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特開2024-89256ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体及びその製造方法
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  • 特開-ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089256
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20240626BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C08J9/16 CES
C08J9/04 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204514
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】太田 肇
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074BA32
4F074CA23
4F074CA46
4F074CB53
4F074CE02
4F074CE25
4F074CE46
4F074CE98
4F074DA02
4F074DA12
4F074DA33
(57)【要約】
【課題】養生工程に要する時間を短縮しても、所望の形状を有し、外観及び剛性に優れた発泡粒子成形体を得ることができるポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】貫通孔を有する筒状の発泡粒子(1)を成形型内に充填し、加熱媒体を供給して発泡粒子(1)を相互に融着させて発泡粒子成形体を製造する方法である。発泡粒子(1)は、ポリエチレン系樹脂から構成される発泡層を有する。発泡粒子(1)の独立気泡率が80%以上である。発泡粒子(1)における貫通孔(11)の平均孔径(d)が1mm未満である。発泡粒子の平均外径(D)に対する平均孔径(d)の比[d/D]が0.4以下である。発泡粒子成形体の開放気泡率が8%以上20%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する筒状のポリエチレン系樹脂発泡粒子を成形型内に充填し、加熱媒体を供給して前記発泡粒子を相互に融着させてポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体を製造する方法であって、
前記発泡粒子が、ポリエチレン系樹脂から構成される発泡層を有し、
前記発泡粒子の独立気泡率が80%以上であり、
前記発泡粒子における前記貫通孔の平均孔径dが1mm未満であるとともに、前記発泡粒子の平均外径Dに対する前記平均孔径dの比[d/D]が0.4以下であり、
前記成形体の開放気泡率が8%以上20%以下である、ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項2】
前記成形型内に充填する前記発泡粒子の内圧が0MPa(G)以上0.3MPa(G)以下である、請求項1に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項3】
前記成形型内に充填する前記発泡粒子の内圧が0.02MPa(G)以上0.3MPa(G)以下である、請求項2に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項4】
前記発泡粒子は、前記発泡層を被覆する被覆層を有しており、前記被覆層はポリエチレン系樹脂から構成され、前記被覆層を構成するポリエチレン系樹脂の融点は前記発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点よりも低い、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項5】
前記発泡粒子は、前記発泡層を被覆する被覆層を有しており、前記被覆層はポリエチレン系樹脂から構成され、前記被覆層を構成するポリエチレン系樹脂の、190℃、荷重2.16kgの条件にて測定されるメルトマスフローレイトが8g/10min以上30g/10min以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項6】
前記発泡粒子は、前記発泡層を被覆する被覆層を有しており、前記被覆層は高分子型帯電防止剤を含み、前記被覆層中の前記高分子型帯電防止剤の配合量が10質量%以上45質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項7】
前記平均外径D及び前記平均孔径dを用い、下記式(1)により表される前記発泡粒子の平均肉厚tが1.2mm以上3mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
t=(D-d)/2 ・・・(1)
【請求項8】
前記成形体の密度が10kg/m3以上100kg/m3以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項9】
貫通孔を有する筒形状のポリエチレン系樹脂発泡粒子が相互に融着してなるポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体であって、
前記成形体の独立気泡率が80%以上であり、
前記成形体の開放気泡率が8%以上20%以下である、ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を有する筒形状の発泡粒子が相互に融着してなるポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体は、軽量で、緩衝性、剛性等に優れるため種々の用途に用いられている。ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体は、例えば、ポリエチレン系樹脂発泡粒子を成形型内に充填し、スチームで加熱する型内成形法と呼ばれる方法により製造される。型内成形法においては、成形型にスチームを供給すると発泡粒子が二次発泡すると共にその表面が溶融する。これにより、成形型内の発泡粒子が相互に融着し、成形型のキャビティの形状に対応する形状を備えた成形体を得ることができる。成形直後の成形体は、二次発泡により膨らみやすいため、成形型内で水や空気等で冷却された後に成形型から離型される。
【0003】
しかし、型内成形後の成形体を常温で保管すると、型内成形時に成形体の気泡内へ流入していたスチームが気泡中で凝縮し、気泡内が負圧となり、成形体に体積収縮が生じて成形体が大きく変形することがある。特に、樹脂の柔軟性が高いポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体においては、この現象が顕著に表れる。そのため、成形体を離型した後に、60℃から80℃程度の温度に調整された高温雰囲気下で成形体を所定時間静置し、成形体の形状を回復させる養生工程が通常は必要である。たとえば、特許文献1では、離型後の成形体を60℃のオーブン内にて12時間静置することにより養生を行っている。
【0004】
ポリエチレン系樹脂発泡粒子の型内成形において、養生工程には比較的長い時間を要する。そのため、養生工程に要する時間を短縮し、成形体の生産性を大幅に向上させることが望まれている。たとえば、特許文献2には、発泡層と被覆層とからなる発泡粒子を粒子間に空隙を維持したまま融着させる技術が開示されている。また、特許文献3には、ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の養生法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-141166号公報
【特許文献2】特開2003-39565号公報
【特許文献3】特開昭60-166442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された技術では、成形体の発泡粒子間に多数の空隙が形成されるため、成形体の外観が著しく悪く、その用途によっては剛性が不十分であった。特許文献3の技術に記載された技術は、依然として長時間の養生工程を必要としており、養生時間をさらに短縮した場合には、成形体が著しく収縮、変形してしまい、所望の形状を有する成形体を得ることが困難であった。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、養生工程に要する時間を短縮しても、所望の形状を有し、外観及び剛性に優れた発泡粒子成形体を得ることができるポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法を提供しようとするものである。また、外観及び剛性に優れた発泡粒子成形体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、以下の〔1〕~〔8〕に係るポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法にある。
【0009】
〔1〕貫通孔を有する筒状のポリエチレン系樹脂発泡粒子を成形型内に充填し、加熱媒体を供給して前記発泡粒子を相互に融着させてポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体を製造する方法であって、
前記発泡粒子が、ポリエチレン系樹脂から構成される発泡層を有し、
前記発泡粒子の独立気泡率が80%以上であり、
前記発泡粒子における前記貫通孔の平均孔径dが1mm未満であり、
前記成形体の開放気泡率が8%以上20%以下である、ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法にある。
【0010】
〔2〕前記成形型内に充填する前記発泡粒子の内圧が0MPa(G)以上0.3MPa(G)以下である、〔1〕に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
〔3〕前記成形型内に充填する前記発泡粒子の内圧が0.02MPa(G)以上0.3MPa(G)以下である、〔1〕または〔2〕に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【0011】
〔4〕前記発泡粒子は、前記発泡層を被覆する被覆層を有しており、前記被覆層はポリエチレン系樹脂から構成され、前記被覆層を構成するポリエチレン系樹脂の融点は前記発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点よりも低い、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
〔5〕前記発泡粒子は、前記発泡層を被覆する被覆層を有しており、前記被覆層はポリエチレン系樹脂から構成され、前記被覆層を構成するポリエチレン系樹脂の、190℃、荷重2.16kgの条件にて測定されるメルトマスフローレイトが8g/10min以上30g/10min以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【0012】
〔6〕前記発泡粒子は、前記発泡層を被覆する被覆層を有しており、前記被覆層は高分子型帯電防止剤を含み、前記被覆層中の前記高分子型帯電防止剤の配合量が10質量%以上45質量%以下である、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
〔7〕前記平均外径D及び前記平均孔径dを用い、下記式(1)により表される前記発泡粒子の平均肉厚tが1.2mm以上3mm以下である、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
t=(D-d)/2 ・・・(1)
〔8〕前記成形体の密度が10kg/m3以上100kg/m3以下である、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【0013】
本発明の他の態様は、以下の〔9〕に係るポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体にある。
【0014】
〔9〕貫通孔を有する筒形状のポリエチレン系樹脂発泡粒子が相互に融着してなるポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体であって、
前記成形体の独立気泡率が80%以上であり、
前記成形体の開放気泡率が8%以上20%以下である、ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、養生工程に要する時間を短縮しても、所望の形状を有する、外観及び剛性に優れるポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体が得られる。したがって、前記製造方法によれば、剛性及び外観に優れた発泡粒子成形体の製造効率を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、発泡粒子の外観の模式図である。
図2図2は、発泡層から構成された発泡粒子の貫通孔の貫通方向と平行方向での発泡粒子断面の模式図である。
図3図3は、発泡層と被覆層とを有する発泡粒子の貫通孔の貫通方向と平行方向での発泡粒子断面の模式図である。
図4図4は、高温ピークの面積の算出方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、ポリエチレン系樹脂発泡粒子のことを適宜「発泡粒子」といい、ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体のことを適宜「発泡粒子成形体」または「成形体」という。なお、ポリエチレン系樹脂から構成される発泡層を有する発泡粒子は、一般に、ポリエチレン系樹脂発泡粒子と呼ばれる。
【0018】
(成形体の製造方法)
発泡粒子成形体は、多数の発泡粒子を成形型内に充填し、スチーム等の加熱媒体を供給して前記発泡粒子を相互に融着させる成形工程を行うことにより製造される。つまり、発泡粒子を型内成形することにより、成形体を得ることができる。
【0019】
前記発泡粒子の形状は、貫通孔を有する筒形状である。前記発泡粒子の貫通孔の平均孔径dは1mm未満であり、発泡粒子の平均外径Dに対する平均孔径dの比d/Dが0.4以下である。前記発泡粒子は、ポリエチレン系樹脂から構成される発泡層を有している。そして、前記発泡粒子の独立気泡率が80%以上である。このような発泡粒子を型内成形して開放気泡率が8%以上20%以下の成形体を製造することにより、養生工程に要する時間を短縮しても、所望の形状を有する、外観及び剛性に優れた発泡粒子成形体を得ることができる。具体的には、養生工程において、離型後の成形体を例えば60℃程度の温度で3時間静置する等の、比較的養生工程に要する時間の短い条件を採用する場合であっても、成形体の形状を安定させることができる。
【0020】
なお、本明細書において、「養生工程に要する時間」とは、離型後の成形体を60℃から80℃程度の温度に調整された高温雰囲気下にて静置させる時間を意味し、適宜「養生時間」ともいう。前述した養生工程の条件は一例であり、例えば養生時間を3時間以上とすることも可能である。また、後述するように、上記製造方法では、成形型内に充填する前の発泡粒子に予め内圧を付与する前処理加圧を行ってもよいし、前処理加圧を行わなくてもよい。養生時間を短縮した場合における成形体の寸法変化をより確実に抑制する観点からは、前処理加圧を行うことが好ましい。
【0021】
図1図3に、発泡粒子を例示するが、本発明において用いられる発泡粒子の構造はこれらの図面に示す構造に限定されるものではない。図1及び図2に示されるように、発泡粒子1は、筒形状であり、貫通孔11を有する。発泡粒子1は、ポリエチレン系樹脂から構成された発泡層2を有する。発泡粒子1は、図1及び図2に示すように、発泡層2のみからなる単層構造を有していてもよく、図3に示すように、発泡層2と、発泡層2を被覆する被覆層3とを備えた多層構造を有していてもよい。発泡粒子1は、発泡層2を被覆する被覆層3を有することが好ましい。
【0022】
発泡層は、ポリエチレン系樹脂から構成される。発泡層は、1種類のポリエチレン系樹脂から構成されていてもよく、2種類以上のポリエチレン系樹脂から構成されていてもよい。本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、エチレン単量体の単独重合体及びエチレンに由来する構成単位を50質量%以上含むエチレン系共重合体をいう。ポリエチレン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(PE-LD)、直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)、高密度ポリエチレン(PE-HD)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。低密度ポリエチレンは、好ましくは長鎖分岐構造を有し、密度が910kg/m以上930kg/m未満のポリエチレン系樹脂である。直鎖状低密度ポリエチレンは、好ましくはエチレンと炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体であって実質的に分子鎖が線状であり、密度が910kg/m以上930kg/m未満のポリエチレン系樹脂である。高密度ポリエチレンは、好ましくはエチレン単独重合体又はエチレンと炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体であって密度が930kg/m以上のポリエチレン系樹脂である。
【0023】
発泡層には、前述した作用効果を損なわない範囲でポリエチレン系樹脂以外の他の重合体が含まれていてもよい。他の重合体としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等のポリエチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂やエラストマー等が例示される。発泡層中のポリエチレン系樹脂以外の重合体の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましく、0、つまり、発泡層は、重合体として実質的にポリエチレン系樹脂のみを含むことが最も好ましい。
【0024】
発泡層を構成するポリエチレン系樹脂は、無架橋であっても型内成形が可能な発泡粒子を得やすい観点からは、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0025】
発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmcは、130℃以下であることが好ましい。この場合には、より低い成形温度(つまり、低い成形圧)で外観や剛性に優れる成形体を成形することができる。この効果が向上するという観点から、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmcは125℃以下であることがより好ましく、122℃以下であることがさらに好ましい。一方、成形体の耐熱性や機械的強度等がより向上するという観点からは、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmcは、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、118℃以上であることがさらに好ましい。
【0026】
発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmcの好ましい範囲を構成するに当たっては、前述したポリエチレン系樹脂の融点Tmcの上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmcは、110℃以上130℃以下であってもよく、115℃以上125℃以下であってもよく、118℃以上122℃以下であってもよい。
【0027】
ポリエチレン系樹脂の融点Tmcは、JIS K7121:1987に基づき求められる。具体的には、ポリエチレン系樹脂からなる試験片を準備し、JIS K7121:1987における「3.試験片の状態調節」の「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」に基づいて試験片の状態調節を行う。状態調節における温度範囲は30℃から200℃とし、加熱速度及び冷却速度はいずれも10℃/分とする。状態調節された試験片を10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、DSC曲線に現れた融解ピークの頂点温度をポリエチレン系樹脂の融点Tmcとする。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度をポリエチレン系樹脂の融点Tmcとする。
【0028】
発泡性や成形性をより高める観点から、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレイト(つまり、MFR)は0.1g/10分以上であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、0.8g/10分以上であることがさらに好ましい。一方、発泡粒子の独立気泡率の低下を抑制し、成形性をより高めるという観点から、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂のMFRは5g/10分以下であることが好ましく、3g/10分以下であることがより好ましく、1.5g/10分以下であることがさらに好ましい。なお、以下において、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂のMFRを「MFRc」ということがある。
【0029】
発泡層を構成するポリエチレン系樹脂のMFRの好ましい範囲を構成するに当たっては、前述したMFRcの上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂のMFRは、0.1g/10分以上5g/10分以下であってもよく、0.5g/10分以上3g/10分以下であってもよく、0.8g/10分以上1.5g/10分以下であってもよい。
【0030】
なお、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂のMFRは、JIS K7210-1:2014に基づき、試験温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
【0031】
発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は100MPa以上500MPa以下であることが好ましく、200MPa以上350MPa以下であることがより好ましい。従来、ポリエチレン系樹脂から構成される発泡粒子を型内成形した場合には、樹脂の曲げ弾性率が低く、離型後の収縮、変形に対する抵抗力が小さいためか、養生時間を短縮すると成形体が著しく収縮、変形する傾向があった。これに対し、前記成形体の製造方法によれば、たとえば発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率が前述した範囲内であっても、離型後の成形体の収縮や変形を抑制しつつ養生時間を容易に短縮することができる。
【0032】
成形体の剛性を高めるという観点、養生時間を短縮した場合の寸法変化をより確実に抑制するという観点から、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は、120MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがより好ましく、200MPa以上であることがさらに好ましい。一方、より低い成形温度(つまり、低い成形圧)で外観や剛性に優れる成形体を成形することができるという観点から、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は、450MPa未満であることが好ましく、400MPa以下であることがより好ましく、350MPa以下であることがさらに好ましい。
【0033】
発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述したポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率の上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は、120MPa以上450MPa未満であってもよく、150MPa以上400MPa以下であってもよく、200MPa以上350MPa以下であってもよい。
【0034】
なお、ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171:2008に基づき、求めることができる。
【0035】
発泡粒子の独立気泡率は、80%以上である。発泡粒子の良好な型内成形性を確保するという観点、発泡粒子の外観、剛性が良好なものとなるという観点から、発泡粒子の独立気泡率は82%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0036】
発泡粒子の独立気泡率は、ASTM-D6226-10に基づき空気比較式比重計を用いて測定することができる。発泡粒子の独立気泡率の測定方法は、具体的には以下の通りである。状態調節後の嵩体積約20cm3の発泡粒子を測定用サンプルとし、下記の通りエタノール没法により正確に見掛けの体積Vaを測定する。見掛けの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM-D6226-10に記載されている手順に準じ、空気比較式比重計(島津製作所社製「アキュピックII1340」)により測定用サンプルの真の体積Vxを測定する。なお、前記真の体積Vxの測定では、パージ工程(purging step)及び試験工程(testing step)において適用される圧力は5kPaとする。また、手順9.13及び9.14において、圧力の変化率が0.100kPa/min以下となるまで待機し、圧力を記録する。
【0037】
このようにして得られた見掛けの体積Va及び真の体積Vxを用い、下記式(2)に基づいて測定用サンプルの独立気泡率(単位:%)を計算する。以上の操作を5つの測定用サンプルのそれぞれについて行い、5つの測定用サンプルにおける独立気泡率の算術平均値を発泡粒子の独立気泡率とする。
独立気泡率=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ) ・・・(2)
【0038】
なお、前記式(2)における記号の意味は以下の通りである。
Vx:前述の方法で測定される測定用サンプルの真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(単位:cm
Va:測定用サンプルを、エタノールの入ったメスシリンダーに沈めた際の水位上昇分から測定される測定用サンプルの見掛けの体積(単位:cm
W:測定用サンプルの質量(単位:g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(単位:g/cm
【0039】
成形体は、開放気泡構造を有する。開放気泡構造とは、成形体の外部と連通した微小な空間部分である。開放気泡構造は、複数の発泡粒子の貫通孔が相互に連通して形成される空隙、発泡粒子の貫通孔が発泡粒子間に形成される空隙と連通して形成される空隙、発泡粒子間の空隙が連通して形成される空隙、成形体を構成する発泡粒子の連続気泡部分などが、複雑につながって形成される。
【0040】
前記製造方法では、開放気泡率が8%以上20%以下の成形体を製造する。これにより、養生時間を短縮しても、著しい収縮、変形等が抑制され、所望の形状を有する、外観及び剛性に優れた成形体を製造することができる。これは、成形体が前記特定の割合で開放気泡構造を有することにより、離型後、速やかに成形体内部の気泡まで空気が流入し、成形体全体の内圧が高められる結果、成形体の寸法が早期に安定しやすくなるためであると考えられる。成形体の開放気泡率が8%未満の場合には、養生時間を短縮すると、成形体が著しく収縮、変形し、所望の形状の成形体が得られなくなるおそれがある。
【0041】
養生時間を短縮しても、成形体の著しい収縮、変形等をより効果的に抑制することができる観点から、成形体の開放気泡率は、9%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、12%以上であることがさらに好ましく、12%を超えることが特に好ましい。一方、成形体の開放気泡率が20%を超える場合には、成形体の外観が著しく悪くなるおそれがある。また、この場合には、成形体の剛性が低下するおそれがある。成形体の外観や剛性をより向上させることができるという観点から、成形体の開放気泡率は、18%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、15%未満であることがさらに好ましい。
【0042】
成形体の開放気泡率の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した開放気泡率の上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、成形体の開放気泡率は、9%以上18%以下であってもよく、10%以上15%以下であってもよく、12%以上15%未満であってもよく、12%を超え15%未満であってもよい。
【0043】
成形体の開放気泡率は、ASTM6226-10に準拠し、同規格の補足X1.3に記載の手順2に従い、測定用サンプルの切り出し時に破壊される独立気泡の影響の補正を行うことにより得られる。
【0044】
成形体の開放気泡率の測定方法は、具体的には以下の通りである。まず、成形体を23℃の雰囲気中で12時間静置して状態調節を行う。次いで、成形体の中心部から、縦2.5cm×横2.5cm×高さ2.5cmの立方体形状の第1試験片を切り出し、その幾何学的体積Va(単位:cm3)を測定する。Vaは具体的には、第1試験片の縦寸法(単位:cm)と横寸法(単位:cm)と高さ寸法(単位:cm)との積である。
【0045】
次に、乾式自動密度計(具体的には、株式会社島津製作所製「アキュピックII1340」)を用い、第1試験片の真の体積V1(単位:cm3)を測定する。この際、パージ工程(purging step)及び試験工程(testing step)において適用される圧力は5kPaとする。また、手順9.13及び9.14において、圧力の変化率が0.100kPa/min以下となるまで待機し、圧力を記録する。
【0046】
第1試験片の幾何学的体積Va及び真の体積V1を測定した後、第1試験片を8等分にし、縦1.25cm×横1.25cm×高さ1.25cmの立方体形状の第2試験片を得る。次に、第1試験片の真の体積V1の測定方法と同様の方法により、個々の第2試験片の真の体積(単位:cm3)を測定する。このようにして得られた第1試験片の幾何学的体積Vaと、第1試験片の真の体積V1と、8個の第2試験片の真の体積の合計V2(単位:cm3)とを用い、下記式(3)に基づいて第1試験片の開放気泡率(単位:%)を算出する。
開放気泡率=(Va-2V1+V2)×100/Va ・・・(3)
【0047】
以上の操作を成形体から切り出した5個の第1試験片のそれぞれについて行い、5個の第1試験片の開放気泡率を算術平均した値を成形体の開放気泡率Coとする。このようにして測定される開放気泡率Coは、補正開放気泡率または補正連続気泡率と呼ばれることがある。
【0048】
なお、本明細書における開放気泡率Coは前述したようにASTM6226-10に準拠し、補足X1.3に記載の手順2に従ってサンプルの切り出しの影響を補正して測定される物性値であり、ASTM6226-10に準拠して測定される成形体の独立気泡率Bpをもとに算出することはできない物性値である。すなわち、前述した成形体の開放気泡率Coは、ASTM6226-10に準拠して測定される成形体の独立気泡率Bpと下記の式(4)の関係を有している。なお、成形体の独立気泡率Bpの具体的な測定方法については後述する。
Co≠100-Bp ・・・(4)
【0049】
開放気泡率Coの測定においては、前述したように試験片を切り出した際に破壊される独立気泡の影響を補正しているのに対し、ASTM6226-10に記載された方法に準拠して測定される成形体の独立気泡率Bpは、試験片を切り出した際に破壊される独立気泡の影響が補正されていない。従って、成形体の開放気泡率Coは、独立気泡率Bpとは異なる概念を有する物性値である。また、試験片を切り出した際に破壊される独立気泡の割合は、発泡粒子成形体を構成する発泡粒子の形状(つまり、貫通孔の有無、貫通孔の孔径等)や発泡粒子の独立気泡率の影響を大きく受ける。さらに、発泡粒子成形体の成形条件(つまり、成形圧、発泡粒子の内圧、充填方法等)等によっても影響を受ける。したがって、開放気泡率Coの値は、ASTM6226-10に準拠して測定される成形体の独立気泡率Bpの値をもとに推定することも困難である。なお、ASTM2856-70手順Cに準拠して測定される成形体の独立気泡率は、ASTM6226-10に準拠して測定される成形体の独立気泡率Bpと技術的に等価であるため、開放気泡率Coの値は、ASTM2856-70手順Cに準拠して測定される成形体の独立気泡率の値をもとに推定することも困難である。
【0050】
また、本明細書における開放気泡率Coは、成形体の空隙率とも異なる概念を有する物性値である。成形体の空隙率は、例えば次のようにして測定、算出される。具体的には、まず、成形体の中心部分から直方体形状(縦20mm×横100mm×高さ20mmの試験片を切り出す。次いで、この試験片を、エタノールを入れたメスシリンダー中に沈めてエタノールの液面の上昇分から試験片の真の体積Vc(単位:L)を求める。また、試験片の外形寸法から見掛けの体積Vd(単位:L)を求める。成形体の空隙率(単位:%)は、以上により得られる試験片の真の体積Vcと見掛けの体積Vdとを用い、下記式(5)により表される。
空隙率=[(Vd-Vc)/Vd]×100 ・・・(5)
【0051】
このように、成形体の空隙率の測定においても、試験片を切り出した際に破壊される独立気泡の影響は考慮されていない。また、測定のための媒体としてエタノール等の液体を用いる点で、空隙率の測定方法は前述した開放気泡率Coの測定方法とは異なっている。したがって、開放気泡率Coの値は、上記方法により測定される成形体の空隙率の値をもとに推定することも困難である。
【0052】
開放気泡率が8%以上20%以下の成形体は、下記(1)~(3)を満足する発泡粒子を型内成形することにより、製造される。
(1)発泡粒子は、貫通孔を有する。発泡粒子が貫通孔を有していない場合には、成形体の開放気泡率の値を8%以上とすることが困難となる。
(2)発泡粒子の貫通孔の平均孔径dを1mm未満とする。平均孔径dを小さくすることにより、開放気泡率は小さくなる傾向があり、平均孔径dを大きくすることにより、開放気泡率が大きくなる傾向がある。貫通孔の平均孔径dが1mm以上である場合には、成形体の開放気泡率の値を20%以下とすることが難しくなりやすい。
(3)発泡粒子の平均外径Dに対する貫通孔の平均孔径dの比[d/D]を0.4以下とする。比[d/D]を小さくすることにより、開放気泡率は小さくなる傾向があり、比[d/D]を大きくすることにより、開放気泡率が大きくなる傾向がある。比[d/D]が0.4を超える場合には、成形体の開放気泡率の値を20%以下とすることが難しくなりやすい。
【0053】
成形体の開放気泡率が8%以上20%以下であることにより、短時間の養生であっても成形体の寸法が安定しやすくなるとともに、外観が良好な成形体を得ることができる。養生時間短縮の効果や成形体の外観は、前記(1)~(3)を満足する発泡粒子を用いて型内成形することに加えて、例えば、型内成形における下記条件を制御することによって、より向上させることができる。
【0054】
前記製造方法においては、内圧を付与していない発泡粒子を成形型に充填し、型内成形を行うこともできるが、養生時間を短縮した場合における成形体の寸法変化をより確実に抑制する観点から、成形型内に充填する前の発泡粒子に予め内圧を付与する前処理加圧工程を行うことが好ましい。前処理加圧工程において成形型内に充填する前の発泡粒子に内圧を付与すると、成形時に発泡粒子が二次発泡し易くなるため、得られる成形体の外観が向上する傾向がある。また、離型直後の成形体の内圧が高くなりやすいため、養生時間を短縮した場合の成形体の寸法安定性が向上する傾向がある。
【0055】
また、従来、ポリエチレン系樹脂発泡粒子は、たとえばポリプロピレン系樹脂発泡粒子等の他の発泡粒子と比べて二次発泡性が高く、前処理加圧工程において付与する内圧の高さによっては発泡粒子の二次発泡性が過度に高くなり、成形型の内部にスチームが到達し難く成形体の中心部分の融着率が著しく低下することがあった。これに対し、本発明において型内成形に用いる発泡粒子は、上記(1)~(3)を満足する所定の貫通孔を有していることにより、二次発泡性が適度に調整されている。かかる発泡粒子を型内成形に用いることにより、スチームが成形型の内部にまで到達しやすくなる。さらに、発泡粒子の前記貫通孔もスチームの通り道となるため、前処理加圧工程において付与する内圧の量を高めた場合であっても、融着率の高い成形体を得ることができる。また、水冷時間が過度に長くなることが抑制される。
【0056】
得られる成形体の融着率をより高める観点からは、成形型内に充填する発泡粒子の内圧は、ゲージ圧において0.5MPa(G)以下であることが好ましく、0.3MPa(G)以下であることがより好ましく、0.2MPa(G)以下であることがさらに好ましい。一方、前記製造方法においては、内圧が0MPa(G)である発泡粒子、つまり、内圧を付与していない発泡粒子を用いて型内成形を行うことも可能であるが、予め内圧を付与した発泡粒子を用いて型内成形を行うことにより、短時間の養生であっても寸法がより安定しやすくなるとともに、外観がより良好な成形体を得ることができる。かかる観点からは、成形型内に充填する発泡粒子の内圧は、ゲージ圧において0.01MPa(G)以上であることが好ましく、0.02MPa(G)以上であることがより好ましく、0.05MPa(G)以上であることがさらに好ましく、0.08MPa(G)以上であることが特に好ましい。
【0057】
発泡粒子の内圧の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した発泡粒子の内圧の上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、成形型内に充填する発泡粒子の内圧は、0MPa(G)以上0.5MPa(G)以下であってもよく、0MPa(G)以上0.3MPa(G)以下であってもよく、0.02MPa(G)以上0.3MPa(G)以下であってもよく、0.05MPa(G)以上0.3MPa(G)以下であってもよく、0.08MPa(G)以上0.2MPa(G)以下であってもよい。
【0058】
前記製造方法においては、発泡粒子を成形型内に充填する際に、成形型内の体積を超える量の発泡粒子を効率よく充填するために、成形型を完全に閉鎖させないようにする成形型の開き部分を設ける、クラッキング充填法と呼ばれる方法を採用することができる。クラッキング充填法においては、成形型の開き部分をクラッキングと呼び、成形型内の体積に対する開き部分の体積の比率をクラッキング量(単位:%)として表す。なお、クラッキングは、成形型内に発泡粒子を充填後、スチームを導入する際には最終的に閉じられており、その結果充填された発泡粒子は機械的に圧縮される。
【0059】
クラッキング充填法により発泡粒子を成形型内に充填する場合、クラッキング量を大きくすると、発泡粒子間の間隙が埋まり易くなるため、開放気泡率が小さくなる傾向があり、クラッキング量を小さくすると、発泡粒子間の間隙が形成されやすくなるため、開放気泡率が大きくなる傾向がある。クラッキング充填法を採用する場合、クラッキング量は、5%以上35%以下の範囲にすることが好ましく、8%以上30%以下の範囲にすることがより好ましく、10%以上25%以下の範囲にすることがさらに好ましい。
【0060】
また、圧縮充填成形法(特公平4-46217号公報参照)により発泡粒子を成形型内に充填し成形することもできる。
【0061】
成形温度(具体的には、成形圧)を低くすると、開放気泡率が大きくなる傾向がある。また、成形温度(具体的には、成形圧)が過度に高い場合にも開放気泡率が大きくなる傾向がある。かかる観点から、成形圧は、ゲージ圧において、例えば0.05MPa(G)以上0.18MPa(G)以下の範囲にすることが好ましく、0.06MPa(G)以上0.15MPa(G)以下の範囲にすることがより好ましく、0.08MPa(G)以上0.12MPa(G)以下の範囲にすることがさらに好ましい。
【0062】
なお、前述した製造条件は一例であり、最終的に得られる成形体の開放気泡率が8%以上20%以下となるように発泡粒子を成形すれば、養生時間を短縮した場合であっても、所望形状を有し、外観、剛性に優れた成形体を得ることができる。
【0063】
発泡粒子は、図3に示すように、発泡層2と、発泡層2を被覆する被覆層3とを備えた多層構造を有していることが好ましい。発泡粒子が被覆層を有する場合には、被覆層は、例えばポリエチレン系樹脂から構成される。被覆層を構成するポリエチレン系樹脂としては、例えば、前述した発泡層に用いられるポリエチレン系樹脂と同様のポリエチレン系樹脂を用いることができる。発泡層との接着性の観点からは、被覆層を構成するポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0064】
被覆層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmsは、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmcよりも低いことが好ましい。つまり、Tms<Tmcであることが好ましい。この場合には、発泡粒子の融着性が向上し、より低温での成形が可能になる。さらに、この場合には、養生時間を短縮した場合の著しい収縮、変形をより容易に抑制しやすくなる。この理由は明らかではないが、より低い温度で成形することにより、スチーム等の加熱媒体により発泡粒子が受ける熱量をより低く抑えることができ、成形体の熱収縮による寸法変化がより抑制されやすいためと考えられる。前述した効果をより確実に得る観点からは、Tmc-Tms≧1であることが好ましく、Tmc-Tms≧3であることがより好ましく、Tmc-Tms≧5であることがさらに好ましい。発泡層と被覆層との剥離や、発泡粒子間の互着等をより抑制する観点からは、Tmc-Tms≦35であることが好ましく、Tmc-Tms≦20であることがより好ましく、Tmc-Tms≦15であることがさらに好ましい。
【0065】
TmcとTmsとの差Tmc-Tmsの好ましい範囲を構成するに当たっては、前述したTmc-Tmsの値の上限と下限とを任意に組み合わせることができる。
【0066】
成形時の発泡粒子の融着性をより高めるという観点から、被覆層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmsは、100℃以上125℃以下であることが好ましく、105℃以上122℃以下であることがより好ましい。被覆層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmsの測定方法は、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂からなる試験片に替えて、被覆層を構成するポリエチレン系樹脂からなる試験片を用いる以外は、前述した発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmcの測定方法と同様である。
【0067】
発泡層と被覆層との剥離を確実に抑制するという観点から、被覆層を構成するポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレイトは、2g/10分以上30g/10分以下であることが好ましく、5g/10分以上25g/10分以下であることがより好ましく、8g/10分以上20g/10分以下であることがさらに好ましい。なお、以下において、被覆層を構成するポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレイトを「MFRs」ということがある。
【0068】
発泡層により均一に被覆層を設ける観点から、MFRsは、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレイト(つまり、MFRc)よりも大きいことが好ましい。具体的には、MFRs-MFRc≧5であることが好ましく、MFRs-MFRc≧8であることがより好ましい。また、樹脂粒子の製造安定性を高める観点からは、MFRs-MFRc≦25であることが好ましい。被覆層を構成するポリエチレン系樹脂のMFRsは、JIS K7210-1:2014に基づき、試験温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
【0069】
前記被覆層には、高分子型帯電防止剤が含まれていることが好ましい。高分子型帯電防止剤としては、例えばポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体を例示することができる。前記高分子型帯電防止剤の配合量は前記被覆層中において10質量%以上45質量%以下であることが好ましく、20質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。被覆層中に高分子型帯電防止剤を含むことにより、得られる成形体に帯電防止性能を付与することができる。前記発泡粒子は前記特定の貫通孔を有しているため、高分子型帯電防止剤を含む場合であっても、成形圧が高くなることが抑制されるとともに、水冷時間が長くなることが抑制される。
【0070】
前記高分子型帯電防止剤の融点Tmaは、130℃以上180℃以下であることが好ましく、145℃以上170℃以下であることがより好ましい。また、発泡粒子同士の融着性を維持しつつ、帯電防止性能に優れる観点から、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmcと前記高分子型帯電防止剤の融点Tmaとの差が、25≦Tmc-Tma≦75であることが好ましく、35≦Tmc-Tma≦55であることがより好ましい。高分子型帯電防止剤の融点Tmaの測定方法は、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂からなる試験片に替えて、高分子型帯電防止剤からなる試験片を用いる以外は、前述した発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmcの測定方法と同様である。
【0071】
発泡粒子が発泡層と、発泡層を被覆する被覆層とを有する多層構造の粒子である場合、発泡層は、発泡状態のポリエチレン系樹脂から構成されており、被覆層は、発泡状態又は非発泡状態のポリエチレン系樹脂から構成されていることが好ましい。被覆層は、実質的に非発泡状態であることが好ましい。「実質的に非発泡」とは、被覆層が発泡せず、気泡が含まれない状態と、発泡後に気泡が消失した状態とを含み、ほとんど気泡構造がないことを意味する。被覆層の厚みは、例えば0.5μm以上100μm以下である。また、発泡層と被覆層との間にさらに中間層を設けてもよい。
【0072】
発泡層を構成する樹脂と被覆層を構成する樹脂との質量比(質量%の比)は、成形体の剛性を維持しつつ、成形性を高める観点から、発泡層を構成する樹脂:被覆層を構成する樹脂=99.5:0.5~80:20であることが好ましく、99:1~85:15であることがより好ましく、97:3~90:10であることがさらに好ましい。
【0073】
発泡粒子は、加熱速度10℃/分で23℃から200℃まで加熱した際に得られるDSC曲線に、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂固有の融解による吸熱ピークと、この吸熱ピークよりも高温側に位置する1以上の融解ピークとが現れる結晶構造を有することが好ましい。なお、以下において、前記DSC曲線に現れるポリエチレン系樹脂固有の融解による吸熱ピークを「樹脂固有ピーク」といい、樹脂固有ピークよりも高温側に現れる融解ピークを「高温ピーク」という。
【0074】
樹脂固有ピークとは、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂固有の融解による吸熱ピークであり、ポリエチレン系樹脂が本来有する結晶の融解時の吸熱によって生じると考えられる。一方、高温ピークは、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂中に形成された二次結晶の融解によって生じると推定される。
【0075】
発泡粒子が前述した結晶構造を有するか否かは、JIS K7121:1987に準拠し、前述した条件により示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより得られるDSC曲線に基づいて判断すればよい。また、DSCを行うにあたっては、発泡粒子1~3mgを試料として用いればよい。
【0076】
具体的には、前述したように10℃/分の加熱速度で23℃から200℃までの加熱(つまり、第1回目の加熱)を行ったときに得られるDSC曲線には、高温ピークと、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の樹脂固有ピークとの両方が現れる。これに対し、第1回目の加熱を行った後、10℃/分の冷却速度で200℃から23℃まで冷却し、その後再び10℃/分の加熱速度で23℃から200℃までの加熱(つまり、第2回目の加熱)を行ったときに得られるDSC曲線においては、発泡粒子を構成するポリエチレン系樹脂の樹脂固有ピークのみが現れる。従って、第1回目の加熱時に得られるDSC曲線と第2回目の加熱時に得られるDSC曲線とを比較することにより、樹脂固有ピークと高温ピークとを見分けることができる。この樹脂固有ピークの頂点の温度は、第1回目の加熱と第2回目の加熱とで多少異なる場合があるが、通常、その差は5℃以内である。
【0077】
発泡粒子の高温ピークの融解熱量は、発泡粒子の成形性をより向上させるという観点、剛性により優れる成形体を得るという観点から、10J/g以上40J/g以下であることが好ましく、12J/g以上35J/g以下であることがより好ましく、15J/g以上30J/g以下であることがさらに好ましい。また、DSC曲線の全融解ピークの融解熱量に対する前記高温ピークの融解熱量の比(高温ピークの融解熱量/全融解ピークの融解熱量)は、0.05以上0.3以下であることが好ましく、0.1以上0.25以下であることがより好ましく、0.15以上0.2以下であることがさらに好ましい。
【0078】
高温ピークの融解熱量及び全融解ピークの融解熱量との比をこのような範囲にすることで、発泡粒子の機械的強度及び型内成形性をより向上させることができると考えられる。
【0079】
前記発泡粒子のDSC曲線の各ピークの融解熱量は、次のようにして求められる値である。まず、状態調節を行った後の発泡粒子群から1個の発泡粒子を採取する。この発泡粒子を試験片として用い、試験片を示差熱走査熱量計によって23℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温させたときのDSC曲線を得る。図4にDSC曲線の一例を示す。図4に例示されるように、DSC曲線には、樹脂固有ピークΔH1と、樹脂固有ピークΔH1の頂点よりも高温側に頂点を有する高温ピークΔH2とが現れる。
【0080】
次いで、DSC曲線上における温度80℃での点αと、発泡粒子の融解終了温度Tでの点βとを結び直線L1を引く。なお、融解終了温度Tは、高温ピークΔH2における高温側の端点、つまり、DSC曲線における、高温ピークΔH2と、高温ピークΔH2よりも高温側のベースラインとの交点である。直線L1を引いた後、樹脂固有ピークΔH1と高温ピークΔH2との間に存在する極大点γを通り、グラフの縦軸と平行な直線L2を引く。この直線L2により樹脂固有ピークΔH1と高温ピークΔH2とが分割される。
【0081】
樹脂固有ピークΔH1の融解熱量は、DSC曲線における樹脂固有ピークΔH1を構成する部分と、直線L1と、直線L2とによって囲まれる領域の面積に基づいて算出することができる。また、高温ピークΔH2の融解熱量は、DSC曲線における高温ピークΔH2を構成する部分と、直線L1と、直線L2とによって囲まれる領域の面積に基づいて算出することができる。全融解ピークの融解熱量は、DSC曲線における樹脂固有ピークΔH1を構成する部分と、高温ピークΔH2を構成する部分と、直線L1とによって囲まれる部分の面積に基づいて算出することができる。
【0082】
発泡粒子は、前述したように貫通孔を有する。発泡粒子は、貫通孔として、円柱、角柱等の柱状の発泡粒子の軸方向を貫通する筒孔を少なくとも1つ有することが好ましい。発泡粒子は、円柱状であり、その軸方向を貫通する貫通孔としての筒孔を有することがより好ましい。
【0083】
発泡粒子が貫通孔を有していない場合には、成形体の開放気泡率が例えば8%未満にまで小さくなりやすい。その結果、養生時間を短縮した場合には成形体の著しい収縮、変形を抑制することができないおそれがある。貫通孔を有していない発泡粒子を用いて成形体の開放気泡率を大きくしたい場合には、例えば成形圧を下げて発泡粒子間の空隙を積極的に形成することとなる。しかし、この場合には成形体の外観や剛性が著しく低下するおそれがある。また、貫通孔を有していない発泡粒子を型内成形する場合には、前処理加圧工程において付与する内圧の量を高くすると発泡粒子の二次発泡性が過度に高くなり、得られる成形体の融着率が著しく低下するおそれがある。また、水冷時間が長くなるおそれがある。
【0084】
一方、発泡粒子が貫通孔を有している場合であっても、平均孔径dが大きすぎる場合には、成形体の開放気泡率が例えば20%超にまで大きくなりやすい。その結果、成形体の外観や剛性が低下するおそれがある。平均孔径dが大きすぎる発泡粒子を用いて成形体の開放気泡率を小さくしたい場合には、例えば成形圧を十分に高くすることが考えられる。しかし、この場合には成形体が熱収縮して寸法安定性が損なわれるおそれがある。また、成形圧を過度に高くするとポリエチレン系樹脂発泡粒子が熱収縮して発泡粒子間の空隙が大きくなり、所望の開放気泡率を有する成形体を得ることができないおそれがある。
【0085】
発泡粒子の平均孔径dを1mm未満とすることにより、前述した問題を容易に回避することができる。養生時間を短縮しても、所望形状を有する成形体が得られると共に、より外観及び剛性に優れた成形体が得られるという観点から、発泡粒子の平均孔径dは、0.95mm以下であることが好ましく、0.90mm以下であることがより好ましく、0.85mm以下であることがさらに好ましい。なお、成形体の開放気泡率の値をより容易に調整できるという観点から、発泡粒子の平均孔径dは、0.2mm以上であることが好ましく、0.4mm以上がより好ましい。
【0086】
発泡粒子の平均孔径dの好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した発泡粒子の平均孔径dの上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、発泡粒子の平均孔径dの好ましい範囲は、0.2mm以上1mm未満であってもよく、0.2mm以上0.95mm以下であってもよく、0.2mm以上0.90mm以下であってもよく、0.4mm以上0.85mm以下であってもよい。
【0087】
発泡粒子の平均孔径dは、主に後述する樹脂粒子における貫通孔の孔径drを調整することにより調整することができる。そのほか、発泡粒子の見掛け密度や高温ピークの融解熱量を調整することにより調整することができる。また、発泡粒子を二段発泡により製造される二段発泡粒子とすることにより、平均孔径dをより容易に小さな値に調整することができる。
【0088】
発泡粒子の貫通孔の平均孔径dは、以下のように求められる。発泡粒子群から無作為に選択した50個以上の発泡粒子を、切断面の面積が概ね最大となる位置で、貫通孔の貫通方向に対して垂直に切断する。各発泡粒子の切断面の写真撮影をし、貫通孔部分の断面積(つまり、切断面における貫通孔の開口面積)を求める。そして、貫通孔部分の断面積と同じ面積を有する仮想真円の直径を算出し、この値を個々の貫通孔の孔径とする。このようにして求めた50個以上の発泡粒子における貫通孔の孔径の算術平均値を、発泡粒子の貫通孔の平均孔径dとする。なお、各発泡粒子の貫通孔の孔径が貫通方向に一様でない場合であっても、各発泡粒子の貫通孔の孔径は、前記のように発泡粒子の切断面の面積が概ね最大となる位置での孔径によって定められる。
【0089】
筒形状の発泡粒子の肉厚が増加して発泡粒子の二次発泡性や成形体の剛性が向上するという観点から、発泡粒子の平均外径Dは、2mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましい。一方、成形時の成形型内への充填性を向上させるという観点から、発泡粒子の平均外径Dは、8mm以下であることが好ましく、6.5mm以下であることがより好ましく、5.5mm以下であることがさらに好ましい。
【0090】
発泡粒子の平均外径Dの好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した発泡粒子の平均外径Dの上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、発泡粒子の平均外径Dの好ましい範囲は、2mm以上8mm以下であってもよく、2.5mm以上6.5mm以下であってもよく、3mm以上5.5mm以下であってもよい。
【0091】
発泡粒子の平均外径Dに対する前記平均孔径dの比d/Dは0.4以下である。比d/Dが大きすぎる場合には、成形体の開放気泡率が例えば20%超にまで大きくなりやすい。その結果、成形体の外観や剛性が低下するおそれがある。成形体の外観がより良好になるという観点、剛性がより向上するという観点、二次発泡性がより向上するという観点から、d/Dは、0.35以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.25以下であることがさらに好ましく、0.2以下であることが特に好ましい。なお、比d/Dは、成形体の開放気泡率の値をより容易に調整できるという観点から、0.1以上であることが好ましい。
【0092】
前記比d/Dの好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した比d/Dの上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、比d/Dの好ましい範囲は、0.1以上0.4以下であってもよく、0.1以上0.35以下であってもよく、0.1以上0.25以下であってもよく、0.1以上0.2以下であってもよい。
【0093】
発泡粒子の平均外径Dは、以下のようにして求められる。発泡粒子群から無作為に選択した50個以上の発泡粒子を、切断面の面積が概ね最大となる位置で、貫通孔の貫通方向に対して垂直に切断する。各発泡粒子の切断面の写真撮影をし、貫通孔の開口部分を含む発泡粒子の断面積(つまり、切断面における発泡粒子の輪郭の内側の面積)を求める。そして、発泡粒子の断面積と同じ面積を有する仮想真円の直径を算出し、この値を個々の発泡粒子の外径とする。このようにして求めた50個以上の発泡粒子の外径の算術平均値を、発泡粒子の平均外径Dとする。なお、各発泡粒子の外径が、貫通方向において一様ではない場合であっても、各発泡粒子の外径は前述したように貫通方向と垂直方向での発泡粒子の切断面の面積が概ね最大となる位置での外径によって定められる。
【0094】
筒形状の発泡粒子の平均肉厚tは1.2mm以上3mm以下であることが好ましい。この場合には、発泡粒子の肉厚が十分に厚いため、型内成形時の二次発泡性をより向上させることができる。また、外力に対して発泡粒子がより潰れにくくなり、成形体の剛性をより向上させることができる。かかる観点から、発泡粒子の平均肉厚tは、1.4mm以上3mm以下であることがより好ましく、1.6mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。
【0095】
発泡粒子の平均肉厚tは、貫通孔の平均孔径d(単位:mm)及び発泡粒子の平均外径D(単位:mm)を用い、下記式(1)により求められる。
t=(D-d)/2 ・・・(1)
【0096】
発泡粒子の平均外径Dに対する平均肉厚tの比t/Dは0.35以上0.5以下であることが好ましい。t/Dが前記範囲内であれば、発泡粒子の型内成形において、発泡粒子の充填性がよく、二次発泡性がより向上する。したがって、外観や剛性に優れる成形体をより低い成形温度で製造することができる。
【0097】
成形体の軽量性と剛性とのバランスの観点から、発泡粒子の見掛け密度は、10kg/m3以上150kg/m3以下であることが好ましく、15kg/m3以上100kg/m3以下であることがより好ましく、20kg/m3以上80kg/m3以下であることがさらに好ましく、25kg/m3以上45kg/m3以下であることが特に好ましい。従来、特に見掛け密度の小さい成形体を製造する場合には、成形体が離型後に著しく変形しやすく、養生工程に要する時間を短縮することは困難であった。これに対し、本発明の製造方法では、見掛け密度が小さい場合であっても、養生工程に要する時間を短縮することが可能であり、成形体の生産性を高めることができる。
【0098】
発泡粒子の見掛け密度の測定方法は以下の通りである。まず、発泡粒子群を相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて1日放置した後に、発泡粒子群の質量(単位:g)を測定する。質量を測定した後の発泡粒子群を、23℃のアルコール(例えばエタノール)を入れたメスシリンダー内に金網などを使用して沈め、液面の上昇分から発泡粒子群の体積を測定する。このようにして得られた発泡粒子群の質量を発泡粒子群の体積で除した後、単位を換算することにより発泡粒子の見掛け密度(単位:kg/m)を求めることができる。
【0099】
養生時間を短縮した場合における成形体の著しい収縮、変形をより抑制する観点、成形時の水冷時間を短縮する観点から、発泡粒子の嵩密度に対する発泡粒子の見掛け密度の比(つまり、見掛け密度/嵩密度)は、1.75以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましく、1.85以上であることがさらに好ましい。一方、成形体の剛性をより高める観点、外観をより良好なものとする観点から、見掛け密度/嵩密度は、2.3以下であることが好ましく、2.1以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。
【0100】
見掛け密度/嵩密度の値の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した見掛け密度/嵩密度の上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、見掛け密度/嵩密度の値の好ましい範囲は、1.75以上2.3以下であってもよく、1.8以上2.1以下であってもよく、1.85以上2.0以下であってもよい。
【0101】
発泡粒子の嵩密度は、以下のように求められる。状態調節後の発泡粒子を、メスシリンダー内に自然に堆積するようにして充填し、メスシリンダーの目盛りから発泡粒子群の嵩体積(単位:L)を読み取る。その後、メスシリンダー内の発泡粒子群の質量(単位:g)を前述した嵩体積で除し、さらに単位換算することにより発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m)が求められる。
【0102】
発泡粒子に含まれる樹脂は、環境負荷軽減の観点から、無架橋であることが好ましい。無架橋の樹脂からなる発泡粒子は、架橋された樹脂からなる発泡粒子と比べてより成形体の寸法変化を生じやすい傾向があるが、前記製造方法によれば、無架橋の樹脂からなる発泡粒子を用いる場合であっても成形体の寸法変化を抑制することができる。
【0103】
本明細書でいう無架橋とは、発泡粒子の熱キシレン抽出法による不溶分が5質量%以下であることをいう。発泡粒子の熱キシレン抽出法による不溶分の割合は、3質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0104】
発泡粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分の測定方法は以下の通りである。まず、発泡粒子約1gを精秤した後、150mLの丸底フラスコに入れる。次に、フラスコ内に100mLのキシレンを加え、マントルヒーターで加熱してフラスコの内容物を6時間還流させる。その後、溶け残った残渣を100メッシュの金網で速やかに濾過して分離し、80℃の減圧乾燥器で8時間以上乾燥する。以上により得られた乾燥物の質量M(単位:g)と、還流前の発泡粒子の質量L(単位:g)とを用い、下記式(6)に基づいてキシレン不溶分(単位:質量%)を算出することができる。
熱キシレン抽出法による不溶分=(M/L)×100 ・・・(6)
【0105】
(発泡粒子の製造方法)
発泡粒子は、たとえば、発泡剤を含み、分散媒中に分散したポリエチレン系樹脂粒子を分散媒とともに低圧下に放出する方法(つまり、分散媒放出発泡方法)により製造することができる。具体的には、樹脂粒子を、密閉容器内で分散媒に分散させ、加熱後、密閉容器内に発泡剤を供給して樹脂粒子に発泡剤を含浸させることが好ましい。その後、一定温度にて二次結晶を成長させる保持工程を経た後、密閉容器内の内容物を低圧下に放出することにより発泡剤を含む樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得ることが好ましい。なお、被覆層を形成する場合には、芯層と、芯層を被覆する被覆層とを有する多層構造の樹脂粒子を発泡させることにより、発泡層と、発泡層を被覆する被覆層とを有する多層構造の発泡粒子を得ることができる。
【0106】
樹脂粒子は、例えば、次のようにして製造される。まず、押出機内に基材樹脂となるポリエチレン系樹脂と、必要に応じて供給される添加剤を供給し、加熱、混練して樹脂溶融混練物とする。その後、押出機先端に付設されたダイの小孔から、樹脂溶融混練物を、貫通孔を有する筒形状のストランド状に押し出し、冷却させてカットすることにより樹脂粒子を得ることができる。押出物は例えばペレタイザーで切断される。カット方式は、ストランドカット方式、ホットカット方式、水中カット方式等から選択することができる。このようにして、貫通孔を有する筒状の樹脂粒子を得ることができる。
【0107】
樹脂粒子の芯層に添加される添加剤としては、気泡調整剤、結晶核剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電性フィラー、抗菌剤等が挙げられる。気泡調整剤としては、タルク、マイカ、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ砂、水酸化アルミニウム、カーボン等の無機粉体;リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤、ポリフッ化エチレン系樹脂粉末等の有機粉体が挙げられる。気泡調整剤を添加する場合、気泡調整剤の含有量は、ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上1質量部以下であることが好ましい。
【0108】
なお、被覆層を形成する場合には、まず、芯層形成用押出機と被覆層形成用押出機を用いてそれぞれの原料の樹脂溶融混練物を得る。次に、各溶融混練物を押出し、ダイ内で合流させて、非発泡状態の筒状の芯層と、該筒状の芯層の外側表面を被覆する非発泡状態の被覆層とからなる鞘芯型の複合体を形成する。この複合体を押出機先端に付設された口金の細孔からストランド状に押し出しながら冷却してカットすることにより多層樹脂粒子を得ることができる。
【0109】
樹脂粒子の粒子径は、0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.3mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。また、樹脂粒子の長さ/外径比は、0.5以上5.0以下であることが好ましく、1.0以上3.0以下であることがより好ましい。また、1個当たりの平均質量(無作為に選んだ200個の粒子の質量から求める)は、0.1mg以上20mg以下であることが好ましく、0.3mg以上10mg以下であることがより好ましく、0.5mg以上5mg以下であることがさらに好ましく、1mg以上3mg以下であることが特に好ましい。多層樹脂粒子の場合における芯層と被覆層の質量比率は、芯層:被覆層=99.5:0.5~80:20であることが好ましく、99:1~85:15であることがより好ましく、97:3~90:10であることがさらに好ましい。
【0110】
樹脂粒子における貫通孔の孔径drを調整することにより、発泡粒子における貫通孔の平均孔径dを前記所望の範囲に調整することができる。樹脂粒子の芯層の貫通孔の孔径drは、たとえば貫通孔を形成するためのダイの小孔の孔径(つまり、ダイスの内径)により調整することができる。また、樹脂粒子の粒子径、平均質量を調整することにより、発泡粒子の平均外径、平均肉厚を前記所望の範囲に調整することができる。
【0111】
貫通孔の平均孔径dが1mm未満であるとともに、平均外径Dに対する平均孔径dの比d/Dが0.4以下である発泡粒子をより確実に製造する観点から、樹脂粒子の貫通孔の平均孔径drが0.25mm未満であることが好ましい。貫通孔を有する樹脂粒子の製造安定性の観点からは、樹脂粒子の貫通孔の平均孔径drは0.1mm以上であることが好ましい。
【0112】
また、同様の観点から、樹脂粒子の平均外径Drに対する平均孔径drの比dr/Drは0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.25以下であることが更に好ましく、0.2以下であることが特に好ましい。貫通孔を有する樹脂粒子の製造安定性の観点からは、樹脂粒子の平均外径Drに対する平均孔径drの比dr/Drは0.1以上であることが好ましい。
【0113】
樹脂粒子の貫通孔の平均孔径drは、以下のように求められる。樹脂粒子群から無作為に選択した50個以上の樹脂粒子を、切断面の面積が概ね最大となる位置で、貫通孔の貫通方向に対して垂直に切断する。各樹脂粒子の切断面の写真撮影をし、貫通孔部分の断面積(つまり、切断面における貫通孔の開口面積)を求める。そして、貫通孔部分の断面積と同じ面積を有する仮想真円の直径を算出し、この値を個々の貫通孔の孔径とする。このようにして求めた50個以上の樹脂粒子における貫通孔の孔径の算術平均値を、樹脂粒子の貫通孔の平均孔径drとする。なお、各樹脂粒子の貫通孔の孔径が貫通方向に一様でない場合であっても、各樹脂粒子の貫通孔の孔径は、前述したように樹脂粒子の切断面の面積が概ね最大となる位置での孔径によって定められる。
【0114】
樹脂粒子の平均外径Drは、以下のように求められる。樹脂粒子群から無作為に選択した50個以上の樹脂粒子を、切断面の面積が概ね最大となる位置で、貫通孔の貫通方向に対して垂直に切断する。各樹脂粒子の切断面の写真撮影をし、貫通孔の開口部分を含む樹脂粒子の断面積(つまり、切断面における樹脂粒子の輪郭の内側の面積)を求める。そして、樹脂粒子の断面積と同じ面積を有する仮想真円の直径を算出し、この値を個々の樹脂粒子の外径とする。このようにして求めた50個以上の樹脂粒子の外径の算術平均値を、樹脂粒子の平均外径Drとする。なお、各樹脂粒子の外径が、貫通方向において一様ではない場合であっても、各樹脂粒子の外径は前述したように貫通方向と垂直方向での樹脂粒子の切断面の面積が概ね最大となる位置での外径によって定められる。
【0115】
なお、ストランドカット法における、樹脂粒子の粒子径、長さ/外径比や平均質量の調製は、樹脂溶融混練物を押出す際に、押出速度、引き取り速度、カッタースピードなどを適宜変えて切断することにより行うことができる。
【0116】
前記のようにして得られた樹脂粒子を密閉容器内で分散させるための分散媒としては液体の水性分散媒が用いられる。水性分散媒は、水を主成分とする分散媒である。水性分散媒における水の割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。水性分散媒中の水以外の分散媒としては、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0117】
前記分散媒放出発泡方法においては、容器内で加熱された樹脂粒子同士が互いに融着しないように、分散媒中に分散剤を添加することが好ましい。分散剤としては、樹脂粒子の容器内での融着を防止するものであればよく、有機系、無機系を問わず使用可能であるが、取り扱いの容易さから微粒状無機物が好ましい。分散剤としては、例えば、アムスナイト、カオリン、マイカ、クレー等の粘土鉱物が挙げられる。粘土鉱物は、天然のものであっても、合成されたものであってもよい。また、分散剤としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、酸化鉄等が挙げられる。これらの分散剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の分散剤が併用されてもよい。これらの中でも分散剤としては粘土鉱物を用いることが好ましい。分散剤の添加量は、樹脂粒子100質量部当たり0.001質量部以上5質量部以下程度であることが好ましい。
【0118】
なお、分散剤を使用する場合、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤を併用することが好ましい。前記分散助剤の添加量は、前記樹脂粒子100質量部当たり、0.001質量部以上1質量部以下とすることが好ましい。
【0119】
樹脂粒子を発泡させるための発泡剤としては、物理発泡剤を用いることが好ましい。物理発泡剤は、無機物理発泡剤と有機物理発泡剤が挙げられ、無機物理発泡剤としては、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。また、有機物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロメタン、1-クロロ-1,1-ジクロロエタン、1,2,2,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。なお、物理発泡剤は単独で用いても、あるいは二種以上を混合して用いてもよい。また、無機物理発泡剤と有機物理発泡剤とを混合して用いることもできる。環境に対する負荷や取扱い性の観点から、好ましくは無機物理発泡剤、より好ましくは二酸化炭素が用いられる。有機物理発泡剤を用いる場合には、ポリエチレン系樹脂への溶解性、発泡性の観点から、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタンを使用することが好ましい。
【0120】
樹脂粒子100質量部に対する発泡剤の添加量は、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上15質量部以下である。
【0121】
発泡粒子の製造過程において、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法としては、樹脂粒子を密閉容器内の水性分散媒中に分散させ、加熱しながら、密閉容器内に発泡剤を供給し、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法が好ましく用いられる。
【0122】
発泡時の密閉容器内圧は、ゲージ圧において0.5MPa(G)以上であることが好ましい。一方、密閉容器内圧は4.0MPa(G)以下であることが好ましい。前記範囲内であれば、密閉容器の破損や爆発等のおそれがなく安全に発泡粒子を製造することができる。
【0123】
発泡粒子の製造過程において、昇温速度が1℃/分以上5℃/分以下となるようにして水性分散媒を昇温させることで、発泡時の温度も適切な範囲とすることができる。
【0124】
示差走査熱量測定(DSC)によるDSC曲線に、樹脂固有の融解ピーク(樹脂固有ピーク)とその高温側に1以上の融解ピーク(高温ピーク)とが現れる結晶構造を有する発泡粒子は、例えば、次のようにして得られる。
【0125】
発泡粒子の製造過程における加熱時に、(芯層を構成するポリエチレン系樹脂の融点-30℃)以上、(ポリエチレン系樹脂の融解終了温度)未満の温度で十分な時間、好ましくは10~60分程度保持する一段保持工程を行う。その後、(ポリエチレン系樹脂の融点-15℃)から(ポリエチレン系樹脂の融解終了温度+10℃)の温度に調節する。そして、必要により、その温度でさらに十分な時間、好ましくは10~60分程度保持する二段保持工程を行う。次いで、発泡剤を含む発泡性樹脂粒子を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させることにより、上述の結晶構造を有する発泡粒子を得ることができる。発泡は、密閉容器内を(芯層を構成するポリエチレン系樹脂の融点-15℃)以上で行われることが好ましく、(ポリエチレン系樹脂の融点)以上(ポリエチレン系樹脂の融点+10℃)以下で行われることがより好ましい。
【0126】
また、特に見掛け密度の低い発泡粒子を製造する場合には、前述した分散媒放出発泡方法により得られた発泡粒子に二段発泡工程を行うこともできる。二段発泡工程においては、加圧可能な密閉容器に発泡粒子を投入し、この密閉容器内を空気等の加圧気体で加圧する加圧処理を行うことにより発泡粒子の内圧を高める。その後、発泡粒子を容器内でスチーム等の加熱媒体を用いて所定の時間加熱し、二段発泡を行うことにより発泡粒子の見掛け密度をさらに低くすることができる。
【0127】
(成形体)
成形体は、上述のように発泡粒子を型内成形すること(つまり、型内成形法)により得ることができる。型内成形法は、発泡粒子を成形型内に充填し、スチーム等の加熱媒体を用いて加熱成形することにより行われる。具体的には、発泡粒子を成形型内に充填した後、成形型内にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、発泡粒子を加熱して二次発泡させると共に、相互に融着させて成形空間の形状が賦形された成形体を得ることができる。
【0128】
成形体は、例えば、発泡粒子を型内成形してなり、相互に融着した多数の発泡粒子から構成されている。成形体は、開放気泡構造を有する。開放気泡構造は、成形体の外部と連通した微小な空間部分である。開放気泡構造は、複数の発泡粒子の貫通孔が相互に連通して形成される空隙、発泡粒子の貫通孔が発泡粒子間に形成される空隙と連通して形成される空隙、発泡粒子間の空隙が連通して形成される空隙、成形体を構成する発泡粒子の連続気泡部分などが、複雑につながって形成される。
【0129】
成形体の開放気泡率は8%以上20%以下である。成形体の開放気泡率が8%未満の場合には、養生時間を短時間とした場合には成形体が著しく収縮・変形するおそれがある。一方、成形体の開放気泡率が20%を超える場合には、成形体の外観や剛性が低下するおそれがある。養生時間を短時間とした際の寸法変化をより確実に抑制する観点から、成形体の開放気泡率は、9%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、12%以上であることが更に好ましく、12%を超えることが特に好ましい。成形体の外観や剛性をより向上させることができるという観点から、成形体の開放気泡率は、18%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、15%未満であることがさらに好ましい。
【0130】
成形体の開放気泡率の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した開放気泡率の上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、成形体の開放気泡率は、9%以上18%以下であってもよく、10%以上15%以下であってもよく、12%以上15%未満であってもよく、12%を超え15%未満であってもよい。
【0131】
成形体の独立気泡率は、80%以上である。成形体の独立気泡率が80%未満の場合には、成形体の外観や剛性が損なわれるおそれがある。成形体の外観や剛性をより向上させるという観点から、成形体の独立気泡率は82%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0132】
成形体の独立気泡率は、ASTM6226-10に準じて測定される。成形体の独立気泡率の測定方法は、具体的には以下の通りである。まず、成形体を温度23℃の雰囲気中で12時間静置して状態調節を行う。次いで、成形体の中心部から縦2.5cm×横2.5cm×高さ2.5cmの測定用サンプルを切り出し、その幾何学的体積Va(単位:cm)を求める。Vaは具体的には、測定用サンプルの縦寸法(単位:cm)と横寸法(単位:cm)と高さ寸法(単位:cm]との積である。
【0133】
次に、ASTM-D6226-10に記載されている手順に準じ、空気比較式比重計(具体的には、島津製作所社製「アキュピックII1340」)により、測定用サンプルの真の体積Vxを測定する。この際、パージ工程(purging step)及び試験工程(testing step)において適用される圧力は5kPaとする。また、手順9.13及び9.14において、圧力の変化率が0.100kPa/min以下となるまで待機し、圧力を記録する。
【0134】
以上により得られる測定用サンプルの幾何学的体積Va及び真の体積Vxを用い、下記式(7)に基づいて測定用サンプルの独立気泡率(単位:%)を算出する。
独立気泡率=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ) ・・・(7)
【0135】
なお、前記式(7)における記号の意味は以下の通りである。
Vx:上記方法で測定される測定用サンプルの真の体積、即ち、成形体を構成する樹脂の容積と、成形体内の独立気泡部分の気泡全容積との和(単位:cm3
Va:測定用サンプルの幾何学的体積(単位:cm3
W:測定用サンプルの質量(単位:g)
ρ:成形体を構成する樹脂の密度(単位:g/cm
【0136】
以上の操作を成形体から切り出した5個の測定用サンプルのそれぞれについて行い、5個の測定用サンプルの独立気泡率を算術平均した値を成形体の独立気泡率Bpとする。
【0137】
成形体の密度は10kg/m3以上100kg/m3以下であることが好ましい。この場合には、成形体の軽量性と剛性とをバランスよく向上させることができる。成形体の剛性がより向上するという観点から、成形体の密度は15kg/m3以上であることがより好ましく、20kg/m3以上であることがさらに好ましい。成形体の軽量性がより向上するという観点から、成形体の密度は80kg/m3以下であることがより好ましく、50kg/m3以下であることがさらに好ましく、35kg/m3以下であることが特に好ましい。成形体の密度は、成形体の質量(単位:g)を成形体の外形寸法から求められる体積(単位:L)で除し、単位換算することにより算出される。なお、例えば成形体が少なくとも部分的に複雑形状を有し、成形体の外形寸法から体積を求めることが容易でない場合には、3次元測定により成形体の体積を求めることができる。
【0138】
従来、密度の小さい成形体を製造する場合、離型後に成形体が著しく変形しやすいため、養生時間を短時間とすることは特に困難であった。これに対し、本発明における発泡粒子成形体によれば、見掛け密度が小さい場合であっても、養生時間を短時間とすることが可能であり、短時間の養生でも所望形状で、外観、剛性に優れた成形体となる。この効果を有効に発揮するという観点からも、成形体の密度を前記範囲にすることが好ましい。
【0139】
成形体の密度の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した成形体の密度の上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、成形体の密度の好ましい範囲は、15kg/m3以上80kg/m3以下であってもよく、20kg/m3以上50kg/m3以下であってもよい。
【0140】
成形体は、自動車などの車両分野、建築分野等の種々の分野における吸音材、衝撃吸収材、緩衝材等にも用いられる。
【実施例0141】
次に、本発明に係るポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体及びその製造方法の実施例を説明する。
【0142】
(ポリエチレン系樹脂)
表1に、発泡粒子の製造に使用したポリエチレン系樹脂の性状等を示す。なお、本例において使用したポリエチレン系樹脂は、いずれも直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)である。
【0143】
【表1】
【0144】
〔ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率〕
ポリエチレン系樹脂を200℃でヒートプレスして厚さ4mmのシートを作製し、このシートから長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を切り出した。この試験片の曲げ弾性率を、JIS K7171:2008に準拠して求めた。なお、圧子の半径R1及び支持台の半径R2は共に5mmであり、支点間距離は64mmであり、試験速度は2mm/minである。
【0145】
〔ポリエチレン系樹脂の融点〕
ポリエチレン系樹脂の融点は、ポリエチレン系樹脂からなる試験片を準備し、JIS K7121:1987に基づき求めた。具体的には、まず、試験片を10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次いで10℃/minの冷却速度で30℃まで冷却して試験片の状態調節を行った。その後、状態調節された試験片を10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、DSC曲線に現れた融解ピークの頂点温度をポリエチレン系樹脂の融点とした。なお、測定装置には、熱流束示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、型番:DSC7020)を用いた。
【0146】
〔ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレイト〕
ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレイト(つまり、MFR)は、JIS K7210-1:2014に準拠し、試験温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0147】
次に、本例において用いた発泡粒子の構成及び製造方法を説明する。
【0148】
(発泡粒子A)
発泡粒子Aは、貫通孔を備えた筒形状を有している。また、発泡粒子Aは、表2に示すように、ポリエチレン系樹脂としてのPE1から構成された発泡層と、ポリエチレン系樹脂としてのPE2から構成され、発泡層を被覆する被覆層とを備えた多層構造を有している。発泡粒子Aを作製するに当たっては、芯層形成用押出機と、被覆層形成用押出機と、これら2台の押出機に接続された共押出ダイとを備えた共押出装置を用い、共押出装置から押し出された押出物をストランドカット法により切断して多層樹脂粒子を作製した。発泡粒子Aの具体的な製造方法は以下の通りである。
【0149】
〔樹脂粒子の製造〕
まず、表2に示すように芯層を構成するPE1と、気泡調整剤とを最高設定温度245℃に設定した芯層形成用押出機に供給し、押出機内で溶融混練することにより芯層形成用樹脂溶融混練物を得た。なお、気泡調整剤としては、具体的にはホウ酸亜鉛を使用した。ホウ酸亜鉛の配合量はポリエチレン系樹脂の質量に対して500質量ppmとした。
【0150】
これと並行して、被覆層を構成するPE2と、高分子型帯電防止剤とを最高設定温度245℃に設定した被覆層形成用押出機に供給し、押出機内で溶融混練することにより被覆層形成用樹脂溶融混練物を得た。なお、高分子型帯電防止剤としては、ポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体(三洋化成工業株式会社製「ペレスタット(登録商標)230」、融点163℃)を使用した。被覆層形成用樹脂溶融混練物中の高分子型帯電防止剤の配合量は表2に示す値とした。
【0151】
これらの樹脂溶融混練物を共押出し、ダイ内で合流させることにより、非発泡状態の芯層と、芯層の側周面を被覆する非発泡状態の被覆層とからなり、芯層の中央部付近に押出方向に沿って形成された貫通孔を備えた複合体を形成した。この複合体をダイから押出した後、押出物を引き取りながら水中で冷却し、ペレタイザーを用いて適当な長さに切断することにより、貫通孔を有する円筒状の芯層と該芯層を被覆する被覆層とからなる多層樹脂粒子を得た。なお、冷却時の水温は23℃とした。また、多層樹脂粒子1個当たりの質量は約2.5mgとした。
【0152】
〔発泡〕
次に、分散媒放出発泡方法により多層樹脂粒子を発泡させ、発泡粒子Aを得た。具体的には、まず、多層樹脂粒子1kgを、分散媒としての水3Lともに5Lの密閉容器内に入れ、更に多層樹脂粒子100質量部に対し、分散剤としてのカオリン0.3質量部、界面活性剤0.004質量部を密閉容器内に添加した。なお、本例において使用した界面活性剤は、具体的にはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0153】
密閉容器内に、さらに発泡剤としての二酸化炭素を添加した後、密閉容器を密閉し、密閉容器内を攪拌しながら表2に示す発泡温度まで加熱した。このときの容器内圧力(含浸圧力または二酸化炭素圧力ともいう)は表2に示す値であった。密閉容器内の温度が前記発泡温度に到達した後、この温度を15分保持した。その後、容器内容物を大気圧下に放出することにより、多層樹脂粒子の芯層を発泡させて発泡粒子Aを得た。本例においては、容器から放出した発泡粒子Aを23℃で24時間乾燥させた後に、後述する成形体の製造や物性の評価を行った。
【0154】
(発泡粒子B)
発泡粒子Bは、被覆層を構成するポリエチレン系樹脂がPE3に変更されている以外は、概ね発泡粒子Aと同様の構成を有している。発泡粒子Bの製造方法は、被覆層形成用押出機に供給したポリエチレン系樹脂をPE3に変更した以外は発泡粒子Aの製造方法と同様である。
【0155】
(発泡粒子C)
発泡粒子Cは、見掛け密度が表2に示す値である以外は、概ね発泡粒子Aと同様の構成を有している。発泡粒子Cを製造するに当たっては、多層樹脂粒子を2段階で発泡させる方法を採用した。具体的には、まず、発泡温度及び容器内圧力を表2に示す値に変更した点以外は発泡粒子Aの製造方法と同様の方法により多層樹脂粒子を発泡させて一段発泡粒子を得た。次いで、耐圧容器内に前記一段発泡粒子を入れ、耐圧容器内を空気で加圧し、空気を一段発泡粒子の気泡内に含浸させることにより気泡の内圧を高めた。なお、耐圧容器から取り出した一段発泡粒子における気泡内の圧力(つまり、内圧)は0.5MPa(G)であった。
【0156】
その後、耐圧容器から取り出した一段発泡粒子を金属製のドラムに入れ、ドラム圧力が0.03MPa(G)となるようスチームを供給して一段発泡粒子を加熱した。以上により、一段発泡粒子の見掛け密度を低下させ、発泡粒子(二段発泡粒子ともいう)を得た。
【0157】
(発泡粒子D)
発泡粒子Dは、貫通孔を有しない点及び被覆層に高分子型帯電防止剤が含まれていない点以外は概ね発泡粒子Aと同様の構成を有している。発泡粒子Dの製造方法は、被覆層形成用押出機に高分子型帯電防止剤を供給しなかった点、多層樹脂粒子の製造時に用いるダイの形状を変更して貫通孔を有さない多層樹脂粒子を製造した点、及び発泡温度と容器内圧力とを表2に示す値に変更した点以外は発泡粒子Aの製造方法と同様である。
【0158】
(発泡粒子E)
発泡粒子Eは、貫通孔を有しない点及び被覆層に高分子型帯電防止剤が含まれていない点以外は概ね発泡粒子Cと同様の構成を有している。発泡粒子Eの製造方法は、被覆層形成用押出機に高分子型帯電防止剤を供給しなかった点、多層樹脂粒子の製造時に用いるダイの形状を変更して貫通孔を有さない多層樹脂粒子を製造した点、及び発泡温度と容器内圧力とを表2に示す値に変更した点以外は発泡粒子Cの製造方法と同様である。
【0159】
(発泡粒子F)
発泡粒子Fは、被覆層を有しない点以外は概ね発泡粒子Aと同様の構成を有している。発泡粒子Aの製造方法は、被覆層形成用押出機を使用せず、単層構造の樹脂粒子を製造した点、及び発泡温度を表2に示す値に変更した点以外は発泡粒子Aの製造方法と同様である。
【0160】
(発泡粒子G)
発泡粒子Gは、貫通孔の平均孔径dが大きい点以外は概ね発泡粒子Fと同様の構成を有している。発泡粒子Gの製造方法は、樹脂粒子の製造時に用いるダイの形状を変更して貫通孔の孔径が大きな樹脂粒子を製造した点、及び発泡温度と容器内圧力とを表2に示す値に変更した点以外は発泡粒子Fの製造方法と同様である。
【0161】
(実施例1~2、6、比較例1、5)
これらの実施例及び比較例においては、表3及び表4に示す発泡粒子を用い、縦300mm×横250mm×厚さ60mmの成形体を作製した。具体的には、まず、前処理加圧工程を行っていない発泡粒子を、クラッキング充填法により縦300mm×横250mm×厚さ60mmの平板成形型に充填した。充填時のクラッキング量(具体的には、厚さ方向の内寸法に対する成形型の型開き量の比率)は20%(つまり、12mm)とし、充填が完了した後、成形型を厚み方向に型締めして発泡粒子を機械的に圧縮した。
【0162】
次に、成形型内にスチームを供給して型内成形を行った。型内成形においては、まず、成形型のドレン弁を開放した状態で成形型内にスチームを5秒間供給して予備加熱を行った。次いで、ドレン弁を閉鎖し、表3及び表4に示す本加熱時の成形圧より0.08MPa(G)低い圧力に達するまで、成形型の一方の面側からスチームを供給して一方加熱を行った。次に、本加熱時の成形圧より0.04MPa(G)低い圧力に達するまで成形型の他方の面側よりスチームを供給して一方加熱を行った。その後、本加熱時の成形圧に達するまで成形型の両面からスチームを供給して本加熱を行った。本加熱が完了した後、成形型内の圧力を解放し、成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)になるまで成形型内において成形体を冷却した。成形体の冷却が完了した後、成形型から成形体を離型し、後述する評価の内容に応じた条件で養生工程を行った。
【0163】
なお、実施例1~6における本加熱時の成形圧は、後述する融着性の評価が合格となる成形体を取得可能な成形圧のうち、最も低い圧力となる値である。表3及び表4の「水冷時間」には、本加熱が完了した時点から、表面圧力が0.04MPa(G)に到達した時点までの時間を記載した。
【0164】
(実施例3~5、比較例2~4)
これらの実施例及び比較例においては、表3及び表4に示す発泡粒子に前処理加圧工程を行った後に、実施例1と同様の方法により型内成形を行い、成形体を得た。前処理加圧工程においては、具体的には、耐圧容器内に発泡粒子を入れ、耐圧容器内を空気で加圧し、空気を一段発泡粒子の気泡内に含浸させることにより気泡の内圧を高めた。なお、耐圧容器から取り出した発泡粒子の気泡内の圧力(つまり、内圧)は表3及び表4に示す通りであった。
【0165】
以上の発泡粒子及び成形体について、表2~表4に示す物性測定及び評価を実施した。表2~表4に示す評価項目の評価方法を以下に説明する。なお、発泡粒子の物性測定及び評価は、発泡粒子を相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて24時間静置して状態調節した後に行った。また、成形体の物性測定及び評価は、後述する「短時間養生時の寸法安定性評価」において寸法安定性が良好であると評価された養生時間のうち、最も短い養生時間の養生工程を行った成形体を用いて行った。養生工程における雰囲気の条件は、相対湿度50%、温度60℃、圧力1atmとした。
【0166】
(発泡粒子の貫通孔の平均孔径d)
状態調節後の発泡粒子群から無作為に選択した100個の発泡粒子について、切断面の面積が概ね最大となる位置で、貫通孔の貫通方向に対して垂直に切断した。各発泡粒子の切断面の写真撮影をし、断面写真における貫通孔部分の断面積(開口面積)を求めた。貫通孔部分の断面積と同じ面積を有する仮想真円の直径を算出し、この値を個々の発泡粒子における貫通孔の孔径とした。そして、100個の発泡粒子における貫通孔の孔径の算術平均値を、発泡粒子の貫通孔の平均孔径dとした。
【0167】
(発泡粒子の平均外径D)
状態調節後の発泡粒子群から無作為に選択した100個の発泡粒子について、切断面の面積が概ね最大となる位置で、貫通孔の貫通方向に対して垂直に切断した。各発泡粒子の切断面の写真撮影をし、貫通孔の開口部を含めた発泡粒子の断面積を求めた。発泡粒子の断面積と同じ面積を有する仮想真円の直径を算出し、この値を個々の発泡粒子の外径とした。そして、100個の発泡粒子の外径の算術平均値を、発泡粒子の平均外径Dとした。
【0168】
(発泡粒子の平均肉厚t)
発泡粒子の平均肉厚は、前述した発泡粒子の平均外径D及び貫通孔の平均孔径dを用い、下記式(1)に基づいて算出した。
t=(D-d)/2・・・(1)
【0169】
(発泡粒子の嵩密度)
状態調節後の発泡粒子をメスシリンダー内に自然に堆積するようにして入れ、メスシリンダーの目盛から発泡粒子群の嵩体積(単位:L)を読み取った。なお、本例においては、メスシリンダー内の発泡粒子の嵩体積は1Lとした。その後、メスシリンダー内の発泡粒子群の質量(単位:g)を前述した嵩体積で除し、さらに単位換算することにより、発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を算出した。
【0170】
(発泡粒子の見掛け密度)
状態調節後の発泡粒子群の質量を測定した後、温度23℃のエタノールが入ったメスシリンダー内に金網を使用して沈めた。そして、金網の体積を考慮し、液面の上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積を測定した。このようにして得られた発泡粒子群の質量(単位:g)を容積(単位:L)で除した後、単位を換算することにより、発泡粒子の見掛け密度(単位:kg/m3)を算出した。
【0171】
(発泡粒子の独立気泡率)
発泡粒子の独立気泡率の測定方法は、前述した通りである。なお、測定用サンプルとしては、状態調節を行った後の発泡粒子を用いた。また、測定に用いた発泡粒子の嵩体積は約20cm3とし、発泡粒子を構成する樹脂の密度(単位:g/cm)には、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の密度を使用した。
【0172】
(発泡粒子の高温ピークの融解熱量)
状態調節を行った後の発泡粒子群から1個の発泡粒子を採取した。この発泡粒子を試験片として用い、前述した方法により個々の発泡粒子の高温ピークの融解熱量を測定した。なお、測定装置としては、ティー・エイ・インスツルメント社製「DSC.Q1000」を使用した。以上の操作を5個の発泡粒子について行い、5個の発泡粒子における高温ピークの融解熱量の算術平均値を表2~表4に示した。
【0173】
(前処理加圧工程後の発泡粒子の内圧)
成形型内に充填する直前の、内圧が高められた状態の発泡粒子群の質量Q(単位:g)及び前処理加圧工程から48時間経過後の発泡粒子群の質量U(単位:g)を測定した。これらの値を用い、下記式(8)に基づいて前処理加圧工程後の発泡粒子の気泡の内圧P(単位:MPa(G))を算出した。
P={(Q-U)÷M}×R×T÷V ・・・(8)
【0174】
なお、前記式(8)におけるMは空気の分子量であり、Rは気体定数であり、Tは発泡粒子群の絶対温度(単位:K)であり、Vは発泡粒子群の見掛け体積から発泡粒子群中に占める樹脂の体積を差し引いた体積(単位:L)である。本例では、M=28.8g/mol、R=0.0083MPa・L/(K・mol)、T=296Kを使用した。また、前処理加圧工程を行わなかった実施例及び比較例においては、表3及び表4中の「前処理加圧工程の有無」の欄には「なし」と記載し、「前処理加圧工程後の内圧」の欄には記号「-」を記載した。前処理加圧工程を行わない場合、成形型に充填される発泡粒子の内圧は0MPa(G)(つまり、大気圧に等しい内圧)である。
【0175】
(成形体の開放気泡率)
ASTM6226-10に準拠し、補足X1.3に記載の手順2に従い測定用サンプルの切り出し時に破壊される独立気泡の影響の補正を行った成形体の開放気泡率を測定した。成形体の開放気泡率の具体的な測定方法は前述した通りである。
【0176】
(成形体の独立気泡率)
ASTM6226-10に準じて成形体の独立気泡率を測定した。成形体の独立気泡率の具体的な測定方法は前述した通りである。成形体の独立気泡率の測定方法は前述した通りである。なお、成形体を構成する樹脂の密度(単位:g/cm)には、成形体の作製に用いた発泡粒子における、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の密度を使用した。
【0177】
(成形体の密度)
成形体の質量(単位:g)を成形体の外形寸法から求められる体積(単位:L)で除した後、単位換算することにより成形体の密度(単位:kg/m)を算出した。
【0178】
(短時間養生時の寸法安定性評価)
短時間養生時の寸法安定性の評価は、成形体を成形金型から離型した後に、60℃の温度に調整された高温雰囲気下で所定時間静置させるという養生工程において、養生時間(つまり、成形体を静置する時間)を変化させ、各養生時間経過後の成形体の回復性を評価することにより行った。具体的には、前述した方法により成形体を作製し、成形型から離型した後に、2時間、3時間、8時間、及び12時間のいずれかの養生時間を採用して養生工程を行った。そして、これらの成形体を用いて後述する回復性の評価を行い、評価結果が合格である成形体が得られた場合をその養生時間にて寸法安定性が良好であると判断した。
【0179】
表3及び表4の「短時間養生時の寸法安定性評価」欄には、寸法安定性が良好である養生時間のうち最も短い時間が2時間である場合に記号「A+」、3時間である場合に記号「A」、8時間である場合に記号「B」、12時間である場合に記号「C」を記載した。寸法安定性の評価においては、3時間以下の養生時間で寸法安定性が良好な成形体が得られる記号「A+」及び記号「A」の場合を合格と判断し、3時間以下の養生時間で寸法安定性が良好な成形体が得られない記号「B」及び記号「C」の場合を不合格と判断した。
【0180】
〔回復性〕
発泡粒子成形体を厚み方向から見た平面視において、角部より中心方向に約10mm内側となる4か所の位置における発泡粒子成形体の厚みと、中央部における発泡粒子成形体の厚みとをそれぞれ計測した。次いで、計測した箇所のうち最も厚みの厚い箇所の厚みに対する最も厚みの薄い箇所の厚みの比(単位:%)を算出した。このようにして得られた厚みの比が99%以上である場合を合格と判断し、99%未満である場合を不合格と判断した。
【0181】
(成形体の融着率)
成形体を中央付近で折り曲げて破断させ、破断面に存在する発泡粒子の総数と発泡粒子の内部において破断していた発泡粒子の数とを数えた。その後、前記破断面に存在する発泡粒子の総数に対する発泡粒子の内部において破断していた発泡粒子の数の比率(つまり、材料破壊率)を算出した。以上の作業を5つの成形体について行い、5つの成形体における材料破壊率の算術平均値を表3及び表4の「融着率」欄に記載した。融着率の評価においては、材料破壊率の算術平均値が90%以上である場合を合格と判断し、90%未満である場合を不合格と判断した。
【0182】
(成形体の外観)
成形体の表面を目視観察し、下記基準に基づいて外観を評価した。
A:成形体の表面に粒子間空隙が少なく、かつ貫通孔等に起因する凹凸が目立たない良好な表面状態を示す。
B:成形体の表面に粒子間空隙および/または貫通孔等に起因する凹凸がやや認められる。
C:成形体の表面に粒子間空隙および/または貫通孔等に起因する凹凸が著しく認められる。
【0183】
(成形体の50%圧縮応力)
成形体の表面にあるスキン面、つまり、型内成形時に成形型の内表面と接触していた面を含まないようにして、成形体の中心部から縦50mm×横50mm×厚み25mmの角柱形状を有する試験片を切り出した。JIS K6767:1999に基づき、圧縮速度10mm/分にて圧縮試験を行い成形体の50%圧縮応力を求めた。
【0184】
【表2】
【0185】
【表3】
【0186】
【表4】
【0187】
表3に示したように、実施例1~6の製造方法は、短時間の養生工程であっても、所望形状を有する、外観及び剛性に優れた成形体を製造することができる。また、実施例3と実施例4との対比、及び実施例1と実施例5との対比から理解されるように、前記発泡粒子を用いることにより、前処理加圧工程において発泡粒子に付与する内圧の量を増加させても融着率を低下させることなく良好な成形体を得ることができる。さらに、前処理加圧工程において発泡粒子に付与する内圧の量を高めると、養生時間を短縮した場合における寸法安定性をより高めることができる。
【0188】
なお、実施例1~6の発泡粒子の熱キシレン抽出法による不溶分の割合はいずれも0質量%であった。また、実施例1~6の成形体の表面抵抗率の値はいずれも1×1013Ω未満であった。なお、成形体の表面抵抗率は、JIS K6271:2001に準拠して測定した。
【0189】
一方、表4に示したように、比較例1及び比較例2の製造方法では、貫通孔を有していない発泡粒子を用いて成形体を製造したため、成形体の開放気泡率が低くなりすぎた。その結果、養生時間を短縮した場合に、成形体の著しい収縮、変形が生じ(つまり、回復性が不合格となり)、良好な成形体を得ることができなかった。また、成形型内において成形体の冷却に要する時間(水冷時間)が長かった。
【0190】
比較例3は、比較例2において短時間養生時の寸法安定性を高めるために、前処理加圧工程において付与する内圧の量を増加させて成形した例である。比較例3においては、短時間養生時の寸法安定性はわずかに向上したものの不十分であった。一方、比較例3においては、比較例2と比べて融着率が著しく低下し、良好な成形体を得られなかった。
【0191】
比較例4は、実施例1と同様の発泡粒子を用い、異なる成形条件で成形体を製造した例である。比較例4では、成形圧がやや高く、発泡粒子が収縮しやすいためか得られる成形体の開放気泡率が過度に高くなり、成形体の外観が著しく悪化した。
【0192】
比較例5は、発泡粒子の貫通孔の平均孔径が1mmを超えており、得られる成形体の開放気泡率が過度に高くなり、成形体の外観が著しく悪化した。
【0193】
以上、本発明に係るポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体及びその製造方法の態様を実施例に基づいて説明したが、本発明に係るポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体及びその製造方法の具体的な態様は実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【符号の説明】
【0194】
1 発泡粒子
11 貫通孔
2 発泡層
3 被覆層
図1
図2
図3
図4