(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089264
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】車輪位置検出装置
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
B60C23/04 140D
B60C23/04 140A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204527
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正博
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌紘
(57)【要約】
【課題】タイヤセンサにおける電力消費を抑えつつ、タイヤセンサが設置される車輪位置を特定可能な車輪位置検出装置を提供する。
【解決手段】車輪位置検出装置は、複数のタイヤセンサ2と車載機3とを備える。複数のタイヤセンサ2は、走行状態において加速度センサ22の検出信号に基づいてタイヤセンサ2の位置を示す第1回転角度を求めるとともに当該第1回転角度を車載機2に通知する一連の処理を行う第1制御部23を有する。車載機2は、フレームの受信およびレスポンス信号の送信を行う第2送受信部31と、車輪角度センサ11a~11dの出力信号および第1回転角度の通知に基づいて車輪位置を特定する第2制御部33と、を有する。第2制御部33は、車輪位置の確定または未確定を示す輪位置特定状態をタイヤセンサ2に通知する。第1制御部23は、車輪位置の確定が通知されると、走行状態における一連の処理の実施を停止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(6)に対してタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の前記車輪(5a~5d)それぞれに設けられ、固有の識別情報が付加されたフレームを送信する複数のタイヤセンサ(2)と、
前記車両に設けられた車載機(3)と、を備え、
複数の前記タイヤセンサそれぞれは、前記車輪の回転に伴って変化する加速度に応じた検出信号を出力する加速度センサ(22)と、前記加速度センサの検出信号が所定の規定値以上となる走行状態において前記加速度センサの検出信号に基づいて前記車輪の周方向における前記タイヤセンサの位置を示す回転角度を第1回転角度として求めるとともに前記第1回転角度を前記車載機に通知する一連の処理を行う第1制御部(23)と、前記フレームの送信および前記車載機から送信されるレスポンス信号の受信を行う第1送受信部(24)と、を有し、
前記車載機は、前記フレームの受信および前記レスポンス信号の送信を行う第2送受信部(31)と、複数の前記車輪それぞれに対応して設けられた車輪角度センサ(11a~11d)の出力信号および前記第1回転角度の通知に基づいて、前記タイヤセンサが設置された車輪位置を特定する第2制御部(33)と、を有し、
前記第2制御部は、前記車輪位置の確定または未確定を示す輪位置特定状態を前記第2送受信部によって前記タイヤセンサに通知し、
前記第1制御部は、前記車輪位置の確定が通知されると、前記走行状態における前記一連の処理の実施を停止する、車輪位置検出装置。
【請求項2】
前記車載機は、前記フレームを受信すると、前記タイヤセンサに対して前記輪位置特定状態を付加した前記レスポンス信号を前記第2送受信部によって送信する、請求項1に記載の車輪位置検出装置。
【請求項3】
前記第2制御部は、前記車輪位置の確定後、前記車両の停車状態が所定の駐車判定時間を超えて継続されると、前記輪位置特定状態を前記車輪位置の未確定に変更する、請求項1または2に記載の車輪位置検出装置。
【請求項4】
前記第1制御部は、前記走行状態において前記車輪位置の確定および未確定を示す状態フラグを参照して前記一連の処理の実施の要否を判断するとともに、前記車輪位置の確定が通知されると前記状態フラグを前記車輪位置の確定に設定する一方で、前記車輪位置の確定が通知された後、前記加速度センサの検出信号が前記規定値未満となる状態が所定の基準時間を超えて継続されると、前記状態フラグを前記車輪位置の未確定に変更する、請求項3に記載の車輪位置検出装置。
【請求項5】
前記第1制御部は、前記走行状態において前記フレームを前記第1送受信部から送信する際に単方向コマンドを示す前記フレームを作成し、前記加速度センサの検出信号が前記規定値未満となる状態において前記レスポンス信号を要求する双方向コマンドを示す前記フレームを作成する、請求項1または2に記載の車輪位置検出装置。
【請求項6】
前記第1制御部は、前記加速度センサの検出信号が前記規定値未満となる状態において、前記車体からのホイールの脱着の実施および未実施の少なくとも一方を判定し、その判定結果を示す前記フレームを前記第1送受信部から送信し、
前記第2制御部は、前記車両の走行中に、前記第2送受信部によって前記判定結果を示す前記フレームを受信した際の前記判定結果を含めて前記車輪位置の特定の要否を判定し、前記車輪位置の特定が不要と判定される場合に前記車輪位置の確定を示す前記輪位置特定状態を前記第2送受信部によって前記タイヤセンサに通知する、請求項1または2に記載の車輪位置検出装置。
【請求項7】
前記第1制御部は、前記加速度センサの検出信号が前記規定値未満となる状態において、前記車体からの前記ホイールの脱着が未実施であるか否かを判定し、その判定結果を示す前記フレームを前記第1送受信部から送信する、請求項6に記載の車輪位置検出装置。
【請求項8】
前記加速度センサは、前記車輪の径方向の加速度を第1加速度として検出しつつ、前記車輪の周方向の加速度を第2加速度として検出可能になっており、
前記第1制御部は、前記走行状態において、前記加速度センサで検出される前記第1加速度および前記第2加速度に基づいて前記車輪の回転方向を検出し、検出結果を含む前記フレームを前記第1送受信部から送信し、
前記第2制御部は、2つの前記タイヤセンサでの前記判定結果が前記ホイールの脱着の可能性があることを示し、且つ、2つの前記タイヤセンサそれぞれの前記判定結果が前回の前記車輪の回転方向と逆転していることを示す場合に、2つの前記タイヤセンサの前記車輪位置を入れ替え、前記車輪位置の確定を示す前記輪位置特定状態を前記第2送受信部によって前記タイヤセンサに通知する、請求項6に記載の車輪位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車輪位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、歯車の歯の通過を検出する車輪速度センサの検出信号に基づいて歯車の歯位置を示す情報を取得し、取得した情報に基づいて、タイヤの空気圧を検出するタイヤセンサがどの車輪に取り付けられたものかを特定する技術が開示されている。具体的には、タイヤセンサの制御部が車輪の回転に伴って変化する重力加速度成分に基づいて車輪の中心に対するタイヤセンサの角度(回転角度)を検出した後に、タイヤセンサが所定角度となるタイミングでフレーム送信が行われるようにし、車体側に備えた車載機でフレーム受信を行った際の歯位置を車輪速度センサから取得する。また、フレームの受信タイミングのときの歯位置に基づいてバラツキ許容幅を設定し、その後のフレームの受信タイミングのときの歯位置がバラツキ許容幅外であれば、フレームが送信されたタイヤセンサの取り付けられた車輪の候補から除外する。そして、残った車輪をフレームが送信されたタイヤセンサの取り付けられた車輪として登録するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の車輪位置検出装置は、タイヤセンサと車載機との間の通信が、タイヤセンサから車載機への一方向通信となっている。このため、車両の走行が開始されて各タイヤセンサが取り付けられた車輪位置が確定した後も、タイヤセンサにてタイヤセンサの回転角度の検出および所定角度となるタイミングでのフレーム送信が継続される。タイヤセンサの回転角度の検出には、一定時間以上、もしくは、車輪が一定数以上回転する間の加速度の観測と演算が必要であり、このことは、タイヤセンサの無駄な電力消費となることから好ましくない。
【0005】
本開示は、タイヤセンサにおける電力消費を抑えつつ、タイヤセンサが設置される車輪位置を特定可能な車輪位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
車体(6)に対してタイヤを含む複数の車輪(5a~5d)が取り付けられた車両(1)に適用される車輪位置検出装置であって、
複数の車輪(5a~5d)それぞれに設けられ、固有の識別情報が付加されたフレームを送信する複数のタイヤセンサ(2)と、
車両に設けられた車載機(3)と、を備え、
複数のタイヤセンサそれぞれは、車輪の回転に伴って変化する加速度に応じた検出信号を出力する加速度センサ(22)と、加速度センサの検出信号が所定の規定値以上となる走行状態において加速度センサの検出信号に基づいて車輪の周方向におけるタイヤセンサの位置を示す回転角度を第1回転角度として求めるとともに第1回転角度を車載機に通知する一連の処理を行う第1制御部(23)と、フレームの送信および車載機から送信されるレスポンス信号の受信を行う第1送受信部(24)と、を有し、
車載機は、フレームの受信およびレスポンス信号の送信を行う第2送受信部(31)と、複数の車輪それぞれに対応して設けられた車輪角度センサ(11a~11d)の出力信号および第1回転角度の通知に基づいて、タイヤセンサが設置された車輪位置を特定する第2制御部(33)と、を有し、
第2制御部は、車輪位置の確定または未確定を示す輪位置特定状態を第2送受信部によってタイヤセンサに通知し、
第1制御部は、車輪位置の確定が通知されると、走行状態における一連の処理の実施を停止する。
【0007】
これによると、車載機にて車輪位置が確定されると、車両の走行中におけるタイヤセンサ側での第1回転角度の検出および当該第1回転角度を通知する一連の処理の実施が停止される。したがって、タイヤセンサにおける電力消費を抑えつつ、タイヤセンサが設置される車輪位置を特定可能な車輪位置検出装置を実現することができる。
【0008】
ここで、第1回転角度を車載機に通知する方法は、タイヤ空気圧等を含むタイヤ情報の通知を行う際に、通知時点における第1回転角度を送信フレーム内に追加する方法、あるいは、タイヤ情報の通知を、タイヤセンサが所定の第1回転角度となるタイミングに合わせるようにする方法のいずれであってもよい。したがって、一連の処理の実施を停止した場合、前者ではフレームへの第1回転角度の追加を行わず、後者では所定の角度となるタイミングには合わせないことを示す。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムの概略構成図である。
【
図3】車輪の回転方向と加速度センサの出力との関係を説明するための説明図である。
【
図5】タイヤセンサが実行する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】車載機が実行する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】左右のタイヤが入れ替えられた際の位置検出処理を説明するための説明図である。
【
図8】位置検出処理を実施した際の登録状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一実施形態について
図1~
図8を参照しつつ説明する。本実施形態では、本開示の車輪位置検出装置を含むタイヤ空気圧監視システム(以下、TPMSという)を、4つの車輪5a~5dを走行輪として有する車両1に適用した例について説明する。なお、
図1の紙面上方向が車両1の前方、紙面下方が車両1の後方、紙面左右方向が車両1の左右方向となっている。なお、以下では、4つの車輪5a~5dを区別して説明する場合等に、4つの車輪5a~5dを左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RRと表記することがある。また、
図1では、各タイヤセンサ2について、左前輪FLに設置されたものを“2A”、右前輪FRに設置されたものを“2B”、左後輪RLに設置されたものを“2C”、右後輪RRに設置されたものを“2D”としている。
【0012】
図1に示すように、TPMSは、車両1に搭載されるもので、タイヤセンサ2、TPMS用の電子制御装置(以下、TPMS-ECUという)等を含む車載機3、およびメータ4を備えている。
【0013】
TPMSは、各タイヤセンサ2が取り付けられた車輪位置を検出する車輪位置検出装置を含んでいる。この車輪位置検出装置は、TPMSに備えられる各タイヤセンサ2および車載機3を用いるとともに、ブレーキ制御用の電子制御装置(以下、ブレーキECU10という)からの情報を利用して車輪位置検出を行う。ブレーキECU10では、各車輪5a~5dに対応して備えられた車輪角度センサ11a~11dの検出信号から得られる車輪速度パルスを取得しており、車輪位置検出のためにその情報を車載機3に伝えるようにしている。
【0014】
車輪角度センサ11a~11dは、一般的には車輪速度センサと呼ばれているものである。このセンサは、車軸とともに回動する歯車の歯位置に応じた信号を車輪速度パルスとして出力するものであるが、ここでは各車輪5a~5dの中心軸に対してタイヤセンサ2が存在する角度を取得するために用いていることから、“車輪角度センサ”と呼ぶ。また、各車輪5a~5dの中心軸に対してタイヤセンサ2が存在する位置の角度のことを単に“タイヤセンサ2の角度”とも呼ぶ。
【0015】
図1に示すように、タイヤセンサ2は、各車輪5a~5dに取り付けられるもので、車輪5a~5dに取り付けられたタイヤの空気圧等を検出するとともに、その検出結果を示すタイヤ空気圧に関する情報等をフレーム内に格納して送信する。車載機3は、車両1における車体6側に取り付けられるもので、タイヤセンサ2から送信されたフレームを受信するとともに、その中に格納された情報に基づいて各種処理や演算等を行うことでタイヤ空気圧検出および車輪位置検出を行う。タイヤセンサ2は、例えば、FSK(周波数偏移変調)によりフレームを作成し、車載機3は、そのフレームを復調することでフレーム内の情報を読取っている。
【0016】
図2に示すように、タイヤセンサ2は、センシング部21、加速度センサ22、第1マイクロコンピュータ23、および第1送受信部24を備えており、図示しない電池からの電力供給に基づいて各部が駆動される。
【0017】
センシング部21は、圧力センサ21aおよび温度センサ21bを備え、タイヤ空気圧に応じた検出信号や温度に応じた検出信号を出力する。加速度センサ22は、タイヤセンサ2が取り付けられた車輪5a~5dでのタイヤセンサ2自身の位置検出、つまりタイヤセンサ2の角度の検出や車両1が走行中であるか否かの判定を行うために用いられる。
【0018】
本実施形態の加速度センサ22は、2軸加速度センサで構成されている。加速度センサ22は、車輪5a~5dの回転時に車輪5a~5dに働く加速度のうち、車輪5a~5dの径方向の加速度を第1加速度として検出しつつ、車輪5a~5dの周方向の加速度を第2加速度として検出可能になっている。
【0019】
第1マイクロコンピュータ23は、タイヤセンサ2における“第1制御部”を構成している。第1マイクロコンピュータ23は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、I/O等を備えたものである。第1マイクロコンピュータ23は、内蔵メモリに記憶されたプログラムに従って、所定の処理を実行する。メモリには、各タイヤセンサ2を特定するための固有の識別情報と自車両を特定するための車両固有の識別情報とを含む個別のID情報が格納されている。
【0020】
第1マイクロコンピュータ23は、車両1が走行中に、所定のインターバルで繰り返しフレーム送信を行っている。第1マイクロコンピュータ23は、例えば、圧力センサ21aおよび温度センサ21bの検出信号を受け取ると、それを信号処理するとともに必要に応じて加工することで、タイヤ空気圧に関する情報を得る。
【0021】
また、第1マイクロコンピュータ23は、加速度センサ22の検出信号をモニタし、タイヤセンサ2の角度および走行中である否かの判定を行う。そして、タイヤ空気圧に関する情報およびタイヤセンサ2の角度をタイヤセンサ2のID情報とともにフレーム内に格納する。そして、第1マイクロコンピュータ23は、フレームを作成すると、所定のタイミングで、第1送受信部24から車載機3に向けて所定のタイミングでフレーム送信を行う。以下、タイヤ空気圧およびタイヤセンサ2の角度を含む情報を単にタイヤ情報とも呼ぶ。
【0022】
加速度センサ22の出力には遠心力に基づく加速度(以下、遠心加速度という)が含まれる。遠心加速度は、車輪5a~5dの回転状態に応じて変化する。このため、第1マイクロコンピュータ23は、加速度センサ22の出力から重力加速度成分を取り除いて遠心加速度を演算し、その遠心加速度に基づいて走行中であるか否かを判定する。
【0023】
例えば、第1マイクロコンピュータ23は、遠心加速度が所定の規定値以上で車両1が走行状態と判定する。この場合には、タイヤセンサ2からのフレーム送信だけを定期的に行う単方向通信を行う。すなわち、第1マイクロコンピュータ23は、フレーム内に単方向コマンドを格納してフレーム送信を行う。
【0024】
また、第1マイクロコンピュータ23は、遠心加速度が規定値未満で車両1が徐行・停車状態と判定する。この場合には、タイヤセンサ2からのフレーム送信に加えて車載機3からの応答を求める双方向通信を行う。すなわち、第1マイクロコンピュータ23は、フレーム内に双方向コマンドを格納してフレーム送信を行う。なお、加速度による走行判定では、加速度が規定値以上であるか否かを判定するが、瞬間的な加速度の立ち上がり等はノイズとしてキャンセルされるようになっている。
【0025】
また、加速度センサ22によって各車輪5a~5dの回転に応じた検出信号を出力させていることから、走行時には、その検出信号に重力加速度成分が含まれることになり、車輪回転に応じた振幅を有する信号となる。このため、この振幅に基づいて加速度センサ22の位置、すなわちタイヤセンサ2の角度を把握できる。
【0026】
例えば、第1マイクロコンピュータ23は、加速度センサ22の検出信号に含まれる重力加速度成分に基づいて自身が位置する回転角度を第1回転角度として算出する。なお、第1回転角度は、タイヤセンサ2の車輪5a~5dの中心軸を中心として周方向の任意の回転角度を0°、例えば、タイヤセンサ2が最下方位置に位置しているときを0°としたときのタイヤセンサ2が位置している回転角度として定義される。この場合、タイヤセンサ2が頂点に位置しているときが180°、水平位置に位置しているときがそれぞれ90°、270°として、第1回転角度を表すことができる。
【0027】
ここで、車輪5a~5dが周方向の一方に回転する場合、例えば、
図3(a)に示すように、第1加速度が“+1G”となる際に第2加速度が大きくなる傾向を示し、第1加速度が“-1G”となる際に第2加速度が小さくなる傾向を示す。また、車輪5a~5dが周方向の他方に回転する場合、例えば、
図3(b)に示すように、第1加速度が“+1G”となる際に第2加速度が小さくなる傾向を示し、第1加速度が“-1G”となる際に第2加速度が大きくなる傾向を示す。このような傾向を踏まえて、第1マイクロコンピュータ23は、加速度センサ22で検出される第1加速度および第2加速度に基づいて車輪5a~5dの回転方向を検出する。このようにして、本実施形態のタイヤセンサ2は、自身の回転角度に加えて回転方向も認識可能になっている。
【0028】
また、車体6からのホイールの脱着時には、ローテーション等の作業(例えば、ホイールの横倒し、回転)に伴う特有の振動パターンや重力方向の変化が発生する。これらに起因する加速度変化は、走行中には生じ得ないものがあるので、走行中に発生するものと区別することができる。このことを考慮し、本実施形態の第1マイクロコンピュータ23は、加速度センサ22の検出信号に基づいて、車体6からのホイールの脱着を検出するようになっている。
【0029】
ここで、ホイールの脱着が実施されたことを積極的に検出することは、技術的には可能であっても電池の消耗の観点で現実的ではない。一方で、車両1の駐車中に振動が殆んど発生していない場合は、ホイールの脱着が未実施であると推定できる。
【0030】
これらを踏まえて、本実施形態の第1マイクロコンピュータ23は、加速度センサ22の検出される振動が基準値未満である場合に、ホイールの脱着が未実施であると判定している。なお、現実では、車両1の駐車中であっても、乗員の乗降や地面の揺れ、大きな音が振動として加速度センサ22で検出されることがある。このため、判定基準となる基準値は、例えば、乗員の乗降や地面の揺れ、大きな音が発生した際に加速度センサ22で検出される振動を基準に設定される。ホイールの脱着判定では、加速度による走行判定とは異なり、周波数の高い加速度変化のピーク値の有無を判定することになる。
【0031】
第1送受信部24は、第1送受信部24は、第1送受信回路241および第1通信アンテナ242を備える。第1送受信回路241は、第1通信アンテナ242を通じて、第1マイクロコンピュータ23から送られてきたフレームを車載機3に向けて送信する出力部としての機能を果たす。また、第1送受信部24は、車載機3からのレスポンス信号を復調して第1マイクロコンピュータ23に送る入力部としての機能も果たす。第1送受信部24は、ここでは1つの構成として記載されているが、送信部と受信部それぞれが別々に構成されたものであっても良い。本例では、第1送受信部24は、例えば、300MHzもしくは400MHzのUHF帯域の無線電波を用いて送受信を行っているが、どの周波数帯の電波を用いるかについては任意に選択できる。
【0032】
電池は、センシング部21、加速度センサ22、第1マイクロコンピュータ23等に対して電力供給を行う。この電池からの電力供給を受けて、センシング部21でのタイヤ空気圧に関するデータの収集や第1マイクロコンピュータ23での各種演算などが実行される。なお、タイヤセンサ2の電源は、電池ではなく、発電装置および蓄電池等によって構成されていてもよい。電源部が発電装置を有した構成とされる場合、電池とされる場合と比較すると電池寿命の問題は少なくなるが、大きな電力の発電は難しいため、消費電力の低減を図るという課題は電池とされる場合と同様に存在する。
【0033】
このように構成されるタイヤセンサ2は、例えば、各車輪5a~5dのホイールにおけるエア注入バルブに取り付けられ、センシング部21がタイヤの内側に露出するように配置される。これにより、タイヤセンサ2は、該当車輪のタイヤ空気圧およびタイヤセンサ2の角度を検出するとともに、各タイヤセンサ2に備えられた第1通信アンテナ242を通じて、所定のタイミングでフレームを送信するようになっている。
【0034】
一方、車載機3は、車体6に備えられている。
図4に示すように、車載機3は、第2送受信部31、および第2マイクロコンピュータ33等を備えている。車載機3は、CAN(Controller Area Network)等の車内LAN(Local Area Network)を通じて、後述するようにブレーキECU10から車輪速度パルスを取得することで各車輪5a~5dと共に回転させられる歯車の歯のエッジ数もしくは歯数で示される歯位置を取得している。以下の説明では、歯車情報としてエッジ数を例に挙げて説明するが、歯数とすることもできる。
【0035】
第2送受信部31は、第2送受信部31は、第2通信アンテナ311および第2送受信回路312を備える。第2送受信回路312は、第2通信アンテナ311によって受信された各タイヤセンサ2からの送信フレームを入力し、そのフレームを第2マイクロコンピュータ33に送る入力部としての機能を果たす。第2送受信回路312は、タイヤセンサ2から送られてきたフレームに対応するレスポンス信号をタイヤセンサ2に向けて送信する出力部としての機能を果たす。第2送受信部31は、ここでは1つの構成として記載されているが、送信部と受信部それぞれが別々に構成されたものであっても良い。
【0036】
第2マイクロコンピュータ33は、車載機3における“第2制御部”を構成している。第2マイクロコンピュータ33は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、I/O等を備えたものである。第2マイクロコンピュータ33は、内蔵メモリに記憶されたプログラムに従って、車輪位置検出処理およびタイヤ空気圧検出処理を含むTPMS規定処理を実行する。
【0037】
車輪位置検出処理では、タイヤセンサ2が車輪5a~5dのいずれに取り付けられたものであるかを特定する車輪位置検出が行われる。第2マイクロコンピュータ33は、例えば、各車輪角度センサ11a~11dの出力信号および前述の第1回転角度の通知に基づいて車輪位置検出を行っている。
【0038】
タイヤ空気圧検出処理では、各タイヤセンサ2が取り付けられた車輪5a~5dのタイヤ空気圧の検出等を行う。具体的には、第2マイクロコンピュータ33は、車輪位置検出の結果に基づいて、各タイヤセンサ2のID情報と各タイヤセンサ2が取り付けられた各車輪5a~5dの位置とを紐付けして記憶する。その後は、各タイヤセンサ2からの送信フレーム内に格納されたID情報およびタイヤ情報に基づいて所定温度でのタイヤ空気圧換算値を算出することで、各車輪5a~5dのタイヤ空気圧検出を行う。そして、タイヤ空気圧検出結果に応じた電気信号をCAN等の車内LANを通じてメータ4に出力する。例えば、第2マイクロコンピュータ33は、各車輪5a~5dのタイヤ空気圧を示す信号をメータ4に出力する。また、第2マイクロコンピュータ33は、タイヤ空気圧を所定の判定閾値と比較することでタイヤ空気圧の低下を検知し、タイヤ空気圧の低下を検知するとその旨の信号をメータ4に出力する。これにより、4つの車輪5a~5dのタイヤ空気圧もしくはいずれかのタイヤ空気圧が低下したことがメータ4に伝えられ、メータ4を通じてそれが表示されるようにしている。
【0039】
メータ4は、車室内に備えられた表示部として各種情報を表示する役割を果たすものである。メータ4は、車両1の起動スイッチがオンされているときを電源オンとして、電源オンの際に各種情報を表示する。メータ4による表示は、基本的には電源オンのとき行われる。
【0040】
図1に示されるように、メータ4は、ドライバが視認可能な場所に配置され、例えば車両1におけるインストルメントパネル内に設置されるマルチインフォメーションディスプレイやナビゲーション装置のディスプレイ等によって構成される。メータ4は、例えば車載機3における第2マイクロコンピュータ33からタイヤ空気圧が低下した旨を示す信号が送られてくると、該当車輪5a~5dを特定しつつタイヤ空気圧の低下を示す表示を行うことでドライバに該当車輪のタイヤ空気圧の低下を報知する。
【0041】
次に、本実施形態のTPMSで行われる車輪位置検出処理について説明する。まず、タイヤセンサ2側の処理について
図5を参照しつつ説明した後、車載機3側の処理について
図6を参照しつつ説明する。
図5に示す制御フローは、タイヤセンサ2の第1マイクロコンピュータ23によって所定の制御周期で実行される。
【0042】
図5に示すように、ステップS100では、加速度が規定値以上であるか否かを判定する。ここでいう加速度は、加速度センサ22の検出信号から得た遠心加速度のことを意味しており、ここでは例えば30km/h程度の低速走行中に発生する遠心加速度を規定値と想定している。以下の説明においても、規定値と比較している加速度は遠心加速度のことを意味している。ここで肯定判定されれば車両1が走行状態、否定判定されれば徐行・停車状態となる。
【0043】
ステップS100で肯定判定された場合には、ステップS105に進み、車両1が走行中に設定される定期送信周期毎にフレーム送信が行われるように、例えば60秒毎という走行中インターバルで第1タイマーの設定を行う。
【0044】
続いて、ステップS110に進み、車載機3によってタイヤセンサ2の車輪位置が確定中であるか否かを判定する。具体的には、タイヤセンサ2は、車輪位置の確定および未確定を示す状態フラグを参照して、車輪位置が確定中であるか否かを判定する。
【0045】
後述するように、TPMSは、タイヤセンサ2から双方向コマンドが格納されたフレーム送信が行われ、それが車載機3で受信されると、車載機3からレスポンス信号が送信される。このレスポンス信号には、車輪位置の確定および未確定を示す輪位置特定状態が含まれている。タイヤセンサ2は、基本的に、レスポンス信号に含まれる輪位置特定状態に基づいて状態フラグを設定する。
【0046】
ステップS110が否定判定である場合、ステップS115に進み、タイヤセンサ2の角度である第1回転角度を求める角度検出処理を実行する。角度検出処理では、前述したように、加速度センサ22の検出信号に含まれる重力加速度成分に基づいて自身が位置する回転角度を第1回転角度として算出する。
【0047】
タイヤセンサ2は、第1回転角度をメモリに記憶した後、ステップS120に進み、タイヤセンサ2が取り付けられた車輪5a~5dの回転方向を検出する回転方向検出処理を実行する。この回転方向検出処理は、前述したように、加速度センサ22で検出される第1加速度および第2加速度に基づいて車輪5a~5dの回転方向を検出する。本実施形態では、車輪5a~5dが周方向の一方に回転する場合を正回転CWとし、周方向の他方に回転する場合を逆回転CCWとしている。
【0048】
タイヤセンサ2は、車輪5a~5dの回転方向をメモリに記憶した後、ステップS125に進む。ステップS125では、タイヤ空気圧、第1回転角度、車輪5a~5dの回転方向、後述の脱着フラグの設定を含むタイヤ情報を格納したフレームが送信される。また、このときには、遠心加速度が規定値以上で車両1が走行中と判定された場合のフレーム送信となるため、フレーム内に単方向コマンドを格納している。
【0049】
ここで、ステップS110が肯定判定である場合、車輪位置が確定していることになるので、ステップS115の角度検出処理およびステップS120の回転方向検出処理といった車輪位置の特定に必要な一連の処理をスキップして、ステップS125に進む。この場合は、ステップS125では、タイヤ空気圧等を含むタイヤ情報を格納したフレームが送信される。
【0050】
フレームが送信された後、ステップS130に進み、加速度が規定値以上であるか否かが判定される。この処理は、ステップS105において走行中インターバルで設定された第1タイマーがタイムアップする迄の期間中に繰り返し行われ、車両1が走行を継続していることが確認される。そして、ステップS135でタイムアップしたら再びステップS105に戻る。これにより、車両1の走行中には、走行中インターバルとして設定される所定周期毎に、単方向コマンドが格納されたフレーム送信が行われることになる。
【0051】
一方、ステップS100で否定判定された場合およびステップS130で否定判定された場合には、ステップS140に進む。このステップS140では、所定の基準時間に第2タイマーを設定し、ステップS145に進む。基準時間は、信号待ち等で発生する一般的な停車時間に対して十分に長いと想定される時間であり、例えば、15分間に設定される。
【0052】
続く、ステップS145では、ホイールの脱着が未実施であることを示す脱着フラグを“未実施”に設定する。ここでの処理は、車両1の走行状態から徐行・停車状態に切り替わったタイミングで、脱着フラグの設定を“未実施”にリセットするものである。
【0053】
その後、ステップS150に進み、停車中に設定される定期送信周期毎にフレーム送信が行われるように、例えば、120秒毎という走行中インターバルより長い停車中インターバルで第1タイマーを設定する。そして、ステップS155に進み、タイヤ空気圧に関する検知データを格納したフレームが送信される。ステップS155では、タイヤ空気圧、脱着フラグの設定を含むタイヤ情報を格納したフレームが送信される。また、このときには、徐行・停車中のフレーム送信となるため、フレーム内に双方向コマンドを格納している。
【0054】
ここで、後述するように、タイヤセンサ2から双方向コマンドが格納されたフレーム送信が行われ、それが車載機3で受信されると、車載機3からレスポンス信号が送信される。このため、ステップS160では、レスポンス信号を受信するレスポンス受信が行われたか否かを判定する。この判定では、車載機3からのレスポンス信号を受信していれば肯定判定、レスポンス信号を受信していなければ否定判定となる。
【0055】
ステップS160で肯定判定された場合、ステップS165に進み、車載機3によってタイヤセンサ2の車輪位置が確定中であるか否かを判定する。本実施形態のTPMSでは、レスポンス信号に車輪位置の確定および未確定を示す輪位置特定状態が付加されている。このため、タイヤセンサ2は、レスポンス信号に付加された輪位置特定状態に基づいて車輪位置が確定中であるか否かを判定する。
【0056】
車輪位置が確定中である場合は、ステップS170に進み、車輪位置が確定中であることを示す状態に状態フラグを設定する。また、車輪位置が未確定である場合は、ステップS175に進み、車輪位置が未確定であることを示す状態に状態フラグを設定する。この状態フラグは、例えば、車輪位置が確定中である場合にオンおよびオフの一方に設定され、車輪位置が未確定である場合にオンおよびオフの他方に設定されるようになっていてもよい。
【0057】
ステップS170またはステップS175で状態フラグが設定された後、ステップS180に進む。なお、車載機3からのレスポンス信号を未受信である場合、ステップS160で否定判定されて、ステップS180に進む。
【0058】
ステップS180では、第1タイマーがタイムアップしたか否かが判定される。第1タイマーがタイムアップすると、ステップS180が肯定判定とされ、ステップS150に戻る。また、第1タイマーがタイムアップされていない場合、ステップS185に進み、第2タイマーがタイムアップしたか否かを判定する。
【0059】
第2タイマーがタイムアップしていない場合、ステップS185が否定判定とされ、ステップS190に進み、加速度が規定値以上であるか否かが判定される。加速度が規定値以上である場合はステップS105に戻り、加速度が規定値未満である場合はステップS180に戻る。
【0060】
一方、第2タイマーがタイムアップすると、ステップS195に進む。第2タイマーに設定される基準時間は、信号待ち等に比べて十分に長い時間に設定されるので、第2タイマーがタイムアップする場合、一定の期間、駐車が継続されていると想定される。このような場合、車輪5a~5dのローテーション作業が実施されている可能性がある。このため、ステップS195では、車輪位置が未確定であることを示す状態に状態フラグを設定する。これにより、車両1の走行が再開された際に、ステップS115の角度検出処理およびステップS120の回転方向検出処理といった車輪位置の特定に必要な一連の処理が実施される。
【0061】
ステップS195で状態フラグが設定された後、ステップS200に進み、ホイールの脱着が未実施であるか否かを判定するために、基準値以上の振動があったか否かを判定する。基準値以上の振動がなかった場合は、ホイールの脱着が未実施である推定されるので、ステップS205をスキップしてステップS190に進む。一方、基準値以上の振動があった場合は、ホイールの脱着が実施された可能性がある。このため、基準値以上の振動があった場合は、ステップS205に進み、脱着フラグの設定を“不明”に設定した後、ステップS190に進む。なお、状態フラグの設定は、ステップS125やステップS155におけるフレーム送信を通じて車載機3に通知される。
【0062】
ここまでが、タイヤセンサ2側の処理の説明である。以下、車載機3側の処理について
図6を参照しつつ説明する。また、
図6に示す制御フローは、車載機3の第2マイクロコンピュータ33によって所定の制御周期で実行される。
【0063】
図6に示すように、まず、ステップS300では、起動スイッチがオンされているか否かを判定する。ここで肯定判定されると、ステップS305に進み、受信処理を開始する。これにより、各タイヤセンサ2から送信されてきたフレームを受信可能な状態となる。
【0064】
続いて、受信処理が開始されると、ステップS310に進み、車速があるか否かを判定する。この車速の有無は、車輪角度センサ11a~11dの検出信号に基づいて判定される。
【0065】
車速がない場合、ステップS310で否定判定とされ、ステップS315に進み、車両1の停車状態が継続される時間を計るためのタイマーが作動中であるか否かを判定する。
タイマーが作動中でない場合はステップS320に進み、タイマーが作動中である場合はステップS320をスキップしてステップS325に進む。
【0066】
ステップS320では、所定の駐車判定時間にタイマーを設定した後、ステップS325に進む。ここで設定する駐車判定時間は、基準時間と同様に、信号待ち等で発生する一般的な停車時間に対して十分に長いと想定される時間である。駐車判定時間は、例えば、15分間に設定される。なお、駐車判定時間は、基準時間と同じ時間に設定されていてもよいし、異なる時間に設定されていてもよい。
【0067】
続く、ステップS325では、タイマーがタイムアップしたか否かを判定する。タイマーに設定される駐車判定時間は、信号待ち等に比べて十分に長い時間に設定されるので、タイマーがタイムアップする場合、一定の期間、駐車が継続されていることになる。この場合、車輪5a~5dのローテーション作業が実施されている可能性がある。
【0068】
このため、タイマーがタイムアップした場合はステップS325で肯定判定され、ステップS330に進み、車輪位置が未確定であることを示す状態に輪位置特定状態を設定する。その後、ステップS345に進む。なお、タイマーがタイムアップしていない場合はステップS325で否定判定され、ステップS330をスキップしてステップS345に進む。
【0069】
一方、車速がある場合、ステップS310で肯定判定され、ステップS335に進み、タイマーを停止させる。その後、ステップS340に進み、車輪位置検出の要否を判定する。この判定処理では、後述のTPMS規定処理の車輪位置検出にて各タイヤセンサ2それぞれの車輪位置が特定されると、車輪位置検出が不要と判定する。また、タイヤセンサ2からのフレームに付加されたタイヤ情報に基づいて車輪位置の検出が不要となる場合についても、車輪位置検出が不要と判定する。例えば、フレームに付加されたタイヤ情報が、ホイールの脱着が未実施を示すとともに、車輪5a~5dの回転方向が変化していないことを示す場合に、車輪位置検出が不要と判定する。
【0070】
一方、後述のTPMS規定処理の車輪位置検出にて各タイヤセンサ2の少なくとも1つの車輪位置が特定されていない場合、車輪位置検出が必要と判定する。また、タイヤセンサ2からのフレームに付加されたタイヤ情報に基づいて車輪位置の検出が必要となる場合についても、車輪位置検出が必要と判定する。例えば、フレームに付加されたタイヤ情報が、ホイールの脱着が不明を示す場合に、車輪位置検出が必要と判定する。
【0071】
車輪位置検出の要否の判定後、ステップS345に進み、コマンドを受信したか否か、つまり各タイヤセンサ2から送信されたフレームに含まれる単方向コマンドや双方向コマンドを受信したか否かを判定する。なお、フレームの送信タイミングは、各タイヤセンサ2で異なるので、ステップS345の判定は、各タイヤセンサ2から送信されたフレームそれぞれに対して実施される。
【0072】
単方向コマンドおよび双方向コマンドのいずれも受信していなければ、ステップS300に戻り、単方向コマンドおよび双方向コマンドのいずれかを受信していればステップS350に進む。
【0073】
ステップS350では、受信したコマンドが双方向コマンドであるか否かを判定する。徐行・停車中に停車中インターバルで設定される定期送信周期毎にタイヤセンサ2から送信されたフレームを受信した場合には、双方向コマンドが含まれていることから、ステップS350で肯定判定とされる。その場合、ステップS355に進み、輪位置特定状態等を付加したレスポンス信号を送信する。輪位置特定状態は、フラグ等として示される情報である。輪位置特定状態は、全てのタイヤセンサ2の車輪位置が特定されている場合に“確定”とされ、少なくとも1つのタイヤセンサ2の車輪位置が特定されていない場合に“未確定”とされる。なお、輪位置特定状態には、各タイヤセンサ2それぞれの車輪位置が特定されている否かを示す個別情報が含まれていてもよい。
【0074】
このように、起動スイッチがオンされている状態において、双方向コマンドを含むフレームを受信した場合には、輪位置特定状態等を付加した信号がフレームに対するレスポンス信号として送信される。これにより、双方向コマンドを含むフレームを送信したタイヤセンサ2に車輪位置の確定および未確定が通知される。
【0075】
ここで、双方向コマンドを示すフレームには、基本的にホイールの脱着が未実施であるか否かの判定結果が付加される。フレームに示されるホイール脱着の判定結果がホイールの脱着の未実施を示す場合は、TPMS規定処理にて輪位置検出が実施されないことがある。このような事情がある場合、車載機3は、前回設定された輪位置特定状態をレスポンス信号に付加して第2送受信部31によってタイヤセンサ2に通知する。
【0076】
ステップS355でレスポンス信号を送信した後は、ステップS360に進む。また、受信したコマンドが単方向コマンドである場合、ステップS350で否定判定とされ、ステップS360に進む。
【0077】
ステップS360では、受信したフレームに付加されたタイヤ情報を第2マイクロコンピュータ33のメモリに記憶する。タイヤ情報のうち車輪5a~5dの回転方向については、徐行・停車状態に切り替わる直前の単方向コマンドで受信した情報がメモリに記憶される。また、ホイールの脱着については、徐行・停車状態となった際の双方向コマンドで受信した情報がメモリに記憶される。
【0078】
タイヤ情報をメモリへ記憶した後、ステップS365に進み、TPMSの規定処理を行う。ここでは、TPMSの規定処理として、タイヤ空気圧の表示、異常判定、警報等を含むタイヤ空気圧検出処理や車輪位置検出処理が行われる。TPMSの規定処理後は、ステップS300に戻る。
【0079】
ここで、車載機3が実行する車輪位置検出処理について説明する。車輪位置検出処理は、例えば、輪位置特定状態が未確定となっている場合に実施される。車載機3は、例えば、ホイールの脱着が未実施または2つのタイヤセンサ2での車輪5a~5dの回転方向の検出結果が回転方向の逆転を示していない場合等には、通常の位置検出処理を実施する。
【0080】
通常の位置検出処理では、ブレーキECU10から取得する各車輪角度センサ11a~11dの出力信号と各タイヤセンサ2から通知された第1回転角度に基づいて、車輪位置検出を行う。
【0081】
通常の位置検出処理としては、例えば、特開2010-122023号公報に開示された車輪位置の検出処理を採用することができる。この処理について簡単に説明すると、車載機3は、フレームに含まれる第1回転角度と、当該第1回転角度を示すフレームを受信したタイミングの各車輪角度センサ11a~11dの出力信号に基づく第2回転角度との相対角度の変化を監視する。そして、車両1の走行時に相対角度変化が許容値を超えるものをフレームが送信されたタイヤセンサ2の取り付けられた車輪5a~5dの候補から除外していき、残ったものをフレーム送信されたタイヤセンサ2が取り付けられた車輪5a~5dとして特定する。なお、通常の位置検出処理は、上述のものに限らず、例えば、特開第5910402号に開示された車輪位置検出処理が採用されていてもよい。この処理について簡単に説明すると、車載機3は、走行中に第1回転角度が規定角度となるタイミングでフレームの送信が行われるようにし、この第1回転角度を示すフレームの受信時の歯位置を車輪角度センサ11a~11dから取得する。そして、フレーム受信時の歯位置がバラツキ許容幅外であれば、フレーム送信されたタイヤセンサ2の取り付けられた車輪5a~5dの候補から除外していき、残ったものをフレームが送信されたタイヤセンサ2の取り付けられた車輪5a~5dとして特定する。
【0082】
このようにして、各タイヤセンサ2が車輪5a~5dのいずれに取り付けられたものであるかを特定すると、車載機3は、フレームを送信してきた各タイヤセンサ2のID情報を、それが取り付けられた車輪5a~5dの位置と関連付けて記憶する。加えて、車載機3は、輪位置特定状態を確定に設定する。ここで設定される輪位置特定状態は、ステップS355にてレスポンス信号に付加されてタイヤセンサ2に通知される。これらにより、車輪位置検出が完了する。
【0083】
一方、車載機3は、ホイールの脱着が不明、且つ、2つのタイヤセンサ2での車輪5a~5dの回転方向の検出結果が回転方向の逆転を示している場合は、左右の車輪5a~5dのローテーションが実施された可能性が高い。この場合には、通常とは異なる位置検出処理を実施する。この位置検出処理では、回転方向の逆転を示す2つのタイヤセンサ2の車輪位置を入れ替えることで、タイヤセンサ2が取り付けられた車輪5a~5dを特定する。
【0084】
ここで、車両1の駐車中に、左後輪RLと右後輪RRとがローテーション作業で入れ替えられた際の位置検出処理について、
図7および
図8を参照しつつ説明する。なお、
図7および
図8に示すものは一例である。
【0085】
駐車直前の車載機3には、
図7の上段のように、“ID1”のタイヤセンサ2が左前輪FL、“ID2”のタイヤセンサ2が右前輪FR、“ID3”のタイヤセンサ2が左後輪RL、“ID4”のタイヤセンサ2が右後輪RRであることが登録されているものとする。この状態で、左後輪RLと右後輪RRとがローテーション作業で入れ替えられると、ID3、ID4のタイヤセンサ2の車輪位置が入れ替わる。
【0086】
ローテーション作業後、車両1の走行が開始されると、車載機3には、各タイヤセンサ2から、タイヤ空気圧、車輪5a~5dの回転方向、脱着フラグ等を含むタイヤ情報が通知される。車載機3は、各タイヤセンサ2から通知されるタイヤ情報に基づいて、ホイールの脱着が不明、且つ、2つのタイヤセンサ2での車輪5a~5dの回転方向の検出結果が回転方向の逆転を示しているかを判定する。
【0087】
例えば、
図7の中段に示すように、ID1とID3のタイヤセンサ2からタイヤ情報を車載機3で受信すると、ID3のタイヤセンサ2の回転方向が逆転し、且つ、ホイールの脱着が不明であることが車載機3で把握される。
【0088】
続いて、
図7の下段に示すように、ID2とID4のタイヤセンサ2からタイヤ情報を車載機3で受信すると、ID4のタイヤセンサ2の回転方向が逆転し、且つ、ホイールの脱着が不明であることが車載機3で把握される。
【0089】
この場合、ホイールの脱着が不明、且つ、ID3およびID4といった2つのタイヤセンサ2での車輪5a~5dの回転方向の検出結果が回転方向の逆転を示していることになる。このため、車載機3は、
図8に示すように、ID3およびID4のタイヤセンサ2の車輪位置を入れ替える。
【0090】
このようにして、各タイヤセンサ2が車輪5a~5dのいずれに取り付けられたものであるかを特定すると、車載機3は、各タイヤセンサ2のID情報を、それが取り付けられた車輪5a~5dの位置と関連付けて記憶する。加えて、車載機3は、輪位置特定状態を確定に設定する。ここで設定される輪位置特定状態は、ステップS355にてレスポンス信号に付加されてタイヤセンサ2に通知される。これらにより、車輪位置検出が完了する。
【0091】
ここまでが、車両1の起動スイッチがオンされている場合の処理である。車両1の起動スイッチがオフされている場合、ステップS300の判定が否定判定とされ、ステップS370に進み、受信処理を停止する。
【0092】
そして、ステップS375に進み、起動スイッチがオンされているか否かを判定する。起動スイッチがオンされていれば、ステップS375が肯定判定とされ、ステップS305に進んで、受信処理を再開する。一方、起動スイッチがオフされている場合、ステップS375が否定判定とされ、ステップS380に進む。
【0093】
ステップS380では、タイマーがタイムアップしたか否かが判定される。前述したように、タイマーがタイムアップする場合、車輪5a~5dのローテーション作業が実施されている可能性がある。
【0094】
このため、タイマーがタイムアップした場合は、ステップS385に進み、車輪位置が未確定であることを示す状態に輪位置特定状態を設定する。その後、ステップS375に戻る。また、タイマーがタイムアップしていない場合はステップS380で否定判定され、ステップS385をスキップしてステップS375に戻る。
【0095】
以上説明したTPMSは、車輪位置検出装置を含んでいる。車輪位置検出装置は、複数の車輪5a~5dそれぞれに設けられ、固有の識別情報が付加されたフレームを送信する複数のタイヤセンサ2と、車両1に設けられた車載機3と、を備える。
【0096】
複数のタイヤセンサ2それぞれは、加速度センサ22の検出信号が所定の規定値以上となる走行状態において加速度センサ22の検出信号に基づいて車輪5a~5dの周方向におけるタイヤセンサ2の位置を示す回転角度を第1回転角度として求める。そして、第1回転角度を車載機3に通知する“一連の処理”を行う。
【0097】
車載機3は、車輪位置の確定または未確定を示す輪位置特定状態を第2送受信部31によってタイヤセンサ2に通知する(例えば、
図6のステップS345~S355参照)。複数のタイヤセンサ2それぞれは、車輪位置の確定が通知されると、走行状態における一連の処理の実施を停止する(例えば、
図5のステップS100~S125参照)。
【0098】
これによると、車載機3にて車輪位置が確定されると、車両1の走行中におけるタイヤセンサ2側での第1回転角度の検出および当該第1回転角度の通知といった一連の処理の実施が停止される。したがって、タイヤセンサ2における電力消費を抑えつつ、タイヤセンサ2が設置される車輪位置を特定することができる。
【0099】
また、本実施形態の車輪位置検出装置は、以下の特徴を備える。
【0100】
(1)車載機3は、フレームを受信すると、タイヤセンサ2に対して輪位置特定状態を付加したレスポンス信号を第2送受信部31によって送信する(例えば、
図6のステップS345~S355参照)。このように、レスポンス信号に輪位置特定状態を付加することによってタイヤセンサ2に輪位置特定状態を通知すれば、タイヤセンサ2が輪位置特定状態の含む信号を常時受信可能な状態とする必要がないので、タイヤセンサ2の電力消費を抑制することができる。
【0101】
(2)第2マイクロコンピュータ33は、車輪位置の確定後、車両1の停車状態が所定の駐車判定時間を超えて継続されると、輪位置特定状態を車輪位置の未確定に変更する(例えば、
図6のステップS310~S330、ステップS380~S385参照)。
【0102】
車両1の停車状態が一定の時間継続されている場合、車輪5a~5dのローテーションが実施されている可能性がある。このことを考慮すると、車輪位置の確定後、車両1の停車状態が駐車判定時間を超えて継続されると輪位置特定状態を車輪位置の未確定に変更するようになっていることが望ましい。このようになっていれば、車輪5a~5dのローテーションの実施可能性がある場合に、車輪位置の特定に必要なタイヤセンサ2での一連の処理の実施を再開させることができる。
【0103】
(3)第1マイクロコンピュータ23は、車両1の走行状態において車輪位置の確定および未確定を示す状態フラグを参照して一連の処理の実施の要否を判断する(例えば、
図5のステップS110参照)。加えて、車輪位置の確定が通知されると状態フラグを車輪位置の確定に設定する(例えば、
図5のステップS165、S170参照)。
【0104】
一方で、車輪位置の確定が通知された後、加速度センサ22の検出信号が規定値未満となる状態が所定の基準時間を超えて継続されると、状態フラグを車輪位置の未確定に変更する(例えば、
図5のステップS185~S190参照)。
【0105】
混信等によって車載機3からタイヤセンサ2への車輪位置特定状態の通知が上手くいかないこともあり得る。このため、タイヤセンサ2は、加速度センサ22の検出信号が規定値未満となる状態が基準時間を超えて継続されると、状態フラグを車輪位置の未確定に変更するようになっていることが望ましい。これによれば、車輪5a~5dのローテーションの実施可能性がある場合に、車載機3からタイヤセンサ2への車輪位置特定状態の通知が上手くいかない場合であっても、車輪位置の特定に必要なタイヤセンサ2での一連の処理の実施を再開させることができる。
【0106】
(4)第1マイクロコンピュータ23は、車両1の走行状態においてフレームを第1送受信部24から送信する際に単方向コマンドを示すフレームを作成する(例えば、
図5のステップS125参照)。また、加速度センサ22の検出信号が規定値未満となる状態においてレスポンス信号を要求する双方向コマンドを示すフレームを作成する(例えば、
図5のステップS155参照)。
【0107】
車両1の走行中に、一部のタイヤセンサ2が車載機3と双方向通信を行っていると他のタイヤセンサ2と車載機3との通信が制限されて、タイヤ空気圧の異常等の通知が車載機3に届かなくなってしまう虞がある。また、タイヤセンサ2が車載機3と双方向通信を常時行うことはタイヤセンサ2の消費電力が増える要因なってしまう。これらを考慮すると、タイヤセンサ2は、走行状態において単方向コマンドを示すフレームを作成し、加速度センサ22の検出信号が規定値未満となる状態において双方向コマンドを示すフレームを作成するようになっていることが望ましい。
【0108】
(5)第1マイクロコンピュータ23は、加速度センサ22の検出信号が規定値未満となる状態において、ホイールの脱着が実施および未実施の少なくとも一方を判定する(例えば、
図5のステップS200参照)。そして、この判定結果を示すフレームを第1送受信部24から送信する(例えば、
図5のステップS125、S155参照)。
【0109】
第2マイクロコンピュータ33は、ホイール脱着の判定結果を含めて車輪位置の特定の要否を判定する(例えば、
図6のステップS340参照)。そして、車輪位置の特定が不要と判定される場合に車輪位置の確定を示す輪位置特定状態を第2送受信部31によってタイヤセンサ2に通知する(例えば、
図6のステップS355参照)。
【0110】
車両1の停車状態等においてホイールの脱着が未実施と判断される場合は、タイヤセンサ2が取り付けられた車輪位置が変化しない。このため、車両1の停車状態等においてホイールの脱着が未実施と判断される場合に車輪位置の特定に必要なタイヤセンサ2での一連の処理を停止して、タイヤセンサ2の電力消費を抑制することが望ましい。
【0111】
(6)但し、タイヤセンサ2にてホイールの脱着を積極的に検知することは技術的には可能であるが、それに伴う消費電力の増加を考慮すると、現実的なハードルが高い。このため、タイヤセンサ2は、ホイールの脱着が未実施であるか否かを判定するようになっていることが望ましい。
【0112】
(7)加速度センサ22は、車輪5a~5dの径方向の加速度を第1加速度として検出しつつ、車輪5a~5dの周方向の加速度を第2加速度として検出可能になっている。第1マイクロコンピュータ23は、車両1の走行状態において、加速度センサ22で検出される第1加速度および第2加速度に基づいて車輪5a~5dの回転方向を検出する(例えば、
図5のステップS120参照)。そして、車輪5a~5dの回転方向に関する検出結果を含むフレームを第1送受信部24から送信する(例えば、
図5のステップS125参照)。
【0113】
第2マイクロコンピュータ33は、2つのタイヤセンサ2についてホイールの脱着の可能性があり、且つ、2つのタイヤセンサ2が設置された車輪5a~5dの回転方向が逆転していることを示す場合、2つのタイヤセンサ2の車輪位置を入れ替える。そして、車輪位置の確定を示す輪位置特定状態を第2送受信部31によってタイヤセンサ2に通知する(
図6のステップS365等参照)。
【0114】
左右の車輪5a~5dのローテーションが実施された場合、車輪5a~5dの回転方向が逆転する。このことを利用して車輪位置を特定すれば、タイヤセンサ2での一連の処理を実施しなくて済むので、タイヤセンサ2の電力消費を抑制することができる。
【0115】
(実施形態の変形例)
上述の実施形態の如く、車載機3は、フレームを受信すると、タイヤセンサ2に対して輪位置特定状態を付加したレスポンス信号を第2送受信部31によって送信するようになっていることが望ましいが、これに限定されない。車載機3は、レスポンス信号以外の信号に輪位置特定状態を付加して送信するようになっていてもよい。
【0116】
上述の実施形態の如く、車載機3は、車輪位置の確定後、車両1の停車状態が所定の駐車判定時間を超えて継続されると、輪位置特定状態を車輪位置の未確定に変更するようになっていることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。
【0117】
上述の実施形態の如く、タイヤセンサ2は、車輪位置の確定が通知された後、徐行・停車状態が所定の基準時間を超えて継続されると、状態フラグを車輪位置の未確定に変更するようになっていることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。なお、タイヤセンサ2は、加速度センサ22の出力から車速を求め、当該車速に基づいて、車両1が走行中であるか否かを判定しているが、これに限定されない。タイヤセンサ2は、加速度センサ22の出力から重力加速度成分を取り除いて遠心加速度を演算し、当該遠心加速度に基づいて車両1が走行中であるか否かを判定するようになっていてもよい。なお、車載機3によるタイヤセンサ2への輪位置特定状態の通知は、車輪位置の確定および未確定それぞれを通知するものに限らず、車輪位置の確定および未確定の一方のみを通知するようになっていてもよい。
【0118】
上述の実施形態の如く、タイヤセンサ2は、車両1の走行状態に単方向コマンドを示すフレームを作成し、徐行・停車状態において双方向コマンドを示すフレームを作成するようになっていることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。
【0119】
上述の実施形態の如く、タイヤセンサ2は、徐行・停車状態において、ホイールの脱着が未実施であるか否かを判定するようになっていることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。タイヤセンサ2は、例えば、徐行・停車状態において、ホイールの脱着が実施されているか否かを判定するようになっていてもよい。また、タイヤセンサ2は、徐行・停車状態において、ホイールの脱着の有無を判定しないようになっていてもよい。
なお、タイヤセンサ2から車載機3への脱着フラグ等の通知は、ホイール脱着の未実施および不明それぞれを通知するものに限らず、ホイール脱着の未実施および不明の一方のみを通知するようになっていてもよい。このことは、ホイールの脱着が実施されているか否かを判定する場合も同様である。
【0120】
上述の実施形態の如く、ホイールの脱着の可能性があり、且つ、2つのタイヤセンサ2が設置された車輪5a~5dの回転方向が逆転している場合、2つのタイヤセンサ2の車輪位置を入れ替えることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。この場合、車輪5a~5dの回転方向を検出する必要がないので、加速度センサ22は、1軸加速度センサで構成されていてもよい。
【0121】
上述の実施形態では、走行輪のホイールの脱着が未実施であるか否かを判定しているが、これに限定されない。例えば、走行輪に加えてスペア輪のホイールの脱着が未実施であるか否かを判定するようになっていてもよい。
【0122】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0123】
例えば、タイヤセンサ2として、エア注入バルブに取り付けられるものを例に挙げて説明したが、他の場所に備えられるものであってもよい。一例を示すと、バルブキャップの代わりに装着する形態や、タイヤ内側のトレッド上に装着する形態であってもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、車両1の走行中に単方向コマンドをフレームに含め、停車中に双方向コマンドをフレームに含めるようにした。しかしながら、これらのコマンドは、必ずしもデータとして表されるコマンドである必要はなく、データが含まれていないことで実質的に各コマンドが示される形態であってもよい。例えば、単方向コマンドと双方向コマンドのいずれか一方のみをデータで示し、フレーム中にそのコマンドが含まれていない場合に他方のコマンドを示していると車載機3で判定されるようにしてもよい。具体的には、双方向コマンドのみをフレームに格納し、フレームに双方向コマンドが含まれていなければ車載機3で単方向コマンドを示していると判定されるようにしてもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、起動スイッチがオフされると車載機3での受信処理を停止させているが、これに限らず、車載機3は、起動スイッチがオフされた状態でも、定期的または不定期に受信処理を行うようになっていてもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、タイヤセンサ2を車輪5a~5dのすべてに備えている例を示したが、少なくとも1つに備えられたTPMSに本開示を適用することができる。
【0127】
また、上記実施形態では、TPMSのうち車体6側に備えられた部分を車載機3として総括的に記載しているが、車載機3は必ずしも1つの構成でなくても良い。例えば、送受信機能を果たす第2送受信部31とタイヤ空気圧検出機能を果たす第2マイクロコンピュータ33とが別々の場所に備えられていてもよい。
【0128】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0129】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0130】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0131】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0132】
2 タイヤセンサ
22 加速度センサ
23 第1マイクロコンピュータ(第1制御部)
24 第1送受信部
3 車載機
31 第2送受信部
32 第2マイクロコンピュータ(第2制御部)
11a~11d 車輪角度センサ