(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089291
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】C-配糖体のアグリコン体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 17/06 20060101AFI20240626BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C12P17/06
C12N1/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204564
(22)【出願日】2022-12-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 賢則
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC19
4B064AC40
4B064CA02
4B064CD22
4B064DA20
4B065AA01X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BB26
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】本開示の課題は、少なくとも、C-配糖体から前記C-配糖体のアグリコン体を製造する技術の提供である。
【解決手段】C-配糖体を含有する組成物において、C-配糖体から前記C-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物を培養する
工程を含む、C-配糖体のアグリコン体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C-配糖体を含有する組成物において、C-配糖体から前記C-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物を培養する工程を含む
、C-配糖体のアグリコン体の製造方法。
【請求項2】
前記C-配糖体がC-グルコシドである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記C-配糖体がポリフェノールC-配糖体である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記C-配糖体がキサントンC-配糖体、フラボンC-配糖体、及びイソフラボンC-配糖体からなる群から選択される一以上である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記C-配糖体がキサントンC-配糖体であって、
前記キサントンC-配糖体がマンギフェリンであり、前記アグリコン体がノラチリオールである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記組成物が植物体である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記植物体がマンゴー、サラシア、沈香、及びハナスゲからなる群から選択される一以上の植物体である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記C-配糖体がフラボンC-配糖体であって、
前記フラボンC-配糖体がホモオリエンチンであり、前記アグリコン体がエリオジクチオールである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項9】
前記組成物が植物体である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記植物体がアサイー及びトケイソウからなる群から選択される一以上の植物体である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記組成物が、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、及びそれらの誘導体からなる包接化合物の群から選択される1種以上をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ブラウティア(Blautia)属に属する微生物がブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)に属する微生物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)に属する微生物が、ブラウティア・ホ
ミニス(Blautia hominis)JCM 32276株である、請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、C-配糖体のアグリコン体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物が作る化合物の多くは糖と結合している。これらの化合物は配糖体と呼ばれ、一般に、酸素原子を介して糖と化合物が結合するO-配糖体という形をとるが、炭素原子に直接糖が結合したC-配糖体も存在する。これらの配糖体は、体内に摂取されると、腸内細菌によって糖部分が切断されてアグリコン体となり、種々の活性を示す。
【0003】
C-配糖体のアグリコン体を生産する方法としては、従来、化学合成や微生物を用いた発酵により生産する方法が知られていた。例えば、受領番号NITE AP-03226のバチルス・
エスピー(Bacillus sp.)KM7-1株と、バクテロイデス・エスピー(Bacteroides sp.) MANG株は、C-配糖体の一種として知られるマンギフェリンから、そのアグリコン体であ
るノラチリオールを生成することが知られている(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2)。また、DSM 106146株であるカテニバチルス・シンデンス(Catenibacillus scindens)CG19-1株は、マンギフェリンからノラチリオールを生成すること、及びホモオリエ
ンチンからルテオリンを生成することなどが知られている(非特許文献3、非特許文献4)。
【0004】
このように、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する微生物が知られている。しかし、ブラウティア属に属する微生物がC-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生産することについては知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Biological and Pharmaceutical Bulletin 28(9) 1672-1678 (2005)
【非特許文献2】Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 85, 4, 989-997 (2021)
【非特許文献3】Environmental Microbiology, 13(2) 482-494 (2011)
【非特許文献4】International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 68:3356-3361 (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の課題は、少なくとも、C-配糖体から前記C-配糖体のアグリコン体を製造する技術の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、C-配糖体のグリコシル基を脱離してそのC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有する微生物を新たに発見し、それを用いることで上記課題が解決できることを見出した。本開示は下記の態様を含む。
【0009】
[1]C-配糖体を含有する組成物において、C-配糖体から前記C-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物を培養する工程を
含む、C-配糖体のアグリコン体の製造方法。
[2]前記C-配糖体がC-グルコシドである、[1]に記載の製造方法。
[3]前記C-配糖体がポリフェノールC-配糖体である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]前記C-配糖体がキサントンC-配糖体、フラボンC-配糖体、及びイソフラボンC-配糖体からなる群から選択される一以上である、[3]に記載の製造方法。
[5]前記C-配糖体がキサントンC-配糖体であって、
前記キサントンC-配糖体がマンギフェリンであり、前記アグリコン体がノラチリオールである、[4]に記載の製造方法。
[6]前記組成物が植物体である、[5]に記載の製造方法。
[7]前記植物体がマンゴー、サラシア、沈香、及びハナスゲからなる群から選択される一以上の植物体である、[6]に記載の製造方法。
[8]前記C-配糖体がフラボンC-配糖体であって、
前記フラボンC-配糖体がホモオリエンチンであり、前記アグリコン体がエリオジクチオールである、[4]に記載の製造方法。
[9]前記組成物が植物体である、[8]に記載の製造方法。
[10]前記植物体がアサイー及びトケイソウからなる群から選択される一以上の植物体である、[9]に記載の製造方法。
[11]前記組成物が、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、及びそれらの誘導体からなる包接化合物の群から選択される1種以上をさらに含む、[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]前記ブラウティア(Blautia)属に属する微生物がブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)に属する微生物である、[1]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]前記ブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)に属する微生物が、ブラウティ
ア・ホミニス(Blautia hominis)JCM 32276株である、[12]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、少なくとも、C-配糖体から前記C-配糖体のアグリコン体を製造する技術を提供できるという効果を奏しうる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0012】
本明細書において、JCMとの文言から始まる菌株の受託番号は、Japan Collection of Microorganisms(国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発
室、郵便番号:305-0074、住所:茨城県つくば市高野台3-1-1)に保存されている微生物
に付与された番号であり、同機関から入手することができる。
【0013】
本開示の一態様は、C-配糖体を含有する組成物において、C-配糖体から前記C-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物を
培養する工程を含む、C-配糖体のアグリコン体の製造方法である。C-配糖体の存在下で、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物を培養することで、そのC-配糖体のアグリコン体が生成するこ
とであってよい。
【0014】
(C-配糖体)
本明細書において、「C-配糖体」とは、糖化合物と有機化合物が炭素原子を介して結合した化合物をいう。すなわち、糖の1位の炭素原子と、有機化合物の炭素原子とが直接グリコシド結合(以下、C-グリコシド結合とも称する)した化合物をいう。
また、「C-配糖体のアグリコン体」は、通常、C-配糖体からC-グリコシド結合に係るグリコシル基が脱離していること以外は前記C-配糖体と同一の構造である化合物であるが、当該C-配糖体のアグリコン体を経由することが当業者にとって技術常識である限り、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物によりさらに代謝された化合物となってもよく、このとき、系
において当該C-配糖体のアグリコン体が検出されなくてもよい。
例えば、C-配糖体がホモオリエンチンであるとき、前記C-配糖体からC-グリコシド結合に係るグリコシル基が脱離していること以外は前記C-配糖体と同一の構造である化合物とはルテオリンのことであるが、当該ルテオリンは、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物によりさ
らに代謝されてエリオジクチオールとなってもよく、このとき、系においてルテオリンが検出されなくてもよい。ホモオリエンチンからエリオジクチオールが生成するとき、ルテオリンを経由することは当業者にとって技術常識である。
エリオジクチオール(Eriodictyol)は、ホモオリエンチンの脱グリコシル化を経て生
成するアグリコン体であり、(S)-3',4',5,7-テトラヒドロキシフラバノンともいう。
【0015】
C-配糖体は、一又は二以上の糖がC-グリコシド結合した化合物であってよく、このとき、C-配糖体のアグリコン体は、一又は二以上のC-グリコシド結合に係るグリコシル基が脱離されて生成した化合物であってよい。C-配糖体は、好ましくは、一の糖がC-グリコシド結合した化合物であり、このとき、C-配糖体のアグリコン体は、一のC-グリコシド結合に係るグリコシル基が脱離されて生成した化合物である。
用いるC-配糖体は、1種又は2種以上のC-配糖体であってよく、生成されるC-配糖体のアグリコン体は、前記1種又は2種以上のC-配糖体のアグリコン体であってよい。
C-配糖体及び前記C-配糖体のアグリコン体は、O-グリコシド結合、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合等の、C-グリコシド結合以外のグリコシド結合を有していてもよい。
【0016】
C-配糖体としては、特に制限されず、公知のC-配糖体を用いることができる。
C-配糖体に結合する糖としては、特に制限されず、単糖であっても多糖であってもよく、単糖であることが好ましい。単糖としては、5員環構造をとる糖(フラノース)であっても6員環構造をとる糖(ピラノース)であってもよく、ピラノースであることが好ましい。単糖は、D体及びL体のいずれであってもよく、D体が好ましい。また、単糖は、α型及びβ型のいずれであってもよく、β型が好ましい。
フラノースとしては、リボース、デオキシリボースなどが挙げられ、ピラノースとしては、グルコース、ガラクトースなどが挙げられる。この中でもグルコースが好ましく、β-D-グルコースがより好ましい。すなわち、C-配糖体は、C-グルコシドであることが好ましく、C-β-D-グルコシドであることがより好ましい。
C-配糖体に結合する糖は、1種又は2種以上の糖であってよい。
【0017】
C-配糖体に結合する有機化合物としては、特に制限されないが、ポリフェノールが好ましい。すなわち、C-配糖体は、ポリフェノールC-配糖体であることが好ましい。この中でも、ポリフェノールC-配糖体は、キサントンC-配糖体、フラボンC-配糖体、及びイソフラボンC-配糖体からなる群から選択される一以上であることが好ましい。
【0018】
「キサントンC-配糖体」は、キサントン骨格を有する化合物を有機化合物として含むC-配糖体をいう。キサントンC-配糖体としては、特に制限されないが、糖の1位の炭素原子と、キサントン骨格の2位の炭素原子及び4位の炭素原子からなる群から選択される一以上とがC-グリコシド結合した化合物が好ましい。キサントンC-配糖体としては、マンギフェリン、イソマンギフェリン、ホモマンギフェリン、ネオマンギフェリンなどが挙げられる。
キサントンC-配糖体がマンギフェリンのとき、キサントンC-配糖体のアグリコン体はノラチリオールであり、キサントンC-配糖体がイソマンギフェリンのとき、キサントンC-配糖体のアグリコン体はノラチリオールであり、キサントンC-配糖体がホモマンギフェリンのとき、キサントンC-配糖体のアグリコン体は3-メトキシ-1,6,7-トリヒド
ロキシキサントンであり、キサントンC-配糖体がネオマンギフェリンのとき、キサントンC-配糖体のアグリコン体はノラチリオール-7-O-グルコシドである。
キサントンC-配糖体は、好ましくはマンギフェリンであり、このとき、キサントンC-配糖体のアグリコン体は、ノラチリオールである。
【0019】
マンギフェリン(Mangiferin)は、キサントン類の化合物であり、1,3,6,7-テトラヒドロキシキサントンC2-β-D-グルコシドともいう。マンギフェリンは、マンゴー、サラシア、沈香(じんこう)、ハナスゲなどの植物に含まれる。
イソマンギフェリン(Isomangiferin)は、キサントン類の化合物であり、4-(β-D-グ
ルコピラノシル)-1,3,6,7-テトラヒドロキシ-9H-キサンテン-9-オンともいう。イソマン
ギフェリンは、マンゴー、ハナスゲなどの植物に含まれる。
ホモマンギフェリン(Homomangiferin)は、キサントン類の化合物であり、2-(β-D-グルコピラノシル)-1,6,7-トリヒドロキシ-3-メトキシ-9H-キサンテン-9-オンともいう。ホモマンギフェリンは、マンゴーなどの植物に含まれる。
ネオマンギフェリン(Neomangiferin)キサントン類の化合物であり、2-β-D-グルコピラノシル-7-(B-D-グルコピラノシロキシ)-1,3,6-トリヒドロキシ-9H-キサンテン-9-オン
ともいう。ネオマンギフェリンは、マンゴーなどの植物に含まれる。
【0020】
ノラチリオール(Norathyriol)は、マンギフェリンのアグリコン体であり、また、イ
ソマンギフェリンのアグリコン体でもあり、1,3,6,7-テトラヒドロキシキサントンともいう。
3-メトキシ-1,6,7-トリヒドロキシキサントンは、ホモマンギフェリンのアグリコン体
である。
ノラチリオール-7-O-グルコシドは、ネオマンギフェリンのアグリコン体である。
【0021】
「フラボンC-配糖体」は、フラボン骨格を有する化合物を有機化合物として含むC-配糖体をいう。フラボンC-配糖体としては、特に制限されないが、糖の1位の炭素原子と、フラボン骨格の6位の炭素原子及び8位の炭素原子からなる群から選択される一以上とがC-グリコシド結合した化合物が好ましい。フラボンC-配糖体としては、ホモオリエンチン、オリエンチンなどが挙げられる。フラボンC-配糖体は、好ましくはホモオリエンチン及びオリエンチンからなる群から選択される一以上であり、より好ましくはホモオリエンチンである。
また、フラボンC-配糖体がホモオリエンチンであるとき、フラボンC-配糖体のアグリコン体は、ルテオリンである。
フラボンC-配糖体がオリエンチンであるとき、フラボンC-配糖体のアグリコン体は、ルテオリンである。
【0022】
ホモオリエンチン(Homoorientin)は、フラボノイド類の化合物であり、ルテオリン6-C-β-D-グルコシドともいう。ホモオリエンチンは、別名イソオリエンチンともいう。ホ
モオリエンチンは、アサイー、トケイソウなどの植物に含まれる。
オリエンチン(Orientin)は、フラボノイド類の化合物であり、ルテオリン8-C-β-D-
グルコピラノシドともいう。オリエンチンは、ルイボス、アサイー、キビなどの植物に含まれる。
【0023】
ルテオリン(Luteolin)は、オリエンチンのアグリコン体であり、また、ホモオリエンチンのアグリコン体でもあり、3',4',5,7-テトラヒドロキシフラボンともいう。
【0024】
「イソフラボンC-配糖体」は、イソフラボン骨格を有する化合物を有機化合物として含むC-配糖体をいう。イソフラボンC-配糖体としては、特に制限されないが、糖の1位の炭素原子と、イソフラボン骨格の8位の炭素原子とがC-グリコシド結合した化合物が好ましい。イソフラボンC-配糖体としては、プエラリンなどが挙げられる。イソフラボンC-配糖体は、好ましくはプエラリンであり、このとき、イソフラボンC-配糖体のアグリコン体は、ダイゼインである。
【0025】
プエラリン(Puerarin)は、イソフラボノイド類の化合物であり、8-(β-D-グルコピラノシル)-4',7-ジヒドロキシイソフラボンともいう。プエラリンは、クズなどの植物に含
まれる。
【0026】
ダイゼイン(Daidzein)は、プエラリンのアグリコン体であり、4',7-ジヒドロキシイ
ソフラボンともいう。
【0027】
(C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物)
本態様における、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物としては、C-配糖体から前記C-配糖体のアグ
リコン体を産生する能力を有する限り特に制限されないが、具体的には、ブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)に属する微生物、ブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)に属する微生物、ブラウティア・コッコイデス(Blautia coccoides)に属する微生物、ブラウティア・シンキ(Blautia schinkii)に属する微生物等が挙げられる。
【0028】
ブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)に属する微生物としては、例えば、ブラウ
ティア・ホミニス(Blautia hominis)JCM 32276株等が挙げられる。
ブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)に属する微生物としては、例えば、ブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)JCM 1471株等が挙げられる。
ブラウティア・コッコイデス(Blautia coccoides)に属する微生物としては、例えば
、ブラウティア・コッコイデス(Blautia coccoides)JCM 1395株等が挙げられる。
ブラウティア・シンキ(Blautia schinkii)に属する微生物としては、例えば、ブラウティア・シンキ(Blautia schinkii)JCM 14657株等が挙げられる。
【0029】
特に、ブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)JCM 32276株は、ヒト由来の腸内細菌であるため、C-配糖体のアグリコン体を含む機能性食品の生産などに適する。また、前記菌株は、従来知られているバチルス(Bacillus)属に属する微生物などの微生物を用いた場合と比較して、高収率でC-配糖体のアグリコン体を得ることができる点で、好ましい。
以上の微生物は、種、株に制限はなく、1種でも2種以上を用いてもよい。
【0030】
また、ブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)JCM 32276株を例にすると、前記寄託菌株は、それと同一の菌株に制限されず、前記寄託菌株と実質的に同等の菌株であってもよい。実質的に同等の菌株とは、その16S rRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と97.5%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは98.
7%以上、さらにより好ましくは99%以上、特に好ましくは100%の相同性を有する微生物である。本明細書において、「相同性」とは、同一性又は類似性をいい、好ましくは同一性をいう。16S rRNAの塩基配列の相同性は、BLASTなどの公知のプログラムを利用
することにより算出することができる。
さらに、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物は、本態様の効果が損なわれない限り、前記寄託菌株又は
それと実質的に同等の菌株から、変異処理、遺伝子組み換え、自然変異株の選択などによって育種された菌株であってもよい。
このことは、ブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)JCM 32276株以外の上記寄託菌株にも適用される。
【0031】
(C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物の静止菌体)
本態様における、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物は、その静止菌体を含む。
静止菌体とは、培養した微生物から遠心分離等の操作により培地成分を取り除き、水や生理食塩水等の塩溶液、あるいは緩衝液で洗浄し、洗浄液と同一の液に懸濁した菌体であって、増殖しない状態の菌体を指し、本態様においては、少なくとも、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生
物の菌体をいう。緩衝液としては、リン酸緩衝液、トリス‐塩酸緩衝液、クエン酸‐リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、MOPS緩衝液、酢酸緩衝液、グリシン緩衝液等が好ましい。緩衝液のpHや濃度は、常法に従い適宜調製したものを使用できる。
【0032】
(C-配糖体を含有する組成物)
本態様におけるC-配糖体を含有する組成物とは、該組成物において、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微
生物に、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成させることができるものであれば特に制限されない。
また、本態様におけるC-配糖体を含有する組成物は、C-配糖体のみを含有するものであってもよいし、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物にC-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生
成させることができる限り他の成分を含んでもよい。
また、本態様におけるC-配糖体を含有する組成物は、後述のようにして得られたC-配糖体の抽出物、又はこれを適宜濃縮したものであってもよい。
【0033】
C-配糖体は、市販品を用いてもよいし、公知の方法により植物体から調製したC-配糖体を用いてもよい。また、C-配糖体は、精製されたものを用いてもよいし、植物体から調製した、C-配糖体以外の成分が含まれる未精製物や粗精製物を用いてもよい。
【0034】
市販品のC-配糖体としては、例えば、東京化成工業製のマンギフェリン、メルク社製のイソマンギフェリン、関東化学社製のネオマンギフェリン、富士フィルム和光純薬製のホモオリエンチン、富士フィルム和光純薬製のオリエンチン、富士フィルム和光純薬製のプエラリンなどが挙げられる。
【0035】
植物体からC-配糖体を調製する場合、例えば、公知の方法により植物体からC-配糖体を抽出する方法が挙げられる。
植物体は、C-配糖体を含有するものであれば制限されないが、例えば、C-配糖体がマンギフェリンである場合、マンゴー(Mangifera indica)、サラシア(Salacia)、沈
香(じんこう)(Aquilaria agallocha)、及びハナスゲ(Anemarrhena asphodeloides)からなる群から選択される一以上の植物体が好ましく、C-配糖体がイソマンギフェリン
である場合、マンゴー(Mangifera indica)及びハナスゲ(Anemarrhena asphodeloides
)からなる群から選択される一以上の植物体が好ましく、C-配糖体がホモマンギフェリンである場合、マンゴー(Mangifera indica)の植物体が好ましく、C-配糖体がネオマンギフェリンである場合、マンゴー(Mangifera indica)の植物体が好ましく、C-配糖体がホモオリエンチンである場合、アサイー(Euterpe oleracea)及びトケイソウ(Passiflora caerulea)からなる群から選択される一以上の植物体が好ましく、C-配糖体が
オリエンチンである場合、ルイボス(Aspalathus linearis)、アサイー(Euterpe oleracea)、及びキビ(Panicum miliaceum)からなる群から選択される一以上の植物体が好ましく、C-配糖体がプエラリンである場合、クズ(Pueraria montana var. lobata)の植物体が好ましい。
【0036】
抽出に用いる植物体の部位としては特に限定されず、例えば、葉、樹皮、茎、花、枝、根、根茎、果実、果皮、蕾等が挙げられる。抽出部位は、植物がマンゴーである場合、葉及び樹皮からなる群から選択される一以上であることが好ましく、植物がサラシアである場合、根であることが好ましく、植物が沈香である場合、葉(沈香葉)であることが好ましく、植物がハナスゲである場合、根茎であることが好ましく、植物がアサイーである場合、果肉であることが好ましく、植物がトケイソウである場合、花であることが好ましく、植物がルイボスである場合、葉であることが好ましく、植物がキビである場合、果皮及び種子からなる群から選択される一以上であることが好ましく、植物がクズである場合、根及び茎からなる群から選択される一以上であることが好ましい。抽出に際しては、これらは生の状態でも乾燥状態でもよい。
【0037】
抽出に際して、植物体の抽出部位又はその乾燥物は、予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。抽出部位の乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。
【0038】
抽出は、常圧、若しくは加圧、減圧下で、室温、冷却又は加熱した状態で抽出溶媒に浸漬させて抽出する方法、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて抽出する方法並びに抽出部位を圧搾して抽出物を得る圧搾法等が挙げられ、これらの方法を単独で、又は2種以上を組み合わせて抽出を行うこともできる。
【0039】
浸漬によって抽出する場合、植物の葉、樹皮、茎、花、枝、根、根茎、果実、果皮、及び蕾からなる群から選択される一以上の乾燥物1質量部に対して溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、溶媒の沸点付近の温度であれば数時間浸漬することにより行うことができる。浸漬後は、室温まで冷却し、所望により不要物を除去した後、溶媒を減圧濃縮等により除去すればよい。濃縮液を5℃で静置し、析出した澱をろ過することにより、所望の抽出物を得ることができる。
【0040】
抽出溶媒としては、特に限定されないが、極性溶媒が好ましく、例えば、水;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;及びジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ヘキサン等のアルカン類から選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられる。
【0041】
C-配糖体を含有する組成物は、好ましくはC-配糖体を含有する培地であり、より好ましくは後述する「培地、及び培養によるC-配糖体のアグリコン体の生成」欄に記載した培地である。また、C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物が静止菌体である場合には、C-配糖体を含有
する、前述した水や塩溶液、緩衝液が好ましい。
尚、本明細書に記載されている「培地」とは、いずれも、最小培地を含む、微生物が増殖できる組成物をいい、微生物が増殖できない組成物、例えば、水や塩溶液、緩衝液などを含まないものとする。
【0042】
該組成物へC-配糖体を添加する場合には、C-配糖体のアグリコン体の生成前に添加しても、その途中で添加してもよく、また、一括添加、逐次添加、連続添加でもよい。
該組成物中のC-配糖体の含有量は、通常0.005g/L以上、好ましくは0.010g/L以上、より好ましくは0.030g/L以上、さらに好ましくは0.050g/L以上である。一方、通常100.000g/L以下、好ましくは20.000g/L以下、より好ましくは10.000g/L以下、さらに好ましくは5.000g/L以下である。例えば、0.005g/L以上100.000g/L以下、0.010g/L以上20.000g/L以下、0.030g/L以上10.000g/L以下、又は0.050g/L以上5.000g/L以下である。
【0043】
C-配糖体を含有する組成物は、C-配糖体を含有する植物体そのものであってもよい。そのため、前記植物体中や前記植物体上でブラウティア(Blautia)属に属する微生物
を培養してC-配糖体のアグリコン体を製造してもよい。
植物体は、C-配糖体を含有するものであれば制限されないが、例えば、C-配糖体がマンギフェリンである場合、マンゴー(Mangifera indica)、サラシア(Salacia)、沈
香(じんこう)(Aquilaria agallocha)、及びハナスゲ(Anemarrhena asphodeloides)からなる群から選択される一以上の植物体が好ましく、C-配糖体がイソマンギフェリンである場合、マンゴー(Mangifera indica)及びハナスゲ(Anemarrhena asphodeloides
)からなる群から選択される一以上の植物体が好ましく、C-配糖体がホモマンギフェリンである場合、マンゴー(Mangifera indica)の植物体が好ましく、C-配糖体がネオマンギフェリンである場合、マンゴー(Mangifera indica)の植物体が好ましく、C-配糖体がホモオリエンチンである場合、アサイー(Euterpe oleracea)及びトケイソウ(Passiflora caerulea)からなる群から選択される一以上の植物体が好ましく、C-配糖体が
オリエンチンである場合、ルイボス(Aspalathus linearis)、アサイー(Euterpe oleracea)、及びキビ(Panicum miliaceum)からなる群から選択される一以上の植物体が好ましく、C-配糖体がプエラリンである場合、クズ(Pueraria montana var. lobata)の植物体が好ましい。
【0044】
植物体の部位としては特に制限されず、例えば、植物体の葉、樹皮、茎、花、枝、根、根茎、果実、果皮、蕾等が挙げられる。植物がマンゴーである場合、葉及び樹皮からなる群から選択される一以上を用いることが好ましく、植物がサラシアである場合、根を用いることが好ましく、植物が沈香である場合、葉(沈香葉)を用いることが好ましく、植物がハナスゲである場合、根茎を用いることが好ましく、植物がアサイーである場合、果肉を用いることが好ましく、植物がトケイソウである場合、花を用いることが好ましく、植物がルイボスである場合、葉を用いることが好ましく、植物がキビである場合、果皮及び種子からなる群から選択される一以上を用いることが好ましく、植物がクズである場合、根及び茎からなる群から選択される一以上を用いることが好ましい。
【0045】
植物体中のC-配糖体の含有量は、植物体1g当たり、通常0.00001g以上、好ましくは0.0001g以上、より好ましくは0.001g以上、さらに好ましくは0.01g以上である。一方、通常0.5g以下、好ましくは0.3g以下、より好ましくは0.2g以下、さらに好ましくは0.1g以下である。例えば、0.00001g以上0.5g以下、0.0001g以上0.3g以下、0.001g以上0.2g以下、又は0.01g以上0.1g以下である。
【0046】
(培地、及び培養によるC-配糖体のアグリコン体の生成)
C-配糖体を含有する組成物は、C-配糖体を含有する培地であることが好ましい。該C-配糖体を含有する培地は特に限定されないが、例えば、C-配糖体を添加した、メルク社製のReinforced Clostridial Medium(RCM)、サーモサイエンティフィック社製のAnaerobe Basal Broth、日水製薬社製のGAMブイヨン等を使用することができる。培地は、
液体培地又は固体培地のいずれであってもよい。
【0047】
また、培地に、水溶性のC-配糖体以外の有機物を炭素源として加えることができる。水溶性のC-配糖体以外の有機物としては、グルコース、アラビノース、ソルビトール、フラクトース、マンノース、スクロース、トレハロース、キシロースなどの糖類;グリセロールなどのアルコール類;吉草酸、酪酸、プロピオン酸、酢酸、ギ酸、フマル酸などの有機酸類などを挙げることができる。
【0048】
培地に加える炭素源としてのC-配糖体以外の有機物の濃度は、効率的に発育させるために適宜調節することができる。一般的には、0.1~10wt/vol%の範囲から添加量を選択することができる。
【0049】
上記の炭素源に加えて、培地に窒素源が加えることができる。窒素源としては通常の発酵に用いうる各種の窒素化合物を用いることができる。
好ましい無機窒素源として、アンモニウム塩、硝酸塩などを、より好ましくは、硫安、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、硝酸カリウム及び硝酸ソーダなどを挙げることができる。
また、有機窒素源としては、アミノ酸類、酵母エキス、ペプトン類(例えばポリペプトンN、大豆ペプトンなど)、肉エキス(例えばエールリッヒカツオエキス、ラブ-レムコ末、ブイヨンなど)、魚介類エキス、肝臓エキス、消化血清末、魚油などを挙げることができる。
【0050】
さらに、炭素源や窒素源に加えて、例えば、ビタミンなどの補因子や各種の塩類等の無機化合物を培地に加えることによって、増殖や活性を増強できる場合もある。たとえば無機化合物、ビタミン類、脂肪酸など、動植物由来の微生物増殖補助因子として以下のものを挙げることができる。
【0051】
無機化合物 ビタミン類
リン酸二水素カリウム ビオチン
硫酸マグネシウム 葉酸
硫酸マンガン ピリドキシン
塩化ナトリウム チアミン
塩化コバルト リボフラビン
塩化カルシウム ニコチン酸
硫酸亜鉛 パントテン酸
硫酸銅 ビタミンB12
明ばん チオクト酸
モリブデン酸ソーダ p-アミノ安息香酸
塩化カリウム ビタミンK
ホウ酸等
塩化ニッケル
タングステン酸ナトリウム
セレン酸ナトリウム
硫酸第一鉄アンモニウム
酢酸ナトリウム三水和物
硫酸マグネシウム七水和物
硫酸マンガン四水和物
【0052】
また、培地中に、システイン、シスチン、硫化ナトリウム、亜硫酸塩、アスコルビン酸、グルタチオン、チオグリコール酸、ルチンなどの還元剤や、カタラーゼ、スーパーオキシドムターゼなどの活性酸素種を分解する酵素を添加することにより生育が良好になる可能性がある。
【0053】
培養中の気相、水相としては、空気もしくは酸素を含まないことが好ましく、例えば、窒素及び/又は水素を任意の比率で含むことや、窒素及び/又は二酸化炭素を任意の比率で含むことが挙げられ、水素を含む気相や水相であることが好ましい。気相における水素の割合は、C-配糖体のアグリコン体の生成が促進されることから、通常0.5%以上、好ましくは1.0%以上、より好ましくは2.0%以上であり、一方、通常100%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。
培養中の気相や水相をこのような環境にする方法は特に制限されないが、例えば、培養前に前記ガスで気相を置換する方法、これに加えて、培養中も培養器の底部から供給する及び/又は培養器の気相部に供給する方法、培養前に前記ガスで水相をバブリングするなどの方法をとることができる。前記水素は、水素ガスをそのまま用いてもよい。また、培地にギ酸及び/又はその塩などの水素の原料を添加し、微生物の作用により培養中に水素を生成してもよい。
【0054】
通気量としては、好ましくは0.005~2vvmであり、0.05~0.5vvmがより好ましい。また、混合ガスはナノバブルとして供給することもできる。
培養温度は、好ましくは20℃~45℃、より好ましくは25℃~40℃、さらに好ましくは30℃~37℃である。
培養器の加圧条件は、微生物が生育できる条件であれば特に限定されるものではないが、好ましくは0.001~1MPa、より好ましくは0.01~0.5MPaである。
培養時間としては、好ましくは8~340時間、より好ましくは12~170時間、さらに好ましくは16~100時間である。
【0055】
また、培養液に界面活性剤、吸着剤、包接化合物などを添加することにより、C-配糖体のアグリコン体の生成を促進できる場合がある。
界面活性剤としては、例えば、Tween 80等が挙げられ、0.001g/L以上10g/L以下程度添加することができる。
吸着剤としては、例えば、セルロース及びその誘導体;デキストリン;三菱化学株式会社製の疎水吸着剤であるダイアイオンHPシリーズやセパビーズシリーズ;オルガノ株式会社製のアンバーライトXADシリーズなどを挙げることができる。
【0056】
包接化合物としては、例えば、シクロデキストリンが挙げられる。シクロデキストリンは、数分子のD-グルコースがα(1→4)グリコシド結合によって結合し、環状構造をとった環状オリゴ糖の一種である。例えば、グルコースが5個以上結合したものが知られており、グルコースが6個結合したα-シクロデキストリン(シクロヘキサアミロース)、7個結合したβ-シクロデキストリン(シクロヘプタアミロース)、8個結合したγ-シクロデキストリン(シクロオクタアミロース)が知られている。また、シクロデキストリンの誘導体として、ヒドロキシプロピル化、アセチル化、トリアセチル化、メチル化、トリメチル化などの化学修飾がされたシクロデキストリンが知られている。具体的には、メチル-β-シクロデキストリン、トリメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが挙げられる。さらに、クラスターデキストリン(高度分岐環状デキストリン)も知られている。
本開示において用いる包接化合物は、1種でも2種以上でもよい。2種以上の包接化合物を共存させることにより、C-配糖体のアグリコン体の生成をさらに促進できる場合が
ある。
包接化合物の由来は特に制限されず、天然品でも合成品でもよい。抽出方法や精製方法についても特に制限はなく公知の方法に従えばよい。また、市販のものを用いてもよく、例えば、シクロケム社製や塩水港精糖社製のシクロデキストリンなどを用いてよい。
添加量としては、C-配糖体に対し、モル比の総量で、通常0.1当量以上、好ましくは0.3当量以上、より好ましくは0.5当量以上、さらに好ましくは0.7当量以上であり、一方、通常5.0当量以下、好ましくは2.5当量以下、より好ましくは2.0当量以下、さらに好ましくは1.5当量以下、よりさらに好ましくは1.3当量以下である。例えば、0.1当量以上5.0当量以下、0.3当量以上2.5当量以下、0.5当量以上2.0当量以下、0.7当量以上1.5当量以下、又は0.7当量以上1.3当量以下である。
【0057】
(静止菌体によるC-配糖体のアグリコン体の生成)
C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物が静止菌体である場合のC-配糖体を含有する組成物は、前記培地
の代わりに、前述した「C-配糖体からC-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物の静止菌体」欄及び「C-配糖体からC-配
糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物の
静止菌体」に記載した水や塩溶液、緩衝液であって、C-配糖体を含有するものが好ましい。
その他の条件については、前記「培地、及び培養によるC-配糖体のアグリコン体の生成」欄の記載が援用される。
【0058】
(その他の工程)
本態様は、例えば、得られたC-配糖体のアグリコン体を定量する工程を含んでもよい。その方法は常法に従うことができる。たとえば、培養液の一部を採取して適宜希釈し、よく撹拌した後、ポリテロラフルオロエチレン(PTFE)膜などの膜を使用して濾過し、不溶物を除去したものを高速液体クロマトグラフィーで定量することなどが挙げられる。
また、本態様は、得られたC-配糖体のアグリコン体を回収する工程を含んでもよい。当該回収工程は、精製工程や濃縮工程等を含む。精製工程における精製処理としては、熱などによる微生物の殺菌;精密濾過(MF)、限外濾過(UF)などによる除菌;固形物、高分子物質の除去;有機溶媒やイオン性液体などによる抽出;疎水性吸着剤、イオン交換樹脂、活性炭カラム等を用いた吸着、脱色といった処理を行うことができる。また、濃縮工程における濃縮処理としては、エバポレーター、逆浸透膜等による濃縮が挙げられる。
さらに、得られたC-配糖体のアグリコン体を含む組成物は、凍結乾燥、噴霧乾燥などにより粉末化することができる。粉末化において、ラクトース、デキストリン、コーンスターチ等の賦形剤を添加することもできる。
【0059】
(その他の態様)
本開示のその他の態様は、C-配糖体を含有する組成物において、C-配糖体から前記C-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する
微生物を培養する工程を含む、前記C-配糖体を脱グリコシル化する方法である。
本態様における各用語については、前記態様に記載した用語の説明を援用する。例えば、C-配糖体を含有する組成物において、C-配糖体から前記C-配糖体のアグリコン体を生成する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物を培養する工程の条
件については、前記態様に記載した条件を援用する。
【実施例0060】
以下に実施例を記載するが、いずれの実施例も、限定的な意味として解釈される実施例ではない。
【0061】
〔実施例1〕マンギフェリンからノラチリオールの生成
Reinforced Clostridial Medium(RCM)(メルク社製)5mLに、マンギフェリン(東京化成工業製)をそれぞれ最終濃度0.050g/L、0.100g/L、0.200g/L、0.500g/L、又は1.000g/Lとなるように添加した後、121℃、20分間のオートクレーブにより加熱滅菌し、気相をN2:CO2:H2(80%/10%/10%)ガスで置換したものを基本培地とした。この基本培地に、ブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)JCM 32276株を植菌し、37℃で嫌気的に培養した。培養終了後、培養液上清中のノラチリオールをHPLCにより定量分析した。
【0062】
HPLCは以下に記載の条件で行った。Aldrich製のノラチリオールを標品として用い、DMSOに溶解して用いた。その結果、3日間の培養により、表1に示す通り、添加したマンギフェリンに対してそれぞれ41.9%、77.9%、77.1%、87.6%、90.9%のモル収率でノラチリオールが得られた。
<HPLC条件>
カラム:Inertsil ODS-3(250×4.6mm)(GL Science社製)
溶離液:A液(水/ギ酸=99/1)、B液(アセトニトリル/ギ酸=99/1)
グラジエント条件:7分間にわたりB液20%~90%(リニアグラジエント)
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:305nm
【0063】
【0064】
〔実施例2〕マンギフェリンからノラチリオールの生成
Reinforced Clostridial Medium(RCM)(メルク社製)5mLに、マンギフェリン(東京化成工業製)を最終濃度2.000g/Lとなるように添加したこと以外は、実施例1と同様の方法で培養した。その後、実施例1と同様の方法でHPLCにより定量分析した。その結果、1日間の培養により、表2に示す通り、添加したマンギフェリンに対して103.9%のモル収率でノラチリオールが得られた。
【0065】
【0066】
〔実施例3〕ホモオリエンチンからエリオジクチオールの生成
Reinforced Clostridial Medium(RCM)(メルク社製)5mLに、ホモオリエンチン(富士フィルム和光純薬製)を最終濃度0.050g/Lとなるように添加したこと以外は、実施例1と同様の方法で培養した。その後、フナコシ社製のエリオジクチオールを標品として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でエリオジクチオールをHPLCにより定量分析した。その結果、1日間の培養により、表3に示す通り、添加したホモオリエンチンに対して59.7%のモル収率でエリオジクチオールが得られた。
【0067】
【0068】
〔実施例4〕包接化合物の使用
Reinforced Clostridial Medium(RCM)(メルク社製)5mLに、マンギフェリン(東京化成工業製)を最終濃度8.000g/Lとなるように添加し、さらにγ-シクロデキストリン(富士フィルム和光純薬社製)を添加した培地とγ-シクロデキストリンを添加しない培地を、それぞれ基本培地として、実施例1と同様の方法で培養した。その後、実施例1と同様の方法でHPLCにより定量分析した。その結果、1日間の培養により、表4に示す通り、γ-シクロデキストリンを添加しなかった場合と添加した場合において、添加したマンギフェリンに対してそれぞれ46.3%、71.6%のモル収率でノラチリオールが得られた。
【0069】