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特開2024-8924性能向上特徴部を有するガラス組立体およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008924
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】性能向上特徴部を有するガラス組立体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240112BHJP
   B60J 1/00 20060101ALN20240112BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C27/12 L
B60J1/00 B
B60J1/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112540
(22)【出願日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】17/860411
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519196036
【氏名又は名称】エージーシー オートモーティヴ アメリカズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジャンピン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ディー.ペック
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル トーマス マチ
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル スミス
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック マウリス シャイブル, サード
(72)【発明者】
【氏名】アブデルハリム モハマッド
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エー. イメソン
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA10
4G061AA30
4G061BA02
4G061CB16
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA36
(57)【要約】
【課題】性能向上特徴部を有するガラス組立体を製造する改良された方法。
【解決手段】性能向上特徴部を有するガラス組立体を製造する方法は、湾曲ガラス基板を形成するステップを有する。また、当該方法は、マスクを使用せずに、湾曲ガラス基板の表面にインクをデジタル的に設置するステップを有する。当該方法は、さらに、インクを硬化させて、湾曲ガラス基板の表面に性能向上特徴部を形成するステップを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
性能向上特徴部(PEF)を有するガラス組立体を製造する方法であって、
湾曲ガラス基板を形成するステップと、
マスクを使用せずに、前記湾曲ガラス基板の表面にインクをデジタル的に設置するステップと、
前記インクを硬化させて前記湾曲ガラス基板の前記表面にPEFを形成するステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記インクは、熱劣化温度を有し、
前記インクを硬化させて前記PEFを形成するステップは、前記インクの前記熱劣化温度未満で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インクを硬化させて前記PEFを形成するステップは、UV硬化装置を用いて前記インクを光硬化させるステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記インクを硬化させるステップは、前記インクをデジタル的に設置するステップの後、5秒以内に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記インクをデジタル的に設置するステップは、さらに、単位インチ当たり400ドットを超える解像度で、前記インクをデジタル的に設置するステップを有し、および/または
前記PEFは、200ドット/インチを超える解像度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記インクをデジタル的に設置するステップは、さらに、前記インクをインクジェット印刷するステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらに、
プリントヘッドおよび硬化装置を有するロボットアプリケータを提供するステップと、
前記湾曲ガラス基板の前記表面に隣接して前記ロボットアプリケータを配置するステップと、
を有し、
前記インクをデジタル的に設置するステップは、前記ロボットアプリケータが前記湾曲ガラス基板の前記表面に沿って移動する際に、マスクを設置せずに、前記湾曲ガラス基板の前記表面に前記ロボットアプリケータの前記プリントヘッドから前記インクをデジタル的に設置するステップを有し、
前記インクを硬化させて前記PEFを形成するステップは、前記ロボットアプリケータが前記湾曲ガラス基板の前記表面に沿って移動する際に、前記ロボットアプリケータの前記硬化装置を活性化させ、前記デジタル的に設置された前記インクを硬化させるステップを有し、前記湾曲ガラス基板の前記表面に前記PEFが形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記PEFは、前記湾曲ガラス基板の前記表面に15マイクロメートル未満の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記インクをデジタル的に設置するステップは、有機インクをデジタル的に設置するステップを有し、および/または
前記PEFは、前記ガラス組立体の周端部に隣接して配置された不透明境界特徴部である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記インクをデジタル的に設置するステップは、導電性インクをデジタル的に設置するステップを有し、および/または
前記PEFは、少なくとも1つの導電性配線を有する導電性特徴部であり、該導電性特徴部は、
(i)前記ガラス組立体の少なくとも一部に熱を提供するように構成された加熱素子、
(ii)前記ガラス組立体の導電性特徴部にエネルギーを伝達するように構成されたバスバー、および
(iii)無線信号を送信/受信するように構成されたアンテナ、
の少なくとも1つを画定する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記PEFは、前記ガラス組立体の少なくとも一部に形成された機能性コーティングであり、
前記インクをデジタル的に設置するステップは、マスクを使用せずに、前記湾曲ガラス基板の表面に機能性インクをデジタル的に設置するステップを有し、
前記機能性インクは、反射防止コーティング、IR透過コーティング、撥水性コーティング、撥油性コーティング、および親油性コーティングからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法により形成されたガラス組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年7月8日に出願された米国特許出願第17/860, 411号に対する優先権を主張するものであり、この出願は、参照によりその全体が本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、全般に、ガラス組立体、およびガラス組立体を製造する方法に関し、より具体的には、性能向上特徴部を有するガラス組立体、および性能向上特徴部を有するガラス組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車で使用されるガラス組立体には、しばしば、性能向上特徴部が含まれている。通常、これらの性能向上特徴部には、ガラス組立体に追加の機能を追加し、および/またはガラス組立体の美観を改善するために、ガラス組立体に成膜された物質が含まれる。性能向上特徴部の例としては、導電性機能(加熱グリッドまたはアンテナ)、不透明な境界特徴部(ブラック帯部または光センサの境界など)、またはその他の機能性コーティング(反射防止コーティング、IR透過コーティング、撥水性コーティング、撥油性コーティング、親油性コーティングなど)が含まれる。しばしば、性能向上特徴部は、平坦なガラス基板上に物質(セラミックフリットと、顔料または導電性粒子のような他の物質との混合物など)を成膜し、その後、500℃を超える温度でガラス基板を焼成して、物質をガラスに溶融させることにより形成される。溶融物質を含むガラス基板は、通常、600℃を超える温度で焼成され、基板が所望の形状に曲げられる。これらの物質を含むガラス組立体がこのような高温で焼成される場合、物質を含むガラス組立体の部分が、物質を含まないガラス組立体の残りの部分とは異なる態様で熱を吸収をするという問題がある。例えば、物質を含むガラス組立体の一部は、焼成中、温度が650℃となる一方、ガラス組立体の(物質を含まない)残りは、焼成中、温度が640℃となる。従って、物質を含むガラス組立体の部分は、物質を含まないガラス組立体の残りの部分とは、異なる軟質性を有する。物質を含むガラス組立体の部分の軟質性と、ガラス組立体の残りの部分の軟質性との差異により、ガラス組立体の各部分で異なる変形が生じ、これにより、ガラス組立体に大きな光学歪みが生じるとともに、ガラス組立体の強度に影響が生じる。この光学歪みは、カメラおよびLIDARセンサを含む、半自律的または自律的な駆動で使用される光学的センサの特性に、特に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、物質を成膜するための従来のアナログ印刷処理(例えば、スクリーン印刷、マスクによるスプレー印刷など)は、一般に、最大解像度が約200ドット/インチに制限され、通常マスクが必要となる。一例として、従来のスクリーン印刷プロセスでは、印刷される所望の領域に対応する空隙を画定するマスク(すなわち、「スクリーン」)が、基板の上に配置される。物質は、ローラ、スキージ、ブラシ、スプレー等の手動プロセスで、マスクの上に堆積される。これらの手動プロセスでは、しばしば、マスクの上に余剰な物質を堆積させ、確実にマスクの全ての空隙が十分に充填されるようにする必要がある。さらに、従来のアナログ印刷プロセスは、通常、平坦な基板上で実施される。湾曲した基板上では、正確に繰り返し印刷することは難しいためである。
【0005】
上記の観点から、性能向上特徴部を有するガラス組立体を製造する改良された方法が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、性能向上特徴部(PEF)を有するガラス組立体を製造する方法を有する。この方法は、湾曲したガラス基板を形成するステップを有する。また、本方法は、マスクを使用せずに、湾曲ガラス基板の表面にインクをデジタル的に設置するステップを有する。また、この方法は、インクを硬化させて、湾曲ガラス基板の表面にPEFを形成するステップを有する。有意には、湾曲ガラス基板を形成した後にインクをデジタル的に設置することにより、従来の物質を含むガラス組立体を焼成することにより生じる光学的な歪みを抑制することができる。さらに、インクをデジタル的に設置することにより得られる精密な制御のため、インクは、従来のアナログ印刷プロセスに比べて、より厳しい公差で成膜され、より精細な特徴部を形成することができる。
【0007】
本開示の利点は、添付図面とともに以下の詳細な説明を参照することにより、容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の方法を示すフローチャートである。
図2】湾曲したガラス基板を形成するステップの概略的な断面図である。
図3A】湾曲したガラス基板上にインクをデジタル的に設置するステップ、およびインクを硬化させて性能向上特徴部を形成するステップの概略的な正面図である。
図3B図3Aの上面斜視図である。
図4A】性能向上特徴部を有するガラス組立体の一例の断面図である。
図4B】性能向上特徴部を有するガラス組立体の一例の断面図である。
図4C】性能向上特徴部を有するガラス組立体の一例の断面図である。
図5】第1の湾曲ガラス基板と第2の湾曲ガラス基板との間にポリマー中間層を配置するステップの概略的な断面図である。
図6A】性能向上特徴部を有する積層ガラス組立体の一例の概略的な断面図である。
図6B】性能向上特徴部を有する積層ガラス組立体の一例の概略的な断面図である。
図6C】性能向上特徴部を有する積層ガラス組立体の一例の概略的な断面図である。
図6D】性能向上特徴部を有する積層ガラス組立体の一例の概略的な断面図である。
図7】不透明境界特徴部を有する前面ガラス組立体を含む車両の部分正面図である。
図8A】不透明境界特徴部を有する図7のガラス組立体の線8-8に沿った一例の概略的な断面図である。
図8B】不透明境界特徴部を有する図7のガラス組立体の線8-8に沿った一例の概略的な断面図である。
図8C】不透明境界特徴部を有する図7のガラス組立体の線8-8に沿った一例の概略的な断面図である。
図9A】帯部として形成された不透明境界特徴部を有するガラス組立体の正面図である。
図9B】帯部として形成された不透明境界特徴を有するガラス組立体の正面図である。帯部は、第1の端部で第1の不透明度を有し、第2の端部で第2の不透明度を有する。
図10A】光学センサ境界として形成される不透明境界特徴部を有する、図7のガラス組立体の線10-10に沿った一例の概略的な断面図である。
図10B】光学センサ境界として形成される不透明境界特徴部を有する、図7のガラス組立体の線10-10に沿った一例の概略的な断面図である。
図10C】光学センサ境界として形成される不透明境界特徴部を有する、図7のガラス組立体の線10-10に沿った一例の概略的な断面図である。
図11A】帯部として形成された不透明境界特徴部と、検知窓を画定する光学センサ境界とを有するガラス組立体の正面図である。検知窓は、可視光に対して透明である。
図11B】帯部として形成された不透明境界特徴部と、検知窓を画定する光学センサ境界とを有するガラス組立体の正面図である。検知窓は、可視光に対して不透明であり、赤外光に対して透明である。
図11C】セラミックフリットを有するエナメル質から形成された第1の部分と、有機インクから形成された第2の部分とを有する不透明境界特徴部を有するガラス組立体の正面図である。
図12A】不透明境界特徴部およびグラフィック含有情報を有する図7のガラス組立体の線12-12に沿った一例の概略的な断面図である。
図12B】不透明境界特徴部およびグラフィック含有情報を有する図7のガラス組立体の線12-12に沿った一例の概略的な断面図である。
図13A】不透明境界特徴部およびグラフィック含有情報を有するガラス組立体の正面図である。
図13B】不透明境界特徴部およびグラフィック含有情報を有するガラス組立体の正面図である。
図13C】不透明境界特徴部およびグラフィック含有情報を有するガラス組立体の正面図である。
図14】加熱素子を画定する導電性特徴部を含むリアガラス組立体を有する車両の後方斜視図である。
図15A図14のガラス組立体の線15-15に沿った一例の概略的な断面図である。
図15B図14のガラス組立体の線15-15に沿った一例の概略的な断面図である。
図16】加熱素子を画定する導電性特徴部を有するフロントガラス組立体を有する車両の正面図である。
図17A図16のガラス組立体の線17-17に沿った一例の概略的な断面図である。
図17B図16のガラス組立体の線17-17に沿った一例の概略的な断面図である。
図18】アンテナを画定する導電性特徴部を有する、リアガラス組立体を有する車両の後方斜視図である。
図19A図18のガラス組立体の線19-19に沿った実施例の概略的な断面図である。
図19B図18のガラス組立体の線19-19に沿った実施例の概略的な断面図である。
図19C図18のガラス組立体の線19-19に沿った実施例の概略的な断面図である。
図20】アンテナを画定する導電性特徴部を有するフロントガラス組立体を有する車両の正面図である。
図21A図20のガラス組立体の線21-21に沿った一例の概略的な断面図である。
図21B図20のガラス組立体の線21-21に沿った一例の概略的な断面図である。
図22】機能性コーティングを有するリアガラス組立体を有する車両の後方斜視図である。
図23A図22のガラス組立体の線23-23に沿った一例の概略的な断面図である。
図23B図22のガラス組立体の線23-23に沿った一例の概略的な断面図である。
図24】機能性コーティングを有するフロントガラス組立体を有する車両の正面図である。
図25A図24のガラス組立体の線25-25に沿った一例の概略的な断面図である。
図25B図24のガラス組立体の線25-25に沿った一例の概略的な断面図である。
図25C図24のガラス組立体の線25-25に沿った一例の概略的な断面図である。
図25D図24のガラス組立体の線25-25に沿った一例の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図面において、同様の参照番号は、同様のまたは同じ構成部材を識別するため用いられる。図面を参照すると、図1には、性能向上特徴部PEFを有するガラス組立体20を形成する方法100を概略的に示す。一例では、ガラス組立体20は、フロントガラス、サイドウインドウ、クオータウインドウ、リアウインドウのような車両18用のウインドウとして、自動車の文脈で使用される。当然のことながら、ガラス組立体20を形成する方法100は、自動車以外のものに適用されてもよいことが理解される。
【0010】
図1乃至図3Bを参照すると、ガラス組立体20を形成する方法100は、湾曲ガラス基板22を形成するステップS1と、マスクを使用せずに、湾曲ガラス基板22の表面にインクIをデジタル的に設置するステップS2と、インクIを硬化させ、湾曲ガラス基板22の表面に性能向上特徴部PEFを形成するステップS3と、を有する。方法100のステップS1、S2、S3、S4の各々の説明は、以下にさらに詳細に記載される。
【0011】
前述のように、方法100のステップS1は、湾曲ガラス基板22を形成するステップを有する。図2を参照すると、湾曲ガラス基板22は、外表面(P1)および対向する内表面(P2)を有するように形成されてもよい。一実施形態では、ガラス組立体20が車両18に取り付けられた際、P2表面は、車両18の内部に対向するように配置され、ガラス組立体20が車両18に取り付けられた際に、P1表面は、車両18の外側に対向するように配置される。
【0012】
引き続き図2を参照すると、ステップS1の一例では、湾曲ガラス基板22は、まず、平坦ガラスシート22Fとして形成される。平坦ガラスシート22Fは、任意の好適な板ガラス製造法を用いて製造されてもよく、これには、これに限られるものではないが、フロート法が含まれる。平坦ガラスシート22Fは、これに限られるものではないが、ソーダライムガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ホウアルミノケイ酸塩ガラスなどを含む、任意の好適なガラス組成物で構成されてもよい。
【0013】
平坦ガラスシート22Fを形成した後、平坦ガラスシート22Fが曲げられ、湾曲ガラス基板22が形成される。平坦ガラスシート22Fは、これに限られるものではないが、プレス曲げ、重力曲げ(すなわち撓み曲げ)、ロール成形、または冷間曲げを含む、任意の好適なガラス曲げプロセスを用いて曲げられてもよい。平坦ガラスシート22Fは、所望の用途に適した任意の幾何学的形状に曲げられてもよい。
【0014】
ステップS1の他の例では、湾曲ガラス基板22は、平坦ガラスシート22Fを形成してから曲げる方法とは異なり、最初に湾曲した基板として形成される。湾曲ガラス基板22は、これに限られるものではないが、ガラスブロー成形法を含む、任意の好適な湾曲ガラス製造プロセスを使用して、製造されてもよい。前述の平坦ガラスシート22Fと同様、この実施例では、湾曲ガラス基板22が最初に形成され、該湾曲ガラス基板22は、これに限られるものではないが、ソーダライムガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ホウアルミノケイ酸塩ガラスなどを含む、任意の好適なガラス組成物から構成されてもよい。
【0015】
いくつかの例では、ガラス組立体20は、合わせガラス組立体20として形成される。これらの実施例では、合わせガラス組立体20は、外表面(P1)および対向する内表面(P2)を有する湾曲ガラス基板22(「第1の湾曲ガラス基板22」とも称される)と、内表面(P3)および対向する外表面(P4)を有する第2の湾曲ガラス基板24と、P2表面とP3表面との間に配置された高分子中間層28とを有する(以下、さらに詳細に説明される)。従って、合わせガラス組立体20に関連して、方法100のステップS1は、さらに、湾曲した第2のガラス基板24を形成するステップを有してもよい。当然のことながら、第2の湾曲ガラス基板24は、第1の湾曲ガラス基板22に関して述べたプロセスのいずれかにより、形成されてもよい。また、第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24は、一緒に(すなわち、互いに隣接して配置されたまま、曲げて)形成されてもよく、または別個に形成されてもよいことが理解される。第1の湾曲ガラス基板22と同様に、第2の湾曲ガラス基板24は、これに限られるものではないが、ソーダライムガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ホウアルミノケイ酸塩ガラスなどを含む、任意の好適なガラス組成物から構成されてもよい。第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24は、同じまたは異なるガラス組成物から構成されていてもよい。
【0016】
有意には、曲げプロセスの間、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24は、特に歪みを最小化することが重要なガラス組立体20の一部(例えば光学センサの視野)に、焼成の対象となる性能向上特徴部を形成するために使用される、従来の物質(セラミックフリットを有するコーティングなど)を含まなくてもよい。従って、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24は、これらの従来の物質を含む基板よりも均一に熱を吸収し、これにより、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の不均一な変形(すなわち、光学歪み)が抑止される。代わりに、ステップS2およびS3の内容で後述するように、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に、インクIが設置され、硬化され、ステップS1後に性能向上特徴部PEFが形成される。
【0017】
いくつかの例では、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24は、透明である。この文脈において、「透明」、または「実質的に透明」とも称される用語は、そこを通る所定の可視光範囲において、光の70%以上の透過が可能となる材料を表す。特に断りのない限り、所定の可視光範囲は、人間の目に見える電磁スペクトルのセグメントである。より簡単に言えば、この範囲の波長は、可視光と呼ばれる。通常、人間の眼は、約380から約780ナノメートルの波長を検出することができ、従って、本願に記載の所定の可視光の範囲は、特に断りのない限り、約380から約780ナノメートルの光の波長を表す。いくつかの例では、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24は、湾曲ガラス基板の透過性を変化させる各種添加剤を含み、例えば、添加剤は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24を、前述のように「透明」または「実質的に透明」に維持しつつ、各種レベルの着色または配色を提供してもよい。
【0018】
他の例では、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24は、前述よりも透明性が低い。例えば、ガラス組立体20がプライバシーガラスである場合、ガラス組立体20の透過性は、実質的に低下し、従って、ガラス組立体20により、所定の波長範囲で0から70%の光透過率のような、所定の波長範囲で70%未満の光透過率が得られる。
【0019】
湾曲ガラス基板22は、厚さT1を有する。湾曲ガラス基板22の厚さT1は、用途に適した任意の好適な厚さであってもよい。例えば、自動車のウインドウ用途では、湾曲ガラス基板22の厚さT1は、約0.3mmから約4.1mmであってもよい。より詳細には、厚さT1は、約0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、3.0mm、3.1mm、3.2mm、3.3mm、3.4mm、3.5mm、3.6mm、3.7mm、3.8mm、3.9mm、または4. 1 mmであってもよい。
【0020】
同様に、合わせガラス組立体20に関して、第2の湾曲ガラス基板24は、厚さT2を有する。第2の湾曲ガラス基板24の厚さT2は、用途に適した任意の好適な厚さであってもよい。例えば、自動車用合わせガラス組立体の用途では、第2の湾曲ガラス基板24の厚さT2は、約0.3mmから約4.1mmであってもよい。より詳細には、厚さT2は、約0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、3.0mm、3.1mm、3.2mm、3.3mm、3.4mm、3.5mm、3.6mm、3.7mm、3.8mm、3.9mm、または4.1 mmであってもよい。当然のことながら、厚さT1および厚さT2は、同じであっても、異なってもよい。一例では、第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24は、ガラス組立体20が「対称」な積層体とみなされるように、同じ厚さ(すなわち、T1はT2に等しい)を有する。しかしながら、別の例では、第1の湾曲ガラス基板22と第2の湾曲ガラス基板24は、ガラス組立体20が「非対称」な積層体とみなされるように、異なる厚さを有する(すなわち、T1はT2と等しくない)。上記の例示的なT1とT2の値の全ての組み合わせ、およびそれらの間の全ての分数値が考慮される。
【0021】
方法100のステップS2は、マスクを使用せずに、湾曲ガラス基板22の表面に、インクIをデジタル的に設置するステップを有する。例えば、図3A乃至図3Bには、湾曲ガラス基板22のP2表面に、インクIをデジタル的に設置する図を示す。以下にさらに詳細に説明するように、インクIの例には、これに限られるものではないが、有機インクOI、導電性インクCI、および機能性インクFIが含まれる。注目すべきことに、インクIは、通常、ステップS2においてデジタル的に設置された際は、液体である。しかしながら、インクIは、これに限られるものではないが、粉末を含む他の形態でも設置され得ることが理解される。また、インクIは、セラミックフリットを含まなくてもよく、従って、いくつかの例において、ガラス組立体20は、セラミックフリットを含まなくてもよい。以下にさらに詳細に説明するように、方法100は、インクIを硬化させ、インクIを凝固させ、性能向上特徴部PEFを形成するステップ(S3)を有する。
【0022】
「デジタル的に設置する」と言う用語は、従来のアナログ印刷プロセスとは異なり、インクIの設置がデジタル的に制御され、デジタルベース画像に従って基板上にインクIが堆積される、任意の好適な設置プロセスを表す。インクIをデジタル的に設置する例示的なプロセスには、これに限られるものではないが、インクジェット印刷、電気流体力学的印刷、レーザ印刷などが含まれる。特に、方法100のステップS2に従う、インクIをデジタル的に設置するステップにより与えられる精密な制御のため、インクIは、従来のアナログ印刷プロセスよりも有意に高い解像度で堆積され得る。例えば、インクIは、湾曲ガラス基板22の表面に、200ドット/インチ超、300ドット/インチ超、400ドット/インチ超、500ドット/インチ超、600ドット/インチ超、700ドット/インチ超、800ドット/インチ超、900ドット/インチ超、1000ドット/インチ超、1100ドット/インチ超、1200ドット/インチ超、1300ドット/インチ超、1400ドット/インチ超、1500ドット/インチ超、1600ドット/インチ超、1700ドット/インチ超、1800ドット/インチ超、1900ドット/インチ超、2000ドット/インチ超、2100ドット/インチ超、2200ドット/インチ超、2300ドット/インチ超、2400ドット/インチ超、2500ドット/インチ超、または2600ドット/インチ超の解像度で、デジタル的に設置されてもよい。
【0023】
従って、ステップS2のデジタル設置プロセスのより高い解像度およびより正確な制御によって、インクIが堆積され、従来のアナログ印刷プロセスよりも有意に詳細な特徴部が形成され、有意に厳しい公差が達成され得る。換言すれば、「より詳細な」特徴部は、従来のアナログ印刷プロセスで達成可能な幾何学的形状よりも小さな幾何学的形状を有する、性能向上特徴部PEFの部材を形成することを含んでもよい。また、スクリーン印刷のような従来のアナログ印刷プロセスを使用した場合、性能向上特徴部PEFは、+/-1.5ミリメートルの許容誤差内でしか、繰り返し可能に配置されない。対照的に、方法100のステップS2に従ってインクIをデジタル的に設置することにより提供される精細な制御により、性能向上特徴部PEFは、製造の際に、従来のアナログスクリーン印刷プロセスよりも繰り返し可能に配置され得る。例えば、ステップS2のデジタル設置プロセスを使用した場合、性能向上特徴部PEFは、+/-0.1ミリメートルの許容誤差内で、繰り返し可能に配置され得る。
【0024】
また、インクIをデジタル的に設置する際には、従来のアナログ印刷プロセスにおいては一般的に必要とされる、マスクが必要でなくなることが注目される。例えば、図3Aおよび図3Bに示すように、方法100のステップS2に従ってインクIをデジタル的に設置する際、インクIは、デジタルベース画像に従って、湾曲ガラス基板22の表面に直接堆積され、マスクの必要がなくなり、マスクを使用する従来のアナログ印刷で必要となる余分なインクよりも少ないインクが使用される。さらに、インクIをデジタル的に設置することにより得られる増大した制御のため、従来のアナログ印刷プロセスで可能な厚さよりもずっと薄い層を、デジタル的に設置することが可能となる。一例として、インクIは、湾曲ガラス基板22の表面に、0.1マイクロメートル超、15マイクロメートル未満の厚さを有してもよい。また、インクIは、可変の厚さでデジタル的に設置され、硬化され、可変の厚さを有する性能向上特徴部PEFが形成されることが考慮される。
【0025】
さらに、本方法100に係るインクIをデジタル的に設置することは、従来のアナログ印刷プロセスよりも有意である。なぜなら、デジタル設置プロセスを制御するために使用されるデジタルベース画像を迅速かつ電子的に変更することができるからである。一方、従来のアナログ印刷プロセスの設計を変更するには、新しい物理的な印刷ツール(スクリーン印刷のスクリーン等)を製造することが必要となる。従って、方法100のステップS2により、インクIをデジタル的に設置することにより、新しいアナログ印刷ツールを製造する代わりに、デジタルベース画像を変更することのみにより、性能向上特徴部PEFの多くの異なる配置の迅速なプロトタイプ化が可能となる。
【0026】
合わせガラス組立体20に関し、方法100のステップS2は、第1の湾曲ガラス基板22のP1表面、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面、および第2の湾曲ガラス基板24のP4表面の少なくとも1つに、インクIをデジタル的に設置するステップを有してもよい。インクIは、上記の任意のデジタル設置プロセスに従って、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の少なくとも1つに、デジタル的に設置されてもよいことが理解される。インクIは、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の任意の組み合わせに設置され得ることが考慮される。
【0027】
注目すべきことに、インクIは、焼成される代わりに、それが設置される基板上で固化されるため、インクIは、セラミックフリットのような従来の物質のように、基板に融着しない。有意には、方法100に従って形成されたガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24にインクIを融着するために焼成されないため、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の強度は、影響を受けない。ただし、インクIは、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24に融着しないので、性能向上特徴部PEFは、セラミックフリットのような従来の物質を用いて形成された従来の性能向上特徴部と比較して、より脆弱であり得る。従って、いくつかの例において、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面および第2の湾曲ガラス基板24のP3表面の少なくとも1つに、インクIをデジタル的に設置することが有意であり、これにより、ガラス組立体20(以下、ステップS4の文脈において説明される)の積層の際に、性能向上特徴部PEFは、ガラス組立体20内に挟まれされ、その結果、第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24は、性能向上特徴部PEFを周囲の環境から保護する。
【0028】
一例では、インクIをデジタル的に設置するステップS2は、インクIを湾曲ガラス基板22の表面にインクジェット印刷するステップを有する。一般に、「インクジェット印刷」という用語は、デジタル制御されたプリントヘッドがデジタルベース画像に従ってインクの液滴を基板に推し進める印刷プロセスを表す。インクジェット印刷プロセスの例には、これに限られるものではないが、連続インクジェット印刷、サーマルインクジェット印刷、ピエゾインクジェット印刷、ドロップオンデマンドインクジェット印刷などが含まれる。第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に、インクIをインクジェット印刷するステップは、200ドット/インチ超、300ドット/インチ超、400ドット/インチ超、500ドット/インチ超、600ドット/インチ超、700ドット/インチ超、800ドット/インチ超、900ドット/インチ超、1000ドット/インチ超、1100ドット/インチ超、1200ドット/インチ超、1300ドット/インチ超、1400ドット/インチ超、1500ドット/インチ超、1600ドット/インチ超、1700ドット/インチ超、1800ドット/インチ超、1900ドット/インチ超、2000ドット/インチ超、2100ドット/インチ超、2200ドット/インチ超、2300ドット/インチ超、2400ドット/インチ超、2500ドット/インチ超、または2,600ドット/インチ超の解像度で実施されてもよい。
【0029】
別の例では、インクIをデジタル的に設置するステップS2は、湾曲ガラス基板22の表面に、インクIを電気流体力学的に印刷するステップを有する。一般に、「電気流体力学的印刷」という用語は、デジタル制御され、電気的に帯電されたプリントヘッドにより、デジタルベース画像に従って、インクがノズルを通して基板上に誘導される印刷プロセスを表す。本開示の文脈において、ノズルは、性能向上特徴部PEFのライン幅W(後述する)と同じ幅であってもよい。いくつかの例において、ノズルの幅は、10マイクロメートル程度であってもよい。従って、いくつかの例において、性能向上特徴部PEFの線幅Wは、同様に10マイクロメートルである。もちろん、ノズルの幅は、10マイクロメートルよりも広い幅で選択され、10マイクロメートルよりも広いライン幅Wを有する性能向上特徴部PEFが形成されてもよいことが理解される。また、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に、導電性インクCIを電気流体力学的に印刷するステップを、200ドット/インチ超、300ドット/インチ超、400ドット/インチ超、500ドット/インチ超、600ドット/インチ超、700ドット/インチ超、800ドット/インチ超、900ドット/インチ超、1000ドット/インチ超、1100ドット/インチ超、1200ドット/インチ超、1300ドット/インチ超、1400ドット/インチ超、1500ドット/インチ超、1600ドット/インチ超、1700ドット/インチ超、1800ドット/インチ超、1900ドット/インチ超、2000ドット/インチ超、2100ドット/インチ超、2200ドット/インチ超、2300ドット/インチ超、2400ドット超、2500ドット/インチ、または2600ドット/インチ超の解像度で実施されてもよいことが考慮される。
【0030】
前述のように、湾曲基板上にインクをデジタル的に設置することには、課題がある。従って、一例では、インクIをデジタル的に設置するステップS2は、プリントヘッド32を有するロボットアプリケータ30を提供するステップを有する。この例では、インクIをデジタル的に設置するステップS2は、さらに、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に隣接して、ロボットアプリケータ30を配置するステップを有する。また、この例では、インクIをデジタル的に設置するステップS2は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面にマスクを設けずに、ロボットアプリケータ30のプリントヘッド32から、インクIをデジタル的に設置するステップを有する。この際、ロボットアプリケータ30は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に沿って、プリントヘッド32を移動させる。例えば、図3Aおよび3Bには、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に隣接して配置された、ロボットアプリケータ30およびプリントヘッド32の概略図を示す。従って、本実施例の文脈では、インクIをデジタル的に設置するステップS2は、ロボットアプリケータ30が第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に沿ってプリントヘッド32を移動させる際に、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面にマスクを設けずに、ロボットアプリケータ30のプリントヘッド32から、インクIをデジタル的に設置するステップを有する。
【0031】
第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に沿ってプリントヘッド32を移動させることができる、任意の好適なロボットアプリケータ30が考えられる。換言すれば、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に沿って、ロボットアプリケータ30がプリントヘッド32を移動させる際、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の曲率を有する曲線の経路をたどるように構成されたロボットアプリケータ30が望ましい。より具体的には、プリントヘッド32と第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面との間にある距離を維持し、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に対して実質的に垂直な角度にプリントヘッド32を維持することに適した、ロボットアプリケータ30が望ましい。例えば、ロボットアプリケータ30は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に沿ってプリントヘッド32を移動させるように構成された、6軸ロボット、デカルトロボット等であってもよい。
【0032】
インクIは、ロボットアプリケータ30の各パス当たりの幅で設置されることが考えられる。プリントヘッド32がインクIを設置する際のパス当たりの最大幅は、プリントヘッド32の設計および設定に基づく。マスクを使用せずに、インクIをデジタル的に設置できる任意の好適なプリントヘッド32が考えられる。一例では、プリントヘッド32は、ロボットアプリケータ30のパス当たり30ミリメートルから70ミリメートルの最大幅で、インクIをデジタル的に印加する。他のプリントヘッド32も考慮される。また、ロボットアプリケータ30は、互いに隣接して配置された複数のプリントヘッド32を有し、ロボットアプリケータ30がインクIをデジタル的に設置する1パスあたりの幅が増加してもよいことが考慮される。
【0033】
方法100のステップS3は、インクIを硬化させて、湾曲ガラス基板22の表面に性能向上特徴部PEFを形成するステップを有する。特に、デジタル設置の後であって、インクIを硬化させるステップS3の前に、インクIは、湾曲ガラス基板22の表面に拡散または分散してもよい。例えば、インクIは、ステップS2において、400ドット/インチの解像度でデジタル的に設置されてもよい。ただし、硬化ステップS3の前に、400ドット/インチでデジタル的に設置されたインクIは、湾曲ガラス基板22の表面に拡散されてもよく、硬化ステップS3が完了すると、性能向上特徴部PEFは、最初のデジタル設置での解像度に比べて、例えば、200ドット/インチの解像度のより低い解像度を有する。また、硬化ステップS3自体が、性能向上特徴部PEFの解像度に影響を及ぼし得る。例えば、インクIは、硬化ステップS3の間に膨張または収縮し、性能向上特徴部PEFの解像度に影響が生じ得る。
【0034】
従って、ステップS2においてデジタル的に設置された際のインクIの解像度は、デジタル的に設置されたインクIを硬化させるステップS3の終了後の性能向上特徴部PEFの解像度とは異なってもよく、デジタル的に設置されたインクIを硬化させるステップS3の終了後の性能向上特徴部PEFの解像度は、200ドット/インチ超であってもよい。特に、性能向上特徴部PEFは、200ドット/インチ超、300ドット/インチ超、400ドット/インチ超、500ドット/インチ超、600ドット/インチ超、700ドット/インチ超、800ドット/インチ超、900ドット/インチ超、1000ドット/インチ超、1100ドット/インチ超、1200ドット/インチ超、1300ドット/インチ超、1400ドット/インチ超、1500ドット/インチ超、1600ドット/インチ超、1700ドット/インチ超、1800ドット/インチ超、1900ドット/インチ超、2000ドット/インチ超、2100ドット/インチ超、2200ドット/インチ超、2300ドット/インチ超、2400ドット/インチ超、2500ドット/インチ超、または2600ドット/インチ超の分解能を有してもよいことが考慮される。
【0035】
前述のように、インクIを硬化させるステップは、通常インクIは、ステップS2でデジタル的に設置された際には液体であるため、有意である。従って、インクIをデジタル的に設置するステップS2の後、速やかにインクIを硬化させるステップS3を開始して、インクIの流れおよび汚れが抑制されてもよい。例えば、湾曲ガラス基板22の表面にインクIをデジタル的に設置するステップS2の後、ゼロ秒から5秒の時間内に、硬化ステップS3が開始されてもよい。より具体的には、硬化ステップS3は、ステップS2の後、5秒未満、ステップS2の後、4秒未満、ステップS2の後、3秒未満、ステップS2の後、2秒未満、またはステップS2の後、1秒未満に開始されてもよい。
【0036】
一例では、方法100のステップS3は、インクIを熱硬化(時折「焼結」と称される)して、性能向上特徴部PEFを形成するステップを有する。これに限られるものではないが、オーブンまたはヒートガン、または赤外線ヒータを含む、任意の好適な熱硬化装置がインクIを熱硬化させるために考慮される。本開示の文脈における熱硬化は、ガラス組立体20が焼成されるレベルまで加熱されないことを理解する必要がある。前述のように、一般的な焼成プロセスは、500℃を超える温度までガラス基板を加熱し、セラミックフリットのような物質をガラス基板に融着させ、および/またはガラス基板を所望の形状に曲げるステップを有する。一方、本開示の文脈における熱硬化処理は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24を十分な温度(ただし、500℃の焼成温度未満)に加熱して、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面のインクIを硬化させるステップを有する。
【0037】
いくつかの例では、インクIを硬化させる硬化温度は、インクIの熱劣化温度を考慮して選択される。具体的には、硬化温度は、インクIの熱劣化温度を下回るように選定され、インクIが湾曲ガラス基板22から焼失することが抑制され、ガラス組立体20の光学歪みが最小限に抑制される。例えば、インクIは、熱硬化性有機モノマー、および該有機モノマー中に分散された機能性粒子(例えば、銀ナノ粒子、顔料など)を含んでもよい。他の実施例では、有機モノマーは、代わりに、オリゴマーまたはモノマーとオリゴマーの組み合わせであってもよいことが理解される必要がある。この実施例では、インクIは、210℃の熱劣化温度を有してもよい。従って、硬化温度は、210℃未満、例えば200℃に選択されてもよい。特に、インクIを硬化させる硬化温度は、従来の物質を焼成するために必要となる温度よりも十分に低くされる。従って、ガラス組立体20は、例えばガラス組立体20が大きく変形するような、ガラス組立体20が軟化するような温度には晒されない。従って、インクIを硬化させるステップS3により、ガラス組立体20に大きな光学歪みが導入される可能性は低い。
【0038】
他の例では、方法100のステップS3は、UV硬化装置34を用いてインクIを光硬化するステップを有する。この実施例では、インクIは、光硬化性インクIである。光硬化性インクIは、光開始剤、有機モノマー、および該有機モノマー中に分散された機能性粒子(例えば、銀ナノ粒子、顔料など)を含んでもよい。他の実施例では、有機モノマーは、代わりに、オリゴマーまたはモノマーとオリゴマーの組み合わせとできることが理解される必要がある。光開始剤は、UV光への曝露に応答して有機モノマーの重合を開始する、任意の好適な化合物を含んでもよい。例えば、光開始剤は、UV光に曝露された際に、反応性種(例えば、フリーラジカル、カチオン、またはアニオン)を生成し、有機モノマーおよび/またはオリゴマーの重合を開始する化合物であってもよい。従って、本実施例では、インクIを硬化させて性能向上特徴部PEFを形成するステップS3では、インクIがUV硬化装置34に暴露され、光開始剤が活性化され、有機モノマーの重合が開始され、インクIが硬化する。この例では、インクIを硬化させるステップS3は、任意の外部からの熱の印加を伴わないため、ステップS3のこの例では、ガラス組立体20に光学歪みが導入される可能性は低い。
【0039】
一例において、UV硬化装置34は、UV光を放射するUV発光ダイオードである。例えば、UV硬化装置34は、315ナノメートルから400ナノメートル(一般にUV-Aスペクトルとして知られる)の波長を有するUV光を放射してもよい。UV発光ダイオードは、実質的に385ナノメートルの波長を有するUV光のような、より狭いスペクトルを有するUV光を放射してもよい。UVスペクトル内の任意の波長が考えられる。
【0040】
図3Aには、ステップS3の一例を示す。図3Aの例では、ロボットアプリケータ30は、さらにUV硬化装置34を有する。必須ではないが、UV硬化装置34は、プリントヘッド32に隣接して配置され、ロボットアプリケータ30がプリントヘッド32を湾曲ガラス基板22の表面に沿って移動した際に、UV硬化装置34がプリントヘッド32と同じ経路を通ってもよい。従って、本実施例では、インクIを硬化させて性能向上特徴部PEFを形成するステップS3は、ロボットアプリケータ30が湾曲ガラス基板22の表面に沿って移動すると、ロボットアプリケータ30のUV硬化装置34を活性化して、デジタル的に設置されたインクIの光硬化を開始するステップを有する。その際、インクIをデジタル設置するステップS2の後、迅速にインクIを硬化させるステップS3が生じ、インクIの流れおよび汚れが防止あれる。
【0041】
いくつかの例では、方法100のステップS3は、さらに、前述の考慮された硬化プロセスの1つの間に、ガラス組立体20を高められた湿度および/または圧力に暴露するステップを有してもよい。
【0042】
合わせガラス組立体20に関し、方法100のステップS3は、インクIを硬化させて、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の少なくとも1つに性能向上特徴部PEFを形成するステップを有する。当然のことながら、インクIを硬化させて、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の少なくとも1つに性能向上特徴部PEFを形成するステップは、前述の硬化プロセスのいずれかに従って実施されてもよい。
【0043】
図4A乃至4Cには、方法100に従って形成されたガラス組立体20の各種例の概略的な断面図を示す。図4Aは、湾曲ガラス基板22のP1表面に形成された性能向上特徴部PEFを有する湾曲ガラス基板22を有する、1つのガラス組立体20を示す。図4Bには、湾曲ガラス基板22のP2表面に形成された性能向上特徴部PEFを有する湾曲ガラス基板22を有する、別のガラス組立体20を示す。図4Cには、湾曲ガラス基板22のP1表面に形成された1つの性能向上特徴部PEFと、湾曲ガラス基板22のP2表面に形成された別の性能向上特徴部PEFとを有する湾曲ガラス基板22を有する、さらに別のガラス組立体20を示す。
【0044】
図5を参照すると、ガラス組立体20が合わせガラス組立体20である場合、方法100は、さらに、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面と第2の湾曲ガラス基板24のP3表面の間に、ポリマー中間層28を配置するステップS4を有する。ポリマー中間層28は、第1の湾曲ガラス基板22と第2の湾曲ガラス基板24を結合し、合わせガラス組立体20の衝突または破損の事象の際に、ポリマー中間層28は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24を保持する。ポリマー中間層28は、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)のような、ポリマーまたは熱可塑性樹脂を有する。ポリマー中間層28を実施するための他の好適な材料を利用して、光学ヘイズ、ガラスへの接着、および構造的剛性に関する必要な性能特性を提供してもよい。第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24と同様に、ポリマー中間層28も、実質的に透明であり、または光に対して透過性である。従って、第1の湾曲ガラス基板22と第2の湾曲ガラス基板24との間にポリマー中間層28を有する合わせガラス組立体20も、実質的に透明であり、または光に対して透過性である。
【0045】
積層プロセスの例は、第1の湾曲ガラス基板22、第2の湾曲ガラス基板24、ポリマー中間層28、および合わせガラス組立体20の一部となり得る任意の他の中間層を積層し、配列するステップを有する。これらの部材を積層して配列させた後、ガラス組立体20は、空気除去プロセスにさらされ、真空にされ、第1の湾曲ガラス基板22、第2の湾曲ガラス基板24、ポリマー中間層28、および任意の他の中間層の間にトラップされている任意の空気が除去される。脱空気処理の後、ガラス組立体20は、オートクレーブプロセスに供され、ガラス組立体20が高温および/または高圧にさらされ、ポリマー中間層28が該ポリマー中間層28に隣接する各層と相互に結合され、合わせガラス組立体20が形成される。特に、オートクレーブ内の温度は、インクIの損傷を防止するため、インクIの熱劣化温度よりも低くされる必要がある。
【0046】
図6Aに示す例では、合わせガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第1の湾曲ガラス基板22のP1表面に形成された性能向上特徴部PEFと、第2の湾曲ガラス基板24と、P2表面とP3表面の間に配置されたポリマー中間層28とを有する。図6Bに示す例では、合わせガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に形成された性能向上特徴部PEFと、第2の湾曲ガラス基板24と、P2表面とP3表面の間に配置されたポリマー中間層28とを有する。図6Cに示す例では、合わせガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第2の湾曲ガラス基板24と、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面に形成された性能向上特徴部PEFと、P2表面とP3表面の間に配置されたポリマー中間層28とを有する。図6Dに示す例では、合わせガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第2の湾曲ガラス基板24と、第2の湾曲ガラス基板24のP4表面に形成された性能向上特徴部PEFと、P2表面とP3表面の間に配置されたポリマー中間層28とを有する。図6A乃至図6Dには、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面のそれぞれに形成された性能向上特徴部PEFを示すが、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の任意の組み合わせに、複数の性能向上特徴部PEFが形成されてもよいことが考慮される。
【0047】
いくつかの例では、インクIは、有機インクOIであってもよい。いくつかの例において、有機インクOIは、光硬化性有機インクOIである。前述の光硬化性インクIと同様、光硬化性有機インクOIは、光開始剤、有機モノマー、および顔料を含んでもよい。別の例において、有機インクOIは、熱硬化性有機モノマーおよび顔料を含んでもよい。これらの実施例では、方法100のステップS2は、第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24の少なくとも1つの表面に、マスクを使用せずに、有機インクOIをデジタル的に設置するステップを有する。有機インクOIは、上記のデジタル設置プロセスに従ってデジタル的に設置されてもよい。また、これらの実施例では、方法100のステップS3は、有機インクOIを硬化させて、第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24の少なくとも1つの表面に性能向上特徴部PEFを形成するステップを有する。有機インクOIは、前述の硬化プロセスに従って硬化されてもよい。
【0048】
インクIが有機インクOIである例では、性能向上特徴部PEFは、不透明な境界特徴部OBFとして形成されてもよい。次に、図7乃至図11Bを参照すると、不透明境界特徴部OBFを有する合わせガラス組立体20の各種例が示されている。例えば、図7には、方法100に従って形成された、不透明境界特徴部OBFを有するフロントガラス組立体20を有する車両18を示す。図8A乃至図8Cには、不透明境界特徴部OBFを有する合わせガラス組立体20の概略的な断面図を示す。図8Aに示す例では、ガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に形成された不透明な境界特徴部OBFと、第2の湾曲ガラス基板24と、P2表面とP3表面との間に配置されたポリマー中間層28とを有する。図8Bに示す例では、ガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第2の湾曲ガラス基板24と、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面に形成された不透明な境界特徴部OBFと、P2表面とP3表面との間に配置されたポリマー中間層28とを有する。図8Cに示す例では、ガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に形成された1つの不透明な境界特徴部OBFと、第2の湾曲ガラス基板24と、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面に形成された別の不透明な境界特徴部OBFと、P2表面とP3表面との間に配置されたポリマー中間層28とを有する。図8A乃至図8Cには、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面および第2の湾曲ガラス基板24のP3表面の少なくとも1つに形成された不透明な境界特徴部OBFを示すが、不透明な境界特徴部OBFは、合わせガラス組立体20のP1表面、P2表面、P3表面、またはP4表面の1つ以上、または第1の湾曲ガラス基板22のみを含むガラス組立体20のP1表面およびP2表面のうちの少なくとも1つに形成されてもよいことが理解される。
【0049】
図9Aおよび9Bには、各々、方法100に従って形成されたガラス組立体20の正面図を示す。これらの実施例では、不透明境界特部徴OBFは、ガラス組立体20の周端部38の全周に延在する帯部36として形成される。図9Aおよび図9Bにおいて、ガラス組立体20は、フロントガラスである。しかしながら、ガラス組立体20の周端部38の全周に延びる帯部36として形成された不透明境界部OBFは、サイドウインドウ、クオータウインドウ、リアウインドウ等のようなガラス組立体20の他の例において形成されてもよいことが考慮される。ガラス組立体20の周端部38の全体を取り囲む帯部36は、多くの機能を発揮する。帯部36は、周端部38の全周に延在するガラス組立体20の領域を通る光の透過を遮蔽する。これにより、帯部36は、UV光がガラス組立体20を車両に結合する際の下地の接着剤を劣化させることを防止する。別の例として、帯部36は、ガラス組立体20の上部39からさらに下方に延び、日よけとして機能し、ドライバーの目を日光から保護してもよい。また帯部36は、下地の接着剤の外部観察者に対する視認性をブロックし、外観の美観が改善されてもよい。別の例として、帯部36は、ドットパターン、製造ロゴ、または政府要求情報(FMVSS 205によって要求される情報等)のような、美感のある装飾パターンを画定してもよい。
【0050】
図9Aを参照すると、一例では、不透明境界特徴部OBFは、不透明境界特徴部OBF全体にわたって均一な不透明度を有する。この文脈において、不透明度とは、不透明境界特徴部OBFのサンプル領域を通る可視光の平均透過率を意味する。不透明境界特徴部OBFの不透明度は、不透明境界特徴部OBFが吸収し、散乱し、または反射する光の量を決定する光透過率計(例えば、ISO 9050および/またはISO 13837による)を用いて測定されてもよい。一例において、不透明境界特徴部OBFは、可視光の透過率が1%未満、または可視光の透過率が0.1%未満の不透明度を有してもよい。
【0051】
図9Bを参照すると、他の例では、不透明境界特徴部OBFは、第1の端部40と、該第1の端部40と対向する第2の端部42とを有する。第1の端部40は、ガラス組立体20の周端部38であってもよく、不透明境界特徴部OBFは、該不透明境界特徴部OBFが第1の端部40から内側に延在し、第2の端部42で終了してもよい。図9Bの例では、不透明境界特徴部は、不透明境界特徴部OBF全体にわたって均一な不透明度を有しない。むしろ、不透明境界特徴部OBFは、第1の端部40に第1の不透明度を有し、第2の端部42に第2の不透明度を有する。図9Bの例では、第2の不透明度は、第1の不透明度よりも小さい。
【0052】
特に、有機インクOIは、デジタル的に設置されるため、有機インクOIは、従来のアナログ印刷に比べてより詳細な特徴部を形成し、不透明境界特徴部OBFの不透明度に影響が生じてもよい。例えば、有機インクOIは、不透明境界特徴部OBFの第1の不透明度が可視光の透過率が1%未満となるように、第1の端部40にほぼ完全な被覆率で設置され、有機インクOIは、第2の不透明度が、可視光の透過率が1%超となるように、第2の端部42に完全な被覆率未満で設置されてもよい。従って、いくつかの構成では、第1の不透明度は、可視光の透過率が1%未満であってもよく、または可視光の透過率が0.1%未満であってもよく、不透明境界特徴部OBFの第2の不透明度は、可視光の透過率が99%超であってもよく、または可視光の透過率が99.9%超であってもよい。第1の不透明度および第2の不透明度は、相互に独立に、可視光の透過率0.1%と可視光の透過率99.9%との間の任意の値から選択されてもよいことが考慮される。また、第1の不透明度と第2の不透明度との間の任意の好適な遷移が考えられ、これには、これに限られるものではないが、第1の不透明度と第2の不透明度の間の滑らかな遷移(例えば、勾配パターンを形成する)、または第1の不透明度と第2の不透明度の間の段階的な遷移が含まれる。
【0053】
前述のように、ガラス組立体の周端部の周囲に形成された帯部は、通常、黒色である。しかしながら、本開示において、有機インクOIの顔料は、任意の色であってもよく、不透明境界特徴部OBFを有するガラス組立体20の設計において、より自由な設計選択性が可能になることが考慮される。図9A乃至図10Cに示された帯部36は、黒色であるが、不透明境界特徴部OBFは、黒色、灰色のシェード、白色、任意の原色、またはそれらの組み合わせのような、任意の色を有するように形成されてもよいことが考えられる。
【0054】
次に、図9A乃至図11Bを参照すると、いくつかの例では、不透明境界特徴部OBFは、ガラス組立体20の周端部38に隣接して配置された光学センサ境界44を有する。特に、光学センサ境界44は、ガラス組立体20の周端部38またはその近くに配置されてもよい。車両18のドライバーの視界を不明瞭にしない、光学センサ境界44の任意の好適な配置が考えられる。光学センサ境界44は、検知窓46を画定し、これは、ガラス組立体20に取り付けられた光学センサ48の視野FOVと整列されてもよい。光学センサは、任意の好適な方法でガラス組立体20に取り付けられてもよいことが理解される。例えば、図10A乃至図10Cには、ガラス組立体20のP4表面に取り付けられた光学センサ48の実施例の概略的な断面図を示す。図10Aを参照すると、いくつかの例では、光学センサ境界44は、ガラス組立体20のP2表面のみに形成されてもよい。図10Bを参照すると、いくつかの例では、光学センサ境界44は、ガラス組立体20のP3表面のみに形成される。図10Cを参照すると、いくつかの例では、光学センサ境界44は、ガラス組立体20のP2表面およびP3表面の両方に形成される。図10A乃至図10Cには、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面および第2の湾曲ガラス基板24のP3表面の少なくとも1つに形成された光学センサ境界44が示されているが、光学センサ境界44は、合わせガラス組立体20のP1表面、P2表面、P3表面、またはP4表面の1つ以上、または第1の湾曲ガラス基板22のみを有するガラス組立体20のP1表面およびP2表面の少なくとも1つに形成されてもよいことが理解される。
【0055】
前述のように、セラミックフリットのような従来の物質を使用して形成された不透明境界特徴部は、大きな光学歪みを示す傾向があり、歪みが光学センサの視野内にある場合、光学センサの性特性に特に悪影響が生じる。本開示の文脈において、方法100により形成される不透明境界特徴部OBFを有するガラス組立体20は、セラミックフリットを含まず、従って、印刷後の焼成に晒されず、これにより、ガラス組立体20の光学歪みが実質的に低減される。従って、ガラス組立体20の光学歪みは、十分に低く、カメラまたはLIDARセンサのような光学センサ48、ならびにヘッドアップディスプレイのような光学投影デバイスの最適特性に要求される仕様を満たす。例えば、方法100に従って形成されたガラス組立体20は、検知窓46内で100ミリディオプター未満の光学歪みを呈し得る。
【0056】
しかしながら、他の例では、不透明境界特徴部OBFは、焼成されるセラミックフリットを有するエナメル質で一部が形成されてもよい。図11Cを参照すると、ガラス組立体20は、不透明境界特徴部OBFの第1の部分OBF’を有し、該部分は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の少なくとも1つの表面に、セラミックフリットを有するエナメルを設置し、その後焼成することにより、形成されてもよい。ガラス組立体20は、さらに、有機インクOIをデジタル的に設置して硬化させることにより形成された、第2の部分OBF”を有してもよい。示された例では、第1の部分OBF’は、ガラス組立体20の周端部38全体を取り囲む帯部36を画定し、第2の部分OBF”は、ガラス組立体20の周端部38に隣接して配置された光学センサ境界44を画定し、検知窓46が定められる。有意には、光学センサ境界44は、方法100に従って形成されるため、検知窓46内のガラス組立体20の光学歪みは、十分に低く、光学センサ48の最適な特性に必要な仕様が満たされる。より具体的には、この実施例では、検知窓46は、第1の部分OBF’から離間されるため、ガラス組立体20を焼成して第1の部分OBF’を形成することにより生じる光学歪みは、検知窓46に整列されたガラス組立体20の部分に影響を及ぼさない。従って、本実施例のガラス組立体20は、検知窓46内で100ミリディオプター未満の光学歪みを示してもよい。光学歪みが重要とはならないガラス組立体20の一部に、セラミックフリットを有するエナメル質から第1の部分OBF’を形成し、光学歪みが重要となるガラス組立体20の一部に、有機インクOIから第2の部分OBF”を形成することにより、方法100に従って不透明境界特徴部OBF全体を形成する場合に比べて、ガラス組立体20を形成するプロセス時間を短縮することができる。第1の部分OBF’および第2の部分OBF”は、不透明境界特徴部OBFの任意の個々の部分であってもよい。
【0057】
図11Aおよび11Bの各々には、方法100に従って形成されたガラス組立体20の一例の正面図を示す。これらの実施例では、ガラス組立体20の不透明境界特徴部OBFは、ガラス組立体20の周端部38の全周囲に延在する帯部36と、帯部36の上内側端部50から下方に延在する光センサ境界44とを有し、光センサ48の視野FOVが取り囲まれ、感知窓46が画定される。しかしながら、帯部36および光学センサ境界44は、全ての構成において、互いに隣接していなくてもよいことが考慮される。例えば、光センサ境界44は、帯部36から離間されてもよい。また他の構成では、ガラス組立体20は、帯部36を画定する不透明境界特徴部OBFのみを含んでもよい。さらに別の構成では、ガラス組立体20は、光学センサ境界44を画定する不透明境界特徴部OBFのみを含んでもよい。
【0058】
図10A乃至図10C、および図11Aに示す例を参照すると、光学センサ境界44は、有機インクOIを含まず、従って、可視光に対して透明である検知窓46を画定する。特に、光学センサ48がカメラである場合、検出窓46は、可視光に対して透明であることが重要であり、この場合、カメラは、検出窓46を通して「見る」ことが可能となる。しかし、光学センサ48がLIDARセンサである場合、検知窓46は、赤外線に対して透明である。従って、幾つかの構成では、有機インクOIは、赤外光に対しては透明であるが可視光に対しては不透明となるように選択されてもよい。従って、図11Bを参照すると、いくつかの構成では、光学センサ境界44は、検知窓46が可視光に対して不透明となるように、有機インクOIが堆積される検知窓46を含んでもよい。ただし、この例では、有機インクOIは、赤外線に対して透明であるため、LIDARセンサは、検知窓46を通して依然として「見る」ことができる。
【0059】
また、いくつかの構成では、方法100は、さらに、インクIをデジタル的に設置して、ガラス組立体20のP1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の少なくとも1つに、情報含有グラフィック52を形成するステップを有する。図12Aおよび12Bには、情報含有グラフィック52の配置のいくつかの例を概略的に示す。例えば、図12Aには、ガラス組立体20上の情報含有グラフィック52の想定される配置を示す。情報含有グラフィック52は、不透明境界特徴部OBFから離間される。情報含有グラフィック52の想定される配置の各々は、薄い線で表されている。他方、図12Bには、情報含有グラフィック52の想定される配置を示すが、情報含有グラフィック52は、不透明境界特徴部OBFと整列される。情報含有グラフィック52の想定される配置の各々は、薄い線で表される。情報含有グラフィック52は、ガラス組立体20の任意の好適な配置または表面に配置され、所望の情報が伝達されてもよいことが考慮される。また、情報含有グラフィック52用のインクIは、有機インクOIと同じであっても、異なっていてもよいことが考慮される。
【0060】
図13A乃至図13Cには、情報含有グラフィック52の非限定的な例を示す。例えば、図13Aには、バーコード54としての情報含有グラフィック52を示す。バーコード54は、従来のバーコードまたはQRコード(登録商標)であってもよいことが考慮される。別の例において、図13Bには、シリアル番号56としての情報含有グラフィック52を示す。シリアル番号56は、ガラス組立体のバッチに関連するシリアル番号、または個々のシリアル番号、またはビヒクルのVIN番号に関するシリアル番号であってもよいことが考慮される。図13Cには、グラフィック58としての情報含有グラフィック52を示す。グラフィック58は、装飾目的または情報目的のため、任意の所望のデザインとして形成されてもよいことが考慮される。特に、図13Aおよび13Bには、不透明境界特徴部から離間された情報含有グラフィック52の例を示すが、図13Cには、不透明境界特徴部OBFと整列された情報含有グラフィック52の例を示す。
【0061】
他の例では、インクIは、導電性インクCIであってもよい。一例では、導電性インクCIは、光硬化性導電性インクCIである。前述の光硬化性インクIと同様、光硬化性導電性インクCIは、光開始剤、有機モノマー、および有機モノマー中に分散された導電性粒子(例えば、銀ナノ粒子など)を含んでもよい。別の実施例では、導電性インクCIは、熱硬化性有機モノマー、および有機モノマー中に分散された導電性粒子(例えば、銀ナノ粒子など)を含んでもよい。さらに別の例では、導電性インクCIは、熱硬化して導電性特徴部CFを形成する、金属-有機錯体を有する。金属-有機錯体は、銀-有機化合物、または任意の他の好適な金属-有機錯体を含んでもよく、後者は、有機成分と導電性金属成分、例えば、銅-有機化合物などを有する。この実施例では、ステップS2において、金属-有機錯体を有する導電性インクCIが、湾曲ガラス基板22の表面にデジタル的に設置された後、ステップS3は、金属-有機錯体の有機成分を揮発させるのに十分な温度に、導電性インクCIを暴露するステップを有し、その結果、金属粒子(例えば、銀粒子)のみが湾曲ガラス基板22の表面に残留し、導電性特徴部CFが形成される。特に、金属-有機錯体の有機成分を揮発させる十分な温度は、性能向上特徴部を形成するために使用される従来の温度よりも有意に低い。
【0062】
これらの実施例では、方法100のステップS2は、マスクを使用せずに、第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24の少なくとも1つの表面に、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップを有する。導電性インクCIは、前述のデジタル設置プロセスに従って、デジタル的に設置されてもよい。また、これらの実施例では、方法100のステップS3は、導電性インクCIを硬化させて、第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24の少なくとも1つの表面に、性能向上特徴部PEFを形成するステップを有する。導電性インクCIは、前述の硬化プロセスに従って硬化されてもよい。
【0063】
インクIが導電性インクCIである例では、性能向上特徴部PEFは、少なくとも1つの導電性配線27を有する導電性特徴部CFとして形成されてもよい。有意には、導電性インクCIをデジタル的に設置することにより、導電性特徴部CFの少なくとも1つの配線27は、従来のアナログ印刷プロセスと比べて十分に短い幅Wを有することができる。例えば、100ドット/インチの従来のスクリーン印刷プロセスに基づき、アナログ印刷プロセスで理論的に印刷できる配線の最小幅は、約254マイクロメートルである。一方、例えば、400ドット/インチの解像度で導電性インクCIをデジタル的に設置した場合、64マイクロメートルという短い幅Wで、導電性特徴部CFの少なくとも1つの配線27を印刷することができる。別の例として、2500ドット/インチの解像度で導電性インクCIをデジタル的に設置した場合、10マイクロメートルの短い幅Wで、少なくとも1つの配線27を印刷することができる。
【0064】
次に、図14乃至図21Bを参照すると、少なくとも1つの導電性配線27を有する導電性特徴部CFを有するガラス組立体20の各種例が示されている。例えば、図14および図18は、方法100に従って形成された、少なくとも1つの導電性配線27を有する導電性特徴部CFを有するリアガラス組立体20を有する車両18を示す。図16および図20は、方法100に従って形成された、少なくとも1つの導電性配線27を有する導電性特徴部CFを有するフロントガラス組立体20を有する車両18を示す。
【0065】
図14乃至図17Bを参照すると、いくつかの例では、少なくとも1つの導電性配線27を有する導電性特徴部CFは、加熱素子60を定め、該加熱素子60は、ガラス組立体20の少なくとも一部に熱を提供(すなわち、霜取りおよび/またはデフロスト)するように構成される。加熱素子60は、ガラス組立体20の少なくとも一部に熱を提供(すなわち、霜取りおよび/またはデフロスト)するように構成された回路を形成する、任意の好適な幾何学形状を有するように、方法100に従って形成されてもよい。加熱素子60の好適な幾何学的形状は、これに限られるものではないが、蛇行形状、グリッド形状、ファン形状、および螺旋的形状を有する。少なくとも1つの導電性配線27は、線幅W(図15Aに示される)を有する。加熱素子60を形成する任意の適当なライン幅Wが考えられる。少なくとも1つの導電性線27の線幅W、および導電性インクCIの導電性粒子充填は、加熱素子60に所望の抵抗率が達成されるように調整され得ることが理解される。例えば、加熱素子60は、10μΩ・cm未満の抵抗率を有してもよい。好ましくは、加熱素子60は、5μΩ・cm未満の抵抗率を有してもよい。
【0066】
図14には、リアガラス組立体20を有する車両18の一例を示す。リアガラス組立体20は、蛇行形状を有する加熱素子60を定める少なくとも1つの導電性配線27を有する導電性特徴部CFを有する。この例では、図14の加熱素子60は、導電性配線27により画定される。導電性配線27は、導電性配線27は、湾曲ガラス基板22の表面にわたって前後に方向転換し、ガラス組立体20の少なくとも一部に熱を提供(すなわち、霜取りおよび/またはデフロスト)するように構成された回路が形成される。図15A乃至図15Bには、図14のガラス組立体20の概略的な断面図の各種例を示す。より具体的には、図15Aには、湾曲ガラス基板22のP1表面に形成された導電性配線27を有する導電性特徴部CFを示す。図15Bには、湾曲ガラス基板22のP2表面に形成された導電性配線27を有する導電性特徴部CFを示す。また、いくつかの例では、湾曲ガラス基板22のP1表面およびP2表面の両方に、少なくとも1つの導電性配線27を有する導電性特徴部CFが形成されてもよいことを理解する必要がある。
【0067】
図16には、フロントガラス組立体20を有する車両18の別の例を示す。フロントガラス組立体20は、グリッド形状を有する加熱素子60を定める少なくとも1つの導電性配線27を含む導電性特徴部CFを有する。この例では、加熱素子60は、複数の導電性配線27により定められ、該複数の導電性配線27は、交差して、ガラス組立体20の少なくとも一部に熱を提供(すなわち、霜取りおよび/またはデフロスト)するように構成された回路を形成する。図17Aおよび図17Bには、図16のガラス組立体20の概略的な断面図の各種例を示す。特に、この例では、フロントガラス組立体20は、合わせガラス組立体20である。従って、ガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22、第2の湾曲ガラス基板24、およびポリマー中間層28を有する。
【0068】
前述のように、いくつかの例では、P2表面およびP3表面の少なくとも1つに性能向上特徴部PEFを形成して、性能向上特徴部PEFを周囲環境から保護することが有意である。従って、図17Aの例では、導電特徴部CFは、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に形成される。図17Bの例では、導電性特徴部CFは、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面に形成される。図17Aおよび図17Bでは、P2表面およびP3表面に形成された導電性特徴部CFが示されているが、導電性特徴部CFは、ガラス組立体20のP1表面および/またはP4表面に形成されてもよいことを理解する必要がある。
【0069】
図16乃至図17Bを引き続き参照すると、いくつかの例において、ガラス組立体20は、
さらに、ガラス組立体20に取り付けられた光学センサ48を有してもよい。前述のように、光学センサ48は、視野FOV(すなわち、光学センサ48が静止時に「見る」ことができる限定された角度範囲」)を有する。特に、霜および他の凝縮が視野FOVを不明瞭にし、その結果、光学センサ48の特性が妨げられる可能性がある。従って、いくつかの例では、ガラス組立体20は、少なくとも1つの導電性配線27を有する別の導電性特徴部CFを有し、これは、光学センサ48の視野FOVに整列された別の加熱素子60を画定し、光学センサ48の視野FOVに対応するガラス組立体20の少なくとも一部を加熱(すなわち、霜取りおよび/またはデフロスト)する。前述のように、従来の導電性物質を用いて形成された導電性特徴部は、ガラス組立体の大きな光学歪みを示す傾向があり、歪みが光学センサの視野FOV内にある場合、光学センサの特性に大きな悪影響がある。しかしながら、本開示では、導電性特徴部CF(例えば、加熱素子60)は、印刷後の焼成に晒されず、これにより、ガラス組立体20の光学歪みが実質的に低減される。従って、有意には、方法100に従って形成されたガラス組立体20により得られる光学歪みは、十分に低く、カメラまたはLIDARセンサのような光学センサ48、ならびにヘッドアップディスプレイのような光学投影デバイスの最適な性能に対する要求仕様が満たされる。例えば、方法100に従って形成されたガラス組立体20は、光学センサの視野FOV内で100ミリディオプター未満の光学歪みを示し得る。
【0070】
光学センサ48の視野FOVと整列された加熱素子60の文脈において、加熱素子60を画定する少なくとも1つの導電性配線27は、光学センサ48の特性に影響が生じるほど、光学センサ48を視覚的に遮蔽しないことが望ましい。特に、加熱素子60が光学センサ48の視野FOVと整列されている場合、配線27が光学センサ48の視界に「ブラインドスポット」を生じさせないような十分に小さな線幅Wを有するように、導電性特徴部CFの配線27を形成するとともに、配線27により生じる光センサ48に入射する光の回折を最小限に抑制することが有意である。前述のように、ステップS2のデジタル的設置プロセスの高い解像度では、従来のアナログ印刷プロセスで可能となる幅よりも十分に小さな線幅Wで、導電性特徴部CFの少なくとも1つの導電性配線27を形成することが可能になる。従って、一実施形態では、光学センサ48がカメラである場合、導電性特徴部CFの少なくとも1つの導電性配線27は、100マイクロメートル未満の線幅Wを有するように形成されてもよい。別の例では、光学センサがLIDARセンサである場合、導電性特徴部CFの少なくとも1つの導電性配線27は、65マイクロメートル未満のより小さな線幅Wを有するように形成されてもよい。
【0071】
再度図16を参照すると、方法100に従って形成された少なくとも1つの配線27を有する導電性特徴部CFの別の例は、バスバー61である。バスバー61は、ガラス組立体20の別の導電性特徴部CF(加熱素子60など)にエネルギーを伝達するように構成されてもよい。例えば、ガラス組立体20は、加熱素子60を有するように方法100に従って形成されてもよい。加熱素子60に電力を供給するため、方法100に従って、バスバー61が形成され、加熱素子60に電力を供給するため、加熱素子60と電気的に接続される。任意の好適な幾何学的形状(例えば、線幅W)、および他の導電性特徴部CFに対するバスバー61の配置が考慮される。また、加熱素子60を越えて他の導電性特徴部CFに電力を供給するバスバー61が考えられる。
【0072】
図18乃至図21Bを参照すると、他の例では、少なくとも1つの導電性配線27を有する導電性特徴部CFは、無線信号を送信および/または受信するように構成されたアンテナ62を画定する。いくつかの例では、アンテナ62は、540キロヘルツから6ギガヘルツの周波数を有する無線信号を送信および/または受信するように構成されてもよい。従って、アンテナ62は、これに限られるものではないが、振幅変調(AM)、周波数変調(FM)、デジタルオーディオ放送(DAB)、リモートキーレスエントリ(RKE)、デジタルテレビジョン(DTV)、全地球測位システム(GPS)、2Gセルラー、3Gセルラー、4Gセルラー、および一部の5Gセルラーの周波数(より具体的には、6ギガヘルツよりも低い、低帯域および中帯域の5Gセルラー周波数)を含む、任意の数の標準的な周波数内で、無線信号を送信および/または受信するように構成されてもよい。
【0073】
アンテナ62は、540キロヘルツから6ギガヘルツの周波数を有する無線信号を送信および/または受信する、任意の好適な構造を有するように、方法100に従って形成されてもよい。アンテナ62に適したアンテナ構造の例には、これに限られるものではないが、平面モノポールアンテナ、平面ダイポールアンテナ、パッチアンテナ、スロットアンテナ、ビバルディアンテナ、平面円錐アンテナ、平面球状アンテナ、平面ホーンアンテナ等のような、平面アンテナの各種構成が含まれる。導電性特徴部の少なくとも1つの導電性配線27は、アンテナ62の一部または全体を画定してもよいことを理解する必要がある。例えば、少なくとも1つの導電性配線27は、供給配線FL、放射素子RE、および接地面GPの1つ以上を画定してもよい。アンテナ62の一部が非線形構造(例えば、パッチアンテナ)を有する例では、複数の導電性配線27をデジタル式に設置し、相互に隣接して硬化させ、非線形構造を有するアンテナ62の一部が画定されてもよい。
【0074】
方法100に従ってアンテナ62を形成することは、様々な態様において有意である。一態様では、前述のように、ステップS2のデジタル設置プロセスの高い解像度により、従来のアナログ印刷プロセスよりも十分に厳しい公差で、導電性インクCIを堆積させることができる。例えば、スクリーン印刷のような従来のアナログ印刷プロセスを使用した場合、導電性特徴部は、+/-1.5ミリメートルの許容誤差内でしか反復可能に配置し得ない。しかしながら、ステップS2のデジタル設置プロセスの精密な制御により、アンテナ62を画定する少なくとも1つの導電性配線27を有する導電性特徴部CFは、+/-0.1ミリメートルの許容誤差未満で、繰り返し可能に配置され得る。
【0075】
別の態様では、前述のように、ステップS2のデジタル設置プロセスの高い解像度により、導電性インクCIを堆積させて、従来のアナログ印刷プロセスよりも精細な特徴部が形成されてもよい。例えば、スクリーン印刷のような従来のアナログスクリーン印刷プロセスを用いた場合、導電性特徴部は、113マイクロメートルの幅Wでしか堆積させることはできない。しかしながら、ステップS2のデジタル設置プロセスの向上した精度および精細さにより、本方法100に従って形成されたアンテナ62は、従来のアナログ印刷プロセスを用いて形成されるアンテナに比べて、より精細な特徴部を得ることができる。例えば、アンテナ62を画定する少なくとも1つの導電性配線27を有する導電性特徴部CFは、100マイクロメートル未満の、または10マイクロメートルまで低減された幅Wを有するように形成され得る。また、より精細な特徴部のため、本開示のアンテナ62は、従来のアナログ印刷プロセスを用いて形成されたアンテナよりも高い周波数および/または高い帯域幅で、無線信号を送信および/または受信することができる。一例として、本開示のアンテナ62は、アンテナ62から延在する小さな「調整スタブ」機能を有し、アンテナ62の帯域幅が改善されてもよい。
【0076】
図18には、方法100に従って形成された、導電性特徴部CFを有するリアガラス組立体20を有する車両18の一例を示す。導電性特徴部CFは、無線信号を送信および/または受信するように構成されたアンテナ62を画定する少なくとも1つの導電性配線27を有する。この例では、アンテナ62は、放射素子REに結合された給電線FLと、該給電線FLおよび放射素子REに隣接して配置された接地面GPと、を有する。図18には、アンテナ62の1つの潜在的な構造が示されているが、任意の好適なアンテナ構造が考えられることを理解する必要がある。図19A乃至図19Cには、図18のガラス組立体20の概略的な断面図の各種例を示す。図19Aの例では、アンテナ62は、湾曲ガラス基板22のP1表面に形成され、給電線FL、放射素子REおよび接地面GPは、全てがP1表面に配置される。図19Bの例では、アンテナ62は、湾曲ガラス基板22のP2表面に形成され、給電線FL、放射素子REおよび接地面GPは、全てがP2表面に配置される。他の例では、アンテナ62は、多重平面アンテナとして形成されてもよい。例えば、図19Cを参照すると、ガラス組立体20は、湾曲ガラス基板22のP1表面上のアンテナ62の第1の部分64(この例では、給電線FLおよび放射素子RE)と、湾曲ガラス基板22のP2表面上のアンテナの第2の部分66(この例では、接地面GP)と、を含んでもよい。任意の好適な多重平面アンテナの構成が考えられる。
【0077】
ガラス組立体20が合わせガラス組立体20として形成される場合、アンテナ62を画定する少なくとも1つの導電性配線27を有する導電性特徴部CFは、P1表面、P2表面、P3表面、P4表面の1つに形成される第1のアンテナ部分64と、P1表面、P2表面、P3表面、P4表面の別のものに形成される第2のアンテナ部分66と、を含んでもよい。有意には、方法100のステップS2に従って導電性インクCIをデジタル的に設置することにより提供されるより厳しい公差は、第1のアンテナ部分66および第2のアンテナ部分66の配列を改善でき、これにより、第1のアンテナ部分64と第2のアンテナ部分66との間の電気通信が改善され、従って、アンテナ62の性能が向上する。
【0078】
また前述のように、合わせガラス組立体20に関し、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面および第2の湾曲ガラス基板24のP3表面の少なくとも1つに、導電性インクCIをデジタル的に設置して、ガラス組立体20の積層の際に、導電性特徴部CFがガラス組立体20内に挟まれるようにすることが有意である。従って、いくつかの例では、第1のアンテナ部分64は、P2表面およびP3表面の一つに形成され、第2のアンテナ部分66は、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の一つに形成され、第1のアンテナ部分64および第2のアンテナ部分66の少なくとも一つは、ガラス組立体20内に挟まれる。いくつかの例では、第2のアンテナ部分66は、第1のアンテナ部分64とは異なる表面に形成される。しかしながら、他の実施例では、第2のアンテナ部分66は、第1のアンテナ部分64と同じ表面に形成されることが考えられる。図19Cおよび図21A乃至図21Bには、第1のアンテナ部分64とは異なる表面に形成された第2のアンテナ部分66の例を示す。
【0079】
図20には、方法100に従って形成された、導電性特徴部CFを有するフロントガラス組立体20を有する車両18を示す。導電性特徴部CFは、無線信号を送信および/または受信するように構成されたアンテナ62を画定する少なくとも1つの導電性配線27を有する。図18の例と同様に、図20のアンテナ62は、放射素子REに結合された給電線FLと、給電線FLおよび放射素子REに隣接して配置された接地面GPとを有する。図21A乃至図21Bには、図20のガラス組立体20の概略的な断面図の各種例を示す。図21Aの例では、ガラス組立体20は、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面に、アンテナ62の第1の部分64(この例では、給電線FLおよび放射素子RE)を有し、第2の湾曲ガラス基板24のP4表面に、アンテナ62の第2の部分66(この例では、接地面GP)を有する。図21Bの例では、ガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に、アンテナ62の第1の部分64(この例では、給電線FLおよび放射素子RE)を有し、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面およびP4表面の1つに、アンテナ62の第2の部分66(この例では、接地面GP)を有する(第2のアンテナ部分66のこれらの代替構成は、破線の概略線で示されている)。図21Aおよび図21Bには、接地面GPが車両18の内部により接近して配置される例示的な配置が示されているが、第1のアンテナ部分64および第2のアンテナ部分66は、独立に、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面のいずれかに形成され、好適なアンテナ62が形成されてもよいことを理解する必要がある。
【0080】
インクIが機能性インクFIである例では、性能向上特徴部PEFは、機能性コーティングFCとして形成されてもよい。機能性インクFIは、反射防止コーティング、IR透過コーティング、撥水性コーティング、撥油性コーティング、または親油性コーティングを有してもよい。機能性コーティングFCは、(検知窓46に整列するように)ガラス組立体の表面の少なくとも一部に形成され、またはガラス組立体20の表面全体に形成されてもよい。図24には、方法100に従って形成された、機能性コーティングFCを有するガラス組立体20を示す。図24の例では、機能性コーティングFCは、ガラス組立体20の全表面に形成されている。機能性コーティングFCは、P1表面、P2表面の少なくとも1つに形成され、合わせガラス組立体20の場合、P3表面およびP4表面の少なくとも1つに形成されてもよいことが考慮される。図24乃至図25Bには、機能性コーティングFCを含むガラス組立体20の各種例の断面図を示す。
【0081】
図25Aに示す例では、ガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、該第1の湾曲ガラス基板22のP1表面に形成された機能性コーティングFCと、第2の湾曲ガラス基板24と、P2表面とP3表面の間に配置されたポリマー中間層28とを有する。図25Bに示す例では、ガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、該第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に形成された機能性コーティングFCと、第2の湾曲ガラス基板24と、P2表面とP3表面の間に配置されたポリマー中間層28とを有する。図25Cに示す例では、ガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第2の湾曲ガラス基板24と、該第2の湾曲ガラス基板24のP3表面に形成された機能性コーティングFCと、P2表面とP3表面の間に配置されたポリマー中間層28とを有する。図25Dに示す例では、ガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第2の湾曲ガラス基板24と、該第2の湾曲ガラス基板24のP4表面に形成された機能性コーティングFCと、P2表面とP3表面の間に配置されたポリマー中間層28とを有する。図25A乃至図25Dには、合わせガラス組立体20のP1表面、P2表面、P3表面、P4表面に個々に形成された機能性コーティングFCが示されているが、合わせガラス組立体20のP1表面、P2表面、P3表面、P4表面の任意の組み合わせ、または第1の湾曲ガラス基板22のみを有するガラス組立体20のP1表面およびP2表面の少なくとも1つに、複数の機能性コーティングFCが形成されてもよいことが考慮される。
【0082】
前述の記載において、いくつかの実施形態について説明した。しかしながら、本願に記載の実施形態は、包括的であることを意図するものではなく、本発明を任意の特定の形態に限定するものではない。使用された用語は、限定の意味ではなく、説明用語の自然な性質を意図するものである。前述の示唆に照らして、多くの修正および変更が可能であり、本発明は、具体的に記載された方法以外の方法で実施されてもよい。
【0083】
前述の実施形態に対して、本願で既に記載された以外の各種追加の改変および変更を行うことができる。この開示は、説明のために提示されており、全ての実施形態の網羅的な説明として、あるいはこれらの実施形態に関して図示されまたは説明された特定の要素に、特許請求の範囲を限定するものと解釈してはならない。例えば、限定されるものではないが、記載された実施形態の任意の個々の要素は、実質的に同様の機能を提供しまたは好適な動作を提供する、別の要素と置換されてもよい。これには、例えば、当業者に現在知られているもののような、現在知られている代替要素、および、当業者が開発中に代替物として認識するような、将来開発される代替要素が含まれる。例えば、冠詞「a」、「an」、「the」または「said」を用いた単数形のクレーム要素への言及は、当該要素を単数形に限定するものと解してはならない。さらに、「include」、「includes」および「including」は、「comprise」、「comprises」および「comprising」という用語と同じ意味を有することが理解される。
【符号の説明】
【0084】
20 ガラス組立体
22 第1の湾曲ガラス基板
24 第2の湾曲ガラス基板
28 中間層
PEF 性能向上特徴部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18
図19A
図19B
図19C
図20
図21A
図21B
図22
図23A
図23B
図24
図25A
図25B
図25C
図25D