に於いて、除去液供給部に設けられた除去液貯留部の概略構成を表す説明図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置に於いて、表面改質液供給部に設けられた表面改質液貯留部の概略構成を表す説明図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の概略構成を表す説明図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の概略構成を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る基板処理方法及び基板処理装置について、以下に説明する。
【0024】
[基板処理方法]
先ず、本実施形態に係る基板処理方法について、図を参照しながら以下に説明する。
本実施形態の基板処理方法は、緻密性に優れ、良好な保護性能を発揮し得る自己組織化単分子膜(以下、「SAM」という。)を基板の表面に形成するための技術を提供するものである。本明細書に於いて「基板」とは、少なくとも表面が金属酸化物からなる半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の各種基板をいう。金属酸化物としては特に限定されないが、SiO2であることが好ましい。本発明の基板は、SiO2のみからなる基板(SiO2基板)を含み得る。尚、以下では、基板がSiO2基板である場合を例にして以下に説明する。
【0025】
本実施形態の基板処理方法は、
図1に示すように、SAM形成工程(第1接触工程)S101と、除去工程S102と、表面改質工程S103と、緻密化処理工程(第2接触工程)S104と、リンス工程S105とを少なくとも含む。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0026】
<SAM形成工程(第1接触工程)>
SAM形成工程(第1接触工程)S101は、SAMを形成することが可能な材料(以下、「SAM形成材料」という。)を含む第1処理液を基板Wの表面Wfに接触させ、SAMを形成する工程である。
【0027】
第1処理液を基板Wに接触させる方法としては特に限定されず、例えば、第1処理液を基板Wの表面に塗布する方法や第1処理液を基板Wの表面に噴霧する方法、基板Wを第1処理液中に浸漬させる方法等が挙げられる。
【0028】
第1処理液を基板Wの表面に塗布する方法としては、例えば、基板Wをその中央部を軸にして一定速度で回転させた状態で、第1処理液を基板Wの表面の中央部に供給することにより行う方法が挙げられる。これにより、基板Wの表面に供給された第1処理液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力によって、基板Wの表面中央付近から基板Wの周縁部に向かって流動し、基板Wの表面の全面に拡散される。その結果、基板Wの表面の全面が第1処理液で覆われて、当該第1処理液の液膜が形成される。
【0029】
第1処理液は、SAM形成材料を少なくとも含む。また、第1処理液は、SAM形成材料が溶媒に溶解していてもよく、分散していてもよい。SAM形成材料としては特に限定されず、例えば、オクタデシルトリクロロシラン等の有機シラン化合物が挙げられる。オクタデシルトリクロロシランは、水酸基とのシロキサン結合が可能な官能基として、トリクロロシリル基を有する化合物である。また、溶媒としては特に限定されず、例えば、エーテル溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、フッ素系溶媒等が挙げられる。エーテル溶媒としては特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては特に限定されず、トルエン等が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶媒としては特に限定されず、デカン等が挙げられる。フッ素系溶媒としては特に限定されず、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。例示した溶媒のうちオクタデシルトリクロロシランを溶解させることができるとの観点からは、脂肪族炭化水素系溶媒が好ましく、デカンが特に好ましい。
【0030】
SAM形成材料の含有量は、第1処理液の全質量に対し、0.005質量%~100質量%の範囲内が好ましく、0.05質量%~50質量%の範囲内がより好ましく、1質量%~10質量%の範囲内が特に好ましい。
【0031】
また第1処理液には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては特に限定されず、例えば、安定剤、及び界面活性剤等が挙げられる。
【0032】
第1処理液を基板Wに接触させる条件としては、特に限定されない。但し、本実施形態のSAM形成工程S101は、従来の方法でSAMを成膜する場合と比べ、第1処理液の接触時間を短縮することができる。具体的には、SAM形成材料の種類、その濃度及び溶媒の種類等に応じて、SAM形成工程S101に要する時間(基板Wを第1処理液中に浸漬させて行う場合は、浸漬時間)を1分間~1440分間、好ましくは1分間~60分間、より好ましくは1分間~10分間の範囲内で適宜設定することができる。
【0033】
次に、SAMの形成過程について、SAM形成材料がオクタデシルトリクロロシランである場合を例にしてより具体的に説明する。
【0034】
図2(a)に示すように、基板Wの表面Wfに第1処理液が供給されると、供給当初の第1処理液中では、SAMを形成することが可能な分子(オクタデシルトリクロロシラン。以下、「SAM分子」という。)1が分散又は溶解している。
図2(a)は、第1処理液を基板Wの表面Wfに供給する様子を表す模式図である。
【0035】
次にSAM分子1は、
図2(b)に示すように、基板Wの表面Wfに水酸基(OH基)3が存在すると、当該水酸基3を反応サイトとして表面Wfに化学吸着する。より具体的には、SAM分子1のトリクロロシリル基と水酸基3とが反応することによりシロキサン結合を形成し、これによりSAM分子1は表面Wfに化学吸着する。また、基板Wの表面Wfや第1処理液中に水分子2が存在する場合には、SAM分子1が水分子2の周囲に凝集する。特に、第1処理液中に存在する水分子2に対してSAM分子1は、これを内部に包摂する逆ミセル4を形成する。尚、
図2(b)は、SAM分子1が基板Wの表面Wfに化学吸着する様子を表す模式図である。
【0036】
続いて、SAM分子1が基板Wの表面Wfに高密度に化学吸着すると、表面Wf上にSAM分子1の島状構造が現れる。さらに、それぞれの島で、SAM分子1同士の疎水性相互作用や静電相互作用により自己組織化して成長(拡張)し、最終的にSAM5が形成される(
図2(c)参照)。但し、SAM5には、基板Wの表面Wfに逆ミセル4が付着している領域や、SAM分子1が入り込めず隣り合う島同士の境界、さらに表面WfにSAM分子1が化学吸着せずに付着して存在する領域などで、膜欠陥6が生じる。尚、
図2(c)は、SAM分子1が基板Wの表面Wfで自己組織化してSAM5を形成する様子を表す模式図である。
【0037】
<除去工程>
除去工程S102は、SAM形成工程S101後の基板Wの表面Wfに残留する第1処理液を除去する工程である。これにより、SAM5の形成に寄与しない余剰なSAM分子1、より具体的には、基板Wの表面Wfに化学吸着していないSAM分子1(逆ミセル4を含む。)が、基板Wの表面Wfから取り除かれる。
【0038】
第1処理液を基板Wから除去する方法としては特に限定されず、例えば、除去液を基板Wの表面Wfに塗布する方法や除去液を基板Wの表面Wfに噴霧する方法、基板Wを除去液中に浸漬させる方法等が挙げられる。
【0039】
除去液を基板Wの表面Wfに塗布する方法としては、例えば、基板Wをその中央部を軸にして一定速度で回転させた状態で、除去液を基板Wの表面Wfの中央部に供給することにより行う方法が挙げられる。これにより、基板Wの表面Wfに供給された除去液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力によって、基板Wの表面Wfの中央付近から基板Wの周縁部に向かって流動し、基板Wの表面Wfの全面に拡散される。その結果、基板Wの表面Wf上の第1処理液が除去液に置換され、基板Wの表面Wfの全面が除去液で覆われて、当該除去液の液膜が形成される。
【0040】
SAM形成材料がオクタデシルトリクロロシランである場合、除去工程S102後の基板Wの表面Wfは、
図3(a)に示す通りである。同図に示すように、基板Wの表面Wfからは、SAM5の成膜に寄与しないSAM分子1や逆ミセル4等は除去される。
図3(a)は、未吸着のSAM分子1や逆ミセル4を除去した後の表面Wfの様子を表す模式図である。
【0041】
除去液としては、SAM形成材料を溶解させ、かつ、水の溶解度が低く、含水量を抑制した有機溶媒が好ましい。SAM形成材料の溶解が可能な除去液であると、SAM5の形成に寄与しない余剰なSAM分子1や逆ミセル4を基板Wの表面Wfから良好に除去することができる。除去液は、例えば、25℃での水の溶解度が0.033%(330ppm)以下程度であるものが好ましい。除去液は、より具体的には、例えば、トルエン、デカン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
<表面改質工程>
表面改質工程S103は、基板Wの表面Wfに於いて膜欠陥6が生じている領域、すなわち、SAM5が形成されていない領域を、SAM分子1による化学吸着が可能な領域に表面改質する工程である。ここで、本明細書に於いて「化学吸着が可能な領域に表面改質する」とは、例えば、基板Wの表面Wfに水酸基(OH基)が生成するように表面改質を施すことを意味する。例えば、基板WがSiO2基板である場合、表面改質とは基板Wにシラノール基(Si-OH基)を生成させる処理となる。
【0043】
基板Wの表面Wfに表面改質が施されると、
図3(b)に示すように、SAM5の膜欠陥6に於いては、SAM分子1の化学吸着が可能となるように水酸基3が生成される。
図3(b)は、SAM分子1が存在しない領域に表面改質が施され、水酸基3が生成される様子を表す模式図である。
【0044】
本実施形態に於いて、基板Wの表面Wfの表面改質は湿式方法により行う。より具体的には、表面改質液を除去工程S102後の基板Wの表面Wfに接触させることにより行う。表面改質液を基板Wの表面Wfに接触させる方法としては特に限定されず、例えば、表面改質液を基板Wの表面Wfに塗布する方法や表面改質液を基板Wの表面Wfに噴霧する方法、基板Wを表面改質液中に浸漬させる方法等が挙げられる。
【0045】
さらに表面改質液を基板Wの表面Wfに塗布する方法としては、例えば、基板Wをその中央部を軸にして一定速度で回転させた状態で、表面改質液を基板Wの表面Wfの中央部に供給することにより行う方法が挙げられる。これにより、基板Wの表面Wfに供給された表面改質液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力によって基板Wの表面Wfの中央付近から基板Wの周縁部に向かって流動し、基板Wの表面Wfの全面に拡散される。その結果、基板Wの表面Wfの全面が表面改質液で覆われて、当該表面改質液の液膜が形成される。
【0046】
表面改質液としては、例えば、SC-1(Standard Clean-1)(体積比で、アンモニウム水(NH3濃度28%):過酸化水素水(H2O2濃度30%):DIW=1:4:20)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、過酸化水素水(H2O2)、フッ化アンモニウム(NH4F)、希硫酸過酸化水素水(SPM)、希硝酸、フッ酸とアンモニアの混合溶液、オゾン水、オゾン化脱イオン水、水等が挙げられる。これらの表面改質液のうち、SiO2基板の表面Wfに水酸基を良好に導入できるとの観点からはSC-1が好ましい。
【0047】
尚、湿式方法により表面改質工程S103を行う場合、当該表面改質工程S103の直後には、表面改質液を除去するための洗浄工程、及び乾燥工程を順次行うのが好ましい。洗浄工程における洗浄方法としては特に限定されず、例えば、洗浄液を基板Wの表面Wfに供給する方法や基板Wを洗浄液中に浸漬させる方法等が挙げられる。また洗浄液としては、例えば、トルエン、デカン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。洗浄時間及び洗浄液の温度等の洗浄条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。乾燥工程は、基板Wの表面Wf上に残留する洗浄液の除去を目的とする。乾燥方法としては特に限定されず、例えば、窒素ガス等の不活性ガスを基板Wの表面Wf上に吹き付ける方法等が挙げられる。乾燥時間及び乾燥温度等の乾燥条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0048】
<緻密化処理工程>
緻密化処理工程(第2接触工程)S104は、表面改質工程S103後の基板Wの表面Wfに、SAM形成材料を含む第2処理液を接触させる工程である。膜欠陥6が生じている領域では、表面改質工程S103により表面Wfに水酸基3が生成されている。そのため、
図3(c)に示すように、第2処理液を基板Wの表面Wfに接触させることにより、SAM分子1を膜欠陥6が生じている領域に、水酸基3とのシロキサン結合により化学吸着させることができる。これにより、膜欠陥6が補修される結果、緻密化されたSAM5’が形成される。尚、
図3(c)は、SAM5が緻密化される様子を表す模式図である。
【0049】
第2処理液を基板Wに接触させる方法としては、前述のSAM形成工程S101に於ける第1処理液の接触方法と同様である。従って、その詳細な説明については省略する。
【0050】
第2処理液は、SAM形成工程S101における第1処理液と同様、SAM形成材料と、溶媒とを少なくとも含む。第2処理液は、第1処理液と同種であってもよく異種であってもよい。第1処理液と異なる第2処理液を用いる場合、SAM形成材料の含有量や溶媒の種類は特に限定されない。但し、SAM形成材料は、第1処理液のSAM形成材料と同一であることが好ましい。
【0051】
第2処理液を基板Wに接触させる条件としては、特に限定されない。例えば、第2処理液の接触時間(基板Wを第2処理液中に浸漬させて行う場合は、浸漬時間)は、SAM形成材料の種類、その濃度、溶媒の種類、及びSAM5の面内における膜欠陥6の発生頻度、発生領域の面積等に応じて、1分間~1440分間、好ましくは1分間~60分間、より好ましくは1分間~5分間の範囲内で適宜設定することができる。
【0052】
<リンス工程>
リンス工程S105は、基板Wの表面Wfから第2処理液を除去する工程である。リンス工程S105は、具体的には、リンス液を基板Wの表面Wfに供給し、残存する第2処理液をリンス液に置換して行う。
【0053】
基板Wの表面Wfにリンス液を接触させる方法としては特に限定されず、例えば、リンス液を基板W上に直接供給して塗布する方法や噴霧する方法、基板Wをリンス液中に浸漬させる方法等が挙げられる。リンス液を基板Wの表面Wfに塗布する方法としては、例えば、基板Wをその中央部を軸にして一定速度で回転させた状態で、リンス液を基板Wの表面Wfの中央部に供給することにより行う方法が挙げられる。これにより、基板Wの表面Wfに供給されたリンス液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力によって、基板Wの表面Wfの中央付近から基板Wの周縁部に向かって流動し、基板Wの表面Wfの全面に拡散される。その結果、基板Wの表面Wfの全面がリンス液で覆われて当該リンス液の液膜が形成され、処理液をリンス液に置換することができる。尚、リンス工程の時間としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0054】
リンス液としては、例えば、トルエン、デカン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。リンス時間及びリンス液の温度等のリンス条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0055】
リンス工程S105の直後には、基板Wの表面Wf上に残留するリンス液の除去を目的として、乾燥工程を行うのが好ましい。乾燥方法としては特に限定されず、例えば、窒素ガス等の不活性ガスを基板Wの表面Wf上に吹き付ける方法等が挙げられる。乾燥時間及び乾燥温度等の乾燥条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0056】
以上のように、本実施形態の基板処理方法によれば、緻密なSAMの成膜のために、SAM分子が化学吸着することができない基板表面の領域(膜欠陥)に表面改質を施す。さらに、表面改質を施した領域にSAM分子を化学吸着させることで当該膜欠陥を補修する。その結果、膜密度が高く緻密性に優れ、膜欠陥の発生が抑制又は低減されており、保護膜としての機能に優れたSAMを、従来の方法よりも短時間で成膜することができる。
【0057】
[基板処理装置]
次に、本実施形態に係る基板処理装置について、図面を参照しながら以下に説明する。
本実施形態の基板処理装置100は、基板Wの表面WfにSAMを形成するために用いられる枚葉式の基板処理装置であり、
図4に示すように、基板Wを保持する基板保持部10と、基板Wの表面Wfに第1処理液及び第2処理液を供給する供給部20と、除去液を供給するための除去液供給部30と、表面改質液供給部(表面改質部)40と、基板Wを収容する容器であるチャンバ50と、処理液を捕集する飛散防止カップ60と、基板処理装置100の各部の後述するアームをそれぞれ独立に旋回駆動させる旋回駆動部70と、基板処理装置100の各部を制御するための制御部80とを少なくとも備える。また、基板処理装置100は、基板Wを搬入又は搬出する搬入出手段(図示しない)を備えることもできる。尚、
図4は、本実施形態に係る基板処理装置の概略構成を表す説明図である。同図に於いては、図示したものの方向関係を明確にするために、適宜XYZ直交座標軸を表示する。ここで、XY平面は水平面を表し、+Z方向は鉛直上向きを表す。
【0058】
<基板保持部>
基板保持部10は基板Wを保持する手段であり、
図4に示すように、基板Wの表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるものである。この基板保持部10は、スピンベース11と回転支軸12とが一体的に結合されたスピンチャック13を有している。スピンベース11は平面視に於いて略円形状を有しており、その中心部に、略鉛直方向に延びる中空状の回転支軸12が固定されている。回転支軸12はモータを含むチャック回転機構14の回転軸に連結されている。チャック回転機構14は円筒状のケーシング15内に収容され、回転支軸12はケーシング15により、鉛直方向の回転軸周りに回転自在に支持されている。
【0059】
チャック回転機構14は、制御部80のチャック駆動部(図示しない)からの駆動により回転支軸12を回転軸周りに回転することができる。これにより、回転支軸12の上端部に取り付けられたスピンベース11が回転軸J周りに回転する。制御部80は、チャック駆動部を介してチャック回転機構14を制御して、スピンベース11の回転速度を調整することができる。
【0060】
スピンベース11の周縁部付近には、基板Wの周端部を把持するための複数個のチャックピン16が立設されている。チャックピン16の設置数は特に限定されないが、円形状の基板Wを確実に保持するために、少なくとも3個以上設けることが好ましい。本実施形態では、スピンベース11の周縁部に沿って等間隔に3個配置する。それぞれのチャックピン16は、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持ピンと、基板支持ピンに支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持ピンとを備えている。
【0061】
<供給部>
本実施形態に係る供給部20は、基板Wの表面Wfに第1処理液及び第2処理液を供給する手段である。この供給部20は、
図4に示すように、処理液貯留部21と、ノズル22と、アーム23とを有している。
【0062】
処理液貯留部21は、第1処理液及び第2処理液として同種のものを用いる場合、
図5に示すように、加圧部24と、処理液タンク25とを備える。尚、
図5は、供給部20における処理液貯留部21の概略構成を表す説明図である。
【0063】
加圧部24は、処理液タンク25内を加圧する気体の供給源である窒素ガス供給源24a、窒素ガスを加圧するポンプ(図示しない)、窒素ガス供給管24b、及び窒素ガス供給管24bの経路途中に設けられたバルブ24cを備える。
【0064】
窒素ガス供給管24bは、処理液タンク25に管路接続されている。さらに、窒素ガス供給管24bの途中経路にはバルブ24cが設けられている。バルブ24cは制御部80と電気的に接続されており、バルブ24cの開閉を制御部80の動作指令によって制御することができる。制御部80の動作指令によりバルブ24cが開栓されると、窒素ガスを処理液タンク25に供給することができる。
【0065】
処理液タンク25は、処理液タンク25内の処理液を撹拌する撹拌部、及び処理液の温度調整を行う温度調整部を備えてもよい(何れも図示しない。)。撹拌部としては、処理液を撹拌する回転部と、回転部の回転を制御する撹拌制御部とを備えるものが挙げられる。撹拌制御部は制御部80と電気的に接続され、回転部は、例えば、回転軸の下端にプロペラ状の攪拌翼を備えている。制御部80が撹拌制御部に動作指令を行うことで回転部を回転させ、これにより攪拌翼で処理液を撹拌させることができる。その結果、処理液タンク25内で、処理液の濃度及び温度を均一にすることができる。
【0066】
さらに処理液タンク25には、処理液をノズル22に供給するための排出管25aが管路接続されている。この排出管25aの途中経路には、排出バルブ25bが設けられている。また、排出バルブ25bは制御部80と電気的に接続されている。これにより、これらのバルブの開閉を制御部80の動作指令によって制御することができる。制御部80の動作指令により排出バルブ25bが開栓されると、処理液が排出管25aを介してノズル22に圧送される。
【0067】
ノズル22は、水平に延設されたアーム23の先端部に取り付けられており、処理液を吐出する際にはスピンベース11の上方に配置される。アーム23は旋回軸(図示しない。)を介して旋回駆動部70と連結されている。旋回駆動部70は、制御部80と電気的に接続し、制御部80からの動作指令によりアーム23を回動させる。アーム23の回動に伴って、ノズル22も移動する。
【0068】
尚、供給部20が相互に異なる種類の第1処理液と第2処理液とを供給する場合には、
図6に示すように、一対の第1処理液タンク26及び第2処理液タンク27を備えた処理液貯留部21’を用いてもよい。これにより、SAM形成工程S101と緻密化処理工程S104とで、それぞれ異なる種類の処理液を用いることができる。
図6は、供給部20における処理液貯留部21’の概略構成を表す説明図である。
【0069】
処理液貯留部21’は、より具体的には以下のような構成を有する。すなわち、第1処理液タンク26は第1処理液を貯留し、第2処理液タンク27は第2処理液を貯留する。また、窒素ガス供給管24bは、第1窒素ガス供給管24dと第2窒素ガス供給管24eに分岐している。第1窒素ガス供給管24dは第1処理液タンク26に管路接続され、第2窒素ガス供給管24eは第2処理液タンク27に管路接続されている。さらに、第1窒素ガス供給管24dの途中経路には第1バルブ24fが設けられ、第2窒素ガス供給管24eの途中経路には第2バルブ24gが設けられている。バルブ24c、第1バルブ24f及び第2バルブ24gはそれぞれ制御部80と電気的に接続されており、バルブ24c、第1バルブ24f及び第2バルブ24gの開閉を制御部80の動作指令によって制御することができる。制御部80の動作指令によりバルブ24c、第1バルブ24f及び第2バルブ24gが開栓されると、窒素ガスを第1処理液タンク26及び第2処理液タンク27のそれぞれに供給することができる。
【0070】
第1処理液タンク26及び第2処理液タンク27はそれぞれ、第1処理液タンク26内の第1処理液及び第2処理液タンク27内の第2処理液を撹拌する撹拌部、並びに第1処理液及び第2処理液の温度調整を行う温度調整部を設けてもよい(何れも図示しない。)。撹拌部としては、第1処理液又は第2処理液を撹拌する回転部と、回転部の回転を制御する撹拌制御部とを備えるものが挙げられる。撹拌制御部は制御部80と電気的に接続され、回転部は、例えば、回転軸の下端にプロペラ状の攪拌翼を備えている。制御部80が撹拌制御部に動作指令を行うことで回転部を回転させ、これにより攪拌翼で第1処理液又は第2処理液を撹拌させることができる。その結果、第1処理液タンク26等内で、第1処理液及び第2処理液の濃度及び温度を均一にすることができる。
【0071】
さらに第1処理液タンク26及び第2処理液タンク27には、第1処理液又は第2処理液をノズル22に供給するための第1排出管26a及び第2排出管27aがそれぞれ管路接続されている。第1排出管26aの途中経路には、第1排出バルブ26bが設けられている。また、第2排出管27aの途中経路には、第2排出バルブ27bが設けられている。さらに第1排出管26aと第2排出管27aとは、第1排出バルブ26b及び第2排出バルブ27bの下流側で合流するように第3排出管28に管路接続されている。この第3排出管28の経路途中には、第3排出バルブ28aが設けられている。また、第1排出バルブ26b、第2排出バルブ27b及び第3排出バルブ28aは制御部80と電気的に接続されている。これにより、これらのバルブの開閉を制御部80の動作指令によって制御することができる。制御部80の動作指令により第1排出バルブ26b及び第3排出バルブ28aが開栓されると、第1処理液が第1排出管26a及び第3排出管28を介してノズル22に圧送される。また、制御部80の動作指令により第2排出バルブ27b及び第3排出バルブ28aが開栓されると、第2処理液が第2排出管27a及び第3排出管28を介してノズル22に圧送される。
【0072】
<除去液供給部>
本実施形態に係る除去液供給部30は、基板Wの表面Wfに除去液を供給する手段である。この除去液供給部30は、
図4に示すように、除去液貯留部31と、ノズル32と、アーム33とを有している。
【0073】
除去液貯留部31は、
図7に示すように、ノズル32に除去液を供給する機能を有しており、加圧部34と、除去液タンク35とを備える。
図7は、除去液供給部30における除去液貯留部31の概略構成を表す説明図である。
【0074】
加圧部34は、除去液タンク35内を加圧する気体の供給源である窒素ガス供給源34a、窒素ガスを加圧するポンプ(図示しない)、窒素ガス供給管34b、及び窒素ガス供給管34bの経路途中に設けられたバルブ34cを備える。
【0075】
窒素ガス供給管34bは、除去液タンク35に管路接続されている。さらに、窒素ガス供給管34bの途中経路にはバルブ34cが設けられている。バルブ34cは制御部80と電気的に接続されており、バルブ34cの開閉を制御部80の動作指令によって制御することができる。制御部80の動作指令によりバルブ34cが開栓されると、窒素ガスを除去液タンク35に供給することができる。
【0076】
除去液タンク35は、除去液タンク35内の除去液を撹拌する撹拌部、及び除去液の温度調整を行う温度調整部を備えてもよい(何れも図示しない。)。撹拌部としては、除去液タンク35内の除去液を撹拌する回転部と、回転部の回転を制御する撹拌制御部とを備えるものが挙げられる。撹拌制御部は制御部80と電気的に接続され、回転部は、例えば、回転軸の下端にプロペラ状の攪拌翼を備えている。制御部80が撹拌制御部に動作指令を行うことで回転部を回転させ、これにより攪拌翼で除去液を撹拌させることができる。その結果、除去液タンク35内で、除去液の濃度及び温度を均一にすることができる。
【0077】
さらに除去液タンク35には、除去液をノズル32に供給するための排出管35aが管路接続されている。この排出管35aの途中経路には排出バルブ35bが設けられている。この排出バルブ35bは制御部80と電気的に接続されている。これにより、排出バルブ35bの開閉を制御部80の動作指令によって制御することができる。制御部80の動作指令により排出バルブ35bが開栓されると、除去液が排出管35aを介してノズル32に圧送される。
【0078】
ノズル32は、水平に延設されたアーム33の先端部に取り付けられており、除去液を吐出する際にはスピンベース11の上方に配置される。アーム33は旋回軸(図示しない。)を介して旋回駆動部70と連結されている。旋回駆動部70は、制御部80と電気的に接続し、制御部80からの動作指令によりアーム33を回動させる。アーム33の回動に伴って、ノズル32も移動する。
【0079】
<表面改質液供給部>
本実施形態に係る表面改質液供給部40は、基板Wの表面Wfに表面改質液を供給する手段である。この表面改質液供給部40は、
図4に示すように、表面改質液貯留部41と、ノズル42と、アーム43とを有している。
【0080】
表面改質液貯留部41は、
図8に示すように、ノズル42に表面改質液を供給する機能を有しており、加圧部44と、表面改質液タンク45とを備える。
図8は、表面改質液供給部40における表面改質液貯留部41の概略構成を表す説明図である。
【0081】
加圧部44は、表面改質液タンク45内を加圧する気体の供給源である窒素ガス供給源44a、窒素ガスを加圧するポンプ(図示しない)、窒素ガス供給管44b、及び窒素ガス供給管44bの経路途中に設けられたバルブ44cを備える。
【0082】
窒素ガス供給管44bは、表面改質液タンク45に管路接続されている。さらに、窒素ガス供給管44bの途中経路にはバルブ44cが設けられている。バルブ44cは制御部80と電気的に接続されており、バルブ44cの開閉を制御部80の動作指令によって制御することができる。制御部80の動作指令によりバルブ44cが開栓されると、窒素ガスを表面改質液タンク45に供給することができる。
【0083】
表面改質液タンク45は、表面改質液タンク45内の表面改質液を撹拌する撹拌部、及び表面改質液の温度調整を行う温度調整部を備えてもよい(何れも図示しない。)。撹拌部としては、表面改質液タンク45内の表面改質液を撹拌する回転部と、回転部の回転を制御する撹拌制御部とを備えるものが挙げられる。撹拌制御部は制御部80と電気的に接続され、回転部は、例えば、回転軸の下端にプロペラ状の攪拌翼を備えている。制御部80が撹拌制御部に動作指令を行うことで回転部を回転させ、これにより攪拌翼で表面改質液を撹拌させることができる。その結果、表面改質液タンク45内で、表面改質液の濃度及び温度を均一にすることができる。
【0084】
さらに表面改質液タンク45には、表面改質液をノズル42に供給するための排出管45aが管路接続されている。この排出管45aの途中経路には排出バルブ45bが設けられている。この排出バルブ45bは制御部80と電気的に接続されている。これにより、排出バルブ45bの開閉を制御部80の動作指令によって制御することができる。制御部80の動作指令により排出バルブ45bが開栓されると、表面改質液が排出管45aを介してノズル42に圧送される。
【0085】
ノズル42は、水平に延設されたアーム43の先端部に取り付けられており、表面改質液を吐出する際にはスピンベース11の上方に配置される。アーム43は旋回軸(図示しない。)を介して旋回駆動部70と連結されている。旋回駆動部70は、制御部80と電気的に接続し、制御部80からの動作指令によりアーム43を回動させる。アーム43の回動に伴って、ノズル42も移動する。
【0086】
<飛散防止カップ>
飛散防止カップ60は、スピンベース11を取り囲むように設けられる。飛散防止カップ60は昇降駆動機構(図示しない)に接続され、上下方向に昇降可能となっている。基板Wの表面Wfに第1処理液等を供給する際には、飛散防止カップ60が昇降駆動機構によって所定位置に位置決めされ、チャックピン16により保持された基板Wを側方位置から取り囲む。これにより、基板Wやスピンベース11から飛散する第1処理液等を捕集することができる。
【0087】
<制御部>
制御部80は、基板処理装置100の各部と電気的に接続しており、各部の動作を制御する。制御部80は、演算部と、記憶部とを有するコンピュータにより構成される。演算部としては、各種演算処理を行うCPUを用いる。また、記憶部は、基板処理プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶し、読み書き自在のメモリであるRAM及び制御用ソフトウェアやデータ等を記憶しておく磁気ディスクを備える。磁気ディスクには、第1処理液、第2処理液、除去液及び表面改質液の供給条件、リンス条件、並びにSAMの成膜条件等を含む基板処理条件が予め格納されている。CPUは、基板処理条件をRAMに読み出し、その内容に従って基板処理装置100の各部を制御する。
【0088】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る基板処理方法及び基板処理装置について、以下に説明する。
本実施形態は、第1実施形態と比較して、表面改質工程を紫外線照射による乾式方法により行う点が異なる。この様な構成によっても、SAM分子が化学吸着できなかった領域に水酸基等の反応サイトを形成し、当該SAM分子を化学吸着させて緻密性に優れたSAMの成膜を可能にする。
【0089】
[基板処理方法]
本実施形態に係る基板処理方法について、
図9を参照しながら以下に説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。尚、
図9に示すSAM形成工程S101、除去工程S102、緻密化処理工程S104及びリンス工程S105は、第1実施形態の場合と同様である。従って、これらの工程の詳細については、その説明を省略する。
【0090】
1.表面改質工程S103’
表面改質工程S103’は、SAM5に於いて膜欠陥6が生じている領域、すなわち、SAM5が形成されていない領域を、SAM分子1による化学吸着が可能な領域に表面改質する工程である。
【0091】
本実施形態に於いて、基板Wの表面Wfの表面改質は紫外線照射による乾式方法により行う。紫外線照射の場合、光源の波長、照射強度及び照射時間等の紫外線の照射条件は、SAM分子1が化学吸着できる程度に基板Wの表面Wfに水酸基3を導入できればよく、特に限定されない。
【0092】
尚、第1実施形態でも述べた通り、湿式方法により表面改質を施す場合には、表面改質液を除去するための洗浄工程及び乾燥工程を行うのが好ましい。しかし、本実施形態の紫外線照射による乾式方法では、これらの工程の実施を省略することができる。そのため、第1実施形態の基板処理方法と比べ、製造効率の向上が図れる。
【0093】
[基板処理装置]
次に、本実施形態に係る基板処理装置について、図面を参照しながら以下に説明する。
本実施形態の基板処理装置200は、第1実施形態の基板処理装置100と比べて、
図10に示すように、表面改質液供給部40に代えて、紫外線照射部90を備えた点が異なる。
図10は、第2実施形態に係る基板処理装置の概略構成を表す説明図である。同図に於いても、図示したものの方向関係を明確にするために、適宜XYZ直交座標軸を表示する。ここで、XY平面は水平面を表し、+Z方向は鉛直上向きを表す。尚、第1実施形態の基板処理装置と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0094】
紫外線照射部90は、基板処理装置200の内部に於いて、基板保持部10に保持された基板Wの表面Wfに紫外線を照射することが可能なように、当該基板保持部10の上方(
図10の矢印Zで示す方向)に配置される。紫外線照射部90は、複数の光源部91と、石英ガラス92とを少なくとも備える。
【0095】
図10に示す光源部91は線光源であり、その長手方向が
図10のYで示す方向と平行となるように配置されている。また、各光源部91は、相互に等間隔となるように矢印Xで示す方向に配列されている。但し、本発明の光源部91はこの態様に限定されるものではない。例えば、リング状の光源部であって、相互に直径が異なるものが同心円状に配置される態様であってもよい。また、光源部は点光源であってもよい。この場合、複数の光源部が面内で相互に等間隔となるように配置されるのが好ましい。
【0096】
光源部91の種類としては特に限定されず、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ及びUV(ultraviolet)-LED(Light Emitting Diode)等を用いることができる。また、複数の光源部91は同種であってもよく、異種であってもよい。光源部91として異種のものを複数用いる場合、ピーク波長や光強度等を相互に異ならせて配置することができる。
【0097】
石英ガラス92は、光源部91と基板Wの間に配置されている。石英ガラス92は板状体であり、水平方向に平行となるように設けられている。また、石英ガラス92は、紫外線に対して光透過性、耐熱性及び耐食性を有しており、光源部91から照射される紫外線を透過させて、基板Wの表面Wfへの照射を可能にしている。さらに石英ガラス92は、光源部91をチャンバ50内の雰囲気から保護することができる。
【0098】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る基板処理方法及び基板処理装置について、以下に説明する。
本実施形態は、第1実施形態と比較して、表面改質工程を、オゾンガス又は水分を含むガスの供給による乾式方法により行う点が異なる。この様な構成によっても、SAM分子が化学吸着できなかった領域に水酸基等の反応サイトを形成し、当該SAM分子を化学吸着させて緻密性に優れたSAMの成膜を可能にする。
【0099】
[基板処理方法]
本実施形態に係る基板処理方法について、
図11を参照しながら以下に説明する。
図11は、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。尚、
図11に示すSAM形成工程S101、除去工程S102、緻密化処理工程S104及びリンス工程S105は、第1実施形態の場合と同様であるため、これらの工程の詳細については、その説明を省略する。
【0100】
1.表面改質工程S103”
表面改質工程S103”は、SAM5に於いて膜欠陥6が生じている領域、すなわち、SAM5が形成されていない領域を、SAM分子1による化学吸着が可能な領域に表面改質する工程である。
【0101】
本実施形態に於いて、基板Wの表面Wfの表面改質はオゾンガス又は水分を含むガスの接触による乾式方法により行う。これらの方法による表面改質の場合、基板Wの表面Wfにオゾンガスや水分を含むガスを吹き付けたり、これらのガスの雰囲気中に曝露したりすることにより、表面Wfに水酸基3を導入することができる。オゾンガス中に含まれるオゾンの濃度や水分を含むガス中に含まれる水分量については、SAM分子1が化学吸着できる程度に基板Wの表面Wfに水酸基3を導入できればよく、特に限定されない。また、オゾンガス又は水分を含むガスの接触時間についても、SAM分子1が化学吸着できる程度に基板Wの表面Wfに水酸基3を導入できればよく、特に限定されない。
【0102】
[基板処理装置]
次に、本実施形態に係る基板処理装置について、図面を参照しながら以下に説明する。尚、以下の対応では、基板処理装置が、オゾンガスを供給するためのオゾンガス供給部を備える場合を例にして説明するが、水分を含むガスを供給するためのガス供給部も同様の構成を採用することができる。
【0103】
本実施形態の基板処理装置300は、第1実施形態の基板処理装置100と比べて、
図12に示すように、表面改質液供給部40に代えて、オゾンガス供給部93を備えた点が異なる。尚、
図12は、第3実施形態に係る基板処理装置の概略構成を表す説明図である。同図に於いても、図示したものの方向関係を明確にするために、適宜XYZ直交座標軸を表示する。ここで、XY平面は水平面を表し、+Z方向は鉛直上向きを表す。尚、第1実施形態の基板処理装置と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0104】
オゾンガス供給部93は、基板Wの表面Wfにオゾンガスを供給する手段である。このオゾンガス供給部93は、
図12に示すように、オゾンガス供給源94と、オゾンガス供給管95と、バルブ96と、ノズル97と、アーム98とを有している。オゾンガス供給管95は、オゾンガス供給源94からオゾンガスをノズル97に供給する。オゾンガス供給管95の途中経路には、バルブ96が設けられている。また、バルブ96は制御部80と電気的に接続されている。これにより、バルブ96の開閉を制御部80の動作指令によって制御することができる。制御部80の動作指令によりバルブ96が開栓されると、オゾンガスがオゾンガス供給管95を介してノズル97に圧送される。
【0105】
ノズル97は、水平に延設されたアーム98の先端部に取り付けられており、オゾンガスを吐出する際にはスピンベース11の上方に配置される。アーム98は旋回軸(図示しない。)を介して旋回駆動部70と連結されている。旋回駆動部70は、制御部80と電気的に接続し、制御部80からの動作指令によりアーム98を回動させる。アーム98の回動に伴って、ノズル97も移動する。
【0106】
(その他の事項)
以上の説明に於いては、本発明の最も好適な実施態様について説明した。しかし、本発明は当該実施態様に限定されるものではない。前述の実施形態及び各変形例に於ける各構成は、相互に矛盾しない範囲内で変更、修正、置換、付加、削除及び組合せが可能である。
【実施例0107】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量、条件等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0108】
(実施例1)
表面にSiO2膜(膜厚100nm)が形成された基板を準備し、これをフッ化水素水溶液に1分間浸漬させた。フッ化水素水溶液としては、フッ化水素とDIWの体積比が、フッ化水素:DIW=1:100となるものを用いた。
【0109】
次に、フッ化水素水溶液から引き上げた基板を、SAM形成材料を含む第1処理液中に5分間浸漬させ、基板のSiO2膜表面にSAM(厚さ約1nm)を形成させた(第1接触工程(SAM形成工程))。第1処理液としては、溶媒であるトルエンに、SAM形成材料であるオクタデシルトリクロロシランが溶解したものを用いた。また、オクタデシルトリクロロシランの含有量(濃度)は、第1処理液の全質量に対し5質量%とした。
【0110】
次に、第1処理液から引き上げた基板に、除去液を1分間供給し続けることで、基板の表面に残存する未吸着のSAM形成材料を除去した(除去工程)。除去液としては、デカンを用いた。
【0111】
続いて、除去液から引き上げた基板を、表面改質液中に1分間浸漬させた(表面改質工程)。表面改質液としては、SC-1(体積比で、アンモニウム水(NH3濃度28%):過酸化水素水(H2O2濃度30%):DIW=1:4:20)を用いた。その後、表面改質液から基板を引き上げ、SAMが形成された面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。窒素ガスの温度は常温とし、乾燥時間は、0.33分間とした。
【0112】
さらに、乾燥後の基板を、SAM形成材料を含む第2処理液中に5分間浸漬させ、基板の表面にSAMを形成させた(第2接触工程(緻密化処理工程))。第2処理液としては、第1接触工程に於ける第1処理液と同様のものを用いた。
【0113】
次に、第2処理液から引き上げた基板に、トルエンを1分間供給し続けることで、第2処理液を除去した後(リンス工程)、SAMが形成された面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。窒素ガスの温度は常温とし、乾燥時間は、0.33分間とした。これにより、本実施例に係るサンプルを作製した。
【0114】
続いて、得られたサンプルに対しエッチング処理を施した。具体的には、基板をエッチング液中に浸漬し、基板表面に於けるSAMで保護されていない領域のエッチングを行った。エッチング条件としては、SiO2のエッチング量が10nm程度となるように、エッチング液中での浸漬時間(エッチング処理時間)を195秒間とした。またエッチング液としては、フッ化水素水溶液を用い、かつフッ化水素とDIWの体積比を、フッ化水素:DIW=1:100とした。
【0115】
続いて、エッチング液から引き上げた基板を、DIW中に0.5分間浸漬させた後、基板をDIWから引き上げ(DIWによるリンス工程)、エッチング処理が施された面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた(乾燥工程)。窒素ガスの温度は常温とし、乾燥時間は、0.33分間とした。
【0116】
(比較例1)
本比較例に於いては、実施例1と比較して、第1処理液を用いたSAMの形成工程後、除去工程、表面改質工程及び緻密化処理工程(第2接触工程)を行わなかった点が異なる。より詳細には、以下の通りである。
【0117】
実施例1と同様の基板を準備し、これをフッ化水素水溶液に1分間浸漬させた。フッ化水素水溶液としては、フッ化水素とDIWの体積比が、フッ化水素:DIW=1:100となるものを用いた。
【0118】
次に、フッ化水素水溶液から引き上げた基板を、SAM形成材料を含む第1処理液中に5分間浸漬させ、基板のSiO2膜表面にSAM(厚さ約1nm)を形成させた。第1処理液としては、溶媒であるトルエンに、SAM形成材料であるオクタデシルトリクロロシランが溶解したものを用いた。また、オクタデシルトリクロロシランの含有量(濃度)は、処理液の全質量に対し5質量%とした。
【0119】
次に、第1処理液から引き上げた基板に、トルエンを1分間供給し続けることで、基板の表面に残存する第1処理液を除去した後、SAMが形成された面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。窒素ガスの温度は常温とし、乾燥時間は、0.33分間とした。これにより、本比較例に係るサンプルを作製した。
【0120】
続いて、得られたサンプルに対しエッチング処理を施した。具体的には、基板をエッチング液中に浸漬し、基板表面に於けるSAMで保護されていない領域のエッチングを行った。エッチング条件としては、SiO2のエッチング量が10nm程度となるように、エッチング液中での浸漬時間(エッチング処理時間)を195秒間とした。またエッチング液としては、フッ化水素水溶液を用い、かつフッ化水素とDIWの体積比を、フッ化水素:DIW=1:100とした。
【0121】
続いて、エッチング液から引き上げた基板を、DIW中に0.5分間浸漬させた後、基板をDIWから引き上げ(DIWによるリンス工程)、エッチング処理が施された面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた(乾燥工程)。窒素ガスの温度は常温とし、乾燥時間は、0.33分間とした。
【0122】
(比較例2)
本比較例に於いては、実施例1と比較して、デカンによる除去工程後に表面改質工程を行わなかった点が異なる。より詳細には、以下の通りである。
【0123】
実施例1と同様の基板を準備し、これをフッ化水素水溶液に1分間浸漬させた。フッ化水素水溶液としては、フッ化水素とDIWの体積比が、フッ化水素:DIW=1:100となるものを用いた。
【0124】
次に、フッ化水素水溶液から引き上げた基板を、SAM形成材料を含む第1処理液中に5分間浸漬させ、基板のSiO2膜表面にSAMを形成させた(厚さ約1nm)。第1処理液としては、溶媒であるトルエンに、SAM形成材料であるオクタデシルトリクロロシランが溶解したものを用いた。また、オクタデシルトリクロロシランの含有量(濃度)は、処理液の全質量に対し5質量%とした。
【0125】
次に、第1処理液から引き上げた基板を、除去液中に1分間浸漬させ、基板の表面に残存する未吸着のSAM形成材料を除去した。除去液としては、デカンを用いた。
【0126】
続いて、除去液から基板を引き上げ、SAMが形成された面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。窒素ガスの温度は常温とし、乾燥時間は、0.33分間とした。
【0127】
さらに、乾燥後の基板を、SAM形成材料を含む第2処理液中に5分間浸漬させ、基板の表面にSAMを形成させた。第2処理液としては、第1接触工程に於ける第1処理液と同様のものを用いた。
【0128】
次に、第2処理液から引き上げた基板に、トルエンを1分間供給し続けることで、第2処理液を除去した後、SAMが形成された面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。窒素ガスの温度は常温とし、乾燥時間は、0.33分間とした。これにより、本比較例に係るサンプルを作製した。
【0129】
続いて、得られたサンプルに対しエッチング処理を施した。具体的には、基板をエッチング液中に浸漬し、基板に於けるSAMで保護されていない領域のエッチングを行った(エッチング工程)。エッチング条件としては、SiO2のエッチング量が10nm程度となるように、エッチング液中での浸漬時間(エッチング処理時間)を195秒間とした。またエッチング液としては、フッ化水素水溶液を用い、かつフッ化水素とDIWの体積比を、フッ化水素:DIW=1:100とした。
【0130】
続いて、エッチング液から引き上げた基板を、DIW中に0.5分間浸漬させた後、基板をDIWから引き上げ(DIWによるリンス工程)、エッチング処理が施された面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた(乾燥工程)。窒素ガスの温度は常温とし、乾燥時間は、0.33分間とした。
【0131】
(SAMの緻密性評価)
実施例1、並びに比較例1及び2に係る各サンプルについて、それぞれSAMの膜欠陥の面積を算出し、SAMの緻密性を評価した。
【0132】
すなわち、原子間力顕微鏡(AFM)(商品名:Dimension Icon、ブルカージャパン(株)製)を用いて各サンプルのSAMを撮像し、500nm四方の観察像(AFM画像)を得た。次に、得られた各観察像を二値化した後、画像処理を行って膜欠陥のマッピング化を行い、SAMの膜欠陥の部位(領域)を特定した。SAMの膜欠陥の部位(領域)のマッピング化による特定は、SAMの膜厚が約1nmであることを考慮して、SAM表面から深さ1nm未満の位置にある欠陥がマッピング化されるように画像処理を行った。これにより、SAM表面から深さ1nmを超える深さの部位(領域)、より具体的にはエッチングされた部位がSAMの膜欠陥の領域としてマッピング化されて、その面積に含まれることがないようにした。続いて、画像処理により特定したSAMの膜欠陥の領域について、その面積を算出し、観察像に於ける全領域の面積に対する比率を算出した。結果を表1に示す。
【0133】
表1から分かる通り、実施例1に於けるSAMの膜欠陥の面積比率は25.4%であり、比較例1や比較例2に於けるSAMの膜欠陥の面積比率と比較して最も小さく、良好な緻密性を有することが確認された。
【0134】
(SAMの保護性能の評価)
実施例1、並びに比較例1及び2に係る各サンプルについて、それぞれSiO2膜の膜厚及び水接触角に基づきSAMの保護性能を評価した。
【0135】
具体的には、エッチング処理直前のSAMに被覆されているSiO2膜の膜厚d1と、全ての工程終了後のSAMに被覆されているSiO2膜の膜厚d2とについて、それぞれエリプソメーター(商品名:Flying MASE XI、J.A.Woollam(株)製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0136】
また、エッチング処理直前のSAMに被覆されているSiO2膜の水接触角θ1と、全ての工程終了後のSAMに被覆されているSiO2膜の水接触角θ2とについて、それぞれ液滴法に基づき、接触角計(商品名:DMo-701、協和界面科学(株)製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0137】
表1から分かる通り、実施例1では、エッチング前後のSiO2膜の膜厚の変化が99.6nmから98.8nmであり、比較例1及び2の場合と比べて減少幅が小さかった。また、実施例1では、エッチング後のSiO2膜表面の水接触角が、比較例1及び2の場合と比べて大きかった。これらの結果から、実施例1のSAMは、比較例1及び2と比べて、SiO2膜に対する保護性能に優れていることが確認された。
【0138】