(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089295
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】高加速寿命試験装置及び高加速寿命試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204569
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】594162412
【氏名又は名称】株式会社平山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晶
(72)【発明者】
【氏名】湯本 紳一
(72)【発明者】
【氏名】内田 勝広
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA06
2G050BA10
2G050CA01
2G050EA01
2G050EA02
2G050EC01
2G050EC03
(57)【要約】
【課題】試料の種類や性質等にかかわらず、高い精度の試験を実施する。
【解決手段】試験空間1Sと蒸気発生空間2Sとを備えた高加速寿命試験装置10は、試験空間1Sを加熱するヒータ1Aと、蒸気発生空間2Sを加熱するヒータ2Aと、試験空間1Sの温度T1を測定する温度センサ1Bと、蒸気発生空間2Sの温度T2を測定する温度センサ2Bと、試験空間1Sに配置される試料Sに直接取り付けられて試料Sの温度T3を測定する品温センサ3と、ヒータ1A,1Bの各オンオフ制御を実施する制御装置5とを備える。制御装置5には、試験モードとして、温度T1,T2に基づきオンオフ制御を実施する通常モードと、温度T3,T2に基づきオンオフ制御を実施する品温モードとが設けられており、制御装置5は、試料Sの試験条件とともに設定された試験モードに応じてオンオフ制御を実施する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が配置される試験空間と蒸気を発生させる蒸気発生空間とを備え、前記蒸気発生空間で生じた蒸気が前記試験空間に供給される高加速寿命試験装置であって、
前記試験空間を加熱する第一ヒータと、
前記蒸気発生空間を加熱する第二ヒータと、
前記試験空間の温度を測定する第一温度センサと、
前記蒸気発生空間の温度を測定する第二温度センサと、
前記試験空間に配置される前記試料に直接取り付けられ、前記試料の温度を測定する品温センサと、
前記第一温度センサ,前記第二温度センサ及び前記品温センサの各測定値が入力されるとともに、前記第一ヒータ及び前記第二ヒータのそれぞれのオンオフ制御を実施する制御装置と、を備え、
前記制御装置には、試験モードとして、前記第一温度センサ及び前記第二温度センサの各測定値に基づき前記オンオフ制御を実施する通常モードと、前記品温センサ及び前記第二温度センサの各測定値に基づき前記オンオフ制御を実施する品温モードとが設けられ、
前記制御装置は、前記試料の試験条件とともに設定された前記試験モードに応じて前記オンオフ制御を実施する
ことを特徴とする、高加速寿命試験装置。
【請求項2】
前記品温センサは、柔軟な素材で形成されたフレキシブルセンサである
ことを特徴とする、請求項1に記載の高加速寿命試験装置。
【請求項3】
前記試験空間を形成する試験部に取りつけられ、前記試験空間にアクセス可能な開口を閉塞する扉と、
前記扉に固定されるとともに前記試験部内をスライド移動可能であり、前記試料が配置されるトレイと、を備え、
前記品温センサは、前記扉に固定されている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の高加速寿命試験装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記通常モードが設定された場合には前記第一温度センサ及び前記第二温度センサの各測定値から前記試験空間の湿度を換算し、前記品温モードが設定された場合には前記品温センサ及び前記第二温度センサの各測定値から前記試験空間の湿度を換算し、
前記湿度を用いて前記オンオフ制御を実施する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の高加速寿命試験装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記通常モードが設定された場合に、前記第一温度センサの測定値である第一温度に応じて前記第一ヒータのオンオフ制御を実施するとともに前記湿度に応じて前記第二ヒータのオンオフ制御を実施し、
前記品温モードが設定された場合に、前記品温センサの測定値である品温に応じて前記第一ヒータのオンオフ制御を実施するとともに前記湿度に応じて前記第二ヒータのオンオフ制御を実施する
ことを特徴とする、請求項4に記載の高加速寿命試験装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記第一温度又は前記品温が、前記試験条件として設定された設定温度に第一所定値を加算した温度閾値未満では前記第一ヒータをオンにするとともに前記温度閾値以上では前記第一ヒータをオフに制御し、
前記湿度が、前記試験条件として設定された設定湿度に第二所定値を加算した湿度閾値未満では前記第二ヒータをオンにするとともに前記湿度閾値以上では前記第二ヒータをオフに制御する
ことを特徴とする、請求項5に記載の高加速寿命試験装置。
【請求項7】
試料が配置される試験空間と蒸気を発生させる蒸気発生空間とを備えるとともに前記蒸気発生空間で生じた蒸気が前記試験空間に供給される高加速寿命試験装置を用いて、高加速寿命試験を行う方法であって、
前記試料の温度を測定する品温センサを前記試料に直接取り付けたのち当該試料を前記試験空間内に配置し、あるいは、前記試験空間内に前記試料を配置したのち当該試料に前記品温センサを直接取り付け、
前記試料の試験条件とともに前記高加速寿命試験の試験モードを設定し、
前記試験モードが通常モードに設定された場合は、前記試験空間の温度を測定する第一温度センサ及び前記蒸気発生空間の温度を測定する第二温度センサの各測定値に基づいて、前記試験空間を加熱する第一ヒータ及び前記蒸気発生空間を加熱する第二ヒータのそれぞれのオンオフ制御を実施し、
前記試験モードが前記通常モードとは別の品温モードに設定された場合は、前記品温センサ及び前記第二温度センサの各測定値に基づいて、前記オンオフ制御を実施する
ことを特徴とする、高加速寿命試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高加速寿命試験装置及び高加速寿命試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や電気部品の信頼性を短時間で評価する高加速寿命試験装置が知られている。高加速寿命試験装置は、環境試験装置の一種であり、試料(被試験体)が配置される試験室内の環境(温度,湿度,圧力など)を設定された試験条件に合うよう制御する。例えば特許文献1には、試験室内にある送風機の吹出ダクトのそばにメインセンサを配置するとともに、試験室内の被試験体の近傍にサブセンサを配置し、メインセンサ及びサブセンサで検出された物理量(例えば温度及び湿度)の差分をリアルタイムで取得して、差分を用いたフィードバック制御を実施する環境試験装置が開示されている。この装置によれば、メインセンサの検出温度に対して、被試験体の近傍温度のずれが大きくなりやすい条件下であっても、目標設定温度へ高速高精度に収斂させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1の装置では、被試験体とサブセンサとが、近傍とはいえ離れているため、被試験体自体の温度を直接把握することはできない。このため、例えば、試料(被試験体)が発熱する性質を持つ場合や試料の熱容量が大きい場合には、試験室内を加熱している過程で試料の近傍温度が試料自体の温度とずれている可能性があり、高い試験精度を確保することが難しい場合がある。
【0005】
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、試料の種類や性質等にかかわらず、高い精度の試験を実施できるようにした、高加速寿命試験装置及び高加速寿命試験方法を提供することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の高加速寿命試験装置は、以下に開示する態様又は適用例として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。
ここで開示する高加速寿命試験装置は、試料が配置される試験空間と蒸気を発生させる蒸気発生空間とを備え、前記蒸気発生空間で生じた蒸気が前記試験空間に供給される高加速寿命試験装置であって、前記試験空間を加熱する第一ヒータと、前記蒸気発生空間を加熱する第二ヒータと、前記試験空間の温度を測定する第一温度センサと、前記蒸気発生空間の温度を測定する第二温度センサと、前記試験空間に配置される前記試料に直接取り付けられ、前記試料の温度を測定する品温センサと、前記第一温度センサ,前記第二温度センサ及び前記品温センサの各測定値が入力されるとともに、前記第一ヒータ及び前記第二ヒータのそれぞれのオンオフ制御を実施する制御装置と、を備える。
前記制御装置には、試験モードとして、前記第一温度センサ及び前記第二温度センサの各測定値に基づき前記オンオフ制御を実施する通常モードと、前記品温センサ及び前記第二温度センサの各測定値に基づき前記オンオフ制御を実施する品温モードとが設けられる。前記制御装置は、前記試料の試験条件とともに設定された前記試験モードに応じて前記オンオフ制御を実施する。
【0007】
また、ここで開示する高加速寿命試験方法は、試料が配置される試験空間と蒸気を発生させる蒸気発生空間とを備えるとともに前記蒸気発生空間で生じた蒸気が前記試験空間に供給される高加速寿命試験装置を用いて、高加速寿命試験を行う方法であって、前記試料の温度を測定する品温センサを前記試料に直接取り付けたのち当該試料を前記試験空間内に配置し、あるいは、前記試験空間内に前記試料を配置したのち当該試料に前記品温センサを直接取り付け、前記試料の試験条件とともに前記高加速寿命試験の試験モードを設定する。前記試験モードが通常モードに設定された場合は、前記試験空間の温度を測定する第一温度センサ及び前記蒸気発生空間の温度を測定する第二温度センサの各測定値に基づいて、前記試験空間を加熱する第一ヒータ及び前記蒸気発生空間を加熱する第二ヒータのそれぞれのオンオフ制御を実施し、前記試験モードが前記通常モードとは別の品温モードに設定された場合は、前記品温センサ及び前記第二温度センサの各測定値に基づいて、前記オンオフ制御を実施する。
【発明の効果】
【0008】
開示の高加速寿命試験装置及び高加速寿命試験方法によれば、試料の種類や性質等にかかわらず、高い精度の試験を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る高加速寿命試験装置の模式図である。
【
図2】
図1の高加速寿命試験装置を用いた高加速寿命試験方法を説明するためのフローチャート例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、実施形態としての高加速寿命試験装置及び高加速寿命試験方法について説明する。高加速寿命試験装置は、温度・湿度・圧力を主とした環境を模擬及び加速させた試験を実施可能な装置であり、高加速寿命試験方法は、この装置を用いて試験を行う方法である。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0011】
高加速寿命試験装置は、試料が配置される試験空間と蒸気を発生させる蒸気発生空間とを備え、蒸気発生空間で生じた蒸気が試験空間に供給されて、試験空間内の環境が制御されて試験が実施される。高加速寿命試験装置は、その構造の違いにより、大きく二種類に分類される。一つは、試料が配置される試験空間と蒸気を発生させる蒸気発生空間とを一つの槽(圧力容器や釜)内に備えた「一槽式」の高加速寿命試験装置であり、もう一つは、試験空間と蒸気発生空間とを別々の槽(圧力容器や釜)内に備えた「二槽式」の高加速寿命試験装置である。以下の実施形態では、二槽式の高加速寿命試験装置を例に挙げて説明するが、本発明は一槽式の高加速寿命試験装置にも適用可能であり、これについては[4.その他]で説明する。
【0012】
[1.高加速寿命試験装置の構成例]
図1は、本実施形態の高加速寿命試験装置10(以下「HAST装置10」という)の模式図である。HAST装置10は、試料Sが配置される試験槽1(試験部)と、蒸気を発生させる蒸気発生槽2(蒸気発生部)とが互いに独立して設けられた二層式構造となっている。試験槽1の内部空間(以下「試験空間1S」という)と蒸気発生槽2の内部空間(以下「蒸気発生空間2S」という)とは配管4A,4Bで連通されており、蒸気発生空間2Sで生じた蒸気は一方の配管4Aを通じて試験空間1Sに供給され、試験空間1Sで発生した(戻った)液体は他方の配管4Bを通じて蒸気発生空間2Sに戻る。
【0013】
試験槽1は、例えば横方向(図中左)に、試験空間1Sにアクセス可能な開口を持つ有底筒状の圧力容器であり、試験槽1に取り付けられた扉1Cでこの開口が閉塞されることで密閉状態の試験空間1Sを形成する。試験槽1には、試験空間1Sを加熱する試験槽ヒータ1A(以下「第一ヒータ1A」ともいう)と、試験空間1Sの温度T1(以下「第一温度T1」ともいう)を測定する試験槽温度センサ1B(以下「第一温度センサ1B」ともいう)とが設けられる。
【0014】
第一ヒータ1Aは、例えば試験槽1の下部に設けられ、通電されている間だけ試験空間1Sを加熱する。第一ヒータ1Aのオンオフ制御(通電/非通電の制御)は、後述する制御装置5により実施される。第一温度センサ1Bは、例えば試験槽1の扉1C以外の側面に設けられ、試験空間1Sの全体的な温度を測定できるよう、第一ヒータ1Aから離れて配置される。第一温度センサ1Bの測定値(第一温度T1)は制御装置5に入力される。
【0015】
蒸気発生槽2は、試験槽1と完全に分離して設けられ、蒸気発生空間2Sに貯留された水を蒸発させることで蒸気を生成する。蒸気発生槽2には、蒸気発生空間2Sを加熱する蒸気発生槽ヒータ2A(以下「第二ヒータ2A」ともいう)と、蒸気発生空間2Sの温度T2(以下「第二温度T2」ともいう)を測定する蒸気発生槽温度センサ2B(以下「第二温度センサ2B」ともいう)とが設けられる。
【0016】
第二ヒータ2Aは、蒸気発生槽2の下部であって水に浸かる位置に設けられ、通電されている間だけ蒸気発生空間2Sを加熱する。第二ヒータ2Aのオンオフ制御(通電/非通電の制御)は制御装置5により実施される。第二温度センサ2Bは、蒸気発生空間2Sの上部であって水に浸からない位置に設けられ、蒸気発生空間2Sの蒸気の温度を測定する。第二温度センサ2Bの測定値(第二温度T2)も制御装置5に入力される。
【0017】
本実施形態のHAST装置10では、試料Sが配置されるトレイ1Dと、試験空間1S内の圧力を測定する圧力計1Eと、試験空間1Sの空気を排出するための通路に介装された空気抜き弁1Fと、試験空間1Sが高圧になりすぎた場合に開弁する圧力安全弁1Gと、蒸気発生空間2Sの水を排水するための通路に介装された排水弁2Cとが設けられる。トレイ1Dは扉1Cに固定されており、扉1Cと一体で試験槽1内をスライド移動可能となっている。なお、扉1Cの内面(試験槽1の内部を向く面)には、図示しない電圧印加端子が複数設けられる。電圧印加端子は、通電試験の際に使用される。
【0018】
さらに、HAST装置10は、試験空間1Sに配置される試料Sに直接的に取付可能に設けられる温度センサ3(以下「品温センサ3」ともいう)を有する。品温センサ3は、試料Sの温度T3(以下「品温T3」ともいう)を測定するものであり、試験前に試料Sに直接取り付けられてもよく、あるいは、試験空間1Sに配置されたのちの試料Sに直接取り付けられてもよい。品温センサ3の測定値(品温T3)も制御装置5に入力される。本実施形態の品温センサ3は、扉1Cに固定されている。これにより、品温センサ3は扉1C及びトレイ1Dと一体で移動可能となるため、トレイ1Dに配置された試料Sに品温センサ3を取り付けてから扉1Cを閉める際に、試料Sに対する品温センサ3の位置がずれることがない。
【0019】
また、本実施形態の品温センサ3は、柔軟な素材で形成されたフレキシブルセンサである。品温センサ3は、試料Sに取り付けられて品温T3を検知する部分(検知部)と、検知部と扉1Cとを繋ぐハーネスとを有するが、少なくともハーネスが柔軟な素材で形成されていればよく、好ましくは検知部も柔軟な素材で形成される。これにより、どんな試料Sに対しても、簡単に品温センサ3を取り付けることが可能となる。なお、品温センサ3の個数は特に限られず、一つ以上であればよい。また、品温センサ3が複数設けられる場合、各品温センサ3が試験槽1に対して取り付け及び取り外し可能に構成されていてもよい。このような構成であれば、試験に合わせて品温センサ3の個数を変更することができ、試験精度の向上やユーザビリティの向上を図れる。
【0020】
HAST装置10は、三つの温度センサ1B,2B,3の各測定値が入力される制御装置5を有する。制御装置5は、マイクロプロセッサやROM,RAM等の記憶部を有する制御基盤や電子制御装置であって、第一ヒータ1A及び第二ヒータ2Aのそれぞれのオンオフ制御を実施するものである。
【0021】
[2.制御構成例]
次に、HAST装置10を用いた高加速寿命試験方法について、特にHAST装置10で実施されるオンオフ制御に着目して説明する。HAST装置10の制御装置5には、試験モードとして、第一温度センサ1B及び第二温度センサ2Bの各測定値(温度T1,T2)に基づきオンオフ制御を実施する通常モードと、品温センサ3及び第二温度センサ2Bの各測定値(温度T3,T2)に基づきオンオフ制御を実施する品温モードとが設けられる。
【0022】
通常モードはHAST装置10において従来からある試験モードであり、品温モードは従来にない新たな試験モードである。これらのモードの違いは、試験槽1側の温度情報として、第一温度センサ1Bを使用するか品温センサ3を使用するかである。すなわち、HAST装置10では、試験空間1Sの全体的な温度である第一温度T1を試験に使用するか、試料Sそのものの温度である品温T3を試験に使用するかによって、試験モードの使い分け(切り替え)が可能である。
【0023】
HAST装置10を用いた高加速寿命試験方法では、まず、運転開始前に試験条件(温度及び湿度に関する条件)が設定される。本実施形態では、このタイミングで試験モード(通常モード又は品温モード)も設定される。制御装置5は、試料Sの試験条件とともに設定された試験モードに応じて上記のオンオフ制御を実施する。以下の説明では、
図2及び
図3のフローチャートを適宜参照して、高加速寿命試験方法のうち、通常モードが選択された場合の制御を詳述し、続けて、品温モードが説明された場合の制御を説明する。なお、
図2のフローチャートは、HAST装置10が運転開始となったらスタートされる。
【0024】
ユーザが試験を実施する場合には、まず、試験空間1Sに試料Sを配置し、HAST装置10の電源を投入してから試験条件や試験モードを設定する。なお、これらの順序は逆でもよい。試験を実施できる状態にしたのち、ユーザが試験開始のスイッチ操作をすると、制御装置5がこのスイッチ操作の信号を受けて、HAST装置10を運転開始とする。なお、制御装置5は、オンオフ制御とは別に、空気抜き弁2F及び排水弁2Cの開閉制御も実施するが、開閉制御は従来と同様であることから、ここではその説明を省略する。
【0025】
運転開始となると、制御装置5は、第一ヒータ1A(試験槽ヒータ)及び第二ヒータ2A(蒸気発生槽ヒータ)をいずれもオン(通電状態)とし、試験空間1S及び蒸気発生空間2Sの加熱を開始する(
図2のステップS1)。次いで、試験モードが通常モードであるか否かを判定し(ステップS2)、通常モードであればステップS11に進み、品温モードであればステップS3に進んで、後述する
図3のフローチャートに示す制御を実施する。
【0026】
通常モードが設定された場合、制御装置5は、第一温度T1(試験槽温度)と第二温度T2(蒸気発生槽温度)とから、独自の換算式を使って試験空間1Sの湿度H1(以下「第一湿度H1」ともいう)を換算する(ステップS11)。
【0027】
通常モードが設定された場合、制御装置5は、第一温度T1に応じて第一ヒータ1Aのオンオフ制御を実施するとともに、換算した第一湿度H1に応じて第二ヒータ2Aのオンオフ制御を実施する。
【0028】
例えば、制御装置5は、第一温度T1が所定の閾値Tth未満では第一ヒータ1Aをオンにし(ステップS12,S13)、第一温度T1が当該閾値Tth以上では第一ヒータ1Aをオフ(非通電状態)に制御する(ステップS12,S14)。閾値Tthは、試験条件として設定された設定温度に第一所定値(例えば数℃)を加算した温度閾値である。
【0029】
運転開始直後は、T1<Tthであるため、第一ヒータ1Aのオン状態が維持され、試験空間1Sの加熱が継続される。ある程度の時間が経過してT1≧Tthとなると、第一ヒータ1Aがオフに切り替えられ、試験空間1Sの過昇温が防止される。そして、第一温度T1が少し下がり、T1<Tthとなったら第一ヒータ1Aがオンに切り替えられる。このように、第一ヒータ1Aのオンオフが繰り返されることで、試験空間1Sの温度が適切に保たれる。
【0030】
また、制御装置5は、第一湿度H1が所定の閾値Hth未満では第二ヒータ2Aをオンにし(ステップS15,S16)、第一湿度H1が当該閾値Hth以上では第二ヒータ2Aをオフ(非通電状態)に制御する(ステップS15,S17)。閾値Hthは、試験条件として設定された設定湿度に第二所定値(例えば数%)を加算した湿度閾値である。
【0031】
運転開始直後は、H1<Hthであるため、第二ヒータ2Aのオン状態が維持され、蒸気発生空間2Sの加熱が継続される。ある程度の時間が経過してH1≧Hthとなると、第二ヒータ2Aがオフに切り替えられ、試験空間1Sが高湿度になりすぎて試料Sに結露が発生することが防止される。そして、第一湿度H1が少し下がり、H1<Hthとなったら第二ヒータ2Aがオンに切り替えられる。このように、第二ヒータ2Aのオンオフが繰り返されることで、試験空間1Sの湿度が適切に保たれる。なお、ステップS12~S14とステップS15~S17は逆の順で実施してもよい。
【0032】
制御装置5は、試験空間1Sの環境が試験条件を満たす環境になったか否かを判定し(ステップS18)、試験条件が成立するまでステップS11~S17の処理を繰り返し実施する。なお、制御装置5は、ステップS18の判定において、試験空間1Sの環境が試験条件に完全に一致する場合だけでなく、試験条件を含む所定範囲(設定温度±所定温度,設定湿度±所定湿度)になったら条件が成立したと判定してもよい。
【0033】
そして、運転開始後、試験空間1Sの環境が試験条件を満たす環境となったと判定したら(ステップS18)、タイマーカウントをスタートさせて(ステップS19)、試験を実施するとともにその時間を計測する(ステップS20)。当該試験の実施中も、制御装置5は、上記のステップS11~S17と同様のオンオフ制御を実施する。すなわち、試験中も常に、第一温度センサ1Bから入力される第一温度T1と第二温度センサ2Bから入力される第二温度T2とから第一湿度H1を換算し、第一温度T1に応じて第一ヒータ1Aのオンオフ制御を実施するととともに、第一湿度H1に応じて第二ヒータ2Aのオンオフ制御を実施する。これにより、試験中も試験空間1Sの環境が適切に保持される。
【0034】
タイマーカウントが、設定された試験時間(例えば100時間)に達したら(ステップS21)、試験を終了し、蒸気発生槽2の排水及び試験槽1の排気を行う(ステップS22)。なお、最後の排水及び排気の処理においても、第一ヒータ1A及び第二ヒータ2Aのオンオフ制御を実施することで、試験空間1Sの湿度を維持しつつ所定の勾配で温度を徐々に低下させることもできる。
【0035】
以上が、通常モードが設定された場合の制御であるが、品温モードが設定された場合には、上記の第一温度T1に代えて、品温T3が用いられるため、ユーザは、試料Sを配置する前後において、その試料Sに品温センサ3を取り付ける必要がある。なお、複数の品温センサ3が設けられている場合、同一種かつ複数個の試料Sのいくつかに品温センサ3を取り付けてもよいし、異種かつ複数個の試料Sの試験を同時に実施する際に、種類ごとに品温センサ3を取り付けてもよい。後者の場合は、各品温センサ3をナンバリングしておき、どの種類の試料Sにどの番号の品温センサ3を取り付けたのかを紐づけて制御装置5に記憶する。例えば、試験条件の設定の際に併せて、これらの情報をユーザが入力できるようにしてもよいし、自動で検知できるシステムや装置を設けてもよい。
【0036】
品温モードが設定された場合、制御装置5は、品温T3と第二温度T2(蒸気発生槽温度)とから、独自の計算式を使って試験空間1Sの湿度H2(以下「第二湿度H1」ともいう)を換算する(ステップS31)。なお、複数の品温センサ3を使用している場合は、各品温センサ3で測定された値の平均値や中央値や代表値を品温T3として使用してもよいし、各品温センサ3で測定された値についてそれぞれ第二湿度H2を換算し、湿度の平均値や中央値を算出してもよい。
【0037】
品温モードが設定された場合、制御装置5は、品温T3に応じて第一ヒータ1Aのオンオフ制御を実施するとともに、換算した第二湿度H2に応じて第二ヒータ2Aのオンオフ制御を実施する。なお、複数の品温センサ3を使用している場合は、上記の換算と同様、平均値等を用いてよい。
【0038】
例えば、制御装置5は、品温T3が所定の閾値Tth′未満では第一ヒータ1Aをオンにし(ステップS32,S33)、品温T3が当該閾値Tth′以上では第一ヒータ1Aをオフ(非通電状態)に制御する(ステップS32,S34)。閾値Tth′は、試験条件として設定された設定温度に第一所定値(例えば数℃)を加算した温度閾値であり、通常モードでの閾値Tthと同一でもよいし、異なる値でもよい。
【0039】
運転開始直後は、T3<Tth′であるため、第一ヒータ1Aのオン状態が維持され、試験空間1Sの加熱が継続される。ある程度の時間が経過してT3≧Tth′となると、第一ヒータ1Aがオフに切り替えられ、試料S及び試験空間1Sの過昇温が防止される。そして、品温T3が少し下がり、T3<Tth′となったら第一ヒータ1Aがオンに切り替えられる。このように、第一ヒータ1Aのオンオフが繰り返されることで、試料Sの過昇温が確実に防止されながら試験空間1Sの温度が適切に保たれる。
【0040】
また、制御装置5は、第二湿度H2が所定の閾値Hth′未満では第二ヒータ2Aをオンにし(ステップS35,S36)、第二湿度H2が当該閾値Hth′以上では第二ヒータ2Aをオフ(非通電状態)に制御する(ステップS35,S37)。閾値Hth′は、試験条件として設定された設定湿度に第二所定値(例えば数%)を加算した湿度閾値であり、通常モードでの閾値Hthと同一でもよいし、異なる値でもよい。
【0041】
運転開始直後は、H2<Hth′であるため、第二ヒータ2Aのオン状態が維持され、蒸気発生空間2Sの加熱が継続される。ある程度の時間が経過してH2≧Hth′となると、第二ヒータ2Aがオフに切り替えられ、試験空間1Sが高湿度になりすぎて試料Sに結露が発生することが防止される。そして、第二湿度H2が少し下がり、H2<Hth′となったら第二ヒータ2Aがオンに切り替えられる。このように、第二ヒータ2Aのオンオフが繰り返されることで、試料Sへの結露発生が、通常モードよりも高確率で防止されながら試験空間1Sの湿度が適切に保たれる。なお、ステップS32~S34とステップS35~S37は逆の順で実施してもよい。
【0042】
制御装置5は、試験空間1Sの環境が試験条件を満たす環境になったか否かを判定し(ステップS38)、試験条件が成立するまでステップS31~S37の処理を繰り返し実施する。なお、ステップS38~S42の処理は、通常モードで説明したステップS18~S22の処理と同様であるため、その詳細は省略するが、品温モードが設定された場合も、当該試験の実施中に、制御装置5は、上記のステップS31~S37と同様のオンオフ制御を実施する。すなわち、試験中も常に、品温センサ3から入力される品温T3と第二温度センサ2Bから入力される第二温度T2とから第二湿度H2を換算し、品温T3に応じて第一ヒータ1Aのオンオフ制御を実施するととともに、第二湿度H2に応じて第二ヒータ2Aのオンオフ制御を実施する。これにより、試験中も試料Sの温度状態が正確に把握されるとともに試験空間1Sの環境が適切に保持される。
【0043】
[3.作用,効果]
上述したHAST装置10では、制御装置5が、第一ヒータ1Aのオンオフ制御と第二ヒータ2Aのオンオフ制御とを実施するが、第一温度T1及び第二温度T2に基づきオンオフ制御を実施する通常モードと、品温T3及び第二温度T2に基づきオンオフ制御を実施する品温モードとが設けられている。そして、制御装置5は、試料Sの試験条件とともに設定された試験モードに応じてオンオフ制御を実施する。
【0044】
品温モードの場合は、試料Sの温度(品温T3)をダイレクトに測定できることから、試料S自体の温度を把握することができ、より精度の高い試験を実施できる。また、例えば、試料Sが試験空間1Sよりも温度上昇しにくい性質を持つ場合(試料Sの熱容量が大きい場合)であっても、試料Sへの結露発生を、通常モードよりも高確率で防止できる。反対に、試料Sが発熱する物体である場合や試料Sが試験空間1Sよりも温度上昇しやすい性質を持つ場合であっても、試料Sの過昇温を抑制できる。このため、試料Sの許容発熱量を増大させることもできる可能性がある。さらに、試験中の試料S自体の温度も把握できるため、例えば研究開発や論文等において、試料Sが所望の温度を保っていることの証明に活用することもできる。
【0045】
また、上述したHAST装置10には、少なくとも二つの試験モードが用意されており、これらの試験モードをユーザが選択して試験を実施できることから、ユーザビリティを高められる。例えば、試料Sの種類や性質等によっては、試料S自体の温度と試験空間1Sの温度(第一温度T1)とがほぼ一致することもある。この場合は、試料S自体の温度を把握しなくても、精度の高い試験を実施できるため、通常モードで十分である。また、通常モードであれば、品温センサ3を試料Sに取り付ける手間を省くことができる。
【0046】
上述した品温センサ3はフレキシブルセンサであることから、どんな試料Sに対しても、簡単に品温センサ3を取り付けることができ、操作性を高められる。
また、上述したHAST装置10では、品温センサ3が扉1Cに固定されており、扉1C及びトレイ1Dと品温センサ3とが一体で移動可能となっている。このため、トレイ1Dに試料Sを配置してから試料Sに品温センサ3を取り付けたのち、扉1Cを閉めるという一連の動作のなかで、試料Sに対する品温センサ3の位置がずれることがない。このため、正確に品温T3を測定することができ、高い試験精度を確保できる。
【0047】
上述したHAST装置10では、通常モードが設定された場合は第一温度T1及び第二温度T2から湿度H1(第一湿度)を換算し、品温モードが設定された場合は品温T3及び第二温度T2から湿度H2(第二湿度)を換算し、これらの湿度H1,H2を用いてオンオフ制御を実施する。このように、いずれの試験モードでも、温度センサ1B,2B,3のみでオンオフ制御を完結できるため、シンプルな装置構成にすることができる。
【0048】
上述したHAST装置10では、通常モードが設定された場合は、第一温度T1に応じて第一ヒータ1Aのオンオフ制御を実施するとともに湿度H1に応じて第二ヒータ2Aのオンオフ制御を実施する。また、品温モードが設定された場合は、品温T3に応じて第一ヒータ1Aのオンオフ制御を実施するとともに湿度H2に応じて第二ヒータ2Aのオンオフ制御を実施する。このように、いずれの試験モードでも、試験空間1Sの湿度H1,H2に応じて、蒸気発生空間2Sを加熱する第二ヒータ2Aのオンオフが制御されることから、試料Sに結露が発生することを抑制できる。
【0049】
また、上述したHAST装置10では、第一温度T1又は品温T3が、試験条件として設定された設定温度に第一所定値を加算した温度閾値Tth,Tth′を境に、第一ヒータ1Aをオンとオフとに切り替える。また、湿度H1,H2が、試験条件として設定された設定湿度に第二所定値を加算した湿度閾値Hth,Hth′を境に、第二ヒータ2Aをオンとオフとに切り替える。このような簡素な制御構成で、高い精度の試験を実施することができる。
【0050】
[4.その他]
上述したHAST装置10は一例である。例えば、品温センサ3の構成や配置は一例であり、フレキシブルセンサでなくてもよいし、扉1C以外の試験槽1の側面に固定されていてもよい。また、上記の実施形態では、最初に通常モード又は品温モードが設定されたら、その後、排水及び排気が完了するまで(すなわち、運転終了まで)、第一温度T1又は品温T3のいずれか一方が用いられているが、制御構成も一例であり、上記の内容に限られない。
【0051】
例えば、品温モードが設定された場合に、運転開始から試験条件が成立するまでの間(すなわち、昇温中)だけ品温T3を用い、試験中は第一温度T1を用いるなど、運転開始から終了までの間に品温T3と第一温度T1とを切り替えてもよい。あるいは、品温モードが設定された場合に、上記の品温T3を用いることに加え、第一温度T1を監視してもよい。例えば、品温T3が閾値Tth′未満であっても第一温度T1が閾値Tthよりも高い上限値を超える場合には、試料Sもいずれ高温になるため、T3<Tth′で第一ヒータ1Aをオフに切り替えてもよい。また、品温モードが設定された場合に、品温T3と第一温度T1とをともに取得し、これらの平均値を使ってオンオフ制御を実施してもよい。
【0052】
上記実施形態では、二槽式のHAST装置10を例に挙げて試験方法について説明したが、同様の試験方法を一槽式の高加速寿命試験装置で実施することも可能である。一槽式の高加速寿命試験装置においても、試料が配置される試験空間(例えば圧力容器の試験槽部分の内部空間)を加熱する第一ヒータと、当該試験空間の温度を測定する第一温度センサと、蒸気を発生させる蒸気発生空間(例えば圧力容器の蒸気発生器の内部空間)を加熱する第二ヒータと、当該蒸気発生空間の温度を測定する第二温度センサと、試料に直接取り付けられて試料の温度を測定する品温センサとを設けるとともに、上記実施形態と同様の制御装置を設けて、試験モードに応じてオンオフ制御を実施する構成とすることで、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、本発明の高加速寿命試験装置及び方法において、槽の作りや付属部品の有無は作用効果に影響しないため、槽の作りや付属部品の有無は本発明に特に影響しない。
【0053】
[5.付記]
上記の実施例や変形例に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
試料が配置される試験空間と蒸気を発生させる蒸気発生空間とを備え、前記蒸気発生空間で生じた蒸気が前記試験空間に供給される高加速寿命試験装置であって、
前記試験空間を加熱する第一ヒータと、
前記蒸気発生空間を加熱する第二ヒータと、
前記試験空間の温度を測定する第一温度センサと、
前記蒸気発生空右の温度を測定する第二温度センサと、
前記試験空間に配置される前記試料に直接取り付けられ、前記試料の温度を測定する品温センサと、
前記第一温度センサ,前記第二温度センサ及び前記品温センサの各測定値が入力されるとともに、前記第一ヒータ及び前記第二ヒータのそれぞれのオンオフ制御を実施する制御装置と、を備え、
前記制御装置には、試験モードとして、前記第一温度センサ及び前記第二温度センサの各測定値に基づき前記オンオフ制御を実施する通常モードと、前記品温センサ及び前記第二温度センサの各測定値に基づき前記オンオフ制御を実施する品温モードとが設けられ、
前記制御装置は、前記試料の試験条件とともに設定された前記試験モードに応じて前記オンオフ制御を実施する
ことを特徴とする、高加速寿命試験装置。
【0054】
[付記2]
前記品温センサは、柔軟な素材で形成されたフレキシブルセンサである
ことを特徴とする、付記1に記載の高加速寿命試験装置。
[付記3]
前記試験空間を形成する試験部に取りつけられ、前記試験空間にアクセス可能な開口を閉塞する扉と、
前記扉に固定されるとともに前記試験部内をスライド移動可能であり、前記試料が配置されるトレイと、を備え、
前記品温センサは、前記扉に固定されている
ことを特徴とする、付記1又は2に記載の高加速寿命試験装置。
【0055】
[付記4]
前記制御装置は、
前記通常モードが設定された場合には前記第一温度センサ及び前記第二温度センサの各測定値から前記試験空間の湿度を換算し、前記品温モードが設定された場合には前記品温センサ及び前記第二温度センサの各測定値から前記試験空間の湿度を換算し、
前記湿度を用いて前記オンオフ制御を実施する
ことを特徴とする、付記1~3のいずれか一つに記載の高加速寿命試験装置。
【0056】
[付記5]
前記制御装置は、
前記通常モードが設定された場合に、前記第一温度センサの測定値である第一温度に応じて前記第一ヒータのオンオフ制御を実施するとともに前記湿度に応じて前記第二ヒータのオンオフ制御を実施し、
前記品温モードが設定された場合に、前記品温センサの測定値である品温に応じて前記第一ヒータのオンオフ制御を実施するとともに前記湿度に応じて前記第二ヒータのオンオフ制御を実施する
ことを特徴とする、付記4に記載の高加速寿命試験装置。
【0057】
[付記6]
前記制御装置は、
前記第一温度又は前記品温が、前記試験条件として設定された設定温度に第一所定値を加算した温度閾値未満では前記第一ヒータをオンにするとともに前記温度閾値以上では前記第一ヒータをオフに制御し、
前記湿度が、前記試験条件として設定された設定湿度に第二所定値を加算した湿度閾値未満では前記第二ヒータをオンにするとともに前記湿度閾値以上では前記第二ヒータをオフに制御する
ことを特徴とする、付記5に記載の高加速寿命試験装置。
【0058】
[付記7]
試料が配置される試験空間と蒸気を発生させる蒸気発生空間とを備えるとともに前記蒸気発生空間で生じた蒸気が前記試験空間に供給される高加速寿命試験装置を用いて、高加速寿命試験を行う方法であって、
前記試料の温度を測定する品温センサを前記試料に直接取り付けたのち当該試料を前記試験空間内に配置し、あるいは、前記試験空間内に前記試料を配置したのち当該試料に前記品温センサを直接取り付け、
前記試料の試験条件とともに前記高加速寿命試験の試験モードを設定し、
前記試験モードが通常モードに設定された場合は、前記試験空間の温度を測定する第一温度センサ及び前記蒸気発生空間の温度を測定する第二温度センサの各測定値に基づいて、前記試験空間を加熱する第一ヒータ及び前記蒸気発生空間を加熱する第二ヒータのそれぞれのオンオフ制御を実施し、
前記試験モードが前記通常モードとは別の品温モードに設定された場合は、前記品温センサ及び前記第二温度センサの各測定値に基づいて、前記オンオフ制御を実施する
ことを特徴とする、高加速寿命試験方法。
【0059】
[付記8]
前記試験モードが前記通常モードに設定された場合は、前記第一温度センサ及び前記第二温度センサの各測定値から前記試験空間の湿度を換算し、
前記試験モードが前記品温モードに設定された場合は、前記品温センサ及び前記第二温度センサの各測定値から前記試験空間の湿度を換算し、
前記湿度を用いて前記オンオフ制御を実施する
ことを特徴とする、付記7に記載の高加速寿命試験方法。
【0060】
[付記9]
前記試験モードが前記通常モードに設定された場合は、前記第一温度センサの測定値である第一温度に応じて前記第一ヒータのオンオフ制御を実施するとともに前記湿度に応じて前記第二ヒータのオンオフ制御を実施し、
前記試験モードが前記品温モードに設定された場合は、前記品温センサの測定値である品温に応じて前記第一ヒータのオンオフ制御を実施するとともに前記湿度に応じて前記第二ヒータのオンオフ制御を実施する
ことを特徴とする、付記8に記載の高加速寿命試験方法。
【0061】
[付記10]
前記試験モードが前記通常モード又は前記品温モードに設定された場合に、
前記第一温度又は前記品温が、前記試験条件として設定された設定温度に第一所定値を加算した温度閾値未満では前記第一ヒータをオンにするとともに前記温度閾値以上では前記第一ヒータをオフに制御し、
前記湿度が、前記試験条件として設定された設定湿度に第二所定値を加算した湿度閾値未満では前記第二ヒータをオンにするとともに前記湿度閾値以上では前記第二ヒータをオフに制御する
ことを特徴とする、付記9に記載の高加速寿命試験方法。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本件は、高加速寿命試験装置の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 試験槽(試験部)
1A 第一ヒータ(試験槽ヒータ)
1B 第一温度センサ(試験槽温度センサ)
1C 扉
1D トレイ
1E 圧力計
1F 空気抜き弁
1G 圧力安全弁
1S 試験空間
2 蒸気発生槽(蒸気発生部)
2A 第二ヒータ(蒸気発生槽ヒータ)
2B 第二温度センサ(蒸気発生槽温度センサ)
2C 排水弁
2S 蒸気発生空間
3 品温センサ
4A,4B 配管
5 制御装置
10 HAST装置(高加速寿命試験装置)
H1 第一湿度(通常モードの湿度)
H2 第二湿度(品温モードの湿度)
Hth,Hth′ 閾値(湿度閾値)
S 試料
T1 第一温度(試験空間の温度)
T2 第二温度(蒸気発生空間の温度)
T3 品温(試料の温度)
Tth,Tth′ 閾値(温度閾値)