(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089288
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】高炉の操業方法、装入方法制御装置及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20240626BHJP
C21B 7/24 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C21B5/00 311
C21B5/00 312
C21B7/24 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204560
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】松田 航尚
(72)【発明者】
【氏名】三尾 浩
【テーマコード(参考)】
4K012
4K015
【Fターム(参考)】
4K012BC03
4K012BC04
4K012BC06
4K012BC07
4K015KA02
(57)【要約】
【課題】ベースの堆積形状を維持するための改善アクションを速やかに実行することができる。
【解決手段】高炉原料を炉内に装入して、銑鉄を製造する高炉の操業方法において、原料槽から高炉までの間に配設される搬送コンベア上における高炉原料の粒径情報を、粒度計を用いて取得する粒径情報取得工程と、前記粒径情報取得工程の取得結果に基づき、高炉原料の平均粒径である第1の粒度計平均粒径を求める平均粒径算出工程と、予め準備した高炉原料の平均粒径と高炉原料の装入方法とを関連付けた装入調整情報に基づき、前記第1の粒度計平均粒径又は補正後の粒度計平均粒径に対応する高炉原料の装入方法を決定する装入方法決定工程と、前記装入方法決定工程で決定した装入方法に基づき、高炉原料を装入する高炉原料装入工程と、を有することを特徴とする高炉の操業方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉原料を炉内に装入して、銑鉄を製造する高炉の操業方法において、
原料槽から高炉までの間に配設される搬送コンベア上における高炉原料の粒径情報を、粒度計を用いて取得する粒径情報取得工程と、
前記粒径情報取得工程の取得結果に基づき、高炉原料の平均粒径である第1の粒度計平均粒径を求める平均粒径算出工程と、
予め準備した高炉原料の平均粒径と高炉原料の装入方法とを関連付けた装入調整情報に基づき、前記第1の粒度計平均粒径又は補正後の粒度計平均粒径に対応する高炉原料の装入方法を決定する装入方法決定工程と、
前記装入方法決定工程で決定した装入方法に基づき、高炉原料を装入する高炉原料装入工程と、
を有することを特徴とする高炉の操業方法。
【請求項2】
予め、搬送コンベア上から採取した高炉原料の平均粒径の真値と、前記の採取時に粒度計により取得した高炉原料の粒径情報に基づき算出した高炉原料の第2の粒度計平均粒径と、を把握しておき、
前記第1及び第2の粒度計平均粒径の差分をΔL、前記真値と前記第2の粒度計平均粒径の差分をΔKLと定義したとき、
前記補正後の粒度計平均粒径は、前記真値に前記ΔLを加算した値、又は、前記第1の粒度計平均粒径に前記ΔKLを加算した値である、
ことを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業方法。
【請求項3】
高炉原料の平均粒径と高炉内の堆積形状との相関情報を予め調べておき、
前記相関情報に基づき、堆積形状をベースの堆積形状に近づけるための前記装入調整情報を作成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉の操業方法。
【請求項4】
高炉原料の平均粒径と高炉内のガス流れとの相関情報を予め調べておき、
前記相関情報に基づき、ガス流れをベースのガス流れに近づけるための前記装入調整情報を作成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉の操業方法。
【請求項5】
前記高炉がベルレス式の高炉である場合、前記装入調整情報は、旋回シュートの傾動角に関する情報、旋回数に関する情報、高炉原料の装入量に関する情報及びストックラインに関する情報のうち少なくとも一つを含み、
前記高炉がベル式の高炉である場合、前記装入調整情報は、ムーバブルアーマーの角度に関する情報、高炉原料の装入量の情報、ベルの開速度及びストックラインに関する情報のうち少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の高炉の操業方法。
【請求項6】
前記高炉がベルレス式の高炉である場合、前記装入調整情報は、旋回シュートの傾動角に関する情報、旋回数に関する情報、高炉原料の装入量に関する情報及びストックラインに関する情報のうち少なくとも一つを含み、
前記高炉がベル式の高炉である場合、前記装入調整情報は、ムーバブルアーマーの角度に関する情報、高炉原料の装入量の情報、ベルの開速度及びストックラインに関する情報のうち少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の高炉の操業方法。
【請求項7】
前記粒径情報取得工程において、前記粒度計から通信手段により、粒径情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉の操業方法。
【請求項8】
高炉に高炉原料を装入するための装入方法制御装置において、
制御部と、
原料槽から高炉までの間に配設される搬送コンベア上における高炉原料の粒径情報を取得し、この取得した粒径情報を前記制御部に送信する粒度計と、
を有し、
前記制御部は、前記粒度計が取得した粒径情報に基づき、高炉原料の平均粒径である第1の粒度計平均粒径を算出するとともに、予め準備した高炉原料の平均粒径と高炉原料の装入方法とを関連付けた装入調整情報に基づき、前記第1の粒度計平均粒径又は補正後の粒度計平均粒径に対応する高炉原料の装入方法を決定し、この決定した装入方法に基づき、高炉原料の装入制御を行う、
ことを特徴とする装入方法制御装置。
【請求項9】
高炉に原料を装入する原料装入装置の制御プログラムであって、
粒度計が取得した原料槽から高炉までの間に配設される搬送コンベア上における高炉原料の粒径情報に基づき、高炉原料の平均粒径である第1の粒度計平均粒径を求める平均粒径算出ステップと、
予め準備した高炉原料の平均粒径と高炉原料の装入方法とを関連付けた装入調整情報に基づき、前記第1の粒度計平均粒径又は補正後の粒度計平均粒径に対応する高炉原料の装入方法を決定する決定ステップと、
前記決定ステップで決定した装入方法を原料装入装置に実行させる実行ステップと、
を有する制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱石層とコークス層とを高炉内に交互に形成させる高炉の操業方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉操業では、装入物の粒径が炉内装入物の堆積形状(以下、炉内堆積形状ともいう)に大きな影響を与えることが知られており、炉況を悪化させる方向に炉内堆積形状が変化した場合には、炉内堆積形状を改善するための改善アクションが実施される。改善アクションとして、装入物の粒径が変化した際に、篩測定などによって得られた装入物のデータに基づき、装入物の分布を調整する方法が知られている。
【0003】
この改善アクションでは、篩測定などが数時間毎に実施され、測定中(データを測定する数時間の間)は炉内装入物の粒径が変化しないものとして扱われていた。しかしながら、実際には、搬送コンベア上を流れる炉内装入物の粒径が測定中に変化する場合があり、測定中は炉内装入物の粒径が変化しないことを前提として、炉内堆積形状(分布)を調整すると、実情にそぐわないため、分布調整の精度が低下する。
【0004】
当該課題を解決する方法として、特許文献1には、オンラインで連続的に粒径を測定し、その結果を分布モデルに適用することで高炉の操業状態を予測し、炉内の堆積形状(分布)の調整を行う方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、原料槽の後かつ高炉の前で高炉原料の粒径及び成分の少なくとも一方を測定する測定工程と、測定工程で得られる測定結果である原料性状、及び/又は、測定結果を演算して得られる演算結果である原料性状を取得する取得工程、並びに原料性状を高炉数学モデルに入力する入力工程を含む、シミュレーション方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、炉下部に設けられた羽口から送風して高炉を操業する高炉操業方法であって、高炉へ搬送されるコークスの粒度分布を逐次測定し、粒度分布から求められる指標に応じて送風量及びコークス比の少なくとも一方を調整する、高炉の操業方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-094283号公報
【特許文献2】特開2021-167447号公報
【特許文献3】国際公開第21/085221号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、通信手段を介して粒度計から取得した粒径を、その都度分布モデルに適用して計算する必要があり、計算に時間がかかるため、粒径を取得した原料が炉内に装入されるまでに、堆積形状(分布)の適切な調整アクションを速やかに実施できない、といった課題がある。
【0009】
特許文献2は、高炉原料の粒径変化に基づく堆積形状の変化までは、考慮していない。特許文献3は、安定操業のために送風量及びコークス比のうち少なくとも一方を調整する技術であり、送風量の調整は出銑比の変更につながるため好ましくなく、コークス比の増大はコストアップにつながる。
【0010】
本発明は、高炉原料の粒径が変化した際に、ベースの堆積形状、あるいは高炉内ガス流れを維持するための改善アクションを速やかに実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る高炉の操業方法は、(1)高炉原料を炉内に装入して、銑鉄を製造する高炉の操業方法において、原料槽から高炉までの間に配設される搬送コンベア上における高炉原料の粒径情報を、粒度計を用いて取得する粒径情報取得工程と、前記粒径情報取得工程の取得結果に基づき、高炉原料の平均粒径である第1の粒度計平均粒径を求める平均粒径算出工程と、予め準備した高炉原料の平均粒径と高炉原料の装入方法とを関連付けた装入調整情報に基づき、前記第1の粒度計平均粒径又は補正後の粒度計平均粒径に対応する高炉原料の装入方法を決定する装入方法決定工程と、前記装入方法決定工程で決定した装入方法に基づき、高炉原料を装入する高炉原料装入工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
(2)予め、搬送コンベア上から採取した高炉原料の平均粒径の真値と、前記の採取時に粒度計により取得した高炉原料の粒径情報に基づき算出した高炉原料の第2の粒度計平均粒径と、を把握しておき、前記第1及び第2の粒度計平均粒径の差分をΔL、前記真値と前記第2の粒度計平均粒径の差分をΔKLと定義したとき、前記補正後の粒度計平均粒径は、前記真値に前記ΔLを加算した値、又は、前記第1の粒度計平均粒径に前記ΔKLを加算した値である、ことを特徴とする上記(1)に記載の高炉の操業方法。
【0013】
(3)高炉原料の平均粒径と高炉内の堆積形状との相関情報を予め調べておき、前記相関情報に基づき、堆積形状をベースの堆積形状に近づけるための前記装入調整情報を作成する、ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の高炉の操業方法。
【0014】
(4)高炉原料の平均粒径と高炉内のガス流れとの相関情報を予め調べておき、前記相関情報に基づき、ガス流れをベースのガス流れに近づけるための前記装入調整情報を作成する、ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の高炉の操業方法。
【0015】
(5)前記高炉がベルレス式の高炉である場合、前記装入調整情報は、旋回シュートの傾動角に関する情報、旋回数に関する情報、高炉原料の装入量に関する情報及びストックラインに関する情報のうち少なくとも一つを含み、前記高炉がベル式の高炉である場合、前記装入調整情報は、ムーバブルアーマーの角度に関する情報、高炉原料の装入量の情報、ベルの開速度及びストックラインに関する情報のうち少なくとも一つを含む、ことを特徴とする上記(3)に記載の高炉の操業方法。
【0016】
(6)前記高炉がベルレス式の高炉である場合、前記装入調整情報は、旋回シュートの傾動角に関する情報、旋回数に関する情報、高炉原料の装入量に関する情報及びストックラインに関する情報のうち少なくとも一つを含み、前記高炉がベル式の高炉である場合、前記装入調整情報は、ムーバブルアーマーの角度に関する情報、高炉原料の装入量の情報、ベルの開速度及びストックラインに関する情報のうち少なくとも一つを含む、ことを特徴とする上記(4)に記載の高炉の操業方法。
【0017】
(7)前記粒径情報取得工程において、前記粒度計から通信手段により、粒径情報を取得することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の高炉の操業方法。
【0018】
(8)本発明に係る高炉に高炉原料を装入するための装入方法制御装置において、制御部と、原料槽から高炉までの間に配設される搬送コンベア上における高炉原料の粒径情報を取得し、この取得した粒径情報を前記制御部に送信する粒度計と、を有し、前記制御部は、前記粒度計が取得した粒径情報に基づき、高炉原料の平均粒径である第1の粒度計平均粒径を算出するとともに、予め準備した高炉原料の平均粒径と高炉原料の装入方法とを関連付けた装入調整情報に基づき、前記第1の粒度計平均粒径又は補正後の粒度計平均粒径に対応する高炉原料の装入方法を決定し、この決定した装入方法に基づき、高炉原料の装入制御を行う、ことを特徴とする。
【0019】
(9)本発明に係る高炉に原料を装入する原料装入装置の制御プログラムであって、粒度計が取得した原料槽から高炉までの間に配設される搬送コンベア上における高炉原料の粒径情報に基づき、高炉原料の平均粒径である第1の粒度計平均粒径を求める平均粒径算出ステップと、予め準備した高炉原料の平均粒径と高炉原料の装入方法とを関連付けた装入調整情報に基づき、前記第1の粒度計平均粒径又は補正後の粒度計平均粒径に対応する高炉原料の装入方法を決定する決定ステップと、前記決定ステップで決定した装入方法を原料装入装置に実行させる実行ステップと、を有する制御プログラム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高炉原料の粒径が変化した際に、ベースの堆積形状、あるいは高炉内ガス流れを維持するための改善アクションを速やかに実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】コークスの平均粒径及び周辺層厚/中間層厚の相関情報を模式的に示したである。
【
図3】鉱石の平均粒径及び周辺層厚/中間層厚の相関情報を模式的に示したグラフである。
【
図4】旋回シュートの制御方法を示したフローチャートである。
【
図5】測定平均粒径の補正方法を説明するためのグラフである。
【
図7】コークスのベースの堆積形状を示した図である。
【
図8】コークスの平均粒径低下時の堆積形状を示した図である。
【
図9】ノッチ調整後のコークスの堆積形状を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者等は、高炉原料の粒径情報に基づき、炉内堆積形状を早期に調整することによって、安定操業を継続する高炉の操業方法を発見した。
図1は、本発明の一実施形態である高炉の操業方法に用いられる高炉の概略図である。ただし、高炉の構成は、本発明の効果を阻害しない限り、適宜変更することができる。
高炉はベルレス式の高炉であり、炉頂には高炉原料Mを貯留する炉頂ホッパー4a及び炉頂ホッパー4bが設けられている。搬送コンベア3は無端回動式のベルトコンベアであり、炉頂ホッパー4a及び炉頂ホッパー4bに向かって高炉原料Mを搬送する。
【0023】
高炉原料Mには、鉱石及びコークスが含まれる。鉱石には焼結鉱、ペレット、塊鉱石、非焼成含炭塊成鉱を用いることができる。また、鉱石には、小塊コークス等の還元補助剤が含まれていてもよい。コークスには、フェロコークスが含まれていてもよい。
【0024】
旋回シュート(原料装入装置に相当する)5は、傾動角が可変であり、上下方向に延びる軸周りに旋回する。制御部6は、旋回シュート5に対して動作指令MCを出力することにより、旋回シュート5の駆動を制御する。制御部6は、CPU6A(CPU:Central Processing Unit)、DB6B(DB:Data Base)等が協働することによって、実現される。
【0025】
粒度計7は、炉頂ホッパー4a,4bに装入される高炉原料Mを撮像して、高炉原料Mの粒径情報GI(つまり、高炉原料Mの粒度分布に関する情報)を取得する(「粒径情報取得工程」に相当する)。粒度計7には、撮像素子(例えば、CCDセンサ、CMOSイメージセンサ)を備えた撮像カメラを用いることができる。粒度計7は、搬送コンベア3上の高炉原料Mを撮像できる位置に設置されていればよい。ただし、搬送コンベア3に高炉原料Mを落下供給する中継ホッパー(不図示)が設置されている場合には、当該中継ホッパーに向かって高炉原料Mを搬送する搬送コンベアに粒度計7を設置してもよい。すなわち、粒度計7は、不図示の原料槽から高炉までの間に配設された搬送コンベア上の高炉原料Mを撮像できる位置に設置されていればよい。
【0026】
粒度計7は、制御部6に対して通信可能に接続されており、取得した粒径情報GIを、制御部6に対して順次送信することができる。通信手段は、無線であってもよいし、有線であってもよい。
【0027】
制御部6は、粒度計7が取得した粒径情報GIに基づき、コークス及び/又は鉱石の平均粒径(つまり、第1の粒度計平均粒径)を算出する(「平均粒径算出工程」に相当する)とともに、この算出した第1の粒度計平均粒径又は補正後の粒度計平均粒径(詳細については、後述する)に基づき、ベースの堆積形状が維持されるように、旋回シュート5の駆動方法を決定するとともに(「装入方法決定工程」に相当する)、この決定した駆動方法にしたがった駆動制御を行う(「高炉原料装入工程」に相当する)。具体的には、コークス,鉱石の平均粒径に対応した旋回シュート5の駆動プログラムを予めDB6Bに記憶させておき、制御部6が、DB6Bから当該駆動プログラムを読み出すことによって、旋回シュート5の駆動を制御することができる。ベースの堆積形状とは、高炉が安定操業しているときの堆積形状である。
旋回シュート5、制御部6及び粒度計7が協働することにより、装入方法制御装置を実現することができる。
【0028】
ここで、通常のベルレス式高炉の操業では、旋回シュート5の傾動角を数段階に設定し、各傾動角に対応する番号(以下、ノッチ番号ともいう)を付与している。したがって、各ノッチ番号における旋回シュート5の旋回数(言い換えると、旋回方法)を制御することにより、炉内堆積形状を調整することができる。すなわち、ベースの堆積形状を維持するための旋回シュート5の駆動プログラム(装入調整情報に相当する)を、平均粒径に紐づけて予めDB6Bに記憶させておけばよい。
【0029】
次に、旋回シュート5の駆動プログラムの作成方法について説明する。
まず、試験装置(例えば、1/3ベルレス試験装置)を用いて実高炉に対応した条件で高炉原料Mの装入を行い、コークス及び鉱石のそれぞれについて、平均粒径が変化した時の堆積形状の変化を調べ、相関情報を取得する。なお、1/3ベルレス試験装置を用いる場合、平均粒径も実炉の1/3程度とすることが望ましい。
各堆積形状は、例えば、プロフィールメータの測定結果に基づき、把握することができる。プロフィールメータは、堆積物の表面までの距離を測定するマイクロ波距離計を備えており、堆積物表面に向かってマイクロ波を照射して炉径方向に走査することによって、堆積物の表面プロフィールを取得する。
【0030】
堆積形状の変化は、互いに異なる2つの炉高領域の層厚比の変化を調べることにより把握してもよいし、一つの炉高領域の層厚変化を調べることにより把握してもよい。
例えば、平均粒径が変化したときの周辺層厚及び中間層厚の層厚比(2つの炉高領域の層厚比の一例であり、以下、「周辺層厚/中間層厚」ともいう)の変化を調べ、これを相関情報としてもよい。また、平均粒径が変化したときの周辺層厚の層厚変化(一つの炉高領域における層厚変化の一例である)を調べ、これを相関情報としてもよい。周辺層と中間層の境界は適宜定めることができる。ここで、周辺層厚とは、周辺層における層厚の平均値のことである。中間層厚とは、中間層における層厚の平均値のことである。
詳細は、後述する実施例で述べるが、平均粒径と周辺層厚/中間層厚との間には、比例関係が成立し、コークス及び鉱石ともに、平均粒径が小さくなるほど周辺層厚/中間層厚が大きくなる(言い換えると、相対的に周辺層厚が増厚する)ことを、本発明者等は確認している。
【0031】
図2は、コークスの平均粒径及び周辺層厚/中間層厚の相関情報を模式的に示したグラフである。ベースの操業と現在の操業とのコークスの平均粒径の差分を求めることにより、ベースの操業に対する周辺層厚/中間層厚の変化量を把握することができる。なお、図
2の横軸は、コークスの平均粒径をベースの操業に対する差分で表しており、「Δコークスの平均粒径」と表記している。
図2の縦軸は、周辺層厚/中間層厚をベースの操業に対する差分で表しており、「Δ周辺層厚/中間層厚(-)」と表記している。
図3は、鉱石の平均粒径及び周辺層厚/中間層厚の相関情報を模式的に示したグラフである。ベースの操業と現在の操業との鉱石の平均粒径の差分を求めることにより、ベースの操業に対する周辺層厚/中間層厚の変化量を把握することができる。なお、
図3の横軸は、鉱石の平均粒径をベースの操業に対する差分で表しており、「Δ鉱石の平均粒径」と表記している。
図3の縦軸は、周辺層厚/中間層厚をベースの操業に対する差分で表しており、「Δ周辺層厚/中間層厚(-)」と表記している。
上述したベースの操業とは、高炉が安定操業できていたときの高炉操業のことである(以下、同様である)。
ここで、鉱石及びコークスのうちコークスの平均粒径のみがベースの操業に対して変化した場合には、
図2の相関情報から、周辺層厚/中間層厚の変化量を把握することができる。また、鉱石及びコークスのうち鉱石の平均粒径のみがベースの操業に対して変化した場合には、
図3の相関情報から、周辺層厚/中間層厚の変化量を把握することができる。鉱石及びコークスの平均粒径がともに変化した場合には、鉱石及びコークスそれぞれの相関情報から、周辺層厚/中間層厚の変化量を算出し、これらを加算することにより、周辺層厚/中間層厚の変化量を把握することができる。
【0032】
堆積形状の変化を、一つの炉高領域の層厚変化により把握する場合にも、同様の方法で相関情報を取得することができる。堆積形状の変化を、周辺層厚/中間層厚以外の層厚比の変化で把握する場合にも、同様の方法で相関情報を取得することができる。
【0033】
上述の相関情報を取得した後、例えば、堆積形状推定ツールを用いて、ベースの堆積形状を維持するための旋回方法を、ベースの操業の平均粒径に対する差分に対応づけて調べる。堆積形状推定ツールには、「ISIJ International,Vol.43(2003),No.5,pp620‐629」に記載されたツールを用いることができる。
【0034】
表1は、各差分に対応した旋回シュートの旋回方法を模式的に示したデータテーブルである。ΔL1乃至ΔLnはそれぞれ、ベースの操業に対する平均粒径の差分である。
【表1】
ノッチ番号は、上述の通り旋回シュート5の傾動角に対応しており、番号の数が大きくなるほど、傾動角が小さくなる(つまり、高炉原料Mが内振りになる)。
ベースの堆積形状に近づけるための旋回シュート5の旋回方法(旋回数)を、差分毎に堆積形状推定ツールによって推定しておき、この推定結果に基づき、駆動プログラムを構築すればよい。例えば、ベースの操業の平均粒径に対する差分がΔL1である場合、ノッチ番号2:1旋回、ノッチ番号3:2旋回、ノッチ番号4:1旋回、ノッチ番号5:2旋回、ノッチ番号6:2旋回、ノッチ番号7:2旋回、ノッチ番号8:1旋回なる旋回方法によって、旋回シュート5を旋回させる。
それぞれの平均粒径の高炉原料Mは、高炉原料Mを篩分けすることによって得ることができる。
なお、表1のデータテーブルでは、ベースの操業の平均粒径に対する差分と旋回方法とを対応付けて装入調整情報を規定したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、平均粒径の絶対値と旋回方法とを対応付けて、装入調整情報としてもよい。
【0035】
次に、
図4のフローチャートを参照しながら、ベースの堆積形状を維持するための旋回シュートの制御方法について、説明する。制御部6は、粒度計7から搬送コンベア3上に堆積した高炉原料Mの粒径情報GIを取得し(「粒径情報取得工程」に相当する)、この取得結果に基づき第1の粒度計平均粒径を算出する(ステップS101)。この第1の粒度計平均粒径を算出する工程が、「平均粒径算出工程」に相当する。粒度計7の測定周期は、特に限定しないが、例えば、1秒程度に設定することができる。
【0036】
ここで、粒度計7は、搬送コンベア3上に堆積している高炉原料Mの表面のみを撮像するため、例えば、粗大粒の間隙に微細粒が潜り込み、この微細粒が撮像されなかった場合には、真値と第1の粒度計平均粒径との間に誤差が生じる。真値とは、搬送コンベア3上の高炉原料Mを採取し、篩で分級することにより取得される平均粒径のことである。したがって、後述するステップS102及びS103において、第1の粒度計平均粒径に代えて、補正後の粒度計平均粒径を使用してもよい。
【0037】
図5を参照しながら、補正後の粒度計平均粒径の算出方法について、より具体的に説明する。
図5は、時々刻々と変化する、真値及び粒度計平均粒径を示している。T2は現在の時刻であり、T1はT2より前の時刻である。
同図を参照して、真値及び粒度計平均粒径には誤差があるが、差分ΔK(時刻T1及びT2における真値の差分)と、差分ΔL(時刻T1及びT2における粒度計平均粒径の差分)とは、ほぼ一致すると考えられる。
予め、時刻T1における真値K1(特許請求の範囲に記載の「真値」に相当する)、時刻T1における粒度計平均粒径L1(特許請求の範囲に記載の「第2の粒度計平均粒径」に相当する)を把握しておき、真値K1に差分ΔLを加算することにより、時刻T2における真値K2(つまり、補正後の粒度計平均粒径)を精度よく推定することができる。
なお、時刻T1における真値K1、時刻T1における粒度計平均粒径L1は、DB6Bに記憶させておくことができる。
また、真値K1及び粒度計平均粒径L1(第2の粒度計平均粒径)の差分ΔKLは、時刻によってほぼ変化しないと考えられるため、予め差分ΔKLを把握しておき、時刻T2における粒度計平均粒径L2(第1の粒度計平均粒径)にΔKLを加算することにより、真値K2(つまり、補正後の粒度計平均粒径)を推定してもよい。
【0038】
再び
図4のフローチャートを参照して、制御部6は、第1の粒度計平均粒径又は補正後の粒度計平均粒径がベースの操業の平均粒径に対して所定量以上変化したかどうかを判別する(ステップS102)。所定量は、高炉の安定操業を実現する観点から、適宜定めることができる。なお、「ベースの操業の平均粒径」は、真値である。
制御部6は、第1の粒度計平均粒径又は補正後の粒度計平均粒径に対応した旋回方法を、DB6Bに記憶された装入調整情報に基づき決定し(「装入方法決定工程」に相当する)、この決定した旋回方法に基づき、旋回シュート5を駆動する(ステップS103)。この「決定した旋回方法に基づき、旋回シュート5を駆動する」ことが、「高炉原料装入工程」に相当する。
ここで、ステップS102、S103における「第1の粒度計平均粒径又は補正後の粒度計平均粒径」とは、第1の粒度計平均粒径及び補正後の粒度計平均粒径のうちいずれか一方を用いることができる、という意味である。ただし、補正後の粒度計平均粒径を使用したほうが、精度が高いため、望ましい。
【0039】
このように、予め粒度変化に対する堆積形状の変化を推算し、その堆積形状変化を小さくするための装入方法を調整アクションとして準備しておくことにより、実炉において、ベースの堆積形状を維持することができる。調整時に、高炉数学モデルを使って、調整方法を決定する必要もないため、速やかに調整アクションを実施することができる。
なお、ベースの操業の操業条件(例えば、出銑量、コークス比等の操業度)が変化した場合には、表1に相当する情報を再度取得し、この取得結果に基づき作成した駆動プログラムに基づき、高炉を操業すればよい。これにより、調整アクションの精度をより一層高めることができる。
【0040】
高炉操業は、一般的に出銑量一定を維持するため、送風量の調整は好ましくなく、また、コークス比を上げるとコストが増大する。本実施形態では、送風量(出銑量)及びコークス比をベースの操業から変えずに、旋回シュート5の駆動を制御するだけで、堆積形状が維持され、安定操業を継続することができる。
【0041】
次に、本発明の実施例について詳細に説明する。
1/3ベルレス試験装置を用いて実高炉と同一の条件で高炉原料の装入を行い、平均粒径変化時の堆積形状の変化を調べた。1/3ベルレス試験装置とは、ベルレス式炉頂装入装置を模した実炉の1/3サイズの模型実験装置(半径1800mm程度)のことである。平均粒径は実炉の約1/3とし、装入量は実炉の約1/27とした。コークスの1チャージ当たりの装入量は約1.3t、鉱石の1チャージ当たりの装入量は約7.3tとした。
【0042】
装入条件は4000m
3級高炉が安定操業しているときの条件を踏襲した。使用する原料を篩分けし、平均粒径が互いに異なるコークス及び鉱石を得た。それぞれのコークス及び鉱石の平均粒径を表2に示す。
【表2】
【0043】
表2の原料を用いて、ベース(鉱石3.6mm、コークス11.0mm)に対して、鉱石の粒径のみを拡大させたときの堆積形状の変化、コークスの粒径のみを拡大させたときの堆積形状の変化を求めた。粒径以外の装入条件は同一とした。堆積形状は、2Dプロフィールメータにより取得し、周辺層厚と中間層厚の比(周辺層厚/中間層厚(-))を算出した。なお、周辺層厚は、周辺層の複数の炉径位置で測定した各層厚の算術平均値とした。中間層厚は、中間層の複数の炉径位置で測定した各層厚の算術平均値とした。
【0044】
炉中心を0、炉壁を1とした高炉無次元半径で、0.7以上1.0以下の領域を周辺層とし、この周辺層の厚みを周辺層厚(つまり、周辺層の炉中心側及び炉壁側の端部はそれぞれ0.7及び1.0である)とした。また、0.4以上0.7未満の領域を中間層とし、この中間層の厚みを中間層厚(つまり、中間層の炉中心側の端部は0.4であり、炉壁側の端部は0.7近傍である)とした。
【0045】
算出した周辺層厚/中間層厚(-)を、
図6のグラフにプロットした。その結果、鉱石の粒径のみを拡大させたときの堆積形状の変化は、一次式(y=-0.02X)で定義できることがわかった。また、コークスの粒径のみを拡大させたときの堆積形状の変化も、一次式(y=-0.06 X)で定義できることがわかった。すなわち、コークス、鉱石ともに平均粒径が小さくなると周辺層厚/中間層厚(-)が大きくなる(言い換えると、相対的に周辺層厚が大きくなる)ことがわかった。実施例では、平均粒径が1mm変化すると、周辺層厚/中間層厚(-)の変化は鉱石が0.02、コークスが0.06であったが、これを実炉換算すると、平均粒径が3mm変化すると、周辺層厚/中間層厚(-)の変化は鉱石が0.02、コークスが0.06となる。
【0046】
図6の結果に基づき、実炉スケールにおいて平均粒径が縮径した時の調整方法を、堆積形状変化ツールを用いて、検討した。具体的には、実炉においてコークスの平均粒径が3mm小さくなった時に、堆積形状をベースの操業と同じにする調整方法を検討した。
【0047】
図7は、ベースの操業のコークスの堆積形状を示しており、
図8は、ベースの操業に対してコークスの平均粒径が3mm小さくなったとき(言い換えると、周辺層厚/中間層厚(-)が0.06大きくなったとき)のコークスの堆積形状を示している。なお、
図8において、実線が、ベースの操業のコークスの堆積形状であり、波線が、平均粒径が3mm縮径したときのコークスの堆積形状(以下、現堆積形状ともいう)である。
【0048】
堆積形状変化ツールを用いて、現堆積形状をベースの堆積形状に調整するための調整方法を検討し、表3のデータテーブルを得た。
【表3】
旋回シュートの駆動方法を「ベース」から「調整後」に変更、つまり、コークス装入が少し内振りになるようにノッチを変更することにより、
図9に示すように、ベースの操業と同等の堆積形状が得られることがわかった。
【0049】
実炉において、コークスの平均粒径がベースの操業に対して3mm小さくなったときに、上記結果に基づき、ノッチを調整し、操業したときの結果を表4に示す。
【表4】
表4に示すようにコークスの平均粒径(コークスMS)が低下したときにおいても還元材比(RAR)、コークス比(CR)を維持しながら、通気性を一定として安定操業を継続することができた。ノッチを調整することによる効果が発現されたと考えられる。なお、「コークスの平均粒径(コークスMS)が低下する」は、コークス粒径が相対的に大きいコークスの割合が減少、或いはコークス粒径が相対的に小さいコークスの割合が増大して、粒度分布が変化することによって、発生する。
【0050】
(変形例1)
上述の実施形態では、ベルレス高炉において、旋回シュートの旋回数を変更することにより堆積形状を調整したが、本発明はこれに限るものではなく、旋回シュートの傾動角、高炉原料Mの装入量及び装入時ストックラインを調整パラメータとしてもよい。また、これらの調整パラメータ(旋回シュートの旋回数、傾動角、高炉原料Mの装入量及び装入時ストックライン)のうち複数の調整パラメータをベースの操業の条件から変更してもよい。
この場合、上述の実施形態で説明したように、平均粒径と調整パラメータを対応付けた表1に相当するデータテーブルを予め準備しておき、当該データテーブルに基づき旋回シュートの駆動プログラムを作成するとよい。
【0051】
(変形例2)
本発明は、旋回シュートを有しないベル高炉にも適用することができる。この場合、ムーバブルアーマーの角度、ベルの開速度、高炉原料Mの装入量及び装入時ストックラインのうち少なくとも一つを調整パラメータとすることができる。
【0052】
(変形例3)
上述の実施形態では、高炉原料Mの平均粒径が変化したときの堆積形状の変化を調べることにより、表1のデータテーブルを取得したが、本発明はこれに限るものではなく、高炉原料Mの平均粒径が変化したときの炉内ガス流れの変化を調べることにより、表1に相当するデータテーブル(装入調整情報に相当する)を取得してもよい。炉内のガス流れは、高炉数学モデルにより評価することができる。なお、高炉数学モデルとは、高炉内を解析するモデルのことである。また、機械学習やAIを使って炉内ガス流れを推定し、装入調整情報を取得しても良い。すなわち、ベース及び平均粒径変化後の炉径方向におけるガス流量分布が、互いに同一の分布となるような装入調整情報を調整メニューとして準備しておけばよい。
【0053】
(変形例4)
上述の実施形態では、制御部6がDB6Bから駆動プログラムを読み出すことによって旋回シュート5の駆動を制御したが、本発明はこれに限るものではなく、オペレータがオペレータ室の機器を操作することによって、旋回シュート5の駆動を制御してもよい。
【符号の説明】
【0054】
3 搬送コンベア
5 旋回シュート
6 制御部
6A CPU
6B DB
7 粒度計