(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089243
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】碍子
(51)【国際特許分類】
H01B 17/26 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
H01B17/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204494
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】高石 聡
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 裕明
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
【テーマコード(参考)】
5G331
【Fターム(参考)】
5G331AA01
5G331AA04
5G331BA01
5G331BA04
5G331BC16
5G331CB01
5G331DA01
(57)【要約】
【課題】軽量化を図ることができる碍子を提供する。
【解決手段】本開示に係る碍子1は、挿入穴23が設けられた合成樹脂製の碍子本体2と、前記挿入穴23に同軸に挿入されており、外周面が前記挿入穴23の内周面に直接的に接合されている筒状部材3とを備え、前記碍子本体2は、前記筒状部材3を周方向に回転させる場合に摘持される有底筒状のつまみ部21と、該つまみ部21の内底面21cから突出しており、先端に前記挿入穴23が前記つまみ部21と同軸に設けられている突出部22と、前記つまみ部21及び前記突出部22の少なくとも一方を補強する補強部24とを有することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入穴が設けられた合成樹脂製の碍子本体と、
前記挿入穴に同軸に挿入されており、外周面が前記挿入穴の内周面に直接的に接合されている筒状部材と
を備え、
前記碍子本体は、
前記筒状部材を周方向に回転させる場合に摘持される有底筒状のつまみ部と、
該つまみ部の内底面から突出しており、先端に前記挿入穴が前記つまみ部と同軸に設けられている突出部と、
前記つまみ部及び前記突出部の少なくとも一方を補強する補強部と
を有することを特徴とする碍子。
【請求項2】
前記補強部は、前記つまみ部の前記内底面の側から前記つまみ部の開口の側に向けて先細りになるテーパ状をなすことを特徴とする請求項1に記載の碍子。
【請求項3】
前記つまみ部の内部空間に浸入した液体を前記つまみ部の開口に導くための導液面又は導液路が前記補強部もしくは前記つまみ部の内面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の碍子。
【請求項4】
前記導液路は、前記つまみ部の前記内底面の側から前記つまみ部の開口の側に向けて延びる凹条状をなすことを特徴とする請求項3に記載の碍子。
【請求項5】
前記補強部の少なくとも一部は、前記つまみ部の開口の周縁部と前記突出部の前記先端との間に位置していることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の碍子。
【請求項6】
前記補強部は複数設けられており、
複数の前記補強部は前記つまみ部の周方向に離隔配置されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の碍子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、碍子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電線と棒状の端子金具との接続部分を覆う碍子が記載されている。この碍子は、貫通孔状の中空部が設けられた磁器製の碍子本体と、中空部に挿入された金属製のナット(筒状部材)と、ナットの外周面と中空部の内周面との間に介在しているセメント製の接着層とを備える。
【0003】
端子金具の先端部には、電線を受け入れるための中空部と、ナットの雌ネジに螺合する雄ネジとが設けられている。電線の一端部は、端子金具の中空部に挿入されることによって、端子金具の先端部に接続される。電線と端子金具とが接続された状態で、端子金具の雄ネジがナットの雌ネジに螺合する。この結果、電線と端子金具との接続部分を、絶縁体である碍子本体で被覆することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、碍子の軽量化に関する記載はない。
【0006】
本開示の目的は、軽量化を図ることができる碍子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る碍子は、挿入穴が設けられた合成樹脂製の碍子本体と、前記挿入穴に同軸に挿入されており、外周面が前記挿入穴の内周面に直接的に接合されている筒状部材とを備え、前記碍子本体は、前記筒状部材を周方向に回転させる場合に摘持される有底筒状のつまみ部と、該つまみ部の内底面から突出しており、先端に前記挿入穴が前記つまみ部と同軸に設けられている突出部と、前記つまみ部及び前記突出部の少なくとも一方を補強する補強部とを有することを特徴とする。
【0008】
本開示にあっては、合成樹脂製の碍子本体に挿入穴が設けられ、挿入穴に筒状部材が挿入される。
筒状部材の外周面は挿入穴の内周面に直接的に接合される。故に、碍子本体と筒状部材との間に、碍子本体を構成する材料とも筒状部材を構成する材料とも異なる材料で構成された接着層が介在せずとも、筒状部材を碍子本体に固定することができる。即ち、碍子を構成する材料の種類数を削減することができる。従って、材料の調達、及び、碍子の使用後に碍子をリサイクル又は廃棄する作業等が容易である。
【0009】
碍子本体はつまみ部、突出部、及び補強部を有する。
合成樹脂製の碍子本体は、セメント製の接着層を備える磁器製の碍子本体よりも軽い。しかも、つまみ部は有底筒状をなす。いわば碍子本体は肉抜きされている。以上の結果、碍子の軽量化を図ることができる。
補強部がつまみ部及び突出部の少なくとも一方を補強するので、肉抜きされた碍子本体の機械的強度を向上させることができる。
突出部はつまみ部の内底面から突出し、挿入穴は突出部の先端に設けられる。筒状部材、挿入穴、及びつまみ部は互いに同軸なので、つまみ部を摘持して筒状部材を正確に周方向に回転させることができる。
【0010】
本開示に係る碍子は、前記補強部は、前記つまみ部の前記内底面の側から前記つまみ部の開口の側に向けて先細りになるテーパ状をなすことを特徴とする。
【0011】
本開示にあっては、補強部がテーパ状をなす。
補強部は、つまみ部の内底面側から開口側に向けて先細りになる。故に、つまみ部の内部空間は、内底面に近いほど狭く、開口に近いほど広い。また、補強部のテーパ面を、つまみ部の内部空間に浸入した液体をつまみ部の開口に導くための導液面として利用することができる。以上の結果、つまみ部の内部空間に液体が滞留することを防止することができる。
つまみ部の内部空間は内底面に近いほど狭いので、つまみ部の内部空間に侵入した非液状物体(虫、塵埃等)がつまみ部の内部空間に滞留することを抑制することができる。
【0012】
本開示に係る碍子は、前記つまみ部の内部空間に浸入した液体を前記つまみ部の開口に導くための導液面又は導液路が前記補強部もしくは前記つまみ部の内面に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本開示にあっては、補強部(もしくはつまみ部の内面)に、導液面又は導液路が設けられている。つまみ部の内部空間に浸入した液体は、導液面又は導液路を伝ってつまみ部の開口に導かれる。故に、つまみ部の内部空間に液体が滞留することを防止することができる。
【0014】
本開示に係る碍子は、前記導液路は、前記つまみ部の前記内底面の側から前記つまみ部の開口の側に向けて延びる凹条状をなすことを特徴とする。
【0015】
本開示にあっては、導液路が凹条状をなすので、つまみ部の内部空間に浸入した液体が導液路に集まりやすい。導液路はつまみ部の内底面側から開口側に向けて延びるので、導液路に集まった液体をつまみ部の開口に容易に導くことができる。
【0016】
本開示に係る碍子は、前記補強部の少なくとも一部は、前記つまみ部の開口の周縁部と前記突出部の前記先端との間に位置していることを特徴とする。
【0017】
本開示にあっては、補強部の少なくとも一部が、つまみ部の開口周縁部と突出部の先端との間に位置する。故に、つまみ部の開口周縁部と突出部の先端との隙間を補強部によって狭めることができるので、つまみ部の内部空間への液体の浸入又は非液状物体の侵入を抑制することができる。また、つまみ部の開口周縁部と突出部の先端との隙間を狭める目的で補強部とは別の部材を備える必要がないので、碍子の構成を簡単にすることができる。
【0018】
本開示に係る碍子は、前記補強部は複数設けられており、複数の前記補強部は前記つまみ部の周方向に離隔配置されていることを特徴とする。
【0019】
本開示にあっては、複数の補強部がつまみ部の周方向に離隔配置されるので、碍子本体がつまみ部の周方向に満遍なく補強されるように設計することができる。複数の補強部により、つまみ部の内部空間を狭めて非液状物体の侵入及び滞留を抑制することができる。
【0020】
[付記]
本開示に係る碍子は、前記つまみ部の周壁は、前記つまみ部の底壁の側から前記つまみ部の開口の側に向けて拡径する方向に傾斜していることを特徴とする。
【0021】
本開示にあっては、つまみ部の周壁が底壁側から開口側に向けて拡径する方向に傾斜する。換言すれば、つまみ部は開口側から底壁側に向けて先細りになる。
故に、つまみ部の内部空間は、内底面に近いほど狭く、開口に近いほど広い。また、つまみ部の内周面を、つまみ部の内部空間に浸入した液体をつまみ部の開口に導くための導液面として利用することができる。以上の結果、つまみ部の内部空間に液体が滞留することを防止することができる。
つまみ部の内部空間は内底面に近い部分ほど狭いので、つまみ部の内部空間に侵入した非液状物体がつまみ部の内部空間に滞留することを抑制することができる。
【0022】
また、つまみ部の外周面に付着した液体を、つまみ部の開口から遠ざけるように案内する案内面として、つまみ部の外周面を利用することができる。故に、つまみ部の内部空間に液体が侵入することを抑制することができる。
【0023】
本開示に係る碍子は、前記挿入穴の深さは、前記筒状部材の前記挿入穴に挿入されている部分の軸長方向の長さよりも大きいことを特徴とする。
【0024】
本開示にあっては、挿入穴の深さが、筒状部材の挿入穴に挿入されている部分の軸長方向の長さよりも大きい。いわば突出部は肉抜きされている。故に、碍子を更に軽量化することができる。
【0025】
本開示に係る碍子は、前記突出部は軸長方向が前記つまみ部の軸長方向に沿う柱状をなし、前記補強部は、前記つまみ部の前記内底面及び内周面と、前記突出部の外周面とにわたることを特徴とする。
【0026】
本開示にあっては、補強部がつまみ部の内底面及び内周面と柱状の突出部の外周面とにわたるので、つまみ部及び突出部を両方補強することができる。
【0027】
本開示に係る碍子は、前記補強部は、前記つまみ部の前記内底面から突出しており、内側に前記突出部が配されている突出筒を有することを特徴とする。
【0028】
本開示にあっては、補強部が突出筒を有する。突出筒はつまみ部の内底面から突出し、補強部の内側に突出部が配されるので、突出筒によってつまみ部の底壁を周方向の全周にわたって補強することができる。
【0029】
本開示に係る碍子は、前記つまみ部の外周面には滑り止めが設けられていることを特徴とする。
【0030】
本開示にあっては、つまみ部の外周面に滑り止めが設けられるので、つまみ部を摘まみ持って筒状部材を周方向に回転させることが容易である。
【発明の効果】
【0031】
本開示の碍子によれば、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の実施の形態について説明する。
【0034】
実施の形態 1.
図1は実施の形態1に係る碍子の外観図である。
図中1は碍子であり、
図1Aは碍子1の正面図、
図1Bは
図1AにおけるI-I線による矢視図である。
碍子1は碍子本体2及び筒状部材3を備える。
碍子本体2は合成樹脂製(熱可塑性樹脂製又は熱硬化性樹脂製)の絶縁体である。
【0035】
図2は碍子1の断面図である。
図2Aは
図1BにおけるII-II線による断面図、
図2Bは
図1BにおけるIII-III線による断面図である。
図1及び
図2に示すように、碍子本体2は、大径の有底円筒状のつまみ部21と、小径の円柱状の突出部22とを一体に有する。つまみ部21と突出部22とは互いに同軸である。
図1A及び
図2には、つまみ部21及び突出部22夫々の軸長方向が左右に向き、つまみ部21の底壁/開口が向かって左/右に位置するようにして碍子1が示されている。
【0036】
つまみ部21の周壁は、つまみ部21の底壁側からつまみ部21の開口側(図に向かって左側から右側)に向けて拡径する方向に傾斜している。つまみ部21の中心軸に対するつまみ部21の周壁の傾斜角度は2°程度であるが、これに限定されず、例えば0.5~5°程度であればよい。
つまみ部21の外周面には滑り止め211が設けられている。本実施の形態の滑り止め211は、凹部21aと凸部21bとがつまみ部21の周方向に交互に連なる構成であるが、これに限定されない。
【0037】
突出部22は、つまみ部21の内底面21cから、向かって右側に突出している。
突出部22の突出量(つまみ部21の内底面21cから突出部22の先端までの距離)は、つまみ部21の周壁の突出量(つまみ部21の内底面21cから周壁の先端までの距離)よりも適長大きい。例えば、突出部22の先端から全長の2割~4割程度までの部分が、つまみ部21の開口からつまみ部21の外部に露出している。
図2Aに示すように、突出部22の先端面には挿入穴23が設けられている。挿入穴23は円形断面を有する非貫通孔であり、突出部22の全長にわたる。また、挿入穴23は突出部22と同軸である。
【0038】
筒状部材3はインサートナットであり、軸長方向の一端部にフランジ31を有し、外周面に滑り止め用の凹凸(例えばローレット加工による綾目状又は平目状のもの。不図示)を有する。筒状部材3は例えば金属製であるが、これに限定されない。筒状部材3は、フランジ31が挿入穴23の外側に位置するようにして、挿入穴23に同軸に挿入されている。筒状部材3の外周面は、挿入穴23の内周面に直接的に接合されている。
筒状部材3の挿入穴23に挿入されている部分の軸長方向の長さは、挿入穴23の深さよりも小さく、挿入穴23の深さの半分程度である。
【0039】
碍子1は、次に説明するブッシング4を構成する。
図3は碍子1を備えるブッシング4の断面図である。
ブッシング4は、碍子1の他に碍管41及び端子金具42を備える。
図3には碍管41の軸長方向の一端部41aの近傍が示されている。碍管41の内径は碍子本体2の突出部22の外径より大きい。碍管41の一端部41aには切り欠き411が設けられている。
碍管41は絶縁体製であり、例えば不図示の変成器又は開閉器等が備えるケースの側壁を貫通しており、ケースの外側に碍管41の一端部41aが位置している。碍管41は、切り欠き411が下を向き、且つ軸長方向が水平になるように配されている。
【0040】
端子金具42は棒状をなし、碍管41を同軸に貫通している。端子金具42の一端部においては、大径の円盤部420、小径円柱状の第1軸部421、大径円柱状のボルト部422、小径円柱状の第2軸部423,大径円柱状の接続部424が、一端側から他端側に向けてこの順に同軸に並設されている。円盤部420及び第1軸部421は碍管41の外側にある。ボルト部422は碍管41の一端部41aの開口を通して碍管41の内外にわたる。第2軸部423及び接続部424は碍管41の内側にある。ボルト部422の周面には雄ネジが設けられており、この雄ネジは筒状部材3の雌ネジに対応している。第2軸部423には、第2軸部423の軸長方向に垂直な貫通孔425が設けられている。貫通孔425の一方の開口は碍管41の切り欠き411に向けられている。
【0041】
電線5は、導線51が絶縁体によって被覆された被覆電線である。電線5の一端部には導線51が露出している。電線5は導線51が貫通孔425を貫通するようにして碍管41の内側に挿入されており、切り欠き411を通して碍管41の内外にわたる。
【0042】
円盤部420及び第1軸部421が筒状部材3の内側を通って挿入穴23の内部空間に挿入され、筒状部材3にボルト部422が螺合する。これにより、端子金具42は筒状部材3を貫通する。また、導線51は筒状部材3のフランジ31と貫通孔425の内周面及び接続部424のボルト部422に近い方の端面とに挟まれる。この結果、導線51と第2軸部423及び接続部424とが接触するので、端子金具42と電線5とが互いに電気的に接続される。
【0043】
フランジ31と導線51との間にはバネ座金43及び平座金44(夫々図中二点鎖線参照)が介在することが望ましい。平座金44はバネ座金43と導線51との間に介在し、バネ座金43は平座金44を介して導線51を接続部424に押し付けるように付勢する。図の見易さのために、
図3においては筒状部材3、端子金具42、バネ座金43、平座金44、及び導線51が互いから離隔しているように示してある。
【0044】
端子金具42の挿入穴23に挿入されている部分の軸長方向の長さは、挿入穴23の深さよりも小さい。挿入穴23の内部空間の内、挿入穴23の内底面寄りの部分には筒状部材3も端子金具42も存在していない。本実施の形態においては、挿入穴23の内部空間の約40%が軽量化のために空隙となっている。
【0045】
碍子1は端子金具42に対して着脱可能である。碍子1の着脱は、作業者がつまみ部21を摘持して碍子1をつまみ部21の周方向に回転させることによって、手作業で簡単に行なうことができる。つまみ部21及び筒状部材3は互いに同軸であり、つまみ部21の外周面に滑り止め211が設けられるので、つまみ部21を摘まみ持って筒状部材3を正確に周方向に回転させ、端子金具42のボルト部422に対する着脱を行なうことが容易である。
【0046】
筒状部材3とボルト部422とを互いに螺合させる際、作業者は、つまみ部21を回転させ、ネジ径に応じた荷重で締め付ける。このとき、突出部22が碍管41の一端部41aの開口から碍管41の内側に挿入される。碍管41の一端部41aの開口周縁部とつまみ部21の開口周縁部とは、わずかな隙間を介在して、互いに軸長方向に対向する。
端子金具42と電線5との接続部分は、碍管41の周壁及び碍子1の碍子本体2とに覆われるので、端子金具42と電線5との接続部分を、異物との衝突又は電気的な接続等から保護することができる。
【0047】
ブッシング4は、屋外で用いられる場合は特に、耐候性を有することが望ましい。碍子1に関し、碍子本体2は紫外線及び風雨等に晒されやすいので、碍子本体2の表面に、耐候性を有する保護層が設けられてもよい。なお、碍子本体2自体が耐候性を有する合成樹脂で構成されてもよい。碍子1が耐候性を有する場合、屋外であっても碍子1を長期的に使用することができる。従って、碍子1を頻繁に交換する必要がないので、環境負荷を軽減することができる。
【0048】
以上のような碍子1によれば、筒状部材3の外周面が挿入穴23の内周面に直接的に接合されている。故に、碍子本体2と筒状部材3との間に、碍子本体2を構成する材料とも筒状部材3を構成する材料とも異なる材料で構成された接着層が介在せずとも、筒状部材3を碍子本体2に固定することができる。即ち、碍子1を構成する材料の種類数を削減することができる。
従って、材料の調達、及び、碍子1の使用後に碍子1をリサイクル又は廃棄する作業等が容易である。特に、碍子本体2が熱可塑性樹脂製である場合、リサイクル又は廃棄の際、加熱することによって碍子本体2を軟化又は溶融させることができるので、碍子1を容易に解体することができる。
【0049】
合成樹脂製の碍子本体2は、セメント製の接着層が付着している磁器製の碍子本体よりも軽い。しかも、つまみ部21は有底円筒状をなし、突出部22には何も配されていない空隙が形成されている。いわば碍子本体2はつまみ部21も突出部22も肉抜きされた構成である。以上の結果、碍子1の軽量化を図ることができる。故に、碍子1を運搬する作業、及び碍子1を端子金具42に着脱する作業等が容易である。
【0050】
肉抜きされているつまみ部21及び突出部22を補強するために、
図1~
図3に示すように、碍子本体2は8つの補強部24を有する。各補強部24はつまみ部21及び突出部22夫々に一体に設けられている。
8つの補強部24はつまみ部21の周方向に等間隔に離隔配置されている。各補強部24は、つまみ部21の内底面21c及び内周面と、突出部22の外周面とにわたる。
【0051】
補強部24は、つまみ部21の周方向に直交する向きの板であり、大略直角台形状をなし、直角台形の斜辺を除く3辺が、つまみ部21の内底面21c及び内周面と、突出部22の外周面とに接触している。直角台形の斜辺は、つまみ部21の周壁の先端から突出部22の先端の近傍にわたる。つまり、補強部24の少なくとも一部は、つまみ部21の開口の周縁部と突出部22の先端との間に位置している。
補強部24は、向かって右向きに先細りになるテーパ状をなす。補強部24のテーパの角度は0.5~5°程度であり、好ましくは3°以下である。
【0052】
以上のような補強部24は、つまみ部21及び突出部22を両方補強することができるので、肉抜きされた碍子本体2の機械的強度を向上させることができる。しかも、8つの補強部24がつまみ部の周方向に等配されるので、碍子本体2がつまみ部21の周方向に均等に補強される。なお、補強部24の個数は8つに限定されない。また、複数の補強部24がつまみ部21の周方向に不等間隔に離隔配置されてもよい。この場合でも、碍子本体2がつまみ部21の周方向に満遍なく補強されるように設計することができる。
【0053】
補強部24がつまみ部21の内底面21c側から開口側に向けて先細りになり、つまみ部21は開口側から底壁側に向けて先細りになるので、つまみ部21の内部空間は、内底面に近いほど狭く、開口に近いほど広い。つまみ部21の軸長方向が水平であっても、補強部24の上向きのテーパ面は、つまみ部21の開口に近いほど下側に位置するように傾斜している。このようなテーパ面は、つまみ部21の内部空間に浸入した液体をつまみ部21の開口に導くための導液面として機能する。同様に、つまみ部21の内周面の下部は、つまみ部21の開口に近いほど下側に位置するように傾斜しているので、つまみ部21の内部空間に浸入した液体をつまみ部21の開口に導くための導液面として機能する。以上の結果、つまみ部21の内部空間に液体が滞留することを防止することができる。
【0054】
また、つまみ部21の外周面の上部は、つまみ部21の開口に近いほど上側に位置するように傾斜しているので、つまみ部21の外周面に付着した液体を、つまみ部21の開口から遠ざけるように案内する案内面として機能する。故に、つまみ部21の内部空間に液体が侵入することを抑制することができる。
【0055】
8つの補強部24はつまみ部21の内部空間を8つに分割する。分割された個々の空間は狭い。しかも、分割された個々の空間はつまみ部21の内底面に近いほど狭い。故に、つまみ部21の内部空間に非液状物体(虫、塵埃等)が侵入することを抑制することができる上に、侵入した非液状物体がつまみ部21の内部空間に滞留することを抑制することができる。
【0056】
補強部24の一部(つまみ部21の開口から向かって右向きに突出している部分。以下、隙間減少用部分という)は、つまみ部21の開口周縁部と突出部22の先端との間に位置する。碍子1を用いてブッシング4を構成した場合、補強部24の隙間減少用部分は、つまみ部21の開口周縁部と突出部22の外周面との隙間を狭めると共に、碍管41の一端部41aの開口周縁部と突出部22の外周面との隙間を狭めることができる。故に、つまみ部21の内部空間への液体の浸入又は非液状物体の侵入を抑制することができる。また、この目的で補強部24とは別の部材を備える必要がないので、碍子1の構成を簡単にすることができる。
【0057】
以上のような碍子1の碍子本体2を形成する場合、例えば、作業者は碍子本体2を成型するための金型に筒状部材3をセットしてから金型に合成樹脂を注入し、硬化させる。この結果、筒状部材3の外周面を挿入穴23の内周面に直接的に接合することができる。又は、作業者は、金型に注入した合成樹脂が硬化する前に、合成樹脂の挿入穴23となるべき部分に筒状部材3を押し込み、合成樹脂を硬化させる。熱可塑性樹脂を用いる場合、作業者は、金型又は3Dプリンタ等を用いて形成した碍子本体2を加熱により軟化させ、軟化した熱可塑性樹脂が硬化する前に、熱可塑性樹脂の挿入穴23となるべき部分に筒状部材3を押し込み、熱可塑性樹脂を硬化させてもよい。
【0058】
なお、挿入穴23はつまみ部21と同軸であればよく、突出部22と同軸でなくてもよい。
筒状部材3は滑り止め用の凹凸が設けられているインサートナットでなくてもよい。筒状部材3はフランジ31を有しない構成でもよい。
碍管41は軸長方向が水平になるように配される構成に限定されず、碍管41の一端部41aが他端部よりも上側になり、且つ軸長方向が斜めに又は鉛直になるように配されてもよい。
【0059】
補強部24に設けられる導液面は、テーパ状の補強部24のテーパ面に限定されない。例えば、平板状の補強部24が、一面がつまみ部21の開口に近いほど下側に位置するようにして、水平面に対し傾斜していることにより、補強部24の上面が導液面として機能する。
補強部24は、つまみ部21及び突出部22の何れか一方のみを補強するものであってもよい。また、複数の補強部24に、つまみ部21のみを補強するものと突出部22のみを補強するものとが混在していてもよい。
【0060】
実施の形態 2.
本実施の形態の碍子1は、補強部24の構成を除いて、実施の形態1の碍子1と略同様である。本実施の形態の碍子1は、実施の形態1の碍子1の作用効果と略同様の作用効果を奏する。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0061】
図4は実施の形態2に係る碍子1の外観図である。
図4Aに示す碍子1の場合、実施の形態1の補強部24と同様の補強部24の両面夫々に、複数の導液路241が設けられている。補強部24の同一面に設けられている複数の導液路241はつまみ部21の径方向に並んでおり、互いに平行である。各導液路241はつまみ部21の内底面21cの側からつまみ部21の開口の側に向けて延びる幅狭の凹条状をなす。
【0062】
導液路241は凹条状をなす。上向きに開口している導液路241には、つまみ部21の内部空間に浸入した液体が集まりやすい。導液路241に集まった液体は、導液路241を伝ってつまみ部21の内底面21c側から開口側に向けて流れ、つまみ部21の開口に導かれる。故に、つまみ部21の内部空間に液体が滞留することを防止することができる。なお、導液路241の本数及び幅等は
図4Aに示すものに限定されない。また、導液路241はつまみ部21の内周面に設けられてもよい。
【0063】
図4Bに示す碍子1の場合、補強部24が波板状をなすことにより、補強部24の両面夫々に、複数の導液路242がつまみ部21の径方向に並設されている。各導液路242はつまみ部21の内底面21cのつまみ部21の開口の側に向けて延びる幅広の凹条状をなす。導液路242は導液路241の作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0064】
図4Aに示す碍子1及び
図4Bに示す碍子1の何れにおいても、等配された8つの補強部24夫々の両面に導液路241,242が設けられている。故に、碍子1は、つまみ部21の周方向のどの部分が上向きであろうとも、つまみ部21の内部空間に浸入した液体を導液路241,242によりつまみ部21の開口に導くことができる。
補強部24に設けられる導液路は導液路241,242に限定されず、例えば、補強部24の下部に設けられた貫通孔でもよい。貫通孔状の導液路を通過した液体は、例えばつまみ部21の内周面の下部に集まり、つまみ部21の開口に向けて流れ落ちる。
【0065】
次に、実施の形態3,4を説明する。実施の形態3,4の碍子1は、碍子本体2が補強部24に替えて補強部25,26を有することを除いて、実施の形態1の碍子1と略同様である。実施の形態3,4の碍子1は、実施の形態1の碍子1の作用効果と略同様の作用効果を奏する。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0066】
実施の形態 3.
図5は実施の形態3に係る碍子1の外観図である。
図5Aは碍子1の正面図、
図5Bは
図5AにおけるV-V線による矢視図である。
碍子本体2は補強部25を有する。補強部25は突出筒251及び各8つのリブ252,253を有する。
【0067】
突出筒251はつまみ部21に一体に設けられている。突出筒251は円筒状をなし、つまみ部21の内底面21cから、向かって右向きに、同軸に突出している。突出部22は突出筒251の内側に配されている。つまみ部21の内周面と突出筒251の外周面とは互いに適長離隔している。突出筒251の内周面と突出部22の外周面とは互いに適長離隔している。突出筒251によって、つまみ部21の底壁を周方向の全周にわたって補強することができる。
【0068】
突出筒251の突出量(つまみ部21の内底面21cから突出筒251の先端までの距離)は、つまみ部21の周壁の突出量よりも適長大きく、突出部22の突出量以下である。突出筒251の一部(具体的にはつまみ部21の開口から向かって右向きに突出している部分)は、実施の形態1の補強部24の隙間減少用部分の作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0069】
リブ252,253夫々は補強部24と同様の構成である。以下では補強部24との差異について説明する。
各リブ252はつまみ部21及び突出筒251夫々に一体に設けられている。リブ252は四角形状の板であり、3辺が、つまみ部21の内底面21c及び内周面と、突出筒251の外周面とに接触している。リブ252の左右方向の長さは、つまみ部21の周壁の突出量以下である。リブ252は、つまみ部21及び突出筒251を補強することができる。
【0070】
各リブ253はつまみ部21、突出部22、及び突出筒251夫々に一体に設けられている。リブ253は四角形状の板であり、3辺が、つまみ部21の内底面21cと、突出部22の外周面と、突出筒251の内周面とに接触している。リブ253のつまみ部21の左右方向の長さは、突出筒251の突出量以下である。リブ253は、つまみ部21、突出部22、及び突出筒251を補強することができる。
【0071】
補強部25は、つまみ部21の内部空間を16個に分割する。分割された個々の空間は非常に狭い。故に、つまみ部21の内部空間に非液状物体が侵入することを抑制することができる上に、侵入した非液状物体がつまみ部21の内部空間に滞留することを抑制することができる。
【0072】
実施の形態 4.
図6は実施の形態4に係る碍子1の外観図である。
図6Aは碍子1の正面図、
図6Bは
図6AにおけるVI-VI線による矢視図である。
碍子本体2は8つの補強部26を有する。各補強部26はつまみ部21及び突出部22夫々に一体に設けられている。
8つの補強部26はつまみ部21の周方向に等間隔に離隔配置されている。各補強部26は、つまみ部21の内底面21c及び内周面と、突出部22の外周面とにわたる。
【0073】
補強部26は円筒状をなし、補強部26の軸長方向とつまみ部21の軸長方向とが平行になるようにして、つまみ部21の内底面21cから、向かって右向きに突出している。補強部26の周方向の一部がつまみ部21の内周面に接触しており、補強部26の周方向の他部が突出部22の外周面に接触している。
以上のような補強部26は、実施の形態1の補強部24の場合と同様に、つまみ部21及び突出部22を両方補強することができる。
互いに隣り合う2つの補強部26について、周方向の更に他部同士が互いに接触していてもよい。この場合、補強部26同士で補強し合うことができる。
【0074】
補強部26の突出量(つまみ部21の内底面21cから補強部26の先端までの距離)は、つまみ部21の周壁の突出量よりも適長大きく、突出部22の突出量以下である。補強部26の一部(具体的にはつまみ部21の開口から向かって右向きに突出している部分)は、実施の形態1の補強部24の隙間減少用部分の作用効果と同様の作用効果を奏する。
8つの補強部26は、つまみ部21の内部空間を16個に分割するので、実施の形態3の補強部25の場合と同様に、非液状物体の侵入及び滞留を抑制することができる。
【0075】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
各実施の形態に開示されている構成要件(技術的特徴)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせによって新しい技術的特徴を形成することができる。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。更に、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 碍子; 2 碍子本体; 21 つまみ部; 21c 内底面; 22 突出部; 23 挿入穴; 24,25,26 補強部; 241,242 導液路; 3 筒状部材