(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089240
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】運転制御方法及び運転制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/095 20120101AFI20240626BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20240626BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240626BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240626BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B60W30/095
B60W30/09
B60W60/00
G08G1/09 F
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204490
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠秀
(72)【発明者】
【氏名】吉松 祐香
(72)【発明者】
【氏名】明李 成博
(72)【発明者】
【氏名】玉越 千尋
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA32
3D241BA33
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
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3D241DB01Z
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3D241DC18Z
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3D241DC33Z
5H181AA01
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5H181CC14
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5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】交通流を妨げずに自車両が対向車の通過を待避できる運転制御方法及び運転制御装置を提供する。
【解決手段】運転制御装置100は、自車両1が対向車両2とすれ違って走行できない特定走行区間R0を特定し、自車両1と対向車両2との予測交差地点Pxが特定走行区間R0に位置する場合であって、特定走行区間R0に待避可能スペースSaが2つ以上検出され、かつ、後続車両3がいる場合は、最も後方に位置する第1待避可能スペースSa1以外の待避可能スペースSa2,Sa3を目標待避スペースSbとして設定し、自車両1が目標待避スペースSbに移動するように制御指令を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを用いて、自車両の自律運転を制御する運転制御方法であって、
前記プロセッサは、
前記自車両の前方に対向車両がいる場合に、前記自車両と前記対向車両とがすれ違うと予測される予測交差地点を算出し、
自車線内の走行可能領域を取得し、
前記走行可能領域の幅に基づいて、前記自車両が前記対向車両とすれ違って走行できない特定走行区間を特定し、前記予測交差地点が前記特定走行区間に位置するか否かを判定し、
前記予測交差地点が前記特定走行区間に位置する場合は、前記特定走行区間に前記自車両が前記対向車両の通過を待避可能な待避可能スペースが2つ以上検出されたか否かを判定し、
前記待避可能スペースが2つ以上検出された場合は、前記自車両の後方を走行する後続車両の有無を判定し、
前記後続車両がいる場合は、最も後方に位置する第1待避可能スペース以外の前記待避可能スペースを目標待避スペースとして設定し、
前記自車両が前記目標待避スペースに移動するように制御指令を出力する、運転制御方法。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記後続車両がいない場合は、前記第1待避可能スペースを前記目標待避スペースとして設定する、請求項1に記載の運転制御方法。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記自車両と前記後続車両との間の車間距離が、前記特定走行区間の後方の始点と前記第1待避可能スペースとの間の基準距離以上であるか否かを判定し、
前記車間距離が前記基準距離以上である場合は、前記第1待避可能スペースを前記目標待避スペースとして設定する、請求項1に記載の運転制御方法。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記後続車両の数(X)に1を加算した数が前記待避可能スペースの数以上である場合は、最も前方の前記待避可能スペースを前記目標待避スペースとして設定し、
前記後続車両の数(X)に1を加算した数が前記待避可能スペースの数よりも小さければ、後方から数えてX+1番目の前記待避可能スペースを前記目標待避スペースとして設定する、請求項1に記載の運転制御方法。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記自車両の後方を走行する他車両の有無を判定し、
前記自車両の後方を走行する前記他車両が存在する場合は、前記他車両の他車両速度を取得し、
前記自車両の現在位置と前記他車両との距離を前記他車両速度で除した他車両到達時間が所定の基準時間より短い場合に前記後続車両がいると判定する、請求項1に記載の運転制御方法。
【請求項6】
自車両の自律運転を制御する運転制御装置であって、
前記自車両の前方に対向車両がいる場合に、前記自車両と前記対向車両とがすれ違うと予測される予測交差地点を算出する予測交差地点算出部と、
自車線内の走行可能領域を取得する走行可能領域取得部と、
前記走行可能領域の幅に基づいて、前記自車両が前記対向車両とすれ違って走行できない特定走行区間を特定し、前記予測交差地点が前記特定走行区間に位置するか否かを判定するすれ違い可否判定部と、
前記予測交差地点が前記特定走行区間に位置する場合は、前記特定走行区間に前記自車両が前記対向車両の通過を待避可能な待避可能スペースが2つ以上検出されたか否かを判定する待避可能スペース検出部と、
前記待避可能スペースが2つ以上検出された場合は、前記自車両の後方を走行する後続車両の有無を判定する後続車両検出部と、
前記後続車両がいる場合は、最も後方に位置する第1待避可能スペース以外の前記待避可能スペースを目標待避スペースとして設定する目標待避スペース設定部と、
前記自車両が前記目標待避スペースに移動するように制御指令を出力する車両制御部とを備える、運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転制御方法及び運転制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両走行制御装置は、道幅や障害物の有無に基づいて自車両と対向車両とがすれ違うことが困難である地点があると判断した場合は、すれ違いが困難な地点の手前で自車両を停止させ、対向車両の通過を待避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両走行制御装置は、すれ違いが困難な地点の手前の所定位置で自車両を停止させるため、後続車両がある場合はスムーズな交通流を妨げる可能性がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、交通流を妨げずに自車両が対向車の通過を待避できる運転制御方法及び運転制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、予測交差地点において自車両が対向車両とすれ違って走行できないと判定した場合は、自車両の後方を走行する後続車両の有無を判定し、後続車両がいる場合であって、自車両の現在位置と予測交差地点との間において複数の待避可能スペースがある場合は、最も後方の待避可能スペース以外の待避可能スペースを目標待避スペースとして設定することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、後続車両が最も後方の待避可能スペースに移動できるように自車両の目標待避スペースを設定するため、交通流を妨げずに自車両が対向車の通過を待避できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る運転制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】3つの待避可能スペースがあり、かつ、2台の後続車両がいる場合において、
図1に示す運転制御装置が設定する目標待避スペースの例を示す図である。
【
図3】3つの待避可能スペースがあり、かつ、1台の後続車両がいる場合において、
図1に示す運転制御装置が設定する目標待避スペースの例を示す図である。
【
図4】3つの待避可能スペースがあり、かつ、後続車両がいない場合において、
図1に示す運転制御装置が設定する目標待避スペースの例を示す図である。
【
図5】
図1に示す運転制御装置によって実行される運転制御方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態に係る運転制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】3つの待避可能スペースがあり、かつ、1台の後続車両がいる場合において、
図6に示す運転制御装置が設定する目標待避スペースの例を示す図である。
【
図8】
図6に示す運転制御装置によって実行される運転制御方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
以下、本発明の第1実施形態を
図1~5に基づいて説明する。
なお、以下の説明において、「前方」とは自車両1の進行方向における前方をいう。換言すれば、「前方」とは自車両1の進行方向の下流側の方向をいう。また、「後方」とは自車両1の進行方向における後方をいう。換言すれば、「後方」とは自車両1の進行方向の上流側の方向をいう。
図1は、自車両1及び自車両1の自律運転を制御する運転制御装置100の構成を示すブロック図である。自車両1は、運転制御装置100、検出装置101、自車両位置取得部102、地図データベース103及び駆動制御装置104を備える。また、運転制御装置100はプロセッサ10を有する。運転制御装置100のプロセッサ10は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することで、自律走行制御機能により、自車両1の車速及び操舵を自律制御する。また、運転制御装置100は、路上カメラ等のインフラカメラ5と通信を行い、インフラカメラ5によって撮像された画像情報を取得する。
【0010】
検出装置101は、自車両1の周囲を撮像する車載カメラ又は自車両の周囲の他車両や障害物を検出するレーダのいずれか一方又は両方を有する。検出装置101の検出結果は、所定時間間隔で運転制御装置100に出力される。
【0011】
自車両位置取得部102は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成されている。自車両位置取得部102は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、自車両1の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した自車両1の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、自車両1の現在位置を検出する。自車両位置取得部102により検出された自車両1の位置情報は、所定時間間隔で運転制御装置100に出力される。
【0012】
地図データベース103は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む三次元高精度地図情報を格納し、運転制御装置100からアクセス可能なように構成されたメモリである。地図データベース103には、高精度のデジタル地図情報(高精度地図、ダイナミックマップ)が格納されている。運転制御装置100は、地図データベース103の情報に基づいて、自車両1の走行ルートを決定する。
【0013】
駆動制御装置104は、運転制御装置100の制御指令に基づいて、自車両1の運転を制御する。たとえば、駆動制御装置104は、自律速度制御機能により、加減速度および車速を調整するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と走行用モータとのトルク配分も含む)及びブレーキ動作を制御する。また、駆動制御装置104は、自律操舵制御機能により、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行する。
【0014】
次に、運転制御装置100のプロセッサ10の構成について、
図1~4を用いて、詳細に説明する。なお、
図2~4の例において、自車両1は自車線T1を走行しており、対向車両2は対向車線T2を走行している。
プロセッサ10は、対向車両検出部11、予測交差地点算出部12、走行可能領域取得部13、すれ違い可否判定部14、待避可能スペース検出部15、後続車両検出部16、目標待避スペース設定部17及び車両制御部18を有する。
【0015】
対向車両検出部11は、インフラカメラ5及び/又は検出装置101から取得した情報に基づいて、自車両1の前方において対向車線T2を走行する対向車両2の有無を判定する(
図2~4参照)。なお、対向車両検出部11は、自車両1の前方において対向車線T2を走行する他車両のうち、自車両1からの距離が所定距離以下の車両を対向車両2として検出してもよい。また、対向車両検出部11は、インフラカメラ5及び/又は検出装置101から取得した情報に基づいて対向車両2の対向車両速度V2を取得する。
【0016】
予測交差地点算出部12は、自車両1と対向車両2とがすれ違うと予測される予測交差地点Pxを算出する(
図2~4参照)。具体的には、予測交差地点算出部12は、自車両1と対向車両2とがそれぞれの現在位置から制限速度で走行したときに自車両1と対向車両2とが互いに交差する地点を予測交差地点Pxとして算出する。また、例えば、予測交差地点算出部12は、制限速度ではなく、所定時間内の自車両1及び/又は対向車両2の車速及び車速の変動を用いて予測交差地点Pxを算出してもよい。なお、
図2~4に示す例では、プロセッサ10が自車両1を駐車車列Q1の手前の位置(一時停止位置P1)で停止させた後、予測交差地点算出部12が予測交差地点Pxを算出する。また、これに限定されず、予測交差地点算出部12は、自車両1の走行中に予測交差地点Pxを算出してもよい。
【0017】
走行可能領域取得部13は、自車線内の走行可能領域Aを取得する。走行可能領域Aは、自車両1が障害物等に阻まれずに走行できる領域である。例えば、
図2~4に示すように、自車線T1内において自車両1が路上駐車の駐車車列を避けて走行できる領域が走行可能領域Aである。
【0018】
すれ違い可否判定部14は、走行可能領域Aの幅Dに基づいて、自車両1が対向車両2とすれ違って走行できない特定走行区間R0を特定し、予測交差地点Pxが特定走行区間R0に位置するか否かを判定する。換言すれば、すれ違い可否判定部14は、予測交差地点Pxで自車両1が対向車両2とすれ違って走行できるか否かを判定する。具体的には、すれ違い可否判定部14は、走行可能領域Aの幅Dが所定の基準幅D0以下であるか否かを判定し、走行可能領域Aの幅Dが所定の基準幅D0以下である区間を特定走行区間R0と特定する。そして、すれ違い可否判定部14は、予測交差地点Pxが特定走行区間R0に位置する場合は、予測交差地点Pxで自車両1が対向車両2とすれ違って走行できないと判定する。すなわち、すれ違い可否判定部14は、予測交差地点Pxにおける走行可能領域Aの幅Dが所定の基準幅D0以下である場合に、予測交差地点Pxで自車両1が対向車両2とすれ違って走行できないと判定する。なお、「自車両1が対向車両2とすれ違って走行できない」とは、自車両1が予測交差地点Pxを走行する際に自車線T1から対向車線T2にはみ出して走行せざるを得ない状況をいう。また、基準幅D0は自車両1の車幅に応じて設定する。
【0019】
待避可能スペース検出部15は、インフラカメラ5及び/又は検出装置101から取得した情報に基づいて、待避可能スペースSa(Sa1,Sa2,Sa3)が検出されたか否かを判定する。待避可能スペースSaとは、走行可能領域Aの始点P0と予測交差地点Pxとの間において、自車両1が自車線T1内に停止して対向車両2の通過を待避することが可能なスペースである。待避可能スペース検出部15は、自車両1の車幅、車長、自車線T1の幅等に基づいて、待避可能スペースSaを検出する。
図2~4に示す例では、待避可能スペースSaは、駐車車列における駐車車両同士の空きスペースである。また、待避可能スペース検出部15は、待避可能スペースSaの数を取得し、待避可能スペースSaが2つ以上存在するか否かを判定する。
【0020】
また、後続車両検出部16は、インフラカメラ5及び/又は検出装置101から取得した情報に基づいて、自車両1の後方を走行する後続車両3の有無を判定する。具体的には、後続車両検出部16は、自車両1の後方を走行する他車両の有無を判定し、他車両が存在する場合は、他車両の他車両速度を取得する。そして、後続車両検出部16は、自車両1と他車両との車間距離を他車両速度で除した他車両到達時間を算出し、他車両到達時間が所定の基準時間以下である場合に、後続車両3がいると判定する。他車両到達時間とは、他車両が自車両1の現在位置に到達するまでにかかると予測される時間である。また、後続車両検出部16は、自車両1の後方を走行する他車両と自車両1との車間距離が所定の基準距離(例えば、100m)以下である場合に、後続車両3がいると判定してもよい。また、後続車両検出部16は、後続車両3の数を取得する。
【0021】
目標待避スペース設定部17は、
図2及び
図3に示すように、待避可能スペースSaが2つ以上検出され、かつ、後続車両3がいる場合は、最も後方に位置する第1待避可能スペースSa1以外の待避可能スペースSa2,Sa3を目標待避スペースSbとして設定する。
【0022】
より詳細には、目標待避スペース設定部17は、
図2に示すように、後続車両3の数X(X=2)に1を加算した数Y(Y=3)が待避可能スペースSa1,Sa2,Sa3の数Z(Z=3)以上である場合は、最も前方の待避可能スペースSa3を目標待避スペースSbとして設定する。なお、後続車両3a,3bの数Xに1を加算した数Yは、自車線T1を走行する車両(自車両1及び後続車両3a,3b)の台数である。目標待避スペース設定部17が最も前方の待避可能スペースSa3を目標待避スペースSbとして設定することにより、後続車両3a,3bは各々、待避可能スペースSa1,Sa2に移動して対向車両2の通過を待避することができる。なお、後続車両3の数Xが3台以上である場合も、なるべく多くの後続車両3が待避可能スペースSaに移動できるように、目標待避スペース設定部17は最も前方の待避可能スペースSa3を目標待避スペースSbとして設定する。
【0023】
一方、目標待避スペース設定部17は、
図3に示すように、後続車両3の数X(X=1)に1を加算した数Y(Y=2)が待避可能スペースSa1,Sa2,Sa3の数Z(Z=3)より小さい場合は、後方から数えてX+1番目(
図3では、2番目)の待避可能スペースSa2を目標待避スペースSbとして設定する。目標待避スペース設定部17が後方から数えてX+1番目(2番目)の待避可能スペースSa2を目標待避スペースSbとして設定することにより、後続車両3は第1待避可能スペースSa1に移動して対向車両2の通過を待避することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、目標待避スペース設定部17は、後続車両3の数に応じて目標待避スペースSbを設定しているが、これに限定されない。例えば、目標待避スペース設定部17は、後続車両3の数に関わらず、後続車両3がいる場合は常に最も前方の待避可能スペースSa3、又は、後方から数えて2番目の待避可能スペースSa2を目標待避スペースSbに設定してもよい。
【0025】
また、目標待避スペース設定部17は、
図4に示すように、後続車両がいない場合は、第1待避可能スペースSa1を目標待避スペースSbとして設定する。
【0026】
車両制御部18は、目標待避スペース設定部17が設定した目標待避スペースSbに自車両1が移動するように制御指令を駆動制御装置104に出力する。なお、
図2~4に示すように、自車両1が駐車車列の後ろの一時停止位置P1(特定走行区間R0の後方の始点P0の手前の位置)に停止している場合は、車両制御部18は、自車両1が目標待避スペースSbに移動するように、自車両1を再発進させる。一方、待避可能スペースSaが検出されず、目標待避スペースSbが設定されない場合は、自車両1は一時停止位置P1で停止した状態で対向車両2の通過を待機する。
【0027】
次に、運転制御装置100が実行する運転制御方法の手順について、
図5に示すフローチャートを用いて説明する。
図5は、運転制御装置100が目標待避スペースSbを設定するための手順を示す。
なお、本実施形態においては、自車両1の前方に駐車車両等の障害物が存在し、自車両1の走行ルート計画において非優先区間を走行する必要がある場合(片側一車線の道路において、中央線をまたいで自車両1が対向車線T2にはみ出す可能性がある場合)に、プロセッサ10は、まず自車両1の自律走行を中断する判断を行う。そして、プロセッサ10は、自車両1の減速制御を作動させ、自車両1が障害物に対して所定の距離を取って停止するように、自車両1を一時停止位置P1で停止させる(
図2~4参照)。すなわち、本実施形態においては、プロセッサ10が自律走行中断判断を行い、自車両1を一時停止位置P1で停止させた後に
図5のステップS1~S12の制御を実行するが、これに限定されず、プロセッサ10は自車両1を停止させずに(自律走行を中断せずに)ステップS1~S12の制御を実行してもよい。
【0028】
図5に示すように、ステップS1において、プロセッサ10の対向車両検出部11は、自車両1の前方を走行する対向車両2の有無を判定する。対向車両2がいない場合は、目標待避スペースSbの設定に係る制御は終了する。
【0029】
一方、ステップS1において、対向車両検出部11が「対向車両2がいる」と判定した場合は、ステップS2において、予測交差地点算出部12は予測交差地点Pxを算出する。
次に、ステップS3において、走行可能領域取得部13は走行可能領域Aを取得する。
【0030】
さらに次に、ステップS4において、すれ違い可否判定部14は、予測交差地点Pxで自車両1が対向車両2とすれ違って走行できるか否かを判定する。すなわち、すれ違い可否判定部14は、走行可能領域Aの幅Dに基づいて、自車両1が対向車両2とすれ違って走行できない特定走行区間R0を特定し、予測交差地点Pxが特定走行区間R0に位置するか否かを判定する。そして、予測交差地点Pxで自車両1が対向車両2とすれ違って走行できる場合、すなわち、予測交差地点Pxが特定走行区間R0に位置しない場合は、目標待避スペースSbの設定に係る制御は終了する。
【0031】
一方、ステップS4において、すれ違い可否判定部14が「予測交差地点Pxで自車両1が対向車両2とすれ違って走行できない(予測交差地点Pxが特定走行区間R0に位置する)」と判定した場合は、ステップS5において、待避可能スペース検出部15は、待避可能スペースSaが検出されたか否かを判定する。そして、待避可能スペースSaが検出されない場合は、ステップS6において、自車両1が駐車車列の後ろの一時停止位置P1(特定走行区間R0の始点P0の後方の位置)に停止して対向車両2の通過を待機するように、車両制御部18が制御指令を駆動制御装置104に出力する。
【0032】
一方、ステップS5において、待避可能スペースSaが検出された場合は、待避可能スペース検出部15は、ステップS7において、待避可能スペースSaが2つ以上検出されたか否かを判定する。待避可能スペースSaが2つ以上検出されない場合、すなわち、待避可能スペースSaが1つのみ検出された場合は、目標待避スペース設定部17が、ステップS8において、検出された待避可能スペースSaを目標待避スペースSbに設定する。なお、
図5のフローチャートにおいて、この場合の待避可能スペースSaは、最も後方に位置する第1待避可能スペースSa1と同義であるとする。
【0033】
一方、ステップS7において、待避可能スペース検出部15が「待避可能スペースSaが2つ以上検出された」と判定した場合は、ステップS9において、後続車両検出部16が後続車両3の有無を判定する。後続車両3がいない場合は、ステップS8において、
図4に示すように、目標待避スペース設定部17は、第1待避可能スペースSa1を目標待避スペースSbに設定する。
【0034】
一方、ステップS9において、後続車両検出部16が「後続車両3がいる」と判定した場合は、ステップS10において、目標待避スペース設定部17は、後続車両3の数(X)に1を加算した数が待避可能スペースSaの数以上であるか否かを判定する。後続車両3の数(X)に1を加算した数が待避可能スペースSaの数以上である場合は、ステップS11aにおいて、
図2に示すように、目標待避スペース設定部17は、最も前方の待避可能スペースSa3を目標待避スペースSbとして設定する。一方、後続車両3の数(X)に1を加算した数が待避可能スペースSaの数より小さい場合は、ステップS11bにおいて、
図3に示すように、目標待避スペース設定部17は、後方から数えてX+1番目の待避可能スペースSa2を目標待避スペースSbとして設定する。
【0035】
次に、ステップS12において、車両制御部18は、ステップS8,S11a,S11bで設定した目標待避スペースSbに自車両1が移動するように制御指令を出力する。すなわち、車両制御部18は、自車両1が一時停止位置P1で停止中の場合は、目標待避スペースSbに向かって自車両1を発進させる。また、車両制御部18は、自車両1が走行中の場合は、自車両1が目標待避スペースSbに入って停止するように自車両1の車速と操舵を制御する。
【0036】
以上より、本実施形態における運転制御装置100のプロセッサ10は、自車両1が対向車両2とすれ違って走行できない場合であって、待避可能スペースSaが2つ以上検出された場合は、自車両1の後方を走行する後続車両3の有無を判定し、後続車両3がいる場合は、最も後方に位置する第1待避可能スペースSa1以外の待避可能スペースSa2,Sa3を目標待避スペースSbとして設定する。
これにより、自車両1が待避可能スペースSa2,Sa3に移動した上で、自車両1のみならず、後続車両3も第1待避可能スペースSa1に移動して対向車両2の通過を待避できる。よって、自車両1は交通流を妨げずに対向車両2の通過を待避できる。また、自車両1が第1待避可能スペースSa1よりも前方の待避可能スペースSa2,Sa3に移動することにより、自車両1は後続車両3の乗員の前方視界を妨げずに目標待避スペースSbに移動できる。
【0037】
また、運転制御装置100は、後続車両3がいない場合は、第1待避可能スペースSa1を目標待避スペースSbとして設定する。これにより、自車両1は、対向車両2との交差可能性がより低い状況で第1待避可能スペースSa1に移動して、対向車両2の通過を待避できる。
【0038】
また、運転制御装置100は、後続車両3の数(X)に1を加算した数が待避可能スペースSaの数以上である場合は、最も前方の待避可能スペースSa3を目標待避スペースSbとして設定する。一方、運転制御装置100は、後続車両3の数(X)に1を加算した数が待避可能スペースSaの数よりも小さければ、後方から数えてX+1番目の待避可能スペースSa2を目標待避スペースSbとして設定する。これにより、運転制御装置100は、後続車両3の数に応じて、最も多くの後続車両3が待避可能スペースSaに移動できるように目標待避スペースSbを設定できる。また、運転制御装置100は、待避可能スペースSaに移動する車両の数が待避可能スペースSaの数よりも少ない場合は、後続車両3が移動できる待避可能スペースSaの数を確保しつつ、自車両1をできる限り予測交差地点Pxから遠い待避可能スペースSaに移動させる。これにより、運転制御装置100は、自車両1と対向車両2との交差可能性をより低くすることができる。
【0039】
また、運転制御装置100は、自車両1の後方を走行する他車両の有無を判定し、他車両が存在する場合は、他車両の他車両速度を取得し、自車両1と他車両との距離を他車両速度で除した他車両到達時間を算出し、他車両到達時間が所定の基準時間以下である場合に、後続車両3がいると判定する。これにより、運転制御装置100は、自車両1と他車両との距離及び他車両の他車両速度に応じて、自車両1の挙動に影響を受ける可能性が所定以上高い他車両を後続車両3と認識して、後続車両3の有無を判定することができる。
【0040】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態に係る運転制御装置200及び運転制御方法について
図6~8に基づいて説明する。運転制御装置200のプロセッサ20は、運転制御装置100のプロセッサ10の構成に距離比較部21を追加したものである。なお、
図1~5に記載された符号と同一の符号は、同一又は同様のものを示すため、詳細な説明は省略する。
【0041】
図6に示すように、運転制御装置200のプロセッサ20は距離比較部21を有する。距離比較部21は、自車両1の現在位置(
図7の例では、一時停止位置P1)と後続車両3の現在位置P3との間の車間距離L1が、特定走行区間R0の後方の始点P0と第1待避可能スペースSa1との間の基準距離L0以上であるか否かを判定する。なお、
図2に示すように後続車両3が2つ以上いる場合の車間距離L1は、自車両1と最も自車両1に近い後続車両3bとの間の距離である。また、
図7に示す例では、基準距離L0は、最も後方、すなわち、最も自車両1に近い駐車車列Qの長さである。
【0042】
図7に示すように、車間距離L1が基準距離L0以上である場合は、目標待避スペース設定部17は、第1待避可能スペースSa1を目標待避スペースSbに設定する。一方、車間距離L1が基準距離L0よりも短い場合は、
図2及び
図3に示す例と同様に、目標待避スペース設定部17は、後続車両3の数に応じて第1待避可能スペースSa1以外の待避可能スペースSa2,Sa3を目標待避スペースSbに設定する。
【0043】
なお、自車両1が一時停止位置P1で停止する場合は、距離比較部21は、自車両1が一時停止位置P1で停止したタイミングで自車両1と後続車両3との間の車間距離L1と基準距離L0とを比較するが、これに限定されない。例えば、距離比較部21は、自車両1が減速を開始したタイミング、又は、対向車両2及び複数の待避可能スペースが検出されたタイミングで、自車両1と後続車両3との間の車間距離L1と基準距離L0とを比較してもよい。
【0044】
また、距離比較部21は、後続車両3の車速V3に基づいて、後続車両3が自車両1の現在位置に到達するまでにかかると予測される予測到達時間を算出し、さらに、後続車両3が駐車車列Q(特定走行区間R0の後方の始点P0と第1待避可能スペースSa1との間の区間)を通過する通過時間を算出し、予測到達時間と通過時間とを比較してもよい。すなわち、距離比較部21は、予測到達時間が通過時間以上である場合に、車間距離L1が基準距離L0以上であると判定する。
【0045】
次に、運転制御装置200が実行する運転制御方法の手順について、
図8に示すフローチャートを用いて説明する。
図8に示すフローチャートには、
図5に示す運転制御方法の手順に対してステップS20の処理が追加されている。なお、
図5に示すフローチャートの処理と同一の符号の処理については詳細な説明は省略する。
【0046】
図8に示すように、ステップS9において、後続車両検出部16が「後続車両3がいる」と判定した場合は、ステップS20において、距離比較部21が、自車両1と後続車両3との間の車間距離L1が基準距離L0以上か否かを判定する。自車両1と後続車両3との間の車間距離L1が基準距離L0以上である場合は、ステップS8において、目標待避スペース設定部17は、第1待避可能スペースSa1を目標待避スペースSbに設定する。
【0047】
一方、自車両1と後続車両3との間の車間距離L1が基準距離L0以上である場合は、ステップS11において、目標待避スペース設定部17は、第1待避可能スペースSa1以外の待避可能スペースSa2,Sa3を目標待避スペースSbに設定する。具体的には、目標待避スペース設定部17は、
図5のステップS10,S11a,11bに示すように、後続車両3の数に応じて待避可能スペースSa2,Sa3を目標待避スペースSbに設定する。なお、これに限定されず、目標待避スペース設定部17は、後続車両3の数に関わらず、後方から数えて2番目の待避可能スペースSa2、又は、最も前方の待避可能スペースSa3を目標待避スペースSbに設定してもよい。
【0048】
以上より、本実施形態における運転制御装置200のプロセッサ20は、自車両1と後続車両3との間の車間距離L1が、特定走行区間R0の後方の始点P0と第1待避可能スペースSa1との間の基準距離L0以上であるか否かを判定する。そして、運転制御装置200は、車間距離L1が基準距離L0以上である場合は、第1待避可能スペースSa1を目標待避スペースSbとして設定する。すなわち、車間距離L1が基準距離L0以上である場合は、自車両1が第1待避可能スペースSa1に到達した時点で後続車両3は特定走行区間R0に入っていないと予測されるため、自車両1が第1待避可能スペースSa1に移動しても交通流に与える影響は低いと考えられる。よって、運転制御装置200は、自車両1と後続車両3との間の車間距離L1が基準距離L0以上である場合は、交通流を妨げない状態で、自車両1と対向車両2との交差可能性がより低くなるように、自車両1を第1待避可能スペースSa1に移動させることができる。また、後続車両3がいる場合において常に自車両1から遠い待避可能スペースSa2,Sa3を目標待避スペースSbに設定すると、自車両1が目標待避スペースSbに移動するまでに時間がかかり、それに伴い後続車両3の移動の判断にも遅れが発生してしまうおそれがある。これに対して、運転制御装置200は、車間距離L1が基準距離L0以上である場合に限り第1待避可能スペースSa1を目標待避スペースSbに設定することによって、交通流を妨げずに、よりスムーズに自車両1を目標待避スペースSbに移動させることができる。
【符号の説明】
【0049】
100,200…運転制御装置
1…自車両
2…対向車両
3…後続車両
10,20…プロセッサ
12…予測交差地点算出部
13…走行可能領域取得部
14…すれ違い可否判定部
15…待避可能スペース検出部
16…後続車両検出部
17…目標待避スペース設定部
18…車両制御部
A…走行可能領域
L0…基準距離
L1…車間距離
Px…予測交差地点
R0…特定走行区間
T1…自車線
Sa…待避可能スペース
Sa1…第1待避可能スペース