(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089227
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】位相差層付偏光板および位相差層付偏光板を含む画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240626BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240626BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240626BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/00 313
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204464
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 一晃
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
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5G435LL07
(57)【要約】
【課題】耐屈曲性に優れた位相差層付偏光板を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態の位相差層付偏光板は、偏光子、および、該偏光子の少なくとも一方の面に積層された保護層を含む偏光板と;第1の接着層と;第1の位相差層と;第2の接着層と;第2の位相差層と;第3の接着層と;をこの順に備える。位相差層付偏光板の総厚みは90μm以下であり、第2の接着層の厚みが3μm以下であり、第1の接着層の厚みと、該第2の接着層の厚みと、該第3の接着層の厚みとが、第2の接着層の厚み≦第1の接着層の厚み≦第3の接着層の厚みの関係を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子、および、該偏光子の少なくとも一方の面に積層された保護層を含む偏光板と;第1の接着層と;第1の位相差層と;第2の接着層と;第2の位相差層と;第3の接着層と;をこの順に備える位相差層付偏光板であって、
該位相差層付偏光板の総厚みが90μm以下であり、
該第2の接着層の厚みが3μm以下であり、
該第1の接着層の厚みと、該第2の接着層の厚みと、該第3の接着層の厚みとが、第2の接着層の厚み≦第1の接着層の厚み≦第3の接着層の厚みの関係を満たす、位相差層付偏光板。
【請求項2】
前記第3の接着層の25℃における貯蔵弾性率G’が100kPa以下である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項3】
前記偏光子の厚みが10μm以下である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項4】
前記保護層の厚みが40μm以下である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項5】
前記第1の位相差層および前記第2の位相差層が液晶配向化合物の配向固化層である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項6】
前記第1の位相差層のRe(550)が100nm~190nmであり、前記第1の位相差層のRe(450)/Re(550)が0.8以上1未満であり、前記第1の位相差層の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が40°~50°である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項7】
前記第2の位相差層の屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、請求項6に記載の位相差層付偏光板。
【請求項8】
前記第1の位相差層のRe(550)が200nm~300nmであり、前記第1の位相差層の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が10°~20°であり、
前記第2の位相差層のRe(550)が100nm~190nmであり、前記第2の位相差層の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が70°~80°である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項9】
前記第1の接着層の25℃における貯蔵弾性率G’が、30kPa~140kPaである、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項10】
屈曲可能な画像表示装置に用いられる、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の位相差層付偏光板を含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差層付偏光板および位相差層付偏光板を含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、代表的には偏光板および位相差板が用いられている。実用的には、偏光板と位相差板とを一体化した位相差層付偏光板が広く用いられている(例えば、特許文献1)。画像表示装置の薄型化への要望が強くなるに伴い、位相差層付偏光板についても薄型化の要望が強まっている。位相差層付偏光板の薄型化を目的として、位相差板の薄型化が進んでおり、液晶系の材料を用いて作製された位相差板が用いられている。さらに、画像表示装置の用途の拡大に伴い、画像表示装置に対する要望が多様化している。例えばスマートフォンにおいては、折り畳み可能とすることが求められている。したがって、このような画像表示装置を実現し得る位相差層付偏光板が強く要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は耐屈曲性に優れた位相差層付偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.本発明の実施形態の位相差層付偏光板は、偏光子、および、該偏光子の少なくとも一方の面に積層された保護層を含む偏光板と;第1の接着層と;第1の位相差層と;第2の接着層と;第2の位相差層と;第3の接着層と;をこの順に備える。この位相差層付偏光板の総厚みは90μm以下であり、第2の接着層の厚みが3μm以下であり、第1の接着層の厚みと、該第2の接着層の厚みと、該第3の接着層の厚みとが、第2の接着層の厚み≦第1の接着層の厚み≦第3の接着層の厚みの関係を満たす。
2.上記1に記載の位相差層付偏光板において、上記第3の接着層の25℃における貯蔵弾性率G’は100kPa以下であってもよい。
3.上記1または2に記載の位相差層付偏光板において、上記偏光子の厚みは10μm以下であってもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載の位相差層付偏光板において、上記保護層の厚みは40μm以下であってもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載の位相差層付偏光板において、上前記第1の位相差層および上記第2の位相差層が液晶配向化合物の配向固化層であってもよい。
6.上記1から5のいずれかに記載の位相差層付偏光板において、上記第1の位相差層のRe(550)は100nm~190nmであり、上記第1の位相差層のRe(450)/Re(550)は0.8以上1未満であり、上記第1の位相差層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度が40°~50°であってもよい。
7.上記6に記載の位相差層付偏光板において、上記第2の位相差層の屈折率特性はnz>nx=nyの関係を示していてもよい。
8.上記1から5のいずれかに記載の位相差層付偏光板において、上記第1の位相差層のRe(550)は200nm~300nmであり、上記第1の位相差層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度は10°~20°であり、上記第2の位相差層のRe(550)は100nm~190nmであり、上記第2の位相差層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度は70°~80°であってもよい。
9.上記1から8のいずれかに記載の位相差層付偏光板において、上記第1の接着層の25℃における貯蔵弾性率G’は、30kPa~140kPaであってもよい。
10.上記1から9のいずれかに記載の位相差層付偏光板は、屈曲可能な画像表示装置に用いられてもよい。
11.本発明の別の局面においては、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記1から10のいずれかに記載の位相差層付偏光板を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、耐屈曲性に優れた位相差層付偏光板を提供することができる。本発明の実施形態によれば、液晶配向固化層である位相差層を含む場合であっても、耐屈曲性に優れ、位相差層等の構成要素でのクラックの発生が抑制された位相差層付偏光板を提供することができる。そのため、本発明の実施形態の位相差層付偏光板は、屈曲可能な画像表示装置にも好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。
【
図2】本発明の実施例1の位相差層付偏光板の屈曲試験後のSEM観察写真(倍率:20倍)である。
【
図3】本発明の比較例3の位相差層付偏光板の屈曲試験後のSEM観察写真(倍率:20倍)である。
【
図4】本発明の実施例の屈曲試験時の試料の固定方法を説明する模式図である。
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0010】
A.位相差層付偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。図示例の位相差層付偏光板100は、偏光子11および偏光子の一方の面に積層された保護層12と、を含む偏光板10と;第1の接着層20と;第1の位相差層30と;第2の接着層40と;第2の位相差層50と;第3の接着層60と;を視認側からこの順に有する。位相差層付偏光板100の総厚みは90μm以下である。図示例において、偏光子10は、一方の面にのみ保護層12が積層されているが、偏光子10の両側に保護層が積層されていてもよい(図示せず)。第1の接着層20、第2の接着層40、および、第3の接着層60は、任意の適切な粘着剤により形成される粘着剤層、または、任意の適切な接着剤により形成される接着剤層である。第2の接着層40の厚みは、3μm以下である。第1の位相差層30および第2の位相差層50は、好ましくは液晶化合物の配向固化層(以下、単に液晶配向固化層と称する場合がある)である。本明細書において「液晶配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。
【0011】
第1の接着層20の厚みと、第2の接着層40の厚みと、第3の接着層60の厚みは、第2の接着層の厚み≦第1の接着層の厚み≦第3の接着層の厚みの関係を満たす。屈曲可能な画像表示装置に用いられる偏光板では、屈曲を繰り返すことで偏光子および粘着剤層に応力がかかり、クラックなどの外観不良の発生が問題となり得る。第1の接着層20と、第2の接着層40と、第3の接着層60とがこのような関係を満たせば、位相差層付偏光板が折り曲げられた場合にそれぞれの接着層に隣接する、第1の位相差層30および第2の位相差層50にかかる応力を緩和し得る。その結果、耐屈曲性に優れた位相差層付偏光板を提供することができる。
【0012】
上記のとおり、位相差層付偏光板100の総厚みは90μm以下であり、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは70μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下であり、特に好ましくは50μm以下である。位相差層付偏光板の総厚みは、例えば25μm以上であり得る。位相差層付偏光板の総厚みが上記範囲であれば、屈曲時の断面2次モーメントが小さくなり、各構成要素(層)にかかる応力が小さくなる。したがって、位相差層付偏光板の耐屈曲性がさらに向上し得る。なお、位相差層付偏光板の総厚みとは、偏光板、位相差層(第1の位相差層および第2の位相差層)および接着層(第1の接着層、第2の接着層、および、第3の接着層)の厚みの合計をいう(すなわち、位相差層付偏光板の総厚みは、第3の接着層の表面に仮着され得るはく離ライナーの厚みを含まない)。
【0013】
以下、位相差層付偏光板の構成要素について、より詳細に説明する。
【0014】
B.偏光板
B-1.偏光子
偏光子は、代表的には、二色性物質(代表的には、ヨウ素)を含む樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムとしては、偏光子として用いられ得る任意の適切な樹脂フィルムを採用することができる。樹脂フィルムは、代表的には、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムである。樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0015】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、PVA系樹脂フィルムにヨウ素による染色処理および延伸処理(代表的には、一軸延伸)が施されたものが挙げられる。上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系樹脂フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系樹脂フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系樹脂フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0016】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性を向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報(特許第5414738号)、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0017】
偏光子の厚みは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm~10μmであり、さらに好ましくは1μm~8μmであり、特に好ましくは2μm~5μmである。偏光子の厚みが上記範囲であれば、位相差層付偏光板の薄型化に寄与し得る。また、位相差層付偏光板の耐屈曲性が向上し得る。
【0018】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率Tsは、好ましくは40%~48%であり、より好ましくは41%~46%である。偏光子の偏光度Pは、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。上記単体透過率は、代表的には、紫外可視分光光度計を用いて測定し、視感度補正を行なったY値である。上記偏光度は、代表的には、紫外可視分光光度計を用いて測定して視感度補正を行なった平行透過率Tpおよび直交透過率Tcに基づいて、下記式により求められる。
偏光度(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0019】
B-2.保護層
保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0020】
位相差層付偏光板は、代表的には画像表示装置の視認側に配置され、保護層12は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、保護層には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0021】
保護層の厚みは、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは10μm~40μm、さらに好ましくは10μm~30μmである。なお、表面処理が施されている場合、外側保護層(保護層12)の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0022】
C.接着層
接着層は任意の適切な粘着剤により形成される粘着剤層、または、任意の適切な接着剤により形成される接着剤層である。上記のとおり、接着層は、第2の接着層の厚み≦第1の接着層の厚み≦第3の接着層の厚みの関係を満たす。接着層はそれぞれの接着層の厚みが上記の関係を満たしていればよく、接着剤層であってもよく、粘着剤層であってもよい。第1の接着層の厚み>第3の接着層の厚みである場合、屈曲時に第1の接着層に隣接する第1の位相差層にかかる応力が大きくなり、クラックが発生しやすくなり得る。また、第3の接着層に隣接する第2の位相差層に係る応力の緩和が不十分となり得る。また、第2の接着層の厚み>第1の接着層の厚みである場合、第2の接着層に隣接する第1の位相差層および第2の位相差層にかかる応力が大きくなり、他の接着層(第1の接着層および第3の接着層)により十分に応力を緩和することが困難となり、歪みが生じやすくなり得る。
【0023】
第2の接着層の厚みは3μm以下であり、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1.5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。第2の接着層は、好ましくは0.5μm以上である。第2の接着層の厚みが3μmを超える場合、隣接する第1の位相差層および第2の位相差層に係る応力が大きくなり、クラック等の外観不良が生じやすくなり得る。第2の接着層の厚みが上記範囲である場合、第2の接着層は好ましくは接着剤層である。第2の接着層が接着剤層であれば、上記の厚みであっても第1の位相差層と第2の位相差層とを十分に密着させることができる。
【0024】
各接着層の厚みは、第2の接着層の厚みが3μm以下であり、かつ、第2の接着層の厚み≦第1の接着層の厚み≦第3の接着層の厚みの関係を満たしていればよく、任意の適切な値に設定され得る。第1の接着層の厚みは、例えば、1μm~30μmであり、好ましくは1μm~25μmであり、より好ましくは1μm~20μmであり、さらに好ましくは1μm~10μmである。第3の接着層の厚みは、例えば、5μm~60μmであり、好ましくは5μm~50μmであり、さらに好ましくは10μm~30μmである。本発明の実施形態の位相差層付偏光板が屈曲可能な画像表示装置に適用される場合、各接着層の厚みを任意の適切な値に調整することにより、画像表示装置の任意の適切な位置にくるよう屈曲中心の位置を調整することができる。
【0025】
第1の接着層は、25℃における貯蔵弾性率G’が好ましくは30kPa~140kPaであり、より好ましくは35kPa~135kPaである。貯蔵弾性率G’が上記範囲であれば、耐屈曲性に優れた位相差層付偏光板を提供することができる。なお、第1の接着層が上記貯蔵弾性率G’を有する場合、接着層は粘着剤層であり得る。
【0026】
第3の接着層は、25℃における貯蔵弾性率G’が好ましくは100kPa以下であり、より好ましくは90kPa以下であり、さらに好ましくは85kPa以下である。第3の接着層の25℃における貯蔵弾性率G’は、例えば、20kPa以上である。位相差層にかかる応力は第1の位相差層よりも第2の位相差層が大きくなり得る。第2の位相差層に隣接する第3の接着層の貯蔵弾性率G’が上記範囲であれば、耐屈曲性に優れた位相差層付偏光板を提供することができる。なお、第3の接着層が上記貯蔵弾性率G’を有する場合、接着層は粘着剤層であり得る。
【0027】
C-1.粘着剤
接着層が粘着剤により形成される粘着剤層である場合、上記のような貯蔵弾性率G’を有する接着層が形成され得る。また、リワーク性に優れた位相差層付偏光板が得られ得る。接着層が粘着剤層である場合、粘着剤層は任意の適切な粘着剤を用いて形成することができる。粘着剤は、少なくともベースポリマーを含む。ベースポリマーは、粘着剤層において粘着性を発現させる粘着成分である。ベースポリマーとしては、例えば、アクリルポリマー、シリコーンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリアミドポリマー、ポリビニルエーテルポリマー、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィンポリマー、エポキシポリマー、フッ素ポリマー、およびゴムポリマーが挙げられる。ベースポリマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着剤層(接着層)における良好な透明性および粘着性を確保する観点から、ベースポリマーとしては、好ましくはアクリルポリマーが用いられる。
【0028】
本明細書において、アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50重量%以上の割合で含むモノマー成分の共重合体である。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0029】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、好ましくはアルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、好適に用いられ、より好ましくはアルキル基の炭素数が10~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、好適に用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、直鎖状または分岐状のアルキル基を有してもよく、脂環式アルキル基など環状のアルキル基を有してもよい。
【0030】
直鎖状または分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル(即ちラウリルアクリレート)、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、および、(メタ)アクリル酸ノナデシル等が挙げられる。
【0031】
脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、二環式の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、三環以上の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、および、(メタ)アクリル酸シクロオクチル等が挙げられる。二環式の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。三環以上の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、および、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、好ましくは炭素数3~15のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが用いられ、より好ましくは、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、および、アクリル酸ドデシル(即ちラウリルアクリレート)からなる群より選択される少なくとも1種が用いられる。
【0033】
モノマー成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、粘着剤層において粘着性等の基本特性を適切に発現させる観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。モノマー成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば99重量%以下である。
【0034】
また、アクリル系ベースポリマーのモノマー成分の合計100重量部に対する炭素数10~20の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は好ましくは1重量部~40重量部であり、より好ましくは5重量部~35重量部である。アクリル酸ラウリルを上記範囲で用いることが特に好ましい。
【0035】
モノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性モノマーを含んでもよい。共重合性モノマーとしては、例えば、極性基を有するモノマーが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、例えば、窒素原子含有環を有するモノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、およびカルボキシ基含有モノマーが挙げられる。極性基含有モノマーは、アクリルポリマーへの架橋点の導入、アクリルポリマーの凝集力の確保など、アクリルポリマーの改質に役立つ。
【0036】
窒素原子含有環を有するモノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、およびN-ビニルイソチアゾールが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーとしては、好ましくはN-ビニル-2-ピロリドンが用いられる。
【0037】
モノマー成分における窒素原子含有環を有するモノマーの含有割合は、粘着剤層における凝集力の確保、および、粘着剤層における対被着体密着力の確保の観点から、好ましくは0.1重量%以上であり、より好ましくは0.3重量%以上であり、さらに好ましくは0.55重量%以上である。モノマー成分における、窒素原子含有環を有するモノマーの含有割合は、アクリルポリマーのガラス転移温度の調整、および、アクリルポリマーの極性(粘着剤層における各種添加剤成分とアクリルポリマーとの相溶性に関わる)の調整の観点から、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。
【0038】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、好ましくは(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが用いられ、より好ましくはアクリル酸4-ヒドロキシブチルが用いられる。
【0039】
モノマー成分におけるヒドロキシ基含有モノマーの含有割合は、アクリルポリマーへの架橋構造の導入、および、粘着剤層における凝集力の確保の観点から、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは0.8重量%以上である。モノマー成分におけるヒドロキシ基含有モノマーの含有割合は、アクリルポリマーの極性(粘着剤における各種添加剤成分とアクリルポリマーとの相溶性に関わる)の調整の観点から、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは8重量%以下である。
【0040】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、および、イソクロトン酸が挙げられる。
【0041】
モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの含有割合は、アクリルポリマーへの架橋構造の導入、粘着剤層における凝集力の確保、および、粘着剤層における被着体に対する密着力の確保の観点から、好ましくは0.1重量%以上であり、より好ましくは0.5重量%以上であり、さらに好ましくは0.8重量%以上である。モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの含有割合は、アクリルポリマーのガラス転移温度の調整、および、酸による被着体の腐食リスクの回避の観点から、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下である。
【0042】
モノマー成分における極性基含有モノマーの含有割合は、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは6重量%以上であり、さらに好ましくは7重量%以上であり、特に好ましくは8重量%以上である。一方、極性基含有モノマーの含有割合が大きくなるにしたがって、ベースポリマーの双極子モーメントが大きくなり、比誘電率が高くなり得る。また、極性基含有モノマーの含有割合が過度に大きいと、ポリマーのガラス転移温度が高くなり、低温での接着力が低下する傾向がある。そのため、モノマー成分における極性基含有モノマーの含有割合は、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下である。
【0043】
モノマー成分は、他の共重合性モノマーを含んでいてもよい。他の共重合性モノマーとしては、例えば、酸無水物モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー、および、芳香族ビニル化合物が挙げられる。これら他の共重合性モノマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
ベースポリマーは、好ましくは架橋構造を有する。ベースポリマーへの架橋構造の導入方法としては、例えば、架橋剤と反応可能な官能基を有するベースポリマーと架橋剤とを粘着剤に配合し、ベースポリマーと架橋剤とを粘着剤層中で反応させる方法、および、ベースポリマーを形成するモノマー成分に多官能モノマーを含め、当該モノマー成分の重合により、ポリマー鎖に分枝構造(架橋構造)が導入されたベースポリマーを形成する方法が挙げられる。これら方法は、併用してもよい。
【0045】
アクリルポリマーは、モノマー成分を重合させることによって形成できる。重合方法としては、任意の適切な方法を用いることができる。例えば、溶液重合、活性エネルギー線重合(例えば、UV重合)、塊状重合、および乳化重合が挙げられる。粘着剤層の透明性、耐水性、およびコストの観点から、溶液重合およびUV重合が好ましい。溶液重合の溶媒としては、例えば、酢酸エチルおよびトルエンが用いられる。また、重合の開始剤としては、例えば、熱重合開始剤および光重合開始剤が用いられる。重合開始剤の使用量は、モノマー成分の合計100重量部に対して、例えば、0.05重量部以上であり、また、例えば1重量部以下である。
【0046】
アクリルポリマーの重量平均分子量は、粘着剤層における凝集力の確保の観点から、好ましくは10万以上であり、より好ましくは30万以上であり、さらに好ましくは50万以上である。アクリルポリマーの重量平均分子量は、好ましくは500万以下であり、より好ましくは300万以下であり、さらに好ましくは200万以下である。アクリルポリマーの重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)によって測定してポリスチレン換算により算出される。
【0047】
ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは-10℃以下であり、さらに好ましくは-20℃以下である。ベースポリマーのガラス転移温度は、例えば-80℃以上である。
【0048】
粘着剤は、オリゴマーをさらに含んでいてもよい。ベースポリマーとしてアクリルポリマーが用いられる場合、好ましくは、オリゴマーとしてアクリルオリゴマーが用いられる。アクリルオリゴマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50重量%以上の含有割合で含むモノマー成分の共重合体であり、重量平均分子量は、例えば1000以上30000以下である。
【0049】
架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を用いることができ、例えば、ベースポリマーに含まれる官能基(ヒドロキシ基およびカルボキシ基など)と反応する化合物が挙げられる。そのような架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、過酸化物架橋剤、エポキシ架橋剤、オキサゾリン架橋剤、アジリジン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、および、金属キレート架橋剤が挙げられる。架橋剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤としては、ベースポリマーにおけるヒドロキシ基およびカルボキシ基との反応性が高くて架橋構造の導入が容易であることから、好ましくは、イソシアネート架橋剤、過酸化物架橋剤、およびエポキシ架橋剤が用いられる。
【0050】
粘着剤は、シランカップリング剤をさらに含有してもよい。粘着剤におけるシランカップリング剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上であり、より好ましくは0.2重量部以上である。シランカップリング剤の含有量は、好ましくは5重量部以下であり、より好ましくは3重量部以下である。
【0051】
粘着剤は、必要に応じて任意の適切な他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、および、帯電防止剤が挙げられる。
【0052】
C-2.接着剤
接着層が接着剤層である場合、例えば、第2の接着層のように厚みが薄い接着層とした場合であっても、優れた密着性を発揮し得る。接着剤層である接着層は、任意の適切な接着剤により形成され得る。接着剤としては、好ましくは活性エネルギー線硬化型接着剤が用いられる。
【0053】
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、任意の適切な活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤が挙げられる。また、硬化メカニズムの観点からは、活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型、ラジカル硬化型とカチオン硬化型とのハイブリッドが挙げられる。代表的には、ラジカル硬化型の紫外線硬化型接着剤が用いられ得る。汎用性に優れ、および、特性(構成)の調整が容易だからである。
【0054】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、代表的には、単官能成分と多官能成分(硬化成分)と光重合開始剤とを含有する。単官能成分および多官能成分はそれぞれ、代表的には、ラジカル重合性化合物である。好ましい単官能成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸の高級アルキルエステルおよびその変性体が挙げられる。具体的には、イソステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン等が挙げられる。好ましい多官能成分としては、例えば、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基などの官能基を2つ以上有するモノマーおよび/またはオリゴマーが挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、グリセリントリアクリレートが挙げられる。上記以外の単官能成分または多官能成分の具体例としては、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、N-メチルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、9-ビニルカルバゾールが挙げられる。1つの実施形態においては、単官能成分または多官能成分は、環構造を有する。具体的には、アクリロイルモルホリン、γ-ブチロラクトンアクリレート、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン、N-メチルピロリドン、9-ビニルカルバゾールが挙げられる。単官能成分または多官能成分はそれぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、必要に応じて、カチオン重合性化合物をさらに含んでいてもよい。カチオン重合性化合物は、単官能であってもよく、多官能であってもよい。単官能カチオン重合性化合物としては、例えば、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシル)オキシ]オキセタンが挙げられる。多官能カチオン重合性化合物としては、例えば、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタンが挙げられる。カチオン重合性化合物として、シランカップリング剤を用いてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0056】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、必要に応じて、アクリル系オリゴマーをさらに含んでいてもよい。アクリル系オリゴマーの分子量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0057】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、目的に応じて、可塑剤(例えば、オリゴマー成分)、架橋剤、希釈剤等をさらに含有してもよい。なお、上記の各成分は、市販品を用いてもよい。
【0058】
活性エネルギー線硬化型接着剤の詳細は、例えば、特開2018-017996号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0059】
D.位相差層
第1の位相差層および第2の位相差層は、好ましくは液晶化合物の配向固化層である。液晶化合物を用いることにより、樹脂フィルムよりも格段に薄い厚みで樹脂フィルムと同等の面内位相差を実現することができる。また、液晶化合物の配向である位相差層は薄く脆いため、耐屈曲性に問題が生じ得る。本発明の実施形態の位相差層付偏光板は、上記のとおり、第1の接着層の厚みと、第2の接着層の厚みと、第3の接着層の厚みとが、第2の接着層の厚み≦第1の接着層の厚み≦第3の接着層の厚みの関係を満たす。このような接着層を配置すれば、位相差層として液晶化合物の配向固化層を採用した場合であっても位相差層にかかる応力を緩和することができ、耐屈曲性を向上させることができる。
【0060】
1つの実施形態において、第1の位相差層は好ましくはRe(550)が100nm~190nmであり、第1の位相差層のRe(450)/Re(550)が0.8以上1未満であり、第1の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が40°~50°である。この実施形態において、第2の位相差層は、好ましくは屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す(以下、実施形態1ともいう)。本発明の別の実施形態において、第1の位相差層のRe(550)は200nm~300nmであり、第1の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が10°~20°であり、第2の位相差層のRe(550)は100nm~190nmであり、第2の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が70°~80°である(以下、実施形態2ともいう)。
【0061】
D-1.実施形態1
上記のとおり、実施形態1において、第1の位相差層は好ましくはRe(550)が100nm~190nmであり、第1の位相差層のRe(450)/Re(550)が0.8以上1未満であり、第1の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が40°~50°である。この実施形態において、第2の位相差層は、好ましくは屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す。
【0062】
D-1-1.第1の位相差層
この実施形態において、第1の位相差層はλ/4板として機能し得る。第1の位相差層の面内位相差Re(550)は好ましくは100nm~190nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは130nm~160nmである。
【0063】
第1の位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~1.5であり、より好ましくは0.9~1.3である。このような関係を満たすことにより、得られる位相差層付偏光板を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0064】
第1の位相差層の厚みは好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~7μmであり、さらに好ましくは1μm~5μmである。
【0065】
第1の位相差層は、好ましくは逆分散波長特性を示す。この場合、Re(550)/Re(650)は好ましくは1を超え、より好ましくは1を超えて1.2以下であり、さらに好ましくは1.01~1.15である。また、第1の位相差層のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1未満であり、より好ましくは0.8以上0.95以下である。このような構成であれば、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。このような構成であれば、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
【0066】
この実施形態において、第1の位相差層30の遅相軸と偏光子11の吸収軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは約45°である。角度がこのような範囲であれば、上記のように第1の位相差層をλ/4板とすることにより、非常に優れた円偏光特性(結果として、非常に優れた反射防止特性)を有する位相差層付偏光板が得られ得る。
【0067】
上記のとおり、第1の位相差層は好ましくは液晶化合物の配向固化層である。液晶化合物を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるので、所望の面内位相差を得るための位相差層の厚みを格段に小さくすることができる。その結果、位相差層付偏光板のさらなる薄型化を実現することができる。
【0068】
液晶化合物の配向固化層である位相差層は、重合性液晶化合物を含む組成物を用いて形成され得る。本明細書において組成物に含まれる重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物をいう。重合性基は、重合反応に関与する基を意味し、好ましくは光重合性基である。ここで、光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基をいう。
【0069】
液晶性の発現は、サーモトロピックであってもよく、リオトロピックであってもよい。また、液晶相の構成としてはネマチック液晶であってもよく、スメクチック液晶であってもよい。製造の容易さという観点から、液晶性はサーモトロピックのネマチック液晶が好ましい。
【0070】
1つの実施形態において、単一層である位相差層は、下記式(1)で表される液晶化合物を含む組成物を用いて形成される。
L1-SP1-A1-D3-G1-D1-Ar-D2-G2-D4-A2-SP2-L2 (1)
【0071】
L1およびL2は、それぞれ独立して、1価の有機基を表し、L1およびL2の少なくとも一方は重合性基を表す。1価の有機基としては任意の適切な基が含まれる。L1およびL2の少なくとも一方が示す重合性基としては、ラジカル重合性基(ラジカル重合可能な基)が挙げられる。ラジカル重合性基としては、任意の適切なラジカル重合性基を用いることができる。好ましくはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。重合速度が速く、生産性向上の観点からアクリロイル基が好ましい。メタクリロイル基も高複屈折性液晶の重合性基として同様に使用できる。
【0072】
SP1およびSP2は、それぞれ独立して、単結合、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、または、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-に置換された2価の連結基を表す。炭素数1~14の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基およびへキシレン基が挙げられる。
【0073】
A1およびA2は、それぞれ独立して、脂環式炭化水素基または芳香族環置換基を表す。A1およびA2は好ましくは炭素数6以上の芳香族環置換基または炭素数6以上のシクロアルキレン環である。
【0074】
D1、D2、D3およびD4は、それぞれ独立して、単結合または二価の連結基を表す。具体的には、D1、D2、D3およびD4は、単結合、-O-CO-、-C(=S)O-、-CR1R2-、-CR1R2-CR3R4-、-O-CR1R2-、-CR1R2-O-CR3R4-、-CO-O-CR1R2-、-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-O-CO-CR3R4-、-CR1R2-CO-O-CR3R4-、-NR1-CR2R3-、または、-CO-NR1-を表す。ただし、D1、D2、D3およびD4の少なくとも一つは-O-CO-を表す。なかでも、D3が-O-CO-であることが好ましく、D3およびD4が-O-CO-であることがより好ましい。D1およびD2は、好ましくは、単結合である。R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0075】
G1およびG2は、それぞれ独立して、単結合または脂環式炭化水素基を表す。具体的には、G1およびG2は無置換または置換された炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表してもよい。また、脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。G1およびG2は、好ましくは単結合を表す。
【0076】
Arは、芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表す。Arは、例えば、下記式(Ar-1)~(Ar-6)で表される基からなる群より選択される芳香族環を表す。なお、下記式(Ar-1)~(Ar-6)中、*1はD
1との結合位置を表し、*2はD
2との結合位置を表す。
【化1】
【0077】
式(Ar-1)中、Q1は、NまたはCHを表し、Q2は、-S-、-O-、または、-N(R5)-を表す。R5は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0078】
式(Ar-1)~(Ar-6)中、Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR6R7、または、-SR8を表す。R6~R8は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Z1およびZ2は、互いに結合して環を形成してもよい。環は、脂環式、複素環、および、芳香族環のいずれであってもよく、好ましくは芳香族環である。形成される環には、置換基が置換していてもよい。
【0079】
式(Ar-2)および(Ar-3)中、A3およびA4は、それぞれ独立して、-O-、-N(R9)-、-S-、および、-CO-からなる群より選択される基を表し、R9は、水素原子または置換基を表す。R9が示す置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0080】
式(Ar-2)中、Xは、水素原子もしくは無置換または置換基を有する第14族~第16族の非金属原子を表す。Xが表す第14族~第16族の非金属原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、無置換または置換基を有する窒素原子、無置換または置換基を有する炭素原子が挙げられる。置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0081】
式(Ar-3)中、D5およびD6は、それぞれ独立して、単結合、-O-CO-、-C(=S)O-、-CR1R2-、-CR1R2-CR3R4-、-O-CR1R2-、-CR1R2-O-CR3R4-、-CO-O-CR1R2-、-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-O-CO-CR3R4-、-CR1R2-CO-O-CR3R4-、-NR1-CR2R3-、または、-CO-NR1-を表す。R1、R2、R3およびR4は、上記のとおりである。
【0082】
式(Ar-3)中、SP3およびSP4は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、重合性基を表す。
【0083】
式(Ar-3)中、L3およびL4は、それぞれ独立して、1価の有機基を表し、L3およびL4ならびに上記式(1)中のL1およびL2の少なくとも1つが重合性基を表す。
【0084】
式(Ar-4)~(Ar-6)中、Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群より選ばれる少なくとも1つの芳香族環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。式(Ar-4)~(Ar-6)中、Axは、好ましくは、芳香族複素環を有し、より好ましくはベンゾチアゾール環を有する。式(Ar-4)~(Ar-6)中、Ayは、水素原子、無置換または置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群より選択される少なくとも1つの芳香族環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。式(Ar-4)~(Ar-6)中、Ayは、好ましくは水素原子を表す。
【0085】
式(Ar-4)~(Ar-6)中、Q3は、水素原子、または、無置換または置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。式(Ar-4)~(Ar-6)中、Q3は、好ましくは水素原子を表す。
【0086】
このようなArのなかでは、好ましくは、上記式(Ar-4)または上記式(Ar-6)で表される基(原子団)が挙げられる。
【0087】
式(1)で表される液晶化合物の具体例は国際公開第2018/123551号公報に開示されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
液晶化合物を含む組成物は、好ましくは重合開始剤を含む。重合開始剤としては、任意の適切な重合剤が用いられる。好ましくは紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤である。光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、米国特許第2367670号の明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、米国特許第2951758号の明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報、特開平10-29997号公報記載)が挙げられる。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
液晶化合物を含む組成物は、位相差層を形成する作業性の観点から、溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては任意の適切な溶媒を用いることができ、好ましくは有機溶媒が用いられる。
【0090】
液晶化合物を含む組成物は、任意の適切な他の成分をさらに含む。例えば、フェノール系酸化防止剤などの酸化防止剤、上記以外の液晶化合物、レベリング剤、界面活性剤、チルト角制御剤、配向助剤、可塑剤、および、架橋剤などが挙げられる。
【0091】
液晶配向固化層は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む組成物(塗工液)を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。1つの実施形態においては、基材は任意の適切な樹脂フィルムであり、当該基材上に形成された液晶配向固化層は、偏光板の表面に転写され得る。
【0092】
上記配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0093】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0094】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性モノマーまたは架橋性モノマーである場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0095】
配向固化層の形成方法の詳細は、特開2006-163343号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0096】
D-1-2.第2の位相差層
第2の位相差層は、上記のとおり、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートであり得る。第2の位相差層としてポジティブCプレートを用いることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。この場合、第2の位相差層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nmであり、より好ましくは-70nm~-250nmであり、さらに好ましくは-90nm~-200nmであり、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。すなわち、別の位相差層の面内位相差Re(550)は10nm未満であり得る。
【0097】
nz>nx=nyの屈折率特性を有する第2の位相差層は、任意の適切な材料で形成され得る。第2の位相差層は、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該位相差層の形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、第2の位相差層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。
【0098】
D-2.第2の実施形態
第2の実施形態において、第1の位相差層は、好ましくはRe(550)が200nm~300nmであり、第1の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が10°~20°である。第2の位相差層は、好ましくは、Re(550)が100nm~190nmであり、第2の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が70°~80°である。この実施形態において、第1の位相差層と第2の位相差層のいずれか一方がλ/4板として機能し、他方がλ/2板として機能し得る。例えば、第1の位相差層がλ/2板として機能し、第2の位相差層がλ/4板として機能する場合、第1の位相差層のRe(550)は、好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは200nm~270nmであり、さらに好ましくは210nm~260nmであり、特に好ましくは230nm~260nmである。第2の位相差層のRe(550)は、好ましくは100nm~200nmであり、より好ましくは100nm~170nmであり、さらに好ましくは110nm~150nmであり、特に好ましくは110nm~130nmである。
【0099】
第1の位相差層の厚みは、例えば、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。第1の位相差層の厚みは、例えば2.0μm~4.0μmである。第2の位相差層の厚みは、例えば、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。第2の位相差層の厚みは、例えば0.5μm~2.5μmである。
【0100】
本実施形態においては、第1の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは12°~16°である。また、第2の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは72°~76°である。この実施形態において、第1の位相差層および第2の位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0101】
第1の位相差層および第2の位相差層は、少なくとも一方が代表的には、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示す。なお、「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny>nzまたはny<nzとなる場合があり得る。位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~1.5であり、より好ましくは0.9~1.3である。
【0102】
この実施形態において、第1の位相差層および第2の位相差層に用いられる上記液晶化合物としては、例えば、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が挙げられる。このような液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。
【0103】
液晶化合物が液晶モノマーである場合、当該液晶モノマーは、重合性モノマーおよび架橋性モノマーであることが好ましい。液晶モノマーを重合または架橋(すなわち、硬化)させることにより、液晶モノマーの配向状態を固定できるからである。液晶モノマーを配向させた後に、例えば、液晶モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された位相差層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、位相差層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
【0104】
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃~120℃であり、より好ましくは50℃~100℃であり、さらに好ましくは60℃~90℃である。
【0105】
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002-533742号公報(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、ネマチック性液晶モノマーが好ましい。液晶化合物の具体例および配向固化層の形成方法の詳細は、上記のとおりである。
【0106】
第1の位相差層がλ/2板として機能し、第2の位相差層がλ/4板として機能する場合を説明してきたが、第1の位相差層をλ/4板とし、第2の位相差層をλ/2板としてもよい。また、第1の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度を約75°とし、第2の位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度を約15°としてもよい。
【0107】
E.画像表示装置
位相差層付偏光板は、画像表示装置に適用され得る。したがって、位相差層付偏光板を含む画像表示装置もまた、本発明の実施形態に包含される。画像表示装置は、代表的には、画像表示セルと、画像表示セルに粘着剤層を介して貼り合わせられた位相差層付偏光板と、を含む。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)が挙げられる。1つの実施形態において、画像表示装置は、屈曲可能であり、好ましくは折り畳み可能である。このような画像表示装置において、本発明の実施形態による位相差層付偏光板の効果が顕著となり得る。
【実施例0108】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
【0109】
(1)厚み
10μm以下の厚みは、干渉膜厚計(大塚電子社製、製品名「MCPD-3000」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
【0110】
(2)貯蔵弾性率
動的粘弾性装置(粘弾性スペクトロメータ、レオメトリック・サイエンティフィック社製、「ARES装置」)により測定した。
【0111】
(3)屈曲性
実施例および比較例で得られた位相差層付偏光板を10cm×5cmのサイズに切り出した。切り出した位相差層付偏光板の第3の接着層を厚みが20μmの樹脂フィルム(東洋鋼鈑社製、製品名:RV-20UB)に貼り合わせ、偏光子の吸収軸と、長辺とのなす角度が135°となるよう10cm×5cmのサイズに切り出し、測定試料とした。この測定試料について、屈曲試験機(ユアサシステム機器(株)社製、製品名「CL09 Type D01」)を用いて連続折り曲げ試験を行った。
図4は本発明の実施例の屈曲試験時の試料の固定方法を説明する模式図である。
図4に示すように、測定試料の樹脂フィルム側と屈曲試験機の固定部分とが接するよう両面テープで固定し、測定を行った。折り曲げは、25℃(室温)で、視認側保護層が内側となるようにして行った。折り曲げの曲率半径は1.5mm、屈曲速度は30回/分であった。100,000回、および、200,000回折り曲げた際のクラックの有無を目視により観察し、以下の基準で評価した。
○:200,000回および100,000回の屈曲試験でクラックが認められなかった
△:100,000回ではクラックが認められなかったが、200,000回ではクラックが認められた
×:200,000回および100,000回の屈曲試験でクラックが認められた
【0112】
[製造例1]偏光子1の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用いた。樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加し、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が43%となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4.0重量%、ヨウ化カリウム5.0重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに約2秒接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は2%であった。
このようにして、樹脂基材上に厚み5.0μmの偏光子を形成した。
【0113】
[製造例2]偏光子2の作製
厚み30μmのポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム(クラレ製、製品名「PE3000」)の長尺ロールを、ロール延伸機により長手方向に5.9倍になるように長手方向に一軸延伸しながら同時に膨潤、染色、架橋、洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み12μmの偏光子を作製した。
具体的には、膨潤処理は20℃の純水で処理しながら2.2倍に延伸した。次いで、染色処理は得られる偏光子の単体透過率が45.0%になるようにヨウ素濃度が調整されたヨウ素とヨウ化カリウムの重量比が1:7である30℃の水溶液中において処理しながら1.4倍に延伸した。さらに、架橋処理は、2段階の架橋処理を採用し、1段階目の架橋処理は40℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.2倍に延伸した。1段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は5.0重量%で、ヨウ化カリウム含有量は3.0重量%とした。2段階目の架橋処理は65℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.6倍に延伸した。2段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は3.7重量%で、ヨウ化カリウム含有量は5.0重量%とした。また、洗浄処理は、20℃のヨウ化カリウム水溶液で処理した。洗浄処理の水溶液のヨウ化カリウム含有量は3.1重量%とした。最後に、乾燥処理は70℃で5分間乾燥させて偏光子を得た。
【0114】
[製造例3]粘接着剤Aの作製
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート91.5重量部、アクリル酸3重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.5重量部およびアクリロイルモルホリン5重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。次いで、このモノマー混合物100重量部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル100重量部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)250万のアクリル系ポリマー(B)の溶液を調製した。
得られたアクリル系ポリマー(B)溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業社製のコロネートL,トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートのアダクト体)0.2重量部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製,ナイパーBMT)0.3重量部、および、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM403)0.1重量部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液(固形分11%)(粘接着剤A)を調製した。
【0115】
[製造例4]粘接着剤Bの作製
プラクセルFA1DDM(ダイセル社製)50重量部、アクリロイルモルホリン(ACMO:登録商標)(興人社製)40重量部、ARUFON UP-1190(東亞合成社製)10重量部、光重合開始剤(製品名「KAYACURE DETX-S」、日本化薬社製)3重量部、および、IRGACURE907(BASFジャパン社製)3重量部を混合し粘接着剤Bを調製した。得られた粘接着剤Bを光硬化(300mJ/cm2)して得られた硬化物の面内の屈折率は1.52、厚さ方向の屈折率は1.52、これら平均屈折率は1.52であった。
【0116】
[製造例5]粘接着剤Cの作製
1.アクリルベースポリマーの調製
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備える反応容器内で、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)70重量部と、アクリル酸n-ブチル(BA)20重量部と、ラウリルアクリレート(LA)8重量部と、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)1重量部と、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)0.6重量部と、熱重合開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部と、溶媒としての酢酸エチルとを含む混合物(固形分濃度47質量%)を、56℃で6時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、アクリルベースポリマーを含有するポリマー溶液を得た。このポリマー溶液中のアクリルベースポリマーの重量平均分子量は約200万であった。
2.粘着剤組成物の調製
ポリマー溶液に、当該ポリマー溶液の固形分100重量部あたり、第1アクリルオリゴマー1.5重量部と、第1架橋剤(商品名「ナイパーBMT-40SV」,ジベンゾイルパーオキシド,日本油脂社製)0.26重量部と、第2架橋剤(商品名「コロネートL」,トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物,東ソー製)0.02重量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM403」,信越化学工業社製)0.3重量部とを加えて混合し、粘接着剤Cを調製した。
【0117】
[製造例6]粘接着剤Dの作製
1.(メタ)アクリル系ポリマーの調製
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)99重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。
さらに、モノマー混合物(固形分)100重量部に対して、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度30%に調整した、重量平均分子量160万の(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を調製した。
【0118】
2.アクリル系粘着剤組成物の調製
得られた(メタ)アクリル系ポリマーA1溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名:タケネートD110N、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート、三井化学(株)製)0.1重量部、過酸化物系架橋剤のベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT、日本油脂(株)製)0.3重量部と、シランカップリング剤(商品名:KBM403、信越化学工業(株)製)0.1重量部を配合して、粘接着剤Dを調製した。
【0119】
[製造例7]第1の位相差層の作製
下記式(I)で示される化合物55重量部と、下記式(II)で示される化合物25重量部と、下記式(III)で示される化合物20重量部とを、シクロペンタノン(CPN)400重量部に加えた後、60℃に加温、撹拌して溶解させた。その後、上記した化合物の溶液を室温に戻し、上記した化合物の溶液に、イルガキュア907(BASFジャパン社製)3重量部と、メガファックF-554(DIC社製)0.2重量部と、p-メトキシフェノール(MEHQ)0.1重量部とを加えて、さらに撹拌した。撹拌後の溶液は、透明で均一であった。得られた溶液を0.20μmのメンブランフィルターでろ過し、重合性組成物を得た。
また、配向膜用ポリイミド溶液を厚さ0.7mmのガラス基材にスピンコート法を用いて塗布し、100℃で10分乾燥した後、200℃で60分焼成することにより塗膜を得た。得られた塗膜を、市販のラビング装置によってラビング処理し、配向膜を形成した。
次いで、基材(実質的には、配向膜)に、上記で得られた重合性組成物をスピンコート法で塗布し、100℃で2分乾燥した。得られた塗布膜を室温まで冷却した後、高圧水銀ランプを用いて、30mW/cm
2の強度で30秒間紫外線を照射して、液晶化合物の配向固化層である第1の位相差層(厚み3μm)を得た。第1の位相差層の面内位相差Re(550)は130nmであった。また、第1の位相差層のRe(450)/Re(550)は0.851であり、逆分散波長特性を示した。第1の位相差層は、λ/4板として機能し得る。
【化2】
【化3】
【0120】
[製造例8]第2の位相差層の作製
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えたオートクレーブに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名:メトローズ60SH-50)48重量部、蒸留水15601重量部、フマル酸ジイソプロピル8161重量部、アクリル酸3-エチル-3-オキセタニルメチル240重量部および重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート45重量部を入れ、窒素バブリングを1時間行った後、攪拌しながら49℃で24時間保持することにより、ラジカル懸濁重合を行なった。次いで、室温まで冷却し、生成したポリマー粒子を含む懸濁液を遠心分離した。得られたポリマーを蒸留水で2回及びメタノールで2回洗浄した後、減圧乾燥した。得られたフマル酸エステル系樹脂を、トルエン・メチルエチルケトン混合溶液(トルエン/メチルエチルケトン50重量%/50重量%)に溶解して20%溶液とした。さらに、フマル酸エステル系樹脂100重量部に対し、可塑剤としてトリブチルトリメリテート5重量部を添加して、ドープを調製した。支持体フィルムとして、ポリエステル(ポリエチレン-テレフタレート/イソフタレート共重合体)の二軸延伸フィルム(厚み75μm)を用いた。支持体フィルムに調製したドープを、乾燥後の膜厚が5μmになるように塗布して、140℃で乾燥させた。乾燥後の塗膜(ポジティブCプレート)は、Re(550)≒0nm、Rth(550)=-75nmであった。
【0121】
[実施例1]
製造例1で得られた偏光子と樹脂基材との積層体の偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護層としてのアクリル樹脂フィルム(東洋鋼鈑社製、商品名「RV-20UB」、厚み20μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、紫外線硬化型接着剤の総厚みが1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線を保護層側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離し、保護層(アクリル系樹脂フィルム)/接着剤層/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
別途、偏光子の吸収軸と第1の位相差層の遅相軸とのなす角度が45°になるようにして上記偏光板の偏光子と貼り合わせた。第1の位相差層と偏光子とは、粘接着剤Aを乾燥後の厚みが5μmとなるよう塗布し、積層した。次いで、第2の位相差層に粘接着剤B(硬化後の厚み1μm)を塗布し、保護層(アクリル系樹脂フィルム)/接着剤層/偏光子/第1の接着層/第1の位相差層/第2の接着層/第2の位相差層/支持体フィルムの積層体を得た。
次いで、第2の位相差層の支持体フィルムを剥離した。その後、第2の位相差層の支持体フィルム剥離面に粘接着剤C(厚み50μm)を塗布し、保護層(アクリル系樹脂フィルム)/接着剤層/偏光子/第1の接着層/第1の位相差層/第2の接着層/第2の位相差層/第3の接着層の構成を有する位相差層付偏光板を得た。第3の接着層には使用までの間はく離ライナーを積層した。得られた位相差層付偏光板を上記の評価に供した。結果を表1に示す。
【0122】
[実施例2~6]
各接着層を形成する粘接着剤の種類、および、厚みを表1に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を上記の評価に供した。結果を表1に示す。
【0123】
[実施例7]
偏光子の保護層としてアクリル系樹脂フィルムに代えて、HC/TACフィルムを用いた以外は実施例6と同様にして位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を上記の評価に供した。結果を表1に示す。なお、HC/TACフィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタ社製、製品名「KC2UA」、厚み25μm)にハードコート(HC)層(厚み7μm)が形成されたフィルムであり、TACフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。
【0124】
[実施例8]
偏光子の保護層としてアクリル系樹脂フィルムに代えて、HC/COPフィルムを用いた以外は実施例6と同様にして位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を上記の評価に供した。結果を表1に示す。なお、HC/COPフィルムは、シクロオレフィン(COP)フィルム(日本ゼオン社製、製品名「ZF12」、厚み25μm)にハードコート(HC)層(厚み2μm)が形成されたフィルムであり、COPフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。
【0125】
[実施例9]
偏光子の保護層としてアクリル系樹脂フィルムに代えて、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム(三菱化学社製、商品名「DURABIO」、厚み20μm)を用いた以外は実施例6と同様にして位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を上記の評価に供した。結果を表1に示す。
【0126】
(比較例1~6)
各接着層を形成する粘接着剤の種類、および、厚みを表1に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を上記の評価に供した。結果を表1に示す。
【0127】
(比較例7)
偏光子1に代えて偏光子2を用いたこと、および、偏光板の構成を(HC/TACフィルム)/偏光子/接着剤層(1μm)/TACフィルム(コニカミノルタ社製、製品名「KC2UA」、厚み25μm)としたこと以外は実施例6と同様にして位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を上記の評価に供した。結果を表1に示す。
【0128】
【0129】
[評価]
表1から明らかなように本発明の実施例の位相差層付偏光板は耐屈曲性に優れていた。
図2は、本発明の実施例1の位相差層付偏光板の屈曲試験後のSEM観察写真(倍率:20倍)である。
図2からも明らかなとおり、本発明の実施例1の位相差層付偏光板は100,000回屈曲させた後であってもクラックが発生せず、耐屈曲性に優れていた。
図3は、本発明の比較例3の位相差層付偏光板の屈曲試験後のSEM観察写真(倍率:20倍)である。第2の接着層の厚みが5μmである比較例3では、
図3に示すように、屈曲軸に沿って、位相差層付偏光板の位相差層にクラックが発生した。