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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089299
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240626BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240626BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240626BHJP
【FI】
G02B27/01
G09F9/00 357
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204574
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 隆延
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
5G435
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA13
2H199DA17
2H199DA19
2H199DA22
2H199DA30
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
5G435AA12
5G435BB12
5G435BB19
5G435DD04
5G435FF05
5G435FF06
5G435GG07
5G435HH04
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】画像表示部の温度上昇を抑制しながらも、投影画像の輝度向上を図ることが可能な画像投影装置を提供する。
【解決手段】照射光を照射する光源(11)と、照射光を拡散する光拡散部(14)と、所定方向の偏光成分を透過し、所定方向と交差する方向の偏光成分を反射する反射型偏光部(15)と、反射型偏光部(15)を透過した所定方向の偏光成分が背面から入射し、表示面から画像光を出射する画像表示部(16)を備え、光拡散部(14)と反射型偏光部(15)が所定距離を隔てて配置されている画像投影装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射光を照射する光源と、
前記照射光を拡散する光拡散部と、
所定方向の偏光成分を透過し、前記所定方向と交差する方向の偏光成分を反射する反射型偏光部と、
前記反射型偏光部を透過した前記所定方向の偏光成分が背面から入射し、表示面から画像光を出射する画像表示部を備え、
前記光拡散部と前記反射型偏光部が所定距離を隔てて配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記光拡散部と前記反射型偏光部の間に空隙が設けられていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記画像表示部の長手方向の長さがLであり、
前記反射型偏光部の背面からL/5以下の範囲に前記光拡散部が配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記光源と前記光拡散部の間に配置され、前記画像表示部の長手方向における配光分布を調整する第1光学部材を備え、
前記画像表示部の長手方向の長さがLであり、
前記第1光学部材と前記光拡散部との間隔はL/8以下の範囲であることを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像投影装置であって、
前記光源と前記第1光学部材の間に配置され、前記光源からの前記照射光の配光分布を調整する第2光学部材を備え、
前記第2光学部材の厚さは、3L/10以上9L/10以下の範囲であることを特徴とする画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関し、特に虚像を表示するための表示部に対して投影画像を照射する画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラス(ウィンドシールド)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があるため好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、運転者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)も提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-119248号公報
【特許文献2】特開2019-119262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から提案されているHUD装置(画像投影装置)では、画像表示部の背面側からバックライト光を照射し、自由曲面ミラーやレンズ等の投影光学部を介して、画像光を所定の位置に投影している。また従来の画像投影装置では、画像表示部として液晶表示装置等が用いられており、光源から照射された光のうち特定方向に偏光した光のみが画像光の照射に用いられる。そのため、液晶表示装置等の裏面側には、特定方向の偏光のみを透過する偏光板が配置されている。
【0006】
しかし特に車載用の画像投影装置では、投影される画像を社外の風景に重ね合わせるため、投影された画像の視認性を高めるためには画像光の輝度を非常に高める必要がある。そのため、偏光板を透過しないバックライト光によって、偏光板および液晶表示装置の温度が上昇して製品寿命に悪影響を及ぼす可能性がある。また、無偏光なバックライトのうち、偏光板を透過する光量はバックライト光の半分だけになり、光源が照射した光量を十分に利用して投影画像の輝度を向上させることが困難であった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、画像表示部の温度上昇を抑制しながらも、投影画像の輝度向上を図ることが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、照射光を照射する光源と、前記照射光を拡散する光拡散部と、所定方向の偏光成分を透過し、前記所定方向と交差する方向の偏光成分を反射する反射型偏光部と、前記反射型偏光部を透過した前記所定方向の偏光成分が背面から入射し、表示面から画像光を出射する画像表示部を備え、前記光拡散部と前記反射型偏光部が所定距離を隔てて配置されていることを特徴とする。
【0009】
このような本発明の画像投影装置では、反射型偏光部で所定方向と交差する方向の偏光成分を反射し、画像表示部の温度上昇を抑制しながらも、所定距離を隔てて配置された光拡散部で再度光を拡散し、拡散された光に所定方向の偏光成分を含ませて投影画像の輝度向上を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記光拡散部と前記反射型偏光部の間に空隙が設けられている。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記画像表示部の長手方向の長さがLであり、前記反射型偏光部の背面からL/5以下の範囲に前記光拡散部が配置されている。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記光源と前記光拡散部の間に配置され、前記画像表示部の長手方向における配光分布を調整する第1光学部材を備え、前記画像表示部の長手方向の長さがLであり、前記第1光学部材と前記光拡散部との間隔はL/8以下の範囲である。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記光源と前記第1光学部材の間に配置され、前記光源からの前記照射光の配光分布を調整する第2光学部材を備え、前記第2光学部材の厚さは、3L/10以上9L/10以下の範囲である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、画像表示部の温度上昇を抑制しながらも、投影画像の輝度向上を図ることが可能な画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明における画像投影装置100を用いた画像の投影を説明する模式図である。
図2】第1実施形態に係る画像照射部10の長手方向に沿った構造例を示す模式断面図である。
図3】第1実施形態に係る画像照射部10の幅方向に沿った構造例を示す模式断面図である。
図4】画像投影装置100における光の透過と反射、拡散を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。図1は、本発明における画像投影装置100を用いた画像の投影を説明する模式図である。図1に示すように画像投影装置100は、画像照射部10と、投影光学部20を備えている。画像投影装置100は、画像照射部10から画像光を照射し、投影光学部20およびウィンドシールド30を介して運転者の視点位置に画像光を到達させる。運転者は、画像光が到達した方向の延長上に虚像P1を視認する。
【0017】
また、画像投影装置100は、各部と情報通信可能に接続されて、各部を制御する制御部を備えている(図示省略)。制御部の構成は限定されないが、一例として情報処理を行うためのCPU(Central Processing Unit)や、メモリ装置、記録媒体、情報通信装置等を備えるものが挙げられる。制御部は、予め定められたプログラムに従って各部の動作を制御し、画像を含んだ情報(画像情報)を画像照射部10に送出する。
【0018】
画像照射部10は、制御部からの画像情報に基づいて、画像を含んだ光(画像光)を照射する部分である。画像照射部10の具体的構成は限定されず、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置、レーザ光源と光変調素子の組み合わせ等の従来公知のものを用いることができる。一例としては、液晶表示装置の背面側から発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)により光を照射するものを用いている。画像照射部10の構成については詳細を後述する。
【0019】
投影光学部20は、画像照射部10から照射された画像光をウィンドシールド30方向に反射する光学部材である。投影光学部20から照射された画像光は、光径が拡大しながらウィンドシールド30を介して視点位置に到達する。図1に示した例では自由曲面ミラーを用いた例を示しているが、投影光学部20の構成は限定されず、自由曲面ミラーを複数枚用いて画像光を複数回反射するとしてもよく、必要に応じて凹面鏡、凸面鏡、レンズ、プリズム等を組み合わせて光径の拡大や縮小をするとしてもよい。また、投影光学部20は、画像光が視点位置に到達する前の所定位置において中間結像され、中間結像後に光径が拡大して進行するとしてもよい。
【0020】
ウィンドシールド30は、車両の運転席前方に設けられて可視光を透過する部材である。ウィンドシールド30は、車両の内側面では投影光学部20から入射した画像光を視点方向に対して反射し、車両の外部からの光を視点方向に対して透過するため、本発明における表示部に相当している。ここでは表示部としてウィンドシールド30を用いた例を示したが、ウィンドシールド30とは別に表示部としてコンバイナーを用意し、投影光学部20からの光を視点方向に反射するとしてもよい。また、車両の前方に位置するものに限定されず、搭乗者の視点に対して画像を投影するものであれば側方や後方に配置するとしてもよい。
【0021】
虚像P1は、ウィンドシールド30で反射された画像光が運転者等の視点(アイボックス)に到達した際に、空間中に結像されたように表示される画像である。虚像P1が結像される位置は、画像照射部10から照射された光が、投影光学部20およびウィンドシールド30で反射された後に視点方向に進行する際の拡がり角度によって決まる。
【0022】
図1に示した画像投影装置100では、画像照射部10から照射された画像光は、投影光学部20およびウィンドシールド30を介して運転者の視点に到達する。前述したように画像光は視点方向に光径が拡大して進行するため、運転者はウィンドシールド30よりも遠方に虚像P1が投影画像として表示されていると視認する。また、図1に示したように運転者はウィンドシールド30を介して車両の前方を視認しており、車両前方の背景に虚像P1が重なったように視認する。
【0023】
図2は、本実施形態に係る画像照射部10の長手方向に沿った構造例を示す模式断面図である。図3は、本実施形態に係る画像照射部10の幅方向に沿った構造例を示す模式断面図である。図2図3に示すように、画像照射部10は複数の発光素子11(図2では3個の場合を例示している)と、TIRレンズ12と、配光調整レンズ13と、光拡散部14と、反射型偏光部15と、画像表示部16を備えている。図2および図3においては、画像照射部10の長手方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向とし、画像光の照射方向をZ軸方向としている。
【0024】
発光素子11は、制御部からの信号に従って所定波長の照射光を照射する部材であり、本発明の光源に相当している。発光素子11の具体的な構成は限定されないが、一例としてはLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の半導体発光素子を用いることができる。発光素子11は、予め定められた方向(図2の例ではX軸方向)に沿って複数が配列されている。発光素子11の発光色は特に限定されないが、本実施形態では一例として白色としている。なお、本実施形態では発光素子11の配列数を1列としているが、2列以上であってもよい。また発光素子11はLEDに限らず半導体レーザ等であってもよい。
【0025】
TIRレンズ12(Total Internal Reflection)は、発光素子11と配光調整レンズ13の間に配置され、発光素子11からの照射光の配光分布を調整する光学部材であり、本発明における第2光学部材に相当している。図2図3に示した例では、TIRレンズ12は幅方向の中央に屈折部12aを有し、屈折部12aの両側に反射部12bを有しており、配列方向(X軸方向)に沿って延伸されている。発光素子11から屈折部12aに入射した照射光は、屈折部12aの形状に応じて屈折されて集光され、Z軸方向に照射される。発光素子11から反射部12bに入射した照射光は、傾斜した側面である反射面で屈折率差によって全反射され、Z軸方向に照射される。したがってTIRレンズ12は大きな指向角を有する発光素子11からの照射光を集光し、例えば平行光、あるいは平行光に近い光(以下、両者を併せて「略平行光」という)として出射する機能を有する。
【0026】
図2図3では、第2光学部材としてX軸方向に屈折部12aと反射部12bが延伸された一軸TIRレンズの例を示したが、複数のTIRレンズを各発光素子11に対応させて配置するとしてもよく、TIRレンズ以外のコリメートレンズを用いるとしてもよい。特に、第2光学部材から出射する光の進む方向とLEDの発光方向とはほぼ同じ方向を向き、方向のずれは大きくても45度以下である。
また、画像表示部16の長手方向の長さをLとすると、TIRレンズ12の厚さは3L/10以上9L/10以下の範囲であることが好ましい。TIRレンズ12の厚さをこの範囲とすることで、照射光を良好に略平行光として照射することができる。
【0027】
配光調整レンズ13は、発光素子11と光拡散部14の間に配置され、画像表示部16の長手方向における配光分布を調整する光学部材であり、本発明における第1光学部材に相当している。配光調整レンズ13は、TIRレンズ12から出射された略平行光が、画像表示部16の全体を均一に照明するように光束を制御する。従って配光調整レンズ13の形状、パワーの正負はこの目的に沿うように選択されるが、本実施形態では配光調整レンズ13の一例として凹レンズを用いている。
【0028】
TIRレンズ12および配光調整レンズ13は、両者相まって発光素子11から出射した光を画像表示部16の照明領域に導く機能を有する。TIRレンズ12のみによって照明領域の全体を均一に照明するように構成できれば、配光調整レンズ13は省略してもよい。TIRレンズ12および配光調整レンズ13は、例えばアクリル樹脂等の樹脂、ガラス等によって形成されている。
【0029】
光拡散部14は、入射した光を拡散して透過または反射する光学部材である。光拡散部14の具体的な構成は限定されないが、透光性の材料で構成された板状部材に光散乱粒子を分散させる構造や、板状部材の表裏面に微小な凹凸を形成する構造などが挙げられる。光拡散部14は、TIRレンズ12および配光調整レンズ13で偏向した指向性の高い光を拡散させて画像表示部16に照射し、画像表示部16がより均一に照明されるように機能する。また後述するように光拡散部14は、反射型偏光部15で反射されて光拡散部14に戻ってきた照射光を散乱して、その散乱光の一部を反射型偏光部15に再度入射させるように機能する。また、画像表示部16の長手方向の長さをLとし、配光調整レンズ13と光拡散部14との間隔をDとすると、DはL/8以下の範囲であることが好ましい。Dがこの範囲であることで、配光調整レンズ13で良好に長手方向における光の均一化を行うことができる。
【0030】
反射型偏光部15は、光拡散部14と画像表示部16の間に配置され、所定方向(透過軸方向)の偏光成分を透過し、所定方向と交差する方向(反射軸方向)の偏光成分を反射する光学部材である。反射型偏光部15の形状や構造は限定されないが、一例としては透過軸方向に沿って金属ナノワイヤを延伸させて配列した板状またはフィルム状のものを用いることができる。反射型偏光部15は、画像表示部16の裏面に接着剤等を用いて貼り合わせて配置するとしてもよく、間隙を設けて配置するとしてもよい。後述するように、反射型偏光部15と光拡散部14は所定距離を隔てて配置されていることが好ましく、両者間に空隙が設けられていることがより好ましい。
【0031】
画像表示部16は、制御部からの制御信号に従って画像を表示し、反射型偏光部15を透過した所定方向の偏光成分が背面から入射し、表示面から画像光を出射する部分である。画像表示部16としては、一例として透過型の液晶表示装置を用いることができる。画像表示部16として透過型の液晶表示装置を用いた場合には、照射光のうち利用可能な偏光方向は液晶分子の配向方向によって定まる。したがって反射型偏光部15の向きは、画像表示部16で利用可能な偏光方向と、反射型偏光部15の透過軸方向とが平行となるような配置となる。
【0032】
図2および図3に示した画像照射部10では、発光素子11で照射された照射光は、TIRレンズ12でY軸方向への拡がりがコリメートされ、配光調整レンズ13でX軸方向への拡がりが調整され、光拡散部14の照射領域全体に均一に照射される。ここで、光拡散部14の照射領域とは、画像表示部16において画像を表示することが可能な表示可能領域と略一致している。
【0033】
図4は、画像投影装置100における光の透過と反射、拡散を説明する模式図である。図4中に示した矢印は光の進行方向を模式的に示したものであり、無偏光を破線矢印で示し、P波(紙面に垂直方向)を実線矢印で示し、S波(紙面横方向)を一点鎖線で示している。図4では画像表示部16で画像光に利用される光がP波の場合を示しているが、S波を画像光に利用するとしてもよい。その場合には、図4で示したP波とS波の反射と透過が逆の関係になる。
【0034】
図4に示すように、発光素子11から光拡散部14に到達した照射光は無偏光であり、光拡散部14に設けられた何らかの光拡散構造によって拡散され、反射型偏光部15に入射する。反射型偏光部15では、照射光のうち透過軸方向の偏光成分(P波)が透過されて画像表示部16に到達して画像光として照射される。また反射型偏光部15では、反射軸方向の偏光成分(S波)が反射されて光拡散部14に再入射する。
【0035】
光拡散部14に再入射した照射光は、一部が光拡散部14の光拡散構造によって再拡散され、再び反射型偏光部15に入射する。このとき、光拡散部14に再入射した照射光は、S波であるが、所定の確率で拡散の過程において一部の偏光方向が変化し、P波を含んだものとして反射される。この再入射したP波は、反射型偏光部15を透過して画像表示部16で画像光(S波)に利用される。光拡散部14と反射型偏光部15の間では、上述したS波の反射と、再拡散による偏光方向の変化が繰り返されるため、最終的に反射型偏光部15を透過して画像表示部16で画像光に利用されるP波の光量が増加する。
【0036】
また図4に示したように、光拡散部14の光出射面と反射型偏光部15の裏面は所定距離を隔てて配置されている。ここで、光拡散部14と反射型偏光部15が所定の距離を隔てて配置されているとは、両者の間に間隙が設けられるとしてもよく、両者の間に可視光を透過する樹脂等で構成された中間層を介在させて保持するとしてもよい。光拡散部14と反射型偏光部15の間に中間層を介在させることで、光拡散部14と反射型偏光部15の距離を一定に保つことが容易となり、画像表示部16を含めて積層することで組み立て作業時のハンドリング性を向上させることもできる。中間層としては、発光素子11から照射された波長の可視光を透過する材料を用いることができる。光拡散部14から熱が伝わって画像表示部16の温度が上昇することを抑制するために、中間層は熱伝導率と耐熱性の観点からガラス、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー(COP:Cyclo Olefin Polymer)、シクロオレフィンコポリマー(COC:Cyclo Olefin Copolymer)等を用いることが好ましい。
【0037】
光拡散部14と反射型偏光部15が所定距離を隔てて配置されていることにより、光拡散部14で照射光を拡散する際に照射光の一部が吸収されて、光拡散部14の温度が上昇したとしても、反射型偏光部15および画像表示部16に熱が伝導して温度上昇することを抑制できる。ここで、画像表示部16の長手方向の長さをLとし、反射型偏光部15の背面から光拡散部14までの距離をDとすると、DはL/5以下の範囲であることが好ましい。DがL/5よりも大きいと、光拡散部14で拡散された照射光が拡散しすぎて、画像表示部16の有効な表示領域の外部に到達する光が増加して、虚像P1の輝度向上にとって好ましくない。
【0038】
上述したように、本実施形態の画像投影装置100では、反射型偏光部15で反射軸方向の偏光成分を反射し、画像表示部16の温度上昇を抑制しながらも、反射型偏光部15と所定距離を隔てて配置された光拡散部14で反射された光を再拡散し、再拡散された光に透過軸方向の光を含ませることで、投影される虚像P1の輝度向上を図ることが可能となる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態では、光拡散部14と反射型偏光部15が所定距離を隔てて配置された例を示したが、当該距離の間には空隙が設けられていることが好ましい。光拡散部14と反射型偏光部15の間に空隙が設けられていることで、空隙の間を空気等の冷却媒体が流動できるため、光拡散部14を冷却してさらに画像表示部16の温度上昇を抑制することができる。
【0040】
また、光拡散部14と反射型偏光部15の間に空隙を設ける場合には、反射型偏光部15と光拡散部14の距離Dは、2mm以上10mm以下であることが好ましい。距離Dが2mm未満の場合には、空気等の冷媒が流れにくくなり冷却の効果が低下する。距離Dが10mmより大きい場合には、空隙に存在する空気等による断熱効果が向上せず、装置の大型化という問題のほうが大きくなり好ましくない。
【0041】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
100…画像投影装置
10…画像照射部
11…発光素子
12…TIRレンズ
12a…屈折部
12b…反射部
13…配光調整レンズ
14…光拡散部
15…反射型偏光部
16…画像表示部
20…投影光学部
30…ウィンドシールド
P1…虚像
図1
図2
図3
図4