(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089283
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】キャリパボディの製造方法、キャリパボディ及び接合体の製造方法並びに接合体
(51)【国際特許分類】
F16D 65/02 20060101AFI20240626BHJP
B23K 20/12 20060101ALI20240626BHJP
F16D 55/228 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F16D65/02 B
B23K20/12 360
F16D55/228
F16D65/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204553
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 信平
(72)【発明者】
【氏名】森弘 将史
(72)【発明者】
【氏名】村上 真
(72)【発明者】
【氏名】上原 和也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 郁男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢史
(72)【発明者】
【氏名】武舎 和喜
【テーマコード(参考)】
3J058
4E167
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA66
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA84
3J058AA87
3J058BA61
3J058CC03
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3J058DD17
3J058DD26
3J058FA06
4E167AA06
4E167AA07
4E167AA08
4E167AA13
4E167BG04
4E167BG12
4E167BG22
4E167BG25
(57)【要約】
【課題】ブレーキ液が流通する流路を容易に形成できるとともに、流路の設計の自由度が高いキャリパボディの製造方法を提供する。
【解決手段】ボディ本体2と蓋部材3との摩擦攪拌接合又は拡散接合によって、ピストンPを摺動させる第一ボア21及び第二ボア22、並びに第一ボア21と第二ボア22との間を連通する第一流路(流路)15Aを内部に形成するキャリパボディの製造方法において、蓋部材3とボディ本体2において、第一開口部を囲む第一外周部、第二開口部を囲む第二外周部、及び凹部の両側にそれぞれ位置する側部とを、全周にわたって接合する接合工程とを備え、接合工程によって、第一孔部及び蓋部材3で構成される第一ボア21、第二孔部及び蓋部材3で構成される第二ボア22、並びに凹部及び蓋部材3で構成される第一流路(流路)15Aがそれぞれ形成されることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ本体と蓋部材との摩擦攪拌接合又は拡散接合による接合によって、ピストンを摺動させる第一ボア及び第二ボア、並びに前記第一ボアと前記第二ボアとの間を連通する流路を内部に形成する金属製のキャリパボディの製造方法において、
前記ボディ本体を貫通する第一孔部及び第二孔部を備えるとともに、前記第一孔部の第一開口部と前記第二孔部の第二開口部に連続して凹んでなり外部に露出する凹部を備える前記ボディ本体と、前記第一開口部、前記第二開口部及び前記凹部を覆う蓋部材と、を準備する準備工程と、
前記第一開口部、前記第二開口部、及び前記凹部を封止するように前記蓋部材を配置する配置工程と、
前記蓋部材と、前記ボディ本体において、前記第一開口部を囲む第一外周部、前記第二開口部を囲む第二外周部、及び前記第一開口部と前記第二開口部とを連結する前記凹部の両側にそれぞれ位置する側部とを、全周にわたって接合する接合工程と、を備え、
前記接合工程によって、前記第一孔部及び前記蓋部材で構成される前記第一ボア、前記第二孔部及び前記蓋部材で構成される前記第二ボア、並びに前記凹部及び前記蓋部材で構成される前記流路がそれぞれ形成される、
ことを特徴とするキャリパボディの製造方法。
【請求項2】
前記凹部の幅は、前記第一開口部の直径及び前記第二開口部の直径よりも小さい、
請求項1に記載のキャリパボディの製造方法。
【請求項3】
一対の前記側部間の幅は、前記第一開口部の直径及び前記第二開口部の直径よりも小さい、
請求項1に記載のキャリパボディの製造方法。
【請求項4】
前記蓋部材は、前記第一開口部を封止する第一蓋部と、第二開口部を封止する第二蓋部と、前記凹部を覆う第三蓋部とが、一体として形成されている、
請求項1に記載のキャリパボディの製造方法。
【請求項5】
前記蓋部材は、前記第一開口部を封止する第一蓋部と、第二開口部を封止する第二蓋部と、前記凹部を覆う第三蓋部とが、別体として形成されており、
前記接合工程において、前記第一蓋部と前記第三蓋部とを接合するとともに、前記第二蓋部と前記第三蓋部とを接合する、
請求項1に記載のキャリパボディの製造方法。
【請求項6】
前記準備工程において、
前記第一外周部は、前記ボディ本体の外表面から立ち下がるとともに前記第一開口部に面する第一段差側面、及び前記第一段差側面から前記第一開口部に向けて内側に広がる第一段差底面を有し、
前記第二外周部は、前記ボディ本体の外表面から立ち下がるとともに前記第二開口部に面する第二段差側面、及び前記第二段差側面から前記第二開口部に向けて内側に広がる第二段差底面を有し、
一対の前記側部は、前記ボディ本体の外表面から立ち下がる側部段差側面、及び前記側部段差側面から前記凹部に向けて内側に広がる側部段差底面をそれぞれ有し、
前記配置工程において、
前記蓋部材が、前記第一段差底面に載置されるとともに、前記蓋部材の側面と前記第一段差側面とが突き合わされて第一突合部を形成し、
前記蓋部材が、前記第二段差底面に載置されるとともに、前記蓋部材の側面と前記第二段差側面とが突き合わされて第二突合部を形成し、
前記蓋部材が、一対の前記側部段差底面に載置されるとともに、前記蓋部材の側面と一対の前記側部段差側面とがそれぞれ突き合わされて一対の側部突合部を形成し、
前記接合工程において、
前記第一突合部、前記第二突合部、及び一対の前記側部突合部を接合する、
請求項1に記載のキャリパボディの製造方法。
【請求項7】
前記準備工程において、
一対の前記側部は、前記ボディ本体の外表面から立ち下がる側部段差側面、及び前記側部段差側面から前記凹部に向けて内側に広がる側部段差底面をそれぞれ有し、
前記配置工程において、
前記蓋部材が、前記第一外周部の上端面と重ね合わせられて第一重合部を形成し、
前記蓋部材が、前記第二外周部の上端面と重ね合わせられて第二重合部を形成し、
前記蓋部材が、一対の前記側部段差底面に載置されるとともに、前記蓋部材の側面と前記側部段差側面とが突き合わされて一対の側部突合部を形成し、
前記接合工程において、
前記第一重合部、前記第二重合部、及び一対の前記側部突合部を接合する、
請求項1に記載のキャリパボディの製造方法。
【請求項8】
前記配置工程において、
前記蓋部材が、前記第一外周部の上端面と重ね合わせられて第一重合部を形成し、
前記蓋部材が、前記第二外周部の上端面と重ね合わせられて第二重合部を形成し、
前記蓋部材が、一対の前記側部の上端面と重ね合わせられて一対の側部重合部を形成し、
前記接合工程において、
前記第一重合部、前記第二重合部、及び一対の前記側部重合部を接合する、
請求項1に記載のキャリパボディの製造方法。
【請求項9】
前記準備工程において、
前記ボディ本体は、前記第一開口部の周端縁から前記第一孔部の内周側面に向けて外側に広がる第三段差底面を有し、
前記第一外周部は、前記第三段差底面、及び前記第三段差底面から前記ボディ本体の外表面に向けて立ち上るとともに前記第一開口部に面する第三段差側面、を有し、
前記ボディ本体は、前記第二開口部の周端縁から前記第二孔部の内周側面に向けて外側に広がる第四段差底面を有し、
前記第二外周部は、前記第四段差底面、及び前記第四段差底面から前記ボディ本体の外表面に向けて立ち上るとともに前記第二開口部に面する第四段差側面、を有し、
前記配置工程において、
前記蓋部材の側面と前記第三段差側面とが突き合わされて第三突合部を形成し、
前記蓋部材の側面と前記第四段差側面とが突き合わされて第四突合部を形成し、
前記接合工程において、
前記第三突合部、及び前記第四突合部を接合する、
請求項1に記載のキャリパボディの製造方法。
【請求項10】
前記準備工程において、
一対の前記側部は、前記ボディ本体の外表面からそれぞれ立ち下がる側部段差側面、及び前記側部段差側面から前記凹部に向けて内側に広がる側部段差底面を有し、
前記配置工程において、
前記蓋部材が、一対の前記側部段差底面に載置されるとともに、前記蓋部材の側面と一対の前記側部段差側面とがそれぞれ突き合わされて一対の側部突合部を形成し、
前記接合工程において、
前記第三突合部、前記第四突合部、及び一対の前記側部突合部を接合する、
請求項9に記載のキャリパボディの製造方法。
【請求項11】
前記ボディ本体は、第一面と前記第一面とは異なる第二面とを有し、
前記第一開口部は、前記第一面に設けられており、
前記第二開口部は、前記第二面に設けられており、
前記凹部は、前記第一面と前記第二面に連続して設けられている、
請求項1に記載のキャリパボディの製造方法。
【請求項12】
前記ボディ本体が鋳造材からなり、
前記ボディ本体を鋳造加工によって形成する際に前記凹部も形成する、
請求項1に記載のキャリパボディの製造方法。
【請求項13】
ピストンを摺動させる第一ボア及び第二ボア、並びに前記第一ボアと前記第二ボアとの間を連通する流路を内部に有する金属製のキャリパボディであって、
前記キャリパボディは、ボディ本体と蓋部材との摩擦攪拌接合又は拡散接合による接合によって形成されており、
前記ボディ本体を貫通するとともに前記ボディ本体の内部に設けられる第一孔部及び第二孔部がそれぞれ前記ボディ本体の外表面に開口することで形成される第一開口部及び第二開口部を封止するとともに、前記ボディ本体の前記外表面において、前記第一開口部と前記第二開口部とに挟まれた部分が連続して凹んでなり、前記ボディ本体の外部に露出している有底の凹部を封止するように配置された前記蓋部材と、前記ボディ本体において、前記第一開口部を囲む第一外周部、前記第二開口部を囲む第二外周部、及び前記第一開口部と前記第二開口部とを連結する前記凹部の両側に位置する一対の側部とが、全周にわたって接合されており、
前記キャリパボディは、前記凹部の内面、前記蓋部材に囲まれる前記流路を内部に有しており、
前記第一ボアは、一方の開口部となる前記第一開口部が前記蓋部材によって閉塞されながら前記流路によって前記第二ボアと連通するとともに、前記第一開口部と対向する他方の開口部が開口しており、
前記第二ボアは、一方の開口部となる前記第二開口部が前記蓋部材によって閉塞されながら前記流路によって前記第一ボアと連通するとともに、前記第二開口部と対向する他方の開口部が開口している、
ことを特徴とするキャリパボディ。
【請求項14】
第一空間及び第二空間を有するボディ本体と蓋部材との摩擦攪拌接合又は拡散接合による接合によって、前記第一空間と前記第二空間との間を連通する流路を内部に形成する金属製の接合体の製造方法において、
前記ボディ本体を貫通する第一孔部及び第二孔部を備えるとともに、前記第一孔部の第一開口部と前記第二孔部の第二開口部に連続して凹んでなり外部に露出する凹部を備える前記ボディ本体と、前記第一開口部、前記第二開口部及び前記凹部を覆う蓋部材と、を準備する準備工程と、
前記第一開口部、前記第二開口部、及び前記凹部を封止するように前記蓋部材を配置する配置工程と、
前記蓋部材と、前記ボディ本体において、前記第一開口部を囲む第一外周部、前記第二開口部を囲む第二外周部、及び前記第一開口部と前記第二開口部とを連結する前記凹部の両側にそれぞれ位置する側部とを、全周にわたって接合する接合工程とを備え、
前記接合工程によって、前記第一孔部及び前記蓋部材で構成される前記第一空間、前記第二孔部及び前記蓋部材で構成される前記第二空間、並びに前記凹部及び前記蓋部材で構成される前記流路がそれぞれ形成される、
ことを特徴と接合体の製造方法。
【請求項15】
第一空間及び第二空間、並びに前記第一空間と前記第二空間との間を連通する流路を内部に有する金属製の接合体であって、
前記接合体は、ボディ本体と蓋部材との摩擦攪拌接合又は拡散接合による接合によって形成されており、
前記ボディ本体を貫通するとともに前記ボディ本体の内部に設けられる第一孔部及び第二孔部がそれぞれ前記ボディ本体の外表面に開口することで形成される第一開口部及び第二開口部を封止するとともに、前記ボディ本体の前記外表面において、前記第一開口部と前記第二開口部とに挟まれた部分が連続して凹んでなり、前記ボディ本体の外部に露出している有底の凹部を封止するように配置された前記蓋部材と、前記ボディ本体において、前記第一開口部を囲む第一外周部、前記第二開口部を囲む第二外周部、及び前記第一開口部と前記第二開口部とを連結する前記凹部の両側に位置する一対の側部とが、全周にわたって接合されており、
前記接合体は、前記凹部の内面、前記蓋部材に囲まれる前記流路を内部に有しており、
前記第一空間は、一方の開口部となる前記第一開口部が前記蓋部材によって閉塞されながら前記流路によって前記第二空間と連通するとともに、前記第一開口部と対向する他方の開口部が開口しており、
前記第二空間は、一方の開口部となる前記第二開口部が前記蓋部材によって閉塞されながら前記流路によって前記第一空間と連通するとともに、前記第二開口部と対向する他方の開口部が開口している、
ことを特徴とする接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリパボディの製造方法、キャリパボディ及び接合体の製造方法並びに接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキディスクをブレーキパッドで押圧することで制動するブレーキキャリパが車両に使用されている。例えば、特許文献1のブレーキキャリパは、キャリパボディと、ブレーキディスクを挟んで一対一組で対向配置されるとともに、ディスク回転方向に二組併設されているピストンと、を備えている。これらのピストンがブレーキパッドを押圧することで制動力を発生させている。
【0003】
キャリパボディには、各々ピストンを摺動可能に保持する、第一ボア、第二ボア、第三ボア、及び第四ボアが設けられている。第一ボア及び第二ボアがディスク回転方向にそれぞれ併設されており、第三ボア及び第四ボアがディスク回転方向にそれぞれ併設されている。第一ボア及び第二ボアと、第三ボア及び第四ボアとが、パッド開口部を挟んで対向配置されている。また、キャリパボディには、ピストンを作動させるためのブレーキ液を第一~第四ボア内に導入する連通路が形成されている。当該連通路は、複数の流路で構成されており、その一部として、ブレーキディスクの一面側にディスク回転方向に並んでいる第一ボアと第二ボアとを連通する連通路(流路)を備えている。
【0004】
製造段階において、キャリパボディは、第一孔部及び第二孔部がそれぞれキャリパボディの外側に向けて開口することで形成される第一開口部及び第二開口部を有するボディ本体と、第一開口部及び第二開口部をそれぞれ塞ぐ第一蓋部材と第二蓋部材と、を有している。第一孔部の第一開口部が、第一蓋部材で塞がれることで第一ボアが形成され、第二孔部の第二開口部が、第二蓋部材で塞がれることで第二ボアが形成される。
【0005】
特許文献1では、ボディ本体の鋳造後に、ボディ本体に流路を穿設加工してから、第一開口部及び第二開口部に対して第一蓋部材及び第二蓋部材を摩擦攪拌接合によって接合する工程を経て第一ボア、第二ボア及び流路を備えたキャリパボディを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、第一ボアと第二ボアとを連通する流路を形成するにあたって、第一孔部と第二孔部との間に位置する壁面に向けて、第一開口部及び第二開口部から斜めにドリルを挿入して第一連通孔及び第二連通孔を穿設する。そして、互いに交差するように形成された第一連通孔と第二連通孔とを連通させることで流路を形成していた。
【0008】
ここで、シリンダの可動域を広げるためには、第一連通孔及び第二連通孔が浅い位置(ボディ本体の外側に近い位置)に形成されていることが好ましい。しかしながら、第一連通孔及び第二連通孔を浅い位置に形成しようとして、第一開口部及び第二開口部を通じて挿入するドリルの挿入角度をボアの向きに対して垂直な方向から寝かせるように変更すると、ドリルが第一ボア及び第二ボアの壁面に接触してしまう。このため、第一連通孔及び第二連通孔の形成位置を変更することが困難であった。
【0009】
また、第一開口部及び第二開口部に対して第一蓋部材及び第二蓋部材を摩擦攪拌接合によって接合する際に、第一開口部及び第二開口部を閉塞するためにそれぞれの周囲を一周するようにして摩擦攪拌接合を行うと、回転ツールが流路の付近を通過する際に、摩擦攪拌によって生じた塑性流動材が流路に流入して、流路を塞いでしまうこともあった。
【0010】
このような観点から本発明は、ブレーキ液が流通する流路を容易に形成できるとともに、流路の設計の自由度が高いキャリパボディの製造方法、キャリパボディ及び接合体の製造方法並びに接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、ボディ本体と蓋部材との摩擦攪拌接合又は拡散接合による接合によって、ピストンを摺動させる第一ボア及び第二ボア、並びに前記第一ボアと前記第二ボアとの間を連通する流路を内部に形成する金属製のキャリパボディの製造方法において、前記ボディ本体を貫通する第一孔部及び第二孔部を備えるとともに、前記第一孔部の第一開口部と前記第二孔部の第二開口部に連続して凹んでなり外部に露出する凹部を備える前記ボディ本体と、前記第一開口部、前記第二開口部及び前記凹部を覆う蓋部材と、を準備する準備工程と、前記第一開口部、前記第二開口部、及び前記凹部を封止するように前記蓋部材を配置する配置工程と、前記蓋部材と、前記ボディ本体において、前記第一開口部を囲む第一外周部、前記第二開口部を囲む第二外周部、及び前記第一開口部と前記第二開口部とを連結する前記凹部の両側にそれぞれ位置する側部とを、全周にわたって接合する接合工程と、を備え、前記接合工程によって、前記第一孔部及び前記蓋部材で構成される前記第一ボア、前記第二孔部及び前記蓋部材で構成される前記第二ボア、並びに前記凹部及び前記蓋部材で構成される前記流路がそれぞれ形成される、ことを特徴とする。
【0012】
また、前記凹部の幅は、前記第一開口部の直径及び前記第二開口部の直径よりも小さいことが好ましい。
【0013】
また、一対の前記側部間の幅は、前記第一開口部の直径及び前記第二開口部の直径よりも小さいことが好ましい。
【0014】
また、前記蓋部材は、前記第一開口部を封止する第一蓋部と、第二開口部を封止する第二蓋部と、前記凹部を覆う第三蓋部とが、一体として形成されていることが好ましい。
【0015】
また、前記蓋部材は、前記第一開口部を封止する第一蓋部と、第二開口部を封止する第二蓋部と、前記凹部を覆う第三蓋部とが、別体として形成されており、前記接合工程において、前記第一蓋部と前記第三蓋部とを接合するとともに、前記第二蓋部と前記第三蓋部とを接合することが好ましい。
【0016】
また、前記準備工程において、前記第一外周部は、前記ボディ本体の外表面から立ち下がるとともに前記第一開口部に面する第一段差側面、及び前記第一段差側面から前記第一開口部に向けて内側に広がる第一段差底面を有し、前記第二外周部は、前記ボディ本体の外表面から立ち下がるとともに前記第二開口部に面する第二段差側面、及び前記第二段差側面から前記第二開口部に向けて内側に広がる第二段差底面を有し、一対の前記側部は、前記ボディ本体の外表面から立ち下がる側部段差側面、及び前記側部段差側面から前記凹部に向けて内側に広がる側部段差底面をそれぞれ有し、前記配置工程において、前記蓋部材が、前記第一段差底面に載置されるとともに、前記蓋部材の側面と前記第一段差側面とが突き合わされて第一突合部を形成し、前記蓋部材が、前記第二段差底面に載置されるとともに、前記蓋部材の側面と前記第二段差側面とが突き合わされて第二突合部を形成し、前記蓋部材が、一対の前記側部段差底面に載置されるとともに、前記蓋部材の側面と一対の前記側部段差側面とがそれぞれ突き合わされて一対の側部突合部を形成し、前記接合工程において、前記第一突合部、前記第二突合部、及び一対の前記側部突合部を接合することが好ましい。
【0017】
また、前記準備工程において、一対の前記側部は、前記ボディ本体の外表面から立ち下がる側部段差側面、及び前記側部段差側面から前記凹部に向けて内側に広がる側部段差底面をそれぞれ有し、前記配置工程において、前記蓋部材が、前記第一外周部の上端面と重ね合わせられて第一重合部を形成し、前記蓋部材が、前記第二外周部の上端面と重ね合わせられて第二重合部を形成し、前記蓋部材が、一対の前記側部段差底面に載置されるとともに、前記蓋部材の側面と前記側部段差側面とが突き合わされて一対の側部突合部を形成し、前記接合工程において、前記第一重合部、前記第二重合部、及び一対の前記側部突合部を接合することが好ましい。
【0018】
また、前記配置工程において、前記蓋部材が、前記第一外周部の上端面と重ね合わせられて第一重合部を形成し、前記蓋部材が、前記第二外周部の上端面と重ね合わせられて第二重合部を形成し、前記蓋部材が、一対の前記側部の上端面と重ね合わせられて一対の側部重合部を形成し、前記接合工程において、前記第一重合部、前記第二重合部、及び一対の前記側部重合部を接合することが好ましい。
【0019】
また、前記準備工程において、前記ボディ本体は、前記第一開口部の周端縁から前記第一孔部の内周側面に向けて外側に広がる第三段差底面を有し、前記第一外周部は、前記第三段差底面、及び前記第三段差底面から前記ボディ本体の外表面に向けて立ち上るとともに前記第一開口部に面する第三段差側面、を有し、前記ボディ本体は、前記第二開口部の周端縁から前記第二孔部の内周側面に向けて外側に広がる第四段差底面を有し、前記第二外周部は、前記第四段差底面、及び前記第四段差底面から前記ボディ本体の外表面に向けて立ち上るとともに前記第二開口部に面する第四段差側面、を有し、前記配置工程において、前記蓋部材の側面と前記第三段差側面とが突き合わされて第三突合部を形成し、前記蓋部材の側面と前記第四段差側面とが突き合わされて第四突合部を形成し、前記接合工程において、前記第三突合部、及び前記第四突合部を接合することが好ましい。
【0020】
また、前記準備工程において、一対の前記側部は、前記ボディ本体の外表面からそれぞれ立ち下がる側部段差側面、及び前記側部段差側面から前記凹部に向けて内側に広がる側部段差底面を有し、前記配置工程において、前記蓋部材が、一対の前記側部段差底面に載置されるとともに、前記蓋部材の側面と一対の前記側部段差側面とがそれぞれ突き合わされて一対の側部突合部を形成し、前記接合工程において、前記第三突合部、前記第四突合部、及び一対の前記側部突合部を接合することが好ましい。
【0021】
また、前記ボディ本体は、第一面と前記第一面とは異なる第二面とを有し、前記第一開口部は、前記第一面に設けられており、前記第二開口部は、前記第二面に設けられており、前記凹部は、前記第一面と前記第二面に連続して設けられていることが好ましい。
【0022】
また、前記ボディ本体が鋳造材からなり、前記ボディ本体を鋳造加工によって形成する際に前記凹部も形成することが好ましい。
【0023】
また、本発明は、ピストンを摺動させる第一ボア及び第二ボア、並びに前記第一ボアと前記第二ボアとの間を連通する流路を内部に有する金属製のキャリパボディであって、前記キャリパボディは、ボディ本体と蓋部材との摩擦攪拌接合又は拡散接合による接合によって形成されており、前記ボディ本体を貫通するとともに前記ボディ本体の内部に設けられる第一孔部及び第二孔部がそれぞれ前記ボディ本体の外表面に開口することで形成される第一開口部及び第二開口部を封止するとともに、前記ボディ本体の前記外表面において、前記第一開口部と前記第二開口部とに挟まれた部分が連続して凹んでなり、前記ボディ本体の外部に露出している有底の凹部を封止するように配置された前記蓋部材と、前記ボディ本体において、前記第一開口部を囲む第一外周部、前記第二開口部を囲む第二外周部、及び前記第一開口部と前記第二開口部とを連結する前記凹部の両側に位置する一対の側部とが、全周にわたって接合されており、前記キャリパボディは、前記凹部の内面、前記蓋部材に囲まれる前記流路を内部に有しており、前記第一ボアは、一方の開口部となる前記第一開口部が前記蓋部材によって閉塞されながら前記流路によって前記第二ボアと連通するとともに、前記第一開口部と対向する他方の開口部が開口しており、前記第二ボアは、一方の開口部となる前記第二開口部が前記蓋部材によって閉塞されながら前記流路によって前記第一ボアと連通するとともに、前記第二開口部と対向する他方の開口部が開口している、ことを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、第一空間及び第二空間を有するボディ本体と蓋部材との摩擦攪拌接合又は拡散接合による接合によって、前記第一空間と前記第二空間との間を連通する流路を内部に形成する金属製の接合体の製造方法において、前記ボディ本体を貫通する第一孔部及び第二孔部を備えるとともに、前記第一孔部の第一開口部と前記第二孔部の第二開口部に連続して凹んでなり外部に露出する凹部を備える前記ボディ本体と、前記第一開口部、前記第二開口部及び前記凹部を覆う蓋部材と、を準備する準備工程と、前記第一開口部、前記第二開口部、及び前記凹部を封止するように前記蓋部材を配置する配置工程と、前記蓋部材と、前記ボディ本体において、前記第一開口部を囲む第一外周部、前記第二開口部を囲む第二外周部、及び前記第一開口部と前記第二開口部とを連結する前記凹部の両側にそれぞれ位置する側部とを、全周にわたって接合する接合工程とを備え、前記接合工程によって、前記第一孔部及び前記蓋部材で構成される前記第一空間、前記第二孔部及び前記蓋部材で構成される前記第二空間、並びに前記凹部及び前記蓋部材で構成される前記流路がそれぞれ形成される、ことを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、第一空間及び第二空間、並びに前記第一空間と前記第二空間との間を連通する流路を内部に有する金属製の接合体であって、前記接合体は、ボディ本体と蓋部材との摩擦攪拌接合又は拡散接合による接合によって形成されており、前記ボディ本体を貫通するとともに前記ボディ本体の内部に設けられる第一孔部及び第二孔部がそれぞれ前記ボディ本体の外表面に開口することで形成される第一開口部及び第二開口部を封止するとともに、前記ボディ本体の前記外表面において、前記第一開口部と前記第二開口部とに挟まれた部分が連続して凹んでなり、前記ボディ本体の外部に露出している有底の凹部を封止するように配置された前記蓋部材と、前記ボディ本体において、前記第一開口部を囲む第一外周部、前記第二開口部を囲む第二外周部、及び前記第一開口部と前記第二開口部とを連結する前記凹部の両側に位置する一対の側部とが、全周にわたって接合されており、前記接合体は、前記凹部の内面、前記蓋部材に囲まれる前記流路を内部に有しており、前記第一空間は、一方の開口部となる前記第一開口部が前記蓋部材によって閉塞されながら前記流路によって前記第二空間と連通するとともに、前記第一開口部と対向する他方の開口部が開口しており、前記第二空間は、一方の開口部となる前記第二開口部が前記蓋部材によって閉塞されながら前記流路によって前記第一空間と連通するとともに、前記第二開口部と対向する他方の開口部が開口している、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るキャリパボディの製造方法、キャリパボディ及び接合体の製造方法並びに接合体によれば、ブレーキ液が流通する流路を容易に形成できるとともに、流路の設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るキャリパボディを示す平面図である。
【
図4】第一実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、配置工程前を示す分解図である。
【
図5】第一実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、配置工程を示す平面図である。
【
図9】第一実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、接合工程を示す平面図である。
【
図10】第一実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、接合工程を示す断面図である。
【
図11】第一実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、接合工程後を示す平面図である。
【
図12】第一実施形態の第一変形例に係るキャリパボディを示す平面図である。
【
図14】第一実施形態の第二変形例に係るキャリパボディを示す分解図である。
【
図15】第一実施形態の第三変形例に係る接合工程を示す断面図である。
【
図16】第一実施形態の第四変形例に係る接合工程を示す断面図である。
【
図17】第一実施形態の第五変形例に係る接合工程を示す断面図である。
【
図18】第一実施形態の第六変形例に係るキャリパボディを示す平面図である。
【
図19】第一実施形態の第六変形例に係るキャリパボディを示す側面図である。
【
図20】第一実施形態の第六変形例に係るキャリパボディを示す底面図である。
【
図21】第一実施形態の第六変形例に係るキャリパボディのボディ本体を示す平面図である。
【
図22】第一実施形態の第六変形例に係るキャリパボディのボディ本体を示す側面図である。
【
図23】第一実施形態の第六変形例に係るキャリパボディのボディ本体を示す底面図である。
【
図24】第一実施形態の第六変形例に係るキャリパボディの蓋部材を示す平面図である。
【
図25】第一実施形態の第六変形例に係るキャリパボディの蓋部材を示す側面図である。
【
図26】第一実施形態の第六変形例に係るキャリパボディの製造方法の配置工程を示す平面図である。
【
図27】第一実施形態の第六変形例に係るキャリパボディの製造方法の配置工程を示す底面図である。
【
図28】本発明の第二実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、配置工程前を示す分解図である。
【
図29】第二実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、配置工程を示す平面図である。
【
図32】第二実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、接合工程を示す平面図である。
【
図33】第二実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、接合工程後を示す平面図である。
【
図36】本発明の第三実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、配置工程前を示す分解図である。
【
図37】第三実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、配置工程を示す平面図である。
【
図38】
図37のXXXVIII-XXXVIII矢視図である。
【
図40】第三実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、接合工程を示す平面図である。
【
図41】第三実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、接合工程後を示す平面図である。
【
図44】本発明の第四実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、配置工程前を示す分解図である。
【
図45】第四実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、配置工程前を示す
図44のXLV-XLV矢視図である。
【
図46】第四実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、配置工程を示す断面図である。
【
図47】第四実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、配置工程を示す平面図である。
【
図48】第四実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、接合工程を示す平面図である。
【
図49】第四実施形態に係るキャリパボディの製造方法において、接合工程後を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。実施形態及び変形例における構成要素は、一部又は全部を適宜組み合わせることができる。文中の方向は、説明のために便宜上用いるものであって、本発明を限定するものではない。なお、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであり、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0029】
[1.第一実施形態]
[1-1.第一実施形態]
[1-1-1.キャリパボディ(接合体)]
本発明の第一本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、キャリパボディ(接合体)1を例示する。キャリパボディ(接合体)1は、ボディ本体2と蓋部材3とを備えている。キャリパボディ1は、車両を制動させる装置の一部である。キャリパボディ1は、4つのピストンP及び2つのブレーキパッドBを保持し、ブレーキ液(作動油)を介して各ピストンPを作動させるための部材である。ブレーキパッドB,Bの間には、ブレーキディスクDが配設される。ボディ本体2と蓋部材3とは摩擦攪拌接合で一体化されている。
【0030】
ボディ本体2は、
図1及び
図2に示すように、インナー部11と、アウター部12と、第一ブリッジ部13と、第二ブリッジ部14と、連通路15と、パッド開口部18と、を備えている。追って詳述するが、
図2に示すように、連通路15は、ブレーキ液(作動油)が流通する部位であって、パッド開口部18の周方向に沿って形成されている。連通路15は、図中の時計回りに第一流路15A、第二流路15B、第三流路15C、第四流路15D、第五流路15E、第六流路15F、第七流路15G及び第八流路15Hを備えている。第一流路15Aは、請求項の「第一ボアと第二ボアとの間を連通する流路」に相当する。
【0031】
ボディ本体2は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅合金等の摩擦攪拌可能な金属で形成されている。ボディ本体2は、第一アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第一アルミニウム合金は、例えば、JISH5302 AC4C、AC4CH;JISH5302 ADC12(Al-Si-Cu系);等のアルミニウム合金鋳造材を用いることができる。本実施形態では、ボディ本体2は、AC4CHで形成されている。
【0032】
インナー部11は、ブレーキディスクDを挟んで一方側を構成する部位である。インナー部11は、第一ボア(第一空間)21と、第二ボア(第二空間)22と、第一流路15Aと、第二流路15Bと、第八流路15Hと、ブレーキ液用連通孔16と、ブリーダー用連通孔17とを備えている。第一ボア(第一空間)21と、第二ボア(第二空間)22とは、ディスク回転方向にそれぞれ併設されている。
【0033】
第一ボア21は、円柱状の中空部を備えた有底の穴である。第一ボア21は、底面21aと、底面21aの外縁から立ち下がる内周側面21bとを備えている。第一ボア21の上部は蓋部材3で塞がれることで底面21aを構成しており、下部はパッド開口部18に開口している。第一ボア21の内部には、ピストンPが配設されている。第一ボア21は、ピストンPを摺動させてブレーキディスクDに近接又は離間する方向に移動させるように保持することができる。
【0034】
第二ボア22は、円柱状の中空部を備えた有底の穴である。第二ボア22は、第一ボア21の左側に間隔をあけて並設されている。第二ボア22は、底面22aと、底面22aの外縁から立ち下がる内周側面22bとを備えている。第二ボア22の上部は蓋部材3で塞がれることで底面22aを構成しており、下部はパッド開口部18に開口している。第二ボア22の内部には、ピストンPが配設されている。第二ボア22は、ピストンPを摺動させてブレーキディスクDに近接又は離間する方向に移動させるように保持することができる。
【0035】
第一流路15Aは、第一ボア21の内周側面21bと第二ボア22の内周側面22bとを連結する流路である。第一流路15Aは、第一ボア21及び第二ボア22の最上端(ボディ本体2の最外側)同士を連結するように形成されている。換言すると、第一流路15Aは、第一ボア21及び第二ボア22の各底面21a,22aと同じ高さ位置に形成されている。
【0036】
第二流路15Bは、第一ボア21の内周側面21bと第三流路15Cとを連結する流路である。第八流路15Hは、第二ボア22の内周側面22bと第七流路15Gとを連結する流路である。ブレーキ液用連通孔16は、ブレーキ液が流出入する孔であって、第二流路15Bの中間部に連結されている。ブレーキ液用連通孔16は、上下方向に延設され、上方に開口している。ブレーキ液用連通孔16の開口には、ピストンPを摺動させるためのブレーキ液が出入りするホース(図示省略)が接続される。
【0037】
ブリーダー用連通孔17は、第三流路15Cの端部に連通している。ブリーダー用連通孔17は、ブレーキ液の交換やエア抜きのために用いられる孔である。ブリーダー用連通孔17は、上下方向に延設され、上方に開口している。ブリーダー用連通孔17の開口には、ブリーダープラグ(図示省略)が接続される。
【0038】
アウター部12は、ブレーキディスクDを挟んでインナー部11とは他方側を構成する部位である。アウター部12は、第三ボア(第三空間)23と、第四ボア(第四空間)24と、第四流路15Dと、第五流路15Eと、第六流路15Fと、を備えている。第三ボア23と、第四ボア24とは、ディスク回転方向にそれぞれ併設されている。第一ボア21と第三ボア23とが、パッド開口部18を挟んで対向配置されている。第二ボア22と第四ボア24とが、パッド開口部18を挟んで対向配置されている。
【0039】
第三ボア23は、円柱状の中空部を備えた有底の穴である。第三ボア23は、底面23aと、底面23aの外縁から立ち上がる内周側面23bとを備えている。第三ボア23は、第一ボア21に対向しており、上部がパッド開口部18に開口している。第三ボア23の内部には、ピストンPが配設されている。第三ボア23は、ピストンPを摺動させてブレーキディスクDに近接又は離間する方向に移動させるように保持することができる
【0040】
第四ボア24は、円柱状の中空部を備えた有底の穴である。第四ボア24は、第三ボア23の左側に間隔をあけて並設されている。第四ボア24は、底面24aと、底面24aの外縁から立ち上がる内周側面24bとを備えている。第四ボア24は、第二ボア22に対向し、上部がパッド開口部18に開口している。第四ボア24の内部には、ピストンPが配設されている。第四ボア24は、ピストンPを摺動させてブレーキディスクDに近接又は離間する方向に移動させるように保持することができる。
【0041】
第四流路15Dは、第三流路15Cの端部と第三ボア23の内周側面23bとを連結する流路である。第五流路15Eは、第三ボア23の内周側面23bと、第四ボア24の内周側面24bとを連結する流路である。第五流路15Eは、第三ボア23及び第四ボア24の下部(底面23a,24aの近傍)に形成されている。第六流路15Fは、第四ボア24の内周側面24bと第七流路15Gの端部とを連結する流路である。
【0042】
第一ブリッジ部13は、インナー部11とアウター部12との右側を連結する部位である。第一ブリッジ部13には、第二流路15Bと第四流路15Dとを連結する第三流路15Cが形成されている。第三流路15Cは、パッド開口部18に連続するディスク溝DMに露出しない位置に形成されている。
【0043】
第二ブリッジ部14は、インナー部11とアウター部12との左側を連結する部位である。第二ブリッジ部14には、第六流路15Fと第八流路15Hとを連結する第七流路15Gが形成されている。第七流路15Gは、パッド開口部18に連続するディスク溝DMに露出しない位置に形成されている。
【0044】
連通路15は、ブレーキ液を流通させる連通孔である。前記したように、連通路15は、第一ボア21、第二ボア22、第三ボア23及び第四ボア24を連結するように構成され、ブレーキ液(作動油)が充填されている。連通路15の形状は、第一流路15Aが断面視矩形であり、その他は断面視円形になっている。連通路15に充填されたブレーキ液の油圧により、各ピストンPを突出させ、ブレーキパッドBを介してブレーキディスクDを挟持する。これにより、制動力を発生させることができる。パッド開口部18は、インナー部11とアウター部12とによって挟まれて、ボディ本体2の中央に平面視矩形状に開口する孔である。パッド開口部18には、ブレーキパッドB及びブレーキディスクDが配設される。
【0045】
図1~3に示すように、ボディ本体2と蓋部材3とは第一外周部31、第二外周部32及び一対の側部33がそれぞれ摩擦攪拌接合され、一体化されている。摩擦攪拌接合された部位には、塑性化領域Wが形成されている。摩擦攪拌接合については、追って詳述する。
【0046】
[1-1-2.キャリパボディの製造方法(接合体の製造方法)]
次に、本実施形態に係るキャリパボディの製造方法(接合体の製造方法)について説明する。キャリパボディの製造方法では、準備工程と、配置工程と、接合工程とを行う。
【0047】
<準備工程>
準備工程は、
図4に示すように、ボディ本体2と、蓋部材3とを準備する工程である。準備工程では、例えば、鋳造加工によりボディ本体2を成形する。板状の部材から、打ち抜き加工、レーザー加工、切削加工、プレス加工等により蓋部材3を成形する。準備工程では、ボディ本体2に第一孔部41、第二孔部42、第三ボア23、第四ボア24(
図2参照)及び凹部51を成形する。第一孔部41及び第二孔部42は、円柱状の中空部を有する無底の孔である。
【0048】
第一孔部41及び第二孔部42は、ボディ本体2のインナー部11を貫通するとともに、ボディ本体2のインナー部11の内部に設けられている。第一孔部41及び第二孔部42の内径は同一になっている。第一孔部41の一方側(上側)には第一開口部45が形成され、第二孔部42の一方側(上側)には第二開口部46が形成されている。第一孔部41及び第二孔部42は、インナー部11の外表面11aに形成された第一開口部45及び第二開口部46をそれぞれ一方の開口部にするとともに、第一開口部45及び第二開口部46とそれぞれ対向する他方の開口部がパッド開口部18に開口している。インナー部11の外表面11aにおいて、第一開口部45を囲む第一外周部31が設けられており、第二開口部46を囲む第二外周部32が設けられている。
【0049】
第一外周部31は、インナー部11の外表面11aから立ち下がるとともに第一開口部45に面する第一段差側面31a及び第一段差側面31aから第一開口部45に向けて内側に広がる第一段差底面31bを有する。前記したように本実施形態では、第一外周部31に段差部を備えているため、請求項の「第一開口部の直径」とは、第一段差側面31aの直径を意味する。
【0050】
第二外周部32は、インナー部11の外表面11aから立ち下がるとともに第二開口部46に面する第二段差側面32a及び第二段差側面32aから第二開口部46に向けて内側に広がる第二段差底面32bを有する。前記したように本実施形態では、第二外周部32に段差部を備えているため、請求項の「第二開口部の直径」とは、第二段差側面32aの直径を意味する。
【0051】
凹部51は、第一孔部41と第二孔部42とを連結する一定幅の直線状の凹溝である。凹部51は、第一孔部41の第一開口部45と第二孔部42の第二開口部46に連続して凹んでなり外部に露出している。凹部51は、蓋部材3で覆われることにより、第一流路15Aとなる部位である。凹部51は、底面51aと、底面51aの両側から立ち上がる側面51b,51bで形成されている(
図8参照)。凹部51は、本実施形態では断面形状が矩形になっているが、半円形、三角形など他の形状であってもよい。
【0052】
凹部51の両側には側部33,33がそれぞれ形成されている。側部33は、インナー部11の外表面11aから立ち下がる側部段差側面33aと、側部段差側面33aから凹部51に向けて内側に広がる側部段差底面33bとをそれぞれ有する。側部段差側面33a,33aは、凹部51を挟んで面するように形成されている。側部段差底面33b、第一段差底面31b及び第二段差底面32bは、いずれも同じ高さ位置に形成され、面一になっている。凹部51の底面51aは、側部段差底面33bよりも一段下がった位置に形成されている(
図8参照)。また、第一段差側面31a、第二段差側面32a及び側部段差側面33aの高さは、いずれも同一になっている。
【0053】
第一孔部41、第二孔部42、第一外周部31、第二外周部32、側部33,33及び凹部51は、本実施形態ではボディ本体2を鋳造する際に成形されているが、例えば、鋳造を行った後に切削加工等により成形してもよい。
【0054】
また、
図2に示すように、連通路15のうち、第一流路15A以外の流路は、準備工程で形成する。成形方法については特に制限されないが、例えば、本実施形態では、第二流路15B、第四流路15D、第五流路15E、第六流路15F及び第八流路15Hは、崩壊性中子を用いて鋳造加工により成形する。一方、第三流路15C及び第七流路15Gについては、ボディ本体2の上側からドリルを挿入して穿設する。つまり、第二流路15Bの端部と第四流路15Dの端部とが連通するように、ドリルで第三流路15Cを形成する。また、第六流路15Fの端部と第八流路15Hの端部とが連通するように、ドリルで第七流路15Gを形成する。また、ブレーキ液用連通孔16は、ボディ本体2の上側からドリルを挿入して穿設する。つまり、ブレーキ液用連通孔16が、インナー部11の外表面11aから第二流路15Bに到達して連通するように、ドリルでブレーキ液用連通孔16を形成する。なお、第七流路15Gを形成した後に、第七流路15Gの開口部は封止される。
【0055】
蓋部材3は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅合金等の摩擦攪拌可能な金属で形成されている。蓋部材3は、第二アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第二アルミニウム合金は、第一アルミニウム合金よりも硬度の低い材料である。第二アルミニウム合金は、例えば、JIS A1050,A1070,A1100等の1000系アルミニウム合金;A6061,A6063等の6000系アルミニウム合金;等のアルミニウム合金展伸材を用いることができる。本実施形態では、蓋部材3は、A6061で形成されている。
【0056】
第一蓋部61は、円形を呈し、第一開口部45を覆う部位である。第一蓋部61の外径は、第一孔部41の内径よりも大きく、第一段差側面31aの内径(直径)と同一になっている。第二蓋部62は、円形を呈し、第二開口部46を覆う部位である。第二蓋部62の外径は、第二孔部42の内径よりも大きく、第二段差側面32aの内径(直径)と同一になっている。第三蓋部63は、一定幅の直線状を呈し、凹部51を覆う部位である。第三蓋部63は、第一蓋部61と第二蓋部62の中央部分を連結する部位である。第三蓋部63の長さは、凹部51の長さよりも若干短くなっている。第三蓋部63の幅は、凹部51の幅よりも大きくなっている。第三蓋部63の幅は、第一蓋部61及び第二蓋部62の外径よりも小さくなっており、側部段差側面33a,33a間の距離と略同一になっている。前記したように本実施形態では側部33に段差部を備えているため、請求項における「一対の側部間の幅」とは、側部段差側面33a,33a間の距離を意味している。本実施形態の蓋部材3は、第三蓋部63と、第三蓋部63を挟んで両側に第一蓋部61及び第二蓋部62とを有しており、第三蓋部63の幅は第一蓋部61及び第二蓋部62の直径よりも小さくなっている、いわゆるひょうたん型、ダンベル型の形状となっている。
【0057】
<配置工程>
配置工程は、ボディ本体2に蓋部材3を配置する工程である。
図5、
図6、
図7、及び
図8に示すように、配置工程では、第一孔部41、第二孔部42及び凹部51を覆うように、蓋部材3を配置する。言い換えれば、第一孔部41、第二孔部42及び凹部51を、蓋部材3によって覆うことで封止するようにして配置する。このとき、蓋部材3が、第一段差底面31b、第二段差底面32b、及び側部段差底面33b,33bに載置される。これにより、
図5に示すように、第一突合部J1、第二突合部J2及び一対の側部突合部J3が形成される。各突合せ部は、対向する面同士が接触するか、わずかな隙間を開けて対向している。
【0058】
図6に示すように、インナー部11の第一段差側面31aと、第一蓋部61の側面61cとが突き合わされて第一突合部J1が形成される。また、インナー部11の第一段差底面31bと、第一蓋部61の下面61bとが重ね合わされて第一重合部K1が形成される。インナー部11の外表面11aと、第一蓋部61の上面61aとは面一になっている。
【0059】
図7に示すように、インナー部11の第二段差側面32aと、第二蓋部62の側面62cとが突き合わされて第二突合部J2が形成される。また、インナー部11の第二段差底面32bと、第二蓋部62の下面62bとが重ね合わされて第二重合部K2が形成される。インナー部11の外表面11aと、第二蓋部62の上面62aとは面一になっている。
【0060】
図8に示すように、インナー部11の側部段差側面33a,33aと、第三蓋部63の側面63c,63cとがそれぞれ突き合わされて側部突合部J3,J3が互いに平行に形成される。また、インナー部11の側部段差底面33b,33bと、第三蓋部63の下面63bとが重ね合わされて凹部51の両側に第三重合部K3が形成される。インナー部11の外表面11aと、第三蓋部63の上面63aとは面一になっている。
【0061】
なお、本実施形態では、インナー部11の外表面11aと蓋部材3の各上面61a,62a,63aは面一としたが、蓋部材3の板厚を大きくして外表面11aから突出するように設定してもよい。これにより、後記する接合工程を行うときに接合部が金属不足となるのを防ぎやすくなる。
【0062】
<接合工程>
接合工程は、後記する回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う工程である。本実施形態では、第一突合部J1、第二突合部J2、及び一対の側部突合部J3,J3を摩擦攪拌接合する。接合工程では、
図9に示すように、インナー部11の外表面11aのうち一方の側部突合部J3の近傍に設定した開始位置SP1から回転する回転ツールFを挿入し、一方の側部突合部J3、第一突合部J1、他方の側部突合部J3、第二突合部J2、一方の側部突合部J3をこの順番でなぞるように回転ツールFを相対移動させて塑性化領域Wをオーバーラップさせる。その後、一方の側部突合部J3の近傍に設定した終了位置EP1で回転ツールFを離脱させる。つまり、回転ツールFを途中で離脱させることなく、開始位置SP1から終了位置EP1まで連続して摩擦攪拌接合を行う。
【0063】
図10に示すように、回転ツールFは、円柱状の連結部F1と、連結部F1から垂下する攪拌ピンF2とを備えている。攪拌ピンF2は、先細り形状になっており、外周面に螺旋溝が刻設されている。螺旋溝は、右巻き又は左巻きのどちらでもよいが、本実施形態では左巻き(上方から見て反時計回り)になっている。
【0064】
螺旋溝が左巻きの場合に回転ツールFを右回転させる場合、又は、螺旋溝が右巻きの場合に回転ツールFを左回転させる場合、摩擦攪拌によって軟化された塑性流動材が螺旋溝に導かれて攪拌ピンF2の先端側に流動する。これにより、摩擦攪拌時に塑性流動材が外部に溢れ出るのを防ぐことができ、バリの発生を抑制することができる。
【0065】
接合工程では、攪拌ピンF2のみをインナー部11及び蓋部材3に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。つまり、攪拌ピンF2の基端側を露出させた状態で回転ツールFを相対移動させる。回転ツールFの挿入深さは、開始位置SP1から一方の側部突合部J3に設定した中間位置S1(
図9参照)まで相対移動させつつ徐々に攪拌ピンF2を押し込んでいく。中間位置S1で所定の深さに達したら、当該深さを保った状態で側部突合部J3に沿って回転ツールFを相対移動させる。
【0066】
所定の深さは、適宜設定すればよいが、本実施形態では回転ツールFの移動軌跡に形成される塑性化領域Wの最深部が側部段差底面33bに達する程度に設定している。第一突合部J1、他方の側部突合部J3、第二突合部J2においても、一定の深さを維持した状態で摩擦攪拌接合する。回転ツールFを蓋部材3周りに一周させた後、一方の側部突合部J3上で塑性化領域Wをオーバーラップさせ、一方の側部突合部J3に設定した中間位置S2(
図9参照)に達したら、終了位置EP1に向けて回転ツールFを相対移動させる。中間位置S2から終了位置EP1までは、回転ツールFを相対移動させつつ、徐々に回転ツールFを上昇させて、ボディ本体2から回転ツールFを離脱させる。これにより、
図11に示すように、ボディ本体2と蓋部材3とが一体となったキャリパボディ1が形成される。また、第一孔部41及び蓋部材3で構成される第一ボア21が形成される。また、第二孔部42及び蓋部材3で構成される第二ボア22が形成される。また、凹部51の内面(底面51a、側面51b,51b)と蓋部材3とで第一流路15Aが形成される。
【0067】
より詳しくは、第一ボア(第一空間)21は、一方の開口部となる第一開口部45が蓋部材3によって閉塞されながら第一流路15Aによって第二ボア(第二空間)22と連通するとともに、第一開口部45と対向する他方の開口部がパッド開口部18に開口している。
また、第二ボア(第二空間)22は、一方の開口部となる第二開口部46が蓋部材3によって閉塞されながら第一流路15Aによって第一ボア(第一空間)21と連通するとともに、第二開口部46と対向する他方の開口部がパッド開口部18に開口している。
【0068】
<作用効果>
以上説明した本実施形態に係るキャリパボディ(接合体)1及びキャリパボディの製造方法(接合体の製造方法)によれば、ボディ本体2に凹部51が設けられており、蓋部材3と凹部51の両側に位置する側部33,33を摩擦攪拌接合することで、凹部51と蓋部材3とで囲まれる流路(第一流路15A)を形成することができる。これにより、キャリパボディ1に形成される流路の設計自由度を高めることができる。
【0069】
ここで、例えば、ドリルによって連通孔を穿設しようとするとドリルとボディ本体とが干渉するため流路をキャリパボディの外側に近い位置に設けることが困難であった。本実施形態によれば、凹部51を浅く形成するとともに蓋部材3を薄くすることで、流路(第一流路15A)をキャリパボディ1の外側に近い位置に設けることができる。これにより、ピストンPの可動域を増やすことができる。
【0070】
また、ドリルによって連通孔を穿設しようとすると流路の断面形状は円形状のみとなっていたが、本実施形態によれば、凹部の形状を自由に形成することができる。これにより、例えば、凹部を幅広に形成することでブレーキ液が流路(第一流路15A)を流れる際の抵抗を下げることができる。
【0071】
また、ドリルによって連通孔を穿設しようとすると、ドリルを安定して挿入させるためには第一孔部41及び第二孔部42の壁面に対して垂直な方向からドリルを挿入した方が有利となる。このため、連通孔の形成位置が、第一ボア21と第二ボア22との間において、平面視で第一ボア21の中心と第二ボア22の中心とを通過する直線上に位置するセンター部分となっていた。本実施形態によれば、凹部51の形成位置を適宜変更できるため、流路(第一流路15A)の位置を容易に変更することができる。これにより、摩擦攪拌接合のルートの自由度も高めることができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、第一開口部45、第二開口部46及び凹部51を封止する形状を有する蓋部材3を用いて、蓋部材3と、第一外周部31、第二外周部32及び側部33,33とを、全周にわたって摩擦攪拌接合する。これにより、第一外周部31、第二外周部32、及び側部33,33のそれぞれについて、個別に一周させて摩擦攪拌接合した場合に形成される塑性化領域が凹部51を横切ることで第一流路15Aが塞がれてしまう事態を避けることができる。したがって、第一開口部45及び第二開口部46を封止しながら流路(第一流路15A)を形成するともに、凹部51を横切るのを避けながら摩擦攪拌接合を行うことで、当該流路が摩擦攪拌接合によって生じる塑性流動材によって塞がれてしまうことを防ぐことができる。
【0073】
また、本実施形態では、凹部51の幅は、第一開口部45の外径及び第二開口部46の直径よりも小さくなっている。凹部51(第一流路15A)の幅が大きくなると、面圧が大きくなる(接合部に作用する力が大きくなる)ため、凹部51の幅が狭い方が、面圧が小さくなり好ましい。なお、蓋部材3は、本実施形態では、第三蓋部63の幅を第一蓋部61及び第二蓋部62よりも小さくしたが、蓋部材3は長丸形状であってもよい。つまり、凹部51の幅は第一開口部45及び第二開口部46の内径よりも小さく、かつ、側部33,33の幅は第一開口部45及び第二開口部46の内径と同程度であってもよい。
【0074】
また、本実施形態では、側部33,33の幅(側部段差側面33a,33a間の距離=第三蓋部63の幅)は、第一開口部45及び第二開口部46の直径よりも小さくなっている。そして、第三蓋部63の幅は、第一蓋部61及び第二蓋部62の直径よりも小さくなっている。これにより、例えば、蓋部材3をプレス成形などで成形する際に、ずらして配置するなどすることで材料取りの歩留まりを向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、蓋部材3の第一蓋部61,第二蓋部62及び第三蓋部63が一体形成されている。これにより、蓋部材3を容易に成形することができるとともに、配置工程も容易になる。
【0076】
また、本実施形態では、第一外周部31,第二外周部32及び側部33,33に段差部(段差側面、段差底面)を設けている。当該段差部があることで、配置工程において蓋部材3の位置決めを容易に行うことができる。また、段差部を設けることで、接合工程の際に段差部が防波堤のような役割となって、塑性流動材が飛び散り難くなる。また、段差部を設けることで、蓋部材3をボディ本体2に圧入することができるため、蓋部材3を仮固定することができる。
【0077】
また、凹部51はボディ本体2の鋳造加工後に切削等の後加工を施すことで形成してもよいが、本実施形態のように鋳造加工によって凹部51をボディ本体2と一体形成することで、凹部51の形成工程を省いて生産効率を高めることができる。
【0078】
[1-2.第一実施形態の第一変形例]
第一実施形態の第一変形例は、
図12及び
図13に示すように、連通路15の成形方法が第一実施形態と相違する。第一実施形態と同じ部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
図12及び
図13に示すように、本変形例に係るキャリパボディ1Aは、ボディ本体2Aと蓋部材3とを備えている。
図13に示すように、ボディ本体2Aの連通路15は、第一実施形態と同様に、第一流路15A、第二流路15B、第三流路15C、第四流路15D、第五流路15E、第六流路15F、第七流路15G及び第八流路15Hを備えている。
【0080】
本変形例に係るキャリパボディの製造方法の準備工程では、鋳造加工によりボディ本体2Aを成形する。その際、連通路15のうち第一流路15A以外の流路は、全て崩壊性中子を用いて成形している(いわゆる鋳抜き穴)。なお、第一流路15A以外の流路は、アルミパイプ鋳包みによって、アルミパイプで形成してもよい。つまり、第一流路15A以外の流路の成形方法は、従来の成形方法から適宜選択することができる。
【0081】
[1-3.第一実施形態の第二変形例]
第一実施形態の第二変形例は、
図14に示すように、蓋部材3Bの構成が第一実施形態と相違する。第一実施形態と同じ部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
図14に示すように、本変形例に係るキャリパボディ1Bは、ボディ本体2と、蓋部材3Bとを備えている。蓋部材3Bは、第一蓋部61Bと、第二蓋部62Bと、第三蓋部63Cとが分割して構成されている。第一蓋部61B及び第二蓋部62Bは円板状を呈する。第三蓋部63Bは、略矩形であって、その両端部が第一蓋部61B及び第二蓋部62Bの外縁に沿って円弧状に凹んでいる。
【0083】
本変形例に係るキャリパボディの製造方法の配置工程では、第一外周部31に第一蓋部61Bを配置し、第二外周部32に第二蓋部62Bを配置し、側部33に第三蓋部63Bを配置する。
【0084】
また、接合工程では、第一突合部J1、第二突合部J2及び側部突合部J3に加え、第二蓋部62Bと第三蓋部63Bとで形成された突合部を摩擦攪拌接合し、さらに、第二蓋部62Bと第三蓋部63Bとで形成された突合部を摩擦攪拌接合する。なお、これらの摩擦攪拌接合を行う際には、流路(第一流路15A)を塞がないように回転ツールFの挿入深さを設定する。本変形例のように、蓋部材3Bを分割構成としてもよい。
【0085】
[1-4.第一実施形態の第三変形例]
第一実施形態の第三変形例は、
図15に示すように、側部突合部J3周りの接合工程の形態が第一実施形態と相違する。第一実施形態と同じ部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
本変形例に係るキャリパボディの製造方法の接合工程では、側部突合部J3に代えて、第三重合部K3を摩擦攪拌接合している。つまり、本変形例の接合工程では、第三蓋部63の上面63aから攪拌ピンF2を挿入し、攪拌ピンF2の先端を側部段差底面33bに位置させる。これにより、第三重合部K3が摩擦攪拌接合される。回転ツールFの攪拌ピンF2の先端は、第三重合部K3が摩擦攪拌接合されていればよく、必ずしも側部段差底面33bに達していなくてもよい。当該摩擦攪拌接合は、凹部51を挟んで両側で行う。これにより、凹部51の両側に塑性化領域Wが形成される。本変形例のように、側部33,33においては、側部突合部J3に代えて第三重合部K3を摩擦攪拌接合してもよい。
【0087】
[1-5.第一実施形態の第四変形例]
第一実施形態の第四変形例は、
図16に示すように、側部突合部J3周りの接合工程の形態が第一実施形態と相違する。第一実施形態と同じ部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
本変形例に係るキャリパボディの製造方法の接合工程では、側部突合部J3に代えて、第三重合部K3を摩擦攪拌接合している。つまり、本変形例の接合工程では、第三蓋部63の上面63aから攪拌ピンF2を挿入し、攪拌ピンF2を凹部51の側面51bに接するように位置させる。攪拌ピンF2の挿入深さは適宜設定すればよいが、例えば、塑性化領域Wが凹部51の底面51aに達するように設定する。当該摩擦攪拌接合は、凹部51を挟んで両側で行う。攪拌ピンF2の挿入位置は、摩擦攪拌により凹部51が塑性流動材で塞がれない位置に設定する。これにより、第三重合部K3が摩擦攪拌接合されるとともに、凹部51の底面51aと、塑性化領域W,Wとで流路(第一流路15A)が形成される。このように、流路(第一流路15A)は、底面51aと塑性化領域W,Wと、蓋部材3とで囲まれる空間であってもよい。
【0089】
[1-6.第一実施形態の第五変形例]
第一実施形態の第五変形例は、
図17に示すように、側部突合部J3周りの接合工程の形態が第一実施形態と相違する。第一実施形態と同じ部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0090】
本変形例に係るキャリパボディの製造方法の接合工程では、側部突合部J3及び第三重合部K3の両方に摩擦攪拌接合している。本変形例の接合工程では、インナー部11の外表面11aから斜めに攪拌ピンF2を挿入し、側部突合部J3、第三重合部K3、側面51b及び底面51aに対して摩擦攪拌接合を行う。当該摩擦攪拌接合は、凹部51を挟んで両側で行う。これにより、塑性化領域W,Wと、側面51b,51bの一部と第三蓋部63の下面63bとで囲まれた流路(第一流路15A)が形成される。このように、流路(第一流路15A)は、底が塑性化領域W,Wで形成されるようにしてもよい。
【0091】
[1-7.第一実施形態の第六変形例]
[1-7-1.キャリパボディ及び接合体]
第一実施形態の第六変形例は、
図18~20に示すように、主に蓋部材103の形状、第一開口部145、第二開口部146、第三開口部147、第四開口部148、及び第二凹部152の配置関係、並びに接合工程の形態が第一実施形態と相違する。第一実施形態と同じ部分については説明を省略し、異なる部分を中心に説明を省略する。
【0092】
本変形例に係るキャリパボディ101は、ボディ本体102と、蓋部材103とを備えている。ボディ本体102と、蓋部材103とは摩擦攪拌接合で一体化されている。ボディ本体102は、インナー部111と、アウター部112と、第一ブリッジ部113と、第二ブリッジ部114と、連通路115と、パッド開口部18と、を備えている。
図19に示すように、本変形例に示す連通路115は、第一ボア21、第二ボア22、第三ボア23及び第四ボア24を周方向に亘って連結する連通孔である。連通路115は、第一流路115A、第二流路115B、第三流路115C、第四流路115D、第五流路115E、第六流路115F、第七流路115G、第八流路115Hを備えている。このうち、第一流路115A、第五流路115E、第六流路115F、第七流路115G、第八流路115Hをボディ本体102と蓋部材103とを摩擦攪拌接合して形成した点で、第一実施形態と相違する。
【0093】
図19に示すように、インナー部111において、第一ボア(第一空間)21と、第二ボア(第二空間)22とは、ディスク回転方向にそれぞれ併設されている。アウター部112において、第三ボア(第三空間)23と、第四ボア(第四空間)24とは、ディスク回転方向にそれぞれ併設されている(図示略)。第一ボア(第一空間)21と第三ボア(第三空間)23とが、パッド開口部18を挟んで対向配置されている。第二ボア(第二空間)22と第四ボア(第四空間)24とが、パッド開口部18を挟んで対向配置されている。
【0094】
キャリパボディ101のインナー部111側は、
図18に示すように、第一外周部131、第二外周部132、第一側部133,133及びバイパス部134,134においてボディ本体102と蓋部材103とが摩擦攪拌接合されている。摩擦攪拌接合された部位には、塑性化領域Wが形成されている。また、
図20に示すように、キャリパボディ101のアウター部112側は、第三外周部135、第四外周部136及び第二側部137,137においてボディ本体102と蓋部材103とが摩擦攪拌接合されている。
【0095】
[1-7-2.キャリパボディの製造方法(接合体の製造方法)]
本変形例に係るキャリパボディの製造方法では、準備工程と、配置工程と、接合工程とを行う。
【0096】
<準備工程>
準備工程は、ボディ本体102と、蓋部材103とを準備する工程である。準備工程では、
図21~23に示すように、鋳造加工によりボディ本体102を成形する。成形方法については特に制限されないが、例えば、
図22に示すように、第二流路115B、第三流路115C及び第四流路115Dは、崩壊性中子を用いて鋳造加工により予め成形する。また、板状の部材から、打ち抜き加工、レーザー加工、切削加工、プレス加工等と、曲げ加工とにより蓋部材103を成形する。準備工程では、ボディ本体102に第一孔部41、第二孔部42、第三孔部43、第四孔部44、バイパス部134,第一凹部151、第二凹部152、及び第三凹部153を成形する。第一孔部41、第二孔部42、第三孔部43、及び第四孔部44は、円柱状の中空部を有する無底の孔である。
【0097】
また、
図21、
図22に示すように、第一孔部41及び第二孔部42は、ボディ本体102のインナー部111を貫通するとともに、ボディ本体102のインナー部111の内部に設けられている。第一孔部41及び第二孔部42は、インナー部111の外表面111aに形成された第一開口部145及び第二開口部146をそれぞれ一方の開口部にするとともに、第一開口部145及び第二開口部146とそれぞれ対向する他方の開口部がパッド開口部18に開口している。ボディ本体102のインナー部111において、第一開口部145を囲む第一外周部131が設けられており、第二開口部146を囲む第二外周部132が設けられている。第一外周部131、第二外周部132及び第一側部133にそれぞれ段差部を設ける。第一孔部41の一方側(上側)には第一開口部145が形成され、第二孔部42の一方側(上側)には第二開口部146が形成されている。
【0098】
第一外周部131は、インナー部111の外表面111aから立ち下がるとともに第一開口部145に面する第一段差側面131a及び第一段差側面131aから第一開口部145に向けて内側に広がる第一段差底面131bを有する。
【0099】
第二外周部132は、インナー部111の外表面111aから立ち下がるとともに第二開口部146に面する第二段差側面132a及び第二段差側面132aから第二開口部146に向けて内側に広がる第二段差底面132bを有する。
【0100】
第一凹部151は、第一孔部41と第二孔部42とを連結する一定幅の直線状の凹溝である。第一凹部151は、第一孔部41の第一開口部145と第二孔部42の第二開口部146に連続して凹んでなり外部に露出している。第一凹部151は、蓋部材103で覆われることにより、第一流路115Aとなる部位である。第一凹部151は、底面151aと、底面151aの両側から立ち上がる側面151b,151bで形成されている。第一凹部151の両側には第一側部133,133がそれぞれ形成されている。
【0101】
第一側部133は、インナー部111の外表面111aから立ち下がる第一側部段差側面133aと、第一側部段差側面133aから第一凹部151に向けて内側に広がる第一側部段差底面133bとをそれぞれ有する。第一側部段差側面133a,133aは、第一凹部151を挟んで面するように形成されている。第一側部段差底面133b、第一段差底面131b及び第二段差底面132bは、いずれも同じ高さ位置に形成され、面一になっている。第一凹部151の底面151aは、第一側部段差底面133bよりも一段下がった位置に形成されている。
【0102】
バイパス部134は、第二孔部42から第四孔部44まで連通する第八流路115H(
図19参照)、第七流路115G、第六流路115Fが形成される部位である。第八流路115H、第七流路115G、第六流路115Fは、第二凹部152と、第二凹部152を覆う蓋部材103とで形成されている。
図21及び
図22に示すように、第二凹部152の一端は、第二孔部42に臨み、インナー部111、第二ブリッジ部114、アウター部112に連続して形成され、他端は第四孔部44に臨んでいる。第二凹部152は、第二孔部42の第二開口部146と第四孔部44の第四開口部148に連続して凹んでなり外部に露出している。
【0103】
バイパス部134は、
図21に示すように、インナー部111の外表面111aから立ち下がるバイパス部段差側面134aと、バイパス部段差側面134aから第二凹部152に向けて内側に広がるバイパス部段差底面134bとをそれぞれ有する。バイパス部段差側面134a,134aは、第二凹部152を挟んで面するように形成されている。バイパス部段差側面134a及びバイパス部段差底面134bは、延長方向に亘って一定の形状で形成されている。
【0104】
図22、
図23に示すように、第三孔部43及び第四孔部44は、ボディ本体102のアウター部112を貫通するとともに、ボディ本体102のアウター部112の内部に設けられている。第三孔部43及び第四孔部44は、アウター部112の外表面112aに形成された第三開口部147及び第四開口部148をそれぞれ一方の開口部にするとともに、第三開口部147及び第四開口部148とそれぞれ対向する他方の開口部がパッド開口部18に開口している。ボディ本体102のアウター部112において、第三開口部147を囲む第三外周部135が設けられており、第四開口部148を囲む第四外周部136が設けられている。第三孔部43の他方側(下側)には第三開口部147が形成され、第四孔部44の他方側(下側)には第四開口部148が形成されている。
【0105】
第三外周部135は、アウター部112の外表面112aから立ち下がるとともに第三開口部147に面する第三段差側面135a及び第三段差側面135aから第三開口部147に向けて内側に広がる第三段差底面135bを有する。
【0106】
第四外周部136は、アウター部112の外表面112aから立ち下がるとともに第四開口部148に面する第四段差側面136a及び第四段差側面136aから第四開口部148に向けて内側に広がる第四段差底面136bを有する。
【0107】
第三凹部153は、第三孔部43と第四孔部44とを連結する一定幅の直線状の凹溝である。第三凹部153は、第三孔部43の第三開口部147と第四孔部44の第四開口部148に連続して凹んでなり外部に露出している。第三凹部153は、蓋部材103で覆われることにより、第五流路115Eとなる部位である。第三凹部153は、底面153aと、底面153aの両側から立ち上がる側面153b,153bで形成されている。第三凹部153の両側には第二側部137,137がそれぞれ形成されている。
【0108】
第二側部137は、アウター部112の外表面112aから立ち下がる第二側部段差側面137aと、第二側部段差側面137aから第三凹部153に向けて内側に広がる第二側部段差底面137bとをそれぞれ有する。第二側部段差側面137a,137aは、第三凹部153を挟んで面するように形成されている。第二側部段差底面137b、第三段差底面135b及び第四段差底面136bは、いずれも同じ高さ位置に形成され、面一になっている。第三凹部153の底面153aは、第二側部段差底面137bよりも一段下がった位置に形成されている。
【0109】
上述の通り、本実施形態では、ボディ本体102は、インナー部111の外表面111a(第一面)と、第一面とは異なるアウター部112の外表面112a(第二面)とを有している。そして、第二開口部146は、インナー部111の外表面111aに設けられている。また、第四開口部148は、アウター部112の外表面112aに設けられている。また、インナー部111側と、インナー部111とは逆側に位置するアウター部112側との間を連結する第二ブリッジ部114の外表面114aに第二凹部152が設けられている。このようにして、第二凹部152は、異なる面となるインナー部111の外表面111aとアウター部112の外表面112aとの間の表面に連続して凹んでなり外部に露出して設けられている。
【0110】
なお、本明細書において、第一面と異なる第二面とは、第一面と第二面とのなす角度が180°よりも大きい角度となる位置関係にあり、同一平面状に存在しない場合をいうものとする。具体的には、第一面と第二面とのなす角度が270°以上となる位置関係にある場合をいう。より具体的には、第一面と第二面とのなす角度が360°、すなわち、第一面と第二面が反転してボディ本体102の表裏の位置関係にある場合をいうものとする。または、第一面と異なる第二面とは、第一面と第二面とのなす角度が180°よりも小さい角度となる位置関係にあり、同一平面状に存在しない場合をいうものとする。具体的には、第一面と第二面とのなす角度が90°以下となる位置関係にある場合をいう。より具体的には、第一面と第二面とのなす角度が0°、すなわち、第一面と第二面が反転して対向する位置関係にある場合をいうものとする。あるいは、第一面と異なる第二面とは、第一面と第二面とが互いの高さ位置が異なって段差をもって形成されており、同一平面状に存在しない位置関係にある場合をいうものとする。
【0111】
請求項の「前記ボディ本体は、第一面と前記第一面とは異なる第二面とを有し、前記第一開口部は、前記第一面に設けられており、前記第二開口部は、前記第二面に設けられており、前記凹部は、前記第一面と前記第二面に連続して設けられている」とは、本変形例では、「ボディ本体102は、第一面(外表面111a)と第一面とは異なる第二面(外表面112a)とを有し、第一開口部(第二開口部146)は、第一面に設けられており、第二開口部(第四開口部148)は、第二面に設けられており、凹部(第二凹部152)は、第一面と第二面に連続して設けられている」を意味している。
【0112】
また、本変形例において、第一孔部41及び第三孔部43を省略した形態、つまり、ボディ本体102に設けられるシリンダが、ブレーキディスクを挟んで対向する二個一組の形態であってもよい。
また、第二凹部152は、第二ブリッジ部114側ではなく第一ブリッジ部113側に設けてもよいし、第一ブリッジ部113及び第二ブリッジ部114の両側に設けてもよい。つまり、第二凹部152は、インナー部111の外表面111aの第一開口部145から、アウター部112の外表面112aの第三開口部147に亘って設けてもよい。
【0113】
蓋部材103は、
図24及び
図25に示すように、後方から見て略C字状を呈し、一体形成されている。蓋部材103は、第一蓋部161と、第二蓋部162と、第三蓋部163と、第四蓋部164と、第五蓋部165と、第六蓋部166と、第七蓋部167とを備えている。蓋部材103は概ね一定の厚さで形成されている。第一蓋部161は、円形を呈し、第一孔部41を上方から覆う部位である。第二蓋部162は、円形を呈し、第二孔部42を上方から覆う部位である。第三蓋部163は、一定幅の直線状を呈し、第一凹部151を上方から覆う部位である。第四蓋部164は、円形を呈し、第三孔部43を下方から覆う部位である。第五蓋部165は、円形を呈し、第四孔部44を下方から覆う部位である。第六蓋部166は、一定幅の直線状を呈し、第三凹部153を下方から覆う部位である。上方から見た場合に、第一蓋部161、第二蓋部162及び第三蓋部163は、第四蓋部164、第五蓋部165及び第六蓋部166にそれぞれ対応する位置(重なる位置)に形成されている。
【0114】
第七蓋部167は、第二蓋部162と第五蓋部165とを連結する部位であって、ボディ本体102の外形状に沿って板状に形成されている。第七蓋部167は、断面矩形を呈し、第二凹部152を覆う部位である。なお、蓋部材103は、本実施形態では一体形成されているが、複数部材で形成されていてもよい。
【0115】
<配置工程>
配置工程は、ボディ本体102に蓋部材103を配置する工程である。配置工程では、
第一孔部41、第二孔部42、第三孔部43、第四孔部44、第一凹部151、第二凹部152、及び第三凹部153を覆うように、蓋部材103を配置する。言い換えれば、第一孔部41、第二孔部42、第三孔部43、第四孔部44、第一凹部151、第二凹部152、及び第三凹部153を、蓋部材103によって覆うことで封止するようにして配置する。このとき、蓋部材103が、第一段差底面131b、第二段差底面132b、第一側部段差底面133b、バイパス部段差底面134b、第三段差底面135b、第四段差底面136b、及び第二側部段差底面137bに載置される。
図26に示すように、ボディ本体102に蓋部材103を配置することで、インナー部111側には、第一突合部J11、第二突合部J12、第一側部突合部J13,J13、バイパス部突合部J14,J14が形成される。
【0116】
第一突合部J11は、インナー部111の第一段差側面131aと、第一蓋部161の側面161cとが突き合わされて形成されている。また、インナー部111の第一段差底面131bと、第一蓋部161の下面161b(
図25参照)とが重ね合わされて重合部(図示省略)が形成されている。
【0117】
第二突合部J12は、インナー部111の第二段差側面132aと、第二蓋部162の側面162cとが突き合わされて形成されている。また、インナー部111の第二段差底面132bと、第二蓋部162の下面162b(
図25参照)とが重ね合わされて重合部(図示省略)が形成されている。
【0118】
第一側部突合部J13は、インナー部111の第一側部段差側面133aと、第三蓋部163の側面163cとが突き合わされて形成されている。また、インナー部111の第一側部段差底面133bと、第三蓋部163の下面163b(
図25参照)とが重ね合わされて重合部(図示省略)が形成されている。第一側部突合部J13は、第一凹部151を挟んで両側に形成されている。
【0119】
バイパス部突合部J14は、インナー部111、アウター部112及び第二ブリッジ部114に亘って形成されたバイパス部段差側面134aと、第七蓋部167の側面167cとが突き合わされて形成されている。また、バイパス部段差底面134bと、第七蓋部167の下面167b(
図26参照)とが重ね合わされて重合部K14が形成されている。バイパス部突合部J14及び重合部K14は、第二凹部152を挟んで両側に形成されている。
【0120】
図27に示すように、ボディ本体102に蓋部材103を配置することで、アウター部112側には、第三突合部J15、第四突合部J16、第二側部突合部J17,J17が形成される。
【0121】
第三突合部J15は、アウター部112の第三段差側面135aと、第四蓋部164の側面164cとが突き合わされて形成されている。また、アウター部112の第三段差底面135bと、第四蓋部164の上面164a(
図25参照)とが重ね合わされて重合部(図示省略)が形成されている。
【0122】
第四突合部J16は、アウター部112の第四段差側面136aと、第五蓋部165の側面165cとが突き合わされて形成されている。また、アウター部112の第四段差底面136bと、第五蓋部165の上面165a(
図25参照)とが重ね合わされて重合部(図示省略)が形成されている。
【0123】
第二側部突合部J17は、アウター部112の第二側部段差側面137aと、第六蓋部166の側面166cとが突き合わされて形成されている。第二側部突合部J17は、第三凹部153を挟んで両側に形成されている。また、アウター部112の第二側部段差底面137bと、第六蓋部166の上面166a(
図25参照)とが重ね合わされて重合部(図示省略)が形成されている。
【0124】
<接合工程>
接合工程は、回転ツールF(
図10参照)を用いて各突合せ部を摩擦攪拌接合する工程である。本実施形態では、第一突合部J1、第二突合部J2、一対の側部突合部J3,J3、一対のバイパス部突合部J14,J14、第三突合部J15、第四突合部J16、一対の第二側部突合部J17,J17を摩擦攪拌接合する。接合工程は、第一実施形態と同じように回転ツールFを途中で離脱させることなく、連続して摩擦攪拌接合を行う。摩擦攪拌接合の順番は特に制限されないが、例えば、
図26に示すように、インナー部111の外表面111aにおいて第一側部突合部J13の近傍に開始位置SP2及び終了位置EP2を設定する。
【0125】
図26に示すように、開始位置SP2から回転する回転ツールFを挿入した後、一方の第一側部突合部J13、第一突合部J11、他方の第一側部突合部J13、第二突合部J12の一方側(図中上側)、他方のバイパス部突合部J14に沿って相対移動させる。さらに
図27に示すように、第四突合部J16の一方側(図中下側)、他方の第二側部突合部J17、第三突合部J15、一方の第二側部突合部J17、第四突合部J16の他方側(図中上側)、一方のバイパス部突合部J14に沿って相対移動させる。さらに
図26に示すように、第二突合部J12の他方側(図中下側)、一方の第一側部突合部J13で塑性化領域Wをオーバーラップさせ、終了位置EP2で回転ツールFを離脱させる。
【0126】
これにより、
図19に示すように、ボディ本体102と蓋部材103とが摩擦攪拌接合されたキャリパボディ101が形成される。また、第一凹部151が蓋部材103で覆われることにより第一ボア21と第二ボア22を連結する流路(第一流路115A)が形成される。第一流路115Aは、第一ボア21及び第二ボア22の各底面21a,22aと同じ高さ位置に形成される。
また、第二凹部152が蓋部材103で覆われることにより第二ボア22と第四ボア24とを連結する第八流路115H、第七流路115G及び第六流路115Fが形成される
また、第三凹部153が蓋部材103で覆われることにより第三ボア23と第四ボア24とを連結する第五流路115Eが形成される。第五流路115Eは、第三ボア23及び第四ボア24の各底面23a,24aと同じ高さ位置に形成される。
【0127】
<作用効果>
以上説明した本変形例によっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、第一実施形態では蓋部材3で摩擦攪拌接合を行うことで第一流路15Aのみを形成したが、本変形例のように複数の流路(第一流路115A、第五流路115E、第六流路115F、第七流路115G、第八流路115H)を摩擦攪拌接合で形成してもよい。このとき、摩擦攪拌接合で形成される複数の流路を、ボア(空間)を挟んで連結するようにして連結路を形成してもよい。
【0128】
また、第一実施形態では、インナー部111側に第一流路15Aのみを形成したが、本変形例のようにインナー部111側に第一流路115Aを形成するとともに、インナー部11とは逆側に位置するアウター部112側に第五流路115Eを形成してもよい。
【0129】
また、第一実施形態では、インナー部11の同じ側の面にのみ第一流路15Aを形成したが、本変形例のようにインナー部111側と、インナー部111とは逆側に位置するアウター部112側との間を連結する第二ブリッジ部114に亘って第六流路115F、第七流路115G、及び第八流路115Hを形成してもよい。
【0130】
また、第一実施形態では、併設されている第一ボア(第一空間)21と、第二ボア(第二空間)22との間にのみ第一流路15Aを形成したが、本変形例の様に、同一面上に併設されておらず、第一面に配置された第二ボア(第二空間)22と、第一面とは異なる第二面に配置された第四ボア(第四空間)24との間に第六流路115F、第七流路115G、及び第八流路115Hを形成してもよい。より具体的には、本変形例の様に、パッド開口部18を挟んで対向配置されている、第二ボア(第二空間)22と第四ボア(第四空間)24との間に第六流路115F、第七流路115G、及び第八流路115Hを形成してもよい。このように、本変形例によれば、インナー部111の外表面111a(第一面)と、第一面とは異なるアウター部112の外表面112a(第二面)との間に第二凹部152を連続して設けて、摩擦攪拌接合により流路を形成することで、キャリパボディ1に形成される流路の設計自由度を高めることができる。
【0131】
[2.第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係るキャリパボディ(接合体)及びキャリパボディの製造方法(接合体の製造方法)について説明する。第二実施形態では、接合工程において、突合部及び重合部を摩擦攪拌接合する点で第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0132】
本実施形態に係るキャリパボディの製造方法(接合体の製造方法)では、準備工程と、配置工程と、接合工程とを行う。準備工程は、
図28に示すように、ボディ本体2C及び蓋部材3を準備する工程である。
【0133】
ボディ本体2Cは、インナー部11に第一孔部41、第二孔部42及び凹部51を備えている。凹部51は、第一孔部41と第二孔部42とを連結する一定幅の直線状の凹溝である。第一孔部41の外周部(第一外周部31C)には、上端面31Caが形成されており、第二孔部42の外周部(第二外周部32C)には、上端面32Caが形成されている。上端面31Ca,32Caは、いずれも平坦な面であって、互いに同じ高さ位置に形成されている。凹部51の底面51aは、上端面31Ca及び上端面31Cbよりも一段下がった位置に形成されている。凹部51の両側には、側部33が形成されている。側部33の形態は、第一実施形態と同一である。側部段差底面33bは、上端面31Ca及び上端面31Cbと同じ高さ位置に形成されている。
【0134】
本実施形態では、インナー部11の外表面11aにおいて、上端面31Caと上端面32Caとによって挟まれる中間部であって、底面51aを挟む両側の位置に、一対の出張部34,34が形成されている。出張部34,34は、インナー部11の外表面11aから、上端面31Ca、上端面32Ca、及び底面51aよりも高くなるように出っ張って設けられている。出張部34,34の対向する側面に両側を挟まれて、インナー部11の外表面11aを底面とする凹部51が形成される。すなわち、出張部34,34の対向する側面が、凹部51の側面51b,51b、及び側部33の側部段差側面33aに対応しており、これらと同様に形成されている。
【0135】
蓋部材3は、第一蓋部61、第二蓋部62及び第三蓋部63を備えている。第一蓋部61及び第二蓋部62の外径は、第一孔部41及び第二孔部42の内径よりも大きくなっている。第三蓋部63の長さは、凹部51の長さよりも若干短くなっている。
【0136】
配置工程は、ボディ本体2Cに蓋部材3を配置する工程である。
図29に示すように、配置工程では、第一孔部41、第二孔部42及び凹部51を覆うように蓋部材3を配置する。このとき、蓋部材3が、第一外周部31Cの上端面31Ca、第二外周部32Cの上端面32Ca、及び側部段差底面33b,33bに載置される。これにより、第一重合部K21、第二重合部K22及び側部突合部J3,J3が形成される。
図29及び
図30に示すように、側部突合部J3については第一実施形態と同一である。
【0137】
図29及び
図31に示すように、第一重合部K21は、第一外周部31Cの上端面31Caと、第一蓋部61の下面61bとが重ね合わされた部位である。第一重合部K21は、上端面31Caに沿って略円形(凹部51の部位を除いて略円形)に形成されている。第二重合部K22は、第二外周部32Cの上端面32Caと、第一蓋部61の下面61bとが重ね合わされた部位である。第二重合部K22は、上端面32Caに沿って略円形(凹部51の部位を除いて略円形)に形成されている。
【0138】
接合工程は、回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う工程である。本実施形態では、第一重合部K21、第二重合部K22、及び一対の側部突合部J3,J3を摩擦攪拌接合する。接合工程では、
図32に示すように、インナー部11の外表面11aのうち一方の側部突合部J3の近傍に設定した開始位置SP3から回転する回転ツールFを挿入する。その後、一方の側部突合部J3、第一重合部K21、他方の側部突合部J3、第二重合部K22、他方の側部突合部J3をこの順番でなぞるように回転ツールFを相対移動させて塑性化領域Wをオーバーラップさせる。その後、
図33に示すように、一方の側部突合部J3の近傍に設定した終了位置EP3で回転ツールFを離脱させる。
【0139】
図34に示すように、側部突合部J3,J3については、第一実施形態と同じように摩擦攪拌接合される。
図35に示すように、第一重合部K21及び第二重合部K22については、塑性化領域Wがインナー部11(ボディ本体2C)に達するように形成されている。回転ツールFの挿入深さは、蓋部材3とインナー部11とが摩擦攪拌接合可能であれば適宜設定すればよく、攪拌ピンF2が蓋部材3のみと接触するように設定してもよいし、攪拌ピンF2が蓋部材3及びインナー部11の両方に接触するように設定してもよい。
【0140】
図34及び
図35に示すように、接合工程によって、ボディ本体2Cと蓋部材3とが摩擦攪拌接合されてキャリパボディ1Cが形成される。また、接合工程によって、凹部51と蓋部材3とで構成され、第一ボア21と第二ボア22の上端同士を連結する流路(第一流路15A)が形成される。
【0141】
以上説明した本実施形態によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。本実施形態のように、摩擦攪拌接合を行う部位が、突合部(側部突合部J3)と重合部(第一重合部K21及び第二重合部K22)とを両方備えた形態であってもよい。また、本実施形態のように、突合部(側部突合部J3)の摩擦攪拌接合により流路(第一流路15A)を形成して、重合部(第一重合部K21及び第二重合部K22)の摩擦攪拌接合により第一ボア21及び第二ボア22を形成してもよい。本実施形態では、第一蓋部61及び第二蓋部62は、ボディ本体2Cと重ね合わせによって形成される重合部での摩擦攪拌接合が行われるため、突き合わせる場合と比して形状やサイズの裕度が大きくなる。また、配置工程において、一対の側部段差側面33aによって第三蓋部63が挟まれるように蓋部材3を配置することができるため、ボディ本体2Cに蓋部材3を配置する際の位置決めに利用することができる。
【0142】
[3.第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係るキャリパボディ(接合体)及びキャリパボディの製造方法(接合体の製造方法)について説明する。第三実施形態では、接合工程において、全て重合部を摩擦攪拌接合する点で第一実施形態と相違する。第三実施形態では、第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0143】
本実施形態に係るキャリパボディの製造方法(接合体の製造方法)では、準備工程と、配置工程と、接合工程とを行う。準備工程は、
図36に示すように、ボディ本体2D及び蓋部材3を準備する工程である。ボディ本体2Dは、インナー部11に第一孔部41、第二孔部42及び凹部51を備えている。凹部51は、第一孔部41と第二孔部42とを連結する一定幅の直線状の凹溝である。第一孔部41の外周部(第一外周部31D)には、上端面31Daが形成されており、第二孔部42の外周部(第二外周部32D)には、上端面32Daが形成されている。上端面31Da,32Daは、いずれも平坦な面であって、同じ高さ位置に形成されている。
【0144】
凹部51の両側には、上端面33Daを備えた側部33Dが形成されている。上端面33Daは、上端面31Da,32Daと同じ高さ位置にあり、面一になっている。凹部51の底面51aは、上端面31Da,32Da,33Daよりも一段下がった位置に形成されている。
【0145】
蓋部材3は、第一蓋部61、第二蓋部62及び第三蓋部63を備えている。蓋部材3は、第一実施形態と同一である。第一蓋部61及び第二蓋部62の外径は、第一孔部41及び第二孔部42の内径よりも大きくなっている。第三蓋部63の長さは、凹部51の長さよりも若干短くなっている。
【0146】
配置工程は、ボディ本体2Dに蓋部材3を配置する工程である。
図37に示すように、配置工程では、第一孔部41、第二孔部42及び凹部51を覆うように蓋部材3を配置する。このとき、蓋部材3が、第一外周部31Dの上端面31Da、第二外周部32Dの上端面32Da、及び側部33Dの上端面33Daに載置される。これにより、第一重合部K31、第二重合部K32及び第三重合部K33,K33が形成される。
【0147】
図38に示すように、第三重合部K33は、側部33Dの上端面33Daと、第三蓋部63の下面63bとが重ね合わされた部位である。第三重合部K33は、凹部51の両側に沿ってそれぞれ直線状に形成されている。
【0148】
図37及び
図39に示すように、第一重合部K31は、第一外周部31Dの上端面31Daと、第一蓋部61の下面61bとが重ね合わされた部位である。第一重合部K31は、上端面31Daに沿って略円形(凹部51の部位を除いて略円形)に形成されている。第二重合部K32は、第二外周部32Dの上端面32Daと、第二蓋部62の下面62bとが重ね合わされた部位である。第二重合部K32は、上端面32Daに沿って略円形(凹部51の部位を除いて略円形)に形成されている。
【0149】
接合工程は、回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う工程である。本実施形態では、第一重合部K31、第二重合部K32、及び一対の第三重合部K33,K33を摩擦攪拌接合する。接合工程では、
図40に示すように、インナー部11の外表面11aのうち一方の第三重合部K33の近傍に設定した開始位置SP4から回転する回転ツールFを挿入する。その後、一方の第三重合部K33、第一重合部K31、他方の第三重合部K33、第二重合部K32、一方の第三重合部K33をこの順番でなぞるように回転ツールFを相対移動させて塑性化領域Wをオーバーラップさせる。その後、
図41に示すように、一方の第三重合部K33の近傍に設定した終了位置EP4で回転ツールFを離脱させる。
【0150】
図42に示すように、第三重合部K33については、塑性化領域Wがインナー部11(ボディ本体2D)に達するように形成されている。回転ツールFの挿入深さは、蓋部材3とインナー部11とが摩擦攪拌接合可能であれば適宜設定すればよく、攪拌ピンF2が蓋部材3のみと接触するようにしてもよいし、攪拌ピンF2が蓋部材3及びインナー部11の両方に接触するように設定してもよい。
【0151】
図43に示すように、第一重合部K31及び第二重合部K32については、塑性化領域Wが、インナー部11(ボディ本体2D)に達するように形成されている。回転ツールFの挿入深さは、蓋部材3とインナー部11とが摩擦攪拌接合可能であれば適宜設定すればよく、攪拌ピンF2が蓋部材3のみと接触するように設定してもよいし、攪拌ピンF2が蓋部材3及びインナー部11の両方に接触するように設定してもよい。
【0152】
図42及び
図43に示すように、接合工程によって、ボディ本体2Dと蓋部材3とが摩擦攪拌接合されてキャリパボディ1Dが形成される。また、接合工程によって、凹部51と蓋部材3とで構成され、第一ボア21と第二ボア22の上端同士を連結する第一流路(流路)15Aが形成される。
【0153】
以上説明した本実施形態によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。本実施形態のように、摩擦攪拌接合を行う部位が、全て重合部(第一重合部K31、第二重合部K32及び第三重合部K33)となる形態であってもよい。本実施形態では、第一蓋部61、第二蓋部62、及び第三蓋部63は、ボディ本体2Cとの重ね合わせによって形成される重合部での摩擦攪拌接合が行われるため、突き合わせる場合と比して形状やサイズの裕度が大きくなる。
【0154】
なお、本実施形態では、全て重合部に設定して摩擦攪拌接合を行ったが、重合部(第三重合部K33,K33)の摩擦攪拌接合により流路(第一流路15A)を形成して、突合部(第一突合部J1及び第二突合部J2)の摩擦攪拌接合により第一ボア21及び第二ボア22を形成してもよい。
【0155】
[4.第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係るキャリパボディ(接合体)及びキャリパボディの製造方法(接合体の製造方法)について説明する。
図44及び
図45に示すように、第四実施形態では、第一蓋部61及び第二蓋部62の外径が、第一孔部41及び第二孔部42の内径よりも小さい点で第一実施形態と相違する。第四実施形態では、第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0156】
本実施形態に係るキャリパボディの製造方法(接合体の製造方法)では、準備工程と、配置工程と、接合工程とを行う。準備工程は、
図44に示すように、ボディ本体2E及び蓋部材3を準備する工程である。ボディ本体2Eは、インナー部11に第一孔部41、第二孔部42及び凹部51を備えている。凹部51は、第一孔部41と第二孔部42とを連結する一定幅の直線状の凹溝である。第一孔部41には第一開口部45が形成され、第二孔部42には第二開口部46が形成されている。ボディ本体2Eのインナー部11において、第一開口部45を囲む第一外周部31Eが設けられており、第二開口部46を囲む第二外周部32Eが設けられている。
【0157】
図45に示すように、第一外周部31Eは、インナー部11の外表面11aから立ち下がる第三段差側面31Eaと、第三段差側面31Eaから径外方向に延設された第三段差底面31Ebとを備えている。第三段差底面31Ebは、第三段差側面31Eaから第一孔部41の内周側面41bに向けて形成されている。換言すると、第三段差底面31Ebは、第一開口部45の周端縁45aから第一孔部41の内周側面41bに向けて外側に広がるように延設されている。また、第三段差側面31Eaは、第三段差底面31Ebからインナー部11の外表面11aに向けて立ち上るとともに第一開口部45に面するように形成されている。
【0158】
第二外周部32Eは、インナー部11の外表面11aから立ち下がる第四段差側面32Eaと、第四段差側面32Eaから径外方向に延設された第四段差底面32Ebとを備えている。第四段差底面32Ebは、第四段差側面32Eaから第二孔部42の内周側面42bに向けて形成されている。換言すると、第四段差底面32Ebは、第二開口部46の周端縁46aから第二孔部42の内周側面42bに向けて外側に広がるように延設されている。また、第四段差側面32Eaは、第四段差底面32Ebからインナー部11の外表面11aに向けて立ち上るとともに第二開口部46に面するように形成されている。
【0159】
凹部51の底面51aは、第三段差底面31Eb及び第四段差底面32Ebよりも一段下がった位置に形成されている。凹部51の両側には、側部33が形成されている。側部33の形態は、第一実施形態と同一である。
【0160】
蓋部材3は、第一蓋部61、第二蓋部62及び第三蓋部63を備えている。第一蓋部61及び第二蓋部62の外径は、第一開口部45及び第二開口部46の外径とそれぞれ略同一になっている。また、第一開口部45の外径(第三段差側面31Eaの直径)及び第二開口部46の外径(第四段差側面32Eaの直径)は、第一孔部41及び第二孔部42の内周側面41b,42bの内径よりもそれぞれ小さくなっている。第三蓋部63の長さは、凹部51の長さよりも若干短くなっている。
【0161】
配置工程は、ボディ本体2Eに蓋部材3を配置する工程である。
図46及び
図47に示すように、配置工程では、第一孔部41、第二孔部42及び凹部51を覆うように蓋部材3を配置する。このとき、蓋部材3が、側部段差底面33b,33bに載置される。第一蓋部61及び第二蓋部62の外径は、内周側面41bの内径及び内周側面42bの内径よりも小さいが、第三蓋部63がインナー部11に支持されている。これにより、配置工程によって
図47に示すように、第一突合部J21、第二突合部J22及び側部突合部J3,J3が形成される。
図46及び
図47に示すように、側部突合部J3については第一実施形態と同一である。
【0162】
図47に示すように、第一突合部J21は、第三段差側面31Eaと第一蓋部61の側面61cとが突き合わされて形成されている。第二突合部J22は、第四段差側面32Eaと第二蓋部62の側面62cとが突き合わされて形成されている。
【0163】
接合工程は、回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う工程である。本実施形態では、第一突合部J21、第二突合部J22、及び一対の側部突合部J3,J3を摩擦攪拌接合する。接合工程では、
図48に示すように、インナー部11の外表面11aのうち一方の側部突合部J3の近傍に設定した開始位置SP5から回転する回転ツールFを挿入する。その後、一方の側部突合部J3、第一突合部J21、他方の側部突合部J3、第二突合部J22、一方の側部突合部J3をこの順番でなぞるように回転ツールFを相対移動させて塑性化領域Wをオーバーラップさせる。その後、
図49に示すように、一方の側部突合部J3の近傍に設定した終了位置EP5で回転ツールFを離脱させる。第一突合部J21及び第二突合部J22に対して摩擦攪拌接合する際には、塑性流動材が第一孔部41及び第二孔部42側に流出しないように回転ツールFの挿入深さを調整する。
【0164】
接合工程を行うことで、
図50に示すように、側部突合部J3,J3については第一実施形態と同じように摩擦攪拌接合される。また、
図51に示すように、第一突合部J21及び第二突合部J22には、塑性化領域Wがそれぞれ形成される。接合工程によって、ボディ本体2Eと蓋部材3とが摩擦攪拌接合されてキャリパボディ1Eが形成される。また、接合工程によって、凹部51と蓋部材3とで構成され、第一ボア21と第二ボア22の上端同士を連結する流路(第一流路15A)が形成される。また、本実施形態では、第一ボア21の底面21aは、第一蓋部61の下面61bと第三段差底面31Ebとで構成される。第二ボア22の底面22aは、第二蓋部62の下面62bと第四段差底面32Ebとで構成される。
【0165】
以上説明した第四実施形態によっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。
ここで、例えば、
図43に示すように、第三実施形態の第一ボア21は、蓋部材3で形成された底面21aと、内周側面21bとで角部TDaが形成されている。同様に、第二ボア22は、蓋部材3で形成された底面22aと、内周側面22bとで角部TDbが形成されている。角部TDa,TDbは、ピストンP(
図2参照)が摺動する際に、ブレーキ液によって応力が集中して大きな内圧が作用する部位であるため、強度が高いことが好ましい。
【0166】
この点、
図51に示す第四実施形態によれば、第一ボア21の角部TEa及び第二ボア22の角部TEbはいずれもインナー部11(ボディ本体2E)で形成されている。つまり、角部TEa,TEbは、一の部材で形成されている。すなわち、角部TEaは、第一ボア21の第三段差底面31Ebと内周側面21bとで構成されている。また、角部TEbは、第二ボア22の第四段差底面32Ebと内周側面22bとで構成されている。これにより、ピストンPが摺動する際に、一の部材で形成されている角部TEa,TEbによって応力を受けることができる。したがって、摩擦攪拌接合部に応力が集中することによる接合部の破損を避けやすくなる。また、二以上の部材が組み合わされることでボアの内部の角部が形成されて、当該角部に隙間が存在している場合に、ブレーキ液が隙間に入り込んで隙間が広がることによって生じる、シリンダの圧力応答性の低下や、蓋部材の破損を避けることができる。
【0167】
また、本実施形態では、配置工程及び接合工程において、蓋部材3は、凹部51の底面51aに下支えされる。これにより、第一孔部41の内径よりも第一開口部45及び第一蓋部61の径の方が小さく、第二孔部42の内径よりも第二開口部46及び第二蓋部62の径の方が小さい場合であっても、蓋部材3がボディ本体2Eの内部に入り込んで(内部に落下して)しまうことなく、第一突合部J21及び第二突合部J22の接合を行うことができる。
【0168】
第四実施形態では、第三段差側面31Eaと第一蓋部61の側面61cとが突き合わされて第一突合部J21が形成されて、第四段差側面32Eaと第二蓋部62の側面62cとが突き合わされて第二突合部J22が形成されて、これらの第一突合部J21及び第二突合部J22が摩擦攪拌接合される場合を例示して説明した。第一孔部41の外周部(第一外周部31D)には上端面31Daが形成されており、第二孔部42の外周部(第二外周部32D)には上端面32Daが形成されており、第一外周部31Dの上端面31Daと、第一蓋部61の下面61bとが重ね合わされて第一重合部K31が形成されて、第二外周部32Dの上端面32Daと、第二蓋部62の下面62bとが重ね合わされて第二重合部K32が形成されて、第一重合部K31及び第二重合部K32が摩擦攪拌接合されるようにしてもよい(
図36、
図37、
図40、
図41参照)。
【0169】
第四実施形態では、側部段差側面33a,33aと、第三蓋部63の側面63c,63cとがそれぞれ突き合わされて側部突合部J3,J3が形成されて、側部突合部J3,J3が摩擦攪拌接合される場合を例示して説明した。インナー部11の凹部51の両側に上端面33Daを備えた側部33Dが形成されており、上端面33Daと、第三蓋部63の下面63bとが重ね合わされて第三重合部K33,K33が形成されて、第三重合部K33,K33が摩擦攪拌接合されるようにしてもよい(
図36、
図37、
図40、
図41参照)。
【0170】
[5.その他]
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。
【0171】
上述した実施形態及び変形例では、ボディ本体と蓋部材との接合によって、ピストンを摺動させる第一ボア及び第二ボア、並びに第一ボアと第二ボアとの間を連通する流路を内部に形成する、キャリパボディの製造方法について説明を行った。また、上述した実施形態及び変形例では、上述したキャリパボディの製造方法によって製造されるキャリパボディについて説明を行った。本発明は、上述したキャリパボディ及びその製造方法に限定されず、接合体及びその製造方法に適用することができる。本発明は、第一ボアに替えて第一空間、第二ボアに替えて第二空間、及び第一空間と第二空間との間を連通する流路を内部に形成する接合体の製造方法に適用することができる。この場合、ボディ本体が、ボディ本体を貫通する第一孔部及び第二孔部を備えるとともに、第一孔部の第一開口部と第二孔部の第二開口部に連続して凹んでなり外部に露出する凹部を備える。そして、接合工程によって、第一孔部及び蓋部材で構成される第一空間、第二孔部及び蓋部材で構成される第二空間、並びに凹部及び蓋部材で構成される流路がそれぞれ形成される。また、本発明は、上述した接合体の製造方法によって製造される、第一空間及び第二空間、並びに第一空間と第二空間との間を連通する流路を内部に有する接合体に適用することができる。本発明の接合体及びその製造方法によれば、上述した実施形態及び変形例で説明したキャリパボディ及びその製造方法と同様に、接合体に形成される流路の設計自由度を高めることができる。上述した実施形態及び変形例で説明したキャリパボディ及びその製造方法は、接合体及びその製造方法の一例として位置付けられる。ボディ本体に設けられる第一孔部、第二孔部、及び凹部;第一開口部、第二開口部、及び凹部を覆う蓋部材;第一孔部、第二孔部、及び蓋部材で構成される第一空間及び第二空間;について、それらの形状、サイズ、配置、位置関係等は、所望の接合体を得るために、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。また、第一孔部、第二孔部、及び凹部を備えるボディ本体;蓋部材;第一空間、第二空間、及び流路を内部に有する接合体;の形状やサイズについても、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。
【0172】
上述した実施形態及び変形例では、円柱状の連結部F1と、連結部F1から垂下する攪拌ピンF2とを備えている回転ツールFを用いて、攪拌ピンF2のみをボディ本体2及び蓋部材3に挿入して摩擦攪拌接合を行う場合を例示して説明した。回転ツール及び摩擦攪拌接合の態様はこれに限定されず、例えば、ショルダと、ショルダから垂下する攪拌ピンとを備える回転ツールを用いて、攪拌ピンをボディ本体2及び蓋部材3に挿入するとともに、ショルダをボディ本体2の外表面11a,111a,112a及び蓋部材3の上面61a,62a,63aに接触させた状態で摩擦攪拌接合を行うようにしてもよい。また、回転ツールは、例えば、テーパー角度の大きい基端側ピンと、基端側ピンに連続し基端側ピンよりもテーパー角度の小さい先端側ピンとを備えた形態であってもよい。
【0173】
上述した実施形態及び変形例では、ボディ本体2,2A,2C,2D,2E,102(以降、これらをまとめて「ボディ本体2」と称する。)と、蓋部材3,3B,103(以降、これらをまとめて「蓋部材3」と称する。)との摩擦攪拌接合を行い、ボディ本体2と蓋部材3とが摩擦攪拌接合で一体化されて、キャリパボディ1が製造される場合を例示して説明した。ボディ本体2と蓋部材3との接合は、摩擦攪拌接合又は拡散接合による接合によって行うことができる。すなわち、ボディ本体2と蓋部材3との拡散接合を行い、ボディ本体2と蓋部材3とが拡散接合で一体化されて、キャリパボディ1が製造されてもよい。また、ボディ本体2と蓋部材3との接合は、一部を摩擦攪拌接合によって行い、その他の部分を拡散接合によって行うように、摩擦攪拌接合と拡散接合とを組み合わせてもよい。また、開始位置SP1で回転ツールFを挿入してから終了位置EP1で回転ツールFを離脱させるまで連続して接合を行う間に、一部を摩擦攪拌接合によって行い、その他の部分を拡散接合によって行うようにしてもよい。
【0174】
上述した実施形態及び変形例では、例えば、
図10に示すように、接合工程において、攪拌ピンF2の回転軸がボディ本体2と蓋部材3との突合せ面に位置するように、攪拌ピンF2を突合せ面の中心に挿入して、攪拌ピンF2をボディ本体2及び蓋部材3に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う場合を例示して説明した。これに替えて、攪拌ピンF2を蓋部材3に挿入して、攪拌ピンF2と蓋部材3とを接触させた状態で摩擦攪拌を生じさせるとともに、この摩擦攪拌の作用によって、蓋部材3とボディ本体2とが相互に拡散して拡散接合するように、攪拌ピンF2の挿入位置及び挿入深さを変更することができる。この場合、攪拌ピンF2と蓋部材3とを接触させるとともに、攪拌ピンF2とボディ本体2とを接触させず極力近づけた状態で接合させた状態で接合を行ってもよい。または、攪拌ピンF2と蓋部材3とを接触させるとともに、攪拌ピンF2とボディ本体2とをわずかに接触させた状態で接合を行ってもよい。攪拌ピンF2を蓋部材3に接触させ、且つ、攪拌ピンF2とボディ本体2とをわずかに接触させる場合、ボディ本体2に対する攪拌ピンF2の外周面の接触代をオフセット量Nとする。オフセット量Nは、好ましくは0<N≦0.5mm、より好ましくは0<N≦0.25mm、さらに好ましくは0<N≦0.1mmの間で設定する。これらの接合方法は、ボディ本体2が第一金属で形成され、蓋部材3が第二金属で形成され、第一金属と第二金属とが異なる金属材料からなり、第一金属の硬度が第二金属の硬度よりも高いか、あるいは第一金属の軟化温度が第二金属の軟化温度よりも高いといったような、異なる金属材料同士を接合する異材接合を行う場合に好適に利用することができる。
【0175】
攪拌ピンF2と蓋部材3とを接触させるとともに、攪拌ピンF2とボディ本体2とを接触させず極力近づけた状態で接合させた状態で接合することよって、攪拌ピンF2と蓋部材3との摩擦熱によって、主として蓋部材3側の第二金属が攪拌されて塑性流動化され、ボディ本体2と蓋部材3とを接合することができる。また、ボディ本体2から蓋部材3への第一金属の混入は殆どない。これにより、異材接合を行う場合に、ボディ本体2と蓋部材3との接合部においては、主として蓋部材3側の第二金属が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、回転ツールを挿入する蓋部材3の第二金属にあわせて接合条件を調節することができ、入熱量を抑えることができるため、蓋部材3が大きく軟化してバリが過剰に発生するのを抑制することで金属不足による接合不良を防ぐことができる。さらに、ボディ本体2と蓋部材3との接合部で第一金属と第二金属との相互拡散が促進されて、強固に接合することができる。
【0176】
攪拌ピンF2と蓋部材3とを接触させるとともに、攪拌ピンF2とボディ本体2とをわずかに接触させた状態で接合を行うことによって、攪拌ピンF2がボディ本体2から受ける材料抵抗を極力小さくすることができる。また、ボディ本体2から蓋部材3へ第一金属の混入を極力小さくすることができる。これにより、異材接合を行う場合に、ボディ本体2と蓋部材3との接合部においては、塑性流動材がバランス良く攪拌されるとともに、主として蓋部材3の第二金属が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0177】
1 キャリパボディ(接合体)
2 ボディ本体
3 蓋部材
21 第一ボア(第一空間)
22 第二ボア(第二空間)
23 第三ボア(第三空間)
24 第四ボア(第四空間)
31 第一外周部
31a 第一段差側面
31b 第一段差底面
32 第二外周部
32a 第二段差側面
32b 第二段差底面
33 側部
33a 側部段差側面
33b 側部段差底面
41 第一孔部
42 第二孔部
43 第三孔部
44 第四孔部
45 第一開口部
46 第二開口部
51 凹部
J1 第一突合部
J2 第二突合部
J3 側部突合部
W 塑性化領域