(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089233
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ハイドロゲル形成材
(51)【国際特許分類】
C08L 101/14 20060101AFI20240626BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240626BHJP
C08L 39/06 20060101ALI20240626BHJP
C08L 33/26 20060101ALI20240626BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20240626BHJP
A61L 15/60 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C08L101/14
C08L33/02
C08L39/06
C08L33/26
A61L15/24 100
A61L15/60 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204475
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591079395
【氏名又は名称】小山 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】大内 彩歌
(72)【発明者】
【氏名】中村 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小山 義之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智子
【テーマコード(参考)】
4C081
4J002
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081CA06
4C081CA08
4C081CA10
4C081DA02
4C081DA12
4J002BG01W
4J002BG04W
4J002BG05W
4J002BG13X
4J002BJ00X
4J002GB01
(57)【要約】
【課題】水分との接触により水分を速やかに吸収して膨潤することができるハイドロゲル形成材を提供すること。
【解決手段】カルボキシル基含有重合体のカルボキシル基の一部又は全部が中和され、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体(A)と、カルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基を有する重合体(B)(ただし、重合体(A)を除く)と、を含有するハイドロゲル形成材とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有重合体のカルボキシル基の一部又は全部が中和され、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体(A)と、
カルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基を有する重合体(B)(ただし、前記重合体(A)を除く)と、
を含有する、ハイドロゲル形成材。
【請求項2】
前記重合体(A)の中和度が10モル%以上である、請求項1に記載のハイドロゲル形成材。
【請求項3】
前記重合体(A)が有する「-COO-」の対イオンがアルカリ金属イオンである、請求項1又は2に記載のハイドロゲル形成材。
【請求項4】
前記カルボキシル基含有重合体がポリ(メタ)アクリル酸である、請求項1又は2に記載のハイドロゲル形成材。
【請求項5】
前記重合体(B)はアミド基を有する、請求項1又は2に記載のハイドロゲル形成材。
【請求項6】
前記重合体(B)は、ポリビニルピロリドン及びポリ(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載のハイドロゲル形成材。
【請求項7】
前記重合体(A)は、ポリ(メタ)アクリル酸のカルボキシル基の一部又は全部が中和された重合体であり、
前記重合体(B)は、ポリビニルピロリドン及びポリ(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のハイドロゲル形成材。
【請求項8】
医療用処置材として用いられる、請求項1又は2に記載のハイドロゲル形成材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロゲル形成材に関し、より詳細には、水分との接触によりハイドロゲルを形成するハイドロゲル形成材に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織に接着するハイドロゲルは、癒着防止材や止血材、創傷被覆材等の各種医療用処置材として有用であり、従来、種々の検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとの水素結合により形成されたハイドロゲルを乾燥させることにより、ハイドロゲル形成材として柔軟な乾燥ゲルを得ることが開示されている。特許文献1に記載のハイドロゲル形成材は、傷口や止血部位等のような濡れた生体組織に貼付されることにより、血液や組織液等の水分を吸収して膨潤しゲル化し、これにより生体組織に接着する機能を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体組織にハイドロゲル形成材を貼付した際に、吸水したハイドロゲル形成材(すなわちハイドロゲル)が速やかに生体組織に接着し、これにより傷口や止血部位等を保護したり止血したりする機能が速やかに発現されるようにするには、生体組織上に置かれたハイドロゲル形成材が速やかに(例えば、数分~十数分程度で)水分を吸収して膨潤することが望ましい。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水分との接触により水分を速やかに吸収して膨潤することができるハイドロゲル形成材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ハイドロゲル形成材を構成するカルボキシル基含有重合体を中和することに着目し鋭意検討したところ、水分を速やかに吸収して膨潤できることを見出した。具体的には、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0007】
〔1〕 カルボキシル基含有重合体のカルボキシル基の一部又は全部が中和され、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体(A)と、カルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基を有する重合体(B)(ただし、前記重合体(A)を除く)と、を含有する、ハイドロゲル形成材。
【0008】
〔2〕 前記重合体(A)の中和度が10モル%以上である、上記〔1〕に記載のハイドロゲル形成材。
〔3〕 前記重合体(A)が有する「-COO-」の対イオンがアルカリ金属イオンである、上記〔1〕又は〔2〕に記載のハイドロゲル形成材。
〔4〕 前記カルボキシル基含有重合体がポリ(メタ)アクリル酸である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のハイドロゲル形成材。
〔5〕 前記重合体(B)はアミド基を有する、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のハイドロゲル形成材。
〔6〕 前記重合体(B)は、ポリビニルピロリドン及びポリ(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、上記〔5〕に記載のハイドロゲル形成材。
〔7〕 前記重合体(A)は、ポリ(メタ)アクリル酸のカルボキシル基の一部又は全部が中和された重合体であり、前記重合体(B)は、ポリビニルピロリドン及びポリ(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のハイドロゲル形成材。
〔8〕 医療用処置材として用いられる、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のハイドロゲル形成材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記重合体(A)と重合体(B)とを含むハイドロゲル形成材とすることにより、水分との接触により速やかに水分を吸収して膨潤することができるハイドロゲル形成材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳しく説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。「(メタ)アクリロ」とは、アクリロ及び/又はメタクリロを意味する。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0011】
《ハイドロゲル形成材》
本発明のハイドロゲル形成材は、水分との接触によりハイドロゲルを形成するものである。本発明のハイドロゲル形成材は、カルボキシル基含有重合体のカルボキシル基の一部又は全部が中和され、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体(A)と、カルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基(以下、「官能基E」ともいう)を有する重合体(B)(ただし、重合体(A)を除く)と、を含む。以下、本発明のハイドロゲル形成材に含まれる成分、及び必要に応じて任意に配合される成分について説明する。
【0012】
<重合体(A)>
重合体(A)は、カルボキシル基含有重合体が有するカルボキシル基の一部又は全部が中和された重合体であり、「[-COO-]nRn+」で表される基(ただし、Rn+は「-COO-」の対イオンであり、nは1以上の整数(好ましくは1~3の整数)である)を有する。重合体(A)は、「[-COO-]nRn+」で表される基と共にカルボキシル基を有していてもよい。すなわち、重合体(A)は、カルボキシル基含有重合体が有するカルボキシル基の一部が中和された部分中和物であってもよく、カルボキシル基含有重合体が有するカルボキシル基の全部が中和された完全中和物であってもよい。
【0013】
なお、本明細書では、カルボキシル基を有する未中和の重合体を「カルボキシル基含有重合体」といい、カルボキシル基含有重合体が有するカルボキシル基の一部又は全部が中和された重合体を「カルボキシル基含有重合体の中和物」という。
【0014】
重合体(A)の「-COO-」の対イオン(Rn+)としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、アンモニウムイオン等の種々の陽イオンが挙げられる。ハイドロゲル形成材の水膨潤性を良好にする観点や医療用途に適用する観点から、これらのうち、アルカリ金属イオンが好ましく、ナトリウムイオン又はカリウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが更に好ましい。
【0015】
重合体(A)の中和度は、水分との接触により速やかに吸水して膨潤するハイドロゲル形成材を得る観点から、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましく、40モル%以上であることがより更に好ましく、50モル%以上であることが一層好ましい。なお、重合体(A)の中和度は、重合体溶液を水酸化カリウム溶液で滴定することによりその重合体の酸価(mgKOH/g)を求め、得られた酸価から算出される値である。酸価の測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の方法に従う。
【0016】
次に、本発明におけるカルボキシル基含有重合体について説明する。なお、カルボキシル基含有重合体は重合体(A)の未中和物に対応する。
【0017】
カルボキシル基含有重合体は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体である。このため、重合体(B)と共に使用した場合に水分との接触に伴い速やかにハイドロゲルを形成可能でありながら、構成単量体の重合性に優れ、カルボキシル基含有重合体の製造が比較的容易である点で好ましい。重合体(B)との間に架橋構造を適度に形成させ、これにより柔軟性及び水膨潤性に優れたハイドロゲル形成材を得る観点から、カルボキシル基含有重合体としては中でも、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位であって、カルボキシル基を有する構造単位(以下、「構造単位(UA)」ともいう)を含む重合体を好ましく使用できる。構造単位(UA)としては、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「カルボキシル基含有単量体」ともいう)に由来する構造単位が挙げられる。
【0018】
カルボキシル基含有単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、4-カルボキシスチレン等が挙げられる。生体組織に対する接着性をより優れたものとすることができる点において、カルボキシル基含有単量体としては中でも、(メタ)アクリル酸を好ましく使用できる。
【0019】
カルボキシル基含有重合体において、構造単位(UA)の割合は、カルボキシル基含有重合体を構成する全構造単位に対して、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上がより更に好ましく、80質量%以上が一層好ましく、90質量%以上がより一層好ましい。カルボキシル基含有重合体における構造単位(UA)の割合が上記範囲であると、生体組織に対する接着性により優れたハイドロゲルを得ることができる。なお、カルボキシル基含有重合体を構成する構造単位(UA)は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0020】
得られるハイドロゲルの生体組織に対する接着性をより優れたものとすることができる点において、カルボキシル基含有重合体は中でも、ポリ(メタ)アクリル酸が好ましい。カルボキシル基含有重合体がポリ(メタ)アクリル酸である場合、カルボキシル基含有重合体は、(メタ)アクリル酸単位を、カルボキシル基含有重合体を構成する全構造単位に対して70質量%以上有することが好ましく、80質量%以上有することがより好ましく、90質量%以上有することが更に好ましく、95質量%以上有することがより更に好ましい。
【0021】
なお、カルボキシル基含有重合体を得る方法は、カルボキシル基含有単量体を用いる方法に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合した後、加水分解することによってカルボキシル基含有重合体を得てもよい。あるいは、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有単量体を重合した後、強アルカリで処理する方法や、水酸基を有する重合体に酸無水物を反応させる方法等によりカルボキシル基含有重合体を得てもよい。これらの方法によっても、カルボキシル基含有重合体として構造単位(UA)を含む重合体を得ることができる。
【0022】
重合体(A)は、直鎖状でも分岐状でもよく、また架橋体でも未架橋体でもよい。水分との接触により膨潤しやすいハイドロゲル形成材を得る観点や、生体組織に対する接着性に優れたハイドロゲルを得る観点から、重合体(A)としては、重量平均分子量が6,000以上の重合体(以下、「高分子量重合体(AH)」ともいう)及び架橋重合体の少なくともいずれかを好ましく用いることができる。
【0023】
架橋重合体を製造する方法は特に限定されない。架橋重合体の製造方法としては、例えば以下の方法(1)及び方法(2)が挙げられる。これらのうち、操作が簡便であり、かつ架橋の程度を制御しやすい点で、方法(1)によることが好ましい。
(1)架橋性官能基を有する単量体(以下、「架橋性単量体」ともいう)と、カルボキシル基含有単量体とを共重合し、重合反応を利用して架橋させる方法
(2)反応性官能基を有する重合体を合成し、その後、必要に応じて架橋剤を添加して架橋させる方法
【0024】
架橋性単量体としては、架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を好ましく用いることができる。架橋性単量体の具体例としては、エチレン性不飽和基を2個以上有する多官能重合性単量体、及び自己架橋可能な架橋性官能基(例えば、加水分解性シリル基等)を有する自己架橋性単量体等が挙げられる。架橋性単量体は、均一な架橋構造を得やすい点で、これらのうち多官能重合性単量体が好ましい。
【0025】
多官能重合性単量体の具体例としては、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等が挙げられる。多官能重合性単量体は、均一な架橋構造を得やすい点で、アルケニル基含有化合物(多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物)が好ましく、多官能アルケニル化合物がより好ましい。
【0026】
多官能アルケニル化合物の具体例としては、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、ポリアリルサッカロース等の多官能アリルエーテル化合物;ジアリルフタレート等の多官能アリル化合物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物等を挙げることができる。多官能アルケニル化合物は、これらの中でも、分子内に複数のアリルエーテル基を有する多官能アリルエーテル化合物が好ましい。(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等のアルケニル基含有(メタ)アクリル酸化合物等を挙げることができる。
【0027】
また、自己架橋性単量体の具体例としては、加水分解性シリル基含有ビニル単量体等が挙げられる。加水分解性シリル基含有ビニル単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等が挙げられる。
【0028】
重合体(A)が架橋性単量体に由来する構造単位を含む場合、重合体(A)において、架橋性単量体に由来する構造単位の量は、重合体(A)を構成する全構造単位に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、架橋性単量体に由来する構造単位の量は、重合体(A)を構成する全構造単位に対して、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。重合体(A)を構成する架橋性単量体は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0029】
なお、重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲において、カルボキシル基含有単量体及び架橋性単量体とは異なる単量体(以下、「その他の単量体」ともいう)に由来する構造単位を更に有していてもよい。その他の単量体としては、エチレン性不飽和単量体を好ましく用いることができ、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル、(メタ)アクリル酸の芳香族エステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
これらの具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル及び(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリル酸の芳香族エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシメチル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル及び(メタ)アクリル酸3-フェノキシプロピル等が挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシブチル及び(メタ)アクリル酸n-ブトキシブチル等が挙げられる。
【0034】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0035】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
重合体(A)において、その他の単量体に由来する構造単位の含有量は、重合体(A)を構成する全構造単位に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、1質量%以下がより更に好ましい。重合体(A)を構成するその他の単量体は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0037】
重合体(A)として高分子量重合体(AH)を用いる場合、高分子量重合体(AH)の重量平均分子量(Mw)は、水膨潤性に優れたハイドロゲル形成材を得る観点から、1万以上であることがより好ましく、5万以上であることが更に好ましく、10万以上であることがより更に好ましい。また、重合体及び重合体溶液の取り扱い性の観点から、高分子量重合体(AH)のMwは、好ましくは5,000万以下であり、より好ましくは3,000万以下であり、更に好ましくは1,000万以下である。なお、重合体(A)の分子量は、カルボキシル基をトリメチルシリルジアゾメタンによりメチル化処理した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりテトラヒドロフラン溶離液を用いて測定されるポリスチレン換算値である。
【0038】
重合体(A)としては市販品を使用することもできる。このような市販品としては、例えば、商品名で、アロン(登録商標)A-20PL、同A-20L、同A-7100、同A-30;アロンビス(登録商標)AH-105X、同AH-106X、同SX、同MX、同AHX;レオジック(登録商標)262L、同260H(以上、東亞合成社製);ビスコメート(登録商標)NP-800、同NP-700、同NP-600(以上、昭和電工社製)等が挙げられる。
【0039】
また、カルボキシル基含有重合体の市販品としては、ジュリマー(登録商標)AC-10L、同AC-10LHPK、同AC-10H、同AC-10SH(以上、東亞合成社製)等の未架橋重合体;
ジュンロン(登録商標)PW-120、同PW-121、同PW-312S(以上、東亞合成社製);Carbopol 934P NF、同941、同981、同Ultrez10、同Ultrez30(以上、Lubrizol社製)等の架橋重合体が挙げられる。これら市販品のカルボキシル基含有重合体を中和剤により中和することにより、カルボキシル基含有重合体の中和物である重合体(A)を得てもよい。
【0040】
<重合体(B)>
重合体(B)は、カルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基(官能基E)を有し、かつ重合体(A)とは異なる重合体である。官能基Eとしては、例えばアミド基、シアノ基、カルボニル基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。重合体(B)が有する官能基Eは1種でもよく2種以上でもよい。水膨潤性に優れたハイドロゲル形成材を得ることができる点において、官能基Eは中でも、アミド基及び/又は水酸基が好ましく、アミド基が特に好ましい。
【0041】
重合体(B)の具体例としては、アミド基を有する重合体として、アミド基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、1-ビニル-4-メチル-2-ピロリドン等の単量体を用いて得られる重合体が挙げられる。アミド基を有する重合体は、これらのうち、ポリビニルピロリドン及びポリ(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0042】
水酸基を有する重合体としては、ポリエチレングリコール(市販品として、例えば日油社製のマクロゴール4000、マクロゴール6000及びマクロゴール20000)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(市販品として、例えばBASF社製のクレモファーRH40、日光ケミカルズ社製のHCO-40及びHCO-60)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(市販品として、例えばADEKA社製のプルロニック(登録商標)F68)、ポリビニルアルコール等が挙げられる。水酸基を有する重合体は、これらのうち、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0043】
重合体(B)は、上記の中でも、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリビニルアルコール及びアミド基を有する重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。中でも、水分と接触した際の膨潤性に優れたハイドロゲル形成材を得る観点から、重合体(B)は、アミド基を有する重合体が好ましく、ポリビニルピロリドン及びポリ(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。これらの中でも特に、構成単量体の重合性に優れ、重合体(B)の製造が容易である点において、重合体(B)は、ポリビニルピロリドン及びポリアクリルアミドの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0044】
ポリビニルピロリドンは、典型的には、N-ビニル-2-ピロリドンからなる重合体である。ただし、本発明の効果を損なわない範囲において、N-ビニル-2-ピロリドンとは異なる単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。N-ビニル-2-ピロリドンとは異なる単量体の具体例としては、重合体(A)を構成していてもよいその他の単量体として例示した化合物等が挙げられる。
【0045】
ポリビニルピロリドンにおいて、N-ビニル-2-ピロリドンとは異なる単量体に由来する構造単位の含有量は、ポリビニルピロリドンを構成する全構造単位に対して、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0046】
また同様に、ポリアクリルアミドは、典型的には、アクリルアミドからなる重合体である。ただし、本発明の効果を損なわない範囲において、アクリルアミドとは異なる単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。アクリルアミドとは異なる単量体の具体例としては、重合体(A)を構成していてもよいその他の単量体として例示した化合物等が挙げられる。ポリアクリルアミドにおいて、アクリルアミドとは異なる単量体に由来する構造単位の含有量は、ポリアクリルアミドを構成する全構造単位に対して、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0047】
ポリメタクリルアミドは、典型的には、メタクリルアミドからなる重合体である。ただし、本発明の効果を損なわない範囲において、メタクリルアミドとは異なる単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。メタクリルアミドとは異なる単量体の具体例としては、重合体(A)を構成していてもよいその他の単量体として例示した化合物等が挙げられる。ポリメタクリルアミドにおいて、メタクリルアミドとは異なる単量体に由来する構造単位の含有量は、ポリメタクリルアミドを構成する全構造単位に対して、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0048】
重合体(B)としては、架橋重合体及び重量平均分子量が6,000以上の重合体(以下、「高分子量重合体(BH)」ともいう)の少なくともいずれかを好ましく用いることができる。これらの中でも、高分子量重合体(BH)をより好ましく用いることができる。
【0049】
重合体(B)として高分子量重合体(BH)を用いる場合、高分子量重合体(BH)の重量平均分子量(Mw)は、力学的強度及び増粘効果を確保する観点から、好ましくは1万以上であり、より好ましくは3万以上であり、更に好ましくは5万以上である。また、重合体及び重合体溶液の取り扱い性の観点から、高分子量重合体(BH)のMwは、好ましくは10,000万以下であり、より好ましくは5,000万以下であり、更に好ましくは3,000万以下である。なお、重合体(B)の重量平均分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン換算値である。
【0050】
以上説明した重合体(A)の1種以上と、重合体(B)の1種以上とを適宜組み合わせることにより本発明のハイドロゲル形成材を製造することができる。原料の入手容易性や重合体の製造が容易である等の観点から、重合体(A)と重合体(B)との組み合わせは、上記の中でも、重合体(A)がポリ(メタ)アクリル酸のカルボキシル基の一部又は全部が中和された重合体であって、重合体(B)がアミド基を有する重合体であることが好ましく、重合体(A)がポリ(メタ)アクリル酸のカルボキシル基の一部又は全部が中和された重合体であって、重合体(B)がポリビニルピロリドン及びポリ(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0051】
ハイドロゲル形成材に含まれる重合体(A)と重合体(B)との合計量は、力学的強度が高く、かつ水分との接触により膨潤しやすいハイドロゲル形成材を得る観点、及び生体組織に対する接着性に優れたハイドロゲルを得る観点から、ハイドロゲル形成材の全量に対し、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上がより更に好ましい。
【0052】
ハイドロゲル形成材における各重合体の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、重合体(B)が20~500質量部となるように調整することが好ましい。重合体(A)及び重合体(B)の含有量が上記範囲であると、力学的強度の改善効果が高く、また生体組織に対して優れた接着性を示すハイドロゲルを形成できる点で好適である。このような観点から、重合体(A)及び重合体(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、重合体(B)が30~400質量部となる量とすることがより好ましく、50~300質量部となる量とすることが更に好ましく、50~200質量部となる量とすることがより更に好ましく、75~150質量部となる量とすることが一層好ましい。
【0053】
なお、重合体(A)及び重合体(B)を製造するための重合方法は特段制限されるものではない。重合体(A)及び重合体(B)は、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合等の公知の重合方法を採用して、単量体を重合することにより得ることができる。溶液重合法による場合、例えば、有機溶剤及び単量体を反応器に仕込み、重合開始剤(例えば、アゾ化合物)を添加して、40~250℃に加熱して重合することにより、目的とする重合体を得ることができる。重合体(A)については、単量体としてカルボキシル基含有単量体を用いて重合を行い、当該重合により得られたカルボキシル基含有重合体を中和剤を用いて中和することにより重合体(A)を得てもよい。また、単量体としてカルボキシル基含有単量体を用い、中和剤の存在下で重合する方法や、単量体としてカルボキシル基含有単量体の中和物(例えば(メタ)アクリル酸ナトリウム等)を用いて重合を行う方法により重合体(A)を得てもよい。
【0054】
<その他の成分>
ハイドロゲル形成材には、使用する目的等に応じて、その他の成分が更に含有されていてもよい。その他の成分としては、例えば、水溶性重合体(以下、「水溶性重合体(C)」ともいう)等が挙げられる。また、ハイドロゲル形成材を医療用途等に適用する場合、その他の成分として、抗菌剤、抗炎症剤、血液凝固剤、抗凝固剤、局所麻酔剤、血管収縮剤及び血管拡張剤等の各種薬剤をハイドロゲル形成材に配合してもよい。なお、その他の成分としては、1種又は複数種を含有させることができる。その他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲において、各成分に応じて適宜選択することができる。
【0055】
水溶性重合体(C)としては、増粘剤として一般に使用され得る水溶性重合体が挙げられ、具体例として多糖類が挙げられる。多糖類としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸等のムコ多糖類;カラギナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガム及びウェランガム等の水溶性天然高分子多糖類、並びにこれらの中和物(例えば、ナトリウム塩)等が挙げられる。水溶性重合体(C)は、中でも、ヒアルロン酸又はその中和物が好ましい。水溶性重合体(C)の重量平均分子量は、例えば20万以上であり、50万以上が好ましく、80万以上が更に好ましく、110万超であることがより更に好ましい。
【0056】
ハイドロゲル形成材が水溶性重合体(C)を含有する場合、水溶性重合体(C)の含有量は、重合体(A)及び重合体(B)の合計量100質量部に対して、0.01~50質量部とすることが好ましい。水溶性重合体(C)の含有量を上記範囲とすることにより、ハイドロゲルの保水性を改善することが可能である。こうした観点から、水溶性重合体(C)の含有量は、重合体(A)及び重合体(B)の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。また、水溶性重合体(C)の含有量の上限については、重合体(A)及び重合体(B)の合計量100質量部に対して、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましく、10質量部以下がより更に好ましい。水溶性重合体(C)としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
<ハイドロゲル形成材の製造方法>
本発明のハイドロゲル形成材を製造するための方法は特段制約されるものではない。本発明のハイドロゲル形成材は、例えば以下の方法〔1〕又は方法〔2〕を用いることにより得ることができる。
【0058】
方法〔1〕:重合体(A)及び重合体(B)のうち一方の重合体を含むフィルム状固形物に対し、他方の重合体を含む溶液を接触させた後に乾燥する方法
方法〔2〕:水溶性重合体(C)の存在下において、重合体(A)を含む溶液と、重合体(B)を含む溶液とを混合し、溶媒を除去する方法
【0059】
ここで、重合体(A)の水溶液と重合体(B)の水溶液とを単に混合するものとすると、重合体(A)と重合体(B)との官能基同士の水素結合が非常に速やかに形成される一方で、繊維状の凝集塊が形成されてハイドロゲルが得られないことがある。また、ハイドロゲルが得られても、その得られたハイドロゲルは水に対する溶解性及び膨張性が十分でなく、生体組織に対する接着性にも劣る。これに対し、上記方法〔1〕及び方法〔2〕によれば、優れた水溶性及び水膨潤性を示すハイドロゲル形成材を製造することができる。
【0060】
(方法〔1〕について)
方法〔1〕では、まず、重合体(A)及び重合体(B)のうち一方の重合体(以下、「第1重合体」ともいう)を含むフィルム状固形物を製造する。フィルム状固形物を製造するには、例えば溶液乾燥法、熱プレス法等が挙げられる。これらのうち、気泡の発生を抑制でき、平滑なフィルムを作製できる点で溶液乾燥法が好ましい。溶液乾燥法によりフィルム状固形物を製造する場合、第1重合体を溶媒に溶解してなる重合体溶液(以下、「第1重合体溶液」ともいう)を調製し、次いで、第1重合体溶液を支持体に塗工し、乾燥することが好ましい。なお、フィルム状固形物を構成する第1重合体は、重合体(A)でもよく、重合体(B)でもよい。
【0061】
第1重合体を溶解する溶媒としては、水のほか、水に溶解可能な有機溶媒と水との混合液、及び水に溶解可能な有機溶媒が挙げられる。水に溶解可能な有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。第1重合体を溶解する溶媒としては、これらのうち、水、エタノール、又は水とエタノールとの混合液が好ましい。第1重合体溶液における重合体濃度は、特に限定されないが、例えば0.01~10質量%であり、好ましくは0.1~5質量%である。
【0062】
支持体上にフィルム状固形物を形成する方法は特段制限されるものではなく、公知の成膜方法を適宜採用することができる。例えば、第1重合体溶液を支持体上に塗工し、好ましくは加熱して溶媒を除去することにより、第1重合体を含むフィルム状固形物を支持体上に形成することができる。加熱処理を行う場合、その加熱温度は、例えば50~120℃であり、加熱時間は、例えば0.1~30時間である。また、加熱処理は、減圧下あるいは送風下において実施されてもよい。支持体上に形成されるフィルム状固形物の厚みは、例えば1~5,000μmである。フィルム状固形物の水分含有量は、例えば10質量%以下である。
【0063】
続いて、支持体上に形成されたフィルム状固形物と、重合体(A)及び重合体(B)のうち第1重合体とは異なる重合体(以下、「第2重合体」ともいう)を溶媒に溶解してなる重合体溶液(以下、「第2重合体溶液」ともいう)とを接触させる。第2重合体を溶解する溶媒としては、第1重合体を溶解する溶媒として例示したものと同様の溶媒が挙げられる。第2重合体溶液における重合体濃度は、例えば0.1~30質量%であり、好ましくは1~20質量%である。
【0064】
第1重合体を含むフィルム状固形物と第2重合体溶液とを接触させる方法は特に制限されるものではない。フィルム状固形物と第2重合体溶液とを接触させる方法としては、例えば、フィルム状固形物の表面に第2重合体溶液を塗布、滴下又は噴霧する方法、フィルム状固形物を第2重合体溶液に浸漬する方法等が挙げられる。好ましい一態様としては、フィルム状固形物の表面に第2重合体溶液を滴下等することにより、第2重合体溶液からなる液体層をフィルム状固形物上に形成し、所定時間(例えば、10~180分)静置する態様が挙げられる。液体層の厚みは特に限定されないが、例えば0.1~50,000μmである。これにより、フィルム状固形物中の第1重合体が第2重合体溶液に徐々に溶解し、ハイドロゲルが形成される。
【0065】
第1重合体を含むフィルム状固形物と第2重合体溶液とを接触させる場合、フィルム状固形物に対し接触させる第2重合体溶液の量は、得られるハイドロゲルにおいて架橋構造が適度に形成されるように選択することが好ましい。具体的には、重合体(A)が有するカルボキシル基及び「-COO-」の合計1モルに対し、重合体(B)が有する官能基Eのモル数が、好ましくは0.1~10モル、より好ましくは0.2~8モル、更に好ましくは0.5~2モルとなるように、フィルム状固形物及び第2重合体溶液の量及び重合体濃度を調整することが好ましい。
【0066】
ハイドロゲル形成材として水溶性重合体(C)を含む乾燥体を得る場合、水溶性重合体(C)は、フィルム状固形物が含んでいてもよく、第2重合体溶液が含んでいてもよい。水溶性重合体(C)を第2重合体溶液が含む場合、水溶性重合体(C)を予め第2重合体溶液に配合しておき、水溶性重合体(C)を含む第2重合体溶液をフィルム状固形物と接触させてもよく、あるいは、フィルム状固形物と第2重合体溶液とを接触させた後、水溶性重合体(C)を第2重合体溶液に添加してもよい。ハイドロゲルの形成を好適に行わせる観点から、これらのうち、第2重合体溶液が水溶性重合体(C)を含むことが好ましく、水溶性重合体(C)を予め含む第2重合体溶液をフィルム状固形物と接触させることがより好ましい。
【0067】
水溶性重合体(C)を含む第2重合体溶液をフィルム状固形物と接触させる場合、第2重合体溶液中における水溶性重合体(C)の含有量は、第2重合体の100質量部に対して、0.01~30質量部とすることが好ましく、0.1~20質量部とすることがより好ましく、0.5~15質量部とすることが更に好ましい。
【0068】
その後、得られたハイドロゲル、すなわち、第1重合体を含むフィルム状固形物と第2重合体溶液とを接触させることにより得られた生成物(以下、「ハイドロゲル生成物」ともいう)を乾燥することにより、ハイドロゲル形成材として目的物の乾燥体を得ることができる。ハイドロゲルを乾燥する方法としては特段の制約はなく、公知の乾燥処理方法を適宜採用することができる。
【0069】
例えば、溶液乾燥法によりハイドロゲル生成物を乾燥させる場合、凍結乾燥により行うことが好ましい。凍結乾燥処理において、凍結温度は例えば-70℃~-5℃であり、好ましくは-60℃~-5℃である。凍結乾燥による乾燥処理は室温減圧下で行うことが好ましい。凍結乾燥時の圧力は、例えば50Pa以下であり、好ましくは20Pa以下であり、より好ましくは10Pa以下である。
【0070】
スポンジ状のハイドロゲル形成材を製造する場合、凍結乾燥処理は、ハイドロゲル生成物を過冷却の状態にした後、凍結させる方法を用いるとよい。その際、冷却温度が異なる複数の工程によりハイドロゲル生成物を冷却することが好ましい。この方法によれば、力学的強度が高く、水膨潤状態において生体組織に対する接着性に優れたスポンジ状のハイドロゲル形成材を比較的簡便な方法により得ることができる。
【0071】
具体的には、第1冷却処理としてまず、ハイドロゲル生成物を0℃以下-10℃以上の温度で冷却することによりハイドロゲル生成物を過冷却の状態にし、その後、第2冷却処理として、ハイドロゲル生成物を-10℃よりも低い温度で冷却することによりハイドロゲル生成物を凍結させることが好ましい。その際、第1冷却処理では、過冷却の状態を効率良く生じさせる観点から、緩やかに温度を下げていくことが好ましい。第2冷却処理では、力学的強度及び水膨潤状態における生体組織への接着性に優れたハイドロゲル形成材を得る観点から、冷却温度を-15℃以下とすることが好ましく、-20℃以下とすることがより好ましく、-25℃以下とすることが更に好ましい。第1冷却処理及び第2冷却処理の冷却時間は特に限定されず、適宜設定し得るが、例えば3分~5時間である。第1冷却処理及び第2冷却処理では、冷却温度が異なる多段階の工程により冷却処理が実施されてもよい。
【0072】
なお、本明細書において「乾燥」とは、水分が完全に除去された状態のほか、乾燥過程において水分が残存している状態を含む意味である。乾燥処理により得られる乾燥体の水分含有量は、例えば10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。
【0073】
このようにして、重合体(A)及び重合体(B)のうち一方の重合体を含むフィルム状固形物に対し、他方の重合体を含む溶液が接触されたものが乾燥されて形成された乾燥体を得ることができる。
【0074】
(方法〔2〕について)
方法〔2〕では、水溶性重合体(C)の存在下において、重合体(A)を含む溶液と、重合体(B)を含む溶液とを混合した後、得られた混合液から溶媒を除去することにより、ハイドロゲル形成材としての乾燥体を製造する。
【0075】
重合体(A)を含む溶液(以下、「重合体溶液A」ともいう)、及び重合体(B)を含む溶液(以下、「重合体溶液B」ともいう)において、重合体を溶解する溶媒としては、第1重合体を溶解する溶媒として例示したものと同様の溶媒が挙げられる。これらのうち、乾燥工程を効率良く行う観点から、水を単独で使用することが好ましい。重合体溶液A及び重合体溶液Bにおいて、重合体濃度は、例えば0.1~30質量%であり、好ましくは1~20質量%である。
【0076】
重合体溶液A及び重合体溶液Bにおいて、重合体(A)及び重合体(B)のそれぞれの含有量は、重合体(A)100質量部に対して、重合体(B)が20~500質量部となるように重合体溶液A及び重合体溶液Bの量及び濃度を調整することが好ましい。重合体(A)及び重合体(B)の量は、重合体(A)100質量部に対して、重合体(B)が30~400質量部となる量とすることがより好ましく、50~300質量部となる量とすることが更に好ましい。
【0077】
方法〔2〕において使用される水溶性重合体(C)としては、上記において例示した水溶性重合体(C)の具体例と同様のものを挙げることができる。これらのうち、ヒアルロン酸又はその中和物を好ましく使用することができる。水溶性重合体(C)の使用量は、重合体(A)100質量部に対して、0.01~50質量部とすることが好ましく、0.1~30質量部とすることがより好ましく、0.5~20質量部とすることが更に好ましい。水溶性重合体(C)は水溶液として使用されることが好ましい。
【0078】
続いて、上記により得られた重合体(A)、重合体(B)及び水溶性重合体(C)を含む混合液に対し、溶媒を除去するための乾燥処理を施すことにより、目的物である乾燥体を得ることができる。乾燥処理は凍結乾燥とすることが好ましい。凍結乾燥は常法に従って行うことができる。例えば、上記混合液をモールドに入れて凍結し、その成形された凍結品を凍結乾燥することにより、所望の形状を有する目的物(乾燥体)を得ることができる。凍結乾燥処理は、ハイドロゲル生成物を過冷却の状態にした後、凍結させる方法によることが好ましい。当該方法の詳細は、方法〔1〕において説明した通りである。
【0079】
なお、カルボキシル基含有重合体の中和物をハイドロゲル形成材の原料として用いることで、ハイドロゲル形成材を製造する方法として重合体水溶液同士を混合する方法〔2〕を適用した場合にも、水分を速やかに吸収して膨潤することができるハイドロゲル形成材を得ることができる。
【0080】
<ハイドロゲル形成材の物性>
上記の如くして得られるハイドロゲル形成材は、体液等のイオン緩衝液に溶解しないか又は溶解しにくく、水分との接触により適度に膨潤する。ハイドロゲル形成材を無風乾燥機により150℃で60分間乾燥させた後のハイドロゲル形成材の質量(g)をW1とし、ハイドロゲル形成材をイオン緩衝液により所定時間膨潤させた後のハイドロゲル形成材の質量(g)をW2として、W1に対するW2の比を「水膨潤度θ」と定義した場合、水膨潤度θは下記数式(1)で表される。
水膨潤度θ=W2/W1 …(1)
W1=無風乾燥機により150℃で60分間乾燥させた後の質量(g)
W2=イオン緩衝液により10分間膨潤させた後の質量(g)
【0081】
水分との接触により速やかに吸水し、生体組織に対する接着性を速やかに発現するハイドロゲル形成材を得る観点から、本発明のハイドロゲル形成材は、イオン緩衝液により10分間膨潤させたときの水膨潤度θが9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。また、イオン緩衝液により10分間膨潤させたときの水膨潤度θの上限については、吸水後のハイドロゲル形成材(すなわちハイドロゲル)の体積が過大になることを抑制し、これにより生体組織への圧迫を抑制する観点から、60以下であることが好ましく、55以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましい。
【0082】
<ハイドロゲル形成材の使用態様>
本発明のハイドロゲル形成材は、使用前は乾燥した状態の固形物(すなわち乾燥体)であり、水分と接触すると吸水して膨潤することによりハイドロゲル(すなわち膨潤体)となる。ここで、水分としては、水に限らず、例えば、水に溶解可能な有機溶媒(エタノール等)、体液(血液、組織液等)、及びこれらの混合液が挙げられる。
【0083】
本発明のハイドロゲル形成材(乾燥体)の形状は特に限定されず、例えばフィルム状、シート状、スポンジ状、粉末状等が挙げられる。また、その大きさも特に限定されない。例えば、得られる乾燥体がフィルム状である場合、乾燥体の厚みは、通常0.1~50,000μm程度である。
【0084】
本発明のハイドロゲル形成材は、支持体上に保持された状態で提供されてもよく、フィルム等の包装体に包含された状態で提供されてもよく、スプレーの状態で提供されてもよい。本発明のハイドロゲル形成材が支持体上に保持された状態で提供される場合、支持体の形状及び材質としては特に限定されないが、例えば、織布や不織布等の布地;ポリスチレンやポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂基材等が挙げられる。本発明のハイドロゲル形成材は、力学的強度が高く、かつ柔軟性に優れていることから、ハイドロゲル形成用フィルム又はハイドロゲル形成用スポンジとして好ましく用いることができる。
【0085】
本発明のハイドロゲル形成材は、水分との接触前は柔軟性を有する乾燥体であり、水分との接触により乾燥体から膨潤体に変化し、これにより生体組織に対する接着性を示す。また、本発明のハイドロゲル形成材は、生体吸収性を有さず、また生理条件下において徐々に分解して可溶化するため、安全性が高く、生体内に留置することも可能である。このような本発明のハイドロゲル形成材は医療用処置材として好適であり、具体的には、癒着防止材や止血材、創傷被覆材等の各種医療用処置材として特に好適である。
【実施例0086】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0087】
ハイドロゲル形成材の製造に用いた重合体の中和度は以下の方法により測定した。
(重合体の中和度)
ポリプロピレン製のカップに重合体を0.2g精秤し、テトラヒドロフラン(THF)約50mLを加え、マグネチックスターラーで撹拌溶解した。得られた重合体溶液に純水約5mLを添加したものを測定用試料として、自動滴定装置(HIRANUMA社製 COM-A19)により、0.1mol/L水酸化カリウム/エタノール溶液で滴定し、重合体の酸価(mgKOH/g)を測定した。得られた酸価から重合体の中和度(モル%)を算出した。
【0088】
<ハイドロゲル形成材の製造>
[実施例1]
1.57質量%の100モル%中和PAANa(重合体(A))水溶液30mL、5.54質量%のポリビニルピロリドン(重合体(B)、以下「PVP」ともいう)水溶液10mL、及び0.36質量%のヒアルロン酸ナトリウム(水溶性重合体(C)、以下、「HA」ともいう)水溶液20mLの混合溶液を作製した。
50mm×50mmのポリプロピレン製の基材上に、25mm×7mmの開口部を有するシリコンゴムシート(厚み10mm)を設置し、上記混合溶液を1.5mLキャストして、0℃×0.5h、-4℃×0.5hの順に冷却(予備冷却)処理を行った後、-35℃×1hの条件で凍結した。
凍結品を室温減圧(5Pa)下で凍結乾燥することにより、ハイドロゲル形成材(大きさ:25mm×7mm×7mm)を得た。なお、重合体の混合比は、100モル%中和PAANa:PVP:HA=1:1.18:0.15(質量比)とした。
【0089】
[実施例2及び3]
原料を表1に記載した通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ハイドロゲル形成材を得た。
【0090】
[実施例4]
50mm×50mmのポリプロピレン製の基材上に、25mm×7mmの開口部を有するシリコンゴムシート(厚み10mm)を設置し、1.57質量%の100モル%中和PAANa(重合体(A))水溶液1.5mLをキャストして70℃で20時間乾燥させ、100モル%中和PAANaのフィルムを作製した。次に、4.6質量%のPVP(重合体(B))水溶液0.6mLと0.4質量%のHA(水溶性重合体(C))水溶液0.9mLとの混合溶液1.5mLを、100モル%中和PAANaのフィルムの表面に滴下し、60分静置した後、0℃×0.5h、-4℃×0.5hの順に冷却(予備冷却)処理を行い、その後、-35℃×1hの条件で凍結した。
凍結品を室温減圧(5Pa)下で凍結乾燥することにより、ハイドロゲル形成材(大きさ:25mm×7mm×7mm)を得た。なお、重合体の混合比は、100モル%中和PAANa:PVP:HA=1:1.18:0.15(質量比)とした。
【0091】
[実施例5及び6]
原料を表1に記載した通りに変更した以外は実施例4と同様の操作を行い、ハイドロゲル形成材を得た。
【0092】
[比較例1]
50mm×50mmのポリプロピレン製の基材上に、25mm×7mmの開口部を有するシリコンゴムシート(厚み10mm)を設置し、1.2質量%のPAA水溶液1.5mLをキャストして70℃で20時間乾燥させ、PAAのフィルムを作製した。次に、4.6質量%のPVP(重合体(B))水溶液0.6mLと0.4質量%のHA(水溶性重合体(C))水溶液0.9mLとの混合溶液1.5mLを、PAAのフィルムの表面に滴下し、60分静置した後、0℃×0.5h、-4℃×0.5hの順に冷却(予備冷却)処理を行い、その後、-35℃×1hの条件で凍結した。
凍結品を室温減圧(5Pa)下で凍結乾燥することにより、ハイドロゲル形成材(大きさ:25mm×7mm×7mm)を得た。なお、重合体の混合比は、PAA:PVP:HA=1:1.53:0.2(質量比)とした。
【0093】
<評価>
実施例1~6及び比較例1により得られた各ハイドロゲル形成材の水膨潤度θを下記数式(1)により求めた。
水膨潤度θ=W2/W1 …(1)
W1=無風乾燥機により150℃で60分間乾燥させた後の質量(g)
W2=イオン緩衝液により10分間膨潤させた後の質量(g)
水膨潤度θの測定方法の詳細は以下のとおりである。評価結果を表1に示す。
【0094】
・水膨潤度θの測定
上記で得られたハイドロゲル形成材を無風乾燥機(装置名:ヤマト科学社製 DX-40)により150℃で60分間乾燥させ、ハイドロゲル形成材の質量(上記数式(1)中のW1、単位:g)を測定した。次いで、乾燥後のハイドロゲル形成材を、イオン緩衝液としてのリン酸緩衝液(0.1mol/L リン酸緩衝液、pH7.2、富士フイルム和光純薬社製)中に投入し、10分間放置した。イオン緩衝液中に10分間放置した後のハイドロゲル形成材の質量(上記数式(1)中のW2、単位:g)を測定し、上記数式(1)により、ハイドロゲル形成材をイオン緩衝液により10分間膨潤させたときの水膨潤度θを算出した。
【0095】
【0096】
表1において用いた化合物の詳細を以下に示す。
・100モル%中和PAANa:未架橋ポリアクリル酸ナトリウム〔東亞合成社製、アロンA-20PL、中和度100モル%〕
・50モル%中和PAANa:未架橋ポリアクリル酸ナトリウム〔東亞合成社製、アロンビスAH-105X、中和度50モル%〕
・100モル%中和架橋PAANa:架橋ポリアクリル酸ナトリウム〔東亞合成社製、レオジック262L、中和度100モル%〕
・PAA:未架橋ポリアクリル酸〔東亞合成社製、ジュリマーAC-10LHPK〕
・PVP:ポリビニルピロリドン〔BASF社製、Kollidon 90F、ポリスチレン換算重量平均分子量=32万(ジメチルホルムアミド溶離液)〕
・HA:ヒアルロン酸ナトリウム〔キューピー社製、ヒアルロンサンHA-LQH〕
【0097】
<評価結果>
表1の結果から明らかなように、カルボキシル基含有重合体の中和物である重合体(A)と、カルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基を有する重合体(B)とを含有するハイドロゲル形成材(実施例1~6)は、水分に接触させてから10分後の水膨潤度が高かった。これらのことから、実施例1~6のハイドロゲル形成材は、血液や組織液等の水分に接触させた場合に速やかに吸水して膨潤できるといえる。
【0098】
これに対して、カルボキシル基含有重合体の中和物に代えて、カルボキシル基含有重合体であるポリアクリル酸を用いた比較例1のハイドロゲル形成材は、水分に接触させてから10分後の水膨潤度が実施例1~6に比べて低く、水膨潤性に劣っていた。
【0099】
以上の結果から、カルボキシル基含有重合体の中和物である重合体(A)と、カルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基を有する重合体(B)とを含有するハイドロゲル形成材によれば、水分と接触させた場合に速やかに水分を吸収できることが明らかになった。