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特開2024-89248加熱式防水シート施工装置、及び、加熱式防水シート施工システム
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  • 特開-加熱式防水シート施工装置、及び、加熱式防水シート施工システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089248
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】加熱式防水シート施工装置、及び、加熱式防水シート施工システム
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20240626BHJP
   G08C 15/06 20060101ALI20240626BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240626BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
E04D5/14 F
E04D5/14 Q
G08C15/06 G
G06Q50/08
G08C15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204502
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】庄司 博之
【テーマコード(参考)】
2F073
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA02
2F073AA03
2F073AA11
2F073AB01
2F073BB01
2F073BB04
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC08
2F073CC14
2F073CD11
2F073DD01
2F073DE08
2F073EF08
2F073EF09
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】加熱式防水シート施工装置の使用状況の特定作業を迅速に行える加熱式防水シート施工装置、及び、加熱式防水シート施工システムを提供すること。
【解決手段】防水下地上に点在する固定部材に防水シートを被せた状態で、防水シートの上から固定部材を誘導加熱することによって、防水シートを固定部材に溶着させる加熱式防水シート施工装置9及び加熱式防水シート施工システムに、固定部材を防水シートの上面から誘導加熱することで防水シートを固定部材に溶着する誘導加熱部15と、誘導加熱部15を通電制御する制御部21と、通信ネットワークと接続された通信部25と、が備えられている。制御部21は、誘導加熱部15の使用に関する情報を含む経時的な記録データを、所定データ数ごと、または、所定時間間隔ごとに、通信部25を介して外部へ送信するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地上に点在する固定部材に防水シートを被せた状態で、前記防水シートの上から前記固定部材を誘導加熱することによって、前記防水シートを前記固定部材に溶着させる加熱式防水シート施工装置であって、
前記固定部材を前記防水シートの上面から誘導加熱することで前記防水シートを前記固定部材に溶着する誘導加熱部と、
前記誘導加熱部を通電制御する制御部と、
通信ネットワークと接続された通信部と、が備えられ、
前記制御部は、前記誘導加熱部の使用に関する情報を含む経時的な記録データを、所定データ数ごと、または、所定時間間隔ごとに、前記通信部を介して外部へ送信するように構成されている加熱式防水シート施工装置。
【請求項2】
前記誘導加熱部が前記防水シートを前記固定部材に溶着する環境を示す環境情報を取得する環境取得部が備えられ、
前記記録データに、前記環境取得部が取得した前記環境情報が含まれる請求項1に記載の加熱式防水シート施工装置。
【請求項3】
防水下地上に点在する固定部材に防水シートを被せた状態で、前記防水シートの上から前記固定部材を誘導加熱することによって、前記防水シートを前記固定部材に溶着させる加熱式防水シート施工装置に関する加熱式防水シート施工システムであって、
前記加熱式防水シート施工装置に備えられ、前記固定部材を前記防水シートの上面から誘導加熱することで前記防水シートを前記固定部材に溶着する誘導加熱部と、
前記誘導加熱部を通電制御する制御部と、
通信ネットワークと接続された通信部と、が備えられ、
前記制御部は、前記誘導加熱部の使用に関する情報を含む経時的な記録データを、所定データ数ごと、または、所定時間間隔ごとに、前記通信部を介して送信するように構成されている加熱式防水シート施工システム。
【請求項4】
前記誘導加熱部が前記防水シートを前記固定部材に溶着する環境を示す環境情報を取得する環境取得部が備えられ、
前記記録データに、前記環境取得部が取得した前記環境情報が含まれる請求項3に記載の加熱式防水シート施工システム。
【請求項5】
前記通信ネットワークと接続されるとともに、前記記録データを取得するデータ取得部、及び、前記記録データを記憶する記憶部を有する管理コンピュータが備えられている請求項3または4に記載の加熱式防水シート施工システム。
【請求項6】
前記制御部及び前記通信部は前記加熱式防水シート施工装置に備えられ、
前記管理コンピュータは、前記加熱式防水シート施工装置の外部に配置されている請求項5に記載の加熱式防水シート施工システム。
【請求項7】
前記管理コンピュータに、前記記憶部に記憶された前記記録データに基づいて前記誘導加熱部の状態を判定する判定部が備えられている請求項5に記載の加熱式防水シート施工システム。
【請求項8】
前記判定部は、前記記録データを入力データとして機械学習された学習済みモデルに基づいて前記誘導加熱部の状態を判定するように構成されている請求項7に記載の加熱式防水シート施工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水下地上に点在する固定部材に防水シートを被せた状態で、防水シートの上から固定部材を誘導加熱することによって、防水シートを固定部材に溶着させる加熱式防水シート施工装置、及び、加熱式防水シート施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された加熱式防水シート施工システム(文献では「自動誘導加熱溶着システム」)では、例えばプログラム等のデータによって構成された機能部を有する制御系の制御によって、誘導加熱部(文献では「誘導加熱溶着ユニット」)の通電制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-024365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業者が加熱式防水シート施工装置の操作に慣れていない場合等において、例えば加熱式防水シート施工装置からアラーム出力が発生したり、固定部材に対する誘導加熱が上手く行かなかったりする場合が考えられる。このような場合、加熱式防水シート施工装置の製造販売業者のサポート人員等が加熱式防水シート施工装置の配置現場へ行って、加熱式防水シート施工装置の使用状況の特定作業等を行っていた。しかし、昨今、サポート人員の確保が難しくなっている。このため、加熱式防水シート施工装置を使用する使用者がアフターサービスを希望しても、サポート人員による対処が遅くなってしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、加熱式防水シート施工装置の使用状況の特定作業を迅速に行える加熱式防水シート施工装置、及び、加熱式防水シート施工システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱式防水シート施工装置は、防水下地上に点在する固定部材に防水シートを被せた状態で、前記防水シートの上から前記固定部材を誘導加熱することによって、前記防水シートを前記固定部材に溶着させる加熱式防水シート施工装置であって、前記固定部材を前記防水シートの上面から誘導加熱することで前記防水シートを前記固定部材に溶着する誘導加熱部と、前記誘導加熱部を通電制御する制御部と、通信ネットワークと接続された通信部と、が備えられ、前記制御部は、前記誘導加熱部の使用に関する情報を含む経時的な記録データを、所定データ数ごと、または、所定時間間隔ごとに、前記通信部を介して外部へ送信するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、誘導加熱部の使用に関する情報を含む経時的な記録データが、所定データ数ごと、または、所定時間間隔ごとに加熱式防水シート施工装置の外部へ送信される。このため、加熱式防水シート施工装置の配置現場へサポート人員が行かなくても、加熱式防水シート施工装置の使用状況の特定作業等が可能となる。これにより、サポート人員の移動の労力が軽減され、加熱式防水シート施工装置の使用状況の特定作業を迅速に行える。
【0008】
本発明の特徴は、加熱式防水シート施工システムにも適用可能である。その発明は、防水下地上に点在する固定部材に防水シートを被せた状態で、前記防水シートの上から前記固定部材を誘導加熱することによって、前記防水シートを前記固定部材に溶着させる加熱式防水シート施工装置に関する加熱式防水シート施工システムであって、前記加熱式防水シート施工装置に備えられ、前記固定部材を前記防水シートの上面から誘導加熱することで前記防水シートを前記固定部材に溶着する誘導加熱部と、前記誘導加熱部を通電制御する制御部と、通信ネットワークと接続された通信部と、が備えられ、前記制御部は、前記誘導加熱部の使用に関する情報を含む経時的な記録データを、所定データ数ごと、または、所定時間間隔ごとに、前記通信部を介して送信するように構成されていることを特徴とする。つまり、加熱式防水シート施工装置の使用状況の特定作業を迅速に行える加熱式防水シート施工システムが実現される。
【0009】
本発明の加熱式防水シート施工装置及び加熱式防水シート施工システムにおいて、前記誘導加熱部が前記防水シートを前記固定部材に溶着する環境を示す環境情報を取得する環境取得部が備えられ、前記記録データに、前記環境取得部が取得した前記環境情報が含まれると好適である。
【0010】
本構成であれば、環境情報を加味した加熱式防水シート施工装置の使用状況の特定作業等が可能となる。
【0011】
本発明の加熱式防水シート施工システムにおいて、前記通信ネットワークと接続されるとともに、前記記録データを取得するデータ取得部、及び、前記記録データを記憶する記憶部を有する管理コンピュータが備えられていると好適である。
【0012】
本構成であれば、通信ネットワークと接続された管理コンピュータが備えられることによって、更新プログラムや追加モードデータの一括管理が管理コンピュータで可能となる。
【0013】
本発明の加熱式防水シート施工システムにおいて、前記制御部及び前記通信部は前記加熱式防水シート施工装置に備えられ、前記管理コンピュータは、前記加熱式防水シート施工装置の外部に配置されていると好適である。
【0014】
本構成によって、管理コンピュータを遠隔地に配置することが可能となる。
【0015】
本発明の加熱式防水シート施工システムにおいて、前記管理コンピュータに、前記記憶部に記憶された前記記録データに基づいて前記誘導加熱部の状態を判定する判定部が備えられていると好適である。
【0016】
本構成であれば、判定部が記録データに基づいて誘導加熱部の状態を判定することによって、加熱式防水シート施工装置の使用状況の特定作業等が一層迅速になる。
【0017】
本発明の加熱式防水シート施工システムにおいて、前記判定部は、前記記録データを入力データとして機械学習された学習済みモデルに基づいて前記誘導加熱部の状態を判定するように構成されていると好適である。
【0018】
本構成であれば、例えば誘導加熱部に異常が発生し、発生原因が複合的な要因であったとしても、記録データに基づく加熱式防水シート施工装置の使用状況の特定作業が迅速かつ正確に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】誘導加熱溶着装置、防水シート、及び防水シート固定具を示す縦断面図である。
図2】加熱式防水シート施工システムの制御機能を示す機能ブロック図である。
図3】加熱式防水シート施工システムの制御機能を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る加熱式防水シート施工装置、及び、加熱式防水シート施工システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0021】
まず、図1を参照しながら、加熱式防水シート施工装置9を用いて行われる防水シート接着工法について説明する。防水シート接着工法は、建築工事または土木工事の防水作業、例えば陸屋根等の防水工事において、コンクリートや金属等の躯体上(以下、防水下地4と称する。)に防水シート8を張り、防水シート8を防水下地4に固定する工法である。
【0022】
〔固定工程、配置工程〕
まず、図1に示されるように、防水下地4に固定部材6を固定する工程(固定工程)、及び、固定部材6の固定面6bに防水シート8を配置する工程(配置工程)が行なわれる。詳しくは、防水下地4の上に断熱パネル5を配置し、断熱パネル5の上に固定部材6を配置し、アンカー部材7により防水下地4に固定部材6を固定する。断熱パネル5は、例えば、イソシアヌレートフォームで形成してあり、無数の独立気泡が内在している。また、適度な強度と断熱性とを備えている。
【0023】
固定部材6は、電磁誘導による加熱が可能な部材であり、例えば金属製の部材である。固定部材6は、平板状の部材であり、本実施形態では円盤状の部材である。固定部材6は、上に突出する突出部位6aを有する。突出部位6aの上面が、防水シート8が固定される面(固定面6b)である。本実施形態では、突出部位6aは円環形状であり、固定面6bは外縁6cと内縁6dとを有する円環形状である。本実施形態では、固定面6bにホットメルト接着層が設けられており、防水シート8の固定部材6への接着はホットメルト接着層の熱溶着により行なわれる。なお、防水シート8の固定部材6への接着が、ホットメルト接着層以外の手段による熱溶着により行なわれてもよい。
【0024】
アンカー部材7は、チューブワッシャ7aとビス7bとを備える。本実施形態では、チューブワッシャ7aが、固定部材6の中央の穴を貫通した状態で、断熱パネル5に上から貫入する。この状態で、例えば作業者等が、チューブワッシャ7aにビス7bを挿入し、ビス7bを防水下地4に螺合させる。これにより、アンカー部材7が固定部材6を防水下地4に固定する。
【0025】
防水シート8は、可撓性及び防水性を有するシートである。防水シート8は、例えば塩化ビニル樹脂製のシートである。
【0026】
〔接着工程〕
配置工程の後に、固定部材6を加熱して防水シート8を固定部材6に接着する工程(接着工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で加熱式防水シート施工装置9を持ち、防水シート8の上から固定部材6の上に加熱式防水シート施工装置9を当てて、加熱式防水シート施工装置9を作動させ、固定部材6を加熱する。加熱式防水シート施工装置9は、固定部材6が加熱されると、固定面6bに設けられたホットメルト接着層の温度が上昇して軟化または溶融する。これにより、固定部材6と防水シート8とが接着される。
【0027】
〔押圧工程〕
接着工程の後に、押圧具で防水シート8を押圧して防水シート8を固定部材6に密着させる工程(押圧工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で押圧具を持ち、防水シート8の上から固定部材6の上に押圧具を当てて、防水シート8を押圧する。押圧具に押されて、防水シート8が固定部材6に密着する。
【0028】
〔加熱式防水シート施工装置〕
図1に示されるように、加熱式防水シート施工装置9は、ケース11、ハンドル12、接触部材13、スイッチ14、誘導加熱部15、停止判定用温度センサ16、ブザー17、ハーネス18、環境センサ群S、及び制御装置20を備える。加熱式防水シート施工装置9は、電源や操作部等を備える本体(図示省略)を備える。ケース11と本体とがハーネス18により接続される。ケース11は、円筒形状の部材である。
【0029】
ハンドル12は、棒状の部材であって、接着工程を行う作業者がケース11を把持するための持ち手である。ハンドル12は、ケース11の上部に配置されている。
【0030】
接触部材13は、防水シート8に接触する部材である。接触部材13は、例えば、シリコンゴム製の円盤状の部材である。接触部材13は、弾性変形が可能な部材であってもよいし、硬い部材であってもよい。
【0031】
スイッチ14は、作業者から誘導加熱部15による加熱の開始の操作を受け付ける操作具である。スイッチ14は、本実施形態では、ケース11の上部に配置された押しボタンである。スイッチ14は、ハンドル12を把持した状態の作業者の手で操作が可能な位置に配置されている。スイッチ14は、ハンドル12の近傍に配置されている。
【0032】
誘導加熱部15は、平坦上に巻かれたコイルである。誘導加熱部15は、ケース11の下部に配置されている。接着工程において加熱式防水シート施工装置9が防水シート8の上に置かれたとき、誘導加熱部15は固定部材6と向かい合う状態となる。誘導加熱部15は、制御装置20により交番電流が流されて、固定部材6を誘導加熱する。
【0033】
停止判定用温度センサ16は、温度センサである。停止判定用温度センサ16は、ケース11の下部における接触部材13の近傍に配置されている。停止判定用温度センサ16は、接触部材13の温度を検出することにより、防水シート8の温度を検出する。
【0034】
ブザー17は、制御装置20により制御されて、作業者への報知を行う。例えば、ブザー17は、誘導加熱部15が作動しているときに各センサが異常を検知すると警報音を発する。
【0035】
ハーネス18は、ケース11と、制御装置20を実装する本体(不図示)と、を接続する。
【0036】
本実施形態では、環境センサ群Sは、加熱式防水シート施工装置9が用いられる環境を示す環境情報や施工状況の情報を検出するための複数のセンサを有する。環境センサ群Sは、例えば、赤外線センサ、気温センサ、湿度センサ、圧力センサ、ジャイロセンサ、Lidarセンサ、GNSS受信機、カラーカメラ、等の少なくとも一つを有する。環境センサ群Sは、本発明の『環境取得部』に相当する。
【0037】
環境センサ群Sが、赤外線センサ、気温センサ、湿度センサ等を有する構成である場合、加熱式防水シート施工装置9が用いられる場所における周辺温度や周辺湿度等の検出が可能である。環境センサ群Sが圧力センサを有する構成である場合、接触部材13の下方への押圧力の検出が可能である。環境センサ群Sがカラーカメラを有する構成である場合、防水シート8の種類の特定が可能となる。
【0038】
防水シート8と固定部材6との間に水が存在して、固定部材6の加熱に伴って水が沸騰した場合、水の気化により防水シート8が振動する。環境センサ群Sがジャイロセンサを有する構成である場合、ジャイロセンサが振動を検出できる。
【0039】
また、ケース11や誘導加熱部15の傾きがジャイロセンサによって検出されたり、圧力センサによって検出された押圧力の分布に偏りが検出されたりする場合には、誘導加熱部15が固定部材6に対して位置ズレしていることの判定が可能となる。
【0040】
環境センサ群SがGNSS受信機を有する構成である場合、加熱式防水シート施工装置9が用いられている位置情報の特定が可能である。そして、当該位置情報と、気象庁や気象予報会社のデータと、を関連付けることによって、加熱式防水シート施工装置9が用いられている場所の気象情報の取得が可能となる。
【0041】
このように、環境センサ群Sは、誘導加熱部15が防水シート8を固定部材6に溶着する環境を示す環境情報や施工状況の情報を取得する。
【0042】
〔制御システムの構成〕
図2に基づいて、加熱式防水シート施工装置9の制御システムについて説明する。本実施形態では、加熱式防水シート施工装置9の制御装置20と、管理コンピュータ30と、が通信ネットワークを介して互いにデータの送受信を可能に構成されている。通信ネットワークは、インターネット通信用のネットワークであって、無線であっても有線であっても良い。
【0043】
制御装置20は、ECU(電子制御ユニット)であり、制御部21、第一報知部22、認証部23、第一記憶部24、及び、第一通信部25を備えている。制御装置20は、環境センサ群S、スイッチ14、誘導加熱部15、停止判定用温度センサ16、及びブザー17と接続され、これらを制御可能に構成されている。第一記憶部24(HDDや不揮発性RAM等)は、上掲の機能部に対応するプログラムや設定値等を記憶する。制御装置20は、当該プログラムを実行するCPU(中央演算処理装置)を備えている。制御装置20のCPUがプログラムを実行することによって、各機能部の機能が実現される。制御装置20が、互いに通信可能な複数のECUによって構成されてもよい。なお、詳述はしないが、制御装置20に、不図示の操作パネル、不図示のディスプレイ、不図示のデータロガーユニット等が備えられている。第一通信部25は、本発明の『通信部』に相当する。
【0044】
制御部21は、誘導加熱部15を通電制御する。具体的には、制御部21は、誘導加熱部15への交流電流の供給を入切することにより、誘導加熱部15の作動を開始・停止させる。制御部21は、スイッチ14が操作されたことに応じて誘導加熱部15の作動を開始させ、停止判定用温度センサ16の出力、及び、時間経過、等に基づいて誘導加熱部15の作動を停止させる。
【0045】
第一報知部22は、加熱式防水シート施工装置9の状態、特に誘導加熱部15の作動状態を報知可能に構成されている。例えば誘導加熱部15の通電時間が超過した場合、第一報知部22はブザー17へ出力し、ブザー17が警告音を発する。
【0046】
認証部23に関しては後述するが、認証部23は、使用者に加熱式防水シート施工装置9の使用を許可するか否かに関する認証処理を実行する。第一記憶部24は、制御装置20のCPUが読み出し可能なデータを記憶する。なお、第一記憶部24は、書き込みも可能に構成されている。第一通信部25は、通信ネットワークと接続されている。
【0047】
管理コンピュータ30に、第二通信部31と、データ取得部32と、第二記憶部33と、判定部34と、第二報知部35と、が備えられている。第二通信部31は、通信ネットワークと接続されている。詳細に関しては後述するが、データ取得部32は、加熱式防水シート施工装置9の制御装置20から送られた記録データを取得するように構成されている。第二記憶部33は、当該記録データを保存する。判定部34は、第二記憶部33に保存された記録データに基づいて誘導加熱部15の状態を判定する。第二報知部35は、判定部34の判定結果を、例えば画面表示モニタやブザーや音声報知機等の少なくとも一つを用いて報知する。第二記憶部33は、本発明の『記憶部』に相当する。
【0048】
以下、加熱式防水シート施工装置9と管理コンピュータ30との間におけるデータの送受信に関して説明する。
【0049】
〔誘導加熱溶着装置の記録データに基づく判定処理について〕
本実施形態では、制御部21は、加熱式防水シート施工装置9の使用に関する経時的な記録データを、所定データ数ごと、または、所定時間間隔ごとに、第一通信部25を介して外部へ送信するように構成されている。所定データ数とは、例えば誘導加熱部15がN個分の固定部材6を加熱したデータ数である。この場合、制御部21は、誘導加熱部15がN個分の固定部材6を加熱するごとに、第一通信部25を介して外部へ送信する。Nの値は、例えば1個、10個、100個等に適宜設定変更可能である。所定時間間隔とは、例えば、誘導加熱部15の累積通電時間であっても良いし、誘導加熱部15が固定部材6を加熱した累積時間であっても良い。この場合、制御部21は、この累積時間(累積通電時間を含めて良い)が予め設定された設定時間に到達するごとに、第一通信部25を介して外部へ送信する。この設定時間は例えば30秒、1分、3分、10分等に適宜設定変更可能である。
【0050】
記録データに、誘導加熱部15の通電時間等の、誘導加熱部15の使用に関する情報が含まれる。また、本実施形態では、記録データに、環境センサ群Sが取得した環境を示す環境情報や施工状況の情報が含まれる。データ取得部32は、第二通信部31を介して加熱式防水シート施工装置9の制御部21から送られた記録データを、種別や日時ごとに分類して第二記憶部33へ保存する。
【0051】
第二記憶部33に保存された記録データは、判定部34の判定に用いられる。具体的には、判定部34は、記録データを入力データとして機械学習された学習済みモデルに基づいて、誘導加熱部15の状態を判定するように構成されている。
【0052】
例えば、誘導加熱部15の加熱時間が通常よりも長い場合には、誘導加熱部15の故障の可能性以外にも、加熱式防水シート施工装置9の使用場所の気温が低い可能性や、固定部材6に残った水分や残雪等の少なくとも一つが固定部材6の加熱に伴って沸騰している可能性等が考えられる。
【0053】
記録データには、加熱式防水シート施工装置9が使用される環境に関するデータ(環境情報)と、誘導加熱部15の稼働状況及び施工状況を示すデータと、が含まれる。このため、判定部34は、当該環境に関するデータ(環境情報)や当該稼働状況及び施工状況を示すデータ等を学習済みモデルに入力し、学習済みモデルから出力された結果に基づいて誘導加熱部15の状態を判定する。これにより、誘導加熱部15に不具合などが生じ、不具合の原因に複数の可能性が考えられる場合であっても、不具合の原因が適切に特定され易くなる。このように、判定部34は、第二記憶部33に保存された記録データに基づいて誘導加熱部15の状態を判定する。
【0054】
第二報知部35は、判定部34の判定結果を報知可能なように構成されている。例えば、誘導加熱部15の状態が異常であるとの判定結果である場合、第二報知部35は当該異常の状態をモニタやブザー、音声案内等の少なくとも一つを用いて報知する。
【0055】
固定部材6は防水シート8に覆われている。このため、作業者等は固定部材6に対する防水シート8の溶着状態を直接視認できない。上述の構成によって、管理者等による加熱式防水シート施工装置9の状態監視が可能となる。そして、遠隔地に存在する管理者や技術者等が、加熱式防水シート施工装置9の状況を把握しながら、現場の作業者等を適時適切に補助できたり、加熱式防水シート施工装置9のパラメータ設定等を適時適切に行えたりする。
【0056】
なお、記録データを入力データとする機械学習アルゴリズムが、管理コンピュータ30に実装される構成であっても良い。機械学習アルゴリズムには、例えばディープニューラルネットワークが用いられる。
【0057】
〔制御装置が管理コンピュータからデータを取得する構成について〕
本実施形態では、制御部21は、第一通信部25を介して管理コンピュータ30からデータを取得して、第一記憶部24へ記憶可能なように構成されている。管理コンピュータ30の第二記憶部33に、制御部21を動作させるためのプログラム及び設定値、使用者に加熱式防水シート施工装置9の使用を許可するか否かに関する認証情報、等が記憶されている。
【0058】
制御部21を動作させるためのプログラムは、例えば機能の追加や不具合の修正のために更新される。このため、第二記憶部33には、更新バージョン別に、複数のプログラムが保存されている。そして、制御部21は、データとして誘導加熱部15を通電制御するためのプログラムを、第一通信部25を介して管理コンピュータ30から取得して第一記憶部24へ記憶可能なように構成されている。このとき、例えば管理コンピュータ30が制御部21へプログラムの更新を通知する構成であっても良いし、制御部21が、更新プログラムの有無を管理コンピュータ30へ問い合わせる構成であっても良い。
【0059】
制御部21を動作させるための設定値が第二記憶部33に記憶されている。加熱式防水シート施工装置9は様々な環境下で使用されるが、防水シート8が固定部材6に適切に固定されるか否かに関しては、気温、湿度、防水シート8の種類、固定部材6の種類、新設であるか改修であるかの違い等の条件によって異なる。作業者が、環境的な条件を適切に把握して、加熱式防水シート施工装置9で防水シート8を固定部材6に適切に溶着させるには、作業者の経験及び技量が要求される。この作業者の経験及び技量が数値化されれば、経験の浅い作業者でも扱いの容易な加熱式防水シート施工装置9が実現される。
【0060】
設定値は、作業者の経験及び技量に基づいて決定される。そして、加熱式防水シート施工装置9の使用環境や使用条件に応じて、複数の設定値が用意される。そして、制御部21が、誘導加熱部15の通電制御のモードを切り替える際に、設定値が選択される。設定値は第二記憶部33へ追加保存可能である。このため、例えば、気温、湿度、防水シート8の種類、固定部材6の種類、新設であるか改修であるかの違い等の条件に応じて、新たなモードの追加が可能である。
【0061】
制御部21は、データとして誘導加熱部15を通電制御するための設定値を、第一通信部25を介して管理コンピュータ30から取得して第一記憶部24へ記憶可能なように構成されている。また、複数の設定値の組合せによってモードデータが構成され、このモードデータが第二記憶部33に記憶されている。制御部21は、設定値を含む複数のモードデータを、第一通信部25を介して取得して第一記憶部24へ記憶するように構成されている。また、制御部21は、複数のモードデータの中から、環境センサ群Sが取得した環境情報に適したモードデータを読み出して誘導加熱部15を通電制御する。これにより、第二記憶部33においてモードデータ(設定値)が更新されると、制御部21は管理コンピュータ30から新たなモードデータ(設定値)を取得して、第一記憶部24へ保存するとともに新たなモードデータ(設定値)を利用できる。このとき、例えば管理コンピュータ30が制御部21へモードデータ(設定値)の追加を通知する構成であっても良いし、制御部21が、追加されたモードデータ(設定値)の有無を管理コンピュータ30へ問い合わせる構成であっても良い。また、制御部21は、環境センサ群Sに応じて、モードデータを自動的に選択する構成であっても良い。更に、遠隔地に存在する管理者や技術者等が、任意の設定値やモードデータを、管理コンピュータ30から加熱式防水シート施工装置9の制御装置20へ送信することによって、加熱式防水シート施工装置9の制御装置20を遠隔操作する構成であっても良い。
【0062】
認証部23は、例えばSIMカード(Subscriber Identity Module Card)が挿入される部分であっても良いし、デジタル認証機器であっても良い。また、管理コンピュータ30の第二記憶部33に、加熱式防水シート施工装置9の使用者の認証情報が記憶されている。第二記憶部33に記憶された認証情報には、使用者に対する加熱式防水シート施工装置9の使用を許可するか禁止するかの情報が含まれる。認証部23は、加熱式防水シート施工装置9における固有の使用者情報を、第一通信部25を介して管理コンピュータ30へ送信する。管理コンピュータ30は、加熱式防水シート施工装置9の認証部23から送られた使用者情報を、第二通信部31を介して取得する。そして管理コンピュータ30は、第二記憶部33に記憶された認証情報と、加熱式防水シート施工装置9の認証部23から送られた使用者情報と、を照合し、加熱式防水シート施工装置9の使用者に対して使用を許可するか禁止するかを判定する。
【0063】
例えば、ある使用者が金銭等の支払いを行わなくなると、管理コンピュータ30は、第二記憶部33に記憶された当該使用者の認証情報に使用禁止の情報を書き込む。また、例えば、ある使用者に一つだけの加熱式防水シート施工装置9の使用が許可され、かつ、複数の加熱式防水シート施工装置9から同一使用者の使用者情報が検出される場合が考えられる。この場合には、管理コンピュータ30は、不正使用とみなして第二記憶部33に記憶された当該使用者の認証情報に使用禁止の情報を書き込む。
【0064】
制御部21は、データとして誘導加熱部15を使用する使用者の使用を許可するか否かに関する認証情報を、第一通信部25を介して取得する。そして制御部21は、当該認証情報が使用者の使用を許可するものである場合に誘導加熱部15の加熱を許可し、当該認証情報が使用者の使用を許可するものでない場合に誘導加熱部15の加熱を禁止するように構成されている。当該認証情報が使用者の使用を許可するものでない場合、制御部21が誘導加熱部15の通電を遮断する構成であっても良いし、制御装置20のオペレーティングシステムがシャットダウンする構成であっても良い。
【0065】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0066】
(1)上述の実施形態では、接着工程を行う作業者がハンドル12を持ってケース11を把持する加熱式防水シート施工装置9が開示されている。この実施形態に限定されず、例えば自走式の走行機IHbを備えた誘導加熱機IHに制御装置20の構成が実装されても良い。加えて、加熱式防水シート施工システムとして、制御装置20とデータ通信可能な管理コンピュータ30が備えられる構成であっても良い。図3に示すように、走行機IHbを備えた誘導加熱機IHに制御装置20の構成が実装されている。更に、制御装置20とデータ通信可能な管理コンピュータ30が備えられている。なお、当該走行機IHbを備えた誘導加熱機IHは、自動走行機能を備えたものであっても良いし、操作者によるリモコン操縦、または作業者によって移動される手押し車式、作業者によって持ち運ばれる携帯式で構成してもよい。また、加熱式防水シート施工装置9、及び、当該走行機IHbを備えた誘導加熱機IHは、例えば建物内で用いられるものであっても良いし、トンネル内で用いられるものであっても良い。この場合、加熱式防水シート施工装置9、及び、当該走行機IHbを備えた誘導加熱機IHの施工対象は、防水シート8に代えて、建築内装材料であっても良いし、土木シートであっても良い。
【0067】
(2)上述の実施形態における第一通信部25及び第二通信部31は、有線接続によって通信する構成であっても良いし、無線接続によって通信する構成であっても良い。
【0068】
(3)上述の実施形態では、制御部21は、誘導加熱部15の使用に関する情報を含む経時的な記録データを、第一通信部25を介して管理コンピュータ30へ送信可能なように構成されている。この実施形態に限定されず、制御部21は、記録データを管理コンピュータ30に代えて他のデータロガー端末や他のクライアントサーバへ第一通信部25を介して送信する構成であっても良い。
【0069】
(4)上述の実施形態では、制御部21及び第一通信部25は加熱式防水シート施工装置9に備えられている。この実施形態に限定されず、例えば制御部21及び第一通信部25は加熱式防水シート施工装置9に備えられず、別の装置に備えられる構成であっても良い。この場合、制御部21及び第一通信部25を実装する装置と、加熱式防水シート施工装置9と、が通信ケーブルで接続される構成であっても良いし、短距離無線通信(例えば300メートル以内の範囲で通信可能な無線通信)で接続される構成であっても良い。
【0070】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、防水下地上に点在する固定部材に防水シートを被せた状態で、防水シートの上から固定部材を誘導加熱することによって、防水シートを固定部材に溶着させる加熱式防水シート施工装置、及び、加熱式防水シート施工システムに適用できる。
【符号の説明】
【0072】
4 :防水下地
6 :固定部材
8 :防水シート
9 :加熱式防水シート施工装置
15 :誘導加熱部
25 :第一通信部(通信部)
21 :制御部
30 :管理コンピュータ
32 :データ取得部
33 :第二記憶部(記憶部)
34 :判定部
S :環境センサ群(環境取得部)
図1
図2
図3