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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089303
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】炉構造体及びこれを用いた燃焼方法
(51)【国際特許分類】
   F23M 5/08 20060101AFI20240626BHJP
   F23M 5/00 20060101ALI20240626BHJP
   F27D 1/12 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F23M5/08
F23M5/00 H
F27D1/12 A
F27D1/12 F
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204581
(22)【出願日】2022-12-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000138772
【氏名又は名称】株式会社ヨータイ
(71)【出願人】
【識別番号】592187796
【氏名又は名称】株式会社ナリタテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼谷 貴央
(72)【発明者】
【氏名】江口 文康
(72)【発明者】
【氏名】岩松 茂雄
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA03
4K051AB03
4K051HA06
4K051HA08
4K051HA16
4K051HA18
(57)【要約】
【課題】水素燃焼炉又はアンモニア燃焼炉に用いる炉構造体であって、水素やアンモニアなどの非化石燃料を燃焼した際に生じる水蒸気を炉内から効率的に除去することができる炉構造体及び当該炉構造体を用いた効率的な燃焼方法を提供する。
【解決手段】水素燃焼炉又はアンモニア燃焼炉に用いる炉構造体であって、炉壁の炉層間に冷却ジャケット層を有し、冷却ジャケット層に空冷又は水冷の冷却ジャケットを具備すること、を特徴とする炉構造体。冷却ジャケット層の下部底面に床れんが及び排水口が配置され、床れんがの表面に線状の凹部が形成されていること、が好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素燃焼炉又はアンモニア燃焼炉に用いる炉構造体であって、
炉壁の炉層間に冷却ジャケット層を有し、
前記冷却ジャケット層に空冷又は水冷の冷却ジャケットを具備すること、
を特徴とする炉構造体。
【請求項2】
前記冷却ジャケット層の下部底面に床れんが及び排水口が配置され、
前記床れんがの表面に線状の凹部が形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の炉構造体。
【請求項3】
前記冷却ジャケットに、2次元面の板状となるように加工した冷媒配管を用いること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の炉構造体。
【請求項4】
前記冷却ジャケット層の厚さをtmm、前記冷却ジャケットの厚さをTmmとした場合、T≦t≦T+500を満たすこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の炉構造体。
【請求項5】
前記冷却ジャケット層に隣接する炉内壁の表面に線状の炉内壁凹部を有し、
前記炉内壁凹部の長手方向が鉛直下向き又は角度を持った下向き方向に形成されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の炉構造体。
【請求項6】
前記冷媒配管の内径を5~65mmとすること、
を特徴とする請求項3に記載の炉構造体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の炉構造体を用い、
水素又はアンモニア系の燃料を燃焼させ、
冷却ジャケット層の温度を露点以下に制御すること、
を特徴とする燃焼方法。
【請求項8】
前記冷却ジャケット層に設置された冷却ジャケットに冷媒を流通させ、
水蒸気の凝縮によって形成した水分液滴を流下させて炉内の水分を除去すること、
を特徴とする請求項7に記載の燃焼方法。
【請求項9】
前記冷却ジャケット層に隣接する炉内側の炉壁の温度を150~250℃とすること、
を特徴とする請求項7に記載の燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素燃焼炉又はアンモニア燃焼炉に用いる炉構造体及び当該炉構造体を用いた燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の使用によるCOの排出が問題となっており、燃焼してもCOを排出しない水素やアンモニアを燃料とする燃焼炉が注目されている。水素は燃焼速度及び火炎温度が高いため、高温が必要とされる設備に適しており、アンモニアは燃焼速度及び火炎温度が低いため、直接点火や直接燃焼させることが可能である。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2020-41748号公報)においては、「火炉に設置されると共にアンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置であって、前記燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に前記アンモニアを噴射する内筒ノズルと、前記燃料の噴射方向から見て前記内筒ノズルを径方向外側から囲んで配置されると共に前記内筒ノズルの周囲に前記アンモニアを噴射する外筒ノズルとを備えることを特徴とする燃焼装置」が提案されている。
【0004】
上記特許文献1に記載の燃焼装置においては、「内筒ノズルから噴射されたアンモニアが燃料の噴射方向から見て火炎の中央部にアンモニア濃度が高く酸素濃度が低い還元領域を形成する。一方で、外筒ノズルから内筒ノズルの周囲に噴射されたアンモニアが酸素と混合して燃焼されることによって生成された窒素酸化物は、火炎の外縁から中央に向けて還流する循環流に乗って還元領域に供給される。この結果、火炎の外縁で生成された窒素酸化物が内筒ノズルから噴射されたアンモニアによって形成された還元領域にて還元されて窒素ガスとなる。よって、本発明によれば、アンモニアを燃料として燃焼可能なボイラにおいて、窒素酸化物の増加を抑制することが可能となる。」とされている。
【0005】
また、特許文献2(特開平4-46695号公報)においては、「炉体と、断熱及び耐火材としての粒体と、炉心管と、酸化防止ガス導入管とを有する高温水素炉であって、炉体は、酸化防止ガス排出口を備え、内部に断熱及び耐火材としての粒体が充填されたものであり、炉心管は、ヒータを巻き付けた主要部が炉体内の断熱及び耐火材用粒体に埋設されたものであり、酸化防止ガス導入管は、炉心管に平行に施設され、炉心管に向けて酸化防止ガスを噴射するガス噴出口を備えたものであることを特徴とする高温水素炉」が提案されている。
【0006】
上記特許文献2に記載の高温水素炉においては、「ヒータの周囲の水素ガスを充満した状態に保持することができるので、ヒータの酸化による損傷、断線事故を防止し、高温水素炉の寿命を大幅に延長することができる。」とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-41748号公報
【特許文献2】特開平4-46695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の燃焼装置及び特許文献2に記載の高温水素炉においては、水素又はアンモニアを燃料とすることに起因して燃焼時に生成する水蒸気の問題について、全く検討されていない。
【0009】
具体的には、通常、水素やアンモニアなどの非化石燃料を用いる場合、燃焼の際に助燃材として導入された酸素と反応し、水蒸気が生成される。水蒸気が炉内に滞留した場合、水蒸気圧の上昇と共に当該水蒸気は炉外へ排気されるようになり、炉内排気孔からの排気及び排水も進行するが、必然的に炉壁への水分の浸透及び結露等が発生する。その結果、炉壁又は目地は水蒸気の膨張収縮の影響等を受けて損傷し、炉材が短寿命化することが深刻な問題となる。
【0010】
加えて、燃焼時に生成する水蒸気が炉内壁を含む炉材の表面で凝縮して水となり、当該水が蒸発する際に熱を奪うことから、炉内の昇温が妨げられることも問題となる。
【0011】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、水素燃焼炉又はアンモニア燃焼炉に用いる炉構造体であって、水素やアンモニアなどの非化石燃料を燃焼した際に生じる水蒸気を炉内から効率的に除去することができる炉構造体及び当該炉構造体を用いた効率的な燃焼方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、炉構造体及び当該炉構造体を用いた燃焼方法について鋭意研究を重ねた結果、炉構造体の適当な位置に冷却ジャケットを設け、水蒸気の凝縮によって形成した水分液滴を流下させて炉内の水分を除去すること等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
即ち、本発明は、
水素燃焼炉又はアンモニア燃焼炉に用いる炉構造体であって、
炉壁の炉層間に冷却ジャケット層を有し、
前記冷却ジャケット層に空冷又は水冷の冷却ジャケットを具備すること、
を特徴とする炉構造体、を提供する。
【0014】
炉層間の冷却ジャケット層に設置された冷却ジャケットで水蒸気を凝縮して流下させることで、炉内から水分を効率的に除去することができる。冷却ジャケット層は炉の焼成温度(使用時の炉内温度)に応じて配置箇所を設定し、断熱層等により略100℃の温度帯となる位置に設置することが好ましい。
【0015】
本発明の炉構造体においては、前記冷却ジャケット層の下部底面に床れんが及び排水口が配置され、前記床れんがの表面に線状の凹部が形成されていること、が好ましい。また、床れんがの線状の凹部は排水口に向かって配置されていることが好ましい。冷却ジャケット層では水蒸気が凝縮した水分が大量に滴り落ちるため、冷却ジャケット層の下部底面に線状の凹部が形成された床れんがと排水口が設けることで、滴下した水分は当該凹部に沿って流れ出し、効率的に排水口から排出することができる。
【0016】
また、本発明の炉構造体においては、前記冷却ジャケットに、2次元面の板状となるように加工した冷媒配管を用いること、が好ましい。2次元面の板状に加工した冷媒配管を用いることで、十分に大きな表面積を有する冷却ジャケットとすることができる。また、2次元面の板状とすることで、冷却ジャケット層の層厚増加を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の炉構造体においては、前記冷却ジャケット層の厚さをtmm、前記冷却ジャケットの厚さをTmmとした場合、T≦t≦T+500を満たすこと、が好ましい。冷却ジャケットは隣接する炉内壁に当接してもよいことから、冷却ジャケット層の最小層厚は冷却ジャケットの厚さとなる。一方で、冷却ジャケット層の厚さを「冷却ジャケットの厚さ+500mm」以下とすることで、当該冷却ジャケット層内の温度分布が大きくなることを抑制でき、燃焼時における冷却ジャケット層内の温度を略100℃に制御することができる。
【0018】
また、本発明の炉構造体においては、前記冷却ジャケット層に隣接する炉内壁の表面に線状の炉内壁凹部を有し、前記炉内壁凹部の長手方向が鉛直下向き又は角度を持った下向き方向に形成されていること、が好ましい。
【0019】
冷却ジャケット層に隣接する炉内壁の表面に線状の炉内壁凹部を有し、当該炉内壁凹部の長手方向が鉛直下向き又は角度を持った下向き方向に形成されていることで、水蒸気が凝縮した水分が炉内壁凹部に沿って滴り落ちやすくなり、水分を炉内から効率的に除去することができる。
【0020】
更に、本発明の炉構造体においては、前記冷媒配管の内径を5~65mmとすること、が好ましい。冷媒配管の内径を5mm以上とすることで、冷媒を流通させる際の印加圧力を抑制することができることに加え、水蒸気の凝縮に十分な冷却性能を発現させることができる。一方で、冷媒配管の内径を65mm以下とすることで、炉壁内に設置可能な程度に冷却ジャケットの厚さを抑制することができることに加え、冷却ジャケットに十分な表面積を付与することができる。また、鋼管の内径を65mm以下とすることで、冷媒の流速低下を抑制でき、十分な熱交換性を確保することができる。
【0021】
また、本発明は、
本発明の炉構造体を用い、
水素又はアンモニア系の燃料を燃焼させ、
冷却ジャケット層の温度を露点以下に制御すること、
を特徴とする燃焼方法、も提供する。
【0022】
冷却ジャケット層の温度を露点以下に制御することで、水素又はアンモニア系の燃料を燃焼させた際に生成される水蒸気を冷却ジャケット層で効率的に除去することができる。ここで、冷却ジャケット層の温度を露点以下に制御する方法は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、例えば、燃焼温度を制御してもよく、断熱層の材質や厚さを制御してもよく、冷却ジャケット層の位置を調整してもよい。
【0023】
また、本発明の燃焼方法においては、前記冷却ジャケット層に設置された冷却ジャケットに冷媒を流通させ、水蒸気の凝縮によって形成した水分液滴を流下させて炉内の水分を除去すること、が好ましい。冷却ジャケットに流通させる冷媒は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の冷媒を用いることができるが、水又は空気を用いることが好ましい。水又は空気を冷媒とすることで、簡便かつ安価に冷却を行うことができる。
【0024】
更に、本発明の燃焼方法においては、前記冷却ジャケット層に隣接する炉内側の炉壁の温度を150~250℃とすること、が好ましい。冷却ジャケット層に隣接する炉内側の炉壁の温度を150~250℃とすることで、冷却ジャケット層の温度を約100℃とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、水素燃焼炉又はアンモニア燃焼炉に用いる炉構造体であって、水素やアンモニアなどの非化石燃料を燃焼した際に生じる水蒸気を炉内から効率的に除去することができる炉構造体及び当該炉構造体を用いた効率的な燃焼方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の炉構造体の一態様を示す概略断面図である。
図2】冷却ジャケットの一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の炉構造体及び当該炉構造体を用いた燃焼方法の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0028】
1.炉構造体
本発明の炉構造体は、水素燃焼炉又はアンモニア燃焼炉に用いる炉構造体であって、炉壁の炉層間に冷却ジャケット層を有し、冷却ジャケット層に空冷又は水冷の冷却ジャケットを具備すること、を特徴とするものである。
【0029】
図1に本発明の炉構造体の一態様を示す概略断面図(炉構造体の1/2の高さにおける水平断面)を示す。炉構造体1においては、炉内に面した最内部(1層目)に耐火れんが層2、2層目に耐火断熱れんが層4、3層目に断熱れんが層6が設置され、最外層に外壁層8が設けられている。図1においては、冷却ジャケット層10は断熱れんが層6と外壁層8の間に設けられており、炉内を所望の温度にした場合において、耐火れんが層2、耐火断熱れんが層4及び断熱れんが層6によって順次温度が低下し、冷却ジャケット層10の温度が略100℃となるように調整されている。
【0030】
炉構造体の層構造はこれに限られず、例えば、炉内温度が高温になる場合は、異なる断熱れんが層6を追加したり、冷却ジャケット層10より内側の層を厚くしたりすればよい。
【0031】
耐火れんが層2、耐火断熱れんが層4、断熱れんが層6及び外壁層8の材質は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の炉壁材を用いることができる。例えば、耐火れんが層2には純アルミナ系耐火れんが、耐火断熱れんが層4には純アルミナ系耐火断熱れんが、断熱れんが層6にはアルミナ系断熱れんがを用いることができる。
【0032】
冷却ジャケット層10の厚さは、冷却ジャケット層10の厚さをtmm、冷却ジャケットの厚さをTmmとした場合、T≦t≦T+500を満たすことが好ましい。冷却ジャケットは隣接する炉内壁(図1における断熱れんが層6の外側及び外壁層8の内側)に当接してもよいことから、冷却ジャケット層10の最小層厚は冷却ジャケットの厚さとなる。一方で、冷却ジャケット層10の厚さを「冷却ジャケットの厚さ+500mm」以下とすることで、冷却ジャケット層10内の温度分布が大きくなることを抑制でき、燃焼時における冷却ジャケット層10内の温度を略100℃に制御することができる。また、冷却ジャケット層10の厚さを「冷却ジャケットの厚さ+500mm」以下とすることで、冷却ジャケットによる冷却効果の低下を抑制することができる。
【0033】
冷却ジャケット層10に設置する冷却ジャケットの一態様を示す模式図を図2に示す。冷却ジャケット12は鋼管14を曲げて2次元面の板状となるように加工したものである。鋼管14を曲げる回数や隣接する鋼管14同士の間隔、冷却ジャケット12の形状及び大きさ等は、所望の冷却性能や冷却ジャケット層10の形状及び大きさ等に応じて適宜決定すればよい。
【0034】
鋼管14の内径は5~65mmとすることが好ましい。鋼管14の内径を5mm以上とすることで、冷媒を流通させる際の印加圧力を抑制することができることに加え、水蒸気の凝縮に十分な冷却性能を発現させることができる。一方で、鋼管14の内径を65mm以下とすることで、冷却ジャケット層10に設置可能な程度に冷却ジャケット12の厚さを抑制することができることに加え、冷却ジャケット12に十分な表面積を付与することができる。また、鋼管14の内径を65mm以下とすることで、冷媒の流速低下を抑制でき、十分な熱交換性を確保することができる。
【0035】
冷却ジャケット12は、冷却効果を向上させるために熱交換を行う表面積を大きくし、凝縮した水分を流下させるための空間を確保するために、凹凸による空間が形成されたジャケット構造とすることが好ましい。また、冷却ジャケット12は冷却ジャケット層10の全域に配置してもよく、任意の領域のみに配置してもよいが、炉内の水分除去を促進する観点からは、全域に配置することが好ましい。
【0036】
冷却ジャケット層10の下部底面に床れんが及び排水口が配置され、床れんがの表面に線状の凹部が形成されていることが好ましい。また、床れんがの線状の凹部は排水口に向かって配置されていることが好ましい。冷却ジャケット層10では水蒸気が凝縮した水分が大量に滴り落ちるため、冷却ジャケット層10の下部底面に線状の凹部が形成された床れんがと排水口が設けることで、滴下した水分は当該凹部に沿って流れ出し、効率的に排水口から排出することができる。床れんがの表面に設ける線状の凹部の形状や本数は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、排水口に向かう水の流れが促進されるように決定すればよい。
【0037】
また、冷却ジャケット層10に隣接する炉壁面(図1では断熱れんが層6の外側と外壁層8の内側)には、線状の炉内壁凹部を設け、当該炉内壁凹部は長手方向が鉛直下向き又は角度を持った下向き方向に形成されていることが好ましい。線状の炉内壁凹部の長手方向が鉛直下向き又は角度を持った下向き方向に形成されていることで、炉壁面に凝縮した水の流下を促進することができる。
【0038】
線状の炉内壁凹部は炉構造体の側面壁、床面及び天井に用いることができ、線状の炉内壁凹部が連続的に形成されていることが好ましい。例えば、側面壁の炉内壁凹部と床面の炉内壁凹部と天井の炉内壁凹部を連続的に形成することで、炉壁面に凝縮した水の流下をより効果的に促進することができる。
【0039】
2.燃焼方法
本発明の燃焼方法は、本発明の炉構造体を有する燃焼炉を用いるものであり、水素又はアンモニア系の燃料を燃焼させ、冷却ジャケット層10の温度を露点以下に制御することを特徴とするものである。
【0040】
冷却ジャケット層10の温度を露点以下に制御することで、水素又はアンモニア系の燃料を燃焼させた際に生成される水蒸気を冷却ジャケット層10で効率的に除去することができる。ここで、冷却ジャケット層10の温度を露点以下に制御する方法は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、例えば、燃焼温度を制御してもよく、断熱層の材質や厚さを制御してもよく、冷却ジャケット層10の位置を調整してもよい。
【0041】
また、冷却ジャケット層10に設置された冷却ジャケット12に冷媒を流通させ、水蒸気の凝縮によって形成した水分液滴を流下させて炉内の水分を除去することが好ましい。冷却ジャケット12に流通させる冷媒は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の冷媒を用いることができるが、水又は空気を用いることが好ましい。水又は空気を冷媒とすることで、簡便かつ安価に冷却を行うことができる。
【0042】
図2に示す冷却ジャケット12を用いる場合、冷媒は鋼管14の入り口から出口へ一方向に流通させることが好ましい。冷媒の流速は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、鋼管14の内径や所望の冷却性能等に応じて適宜決定すればよい。
【0043】
更に、冷却ジャケット層10に隣接する炉内側の炉壁(図1では断熱れんが層6の外側)の温度を150~250℃とすることが好ましい。冷却ジャケット層10に隣接する炉内側の炉壁の温度を150~250℃とすることで、冷却
ジャケット層10の温度を約100℃とすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1・・・炉構造体、
2・・・耐火れんが層、
4・・・耐火断熱れんが層、
6・・・断熱れんが層、
8・・・外壁層、
10・・・冷却ジャケット層、
12・・・冷却ジャケット、
14・・・鋼管。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素燃焼炉又はアンモニア燃焼炉に用いる炉構造体であって、
炉壁の炉層間に冷却ジャケット層を有し、
前記冷却ジャケット層に空冷又は水冷の冷却ジャケットを具備し、
前記冷却ジャケット層の下部底面に床れんが及び排水口が配置され、
前記床れんがの表面に線状の凹部が形成されていること、
を特徴とする炉構造体。
【請求項2】
水素燃焼炉又はアンモニア燃焼炉に用いる炉構造体であって、
炉壁の炉層間に冷却ジャケット層を有し、
前記冷却ジャケット層に空冷又は水冷の冷却ジャケットを具備し、
前記冷却ジャケット層に隣接する炉内壁の表面に線状の炉内壁凹部を有し、
前記炉内壁凹部の長手方向が鉛直下向き又は角度を持った下向き方向に形成されていること、
を特徴とする炉構造体。
【請求項3】
前記冷却ジャケットに、2次元面の板状となるように加工した冷媒配管を用いること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の炉構造体。
【請求項4】
前記冷却ジャケット層の厚さをtmm、前記冷却ジャケットの厚さをTmmとした場合、T≦t≦T+500を満たすこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の炉構造体。
【請求項5】
前記冷媒配管の内径を5~65mmとすること、
を特徴とする請求項3に記載の炉構造体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の炉構造体を用い、
水素又はアンモニア系の燃料を燃焼させ、
冷却ジャケット層の温度を露点以下に制御すること、
を特徴とする燃焼方法。
【請求項7】
前記冷却ジャケット層に設置された冷却ジャケットに冷媒を流通させ、
水蒸気の凝縮によって形成した水分液滴を流下させて炉内の水分を除去すること、
を特徴とする請求項に記載の燃焼方法。
【請求項8】
前記冷却ジャケット層に隣接する炉内側の炉壁の温度を150~250℃とすること、
を特徴とする請求項に記載の燃焼方法。