(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089255
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】籾摺精米設備
(51)【国際特許分類】
B02B 7/00 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
B02B7/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204513
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 佑介
(72)【発明者】
【氏名】川端 英臣
【テーマコード(参考)】
4D043
【Fターム(参考)】
4D043AA02
4D043AA03
4D043DA01
4D043DA03
4D043JB03
4D043JB06
4D043JB08
4D043JC04
4D043JF07
4D043KA03
(57)【要約】
【課題】
籾摺精米をして発生した糠は籾殻が混入しやすいので、使用価値が低下するが、本発明はこれを低減することを課題とする。
【解決手段】
建屋(T)内に籾摺機(5)と精米機(9)を備え、籾を籾摺機(5)で籾摺して精米機(9)で精米処理する籾摺精米作業と、玄米を精米機(9)で精米処理する精米作業とを選択できる籾摺精米設備において、
籾摺精米作業で発生した糠を吸引して空気搬送する糠ファン(12)と、糠ファン(12)で空気搬送された糠を収容する第一糠収容容器(14)と、精米作業で発生した糠を収容する第二糠収容容器(15)と、第一糠収容容器(14)又は第二糠収容容器(15)のいずれかへ搬送を案内する糠切換弁(11)を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋(T)内に籾摺機(5)と精米機(9)を備え、籾を籾摺機(5)で籾摺して精米機(9)で精米処理する籾摺精米作業と、玄米を精米機(9)で精米処理する精米作業とを選択できる籾摺精米設備において、
籾摺精米作業で発生した糠を吸引して空気搬送する糠ファン(12)と、糠ファン(12)で空気搬送された糠を収容する第一糠収容容器(14)と、精米作業で発生した糠を収容する第二糠収容容器(15)と、第一糠収容容器(14)又は第二糠収容容器(15)のいずれかへ搬送を案内する糠切換弁(11)を設けることを特徴とする籾摺精米設備。
【請求項2】
籾摺精米作業を行った場合には、籾摺精米作業終了後、所定時間糠ファン(12)を所定時間駆動することを特徴とする請求項1記載の籾摺精米設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者が持参した玄米を精米処理する無人の精米設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、利用者が持ち込んだ籾を籾摺精米、或いは玄米を精米処理する料金式の籾摺精米設備が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
籾摺精米をして発生した糠は籾殻が混入しやすいので、使用価値が低下する。
【0005】
本発明は、上記欠点を解消させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、
請求項1記載の発明は、
建屋(T)内に籾摺機(5)と精米機(9)を備え、籾を籾摺機(5)で籾摺して精米機(9)で精米処理する籾摺精米作業と、玄米を精米機(9)で精米処理する精米作業とを選択できる籾摺精米設備において、
籾摺精米作業で発生した糠を吸引して空気搬送する糠ファン(12)と、糠ファン(12)で空気搬送された糠を収容する第一糠収容容器(14)と、精米作業で発生した糠を収容する第二糠収容容器(15)と、第一糠収容容器(14)又は第二糠収容容器(15)のいずれかへ搬送を案内する糠切換弁(11)を設けることを特徴とする籾摺精米設備とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1の発明において、籾摺精米作業を行った場合には、籾摺精米作業終了後、所定時間糠ファン(12)を所定時間駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、籾摺精米作業で発生した糠と玄米精米作業で発生した糠を分けて収容することができるため、玄米精米作業で発生した糠に籾殻が混入しがたくなり、玄米精米作業で発生した糠の使用価値の低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明である籾摺精米設備の実施の形態について、以下図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
建屋Tを籾又は玄米を収容した袋を持参する利用者が出入りする客室1と装置各部を配置する機械室2とに仕切壁27で区分けしている。
【0012】
機械室2は、利用者が籾又は玄米を投入する投入ホッパ3と、投入ホッパ3で投入した籾又は玄米を搬送する搬送ラセン29と、搬送ラセン29で搬送された籾又は玄米を揚穀する第一昇降機4と、第一昇降機4で揚穀された籾又は玄米の案内先を切り換える籾玄米切換弁11と、籾を籾摺りする籾摺機5と、玄米に混入する石を選別除去する石抜機6と、玄米に混じる藁屑を除去する異物選別機7と、石抜機6及び異物選別機7を通過した玄米を揚穀する第二昇降機8と、第二昇降機8で揚穀した玄米を精米する精米機9と、精米機9で発生した糠を収容する糠収容部10を備えている。
【0013】
糠収容部10について説明する。
【0014】
精米機9で精米処理されて発生した糠を吸引及び圧送する糠ファン12と、糠ファン12で圧送された糠の搬送方向を切り換える糠切換弁13と、後述する籾摺精米作業で発生した糠を収容するための第一糠収容容器14と、後述する玄米精米作業で発生した糠を収容する第二糠収容容器15を備える。糠ファン12で圧送された糠を糠切換弁13まで案内する糠ファン用案内筒12aと、第一糠収容容器14へ空気搬送される糠を案内する第一糠案内筒14aと、第二糠収容容器15へ空気搬送される糠を案内する第二糠案内筒15aを設ける。
【0015】
第一糠収容容器14と第二糠収容容器15にはそれぞれ空気搬送された糠を空気から分離するための第一サイクロン16と第二サイクロン17を備える。
【0016】
客室1は利用者が料金を投入する料金投入口18と、操作盤Sを設け、操作盤Sには、ぶ搗きや標準や上白等の精白度を選択する精白度選択スイッチ19を備えている。また、また、投入ホッパ3の投入口を上下スライド開閉する開閉扉20を設ける。また、精米機9で精米処理された精白米を収容する白米タンク21を設ける。
【0017】
籾摺精米設備の制御部Cについて以下説明する。
【0018】
操作盤Sに内蔵する制御部Cには精白度選択スイッチ19による精白度の情報や籾玄米判別センサ22の籾玄米判別情報や料金投入口18に投入された料金の金額情報が入力される。そして、籾摺機や精米機等の装置各部の駆動情報が出力される。利用者が投入した料金に対応する運転時間、籾摺精米作業や玄米精米作業を行う。
【0019】
次に利用者が籾を持参した場合の籾摺精米作業について説明する。
【0020】
利用者が客室1に入り、料金投入口18に料金を投入すると開閉扉20が上昇し、投入ホッパ3に籾を投入可能となる。利用者が籾を投入ホッパ3に投入し、精白度選択スイッチ19で所望の精白度を選択すると、機械室2内の装置各部が起動する。投入ホッパ3に設ける籾玄米判別センサ22で投入した穀物が籾か玄米かを判別し、籾と判別されると、籾は搬送ラセン29で順次搬送され、第二昇降機84で揚穀された籾は籾玄米切換弁11の切替により籾摺機側流路26を経て籾摺機5に案内され、籾摺機5で籾殻を剥がすことで殆どが玄米となる。具体的にはインペラ式の籾摺装置23で籾摺され、風選装置24の籾殻吸引ファン25で籾殻が吸引除去され、籾殻は籾殻吸引ファン25で建屋T外に搬送されると共に、玄米は石抜機6に流下する。
【0021】
石抜機6では玄米に混入される石を選別除去し、さらに、異物選別機7では玄米に混入される藁屑等の長尺物を選別除去され、第二昇降機8で精米機9へ供給される。
【0022】
精米機9で精米処理された精白米は白米タンク21に貯留され、利用者が取り出す。
【0023】
精米機9の精米処理で発生した糠は糠ファン12で吸引されて糠ファン用案内筒12a内を空気搬送される。糠切換弁13で第一糠案内筒14a側に案内され、第一サイクロン16を経て第一糠収容容器14に収容される。
【0024】
投入する料金に対応する運転時間が経過すると、装置各部は停止し、籾摺精米運転が終了する。
【0025】
次に利用者が玄米を持参した場合の玄米精米作業について説明する。
【0026】
利用者が客室1に入り、料金投入口18に料金を投入すると開閉扉20が上昇し、投入ホッパ3に玄米を投入可能となる。利用者が玄米を投入ホッパ3に投入し、精白度選択スイッチ19で所望の精白度を選択すると、機械室2内の装置各部が起動する。投入ホッパ3に設ける籾玄米判別センサ22で投入した穀物が籾か玄米かを判別し、玄米と判別されると、玄米は搬送ラセン29で搬送されて第二昇降機84で揚穀された籾は籾玄米切換弁11の切替により石抜機側流路27に案内される。
【0027】
石抜機6では玄米に混入される石を選別除去し、さらに、異物選別機7では玄米に混入される藁屑等の長尺物を選別除去され、第二昇降機8で精米機9へ供給される。
【0028】
精米機9で精米処理された精白米は白米タンク21に貯留され、利用者が取り出す。
【0029】
精米機9の精米処理で発生した糠は糠ファン12で吸引されて空気搬送される。糠切換弁13で第二糠案内筒15a側に案内され、第二サイクロン17を経て第二糠収容容器15に収容される。
【0030】
投入する料金に対応する運転時間が経過すると、装置各部は停止し、玄米精米運転が終了する。
【0031】
籾摺精米作業においては、一部の籾が籾摺機5で籾摺りされないまま、精米機9へ供給され、精米機9で籾殻が剥がれて精米処理されるので、発生する糠に少量の籾殻が混じる場合がある。糠に籾殻が混じると糠としての価値が低下するが、本実施の形態により、籾摺精米作業で発生した糠と、精米作業で発生した糠を分けて収容するので、玄米精米作業で発生した糠の価値の低下を低減できる。
【0032】
籾摺精米作業を行った場合には、籾摺精米作業終了後、所定時間糠ファン12を所定時間駆動することで、精米機9内や糠ファン用案内筒12aに少量残留する可能性のある籾殻を第一糠収容容器14に搬送する籾殻クリーニングモードを実施しても良い。これにより、次に玄米精米作業を行うときに籾殻が糠に混じり難くすることができる。
【0033】
また、一般的には、籾摺精米より玄米精米の使用頻度が高いため、第二糠収容容器15を第一糠収容容器14よりも建屋Tの機械室側扉28に接近する位置に設けることで、精米設備の管理者による第二糠収容容器15の回収作業をし易くすることができる。
【0034】
第一糠収容容器14と第二糠収容容器15それぞれにロードセル(図示せず)を備えて、規定の重量に到達すると制御部Cより通信で、籾摺精米設備の管理者のスマートフォンに第一糠収容容器14や第二糠収容容器15の交換を連絡することができる。
【0035】
次に、玄米を精米処理して発生した糠を、第一糠収容容器14に収容する代わりに利用者に提供する糠パック装置30を搭載した場合について説明する。
【0036】
糠パック装置30は樹脂製のパックに糠を供給してパッキングするもので、例えば特開2019-130453に記載されている周知の技術である。
【0037】
図1と
図5の相違点は、糠切換弁13からの糠の搬送先が、第一糠案内筒14aを経る第一サイクロン16側と糠パック装置用糠案内筒30aを経る糠パック装置用サイクロン側31である点である。
【0038】
糠パック装置用サイクロン31の下方には糠搬送ラセン32を設け、糠搬送ラセン32の搬送終端部の下方には糠パック装置30を設けている。
【0039】
精米機9から除糠された糠が、糠パック装置30へ供給されて、この糠パック装置30によって、フィルムシートFによって所定量毎にパック詰めされる。このパック詰めされた糠パックPは、傾斜状態の糠パックシュート33の上面に受けられて、客室1側へ滑落される。
【0040】
このとき、機械室2の精米機9と建屋側壁との間において、順次落下される糠パックPは、糠パックシュート33の傾斜面に沿って滑落して、途中の仕切壁27の糠パック排出口34から客室1側へ流下される。精米利用者はこの流下された糠パックPを取出して持ち帰ることができる。
【0041】
又、糠パックPを取得するためのフィルムロールFは、精米機の精米作用を行うにあたって、予めフィルムロール収容室35内部に装填しておくものであるが、このフィルムロールFが使用によって少なくなったり、新しいものと交換、乃至補給しなければならない場合等のときは、新しいフィルムロールFをフィルムロール収容室35の所定個所に装填して糠パックP形成可能の状態に維持できる。
【0042】
糠搬送ラセン32は正逆転可能に構成することで、玄米精米作業で発生した糠を糠パック装置30側へ供給するか、第二糠収容容器15側へ供給するかを切り換え可能に構成される。
【0043】
利用者が糠パック選択スイッチ(図示せず)を選択し、かつ、当該精米作業が玄米精米作業(籾玄米判別センサ22が玄米を判別した場合)の場合には、玄米精米作業で発生した糠を糠パック装置で糠パックPを生成して利用者に提供する。このとき、前回の利用者が籾摺精米作業であった場合には、当該玄米精米作業の開始から所定時間に発生した糠は第二糠収容容器15に搬送し、前記所定時間を経過した糠をパッキングすることで、糠パックP内に籾殻が混入するリスクを低減できる。なお、籾玄米判別センサ22が籾を判別した場合には糠パック選択スイッチを選択しても無効にする。これにより、糠パック装置への籾殻の混入を防止することができる。
【0044】
次に、籾摺精米設備に関する料金について説明する。
【0045】
糠パック選択スイッチ(図示せず)を選択した場合には、玄米精米作業を行う時間について、選択しない場合に比べて料金に対応する運転時間を延長しても良い。これは、利用者に糠を持ち帰ってもらう分、管理者による第二糠収容容器15の回収作業の頻度を少なくすることができるというメリットに基づく。利用者のスマートフォンで決済可能に構成する場合には、糠パック選択スイッチを選択した場合には、別途、精米運転の運転時間に相当するサービス用のポイントを付与するようにしても良い。
【0046】
また、精白度選択スイッチ19でぶ搗きを選択した場合は標準や上白を選択したときと比較し、投入料金に対応する運転時間を延長するサービスを行う制御をしても良い。これは、糠の発生量が少ないぶ搗きを行うことで、管理者の糠の回収頻度を少なくすることができるというメリットに基づく。
【0047】
投入ホッパ3に重量計を設け、投入ホッパ3に投入して精白度選択スイッチを操作すると重量を検出し、必要な料金をスマートフォンにて予め一括で決済するようにしても良い。この場合に、スマートフォンで一括で決済した場合に、精米すべき籾・玄米が決裁した料金に対応する運転時間に到達しなかった場合には、ポイントを付与し、次回の精米運転に使用できるようにしても良い。
【0048】
建屋に雨天計(図示せず)を備え、雨天計が雨天を検出すると、投入料金に対応する運転時間を長くするサービスを行っても良い。これにより、閑散期となる雨天日の利用を増加させ、繁忙期となる晴天日の利用を減少させることで、同じ籾摺精米設備における利用者の利用を分散することができる。
【符号の説明】
【0049】
T 建屋
5 籾摺機
9 精米機
10 糠収容部
11 糠切換弁
12 糠ファン
14 第一糠収容容器
15 第二糠収容容器
19 精白度選択スイッチ
30 糠パック装置