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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089280
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】EGR装置付エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/16 20160101AFI20240626BHJP
   F02M 26/15 20160101ALI20240626BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F02M26/16
F02M26/15 ZHV
F02D21/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204546
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳川 健介
(72)【発明者】
【氏名】廣江 健太
(72)【発明者】
【氏名】細野 清隆
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆
(72)【発明者】
【氏名】川辺 敬
【テーマコード(参考)】
3G062
3G092
【Fターム(参考)】
3G062CA01
3G062ED01
3G062ED09
3G062GA01
3G062GA17
3G062GA22
3G092AA17
3G092DC09
3G092FA31
3G092GA01
3G092HA01Z
3G092HD05Z
3G092HD08Z
3G092HF19Z
(57)【要約】
【課題】始動時における排気の外部への排出を抑制するとともに、始動性を確保するEGR装置付エンジンを提供する。
【解決手段】三元触媒36の下流側の排気通路35と吸気通路31とを接続するストレージEGR通路51と、ストレージEGR通路51の開度を調整するストレージEGRバルブ56と、を備えたエンジン2であって、排気通路35とストレージEGR通路51とが接続される位置に備えられ、排気通路35の三元触媒36より下流側であるマフラ38側とストレージEGR通路51側との開度比を調整する2WAYシャッタ52と、エンジン2の運転状態に基づいて、ストレージEGRバルブ56の開度と2WAYシャッタ52における開度比を制御するEGR制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に備えられた排気浄化装置と、
前記排気浄化装置の下流側の排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路と、
前記EGR通路の開度を調整するEGRバルブと、を備えたEGR装置付エンジンであって、
前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側と前記EGR通路側との排気の割合を調整する調整手段と、
前記エンジン始動時の運転状態に基づいて、前記調整手段による前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側と前記EGR通路側との排気の割合と前記EGRバルブの開度とを制御する制御部と、を備えた
ことを特徴とするEGR装置付エンジン。
【請求項2】
前記制御部は、前記エンジンのクランキングが開始されてから完爆までの間は、前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側よりも前記EGR通路側の排気の割合が大きくなるように前記調整手段を制御するとともに、前記EGR通路を開くように前記EGRバルブを制御する
ことを特徴とする請求項1記載のEGR装置付エンジン。
【請求項3】
前記吸気通路に吸気量を検出する吸気量検出手段を備え、
前記制御部は、前記エンジンの完爆から前記吸気量検出手段が吸気量を検出可能になるまでは、前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側と前記EGR通路側の両方に排気が導入されるように前記調整手段を制御するとともに、前記EGR通路を閉じるように前記EGRバルブを制御する
ことを特徴とする請求項1記載のEGR装置付エンジン。
【請求項4】
前記排気通路に排気の空燃比を検出する空燃比検出手段を備え、
前記制御部は、エンジン始動時に前記吸気量検出手段が検出可能になってから前記空燃比検出手段が活性化して検出可能になるまでは、前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側と前記EGR通路側の両方に排気が導入されるように前記調整手段を制御するとともに、前記EGR通路を開くように前記EGRバルブを制御する
ことを特徴とする請求項3記載のEGR装置付エンジン。
【請求項5】
前記シャッタより上流側の前記排気通路内の圧力と前記EGR通路内の圧力との差圧を検出する差圧検出手段を備え、
前記制御部は、エンジン始動時におけるクランキングから前記空燃比検出手段が活性化して検出可能になるまでの間で、前記シャッタより上流側の前記排気通路内の圧力が前記EGR通路内の圧力より低い場合には、前記EGR通路側が前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側より排気の割合が小さくなるように前記調整手段を制御する
ことを特徴とする請求項4記載のEGR装置付エンジン。
【請求項6】
前記EGR通路よりも上流側で前記排気通路と前記吸気通路とを接続する高圧EGR通路と、
前記高圧EGR通路の開度を調整する高圧EGRバルブと、を備え、
前記制御部は、
前記エンジンが所定の高回転低負荷時には、前記高圧EGRバルブを開き、
前記エンジンが所定の高回転高負荷時には、前記高圧EGRバルブを閉じて、前記EGRバルブを開く
ことを特徴とする請求項1記載のEGR装置付エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR装置を備えたエンジンの排気浄化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの始動時には、始動性の向上のため燃料噴射量が多く設定されているため、エンジン始動時の排気状態が悪化するといった問題がある。
これに対し、特許文献1では、排気浄化装置の下流側の排気通路と吸気通路とを連結するEGR通路と、排気通路から排出される排気の流量とEGR通路に流入する排気の流量との割合を変更する流量変更機構と、を備え、気浄化装置から排出されたNOx濃度が多い場合は排気通路から排出される排気の流量の比率よりもEGR通路に流入する排気の流量の比率が多くなるように流量変更機構制御するEGRシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-44745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンジンの始動時には、エンジンの運転状態によってはEGR通路に流入する排気の流量を増加させることが適切ではない場合がある。
例えば、Eエンジン始動直後には、始動時に吸気量や排気の空燃比を検出するセンサが精度よく検出できない可能性があり、EGRバルブを適切に制御できず、始動性の低下あるいは排気性能が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、EGR装置を備えたエンジンにおいて、始動時における排気の外部への排出を抑制するとともに、始動性を確保するEGR装置付エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るEGR装置付エンジンは、排気通路に備えられた排気浄化装置と、前記排気浄化装置の下流側の排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路と、前記EGR通路の開度を調整するEGRバルブと、を備えたEGR装置付エンジンであって、前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側と前記EGR通路側との排気の割合を調整する調整手段と、前記エンジン始動時の運転状態に基づいて、前記調整手段による前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側と前記EGR通路側との排気の割合と前記EGRバルブの開度とを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、調整手段を制御することで排気を排気通路の排気浄化装置より下流側とEGR通路側に排出させるように制御するとともに、EGRバルブを制御することでEGR通路から吸気通路への排気の還流を制御することができる。そして、エンジンの運転状態に基づいて調整手段及びEGRバルブを制御することで、エンジンの運転状態に応じて排気の外部への排出の抑制とエンジン始動性の確保を両立させることができる。
【0008】
好ましくは、前記制御部は、前記エンジンのクランキングが開始されてから完爆までの間は、前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側よりも前記EGR通路側の排気の割合が大きくなるように前記調整手段を制御するとともに、前記EGR通路を開くように前記EGRバルブを制御するとよい。
これにより、エンジンのクランキングが開始されてから完爆までの間に、EGR通路に残留する酸素とともに、未燃ガスを含む排気をEGR通路から吸気通路に還流させて、エンジンの始動性を向上させることができる。
【0009】
好ましくは、前記吸気通路に吸気量を検出する吸気量検出手段を備え、前記制御部は、前記エンジンの完爆から前記吸気量検出手段が吸気量を検出可能になるまでは、前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側と前記EGR通路側の両方に排気が導入されるように前記調整手段を制御するとともに、前記EGR通路を閉じるように前記EGRバルブを制御するとよい。
【0010】
これにより、吸気量検出手段が吸気量を検出可能になるまでは、EGRバルブによりEGR通路を閉じることで、不正確になる怖れのある状態の吸気量検出手段による吸気量の検出に基づく吸気通路への排気の導入を回避することができる。
好ましくは、前記排気通路に排気の空燃比を検出する空燃比検出手段を備え、前記制御部は、エンジン始動時に前記吸気量検出手段が検出可能になってから前記空燃比検出手段が活性化して検出可能になるまでは、前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側と前記EGR通路側の両方に排気が導入されるように前記調整手段を制御するとともに、前記EGR通路を開くように前記EGRバルブを制御するとよい。
【0011】
これにより、排気抵抗を抑制しつつ、エンジン始動時にEGR通路に流入した未燃ガスを含む排気を吸気通路に還流させて処理することができる。
好ましくは、前記シャッタより上流側の前記排気通路内の圧力と前記EGR通路内の圧力との差圧を検出する差圧検出手段を備え、前記制御部は、エンジン始動時におけるクランキングから前記空燃比検出手段が活性化して検出可能になるまでの間で、前記シャッタより上流側の前記排気通路内の圧力が前記EGR通路内の圧力より低い場合には、前記EGR通路側が前記排気通路の前記排気浄化装置より下流側より排気の割合が小さくなるように前記調整手段を制御するとよい。
【0012】
これにより、エンジンの始動時においてEGR通路に流入した排気が逆流して排気通路の排気浄化装置より下流側に排出することを規制することができる。
好ましくは、前記EGR通路よりも上流側で前記排気通路と前記吸気通路とを接続する高圧EGR通路と、前記高圧EGR通路の開度を調整する高圧EGRバルブと、を備え、前記制御部は、前記エンジンが所定の高回転低負荷時には、前記高圧EGRバルブを開き、前記エンジンが所定の高回転高負荷時には、前記高圧EGRバルブを閉じて、前記EGRバルブを開くとよい。
【0013】
これにより、エンジンの高回転低負荷時には、高圧EGR通路を介して排気を吸気通路に還流させ排気性能を向上させることができる。エンジンの高回転高負荷時には、高圧EGRバルブを閉じることで、高温の排気が吸気通路に還流することを抑制できる。またEGRバルブを開くことで、比較的低温になり易い排気を還流させて排気性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、エンジンの運転状態に基づいてシャッタ及びEGRバルブを制御することで、エンジンの始動時において排気の外部への排出の抑制とエンジン始動性の確保を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態のハイブリッド車の走行駆動系の概略構成図である。
図2】本実施形態に係るハイブリッド車両のエンジンの吸排気系の構成図である。
図3】EGR制御部において実行されるストレージEGR制御の制御手順を示すフローチャートである。
図4】凝縮水対策制御の制御手順を示すフローチャートである。
図5】吸気量推定制御手順を示すフローチャートである。
図6】空燃比推定噴射制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両(以下、車両1という)の走行駆動系の概略構成図である。
本発明の一実施形態における車両1は、エンジン2(EGR装置付エンジン)の出力によってモータジェネレータ9(電動機)を駆動して発電するとともに、車輪を駆動する電動のフロントモータ4(走行用モータ)を備えたプラグインハイブリッド車やハイブリッド車等の車両である。
【0017】
エンジン2は、フロントトランスアクスル7を介して前輪3の駆動軸8を駆動可能であるとともに、フロントトランスアクスル7を介してモータジェネレータ9(電動機)を駆動して発電させることが可能となっている。また、エンジン2と前輪3とは、フロントトランスアクスル7内に配置されたクラッチ16を介して接続されている。
フロントモータ4は、フロントコントロールユニット10を介して、車両1に搭載された駆動用バッテリ11やモータジェネレータ9から電力を供給されて駆動し、フロントトランスアクスル7を介して前輪3の駆動軸8を駆動する。
【0018】
モータジェネレータ9によって発電された電力は、フロントコントロールユニット10を介して駆動用バッテリ11を充電可能であるとともに、フロントモータ4及びリヤモータ6に電力を供給可能である。
駆動用バッテリ11は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成されている。また、駆動用バッテリ11には、駆動用バッテリ11の充電率SOCを検出する充電率検出部11aを備えている。
【0019】
フロントコントロールユニット10は、車両に搭載されたハイブリッドコントロールユニット20からの制御信号に基づき、フロントモータ4の出力を制御するとともに、モータジェネレータ9の発電量及び出力を制御する機能を有する。
エンジンコントロールユニット22は、エンジン2の制御装置であり、ハイブリッドコントロールユニット20からの制御信号(要求出力)に基づき、エンジン2における燃料噴射量及び燃料噴射時期、吸気量等を制御して、エンジン2の駆動制御を行う。ハイブリッドコントロールユニット20は、車両1の総合的な制御を行うための制御装置である。エンジンコントロールユニット22及びハイブリッドコントロールユニット20は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成される。
【0020】
ハイブリッドコントロールユニット20の入力側には、フロントコントロールユニット10、エンジンコントロールユニット22等が接続されており、これらの機器からの検出及び作動情報が入力される。
一方、ハイブリッドコントロールユニット20の出力側には、フロントコントロールユニット10、エンジンコントロールユニット22、フロントトランスアクスル7のクラッチ16等が接続されている。
【0021】
そして、ハイブリッドコントロールユニット20は、車両1のアクセル操作情報度等の各種検出量及び各種作動情報に基づいて、車両1の走行駆動に必要とする車両要求出力を演算し、エンジンコントロールユニット22やフロントコントロールユニット10に制御信号を送信して、走行モード(EVモード、シリーズモード、パラレルモード)の切換え、エンジン2とフロントモータ4の出力、モータジェネレータの発電電力及び出力、フロントトランスアクスル7におけるクラッチ16の断接を制御する。
【0022】
EVモードでは、エンジン2を停止し、モータ46を駆動して走行させる。
シリーズモードでは、フロントトランスアクスル7のクラッチ16を切断し、エンジン2によりモータジェネレータ9を駆動させることで発電を行うとともに、フロントモータ4を駆動して走行させる。なお、シリーズモードでは、エンジン2の回転速度を効率のよい値に設定する。
【0023】
パラレルモードでは、フロントトランスアクスル7のクラッチ16を接続し、エンジン2及びフロントモータ4の動力を伝達して前輪3を駆動させる。
ハイブリッドコントロールユニット20は、例えば、高速領域のように、エンジン2の効率のよい領域では、走行モードをパラレルモードとする。また、パラレルモードを除く領域、即ち中低速領域では、駆動用バッテリ11の充電率SOC(充電量)に基づいてEVモードとシリーズモードとの間で切換える。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態に係るエンジン2の吸排気系の構成図である。
本実施形態に係るエンジン2は、例えば複数の気筒を備えたガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。
図2に示すように、エンジン2の吸気通路31には、エンジン2に向かって上流側から順番に、エアクリーナ32、スロットルバルブ33が備えられている。
【0025】
エンジン2の排気通路35には、エンジン2から下流側へ順番に、三元触媒36(排気浄化装置)、パティキュレートフィルタ37、マフラ38が備えられている。
エンジン2には、排気の一部をEGRガスとして吸気側に還流する高圧EGR装置40が備えられている。高圧EGR装置40は、吸気通路31のスロットルバルブ33より下流側と排気通路35の三元触媒36より上流側とを連通する高圧EGR通路43と、高圧EGR通路43を開閉する(開度を調整する)高圧EGRバルブ44、高圧EGR通路43を通過するEGRガスを冷却する高圧EGRクーラ45を備えている。
【0026】
さらに、本実施形態では、高圧EGR装置40とは別にストレージEGR装置50を備えている。
ストレージEGR装置50は、パティキュレートフィルタ37とマフラ38との間の排気通路35と吸気通路31のスロットルバルブ33より下流側とを連通するストレージEGR通路51(EGR通路)と、当該ストレージEGR通路51と排気通路35との分岐部に2WAYシャッタ52(調整手段)と、を備えている。
【0027】
2WAYシャッタ52は、ストレージEGR通路51側とマフラ38側へと流入する排気の割合を調整するように開度を変更可能となっている。
ストレージEGR通路51には、2WAYシャッタ52側から吸気マニホールド42に向かって順番に、排気コンプレッサ53、排気貯蔵タンク54、ストレージEGRクーラ55、ストレージEGRバルブ56を備えている。
【0028】
排気コンプレッサ53は、駆動用バッテリ11等の蓄電池から供給された電力によって駆動する電動コンプレッサであり、排気通路35から排気貯蔵タンク54に向かって排気を圧縮供給する。
排気貯蔵タンク54は、排気(EGRガス)を貯留する貯蔵タンクである。排気貯蔵タンク54の容量は、後述する通り、エンジン2の始動開始から排気空燃比が計測可能となるまでの間の排気を貯蔵可能な容量にすればよい。
【0029】
ストレージEGRクーラ55は、ストレージEGR通路51を通過するEGRガスを冷却する冷却機であり、走行風やエンジン2に備えられたファンによって外気と熱交換する。なお、高圧EGRクーラ45とストレージEGRクーラ55は一体的に構成されているが、EGRガスの流路は互いに異なる。
ストレージEGRバルブ56は、ストレージEGR通路51の開度を調整する。
【0030】
また、エアクリーナ32とスロットルバルブ33との間に吸気通路31には、吸気流量を検出する吸気流量センサ(MAF60、吸気量検出手段)と、スロットルバルブ33を挟んで上流側と下流側の夫々の吸気通路31に吸気温度及び吸気圧力を検出する吸気温度圧力センサ(上流側が第1吸気温度圧力センサ61、下流側が第2吸気温度圧力センサ62)を備えている。
【0031】
排気マニホールド41と三元触媒36との間の排気通路35には、空燃比を検出するリニア空燃比センサ(LAFS63、空燃比検出手段)を備えている。
更に、ストレージEGRクーラ55とストレージEGRバルブ56との間のストレージEGR通路51には、EGRガスの温度及び圧力を検出するEGRガス温度圧力センサ64が備えられている。
【0032】
また、排気貯蔵タンク54とストレージEGRクーラ55との間のストレージEGR通路51内の圧力と、パティキュレートフィルタ37と2WAYシャッタ52との間の排気通路35内の圧力との差を検出する差圧センサ(DPS65、差圧検出手段)が備えられている。
ハイブリッドコントロールユニット20には、EGR制御部70(制御部)か備えられている。
【0033】
EGR制御部70は、エンジンの運転状態(運転、停止、クランキング状態、エンジン水温、エンジン回転速度等)、吸気流量センサ60、第1吸気温度圧力センサ61、第2吸気温度圧力センサ62、LAFS63、EGRガス温度圧力センサ64、差圧センサ65の検出情報を基に、2WAYシャッタ52、排気コンプレッサ53、高圧EGRバルブ44、ストレージEGRバルブ56を作動制御する。
【0034】
本実施形態では、エンジン2の始動時に2WAYシャッタ52をマフラ38側に移動させ、ストレージEGR通路51側の通路の開度を大きくするとともにマフラ38側の通路の開度を小さくすることで、排気の大部分をストレージEGR通路51側に流し、エンジン2始動時の排気通路35から車外への排気の流出を抑制する。このとき、EGRガスをエンジン2に導入することが適さないような場合には、ストレージEGRバルブ56を閉じることでストレージEGR通路51内に排気を貯留する。また、エンジン2の停止時には2WAYシャッタ52をマフラ38側に移動させ、三元触媒36やパティキュレートフィルタ37(以下、触媒という)の熱が排気通路35から車外へと逃げることを抑制する。このとき、排気通路35内に凝縮水が発生する可能性が有る場合は、2WAYシャッタ52をストレージEGR通路51側に移動させ、排気通路35内の排気を車外に逃がすことで凝縮水の発生を抑制する。
【0035】
図3は、ストレージEGR装置50におけるストレージEGR制御の制御手順を示すフローチャートである。図4は、凝縮水対策制御の制御手順を示すフローチャートである。図5は、吸気量推定制御手順を示すフローチャートである。図6は、空燃比推定噴射制御手順を示すフローチャートである。図3~6の制御は、EGR制御部70において実行される。
【0036】
ストレージEGR制御は、車両1の電源スイッチON(IG-ON)後に所定時間毎に繰り返し実行される。
図3に示すように、ストレージEGR制御は、始めにステップS10では、エンジンコントロールユニット22等よりエンジン状態(運転、停止、クランキング状態、エンジン回転速度、エンジン水温等)を取得する。そして、ステップS20に進む。
【0037】
ステップS20では、エンジン2が停止状態であるか否かを判別する。エンジン停止状態である場合には、ステップS30に進む。エンジン2が作動状態である場合には、ステップS70に進む。なお、エンジン停止状態とは、エンジン2の気筒内の燃料を意図的に燃焼させていない状態であることであり、惰性でエンジン2が回転している状態も含める。
【0038】
ステップS30では、エンジン回転速度Neが0以下であるか否かを判別する。エンジン回転速度Neが0以下の場合には、ステップS40に進む。エンジン回転速度Neが0より大きい、すなわち惰性で回転している場合には、図4に示すステップS200に進む。
ステップS40では、車両1の電源スイッチがオンであるか否かを判別する。電源スイッチがオンである場合、すなわちアイドルストップやEV走行でエンジン2が停止している場合には、ステップS60に進む。電源スイッチがオフである場合、すなわち車両がシャットダウン状態である場合には、ステップS50に進む。
【0039】
ステップS50では、第1制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52を中開度(ストレージEGR通路51とマフラ38側の排気通路35の両方が開いた状態)にする。本実施形態では、ストレージEGR通路51側(以下、EGR側という)とマフラ38側との開度比を5:5にする。また、ストレージEGRバルブ56を閉じる(ストレージEGR通路51の吸気側を閉鎖する)。そして、本ルーチンをリターンする。第 1制御は、車両の電源がオフにされることによるエンジン停止時に実施される制御である。この場合は、エンジン2が停止された状態で長時間経過することが予想されるので、排気通路35内で凝縮水が発生することを抑制すべく、2WAYシャッタ52を制御して排気通路35側を開く。このとき、ストレージEGRバルブ56を閉じることで、排気が吸気通路31側へ流れることを抑制する。なお、このとき、モータジェネレータ9でエンジン2をモータリングし、ストレージEGR通路51内や排気通路35内の排気の排出を促進させることが好ましい。
【0040】
ステップS60では、第2制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52により排気通路35のマフラ側を閉じる。なお、排気通路35のマフラ側を閉じるとは、排気の大部分がストレージEGR通路51側(以下、EGR側という)へと流れるようにすることを指し、排気通路35のマフラ側を完全に閉鎖する必要はない。本実施形態では、EGR側とマフラ側との開度比を9:1にする。また、ストレージEGRバルブ56を閉じる。そして、本ルーチンをリターンする。第2制御は、アイドルストップやEV走行によるエンジン停止時に実施される制御である。この場合は、比較的短時間でエンジン2が再始動されることが考えられるので、触媒の温度低下を抑制するために排気通路35のマフラ側を閉じる。このとき、ストレージEGRバルブ56を閉じることで、排気通路35の熱が吸気通路31側へ逃げることを抑制する。
【0041】
ステップS70では、エンジン2がクランキングから完爆状態までの間の状態であるか否かを判別する。クランキングから完爆状態までの間の状態である場合には、ステップS80に進む。クランキングから完爆状態までの間の状態でない場合、即ち完爆後の運転状態である場合には、ステップS110に進む。
ステップS80では、エンジン水温が低い(例えば80℃以下の暖気前状態)であるか否かを判別する。エンジン水温が80℃以下である場合には、ステップS100に進む。エンジン水温が80℃より高い場合には、ステップS90に進む。
【0042】
ステップS100では、第3制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52を中開度(EGR側とマフラ側との両方が開いている状態)にする。本実施形態では、EGR側の方が大きく開いている状態とする。また、ストレージEGRバルブ56の開度を中開度(全開と全閉の間の任意の開度)にする。そして、本ルーチンをリターンする。第3制御は、低温時のエンジン始動初期に実施される制御である。この場合は、触媒が活性化しておらず排気浄化効率が悪いため、排気の大部分をEGR側へ流し、排気通路35から排気が車外に排出されることを抑制する。このとき、ストレージEGRバルブ56を開くことで、ストレージEGR通路51内の圧力が高くなりすぎないようにする。なお、エンジン始動初期はストレージEGR通路51内に十分な酸素が存在しているため、ストレージEGRバルブ56を開いてもエンジン始動性への悪影響は小さい。なお、このときこのとき排気コンプレッサ53を駆動させて排気をストレージEGR通路51へ圧送してもよい。
【0043】
ステップS90では、第4制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52によりストレージEGR通路51を閉じる。なお、ストレージEGR通路51を閉じるとは、排気の大部分が排気通路35のマフラ側へと流れるようにすることを指し、ストレージEGR通路51を完全に閉鎖する必要はない。本実施形態では、2WAYシャッタ52のEGR側とマフラ側との開度比を1:9にする。また、ストレージEGRバルブ56を閉じる。そして、本ルーチンをリターンする。第4制御は、高温時のエンジン始動初期に実施される制御である。この場合は、排気通路35のマフラ側の開度を大きくすることで、排圧の上昇を抑制し、エンジン始動性を向上させる。このとき、触媒が活性しており排気浄化効率が十分であると考えられるため、排気の大部分を排気通路35から車外に排出するとともに、排気がEGR側に流れることを抑制し、エンジン始動初期に吸気にEGRが導入され始動性が悪化することを抑制する。
【0044】
ステップS110では、吸気量が計測可能であるか否かを判別する。吸気量が計測可能であるか否かは、例えば吸気流量センサ(MAF60)の出力が安定したか否かによって判別すればよい。吸気量が計測可能である場合には、ステップS120に進む。吸気量が計測不能である場合には、図5に示すステップS300に進む。
ステップS120では、排気空燃比が計測可能であるか否かを判別する。排気空燃比が計測可能であるか否かは、例えば排気空燃比センサ(LAFS63)が活性状態であるか否かによって判別すればよい。排気空燃比が計測可能である場合には、ステップS130に進む。排気空燃比が計測不能である場合には、図6に示すステップS400に進む。
【0045】
ステップS130では、触媒昇温中状態または触媒冷態状態であるようなエンジン運転状態であるか否かを判別する。触媒昇温中状態とは、触媒冷態状態であって昇温のための制御、例えば触媒ヒータを作動させたり、ポスト噴射を行っている状態である。以下、触媒冷態状態には触媒昇温中状態が含まれるものとする。触媒冷態状態か否かは、例えば、エンジン温度が所定温度以下である場合や、所定温度以上であっても所定時間以上運転を経過していないような、触媒温度が未だ十分に活性化してない状態であることが確実なエンジン運転状態であるか否かを判別する。触媒冷態状態である場合には、ステップ140に進む。触媒冷態状態でない、即ち触媒昇温完了状態である場合には、ステップS150に進む。
【0046】
ステップS140では、第5制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52をEGR側の中開度(マフラ側の方が大きく開いている状態)とする。また、ストレージEGRバルブ56の開度を中開度にする。2WAYシャッタ52の開度やストレージEGRバルブ56の開度は、要求されるEGR量に基づいて制御される。そして、本ルーチンをリターンする。第5制御は、エンジン始動完了後(完爆後)で触媒冷態状態であるときに実施される。この場合、2WAYシャッタ52で排気通路35のマフラ側の開度を狭め、2WAYシャッタ52より上流側、すなわち触媒側の排圧を上げることで触媒昇温を促す。ただし、エンジン2が要求出力を出せないほどに排圧が上がりすぎないように、2WAYシャッタ52の開度は調整される。
【0047】
ステップS150では、エンジン状態が温態であるか否かを判別する。エンジン状態が温態であるか否かは、例えばエンジン温度が所定の温態範囲内であるか否かによって判別すればよい。エンジン状態が温態である場合には、ステップS160に進む。エンジン状態が温態でない場合には、ステップS170に進む。
ステップS160では、第6制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52をEGR側の中開度(マフラ側の方が大きく開いている状態)とする。また、ストレージEGRバルブ56の開度を中開度にする。2WAYシャッタ52の開度やストレージEGRバルブ56の開度は、要求されるEGR量に基づいて制御される。そして、本ルーチンをリターンする。第6制御は、エンジン始動完了後(完爆後)で触媒、エンジン2の両方が十分に暖まっているときに実施される。この場合、要求されるEGR量に応じて2WAYシャッタ52を制御すればよい。このとき、2WAYシャッタ52を第5制御に比べEGR側にする(マフラ側の開度を大きくする)ことで、排圧が上がりすぎないようにしエンジン2の;出力を確保することが好ましい。
【0048】
ステップS170では、エンジン2が高温(温態状態より高温)であるため、フェールセーフとして、2WAYシャッタ52によりEGR側を閉じる。また、ストレージEGRバルブ56を閉鎖する。すなわち、吸気通路31へのEGRガスの導入を行わない。そして、本ルーチンをリターンする。
図4に示すように、ステップS200では、排気貯蔵タンク54内の圧力が大気圧以下であるか否かを判別する。排気貯蔵タンク54内の圧力が大気圧以下であるか否かについては、例えば2WAYシャッタ52の開度とエンジン2の運転時間や、排気貯蔵タンク54内に圧力センサを備えて検出した値に基づいて判別すればよい。排気貯蔵タンク54内の圧力が大気圧以下である場合には、ステップS210に進む。排気貯蔵タンク54内の圧力が大気圧より高い場合には、ステップS230に進む。
【0049】
ステップS210では、モータジェネレータ9によるエンジン回転速度の低下を遅延化する制御をオフにする。エンジン2の回転中にエンジン2への燃料供給を停止するとエンジン回転速度が低下するが、本実施形態の車両1では、エンジン2への燃料供給停止時にモータジェネレータ9の作動制御によりエンジン回転速度の低下を遅延させる制御を行って、エンジン2を緩やかに停止させることが可能である。本ステップではこの遅延制御を停止する。そして、ステップS220に進む。
【0050】
ステップS220では、第7制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52を中開度(本実施形態ではEGR側とマフラ側との開度比を5:5)にする。また、ストレージEGRバルブ56を閉じる。そして、図3に示すストレージEGR制御に戻り、EGR制御のルーチンをリターンする。第7制御は、惰性でエンジン2が回転している状態であり、ストレージEGR通路51内に排気を導入可能な場合に実施される。この場合、2WAYシャッタ52を中開度とすることでストレージEGR通路51内を掃気する。また、ストレージEGRバルブ56は閉じることで高温のEGRガスが吸気に導入されないようにする。
【0051】
ステップS230では、モータジェネレータ9による回転速度の低下を遅延化する制御をオンにする。そして、ステップS240に進む。
ステップS240では、エンジン始動時の排気が排気貯蔵タンク54に貯蔵中であるか否かを判別する。排気貯蔵タンク54に排気が貯蔵中であるか否かについては、例えばエンジン始動時からの2WAYシャッタ52の開度(EGR側の開度)やストレージEGRバルブ56の開度の推移に基づいて判定すればよい。エンジン始動時の排気が排気貯蔵タンク54に貯蔵されている場合には、ステップS250に進む。貯蔵されていない場合には、ステップS260に進む。
【0052】
ステップS250では、第8制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52により排気通路35のマフラ側を閉じる。本実施形態では、EGR側とマフラ側との開度比を9:1にする。また、ストレージEGRバルブ56を全閉から中間開度の間とする。本実施形態では、ストレージEGRバルブ56の開度を10%にする。そして、図3に示すストレージEGR制御に戻り、ストレージEGR制御のルーチンをリターンする。第8制御は、惰性でエンジン2が回転している状態であり、ストレージEGR通路51内に排気が導入できず、ストレージEGR通路51内にエンジン始動時の排気が溜まっている場合に実施される。この場合、2WAYシャッタ52により排気通路35のマフラ側を閉じてストレージEGR通路51内の排気が車外に排出されないようにするとともに、ストレージEGRバルブ56を少し開いて排気を吸気側に戻す。このとき、遅延制御を実施することで排気が循環する時間を長くし、触媒による排気の浄化を促す。
【0053】
ステップS260では、第9制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52を中開度とする。本実施形態では、EGR側とマフラ側との開度比を5:5にする。また、ストレージEGRバルブの開度を全閉から中間開度の間(本実施形態では10%)にする。そして、図3に示すストレージEGR制御に戻り、ストレージEGR制御のルーチンをリターンする。第9制御は、惰性でエンジン2が回転している状態であり、ストレージEGR通路51内に排気が導入できず、ストレージEGR通路51内にエンジン始動時の排気が溜まっていない場合に実施される。この場合、第8制御に比べストレージEGR通路51内の排気はクリーンであると考えられるため、2WAYシャッタ52のマフラ側の開度を第8制御に比べ大きくし、ストレージEGR通路51内の排気の一部がマフラ側へと流れ車外に排出されることを許容する。
【0054】
図5に示すように、ステップS300では、2WAYシャッタ52の上流側の排気通路35内の圧力がストレージEGR通路51内の圧力より高いか否かを判別する。2WAYシャッタ52の上流側の圧力がストレージEGR通路51(排気貯蔵タンク54とストレージEGRクーラ55との間のストレージEGR通路51)内の圧力より高いか否かについては、例えば差圧センサ65の検出値に基づいて判別すればよい。2WAYシャッタ52の上流側の圧力がストレージEGR通路51内の圧力より高い場合には、ステップS310に進む。2WAYシャッタ52の上流側の圧力がストレージEGR通路51内の圧力以下の場合には、ステップS320に進む。
【0055】
ステップS310では、第10制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52をマフラ側の中開度とする。また、ストレージEGRバルブ56を閉じる。そして、図3に示すストレージEGR制御に戻り、ストレージEGR制御のルーチンをリターンする。第10制御は、エンジン完爆後であって吸気量が計測不可な状態で、ストレージEGR通路51に排気が導入可能な場合に実施される。この場合、2WAYシャッタ52を中開度として排気の一部をストレージEGR通路51に導入するが、吸気量が計測不可であり適切なEGR導入量を算出することができないため、ストレージEGRバルブ56は閉じる。
【0056】
ステップS320では、第11制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52によりEGR側を閉じる(EGR側とマフラ側との開度比を0:10にする)。また、ストレージEGRバルブ56を閉じる。そして、図3に示すストレージEGR制御に戻り、ストレージEGR制御のルーチンをリターンする。第11制御は、エンジン完爆後であって吸気量が計測不可な状態で、ストレージEGR通路51に排気が導入できない場合に実施される。この場合、第10制御と同様に適切なEGR導入量を算出することができないため、ストレージEGRバルブ56を閉じるが、ストレージEGR通路51に排気を導入することができないので、2WAYシャッタ52によりEGR側を閉じる。
【0057】
図6に示すように、ステップS400では、上記ステップS300と同様に、2WAYシャッタ52の上流側の圧力がストレージEGR通路51内の圧力より高いか否かを判別する。2WAYシャッタ52の上流側の圧力がストレージEGR通路51内の圧力より高い場合には、ステップS410に進む。2WAYシャッタ52の上流側の圧力がストレージEGR通路51内の圧力以下の場合には、ステップS420に進む。
【0058】
ステップS410では、第12制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52をマフラ側の中開度とする。また、ストレージEGRバルブ56を開く。そして、図3に示すストレージEGR制御に戻り、ストレージEGR制御のルーチンをリターンする。第12制御は、エンジン完爆後であって吸気量が計測可能、排気空燃比が計測不可な状態で、ストレージEGR通路51に排気が導入可能な場合に実施される。この場合、2WAYシャッタ52を中開度として排気の一部をストレージEGR通路51に導入するが、第10制御とは異なり吸気量が計測可能であるため、適切なEGR導入量を導入するように2WAYシャッタ52、ストレージEGRバルブ56の開度を制御する。
【0059】
ステップS420では、第13制御を実行する。詳しくは、2WAYシャッタ52によりEGR側を閉じる。また、ストレージEGRバルブ56を閉じる。そして、図3に示すストレージEGR制御に戻り、ストレージEGR制御のルーチンをリターンする。第13制御は、エンジン完爆後であって吸気量が計測可能、排気空燃比が計測不可な状態で、ストレージEGR通路51に排気が導入できない場合に実施される。この場合、ストレージEGR通路51に排気が導入できないため2WAYシャッタ52によりEGR側を閉じるが、ストレージEGR通路51内には排気が残っているため、これを吸気通路31に導入すべく、ストレージEGRバルブ56を要求EGR量に応じて開く。
【0060】
なお、本実施形態のように、高圧EGR装置40が備えられている場合には、高圧EGR装置40において高圧EGRクーラ45によって十分にEGRガスが冷却できないような高圧時には、高圧EGR装置40の代わりにEGRガス温度の低いストレージEGR装置50を代用してもよい。
以上のように、本実施形態におけるエンジン2は、排気通路35に三元触媒36やパティキュレートフィルタ37といった排気浄化装置が備えられ、三元触媒36及びパティキュレートフィルタ37の下流側の排気通路35と吸気通路31とを接続するストレージEGR通路51と、ストレージEGR通路51の開度を調整するストレージEGRバルブ56と、を有するストレージEGR装置50を備えている。
【0061】
本実施形態では、排気通路35とストレージEGR通路51との接続部に2WAYシャッタ52を備えており、排気通路35の下流側であるマフラ38側とストレージEGR通路51側との開度比を調整することが可能になっている。これにより、2WAYシャッタ52を制御することで排気をマフラ38側及びEGR通路側(ストレージEGR通路51側)に任意に排出させるように制御するとともに、ストレージEGRバルブ56を制御することでストレージEGR通路51から吸気通路31への排気の還流を制御することができる。
【0062】
そしてEGR制御部70が、エンジン2の運転状態に基づいて、ストレージEGRバルブ56の開度と、2WAYシャッタ52における開度比を制御する構成になっているので、エンジン2からの排気の排出状況に応じて排気のマフラ38側への排出の抑制とエンジン始動性の確保を両立させることができる。
例えば、EGR制御部70は、エンジン2のクランキングが開始されてから完爆までの間は、ステップS100の第3制御が行われることで、EGR通路側をマフラ側に比べ大きく開くように2WAYシャッタ52を制御するとともに、ストレージEGR通路51を開くようにストレージEGRバルブ56を制御する。
【0063】
これにより、エンジン2のクランキングが開始されてから完爆までの間に、ストレージEGR通路51に残留する酸素とともに、未燃ガス(未燃燃料)を含む排気をストレージEGR通路51から吸気通路31に還流させて、エンジン2の始動性を向上させることができる。なお、マフラ側をわずかに開くように2WAYシャッタ52を制御することで、排気抵抗の増加を抑え、始動性を確保することができるが、マフラ側を完全に閉じるように2WAYシャッタ52を制御してもよい。
【0064】
また、EGR制御部70は、エンジン2の完爆から吸気流量センサ(MAF60)が吸気量を検出可能になるまでは、ステップS310の第10制御が行われ、マフラ側とEGR通路側の両方が中間開度で開くように2WAYシャッタ52を制御するとともに、ストレージEGR通路51を閉じるようにストレージEGRバルブ56を制御する。
これにより、MAF60が吸気量を検出可能になるまでは、ストレージEGRバルブ56によりストレージEGR通路51を閉じることで、不正確になる怖れのある吸気量に基づく吸気通路31への排気(EGRガス)の導入を回避することができる。
【0065】
また、EGR制御部70は、MAF60が検出可能になってから排気空燃比センサ(LAFS63)が活性化して検出可能になるまでは、ステップS410の第12制御が行われ、ストレージEGR通路51を開くようにストレージEGRバルブ56を制御するとともに、EGR通路側とマフラ側の両方を開くように2WAYシャッタ52を制御する。
これにより、排気通路35における排気抵抗を抑制することができる。また、エンジン始動直後にストレージEGR通路51内に流入した特に未燃ガスが多い排気は吸気通路31に還流されることで処理される。
【0066】
また、EGR制御部70は、エンジン2の始動時におけるクランキングからLAFS63が活性化して検出可能になるまでの間で、2WAYシャッタ52より上流側の排気通路35内の圧力がストレージEGR通路51内の圧力より低い場合には、ステップS420の第13制御が行われ、EGR通路側を閉じる(開度がゼロになる)ように2WAYシャッタ52を制御する。
【0067】
これにより、エンジン2の始動時において、ストレージEGR通路51から排気通路35に排気が逆流してマフラ38側に排出されることを抑制することができる。
また、本実施形態のエンジン2は、ストレージEGR通路51よりも上流側の排気通路と吸気通路31とを接続する高圧EGR通路43と、高圧EGR通路43の開度を調整する高圧EGRバルブ44と、を有する高圧EGR装置を備えている。
【0068】
EGR制御部70は、エンジン2の高回転低負荷時には、高圧EGRバルブ44を開き、エンジン2の高回転高負荷時には、高圧EGRバルブ44を閉じ、ストレージEGRバルブ56を開く。
これにより、エンジンの高回転低負荷時には、高圧EGR通路43を介して排気を吸気通路31に還流させて排気中のNOxを低減させることができる。なお、このときストレージEGRバルブ56も開き、ストレージEGR通路51と高圧EGR通路43の両方から排気を還流させてもよい。エンジン2の高回転高負荷時には、高圧EGRバルブ44を閉じることで、高温の排気が吸気マニホールド42に還流することを抑制し、エンジン2の保護を図ることができる。またストレージEGRバルブ56を開くことで、比較的低温になり易い排気を還流させて排気中のNOxをより低減させることができる。
【0069】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、発明の形態は本実施形態に限定されるものではない。
例えば上記実施形態では、ストレージEGR装置50のストレージEGR通路51が、スロットルバルブ33とエンジン2との間の吸気通路31(吸気マニホールド42)に接続されているが、スロットルバルブ33の上流側の吸気通路31にストレージEGR通路51が接続された構成でもよい。
【0070】
また、排気コンプレッサ53や排気貯蔵タンク54は備えていなくてもよい。
また、上記実施形態では、排気通路35からストレージEGR通路51が分岐する箇所に2WAYシャッタ52を設けているが、三元触媒36等の排気浄化装置の下流に排気通路35の開度を調整するシャッタを備え、排気浄化装置とシャッタとの間にストレージEGR通路51を接続した構成でもよい。
【0071】
また、本実施形態では、ハイブリッドコントロールユニット20にEGR制御部70を備えているが、エンジンコントロールユニット22やその他のコントロールユニットに制御部を備えてもよい。
また、本実施形態では、EVモード、パラレルモード、シリーズモードが切替可能なプラグインハイブリッド車の走行駆動用のエンジンに本発明を適用しているが、各種車両やその他の用途のエンジンに適用可能である。本発明は、EGR装置と排気浄化装置を備えたエンジンに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
2 エンジン(EGR装置付エンジン)
31 吸気通路
35 排気通路
36 三元触媒(排気浄化装置)
42 吸気マニホールド(吸気通路)
51 ストレージEGR通路(EGR通路)
52 2WAYシャッタ(シャッタ)
56 ストレージEGRバルブ(EGRバルブ)
60 MAF(吸気量検出手段)
63 LAFS(空燃比検出手段)
65 DPS(差圧検出手段)
70 EGR制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6