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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089228
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】電動ブレーキ
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/138 20060101AFI20240626BHJP
   F16D 65/28 20060101ALI20240626BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20240626BHJP
   F16D 125/04 20120101ALN20240626BHJP
   F16D 125/50 20120101ALN20240626BHJP
   F16D 125/40 20120101ALN20240626BHJP
【FI】
B60T13/138 A
F16D65/28
F16D121:24
F16D125:04
F16D125:50
F16D125:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204467
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】御簾納 雅記
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB59
3D048CC05
3D048CC54
3D048HH13
3D048HH18
3J058BA67
3J058CC15
3J058CC33
3J058CC35
3J058CC62
(57)【要約】
【課題】ブレーキフルードのシリンダを小型化できる電動ブレーキを提供する。
【解決手段】回転体41にねじ結合し、回転体41の回転に伴い回転体41の回転軸C2方向に移動するピストン43を用いてホイールシリンダにブレーキフルードを供給する場合に、回転軸C2を中心に回転するスラストベアリング44により回転体41を支持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより回転する回転体と、
前記回転体にねじ結合し、前記回転体の回転に伴い前記回転体の回転軸方向に移動してホイールシリンダにブレーキフルードを供給するピストンと、
前記回転体の回転軸を中心に回転し、前記回転体を支持するスラストベアリングと、を備える、電動ブレーキ。
【請求項2】
前記回転体の前記回転軸方向の移動量を所定値以下に制限する環状部材を備え、
前記ピストンは、ボールねじ機構を介して前記回転体とねじ結合している、請求項1に記載の電動ブレーキ。
【請求項3】
前記回転体は、前記スラストベアリングと接触する円板部を備え、
前記スラストベアリングの直径は、前記円板部の直径より小さい、請求項1に記載の電動ブレーキ。
【請求項4】
前記ピストンを収容するシリンダは、前記ブレーキフルードが前記シリンダから流出する流出口と、前記ブレーキフルードが流動する環状の第1流路と、前記ブレーキフルードが前記シリンダに流入する流入口と、前記ブレーキフルードが流動する、前記第1流路より前記スラストベアリングに近い位置に設けられた環状の第2流路とを備え、
前記流出口は、前記第1流路の、前記回転軸より鉛直方向上側の位置に設けられており、
前記流入口は、前記第2流路の、前記回転軸より鉛直方向上側の位置に設けられている、請求項1に記載の電動ブレーキ。
【請求項5】
前記シリンダの液室は、前記流出口を介して前記ホイールシリンダと連通し、且つ、前記流入口を介してリザーバタンクと連通しており、
前記ピストンは、前記流出口を介して前記ホイールシリンダに前記ブレーキフルードを供給し、
前記液室には、前記流入口を介して前記リザーバタンクから前記ブレーキフルードが流入する、請求項4に記載の電動ブレーキ。
【請求項6】
前記モータは、前記ピストンを収容するシリンダより鉛直方向上側に配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の電動ブレーキ。
【請求項7】
前記モータと、前記モータの回転トルクを前記回転体に伝達するギヤとを収容するモータハウジングと、
前記ピストンと、前記回転体と、前記スラストベアリングとを収容するシリンダとを備え、
前記モータハウジングは、第1取付部を介して車体フレームの第1面に取り付けられており、
前記シリンダは、第2取付部を介して前記第1面と異なる、前記車体フレームの第2面に取り付けられており、
前記第1取付部は、前記モータハウジングにおいて前記ギヤより前記モータに近い位置に設けられ、
前記第2取付部は、前記シリンダにおいて前記ギヤより前記ピストンに近い位置に設けられている、請求項1に記載の電動ブレーキ。
【請求項8】
前記第1取付部における前記第1面の接線と、前記第2取付部における前記第2面の接線とが直交している、請求項7に記載の電動ブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ブレーキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブレーキペダルの踏み込み操作に応じて制御されるモータと、モータのトルクをドリブンギヤに伝達する減速ギヤ機構と、ドリブンギヤのトルクをねじ軸の推力に変換するボールねじ機構と、ねじ軸の推力を受けてブレーキ液圧を発生させるブレーキシリンダとを備える、電動ブレーキ用モータシリンダ装置が知られている(特許文献1)。当該シリンダ装置では、ボールねじ機構は、一対のラジアルベアリングにより回転自在に支持されたナットと、ボールを介してナットに螺合するねじ軸とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5846874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のボールねじ機構において、ナットを支持しているラジアルベアリングには、ナットがねじ結合しているねじ軸からラジアルベアリングの回転軸方向の力(アキシアル荷重)が加えられる。ラジアルベアリングのアキシアル荷重に対する耐荷重値は、ベアリングの大きさに対して比較的小さいため、上記従来技術では、アキシアル荷重に応じてラジアルベアリングの大きさを大きくする必要があり、それによりシリンダ装置が大型化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ブレーキフルードのシリンダを小型化できる電動ブレーキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転体にねじ結合し、回転体の回転に伴い回転体の回転軸方向に移動するピストンを用いてホイールシリンダにブレーキフルードを供給する場合に、当該回転軸を中心に回転するスラストベアリングにより回転体を支持することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブレーキフルードのシリンダを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る電動ブレーキの実施形態の一例を示すブロック図である。
図2図1の油圧ユニットの一例を示す斜視図である。
図3図2の油圧ユニットの横断面図である。
図4図3のスラストベアリングの一例を示す斜視図である。
図5図3のピストンがX軸負方向に移動した場合の油圧ユニットの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
[電動ブレーキの構成]
図1は、本発明の実施形態に係る電動ブレーキ1を示すブロック図である。電動ブレーキ1は、ドライバーのブレーキ操作を電気的に検出し、検出結果に基づいてブレーキの制動力を制御する、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ方式のブレーキシステムである。図1に示すように、電動ブレーキ1は、ブレーキペダル11、ペダルシミュレータ12、ストロークセンサ13、制御装置14、油圧ユニット15a~15d、ホイールシリンダ16a~16d及びリザーバタンク17を備える。なお、図1に示す破線は電気配線を示し、実線は油圧配管を示す。
【0011】
ブレーキペダル11は、ドライバーがブレーキ操作を入力するためのペダルであり、ペダルシミュレータ12に連結されている。ペダルシミュレータ12は、ドライバーがブレーキペダル11を踏み込む力と反対方向の力(反力)をブレーキペダル11に加える装置であり、ドライバーがブレーキ操作に違和感を覚えないよう、ドライバーがブレーキペダル11を踏み込むストローク量に応じてブレーキペダル11に反力を加える。ペダルシミュレータ12は、例えば、ペダルシミュレータ12に格納されたコイルばねにより、ブレーキペダル11のストローク量に比例して大きくなる反力をブレーキペダル11に加えることで、ストローク量の増加に応じてブレーキペダル11が重くなる操作感覚を演出する。
【0012】
ストロークセンサ13は、ドライバーがブレーキペダル11を踏み込むストローク量を検出する装置である。ストロークセンサ13は、例えば、ブレーキペダル11とペダルシミュレータ12との連結機構に組み込まれた磁歪式のストロークセンサであり、位置検出用マグネットにより発生した磁歪振動を検出することで、ブレーキペダル11のストローク量を測定する。
【0013】
制御装置14は、電動ブレーキ1を構成する装置を協働させ、各車輪のブレーキキャリパを作動させて車両を停止させる装置である。制御装置14は、例えばコンピュータであり、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)と、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とを備える。制御装置14は、図示しない電源と接続している。制御装置14は、所定の時間間隔でストロークセンサ13からブレーキペダル11のストローク量を取得し、ストローク量に応じて油圧ユニット15a~15dを制御する。
【0014】
油圧ユニット15a~15dは、ポンプなどにより加圧された作動流体によってアクチュエータを作動させる油圧装置である。具体的には、シリンダを用いてブレーキフルードをホイールシリンダ16a~16dに供給し、各車輪のブレーキキャリパを作動させる。油圧ユニット15a~15dは、それぞれ、ホイールシリンダ16a~16dに接続されている。ホイールシリンダ16a~16dは、それぞれ、車両の右前輪、左前輪、右後輪及び左後輪のブレーキキャリパを作動させる油圧シリンダである。なお、ブレーキフルードは特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0015】
図1に示すように、油圧ユニット15aは、油圧配管18aを介してホイールシリンダ16aにブレーキフルードを供給する。同様に、油圧ユニット15bは、油圧配管18bを介してホイールシリンダ16bにブレーキフルードを供給し、油圧ユニット15cは、油圧配管18cを介してホイールシリンダ16cにブレーキフルードを供給し、油圧ユニット15dは、油圧配管18dを介してホイールシリンダ16dにブレーキフルードを供給する。ホイールシリンダ16a~16dに供給したブレーキフルードは、それぞれ、油圧配管18a~18dを介して回収される。
【0016】
また、油圧ユニット15a~15dは、それぞれ、油圧配管19a~19dを介してリザーバタンク17と連通している。リザーバタンク17は、ブレーキフルードを収容する容器であり、必要に応じ、リザーバタンク17から油圧ユニット15a~15dにブレーキフルードが供給される。また、リザーバタンク17は、油圧ユニット15a~15dから流出した余分なブレーキフルードを受け入れ、収容する。
【0017】
[油圧ユニットの構成]
以下、図2~3を用いて油圧ユニット15a~15dの構成について説明する。なお、本実施形態の油圧ユニット15a~15dは全て同一のユニットであり、同様の構造を有し、同様の機能及び作用を奏するものとする。そのため、以下の説明では、油圧ユニット15aのみについて例示的に詳述する。また、以下の説明では、油圧ユニット15aを正面視した場合の横方向をX軸方向とし、奥行き方向をY軸方向とし、縦方向をZ軸方向とする。
【0018】
図2は、図1に示す油圧ユニット15aの斜視図である。図2に示すように、油圧ユニット15aは、円柱形状のモータハウジング21と、円柱形状のシリンダ25とを備える。モータハウジング21は、直径が小さい部分21aと、直径が大きい部分21bとを有し、第1取付部22,22により車体フレームの第1面23に取り付けられている。また、モータハウジング21には、モータに給電するハーネス24が接続されている。
【0019】
一方、シリンダ25は、第2取付部26,26により車体フレームの第2面27に取り付けられている。第1面23と第2面27は異なる面であり、例えば、第1面23と第2面27は互いに不連続である。第1取付部22,22における第1面23の接線と、第2取付部26,26における第2面27の接線は、直交していてもよい。また、シリンダ25は、ブレーキフルードが油圧配管18aに流出する第1接続口28と、ブレーキフルードが油圧配管19aから流入する第2接続口29とを備える。
【0020】
モータハウジング21及びシリンダ25は、例えば、ステンレス鋼などを用いて作製される。モータハウジング21及びシリンダ25は、油圧ユニット15aを構成する部品をX軸方向から収容できるような適宜の形状とする。
【0021】
図3は、図2に示す油圧ユニット15aの横断面図である。具体的には、モータハウジング21に収容されたモータ31の回転軸C1と、シリンダ25に収容された回転体41の回転軸C2とを含む断面を示す図である。なお、図3に示す断面において、モータハウジング21の部分のZ座標と、シリンダ25の部分のZ座標とは異なる。
【0022】
モータハウジング21は、モータ31と、モータ31の回転トルクを回転体41に伝達するギヤ32a,32b,32c,41aとを収容する。具体的には、部分21aにモータ31と、ギヤ32a,32bが収容され、部分21aより直径の大きい部分21bにギヤ32c,41aが収容されている。
【0023】
モータ31は、ブレーキフルードをホイールシリンダ16aに供給するアクチュエータであり、ホイールシリンダ16aにブレーキフルードを適切に供給できる範囲内で適宜のモータを使用できる。また、モータ31には、図2に示すハーネス24が接続されている。
【0024】
ギヤ32a,32bは例えば遊星ギヤであり、ホイールシリンダ16aにブレーキフルードを供給する際に、後述する回転体に必要な回転トルクを加えられるように構成される。ギヤ32cは、回転体41にモータ31の回転トルクを伝達するギヤであり、例えば平歯車である。ギヤ41aは、回転体41の一部であり、回転体41にモータ31の回転トルクを伝達する。ギヤ41aは、例えば平歯車である。
【0025】
ギヤ32a,32b,32c,41aは、ステンレス鋼を用いて切削などにより作製される。またこれに代え、ポリオキシメチレンのような樹脂を射出成形することにより作製してもよい。ギヤ32a,32b,32c,41aの形状(外径、歯数、歯の形状など)は、回転体41に伝達する所望の回転トルクに応じて適宜に設定できる。
【0026】
一方、シリンダ25には、回転体41、回転体シール42、ピストン43、スラストベアリング44及び環状部材45が収容されている。また、シリンダ25には、第1流路46、第2流路47、流出口48及び流入口49が設けられている。
【0027】
回転体41は、ギヤ32a,32b,32c,41aを介して伝達されたモータ31の回転トルクにより回転する部品である。回転体41は、回転運動を並進運動に変換する変換機構41bを備え、自身の回転運動によりピストン43を回転軸C2方向(X軸方向)に移動させる。変換機構41bについては後述する。回転体41は、例えば、耐食性のステンレス鋼を用いて作製される。また、回転体41のギヤ41a側には、ブレーキフルードの漏洩を抑制する回転体シール42が設けられている。回転体シール42は、例えばゴム製のOリングであり、ブレーキフルードの漏洩を抑制できる限り、材料及び形状は特に限定されない。
【0028】
ピストン43は、回転体41にねじ結合し、回転体41の回転に伴い回転体41の回転軸C2方向(X軸方向)に移動してホイールシリンダ16aにブレーキフルードを供給する。ピストン43は、変換機構41bを介して回転体41にねじ結合する。ねじ結合とは、回転体41に形成されたねじ山と、ピストン43に形成されたねじ山とをかみ合わせることで、回転体41とピストン43とを回転自在に結合させることを言う。変換機構41bは、例えば、ねじ軸である回転体41と、ナットであるピストン43とから構成されるボールねじである。
【0029】
ピストン43は、回転体41のねじ山に配置されたボールを循環させる機構を有するが、ピストン43のX軸方向の移動距離が比較的小さい場合(例えば、ピストン43のX軸方向の移動距離が、回転体41とピストン43とのねじ結合部分のX軸方向の距離よりも短い場合)は、ボールを循環させる機構を省略してもよい。また、変換機構41bは、ボールを省略し、ねじ軸である回転体41と、ナットであるピストン43とから構成される送りねじであってもよい。
【0030】
ピストン43には、ブレーキフルードの漏洩を抑制する第1ピストンシール43a及び第2ピストンシール43bが設けられている。第1ピストンシール43aの位置は、第2ピストンシール43bよりスラストベアリング44に近い位置であり、第2ピストンシール43bの位置は、第1ピストンシール43aよりピストン43のピストンヘッドに近く、スラストベアリング44から遠い位置である。第1ピストンシール43a及び第2ピストンシール43bは、例えばゴム製のOリングであり、ブレーキフルードの漏洩を抑制できる限り、材料及び形状は特に限定されない。
【0031】
スラストベアリング44は、ブレーキフルードを送出する場合にX軸正方向の力を受ける回転体41がX軸正方向に移動しないよう、回転体41を支持するベアリングである。スラストベアリング44の一例を図4に示す。図4は、スラストベアリング44の一種であるスラストニードルベアリングの斜視図である。スラストニードルベアリングは、X軸正方向の力を受ける回転体41を支持しつつ、回転体41の回転軸C2を中心にYZ平面上で回転する。そのため、スラストベアリング44は、回転体41の回転運動を妨げることなく回転体41を支持できる。
【0032】
スラストベアリング44は、例えば、耐食性の鋼板をプレス加工することで作製する。スラストベアリング44の大きさは、ブレーキフルードに加える圧力に応じて適宜の大きさとする。例えば、図3に示すように、回転体41は、スラストベアリング44と接触する円板部と、円板部に対して変換機構41b側の第1軸部と、円板部に対してギヤ41a側の第2軸部とを備えていてもよい。この場合、スラストベアリング44の直径を、円板部の直径より小さくする。
【0033】
環状部材45は、回転体41の回転軸C2方向の移動量を所定値(例えば0.5~5mm)以下に制限する位置決め部材である。回転体41と環状部材45との間の距離は、常に所定値以下となっている。環状部材45は、回転体41に対してスラストベアリング44の反対側に配置されており、シリンダ25の一部であってもよい。
【0034】
第1流路46及び第2流路47は、ブレーキフルードが流動する環状の流路であり、シリンダ25の内面の、ピストン43の外周部分が摺動する部分に設けられている。第2流路47は、第1流路46よりスラストベアリング44に近い位置に設けられている。第1流路46及び第2流路47は、切削加工などにより作製する。第1流路46及び第2流路47の形状は、ブレーキフルードが流路内を適切に流動できる範囲内で適宜の形状とする。
【0035】
流出口48は、ピストン43を収容するシリンダ25から油圧配管18aにブレーキフルードが流出する部分であり、流入口49は、油圧配管19aからシリンダ25にブレーキフルードが流入する部分である。流出口48は第1流路46に設けられており、特に回転体41の回転軸C2より鉛直方向上側の位置に設けられている。同様に、流入口49は第2流路47に設けられており、特に回転体41の回転軸C2より鉛直方向上側の位置に設けられている。
【0036】
流出口48は、図示しない油圧配管により図2に示す第1接続口28と連通しており、流出口48から流出したブレーキフルードは、第1接続口28から油圧配管18aに流入し、ホイールシリンダ16aに供給される。また、流入口49は、図示しない油圧配管により図2に示す第2接続口29と連通しており、リザーバタンク17に収容されたブレーキフルードが、油圧配管19aを介して流入口49からシリンダ25に流入する。流出口48及び流入口49の形状及び大きさは、ブレーキフルードが適切に通過できる範囲内で適宜の形状及び大きさとする。
【0037】
ピストン43は、シリンダ25の内面とともに、ブレーキフルードが収容される液室Rを形成する。液室Rは、流出口48を介して油圧配管18a及びホイールシリンダ16aと連通している。また、液室Rは、流入口49を介して油圧配管19a及びリザーバタンク17と連通している。ピストン43は、流出口48を介して油圧配管18aにブレーキフルードを流出させ、ホイールシリンダ16aにブレーキフルードを供給する。これに対し、液室Rには、リザーバタンク17に収容されたブレーキフルードが、油圧配管19a及び流入口49を介して流入する。
【0038】
油圧ユニット15aの車体フレームへの取付けの一態様を図2に示したが、取付けの態様は図2に示すものに限られない。例えば、モータ31は、ピストン43を収容するシリンダより鉛直方向上側に配置されていてもよい。具体的には、モータハウジング21のうちモータ31を収容する部分21aは、ピストン43とシリンダ25から構成されるシリンダより鉛直方向上側に配置されていてもよい。また、第1取付部22,22は、モータハウジング21においてギヤ32cよりモータ31に近い位置に設けられ、第2取付部26,26は、シリンダ25においてギヤ41aよりピストン43に近い位置に設けられていてもよい。
【0039】
[電動ブレーキの作用]
以下、電動ブレーキ1の全体を示す図1と、シリンダ25のピストン43が後退位置にある図3と、シリンダ25のピストン43が前進位置にある図5とを用いて、電動ブレーキ1の作用を説明する。
【0040】
図1に示すように、ドライバーによるブレーキペダル11の踏み込み操作は、ストロークセンサ13により検出される。ドライバーがブレーキペダル11を踏み込むと、制御装置14は、ストロークセンサ13からブレーキペダル11のストローク量を取得し、ストローク量に応じて油圧ユニット15aを作動させる。
【0041】
制御装置14は、検出されたストローク量に応じ、図3に示すモータ31に通電し、モータ31を回転させる。モータ31のシャフトが回転軸C1周りに回転すると、シャフトの回転は、遊星ギヤであるギヤ32a,32bにより減速される。これにより、モータ31の回転トルクが増幅され、ギヤ32c,41aを介して、遊星ギヤにより増幅された回転トルクが回転体41に伝達される。回転体41は、ボールねじなどの変換機構41bを用いて回転運動を並進運動に変換し、ピストン43をX軸負方向に移動させる。
【0042】
図3に示す、ブレーキフルードが収容されている液室Rの体積が最大となるピストン43の後退位置では、流入口49のX軸正方向側の端部の位置と、ピストン43のピストンヘッドの位置とが対応している。そのため、ピストン43がX軸負方向に移動を開始すると、流入口49がピストン43により閉じられ、リザーバタンク17(油圧配管19a)から液室Rにブレーキフルードが流入しなくなる。
【0043】
モータ31が回転してピストン43がX軸負方向に移動し、図5に示す、液室Rの体積が最小となるピストン43の前進位置まで移動したものとする。ピストン43が、図3に示す位置から図5に示す位置まで移動することで、ピストン43が移動した距離に対応する体積分のブレーキフルードが、流出口48から油圧配管18aを介してホイールシリンダ16aに供給される。この図3に示す位置から図5に示す位置までの移動の間、ピストン43には、ブレーキフルードからX軸正方向の力が負荷される。また、ピストン43がシリンダ25内を摺動する際に、シリンダ25の内面と、第1ピストンシール43a及び第2ピストンシール43bとの間には摩擦力が発生する。ピストン43には、当該摩擦力の反力も負荷される。
【0044】
回転体41はピストン43とねじ結合しているため、ピストン43に加えられた力は、変換機構41bを介して、X軸正方向の力として回転体41に加えられる。この際、スラストベアリング44は、回転体41が回転軸C2周りに回転可能な状態で、回転体41に負荷された力を受け止め、回転体41を支持する必要がある。スラストベアリング44は、ラジアルベアリングと異なり、ベアリングの大きさに対して回転軸C2方向の力(アキシアル荷重)の耐荷重値が比較的高い。そのため、ラジアルベアリングより小型のベアリングにより回転体41を支持でき、油圧ユニット15a(特にシリンダ25)の小型化、及びドライバーの操作に対する電動ブレーキ1の応答性の向上につながる。
【0045】
ドライバーがブレーキペダル11から足を離し、ストロークセンサ13により検出されたストローク量が減少すると、制御装置14は、ストローク量に応じてモータ31を逆回転させ、ピストン43をX軸正方向に移動させる。例えば、図5に示す状態においてドライバーがブレーキペダル11から足を離した場合は、ピストン43は図5に示す前進位置から、図3に示す後退位置までX軸正方向に移動する。液室Rには、ピストン43が後退した分だけ、ホイールシリンダ16aからブレーキフルードが流入する。この場合、ブレーキフルードは、油圧配管18aを介して液室Rに回収される。つまり、流出口48からブレーキフルードが液室Rに流入する。
【0046】
ピストン43が後退位置まで移動する間も、回転体41にはX軸正方向のアキシアル荷重が加えられるが、スラストベアリング44は、回転体41がYZ平面において回転可能な状態で回転体41を適切に支持する。これにより、ピストン43は後退位置まで円滑に移動できる。
【0047】
ピストン43が図3に示す後退位置まで移動した時点で、ホイールシリンダ16aに供給されたブレーキフルードが全て回収され、ホイールシリンダ16aの圧力が開放される。これと共に、流入口49が開き、液室Rと油圧配管19a及びリザーバタンク17が連通する。リザーバタンク17内は通気口(図示しない)により大気圧に保たれるため、ピストン43が後退位置にある場合、ホイールシリンダ16aのブレーキフルードの圧力は、液室R内のブレーキフルードと同じ大気圧になる。
【0048】
[本発明の実施態様]
以上のとおり、本実施形態によれば、モータ31により回転する回転体41と、前記回転体41にねじ結合し、前記回転体41の回転に伴い前記回転体41の回転軸C2方向に移動してホイールシリンダにブレーキフルードを供給するピストン43と、前記回転体41の回転軸C2を中心に回転し、前記回転体41を支持するスラストベアリング44と、を備える、電動ブレーキ1が提供される。これにより、電動ブレーキ1のシリンダ25を小型化でき、ドライバーのブレーキ操作に対する電動ブレーキ1の応答性が向上する。
【0049】
また、本実施形態の電動ブレーキ1によれば、前記回転体41の前記回転軸C2方向の移動量を所定値以下に制限する環状部材45を備え、前記ピストン43は、ボールねじ機構を介して前記回転体41とねじ結合している。これにより、回転体41の回転軸C2方向(X軸方向)の位置を確実に維持できる。
【0050】
また、本実施形態の電動ブレーキ1によれば、前記回転体41は、前記スラストベアリング44と接触する円板部を備え、前記スラストベアリング44の直径は、前記円板部の直径より小さい。これにより、より確実に回転体41を支持できる。
【0051】
また、本実施形態の電動ブレーキ1によれば、前記ピストン43を収容するシリンダ25は、前記ブレーキフルードが前記シリンダ25から流出する流出口48と、前記ブレーキフルードが流動する環状の第1流路46と、前記ブレーキフルードが前記シリンダ25に流入する流入口49と、前記ブレーキフルードが流動する、前記第1流路46より前記スラストベアリング44に近い位置に設けられた環状の第2流路47とを備え、前記流出口48は、前記第1流路46の、前記回転軸C2より鉛直方向上側の位置に設けられており、前記流入口49は、前記第2流路47の、前記回転軸C2より鉛直方向上側の位置に設けられている。これにより、ブレーキフルードに発生した気泡を確実にシリンダ25の外に排出できる。
【0052】
また、本実施形態の電動ブレーキ1によれば、前記シリンダ25の液室Rは、前記流出口48を介して前記ホイールシリンダ16a~16dと連通し、且つ、前記流入口49を介してリザーバタンク17と連通しており、前記ピストン43は、前記流出口48を介して前記ホイールシリンダ16a~16dに前記ブレーキフルードを供給し、前記液室Rには、前記流入口49を介して前記リザーバタンク17から前記ブレーキフルードが流入する。これにより、より確実に電動ブレーキ1の油圧回路を作動させることができる。
【0053】
また、本実施形態の電動ブレーキ1によれば、前記モータ31は、前記ピストン43を収容するシリンダ25より鉛直方向上側に配置されている。これにより、シリンダ25からブレーキフルードが漏洩した場合に、ブレーキフルードによりモータ31が故障する事態を回避できる。
【0054】
また、本実施形態の電動ブレーキ1によれば、前記モータ31と、前記モータ31の回転トルクを前記回転体41に伝達するギヤ32a,32b,32c,41aとを収容するモータハウジング21と、前記ピストン43と、前記回転体41と、前記スラストベアリング44とを収容するシリンダ25とを備え、前記モータハウジング21は、第1取付部22,22を介して車体フレームの第1面23に取り付けられており、前記シリンダ25は、第2取付部26,26を介して前記第1面23と異なる、前記車体フレームの第2面27に取り付けられており、前記第1取付部22,22は、前記モータハウジング21において前記ギヤ32a,32b,32c,41aより前記モータ31に近い位置に設けられ、前記第2取付部26,26は、前記シリンダ25において前記ギヤ32a,32b,32c,41aより前記ピストン43に近い位置に設けられている。これにより、剛性が低く、振動が大きいギヤ部分から第1取付部22,22及び第2取付部26,26を介して車体フレームに振動が伝達することを抑制できる。
【0055】
また、本実施形態の電動ブレーキ1によれば、前記第1取付部22,22における前記第1面23の接線と、前記第2取付部26,26における前記第2面27の接線とが直交している。これにより、油圧ユニット15a~15dの取付けの安定性が向上し、油圧ユニット15a~15dが作動した場合に生じる振動を抑制できる。
【符号の説明】
【0056】
1…電動ブレーキ
11…ブレーキペダル
12…ペダルシミュレータ
13…ストロークセンサ
14…制御装置
15a~15d…油圧ユニット
16a~16d…ホイールシリンダ
17…リザーバタンク
18a、18b、18c、18d…油圧配管
19a、19b、19c、19d…油圧配管
21…モータハウジング
21a,21b…部分
22…第1取付部
23…車体フレームの第1面
24…ハーネス
25…シリンダ
26…第2取付部
27…車体フレームの第2面
28…第1接続口
29…第2接続口
31…モータ
32a,32b,32c…ギヤ
41…回転体
41a…ギヤ
41b…変換機構
42…回転体シール
43…ピストン
43a…第1ピストンシール
43b…第2ピストンシール
44…スラストベアリング
45…環状部材
46…第1流路
47…第2流路
48…流出口
49…流入口
C1…モータの回転軸
C2…回転体の回転軸
R…液室
図1
図2
図3
図4
図5