(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089298
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】アルコール除菌シート用薬液およびそれを含むアルコール除菌シート
(51)【国際特許分類】
A01N 33/12 20060101AFI20240626BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240626BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20240626BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240626BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240626BHJP
A01N 61/00 20060101ALI20240626BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A01N33/12 101
C08K5/17
C08K5/05
C08L33/04
A01P3/00
A01N61/00 D
A01N43/40 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204573
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 聖奈
(72)【発明者】
【氏名】松田 将
【テーマコード(参考)】
4H011
4J002
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA03
4H011AA04
4H011BB04
4H011BB09
4H011BB19
4H011BC03
4H011BC18
4H011DA07
4H011DA13
4H011DD05
4H011DG02
4H011DG16
4H011DH02
4H011DH20
4J002BG071
4J002EC027
4J002EN136
4J002FD186
4J002FD187
4J002GB00
4J002GC00
4J002HA04
(57)【要約】
【課題】基材に含浸させてアルコール除菌シートとした際に、拭き取りやすく、拭きむらがなく、さらに油汚れを落としやすく、細菌付着を抑制できるアルコール除菌シート用薬液を提供する。
【解決手段】(a)第4級アンモニウム塩0.001質量%以上0.2質量%以下と、(b)エタノール10質量%以上50質量%以下と、(c)式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体0.01質量%以上1質量%以下とを含有する、アルコール除菌シート用薬液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第4級アンモニウム塩0.001質量%以上0.2質量%以下と、(b)エタノール10質量%以上50質量%以下と、(c)下記式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体0.01質量%以上1質量%以下とを含有する、アルコール除菌シート用薬液。
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数12~22のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記第4級アンモニウム塩は、塩化ベンザルコニウム及び塩化セチルピリジニウムの少なくともいずれか一方である請求項1に記載のアルコール除菌シート用薬液。
【請求項3】
水溶性多価アルコール0.05質量%以上5質量%以下をさらに含む請求項1又は2に記載のアルコール除菌シート用薬液。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の薬液を基材に含浸させたアルコール除菌シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール除菌シート用薬液およびそれを含むアルコール除菌シートに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、コロナウイルスによる感染症が社会問題になり、感染症の伝播を抑制するため、手指衛生だけでなくモノに付着したウイルスの除菌に対する意識が高まっている。モノの除菌方法として、除菌対象物に液剤を噴霧し、清潔な布やペーパーで拭き取る方法が挙げられるが、液剤と布やペーパーとの両方を持ち運ぶ必要があり不便であった。
【0003】
このような問題を解決する方法として、除菌に有効な液剤を不織布に含浸させたウエットシートが知られている。ウエットシートは、容器から取り出してすぐに使用することができ、清拭部に液剤が残りにくく、簡便に除菌可能である。特に、除菌に有効な液剤としてアルコールを含有するウエットシートは、アルコールによるウイルスの殺菌効果と不織布によるふき取りによる除菌効果とを備えており、さらに皮脂汚れや机上の油汚れ等の除去効果を期待できる。
このようなアルコール除菌シートとして、例えば、特許文献1に記載の除菌シートが知られている。この特許文献1に記載の除菌シートは、薬液にカチオン性ポリマー除菌剤とアルコール類と含有することを特徴としており、除菌性能が高いことが示されている。また、特許文献2には、パラオキシ安息香酸エステルと保湿剤とを含有した消毒剤が開示され、この消毒剤は、皮膚刺激が低く、殺菌力が高いことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-188091号公報
【特許文献2】特開平7-252105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のアルコール除菌シートは、ふき取り後の乾燥が早くアルコールが残存しないことから除菌性能と使用感が良いものの、拭き取りのむらが目立つという問題がある。また、特許文献2に記載の消毒剤は、不織布に含浸させた場合のふき取り性や拭き跡、拭きむらについて十分満足できるものではなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、拭き取りやすく、拭きむらがなく、さらに油汚れを落としやすく、細菌付着を抑制できるアルコール除菌シート用薬液およびそれを含むアルコール除菌シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、(a)第4級アンモニウム塩0.001質量%以上0.2質量%以下と、(b)エタノール10質量%以上50質量%以下と、(c)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体0.01質量%以上1質量%以下とを含有するアルコール除菌シート用薬液を用いることで拭き取りやすく、拭きむらがなく、さらに油汚れを落としやすく、細菌付着を抑制できるアルコール除菌シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は次の通りである。
[1](a)第4級アンモニウム塩0.001質量%以上0.2質量%以下と、(b)エタノール10質量%以上50質量%以下と、(c)下記式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体0.01質量%以上1質量%以下とを含有する、アルコール除菌シート用薬液。
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数12~22のアルキル基を示す。)
[2]前記第4級アンモニウム塩は、塩化ベンザルコニウム及び塩化セチルピリジニウムの少なくともいずれか一方である上記[1]に記載のアルコール除菌シート用薬液。
[3]前記水溶性多価アルコール0.05質量%以上5質量%以下をさらに含む上記[1]又は[2]に記載のアルコール除菌シート用薬液。
[4]上記[1]又は[2]に記載の薬液を基材に含浸させたアルコール除菌シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材に含浸させてアルコール除菌シートとした際に、拭き取りやすく、拭きむらがなく、さらに油汚れを落としやすく、細菌付着を抑制できるアルコール除菌シート用薬液、及びこれを含むアルコール除菌シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
なお、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等)を段階的に記載した場合、各下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載において、「好ましい下限値:10」と「より好ましい上限値:90」とを組み合わせて、「10~90」とすることができる。
【0011】
本発明のアルコール除菌シート用薬液及びアルコール除菌シートは(a)第4級アンモニウム塩0.001質量%以上0.2質量%以下と、(b)エタノール10質量%以上50質量%以下と、(c)下記式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体0.01質量%以上1質量%以下とを含有する、アルコール除菌シート用薬液及びアルコール除菌シートである。
以下に本発明の詳細を説明する。
【0012】
<(a)第四級アンモニウム塩>
本発明のアルコール除菌シート用薬液は、(a)成分として第四級アンモニウム塩を含有する。第四級アンモニウム塩の具体的な種類としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、塩化セチルピリジニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム等を挙げることができる。これらの中でも(a)第四級アンモニウム塩としては、塩化ベンザルコニウム及び塩化セチルピリジニウムの少なくともいずれか一方であることが好ましく、塩化ベンザルコニウム及び塩化セチルピリジニウムの両方からなることがより好ましい。本発明のアルコール除菌シート用薬液に含まれる(a)成分は、1種でもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
本発明のアルコール除菌シート用薬液における(a)成分の含有量は、0.001質量%以上0.2質量%以下である。(a)成分の含有量が0.001質量%未満の場合は、十分な除菌力を発揮できない可能性がある。また、(a)成分の含有量が、0.2質量%より多い場合は、殺菌力の大きな改善が見込めず、費用対効果の関係から好ましくない。(a)成分の含有量は、好ましくは0.01質量%以上0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.2質量%以下である。2種の(a)成分の混合する場合、混合比率は好ましくは1:9~9:1であり、より好ましくは3:7~7:3である。
【0013】
<(b)エタノール>
本発明のアルコール除菌シート用薬液は、(b)成分としてエタノールを含有する。
本発明のアルコール除菌シート用薬液における(b)成分の含有量は、10質量%以上50質量%以下である。(b)成分の含有量が10質量%未満の場合は、油汚れふき取り性を発揮できない可能性がある。また、(b)成分の含有量が、50質量%より多い場合は、油汚れふき取り性は良いもののふき取りむらが生じやすくなるため好ましくない。(b)成分の含有量は、好ましくは15質量%以上45質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0014】
<(c)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体>
本発明のアルコール除菌シート用薬液は、(c)成分として、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体(以下、該共重合体のことをMPC共重合体と記載することもある)を含有する。2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位は、下記の式(1)で表される。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を意味する。
【化3】
前記式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。
【0015】
(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位は下記の式(2)で表される。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸またはメタアクリル酸」を意味する。
【化4】
前記式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数12~22のアルキル基を示す。
【0016】
式(2)において、R3は炭素数14~22のアルキル基が好ましく、炭素数16~20のアルキル基がより好ましい。
【0017】
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位〔構成単位(1)〕、及び(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位〔構成単位(2)〕を少なくとも有していればよく、構成単位(1)及び構成単位(2)以外の構成単位として、例えば、親水性構成単位を含んでいてもよい。また、同様に、複数種の疎水性構成単位を含んでいてもよい。MPC共重合体における、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位のモル比[式(1)で表される構成単位/式(2)で表される構成単位]は、好ましくは10/90~90/10である。また、MPC共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上5,000,000以下である。
【0018】
なお、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定され、プルラン換算の分子量で示される。
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体の重合形態は特に限定されず、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
【0019】
他の構成単位としては、たとえば、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の芳香族基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸とモノテルペンアルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸グリシジル;スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体等に基づく構成単位を挙げることができる。
これら他の構成単位は1種または2種以上を含むことができ、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体中におけるその含有量は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位の合計量に対して40モル%以下であり、好ましくは20モル%以下である。
【0020】
MPC共重合体は、公知の製造方法により製造することができる。
たとえば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位、ならびに必要に応じて上記他の構成単位に相当する単量体を含む単量体混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素等の不活性ガス雰囲気下において、溶液重合等の公知の方法により重合させて製造することができる。
その際の各単量体の含有量比は、MPC共重合体中における各構成単位の含有量比に相当する比とすればよい。
【0021】
本発明のアルコール除菌シート用薬液には、上記した2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体は1種を選択し、単独で含有させてもよく、2種以上を選択し、組み合わせて含有させることもできる。
本発明のアルコール除菌シート用薬液に含有させる2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体の形態としては、粉末等の固形状、溶液、分散液等の液状のいずれでもよい。
【0022】
本発明のアルコール除菌シート用薬液における(c)成分の含有量は、0.01質量%以上1質量%以下である。(c)成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、ふき取り性が悪くなる可能性があり、さらに細菌付着抑制効果が低下し、ふき取りむらが生じる可能性がある。また、(c)成分の含有量が、1質量%より多い場合は、ふき取り性の大きな改善が見込めず、費用対効果の関係から好ましくない。(c)成分の含有量は、細菌付着抑制効果の観点から、好ましくは0.05質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上0.6質量%以下である。
【0023】
<水溶性多価アルコール>
本発明のアルコール除菌シート用薬液は、水溶性多価アルコールを含んでいてもよい。
水溶性多価アルコールとしては、例えば炭素数2~6の2価~6価の多価アルコールが挙げられ、中でも炭素数2~6の2価~3価の多価アルコールが好ましい。水溶性多価アルコールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられ、中でも、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリンが好ましい。水溶性多価アルコールは、1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
本発明のアルコール除菌シート用薬液における水溶性多価アルコールの含有量は、好ましくは0.05質量%以上5質量%以下である。水溶性多価アルコールの含有量を0.05質量%以上とすることにより保湿性を向上させることができ、5質量%以下とすることにより、べたつきを防止することができる。
水溶性多価アルコールの含有量は、好ましくは0.1質量%以上3質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
【0024】
<水>
本発明のアルコール除菌シート用薬液において、上記した(a)~(c)成分、必要に応じて配合される水溶性多価アルコール及び後述するその他の成分以外の残部は水である。水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、精製水などを使用することができる。水の含有量は、アルコール除菌シート用薬液において、好ましくは50質量%以上85質量%以下であり、より好ましくは55質量%以上80質量%以下である。
【0025】
<その他の成分>
本発明のアルコール除菌シート用薬液及びアルコール除菌シートは、本発明の効果を阻害しない限り、上記成分以外にも、必要に応じて一般にアルコール除菌シート用薬液及びアルコール除菌シートに用いられる保湿剤、エモリエント剤、増粘剤、殺菌剤、可溶化剤、pH調整剤等のその他の成分を含有してもよい。
【0026】
保湿剤の例として、ピロリドンカルボン酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩、N-ココイル-L-アルギニンエチルエステルDL-ピロリドンカルボン酸塩、尿素等を挙げることができる。これらの1種類以上を含有することができる。
【0027】
エモリエント剤としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソブチル、マレイン酸イソブチル等を挙げることができる。これらの1種類以上を含有することができる。
【0028】
増粘剤としては、例えば、天然多糖類及びその誘導体、具体的にはカルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン、プルラン、マンナン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデキストラン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、キシログルカン、アルギン酸、アラビアゴム、グアーガム、トラガントガム、ヘパリン、メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を挙げることができる。これら1種類以上を含有することができる。
【0029】
殺菌剤としては、例えば、クレゾール等のフェノール系化合物、ヨウ素イオン、ヨードイオン、ヨードホア等のヨウ素化合物、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、アクリノール等の色素系化合物、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアナイド等のビグアナイド系化合物、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン等のアミノカルボン酸塩類、オキシドール、過マンガン酸カリウム等の酸化剤等を挙げることができる。これら1種類以上を含有することができる。
【0030】
可溶化剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等を挙げることができる。これら1種類以上を含有することができる。
【0031】
pH調整剤の酸性成分としては、例えば、リン酸、クエン酸、硫酸、酢酸、ホウ酸、塩酸、乳酸等が挙げられる。これら1種類以上を含有することができる。
【0032】
pH調整剤の塩基性成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール等のアルキルアミン、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸が挙げられる。これら1種類以上を含有することができる。
【0033】
本発明のアルコール除菌シート用薬液は、シート材等の基材に含浸させることによって、アルコール除菌シートとして利用される。シート材としては、例えば、天然繊維または合成繊維からなる織布、紙などがある。具体的には、レーヨン、パルプなどの親水繊維と、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維とを一種または数種配合した、湿潤強度が高いスパンレース不織布などが用いられる。
前記シート材の大きさは、使用部位、あるいは収納する容器または包装体に応じて、適宜設定されるが、短辺50mm以上300mm以下、長辺100mm以上500mm以下程度である。
前記シート材としては、目付量が30g/m2以上60g/m2以下であるものが好ましく、35g/m2以上55g/m2以下であるものがより好ましい。
【0034】
前記含浸の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シート材に薬液を滴下又は噴霧することにより含浸させる方法、アルコール除菌シート用薬液に不織布を浸漬することにより含浸させる方法、不織布をアルミパウチ等の包装具に収納した後、薬液を充填し密封する方法などが挙げられる。
前記アルコール除菌シート用薬液の含浸量は、アルコール除菌シート用薬液をシート材に十分含浸させるため、シート材1gに対して1.5g以上5.0g以下が好ましく、2.0g以上4.0g以下がより好ましい。
【0035】
本発明のアルコール除菌シートは、包装具に収容された状態で使用される。前記包装具としては、特に制限はなく、除菌シートに通常用いられるものを使用することができる。
本発明のアルコール除菌シートは、例えば、対物用除菌シート、清掃用シート、デオドラントシート、顔用汗拭きシート、身体用汗拭きシート、制汗シート、お手拭きウエットシート、足用拭き取りシート、おしり拭きシート、介護用清拭シート、皮脂拭き取り用シート、眠気覚まし用シート、消毒用シートなどに好適に用いることができる。
【実施例0036】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体を以下MPC共重合体と記す。
なお、実施例・比較例で使用のMPC共重合体は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ステアリルとの共重合体であり、該MPC共重合体において、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位のモル比[式(1)で表される構成単位/式(2)で表される構成単位]は35/65であった。また該MPC共重合体の重量平均分子量は28,000であった。
【0037】
(実施例1~5及び比較例1~3)
表1に示す組成からなる、実施例1~5及び比較例1~3のアルコール除菌シート用薬液を得た。共通成分は、プロピレングリコール0.5%、1,3-ブチレングリコール0.5%、グリセリン0.5%、乳酸0.1%、計1.6%である。また、得られたアルコール除菌シート用薬液について、以下の評価を行ったので、各評価結果を表に記載した。
【0038】
<拭き取りやすさ>
レーヨン/パルプ製不織布(目付量=43g/m2、テクセルフラッシュ、王子エフテックス製)を長方形(14cm×12cm)に成形し、前記シートをポリプロピレン製の包装具に収納した。前記シートに、上記のアルコール除菌シート用薬液のそれぞれを不織布1gに対し2.8gを充填し、含浸させることによりアルコール除菌シートを作製した。25才~52才の8名の女性および7名の男性をパネラーとし、アルコール除菌シートを使用して机、家具などを拭いたときの拭き取りやすさ(拭き取り性および汚れ落ち)について以下のように判定した。
2点:拭き取りがスムーズであり、汚れが軽く拭き取れたと感じる場合
1点:拭き取り時にややすべりが悪い、またはやや汚れを落とし難いと感じる場合
0点:拭き取り時にすべりが悪い、または明らかに汚れを落とし難いと感じる場合
〔評価基準〕
15名の平均値を求めて、以下の基準で拭き取り性および汚れ落ちを評価した。
○:拭き取り性および汚れ落ちが良好(平均点1.5点以上)
△:拭き取り性および汚れ落ちが劣る(平均点1.5点未満)
【0039】
<油汚れふき取り性>
レーヨン/パルプ製不織布(目付量=43g/m2、テクセルフラッシュ、王子エフテックス製)を長方形(14cm×12cm)に成形し、前記シートをポリプロピレン製の包装具に収納した。前記シートに、上記のアルコール除菌シート用薬液のそれぞれを不織布1gに対し2.8gを充填し、含浸させることによりアルコール除菌シートを作製した。スライドガラスへラー油1滴を滴下して塗り広げ、前記アルコール除菌シートで1回拭き取った。ふき取り後の油汚れを下記の評価基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:清拭後に表面のぎらつきがみられないと感じる場合
〇:清拭後に表面のぎらつきがほぼみられないと感じる場合
△:ふき取り後に表面のぎらつきがみられると感じる場合
【0040】
<細菌付着抑制効果>
レーヨン/パルプ製不織布(目付量=43g/m2、テクセルフラッシュ、王子エフテックス製)を長方形(14cm×12cm)に成形し、前記シートをポリプロピレン製の包装具に収納した。前記シートに、上記のアルコール除菌シート用薬液のそれぞれを不織布1gに対し2.8gを充填し、含浸させることによりアルコール除菌シートを作製した。セルデスクを前記アルコール除菌シートで1回拭き取り、拭き取ったセルデスクを黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC13276)の培養液に3時間浸漬させた。3時間後PBSで3回洗浄しグラム染色し付着した菌を可視化した、細菌付着の抑制を下記の評価基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:表面積の30%以下に染色がみられる
〇:表面積の30~80%に染色がみられる
△:表面積の80%以上に染色がみられる
【0041】
<拭きむら>
レーヨン/パルプ製不織布(目付量=43g/m2、テクセルフラッシュ、王子エフテックス製)を長方形(14cm×12cm)に成形し、前記シートをポリプロピレン製の包装具に収納した。前記シートに、上記のアルコール除菌シート用薬液のそれぞれを不織布1gに対し2.8gを充填し、含浸させることによりアルコール除菌シートを作製した。25才~52才の8名の女性および7名の男性をパネラーとし、アルコール除菌シートを使用して机、家具などを拭いたときの拭きむらについて以下のように判定した。
2点:拭きむらがないと感じる場合
1点:拭きむらがややあると感じる場合
0点:拭きむらが目立つと感じる場合
〔評価基準〕
15名の平均値を求めて、以下の基準で拭きむらを評価した。
○:拭きむらがない(平均値1.5点以上)
△:拭きむらがみられる(平均点1.5点未満)
【0042】
【0043】
表1の実施例の結果から明らかなように、本発明の要件を満足するアルコール除菌シート用薬液を含浸させてなるアルコール除菌シートは、拭き取りやすさ、油汚れふき取り性、細菌付着抑制効果、拭きむらにおいて良好な結果であった。
これに対して、表1の比較例の結果から明らかなように、本発明の要件を満足しないアルコール除菌シート用薬液を含浸させてなるアルコール除菌シートは、拭き取りやすさや細菌付着抑制効果に乏しい場合や、油汚れふき取り性に優れている場合でも、拭きむらの結果が悪いものであった。