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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089274
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】副燃焼室付内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/34 20060101AFI20240626BHJP
   F02M 69/00 20060101ALI20240626BHJP
   F02B 19/12 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F02D41/34 100
F02M69/00 350P
F02B19/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204540
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 駿
(72)【発明者】
【氏名】三木田 彰
(72)【発明者】
【氏名】福留 大輔
(72)【発明者】
【氏名】児玉 勇人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 宏次郎
(72)【発明者】
【氏名】廣江 健太
【テーマコード(参考)】
3G023
3G301
【Fターム(参考)】
3G023AA07
3G023AC02
3G023AD01
3G301HA05
3G301HA09
3G301HA11
3G301JA01
3G301JA23
3G301KA08
3G301KA09
3G301LB02
3G301MA11
3G301MA29
3G301NE01
3G301NE06
3G301PA10
3G301PD11
3G301PE03
(57)【要約】
【課題】着火性の優れた副燃焼室付きの副燃焼室付内燃機関を提供する。
【解決手段】主燃焼室41と、主燃焼室41内の上部中心部に設けられる副燃焼室43と、主燃焼室41に吸気を供給する第1吸気ポート2a及び第2吸気ポート2bと、第1吸気ポート2aに設けられる第1インジェクタ60と、第2吸気ポート2bに設けられる第2インジェクタ61と、を有する内燃機関1であって、第1インジェクタ60は、第1噴射孔62が主燃焼室41内の中心部を向くように設けられ、第2インジェクタ61に比べ貫徹力の高い燃料を噴射する、
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主燃焼室と、
前記主燃焼室内に設けられる副燃焼室と、
前記主燃焼室に吸気を供給する第1吸気ポート及び第2吸気ポートと、
前記第1吸気ポートに設けられる第1インジェクタと、前記第2吸気ポートに設けられる第2インジェクタと、を有する副燃焼室付内燃機関であって、
前記第1インジェクタは、燃料噴射孔が前記主燃焼室内の中心部を向くように設けられ、前記第2インジェクタに比べ貫徹力の高い燃料を噴射する、
ことを特徴とする副燃焼室付内燃機関。
【請求項2】
前記第1インジェクタ及び前記第2インジェクタを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記内燃機関の所定の高負荷運転領域では、前記高負荷運転領域より負荷の低い低負荷運転領域に比べ貫徹力の低い燃料を噴射するように前記第1インジェクタを制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の副燃焼室付内燃機関。
【請求項3】
前記第1インジェクタは、リフト量及びリフト時間を変更して燃料噴射量を制御するインジェクタバルブを有し、
前記制御部は、
前記第1インジェクタの前記インジェクタバルブのリフト量を小さくするとともにリフト時間を長くすることで、前記第1インジェクタの燃料噴射の貫徹力を弱める、
ことを特徴とする請求項2記載の副燃焼室付内燃機関。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1インジェクタの貫徹力を弱める際は、貫徹力を弱める前に比べ前記インジェクタバルブのリフト開始を早めるように制御する、
ことを特徴とする請求項3記載の副燃焼室付内燃機関。
【請求項5】
前記第1インジェクタ及び前記第2インジェクタを作動制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1インジェクタから前記第2インジェクタに比べ貫徹力の高い燃料が噴射される第1噴射モードと、 前記第2インジェクタから前記第1インジェクタに比べ貫徹力の高い燃料が噴射される第2噴射モードと、を切り替え可能であり、
前記第1噴射モードが所定期間実施されると、前記第2噴射モードに切り替える
ことを特徴とする請求項1記載の副燃焼室付内燃機関。
【請求項6】
前記第1インジェクタは、前記燃料噴射孔として第1噴射孔及び第2噴射孔を有し、
前記第1噴射孔は、前記副燃焼室を向くように設けられるとともに前記第2インジェクタに比べ貫徹力の高い燃料を噴射し、
前記第2噴射孔は、前記主燃焼室を向くように設けられるとともに前記第1噴射孔に比べ貫徹力の低い燃料を噴射する、
ことを特徴とする請求項1記載の副燃焼室付内燃機関。
【請求項7】
主燃焼室と、
前記主燃焼室内に設けられる副燃焼室と、
前記主燃焼室に吸気を供給する第1吸気ポート及び第2吸気ポートと、
前記第1吸気ポートに設けられる第1インジェクタと、前記第2吸気ポートに設けられる第2インジェクタと、を有する副燃焼室付内燃機関であって、
前記第1インジェクタ及び前記第2インジェクタは、前記主燃焼室内の中心部を向くように設けられる第1噴射孔と、前記主燃焼室内を向くように設けられ前記第1噴射孔に比べ貫徹力の低い燃料を噴射する第2噴射孔と、を有する
ことを特徴とする副燃焼室付内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主燃焼室内に副燃焼室を有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に使用されるガソリンエンジン等の内燃機関の多くは、吸気通路や燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)と、筒内の燃焼室に臨んで配置される点火装置(点火プラグ)を有している。
更に特許文献1には、燃焼室(主燃焼室)内に、副燃焼室を備えた内燃機関が開示されている。特許文献1に記載された内燃機関では、副燃焼室内に比較的燃料濃度の高い混合気を供給し、点火装置によって副燃焼室内の混合気に着火することで、副燃焼室から火炎が主燃焼室に噴射して主燃焼室内の混合気を燃焼させる構成になっている。これにより、主燃焼室内の混合気の着火性を向上させて内燃機関の出力を向上させることができ、あるいは主燃焼室内の燃料濃度を低くして燃費を向上させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-206960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように主燃焼室内に副燃焼室を有する内燃機関において、吸気通路(吸気ポート)に燃料を噴射するインジェクタでは、吸排気に伴う気流の影響により副燃焼室に濃い混合気を、かつ主燃焼室に比較的薄い混合気を、夫々適切に供給することは困難である。特に燃焼室内では強い気流が発生するとともに、内燃機関の運転状態によって気流の強さが変化するため、広い運転範囲において副燃焼室に燃料を効率よく供給して燃料濃度を適切に高めることが困難である。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、主燃焼室内に副燃焼室を有し、吸気ポートにインジェクタが設けられた内燃機関において、インジェクタから副燃焼室に燃料を効率的に供給して着火性の優れた副燃焼室付内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の副燃焼室付内燃機関は、主燃焼室と、前記主燃焼室内に設けられる副燃焼室と、前記主燃焼室に吸気を供給する第1吸気ポート及び第2吸気ポートと、前記第1吸気ポートに設けられる第1インジェクタと、前記第2吸気ポートに設けられる第2インジェクタと、を有する内燃機関であって、前記第1インジェクタは、燃料噴射孔が前記主燃焼室の中心部を向くように設けられ、前記第2インジェクタに比べ貫徹力の高い燃料を噴射する、ことを特徴とする。
【0007】
これにより、主燃焼室内に位置する副燃焼室に対して第1インジェクタから貫徹力の高い燃料が供給される。したがって、副燃焼室に第1インジェクタから燃料を効率的に供給することができ、副燃焼室内の燃料濃度を高めて着火性を向上させることができる。
好ましくは、前記第1インジェクタ及び前記第2インジェクタを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記内燃機関の所定の高負荷運転領域では、前記高負荷運転領域より負荷の低い低負荷運転領域に比べ貫徹力の低い燃料を噴射するように前記第1インジェクタを制御するとよい。
【0008】
これにより、高負荷運転領域において、第1インジェクタから貫徹力の高い燃料の噴射を抑え、副燃焼室における火炎の強さが抑えられる。したがって、副燃焼室から主燃焼室に伝搬する火炎が過度に強くなることを抑え、内燃機関の保護を図ることができる。
好ましくは、前記第1インジェクタは、リフト量及びリフト時間を変更して燃料噴射量を制御するインジェクタバルブを有し、前記制御部は、前記第1インジェクタの前記インジェクタバルブのリフト量を小さくするとともにリフト時間を長くすることで、前記第1インジェクタの燃料噴射の貫徹力を弱めるとよい。
【0009】
これにより、第1インジェクタのインジェクタバルブの制御によって、第1インジェクタからの燃料噴射の貫徹力を容易に弱めることができる。
好ましくは、前記制御部は、前記第1インジェクタの貫徹力を弱める際は、貫徹力を弱める前に比べ前記インジェクタバルブのリフト開始を早めるように制御するとよい。
これにより、貫徹力を弱める前に比べて第1インジェクタからの単位時間あたりの燃料噴射量を抑えて貫徹力を弱めることができるとともに、貫徹力の変更に拘わらず燃料噴射の終了時期を一定にすることができる。
【0010】
好ましくは、前記第1インジェクタ及び前記第2インジェクタを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第1インジェクタから前記第2インジェクタに比べ貫徹力の高い燃料が噴射される第1噴射モードと、 前記第2インジェクタから前記第1インジェクタに比べ貫徹力の高い燃料が噴射される第2噴射モードと、を切り替え可能であり、前記第1噴射モードが所定期間実施されると、前記第2噴射モードに切り替えるとよい。
【0011】
これにより、貫徹力の高い燃料が噴射される第2噴射モードが第1インジェクタと第2インジェクタとの間で所定期間毎に切り替えられるので、インジェクタから噴射した燃料が第1吸気ポート及び第2吸気ポートのいずれか一方に偏って付着することを抑制し、付着した燃料の蒸発を促すことができる。
好ましくは、前記第1インジェクタは、前記燃料噴射孔として第1噴射孔及び第2噴射孔を有し、前記第1噴射孔は、前記副燃焼室を向くように設けられるとともに前記第2インジェクタに比べ貫徹力の高い燃料を噴射し、前記第2噴射孔は、前記主燃焼室を向くように設けられるとともに前記第1噴射孔に比べ貫徹力の低い燃料を噴射するとよい。
【0012】
これにより、第2インジェクタだけでなく、第1インジェクタの第2噴射孔からも主燃焼室に向けて燃料が噴射されるので、主燃焼室の全体に亘って燃料を偏り少なく噴射することができ、主燃焼室の壁面の冷却効果を促してノッキングを抑制することができる。
また、本発明の副燃焼室付内燃機関は、主燃焼室と、前記主燃焼室内に設けられる副燃焼室と、前記主燃焼室に吸気を供給する第1吸気ポート及び第2吸気ポートと、前記第1吸気ポートに設けられる第1インジェクタと、前記第2吸気ポートに設けられる第2インジェクタと、を有する内燃機関であって、前記第1インジェクタ及び前記第2インジェクタは、前記主燃焼室内の中心部を向くように設けられる第1噴射孔と、前記主燃焼室内を向くように設けられ前記第1噴射孔に比べ貫徹力の低い燃料を噴射する第2噴射孔と、を有することを特徴とする。
【0013】
これにより、主燃焼室内に位置する副燃焼室に対して第1インジェクタ及び第2インジェクタの第1噴射孔から貫徹力の高い燃料が噴射され、第2噴射孔から主燃焼室内に貫徹力の低い燃料が噴射される。したがって、副燃焼室に第1インジェクタ及び第2インジェクタから燃料を効率的に供給することができ、副燃焼室の燃料濃度を高めて着火性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の副燃焼室付内燃機関によれば、副燃焼室に燃料を十分に供給して強い火炎を発生させることができるので、主燃焼室における着火性を向上させることができる。これにより、主燃焼室での燃焼を促進させ、燃費の低下を抑えつつ出力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の内燃機関の給排気系の構成図である。
図2】第1実施形態の内燃機関における吸排気ポート及び点火プラグの位置を示す上面図である。
図3】第1実施形態の内燃機関における低負荷運転領域での燃料噴射のイメージ図である。
図4】第1実施形態の内燃機関における低負荷運転領域での噴射時期と噴射量の一例を示すタイミング図である。
図5】第1実施形態の内燃機関における高負荷運転領域での燃料噴射供給のイメージ図である。
図6】第1実施形態の内燃機関における高負荷運転領域での噴射時期と噴射量の一例を示すタイミング図である。
図7】第2実施形態の内燃機関における燃料噴射供給のイメージ図である。
図8】インジェクタの燃料噴射孔の構造の一例を示す斜視図である。
図9】第3実施形態の内燃機関における燃料噴射供給のイメージ図である。
図10】第4実施形態の内燃機関における燃料噴射供給のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の内燃機関1の給排気系の構成図である。
図1に示すように、本実施形態の内燃機関1(副燃焼室付内燃機関)は、吸気ポート2に燃料であるガソリンを噴射するインジェクタ3を有するポート噴射式のガソリンエンジンである。
【0017】
本実施形態の内燃機関1の吸気通路5には、吸気の流れに沿って吸気ポート2に向かって、エアクリーナー6、インタークーラー7、スロットルバルブ8が備えられている。内燃機関1の排気通路11には、排気ポート31から排気の流れに沿って、上流側排気浄化触媒12及び下流側排気浄化触媒13が備えられている。
また、内燃機関1には、過給機(ターボチャージャ)15、EGRシステム16が備えられている。
【0018】
過給機15は、排気によって回転駆動される図示しないタービンと、タービンの回転に伴って回転し吸気通路5内の吸気を圧縮する図示しないコンプレッサを有する。タービンは排気ポート31と上流側排気浄化触媒12との間の排気通路11に設けられ、コンプレッサはエアクリーナー6とインタークーラー7との間の吸気通路5に設けられている。
EGRシステム16は、内燃機関1の排気通路11と吸気通路5とを連通するEGR通路20と、EGR通路20の流路面積を変更するEGRバルブ21と、EGR通路20を通過する排気を冷却するEGRクーラー22を備えている。EGR通路20は、上流側排気浄化触媒12と下流側排気浄化触媒13との間の排気通路11と、エアクリーナー6と過給機15のコンプレッサとの間の吸気通路5とを連結している。
【0019】
また、排気通路11には過給機15のタービンをバイパスする通路を開閉するウエストゲートバルブ25が備えられている。吸気通路5には、過給機15のコンプレッサをバイパスする通路を開閉するリサキュレーションバルブ26が備えられている。
図2は、第1実施形態の内燃機関1における吸排気ポート2、31及び点火プラグ35の位置を示す上面図である。
【0020】
図2に示すように、内燃機関1は、1つの気筒30について吸気ポート2が2個及び排気ポート31が2個備えられている。また、2個の吸気ポート2に吸気バルブ32が夫々備えられるとともに、2個の排気ポート31に夫々排気バルブ33が夫々備えられている。
インジェクタ3は、各吸気ポート2に1個ずつ、即ち1つの気筒30毎に2個ずつ備えられている。
【0021】
内燃機関1の気筒30の上部(シリンダヘッド34)には、その中心を挟んで一方側に2個の吸気ポート2が並んで配置され、他方側に2個の排気ポート31が並んで配置されている。
図1、2に示すように、シリンダヘッド34の中心部には、点火プラグ35が備えられている。シリンダヘッド34には、点火プラグ35の中心電極を囲むように区画壁42が備えられている。
【0022】
気筒30内には、シリンダブロックに形成されたシリンダ、シリンダヘッド34及びピストンに囲まれた略円柱状の空間である主燃焼室41が設けられ、更に主燃焼室41の上部中心部の空間が区画壁42に囲まれた副燃焼室43として設けられている。区画壁42には、複数の連通孔44が開いており、主燃焼室41と副燃焼室43とが連通孔44を介して連通している。
【0023】
内燃機関1は、コントロールユニット50(制御部)によって作動制御される。コントロールユニット50は、出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)等から構成されている。コントロールユニット50は、クランク角、吸気温度、排気温度、EGRガス温度等を入力し、インジェクタ3、点火プラグ35、スロットルバルブ8、EGRバルブ21、ウエストゲートバルブ25、リサキュレーションバルブ26等を作動制御する。
【0024】
図3は、第1実施形態の内燃機関1における低負荷運転領域での燃料噴射供給のイメージ図である。図4は、第1実施形態の内燃機関1における低負荷運転領域での噴射時期(クランク角)と噴射量の一例を示すタイミング図である。
第1実施形態の内燃機関1では、2つの吸気ポート2に夫々設けられた2個のインジェクタ3のうち、一方の第1吸気ポート2aに設けられた第1インジェクタ60は、気筒30の中心部、即ち副燃焼室43近傍に向けて燃料を噴射する第1噴射孔62を有している。すなわち、第1噴射孔62は気筒30の中心部を向くように、言い替えると、第1噴射孔62の延長線が気筒30の中心部と重なるように設けられている。他方の第2吸気ポート2bに設けられた第2インジェクタ61は、主燃焼室41に向けて燃料を噴射する第2噴射孔63を有している。第2噴射孔63は、噴射された燃料が気流に乗って気筒30内に万遍無く拡散されるような向きで設けられることが好ましい。
【0025】
なお、第1インジェクタ60の第1噴射孔62は、噴射した燃料が主に副燃焼室43に流入するように設けられていればよく、副燃焼室43に直接向けて噴射するものでもよいし、噴射した燃料が間接的に副燃焼室43に流入するように設定したものでもよい。また、副燃焼室43は主燃焼室41の中心から若干ずれていてもよい。すなわち、副燃焼室43が主燃焼室41の中心付近から一方側にずれて設けられていたとしても、副燃焼室43の他方側端部は主燃焼室41の中心付近、すなわち第1インジェクタ60から噴射された燃料によって燃料濃度が高くなっている箇所に位置しているため、圧縮工程において燃料が副室内に供給される。
【0026】
更に、第1噴射孔62は、第2噴射孔63よりも貫徹力の高い燃料噴射をするように設定されている。貫徹力の高い燃料噴射とは、吸気の流動に影響を受けにくく所望の領域(副燃焼室43)に燃料を到達させる能力が高い噴射である。例えば第1噴射孔62を第2噴射孔63より小さくしたり、第1噴射孔62からの燃料噴射圧を第2噴射孔63より高く設定したりして、第1噴射孔62から噴射される燃料を第2噴射孔63から噴射される燃料より勢い良く(貫徹力が高く)噴射されるようにすればよい。
【0027】
第2インジェクタ61は、第2噴射孔63より、主燃焼室41内に均質微粒予混合燃料噴射を行う。
なお、第1噴射孔62から噴射した燃料が吸気バルブ32の軸部や気筒30の壁面に直接当たらないように設定されているとよい。
図3、4に示すように、第1実施形態の内燃機関1では、負荷が所定値未満の低負荷運転領域(例えば、過給機15による過給が不能な運転領域)において、第2インジェクタ61は排気行程の終盤から第2噴射孔63より燃料噴射し、吸気行程に跨いで燃料噴射をする。
【0028】
第1インジェクタ60は、吸気行程において第1噴射孔62より短時間で燃料噴射をする。例えば第1インジェクタ60の第1噴射孔62からの単位時間当たりの燃料噴射量は、第2インジェクタ61の第2噴射孔63からの単位時間当たりの燃料噴射量より大きく、第1インジェクタ60の第1噴射孔62からの燃料噴射時間は、第2インジェクタ61の第2噴射孔63からの燃料噴射時間より短い。
【0029】
また、第1インジェクタ60の第1噴射孔62からの燃料噴射終了時期と第2インジェクタ61の第2噴射孔63からの燃料噴射終了時期とを略同一にするとよい。
図5は、第1実施形態の内燃機関1における高負荷運転領域での燃料噴射供給のイメージ図である。図6は、第1実施形態の内燃機関1における高負荷運転領域での噴射時期と噴射量の一例を示すタイミング図である。
【0030】
図5、6に示すように、第1実施形態の内燃機関1では、負荷が所定値以上の高負荷運転領域(例えば、過給機15による過給が可能な運転領域)において、第2インジェクタ61は低負荷運転領域と同様に、排気行程の終盤から第2噴射孔63より燃料噴射し、吸気行程に跨いで燃料噴射をする。但し、単位時間当たりの燃料噴射量については、負荷が高くなるに伴って大きくなるように、詳細には、負荷が高くなるにつれてスロットルバルブ8の開度を制御するとともに、スロットルバルブ8の開度に応じて燃料噴射量を制御するように設定される。本実施形態では、主燃焼室41内の空燃比がストイキになるように第1インジェクタ60と第2インジェクタ61の燃料噴射量が制御される。第1インジェクタ60は、排気行程の終盤から第1噴射孔62より燃料噴射し、吸気行程に跨いで燃料噴射をする。なお、第1インジェクタ60と第2インジェクタ61の燃料噴射開始時期は略同一であり、燃料噴射終了時期については略同一あるいは第1インジェクタ60からの燃料噴射を負荷に応じて第2インジェクタ61よりも後に延ばしてよい。
【0031】
以上のように、第1実施形態の内燃機関1は、主燃焼室41の上部中心部に区画壁42に囲まれた副燃焼室43が備えられている。区画壁42には、主燃焼室41と副燃焼室43とを連通する連通孔44が設けられ、点火プラグ35によって、副燃焼室43内の混合気に点火する。これにより、副燃焼室43内で着火して発生した火炎が連通孔44から噴射して主燃焼室41に伝搬し、主燃焼室41内の混合気を効率的に燃焼させる。
【0032】
内燃機関の各気筒30は、2個の吸気ポート2(2a、2b)を有し、それぞれ吸気ポート2a、2bにインジェクタ3(60、61)が備えられている。また、一方の第1インジェクタ60に設けられた第1噴射孔62は、主燃焼室41の中心を向くように設けられている。他方の第2インジェクタ61からは主燃焼室41に向けて燃料が噴射される。そして、内燃機関1の低負荷運転領域においては、第1インジェクタ60の第1噴射孔62から、第2インジェクタ61からの噴射に比べて貫徹力の高い燃料を噴射する。
【0033】
これにより、主燃焼室41の上部中心部に位置する副燃焼室43に対して第1インジェクタから燃料が効率的に供給される。したがって、副燃焼室43に燃料を十分に供給することができ、副燃焼室43における燃料濃度(等容度)を高くして着火性を向上させることができる。そして、副燃焼室43からの火炎の伝搬により、主燃焼室41内の混合気を安定して効率よく燃焼させることができる。
【0034】
高負荷運転領域においては、第1インジェクタ60の第1噴射孔62から第2インジェクタ61と同様に貫徹力の低い燃料噴射が行われる。これにより、副燃焼室43への燃料供給を抑制し、副燃焼室43において強い火炎の発生を抑え、気筒30の保護を図ることができる。なお、高負荷運転領域では、第1インジェクタ60及び第2インジェクタ61から負荷に対応して燃料が多く噴射され、気筒30内の燃料濃度が全体的に上昇するので、副燃焼室43に第1インジェクタ60から貫徹力の高い燃料を供給しなくても着火性は確保できる。
【0035】
高負荷運転領域において、第1インジェクタ60からの燃料噴射は、低負荷運転領域における第1インジェクタ60からの燃料噴射に対して、第1インジェクタ60のインジェクタバルブのリフト量を小さくして単位時間当たりの燃料噴射量を小さくし、リフト時間を長くして燃料噴射時間を長くする。これにより、高負荷運転領域における第1インジェクタ60からの燃料噴射の貫徹力を容易に弱めることができる。
【0036】
また、高負荷運転領域においては、低負荷運転領域に比べて第1インジェクタ60のインジェクタバルブのリフト開始、すなわち第1インジェクタ60からの燃料噴射開始時期を早めるようにして、リフト時間を長くしている。これにより、第1インジェクタ60からの単位時間あたりの燃料噴射量を抑えて貫徹力を弱めることができるとともに、高負荷運転領域と低負荷運転領域とで第1インジェクタ60と第2インジェクタ61の燃料噴射終了時期を同一にすることが可能になる。このように負荷に拘わらず第1インジェクタ60と第2インジェクタ61の燃料噴射終了時期を同一にすることで、吸気バルブ32及び排気バルブ33の開閉タイミングや点火時期に対する燃料供給終了時期を適切に設定することができる。
【0037】
以下に本発明のその他の実施形態について説明するが、第1実施形態と異なる箇所についてのみ記載する。
図7は、第2実施形態の内燃機関70における燃料噴射供給のイメージ図である。図8は、第1インジェクタ60の燃料噴射孔の構造の一例を示す斜視図である。
図7、8に示すように、第2実施形態の内燃機関70では、第1インジェクタ60に、気筒30の中心に燃料を噴射する噴射孔と、主燃焼室41に向けて燃料を噴射する噴射孔とを設ける。すなわち、2つの吸気ポート2に夫々設けられた2個のインジェクタ3のうち、一方の第1吸気ポート2aに設けられた第1インジェクタ60は気筒30の中心に向けて燃料を噴射する第1噴射孔62と、主燃焼室41に向けて燃料を噴射する第2噴射孔63を有している。第1インジェクタ60の第1噴射孔62は気筒30の中心部を向くように設けられ、第1インジェクタ60の第2噴射孔63は気筒30(シリンダ)の側壁を向くように設けられる。そして、低負荷運転領域では第1噴射孔62と第2噴射孔63の両方から燃料噴射を行う。これにより、主燃焼室41の全体に亘って燃料を偏り少なく供給することができる。したがって、主燃焼室41の壁面の冷却効果を促進させてノッキングを抑制することができる。なお、高負荷運転領域においては、第1インジェクタ60の第1噴射孔62からの燃料噴射を停止し、第2噴射孔63のみからの燃料噴射としてもよいし、第1インジェクタ60のインジェクタバルブのリフト量を小さくしての第1噴射孔62からの燃料噴射の貫徹力を小さくしてもよい。
【0038】
図9は、第3実施形態の内燃機関70における燃料噴射供給のイメージ図である。なお、図9及び後述する図10では、貫徹力の高い燃料噴射を黒塗りの矢印で示し、貫徹力の低い燃料噴射を破線の矢印で示している。
第3実施形態の内燃機関70では、2つの吸気ポート2a、2bの両方に、第1実施形態の第1インジェクタ60と同様の、第1噴射孔62を有するインジェクタ60a、60bを配置する。
【0039】
そして、コントロールユニット50は、第1噴射孔62から副燃焼室43に向けて燃料を噴射する際に、第1インジェクタ60aから副燃焼室43に向けて貫徹力の高い燃料を噴射する第1噴射モードと、第2インジェクタ60bから副燃焼室43に向けて貫徹力の高い燃料を噴射する第2噴射モードと、を定期的に切り替える。すなわち、第1噴射モードでは、第2インジェクタ60bのインジェクタバルブのリフト量を小さくするとともにリフト時間を長くすることで、第1インジェクタ60aの第1噴射孔62から噴射される燃料を第2インジェクタ60bの第1噴射孔62から噴射される燃料より貫徹力を高くする。同様に、第2噴射モードでは、第1インジェクタ60aのインジェクタバルブのリフト量を小さくするとともにリフト時間を長くすることで、第1インジェクタ60aの第1噴射孔62から噴射される燃料を第2インジェクタ60bの第1噴射孔62から噴射される燃料より貫徹力を低くする。例えば、所定のエンジン運転時間経過毎に切り替えたり、第1噴射孔62からの所定の噴射回数毎に切り替えたり、第1噴射孔62からの燃料噴射量の所定の積算値毎に切り替えればよい。なお、第3実施形態においては、貫徹力の低い側のインジェクタ、すなわち、第1噴射モードでは第2インジェクタ60b、第2噴射モードでは第1インジェクタ60aからの燃料も副燃焼室43(気筒30の中心)に向けて噴射されることになるが、これらの燃料は貫徹力が低いため、拡散して主燃焼室41の全体に亘って燃料を偏り少なく供給される。
【0040】
これにより、第3実施形態の内燃機関70では、副燃焼室43用に燃料を噴射するインジェクタが定期的に第1インジェクタ60aと第2インジェクタ60bとで切り替えられるので、第1吸気ポート2a及び第2吸気ポート2bのいずれか一方に偏って、インジェクタ60a、60bから噴射した燃料が付着することを抑制することができる。したがって、第1吸気ポート2a及び第2吸気ポート2bに付着した燃料の蒸発を促して、内燃機関70の排気性能や燃費の向上を図ることができる。なお、第3実施形態は、第1インジェクタ60aと第2インジェクタ60bを、第2実施形態の第1インジェクタ60と同様の、第1噴射孔62及び第2噴射孔63を有するインジェクタ60a、60bとしてもよい。この場合、第1噴射モードでは、第2インジェクタ60bの第1噴射孔62からの燃料噴射を禁止してもよいし、インジェクタバルブのリフト量を小さくするとともにリフト時間を長くすることで、第2インジェクタ60bの第1噴射孔62から噴射される燃料の貫徹力を第1噴射孔62から噴射される燃料と同等程度に小さくしてもよい。
【0041】
図10は、第4実施形態の内燃機関80における燃料噴射供給のイメージ図である。
図10に示すように、第4実施形態の内燃機関90では、第2実施形態の内燃機関70のように、2つの吸気ポート2a、2bの両方に第1噴射孔62及び第2噴射孔63を有するインジェクタ60(60a、60b)を配置する。そして、例えば低負荷運転領域において、副燃焼室43に対して各インジェクタと60a、60bの第1噴射孔62から貫徹力の高い噴射により燃料が供給され、主燃焼室41に対して各インジェクタ60a、60bの第2噴射孔63から貫徹力の低い噴射により燃料が供給される。
【0042】
これにより、低負荷運転領域には副燃焼室43に燃料が十分に供給されて点火性を向上させるとともに、主燃焼室41には主燃焼室41の全体に亘って燃料を偏り少なく供給することができる。
本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。例えば上記実施形態において、内燃機関の各インジェクタや筒内の詳細な構造については、適宜変更してもよい。また、本発明の内燃機関は、自動車の走行駆動用等の種内燃機関に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1、70、80、90 内燃機関
2a 第1吸気ポート
2b 第2吸気ポート
41 主燃焼室
43 副燃焼室
50 コントロールユニット(制御部)
60、60a 第1インジェクタ
61、60b 第2インジェクタ
62 第1噴射孔(燃料噴射孔)
63 第2噴射孔(燃料噴射孔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10