(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089252
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】水処理用微生物固定化担体
(51)【国際特許分類】
C02F 3/10 20230101AFI20240626BHJP
【FI】
C02F3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204510
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智幸
(72)【発明者】
【氏名】廣川 惣一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩井 美穂子
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AA12
4D003AB01
4D003EA01
4D003EA14
4D003EA19
4D003EA26
4D003EA30
4D003EA38
(57)【要約】
【課題】水処理槽内に投入後速やかに沈降し、良好な水中流動性を有し、環境負荷が小さい水処理用微生物固定化担体を提供する。
【解決手段】ポリウレタンフォームで形成された水処理用微生物固定化担体であって、担体の内部に設定可能な最も長い直線の長さが121mm以下である前記水処理用微生物固定化担体は、25℃の純水における水面から水中への沈降時間が30秒以下、かつ水中における沈降速度が4.0cm/秒以下であり、下記(試験1)において、曝気開始から終了までの間、前記水処理用微生物固定化担体は流動し、かつ水槽の高さを超える量の泡が発生しない、水処理用微生物固定化担体。
(試験1)幅150mm×奥行150mm×高さ350mmの前記水槽に、5Lの純水と、嵩容積で0.5L分の前記水処理用微生物固定化担体とを入れ、該水処理用微生物固定化担体を該水槽の底面に沈降させた後、流量1.5L/分で10分間曝気する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォームで形成された水処理用微生物固定化担体であって、
担体の内部に設定可能な最も長い直線の長さが121mm以下である前記水処理用微生物固定化担体は、25℃の純水における水面から水中への沈降時間が30秒以下、かつ水中における沈降速度が4.0cm/秒以下であり、
下記(試験1)において、曝気開始から終了までの間、前記水処理用微生物固定化担体は流動し、かつ水槽の高さを超える量の泡が発生しない、水処理用微生物固定化担体。
(試験1)幅150mm×奥行150mm×高さ350mmの前記水槽に、5Lの純水と、嵩容積で0.5L分の前記水処理用微生物固定化担体とを入れ、25℃にて該水処理用微生物固定化担体を該水槽の底面に沈降させた後、流量1.5L/分で10分間曝気する。
【請求項2】
水膨潤時の膨潤密度が15.0~60.0kg/m3である、請求項1に記載の水処理用微生物固定化担体。
【請求項3】
絶乾状態の体積に対する水膨潤時の体積の比で表される体積膨潤率が150超250%以下である、請求項1又は2に記載の水処理用微生物固定化担体。
【請求項4】
セル構造が、ウォール構造である、請求項1又は2に記載の水処理用微生物固定化担体。
【請求項5】
絶乾密度が、35.0~100.0kg/m3である、請求項1又は2に記載の水処理用微生物固定化担体。
【請求項6】
前記膨潤密度が20.0~30.0kg/m3である、請求項2に記載の水処理用微生物固定化担体。
【請求項7】
前記絶乾密度が、45.0~55.0kg/m3である、請求項5に記載の水処理用微生物固定化担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理用微生物固定化担体(以下、単に「担体」とも言う。)に関する。
【背景技術】
【0002】
下水やし尿、産業排水等の有機排水の水処理において、微生物により有機物を分解させて水を浄化処理する方法がある。微生物を利用した水処理方法の一つとして、樹脂やセラミックス等の担体に、水処理に有効な微生物を付着(固定化)させた水処理用微生物固定化担体を用いる方法が知られている。水処理用微生物固定化担体は、水処理槽内において、所定の位置に保持される固定床や、微生物による水処理能力向上等の観点から、曝気にて移動可能な状態で使用される流動床等の態様で使用される。
【0003】
従来のポリウレタンフォーム製の担体は、親水性に劣るため、排水処理場の生物処理槽に投入した場合、水に容易に沈降せず水面に浮かんでいる時間が長く、一度に大量の担体を投入すると担体が生物処理槽からあふれたり風で飛ばされてしまうため、担体を必要量投入するまでに時間がかかるという問題があった。従って担体は、水処理用微生物固定化担体投入の効率化の観点から、水処理槽内に投入後、速やかに水面から水中に沈降することが求められる。
ここで、例えば密度の高い担体であれば、担体を水面から水中に早く沈降させることができる。しかし流動床に使用される担体は、水中に沈降した後、曝気によって担体が生物処理槽内を流動することにより、該生物処理槽内の微生物量を高濃度に維持し、処理性能を高く保つことができる。従って担体は、排水処理性能を高く保つため、水中に沈降後、生物処理槽内を十分に流動することが求められる。
このような課題に対して、例えば、特許文献1では、担体をアルコールもしくは界面活性剤溶液中に浸漬して担体自体を親水化することが記載されている。また、例えば、特許文献2では、生物処理槽の槽内水に浸透剤を添加した後に担体を投入し、該担体が沈降した後に曝気を開始して槽内水の旋回流によって担体を流動化させると共に消泡剤を添加することを特徴とする担体の投入方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-15889号公報
【特許文献2】特開2002-126776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の担体は、親水化されていることから、水処理槽内に投入後、速やかに水面から水中に沈降することができる。しかしながら、投入後に水処理槽内にアルコールや界面活性剤が溶出し、排水の水質を悪化させるという問題があった。さらに、流動床では、界面活性剤が溶出した状態で曝気を開始すると、界面活性剤の影響で気泡が発生し、発生した気泡が担体に付着して担体の流動を阻害するという問題もあった。
また、特許文献2に記載の担体においても、槽内水に浸透剤(界面活性剤)が添加されていることから、速やかに水面から水中に沈降することができる。しかしながら、槽内水に添加された浸透剤により曝気後気泡が発生するため消泡剤が必要となるが、浸透剤や消泡剤により、排水の水質が悪化するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、水処理槽内に投入後速やかに水面から水中に沈降し、良好な水中流動性を有し、かつ環境負荷が小さい水処理用微生物固定化担体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定の担体が、水処理槽内に投入後速やかに水面から水中に沈降し、良好な水中流動性を有し、環境負荷が小さいことを見出したことに基づくものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。
[1]ポリウレタンフォームで形成された水処理用微生物固定化担体であって、
担体の内部に設定可能な最も長い直線の長さが121mm以下である前記水処理用微生物固定化担体は、25℃の純水における水面から水中への沈降時間が30秒以下、かつ水中における沈降速度が4.0cm/秒以下であり、
下記(試験1)において、曝気開始から終了までの間、前記水処理用微生物固定化担体は流動し、かつ水槽の高さを超える量の泡が発生しない、水処理用微生物固定化担体。
(試験1)幅150mm×奥行150mm×高さ350mmの前記水槽に、5Lの純水と、嵩容積で0.5L分の前記水処理用微生物固定化担体とを入れ、25℃にて該水処理用微生物固定化担体を該水槽の底面に沈降させた後、流量1.5L/分で10分間曝気する。
[2]水膨潤時の膨潤密度が15.0~60.0kg/m3である、上記[1]に記載の水処理用微生物固定化担体。
[3]絶乾状態の体積に対する水膨潤時の体積の比で表される体積膨潤率が150超250%以下である、上記[1]又は[2]に記載の水処理用微生物固定化担体。
[4]セル構造が、ウォール構造である、上記[1]又は[2]に記載の水処理用微生物固定化担体。
[5]絶乾密度が、35.0~100.0kg/m3である、上記[1]又は[2]に記載の水処理用微生物固定化担体。
[6]前記膨潤密度が20.0~30.0kg/m3である、上記[2]に記載の水処理用微生物固定化担体。
[7]前記絶乾密度が、45.0~55.0kg/m3である、上記[5]に記載の水処理用微生物固定化担体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水処理槽内に投入後速やかに水面から水中に沈降し、良好な水中流動性を有し、環境負荷が小さい水処理用微生物固定化担体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】水処理用微生物固定化担体のリブ構造の例を示す図である。
【
図2】本発明の水処理用微生物固定化担体の一実施形態であるウォール構造の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の水処理用微生物固定化担体の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
[水処理用微生物固定化担体]
本発明の水処理用微生物固定化担体は、ポリウレタンフォームで形成された水処理用微生物固定化担体であって、担体の内部に設定可能な最も長い直線の長さが121mm以下である前記水処理用微生物固定化担体は、25℃の純水における水面から水中への沈降時間が30秒以下、かつ水中における沈降速度が4.0cm/秒以下である。そして、下記(試験1)において、曝気開始から終了までの間、前記水処理用微生物固定化担体は流動し、かつ水槽の高さを超える量の泡が発生しない。
(試験1)幅150mm×奥行150mm×高さ350mmの前記水槽に、5Lの純水と、嵩容積で0.5L分の前記水処理用微生物固定化担体とを入れ、該水処理用微生物固定化担体を該水槽の底面に沈降させた後、流量1.5L/分で10分間曝気する。
上記のような担体は、水処理槽内に投入後速やかに沈降し、良好な水中流動性を有する。よって、担体の表面を薬剤処理のよって親水化する必要がなく、また、水処理槽内に界面活性剤や、浸透剤等を添加する必要がないため、前記担体を用いることで、環境負荷を低減することができる。
【0013】
担体の内部に設定可能な最も長い直線の長さが121mm以下である前記担体は、25℃の純水における水面から水中への沈降時間が、30秒以下であり、好ましくは20秒以下、より好ましくは15秒以下、さらに好ましくは10秒以下、よりさらに好ましくは5秒以下であり、好ましくは0.1秒以上である。水面から水中への沈降時間が30秒以下であると、担体は水処理槽内に投入後速やかに沈降するため、担体を必要量投入するのに要する時間が短く、効率の良い担体投入作業ができる。0.1秒以上であると、担体は、より良好な密度を有し、より良好な水中流動性を有する。
なお、本明細書における「水面から水中への沈降時間」とは、担体の内部に設定可能な最も長い直線の長さが121mm以下である前記担体1個を、水槽、ビーカー、ディスポーサブルカップ等に入れて静置した25℃の純水の水面のすぐ上からそっと水面上に落下させ、該担体が純水と接してから担体の全てが水面下(水中)に沈降するまでの時間を言う。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0014】
前記担体は、水中における沈降速度が4.0cm/秒以下であり、好ましくは3.7cm/秒以下、より好ましくは3.5cm/秒以下であり、好ましくは0.5cm/秒以上、より好ましくは1.0cm/秒以上、さらに好ましくは2.0cm/秒以上、よりさらに好ましくは2.9cm/秒以上である。水中における沈降速度が4.0cm/秒以下であると、担体の密度が高すぎず、良好な水中流動性を有する。0.5cm/秒以上であると、担体の密度が低すぎず、担体が水面に浮上し難く、より良好な水中流動性を有する。
なお、本明細書における「水中における沈降速度」とは、担体の内部に設定可能な最も長い直線の長さが121mm以下である前記担体を、高さ1.5mの円筒型の水槽に入れて静置した25℃の純水の水面に落下させ、該担体全体を水面下(水中)に沈降させ、該担体に含まれる気泡を取り除いた後、水面下で該担体を離して1m沈降するのに要する時間を測定し、10個の担体の測定値の平均値として求められる、水中を沈降する速度を言う。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0015】
担体は、上記(試験1)において、曝気開始から終了までの間、流動し、かつ水槽の高さを超える量の泡が発生しない。
なお、本明細書において、上記(試験1)における曝気とは、直径1cmの円筒状のエアレーション部品を水槽の底面外周の1辺の中央に沿うように設置して、流量が1.5L/分となるように調整した状態を言い、上記(試験1)における「流動」とは、前記水槽に入れた嵩容積で0.5L分の前記担体が、該水槽の底面に留まることなく、水中を動いていることを言う。また、「水槽の高さを超える量の泡が発生しない」とは、水槽内で発生する泡が、水槽の高さを超える量発生することがないこと言う。ここで、水槽の高さを超える量の泡が発生するということは、担体から槽内の水に界面活性剤等、泡立つ成分が溶け出し、環境負荷が大きいということが分かる。
【0016】
前記担体は、速やかに水面から水中に沈降させる観点、及び良好な水中流動性の観点から、水膨潤時の膨潤密度が、好ましくは15.0~60.0kg/m3、より好ましくは18.0~40.0kg/m3、さらに好ましくは20.0~30.0kg/m3、よりさらに好ましくは20.0~28.9、よりさらに好ましくは24.0~28.9である。前記担体の水膨膨潤時の膨潤密度が15.0~60.0kg/m3であると、速やかに水面から水中に沈降させやすく、良好な水中流動性を得やすい。
なお、本明細書における「膨潤密度」とは、前記担体の絶乾状態の質量を水膨潤時の体積で除した値を言う。「絶乾状態」とは、絶対乾燥状態とも言い、前記担体を、ポリウレタン樹脂の耐熱温度以下である100℃で乾燥させて、質量の減少が見られなくなった状態を言う。「水膨潤時」とは、前記担体を25℃の純水に1時間浸漬させた状態を言う。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0017】
前記担体は、速やかに水面から水中に沈降させる観点、及び良好な水中流動性の観点から、体積膨潤率が、好ましくは150%超250%以下、より好ましくは160~200%、さらに好ましくは165~180%である。前記担体の体積膨潤率が150%超250%以下であると、速やかに水面から水中に沈降させやすく、良好な水中流動性を得やすい。
なお、本明細書における「体積膨潤率」とは、前記担体の絶乾状態の体積に対する水膨潤時の体積の比で表される値を言う。
絶乾状態の体積は、前記担体の気孔(セル)の体積も含み、外形の寸法に基づいて求められる体積とする。例えば、外形が直方体又は立方体の場合、縦、横及び高さの3辺の長さの積として算出される値とする。水膨潤時の体積も、同様に、外形の寸法に基づいて求められる体積であり、担体のセル及び内部の水の体積も含む。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0018】
前記担体のセル構造は、水中で微生物、酸素、及び微生物の栄養源となる基質等を十分に内部に侵入させて、該担体に微生物を固定化させやすくする観点から、連通気孔構造であることが好ましい。また、セル構造を構成するポリウレタンによる骨格部分は、例えば
図1に示すような細い棒状の骨格からなる、いわゆるリブ構造であるよりも、例えば
図2に示すような隣接セル間が部分的に膜状であり、表面積が大きい壁面で区画された、いわゆるウォール構造であることが好ましい。なお、本明細書における「ウォール構造」とは、
図2の例に示すように、セル構造を電子顕微鏡で観察し、気孔間に膜が観察されるものをウォール構造とする。
【0019】
前記担体のセル構造としては、水膨潤時の平均気孔数が、好ましくは5~30個/25mm、より好ましくは8~25個/25mm、さらに好ましくは10~20個/25mmである。前記担体の水膨潤時の平均気孔数が5~30個/25mmである場合、水中で微生物、酸素、及び微生物の栄養源となる基質等を十分に内部に侵入させて、該担体に微生物を固定化させやすくすることができる。
なお、本明細書における「平均気孔数」とは、水膨潤時の前記担体の任意の3本の長さ25mmの直線上に存在する気孔数の平均値を言う。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0020】
前記担体は、速やかに水面から水中に沈降させる観点、及び良好な水中流動性の観点から、絶乾密度が、好ましくは35.0~100.0kg/m3、より好ましくは40.0~70.0kg/m3、さらに好ましくは45.0~55.0kg/m3、よりさらにより好ましくは45.0~54.0である。前記担体の絶乾密度が35.0~100.0kg/m3であると、速やかに水面から水中に沈降させやすく、良好な水中流動性を得やすい。
なお、本明細書における「絶乾密度」とは、前記担体の上記「絶乾状態」における密度を言う。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0021】
担体の大きさは、特に限定されるものではなく、水処理槽の形態や規模、水中沈降性、水中流動性、水膨潤性、微生物付着性、取り扱い性及び製造効率等を考慮して、適宜設定することができる。例えば、担体が流動床用であって、直方体状や立方体状の場合、各一辺の長さが、3~70mm程度であることが好ましく、より好ましくは5~70mm、さらに好ましくは5~50mm、よりさらに好ましくは8~40mmである。
担体の内部に設定可能な最も長い直線の長さで言うと、5~121mm程度であることが好ましく、より好ましくは9~121mm、さらに好ましくは9~87mm、よりさらに好ましくは14~69mmである。
【0022】
本発明の担体は、固定床であっても、流動床であっても好適に用いることができるが、良好な水中流動性を有することから、流動床においてより効果を発揮することができる。
【0023】
<ポリウレタンフォーム>
本発明の担体は、ポリウレタンフォームで形成される。
前記ポリウレタンフォームとしては、例えば、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム等が挙げられる。水処理槽内に投入後速やかに沈降し、良好な水中流動性を有し、環境負荷が小さい担体を得る観点から、軟質ポリウレタンフォームが好ましい。軟質ポリウレタンフォームは、耐薬品性及び耐摩耗性にも優れた良好な柔軟性を有しており、担体として好適に用いることができる。
【0024】
軟質ポリウレタンフォームは、公知の軟質ポリウレタンフォームの製造方法で製造したものを用いることができる。中でも、後述するウレタンプレポリマー及びポリイソシアネート化合物(a)を含むA液と、硬化剤及び発泡剤を含むB液とを混合して発泡して製造したものが好適である。
【0025】
〔A液〕
前記軟質ポリウレタンフォームの原料液の1つであるA液は、ウレタンプレポリマー及びポリイソシアネート化合物(a)を含み、さらに、無機フィラーを含んでいてもよい。
【0026】
(ウレタンプレポリマー)
ウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物と、該ポリオール化合物の水酸基に対して、イソシアネート基のモル当量比が過剰となる量のポリイソシアネート化合物(b)とを反応させて得られるポリマーであり、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有している。前記ウレタンプレポリマーは、1種単独であっても、2種以上を併用してもよい。
このようなプレポリマーを原料化合物として用いることにより、軟質ポリウレタンフォームの生成反応が進行しやすくなり、密度やセル構造のバラつきが小さく、均質性に優れた軟質ポリウレタンフォームが得られやすい。
【0027】
前記ウレタンプレポリマーとしては、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネート化合物(b)とを反応させて得られた、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリエーテル系ウレタンプレポリマーが好ましい。
【0028】
ポリエーテルポリオールも、ポリエステルポリオールも、いずれも親水性を付与し得るが、ポリエステルポリオールに比べて、ポリエーテルポリオールの方が耐加水分解性に優れている。製造される軟質ポリウレタンフォームは、担体として水中で用いられるものであるため、該軟質ポリウレタンフォームの耐久性の観点から、ポリエーテルポリオールが、ポリエステルポリオールよりも好ましい。
【0029】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。これらは、それぞれ、環状エーテル化合物である、酸化エチレン(EO)、酸化プロピレン(PO)、テトラヒドロフランの開環重合により得られる。前記ポリエーテルポリオールは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、前記環状エーテル化合物の共重合体であってもよく、水処理槽内に投入後速やかに水面から水中に沈降し、良好な水中流動性を有する担体を得る観点から、特に、EO-PO共重合体が好ましい。
EO-PO共重合体におけるEOとPOとのモノマー組成比は、質量比で70/30~30/70であることが好ましく、より好ましくは65/35~40/60、さらに好ましくは60/40~50/50である。
【0030】
前記ポリエーテルポリオールは、取り扱いやすさ等の観点から粘度が高すぎないことが好ましく、数平均分子量が1000~8000であることが好ましく、より好ましくは2000~7000、さらに好ましくは2500~5000である。
【0031】
前記ポリエーテルポリオールと反応させるポリイソシアネート化合物(b)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、特に限定されるものではない。前記ポリイソシアネート化合物(b)としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物(b)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ポリイソシアネート化合物(b)は、異性体がある化合物である場合には、各異性体の1種のみでもよく、2種以上の異性体の混合物であってもよい。例えば、TDIは、トルエン-2,4-ジイソシアネート(2,4-TDI)とトルエン-2,6-ジイソシアネート(2,6-TDI)の2種の異性体があり、2,4-TDI及び2,6-TDIのいずれか一方のみを用いても、2種の混合物を用いてもよい。
【0033】
(ポリイソシアネート化合物(a))
A液に含まれるポリイソシアネート化合物(a)は、特に限定されるものではなく、具体例としては、前記ウレタンプレポリマーの合成に用いられるポリイソシアネート化合物(b)について例示したものと同様のものが挙げられる。ポリイソシアネート化合物(a)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、ポリイソシアネート化合物(a)は、前記ウレタンプレポリマーの合成に用いられるポリイソシアネート化合物(b)と同じであっても、異なっていてもよい。
【0034】
A液中のポリイソシアネート化合物(a)の含有量は、該A液の粘度や軟質ポリウレタンフォームの親水性等を考慮して設定されるが、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1~25質量部、さらに好ましくは2~20質量部である。
【0035】
(無機フィラー)
A液は、必要に応じて、無機フィラーを含んでいてもよい。前記無機フィラーを用いることにより、製造される軟質ポリウレタンフォームの比重を調整することができ、該軟質ポリウレタンフォームを用いて作製した担体を水に投入した際に速やかに水中に沈降させることができる。
前記無機フィラーとしては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、活性炭、ゼオライト等が挙げられる。前記無機フィラーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、A液中での分散性や製造される軟質ポリウレタンフォームの比重等の観点から、硫酸バリウムが好ましい。
【0036】
前記無機フィラーは、製造される軟質ポリウレタンフォーム中での均一な分散性等の観点から、平均粒径が0.1~100μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~70μm、さらに好ましくは1~50μmである。
なお、本明細書で言う「平均粒径」とは、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(D50)を指す。具体的には、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置「MT3300」(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定されたD50値とする。
【0037】
A液が無機フィラーを含む場合、該無機フィラーの含有量は、製造される軟質ポリウレタンフォームの比重等の物性に応じて適宜調整されるが、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1~25質量部、さらに好ましくは2~20質量部である。
【0038】
A液には、ウレタンプレポリマー、ポリイソシアネート化合物(a)及び無機フィラー以外に、必要に応じて、溶剤、触媒、また、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。ただし、軟質ポリウレタンフォームの製造効率の観点から、A液100質量%中、ポリウレタンの合成原料であるウレタンプレポリマー及びポリイソシアネート化合物(a)の合計含有量が、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは35~100質量%、さらに好ましくは40~100質量%である。
【0039】
〔B液〕
B液は、硬化剤及び発泡剤を含む。B液は、A液の原料化合物を硬化発泡させる役割を有している。
【0040】
(硬化剤)
硬化剤は、ウレタンプレポリマー及びポリイソシアネート化合物(a)を架橋硬化させるために添加されるものであり、架橋剤と呼ばれる場合もある。
前記硬化剤としては、例えば、水;グリセリン、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコール;エタノールアミン類、ポリエチレンポリアミン類等のアミン化合物等が挙げられる。また、前記多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を開環重合させたポリオール類、前記アミン化合物に少量のプロピレンオキサイドを付加したもの等も挙げられる。これらの硬化剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。前記硬化剤の中でも、反応性、取り扱い容易性やコスト等の観点から、水が好ましい。
B液中の硬化剤の含有量は、軟質ポリウレタンフォームの柔軟性や弾力性、強度等を考慮して、適宜設定することができる。
【0041】
(発泡剤)
発泡剤は、軟質ポリウレタンフォームのフォーム形成のために添加される。前記発泡剤は、ポリウレタンの生成反応時に、イソシアネート基との反応により二酸化炭素ガスを発生したり、発泡剤自体が発熱によって気化することによって、ポリウレタンを発泡させる。
前記発泡剤としては、例えば、水、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)、炭酸ガス、シクロペンタン等の炭化水素等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。前記発泡剤の中でも、取り扱い容易性やコスト、環境保全等の観点から、水単独での使用が好ましい。
B液中の発泡剤の含有量は、軟質ポリウレタンフォームの発泡速度(フォーム生成速度)、A液及びB液の混合状態等を考慮して、適宜設定することができる。
【0042】
上記のように、水は、硬化剤として、また、発泡剤としての両方の働きをするものであり、B液の原料化合物として好適である。この場合、硬化剤かつ発泡剤として用いられる水のB液中の含有量は、ポリウレタンの合成原料であるA液中のウレタンプレポリマー及びポリイソシアネート化合物(a)の合計100質量部に対して、好ましくは60~90質量部、より好ましくは65~85質量部、さらに好ましくは70~80質量部である。
【0043】
B液には、硬化剤及び発泡剤以外に、必要に応じて、溶剤、触媒、整泡剤や着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。ただし、軟質ポリウレタンフォームの製造効率の観点から、B液100質量%中、硬化剤及び発泡剤の合計含有量が、85~100質量%であることが好ましく、より好ましくは90~99質量%、さらに好ましくは95~98質量%である。
【0044】
前記整泡剤は、フォームの状態を調整するために添加される。前記整泡剤としては、例えば、界面活性剤、シリコーンオイル等が挙げられる。これらの整泡剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。前記整泡剤の中でも、分子末端に水酸基を有し、イソシアネートと化学的な結合が可能であり、泡立ちが少ない、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
B液が前記整泡剤を含む場合、軟質ポリウレタンフォーム中に余剰の整泡剤が残存し、該軟質ポリウレタンフォームを用いて作製した担体を水に投入した際に泡立ちが生じることを抑制する観点、及び環境負荷を低減する観点から、B液100質量%中の整泡剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0045】
〔軟質ポリウレタンフォームの製造方法〕
前記軟質ポリウレタンフォームは、上述したA液及びB液を混合して発泡させることにより製造することが好ましい。
【0046】
A液とB液との混合比は、水処理槽内に投入後速やかに水面から水中に沈降し、良好な水中流動性を有する担体を得る観点から、質量比で55/45~65/35であることが好ましく、より好ましくは57/43~63/37、さらに好ましくは58/42~62/38である。
【0047】
A液及びB液のそれぞれの混合前の温度は、特に限定されない。
水処理槽内に投入後速やかに水面から水中に沈降し、良好な水中流動性を有する担体を得る観点から、A液及びB液を混合した直後(混合~混合20秒後)の混合液(A液及びB液の混合液)の温度が、18~36℃となるように混合することが好ましく、より好ましくは23~33℃、さらに好ましくは25~32℃である。A液及びB液を混合した直後の混合液の温度が、18~36℃であると、ポリウレタンの生成反応及び発泡が適度な速度で進行し、良好な水中流動性を有する担体が得られやすい。また、適度な絶乾密度及び水膨潤時の膨潤密度を有する担体が得られやすい。このような条件で得られた軟質ポリウレタンフォームで形成された担体は、樹脂量が適切であり、強度が強く、変形し難く、処理槽のスクリーンの目詰まりや、変形して処理槽から漏出する等の不都合を抑制することができる。
【0048】
A液及びB液を混合して発泡させる方法は、具体的には、原料を撹拌混合してそれぞれ調製したA液及びB液を、ミキシングヘッドを用いて混合して注型発泡成形する方法等により行うことができる。
【0049】
注型したA液及びB液の原料混合液の樹脂化反応、すなわち、ポリウレタンの生成反応の進行は、原料混合液がゲル化し始めた時間を目安として確認することができる。ミキシングヘッドを用いてA液及びB液の原料混合液を注型する場合、ミキシングヘッドからの前記原料混合液の吐出開始時点から、注型した該原料混合液のゲル化が開始するまでの時間を表すゲルタイムが、ポリウレタンの生成反応の速度の目安となる。
上記のようにして注型発泡成形を行う場合のゲルタイムは、水処理槽内に投入後速やかに水面から水中に沈降し、良好な水中流動性を有する担体を得る観点から、好ましくは90~150秒、より好ましくは95~130秒、さらに好ましくは100~120秒である。
【0050】
また、注型された前記原料混合液の発泡反応の進行は、注型した型内の該原料混合液の反応により生じたフォームの膨張に伴う高さの変動を目安として、目視観察にて確認することができる。ミキシングヘッドを用いてA液及びB液の原料混合液を注型する場合、ミキシングヘッドからの前記原料混合液の吐出開始時点から、前記型内のフォームの高さの変動が停止するまでの時間を表すライズタイムが、ポリウレタンの発泡反応の速度の目安となる。
上記のようにして注型発泡成形を行う場合のライズタイムは、水処理槽内に投入後速やかに水面から水中に沈降し、良好な水中流動性を有する担体を得る観点から、好ましくは135~195秒、より好ましくは140~190秒、さらに好ましくは145~185秒である。
【0051】
[水処理用微生物固定化担体の製造方法]
前記担体は、例えば、前記軟質ポリウレタンフォームを、ブロック状体として得られたものを、所望のサイズに切断加工等することにより、製造することができる。
【実施例0052】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
下記実施例及び比較例に示す各方法により、担体を製造した。
【0053】
[製造原料]
担体の製造原料の詳細を以下に示す。
<A液>
・ウレタンプレポリマー:TDI変性EO-PO共重合体;EO/PO質量比:55/45、EO-PO共重合体の数平均分子量:2700(理論値)、NCO(イソシアネート基)含有量:4.5質量%
・ポリイソシアネート化合物(a):TDI;「コロネート(登録商標) T-80」、東ソー株式会社製、2,4-TDI/2,6-TDI質量比:80/20
・無機フィラー:硫酸バリウム;堺化学工業株式会社製、平均粒径20~30μm、比重4.3
【0054】
<B液>
・硬化剤・発泡剤:水
・整泡剤:ノニオン性界面活性剤;「ニューポール(登録商標) PE-75」、三洋化成工業株式会社製
【0055】
(実施例1)
ウレタンプレポリマー 400kg、ポリイソシアネート化合物(a)53.4kg、及び硫酸バリウム50.0kgを撹拌混合し、A液(A1)を調製した。
また、水350kg及び整泡剤7kgを撹拌混合し、B液(B1)を調製した。
調製したA液及びB液をそれぞれのタンクから、配合質量比1.48(A液/B液)でミキシングヘッドにポンプで送液し混合した。その原料混合液の混合開始から10秒後の温度は24℃であった。前記ミキシングヘッドから、A液及びB液の原料混合液を吐出させ、注型発泡成形して、軟質ポリウレタンフォームを製造した。ゲルタイムは115秒、ライズタイムは180秒であった。
得られた軟質ポリウレタンフォームを切断することによって、1辺の長さが10mmの立方体である担体(X1)を得た。
【0056】
(実施例2及び3)
実施例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォームを製造した後、下記表1に示す形状及び大きさに切断することによって担体(X2)及び(X3)を得た。
【0057】
(実施例4)
実施例1と同様に調製したA液及びB液をそれぞれのタンクから、配合質量比1.48(A液/B液)でミキシングヘッドにポンプで送液し混合した。その原料混合液の混合開始から10秒後の温度は27℃であった。前記ミキシングヘッドから、A液及びB液の原料混合液を吐出させ、注型発泡成形して、軟質ポリウレタンフォームを製造した。ゲルタイムは102秒、ライズタイムは159秒であった。
得られた軟質ポリウレタンフォームを切断することによって、1辺の長さが10mmの立方体である担体(X4)を得た。
【0058】
(実施例5及び6)
実施例4と同様にして、軟質ポリウレタンフォームを製造した後、下記表1に示す形状及び大きさに切断することによって担体(X5)及び(X6)を得た。
【0059】
(比較例1及び3)
軟質ポリウレタンフォーム「ミニスリム 水キレキッチンスポンジ(DA-597)」(株式会社大創産業製)の白色部分を、下記表1に示す形状及び大きさに切断することによって担体(Z1)及び(Z3)を得た。
【0060】
(比較例2)
軟質ポリウレタンフォーム「ミニスリム 水キレキッチンスポンジ」(株式会社大創産業製)の白色部分を、下記表1に示す形状及び大きさに切断した。切断した軟質ポリウレタンフォームを、非イオン界面活性剤「エマルミン NL-70」(三洋化成株式会社製)に1分間浸漬し、取り出した後、手で絞ることにより余分な「エマルミン NL-70」を除き、表面が界面活性剤で処理された担体(Z2)を得た。
【0061】
(比較例4)
ABS樹脂「ブラック丸パイプ24」(株式会社光モール製)を、下記表1に示す形状及び大きさに切断することによって担体(Z4)を得た。
【0062】
【0063】
[物性測定]
下記の各種項目の物性測定を行った。その結果を表2に示す。
なお、物性測定は、担体(X1)~(X6)及び担体(Z1)~(Z4)をそれぞれ切り出して試験片を作製し、その試験片を用いて測定した。
なお、担体(Z2)の絶乾密度、膨潤密度、体積膨潤率、及び平均気孔数は、前記非イオン界面活性剤に浸漬する前の状態、すなわち表面が界面活性剤で処理されていない状態で切り出して作製した試験片を測定した結果である。
【0064】
<絶乾密度>
試験片(50mm×50mm×10mm)を電子天秤で秤量し、100℃の乾燥器内で乾燥させ、絶乾状態の質量Mdを測定した。
また、絶乾状態における試験片の各辺の長さをノギス(分解能0.05mm;以下、同様。)で測定し、各辺の長さの積を、試験片の絶乾状態の体積Vdとした。
Md/Vdの値を絶乾密度とした。
【0065】
<膨潤密度>
試験片(50mm×50mm×10mm)を25℃の純水に1時間浸漬させ、平置きで純水に浸漬させた状態で、試験片の各辺の長さをノギスで測定し、各辺の長さの積を、水膨潤時の体積Vwとした。
Md/Vwの値を膨潤密度とした。
【0066】
<体積膨潤率>
前記絶乾状態の体積Vdに対する水膨潤時の体積Vwの比を体積膨潤率として求めた。
【0067】
<平均気孔数>
上記において水膨潤時の体積を測定した後の試料の面中央部分を赤色インキで着色した。着色部分に直尺を当てて、該着色部分と直尺の目盛とが含まれるように写真撮影した。撮影した写真の拡大画像において、直尺の任意の箇所の目盛の25mmの間隔位置の範囲内で、直尺との任意の平行線上に観察される気孔の個数を数えた。同様の測定を任意の3か所で行い、3回測定した気孔数の平均値を、水膨潤時の25mm当たりの平均気孔数とした。
【0068】
[担体評価]
下記の各種項目の担体評価を行った。その結果を表2に示す。
【0069】
<水面から水中への沈降時間>
担体(X1)~(X6)、並びに担体(Z1)、(Z2)及び(Z4)については、200mLポリプロピレン製ディスポーサブルカップに入れて静置した25℃の純水200mLの水面のすぐ上からそっと水面上に、担体を1つずつ落下させ、該担体が純水と接してから担体の全てが水面下(水中)に沈降するまでの時間を測定した。それぞれ担体10個について測定し、その平均値を水面から水中への沈降時間とした。
担体(Z3)については、25℃の純水の代わりに、界面活性剤「エマルミン NL-70」(三洋化成工業株式会社製)を20mg/L含む25℃の水溶液を用いたこと以外は上記と同様にして、水面から水中への沈降時間を測定した。
【0070】
<水中における沈降速度>
担体(X1)~(X6)、並びに担体(Z2)及び(Z4)については、直径55mm、高さ1.5mの円筒型の水槽に入れて静置した25℃の純水3.2Lの水面に、担体を1個落下させ、該担体全体を水面下(水中)に沈降させ、該担体に含まれる気泡を取り除いた後、水面下で該担体を離して1m沈降するのに要する時間を測定した。担体10個について測定し、その平均値から求められる速度を水中における沈降速度とした。
【0071】
<流動性及び泡立ち評価>
担体(X1)~(X6)、並びに担体(Z2)及び(Z4)については、幅150mm×奥行150mm×高さ350mmの水槽に、25℃5Lの純水と、実施例及び比較例で得られた担体を、嵩容積で0.5L分(担体の合計の嵩容積が0.5L)入れ、該担体を該水槽の底面に沈降させた後、流量1.5L/分で10分間曝気した。なお、曝気は、エアレーション部品として4個の「GX-35 プラストン」(ジェックス株式会社製、直径1cm、長さ4.3cm)を用い、それらを筒状になるよう穴を開け、縦に4個直列で接続し、水槽の底面外周の1辺の中央に沿うように設置して、流量が1.5L/分となるように行った。
担体が、曝気開始から終了までの間、底面に留まることなく、水中を動いていた場合、水中流動性が良好(〇)と判定し、底面に留まることがあれば水中流動性が不良(×)と判定した。
また、曝気開始から終了までの間、水面に泡が発生しない場合、又は水面に泡が発生しても水槽の高さを超える量の泡が発生しない場合は、環境負荷が小さい(〇)と判定し、水槽の高さを超える量の泡が発生した場合は、環境負荷が大きい(×)と判定した。
【0072】
【0073】
実施例で得られた担体は、いずれも純水における水面から水中への沈降時間が30秒以下、かつ水中における沈降速度が4.0cm/秒以下であり、速やかに沈降し、良好な水中流動性を有し、環境負荷が小さいものであることが確認された。
一方、比較例1及び3の担体は、上記水面から水中への沈降時間の測定時に、純水又は水溶液の水面に担体を落下させ、24時間以上経っても水面から水中へ担体の全体が沈降せず、水処理用担体投入の効率化の観点で問題があることが分かった。また比較例1及び3の担体は、水面から水中へ担体の全体が沈降しなかったため、水中における沈降速度の測定、並びに流動性及び泡立ち評価を実施することができなかった。
また、比較例2においては、水面から水中への沈降時間、水中における沈降速度、流動性及び泡立ち評価で、担体の表面を界面活性剤で処理した担体を用いたことから、担体の全体が水中に沈降し、水面から水中への沈降時間が短く、水中における沈降速度も良好な数値を示し、水中流動性も良好であったが、水槽の高さを超える量の泡が発生したため、環境負荷が大きいことが分かった。
また、比較例4においては、水面から水中への沈降時間が短かったが、水中における沈降速度が良好な数値範囲を超えており、水中流動性が劣るものであった。