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特開2024-89309海洋生分解性ポリマー粒子群及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089309
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】海洋生分解性ポリマー粒子群及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20240626BHJP
   C08L 5/04 20060101ALI20240626BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240626BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20240626BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240626BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240626BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240626BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240626BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
C08J3/24 CEP
C08L5/04 ZBP
C08K5/09 ZAB
C09D5/16
C09D7/65
C09D201/00
A61K8/73
A61Q19/10
A61Q1/00
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204588
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋場 俊文
(72)【発明者】
【氏名】早川 和寿
(72)【発明者】
【氏名】上村 直弘
【テーマコード(参考)】
4C083
4F070
4J002
4J038
4J200
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC392
4C083AC482
4C083AC492
4C083AC542
4C083AC562
4C083AC662
4C083AC842
4C083AD041
4C083AD152
4C083AD242
4C083AD262
4C083AD301
4C083AD302
4C083CC12
4C083CC23
4C083DD17
4C083DD27
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE50
4C083FF01
4F070AA01
4F070AC12
4F070AC18
4F070AC32
4F070AC36
4F070AC40
4F070AC72
4F070AE08
4F070AE14
4F070AE28
4F070DA33
4F070DA40
4F070DB06
4F070DC13
4F070GA06
4F070GA08
4F070GB05
4J002AB051
4J002EG026
4J002EG036
4J002EG046
4J002FD146
4J002GB00
4J002GB01
4J002GC00
4J002GH01
4J038BA012
4J038BA171
4J038HA116
4J038NA05
4J200AA04
4J200AA06
4J200BA36
4J200DA16
4J200DA20
4J200DA22
4J200DA24
4J200EA11
4J200EA21
(57)【要約】
【課題】化粧品等のポリマービーズの代替として使用でき、マイクロプラスチック問題を解決し得る海洋生分解性ポリマー粒子群を提供する。
【解決手段】少なくともアルギン酸に由来するものを含む1価アニオン性置換基を有する水溶性ポリマー型多価アニオンが2種以上の2価以上の金属カチオンにより架橋されたポリマー化合物からなる海洋生分解性ポリマー粒子群であって、条件(1)~(4)を満たす海洋生分解性ポリマー粒子群。(1)前記粒子群に含まれる前記2価以上の金属カチオンの含有量が、3~30質量%である。(2)前記2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径の最大値と最小値との差が、15Å以上である。(3)原子半径が150Å以上の金属元素に由来する2価以上の金属カチオンの含有量が、全ての2価以上の金属カチオン中、25質量%以上である。(4)粒子群の吸水量が、300mL/100g未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1価アニオン性置換基を有する水溶性ポリマー型多価アニオンが2種以上の2価以上の金属カチオンにより架橋されたポリマー化合物からなる海洋生分解性ポリマー粒子群であって、
前記水溶性ポリマー型多価アニオンが、少なくともアルギン酸に由来するものを含み、
下記条件(1)~(4)を満たす海洋生分解性ポリマー粒子群。
(1)前記粒子群に含まれる前記2価以上の金属カチオンの含有量が、3~30質量%である。
(2)前記2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径の最大値と最小値との差が、15Å以上である。
(3)原子半径が150Å以上の金属元素に由来する2価以上の金属カチオンの含有量が、全ての2価以上の金属カチオン中、25質量%以上である。
(4)粒子群の吸水量が、300mL/100g未満である。
【請求項2】
前記1価アニオン性置換基が、カルボン酸アニオンである請求項1記載の海洋生分解性ポリマー粒子群。
【請求項3】
水溶性ポリマー型多価アニオンが、多糖類に由来するものである請求項1記載の海洋生分解性ポリマー粒子群。
【請求項4】
前記2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径の最大値と最小値との差が、100Å以下である請求項1記載の海洋生分解性ポリマー粒子群。
【請求項5】
前記2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径が、80~220Åである請求項1記載の海洋生分解性ポリマー粒子群。
【請求項6】
前記2種以上の金属カチオンのうち少なくとも1種が、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン又はアルミニウムイオンである請求項1記載の海洋生分解性ポリマー粒子群。
【請求項7】
前記2種以上の金属カチオンのうち少なくとも1種が、カルシウムイオン又はストロンチウムイオンである請求項6記載の海洋生分解性ポリマー粒子群。
【請求項8】
更に、下記条件(5)を満たす請求項1記載の海洋生分解性ポリマー粒子群。
(5)粒子径が10%変位したときの10%圧縮強度K10が、1~1000MPaである。
【請求項9】
更に、下記条件(6)を満たす請求項1記載の海洋生分解性ポリマー粒子群。
(6)溶融温度が150℃以上である。
【請求項10】
(A)少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマー粒子群を5質量%以上の濃度で分散させた媒体中、
(B)少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマーを、水及び油性媒体を用いて5質量%以上の濃度で水中に懸濁又は乳化させた媒体中、又は
(C)少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマーを5質量%以上の濃度で親水化又は溶解させた媒体中
で、架橋剤として2価以上の金属カチオンを含む塩化合物を2種以上用いて、前記水溶性アニオン性ポリマーに由来する水溶性ポリマー型多価アニオンを架橋させる架橋工程を含む海洋生分解性ポリマー粒子群の製造方法であって、
前記塩化合物に含まれる2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径の最大値と最小値との差が、15Å以上であり、
原子半径が150Å以上の金属元素に由来する2価以上の金属カチオンの含有量が、全ての2価以上の金属カチオン中、25質量%以上となるように、
前記2種以上の塩化合物を複数回に分けて添加して架橋反応を行う、海洋生分解性ポリマー粒子群の製造方法。
【請求項11】
前記架橋工程において、前記2種以上の塩化合物のうち少なくとも1種を単独で添加して架橋反応を行う、請求項10記載の海洋生分解性ポリマー粒子群の製造方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項記載の海洋生分解性ポリマー粒子群からなる紫外線散乱剤。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項記載の海洋生分解性ポリマー粒子群からなる海洋生分解性添加剤。
【請求項14】
請求項13記載の海洋生分解性添加剤を含むパーソナルケア製品。
【請求項15】
請求項13記載の海洋生分解性添加剤を含む化粧料。
【請求項16】
請求項13記載の海洋生分解性添加剤を含む塗料。
【請求項17】
請求項13記載の海洋生分解性添加剤を含むインク。
【請求項18】
請求項13記載の海洋生分解性添加剤を含む樹脂組成物。
【請求項19】
請求項13記載の海洋生分解性添加剤を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋生分解性ポリマー粒子群及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプラスチックによる環境汚染(海洋汚染)及び生態系への悪影響が問題となっており、環境負荷を低減するための様々な取り組みが始まっている。その中で、生分解性樹脂の開発及び普及に注目が集まっている。一般的な生分解性樹脂は、土壌や汚泥等、分解を担う微生物が多く存在する環境下では高い生分解性を示すものの、海洋中のように、微生物濃度が極端に低い環境では分解し難いという欠点があり、現在、海洋中で生分解可能な樹脂は極僅かである。
【0003】
微粒子は、基幹産業において主要材料として使用されている。微粒子の原料として、合成樹脂が使用されてきたが、前述した環境汚染(海洋汚染)及び生態系への悪影響が問題となっており、マイクロプラスチックの発生を減らす取り組みが始まっている。
【0004】
微粒子の原料として、セルロース等の天然高分子に注目が集まっている。しかし、セルロースは、吸水しやすく、膨潤性も比較的高いため、寸法安定性や触感、成形性の観点から好ましくない。また、土壌中のように陸地での分解性は高いものの海洋中での溶解性や分解性が低いという欠点を有する。
【0005】
天然高分子の中でも、アルギン酸は、海藻由来のポリマーであって、海洋微生物による分解や、海藻類、貝類等から放出される酵素等によって分解されるため、海洋中での分解は比較的早い。
【0006】
非特許文献1に記載されているように、アルギン酸は、カルシウム架橋することで膨潤性を抑制できるため、吸放湿性を必要とする制汗剤のような化粧品であれば特徴を最大限に活用でき、優位性が高い。しかしながら、例えば、ベースメイク、ポイントメイク等、既存のプラスチックのような柔らかさや触感が重要視される用途では、エッグボックス構造と言われる高架橋構造からくる弊害が生じる。
【0007】
特許文献1及び2には、疎水化剤を用いて触感を改良する技術が記載されており、一定の効果は得られているものの、柔らかさ、滑らかさ、柔軟性、風合いの改善の余地が求められている状況である。
【0008】
また、塗料、成形品等の産業資材全般においても、海洋汚染等の環境問題を考慮し、触感改良剤、光学特性等の既存のポリマービーズに代わる更なる有用な素材が求められている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-125256号公報
【特許文献2】特開2021-195321号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】佐藤貴哉 他2名、「アルギン酸カルシウム微粒子の開発と化粧品への展開」、繊維と工業、1996年、第20巻、第1号、p.20-26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、天然由来成分に起因する膨潤性、寸法安定性、触感、光学特性、成形性等の不具合を解消することで化粧品等のポリマービーズの代替として活用ができ、既存の汎用ポリマー成分に起因するマイクロプラスチック問題を解決する実用可能な海洋生分解性ポリマー粒子群を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、金属カチオン架橋によって得られるポリマー粒子群において、架橋に用いる金属カチオンの種類、配合量、架橋構造や密度を的確に調整することで、構造を安定化させつつ、粒子に柔らかさ、滑らかさ、柔軟性、風合い、紫外線(UV)散乱等の光学特性等を付与することができることを見出した。さらに、そのようなポリマー粒子群を樹脂、特に生分解性樹脂と組み合わせて使用することで、本材料が先行して海水中で一次分解し、(1)樹脂材料中に空孔が形成され、樹脂の比表面積が増加し、分解を担う微生物の増殖を促す効果や、(2)一次分解することで、二次分解、すなわち微生物による生分解を促進する効果が得られ、結果的に樹脂材料の海洋中での生分解を促進することができるため、マイクロプラスチック問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、下記海洋生分解性ポリマー粒子群及びその製造方法を提供する。
1.1価アニオン性置換基を有する水溶性ポリマー型多価アニオンが2種以上の2価以上の金属カチオンにより架橋されたポリマー化合物からなる海洋生分解性ポリマー粒子群であって、
前記水溶性ポリマー型多価アニオンが、少なくともアルギン酸に由来するものを含み、
下記条件(1)~(4)を満たす海洋生分解性ポリマー粒子群。
(1)前記粒子群に含まれる前記2価以上の金属カチオンの含有量が、3~30質量%である。
(2)前記2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径の最大値と最小値との差が、15Å以上である。
(3)原子半径が150Å以上の金属元素に由来する2価以上の金属カチオンの含有量が、全ての2価以上の金属カチオン中、25質量%以上である。
(4)粒子群の吸水量が、300mL/100g未満である。
2.前記1価アニオン性置換基が、カルボン酸アニオンである1の海洋生分解性ポリマー粒子群。
3.水溶性ポリマー型多価アニオンが、多糖類に由来するものである1又は2の海洋生分解性ポリマー粒子群。
4.前記2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径の最大値と最小値との差が、100Å以下である1~3のいずれかの海洋生分解性ポリマー粒子群。
5.前記2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径が、80~220Åである1~4のいずれかの海洋生分解性ポリマー粒子群。
6.前記2種以上の金属カチオンのうち少なくとも1種が、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン又はアルミニウムイオンである1~5のいずれかの海洋生分解性ポリマー粒子群。
7.前記2種以上の金属カチオンのうち少なくとも1種が、カルシウムイオン又はストロンチウムイオンである6の海洋生分解性ポリマー粒子群。
8.更に、下記条件(5)を満たす1~7のいずれかの海洋生分解性ポリマー粒子群。
(5)粒子径が10%変位したときの10%圧縮強度K10が、1~1000MPaである。
9.更に、下記条件(6)を満たす1~8のいずれかの海洋生分解性ポリマー粒子群。
(6)溶融温度が150℃以上である。
10.(A)少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマー粒子群を5質量%以上の濃度で分散させた媒体中、
(B)少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマーを、水及び油性媒体を用いて5質量%以上の濃度で水中に懸濁又は乳化させた媒体中、又は
(C)少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマーを5質量%以上の濃度で親水化又は溶解させた媒体中
で、架橋剤として2価以上の金属カチオンを含む塩化合物を2種以上用いて、前記水溶性アニオン性ポリマーに由来する水溶性ポリマー型多価アニオンを架橋させる架橋工程を含む海洋生分解性ポリマー粒子群の製造方法であって、
前記塩化合物に含まれる2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径の最大値と最小値との差が、15Å以上であり、
原子半径が150Å以上の金属元素に由来する2価以上の金属カチオンの含有量が、全ての2価以上の金属カチオン中、25質量%以上となるように、
前記2種以上の塩化合物を複数回に分けて添加して架橋反応を行う、海洋生分解性ポリマー粒子群の製造方法。
11.前記架橋工程において、前記2種以上の塩化合物のうち少なくとも1種を単独で添加して架橋反応を行う、10の海洋生分解性ポリマー粒子群の製造方法。
12.1~9のいずれかの海洋生分解性ポリマー粒子群からなるUV散乱剤。
13.1~9のいずれかの海洋生分解性ポリマー粒子群からなる海洋生分解性添加剤。
14.13の海洋生分解性添加剤を含むパーソナルケア製品。
15.13の海洋生分解性添加剤を含む化粧料。
16.13の海洋生分解性添加剤を含む塗料。
17.13の海洋生分解性添加剤を含むインク。
18.13の海洋生分解性添加剤を含む樹脂組成物。
19.13の海洋生分解性添加剤を含む成形体。
【発明の効果】
【0014】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、2価以上の金属カチオンを2種以上併用することで、構造を安定化させつつ、単一の金属カチオン架橋によるエッグボックス架橋構造に比べて、程よく構造を不安定化させ、架橋密度を調整することで、従来にない、適度な柔らかさ、滑らかさ、柔軟性、金属の持つ風合い、UV散乱等の光学特性等を有する。また、本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群を含む組成物や成形体は、海洋中での生分解が促進され、海洋汚染対策に有用である。よって、本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、各種用途に用いられている既存ポリマー粒子の代替として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[海洋生分解性ポリマー粒子群]
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、1価アニオン性置換基を有する水溶性ポリマー型多価アニオンが2種以上の2価以上の金属カチオンにより架橋されたポリマー化合物からなる海洋生分解性ポリマー粒子群であって、前記水溶性ポリマー型多価アニオンが、少なくともアルギン酸に由来するものを含み、下記条件(1)~(4)を満たすものである。
(1)前記粒子群に含まれる前記2価以上の金属カチオンの含有量が、3~30質量%である。
(2)前記2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径の最大値と最小値との差が、15Å以上である。
(3)原子半径が150Å以上の金属元素に由来する2価以上の金属カチオンの含有量が、全ての2価以上の金属カチオン中、25質量%以上である。
(4)粒子群の吸水量が、300mL/100g未満である。
【0016】
前記1価アニオン性置換基としては、カルボン酸アニオン(-COO-)、スルホン酸アニオン(-SO3 -)、硫酸アニオン(-O-SO3 -)、リン酸アニオン(-P(=O)(OH)-O-)等が挙げられる。これらのうち、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、硫酸アニオンが好ましく、特に環境配慮の観点からカルボン酸アニオンが好ましい。
【0017】
前記水溶性アニオン性ポリマーとしては、原料がバイオマス由来であり、生分解性の構造を有していることから、天然ポリマー由来のものが最適である。特に、水溶性アニオン性ポリマーとしては、多糖類に由来するものが好ましい。
【0018】
前記水溶性アニオン性ポリマーとしては、多糖類の1価塩等が好ましい。その具体例としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸1価塩;カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、CMCカリウム、CMCアンモニウム等のCMC1価塩及びセルロース誘導体の1価塩;オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム等の加工デンプンの1価塩及びデンプン誘導体の1価塩;ヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸1価塩、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のコンドロイチン硫酸1価塩等のグリコサミノグリカン誘導体の1価塩;キトサン誘導体の1価塩;キチン誘導体の1価塩;カラギナンナトリウム等のカラギナン1価塩及びカラギナン誘導体の1価塩;ポリペクチン酸ナトリウム等のペクチン酸1価塩及びペクチン誘導体の1価塩;アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、トラガントガム、グアーガム等の天然ガム類を骨格とした1価塩及びその誘導体の1価塩;寒天を骨格とする1価塩及びその誘導体の1価塩等が挙げられる。これらのうち、水溶性アニオン性ポリマーとしては、アルギン酸1価塩のみを使用すること、又はアルギン酸1価塩と、CMC1価塩、セルロース誘導体の1価塩、オクテニルコハク酸デンプン1価塩及びデンプン誘導体の1価塩、ヒアルロン酸1価塩及びコンドロイチン硫酸1価塩から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0019】
前記水溶性アニオン性ポリマーは、その1質量%又は10質量%水溶液の粘度が、0.01~2000mPa・sであるものが好ましく、0.1~1000mPa・sであるものがより好ましく、1.0~500mPa・sであるものが最も好ましい。生産性を考えると、その10質量%水溶液の粘度が前記範囲を満たすものがより好ましい。なお、前記粘度は、B型粘度計BL形による20℃における測定値である。
【0020】
前記2価以上の金属カチオンとしては、特に限定されないが、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、バリウムイオン、白金イオン、金イオン、ラジウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン等が挙げられる。これらのうち、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンが好ましく、溶解性や汎用性、環境面を考慮するとカルシウムイオン、ストロンチウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオンがより好ましい。
【0021】
前記海洋生分解性ポリマー粒子群に含まれる2価以上の金属カチオンの含有量(総質量)は、3~30質量%が好ましく、4~25質量%がより好ましく、5~20質量%が更に好ましく、6~18質量%が最も好ましい。2価以上の金属カチオンの含有量が前記範囲であれば、水によって大きく変形することがなく、粒子の特性を維持できる。
【0022】
架橋密度を調整するにあたり、前記金属カチオンを与える金属元素の原子の大きさは重要である。多糖類等の天然由来成分を用いた素材は、水に馴染みやすく、溶解又は膨潤しやすい構造を有するため、水に溶解又は膨潤しない構造を維持しつつ、適度な柔らかさ、風合いを得るためには、原子の大きさと配合比を考慮し、架橋密度をバランスよく調整することが必要である。
【0023】
本発明者らの検討の結果、最も大きい原子半径と最も小さい原子半径の差が、少なくとも15Å以上ある原子を併用すると、適度な柔らかさ及び風合いが得られることが分かった。また、複数の2価金属カチオンを併用することで、拡散性等の光学特性が格段に向上することも確認した。
【0024】
前記原子半径差の下限値は、15Åであるが、20Åが好ましく、25Åがより好ましく、30Åが更に好ましい。一方、その上限値は、架橋密度を調整可能であれば特に限定されないが、架橋密度が小さくなりすぎる(架橋点が少ない)と溶解又は膨潤しやすい構造となり、調整は難しくなる。そのため、現実的な上限値としては、100Åが好ましく、90Åがより好ましく、80Åが更に好ましい。なお、本発明において、原子半径は、ディプロマプログラム(DP)化学資料集(2014年6月発行の英文原本Chemistry data bookletの日本語版2015年8月発行(2016年5月改定)に記載された数値である。
【0025】
また、前記金属カチオンは、原子半径が150Å以上の金属元素に由来するものを少なくとも1種含み、その金属カチオンの含有量が、全ての2価以上の金属カチオン中、25質量%以上である必要がある。この場合、柔らかさ、風合い等の触感改良、拡散性等の光学特性等が良好な海洋生分解性ポリマー粒子群となる。原子半径が150Å以上の金属元素に由来する金属カチオンの含有量は、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が最も好ましい。一方、前記含有量の上限は、100質量%以下であるが、後述する原子半径が150Å未満の金属元素に由来する金属カチオンを含む場合は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。なお、金属カチオンの含有量は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)により測定した値である。
【0026】
前記金属カチオンが、原子半径が150Å以上の金属元素に由来するものを2種以上含む場合、それらの含有比は、特に限定されないが、原子半径が大きいものに対する原子半径が小さいものの含有比が、質量比で、1:99~99:1が好ましく、10:90~90:10がより好ましい。
【0027】
前記金属カチオンは、原子半径が150Å以上の金属元素に由来するものに加えて、原子半径が150Å未満の金属元素に由来するものを含んでもよい。原子半径が150Å未満の金属元素は、機能性を有するものもあり、目的に応じて抗菌性、抗カビ性、消臭性、UV除去性等の機能を付与することができる。特に、原子半径が150Å未満の金属元素に由来する金属カチオンを含むことで、UV散乱効果が大きく向上するため、このとき本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、UV散乱剤としても有用である。原子半径が150Å未満の金属元素に由来する金属カチオンを2種以上含む場合、それらの含有比は、特に限定されないが、原子半径が大きいものに対する原子半径が小さいものの含有比が、質量比で、1:99~99:1が好ましく、10:90~90:10がより好ましく、20:80~80:20が最も好ましい。
【0028】
また、前記2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径は、80~220Åであることが好ましく、90~210Åであることがより好ましく、100~200Åであることが更に好ましい。
【0029】
これらのことから、2価以上の金属カチオンは、カルシウムイオン及び/又はストロンチウムイオンを主成分として含むことが、架橋性のバランスと柔らかさ、風合い等の触感改良、拡散性等の光学特性等の観点から好ましい。特に、カルシウムイオン又はストロンチウムイオンと、マグネシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン及びアルミニウムイオンから選ばれる少なくとも1つの金属カチオンを含むことが好ましい。
【0030】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、通常の使用において形状を維持することが有用な用途がターゲットとなるため、一般的な水(水道水、イオン水、精製水等)に対しては、膨潤や過度な吸水を避ける必要がある。そのため、本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群の吸水量は、300mL/100g未満であることが好ましく、250mL/100g未満であることがより好ましく、200mL/100g未満であることが更に好ましい。なお、後述する疎水化処理がされていれば、前記吸水量は、150mL/100g未満であることが好ましく、100mL/100g未満であることがより好ましい。
【0031】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、柔らかさや触感が重要視される用途においては既存ポリマー粒子のような特性を有する必要がある。その粒子特性を評価する1つとして、粒子径の変位がX%変形時における粒子1個の圧縮強度をX%圧縮強度としてその特性を評価することができる。例えば、粒子径が10%変位したときの10%圧縮強度K10とは、微小圧縮試験機(MCT-W201、(株)島津製作所製)を用い、粒子径と圧縮変位による荷重値(試験力)等を測定し、下記式から求められる値である。
10%圧縮強度K10=2.48×P10/(πd2)
10:粒子径の10%変形時の荷重(N)
π:円周率
d:粒子径(mm)
なお、粒子径が変位したときの圧縮強度特性は、粒子の強度を普遍的かつ定量的に表すものであり、本発明のように圧縮試験による10%圧縮強度K10を用いることにより、粒子の好適な柔らかさを定量的かつ一義的に表すことが可能となる。
【0032】
一般的なポリマー粒子の場合、10%圧縮強度K10は0.1~5000Mpa程度であるが、本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、柔らかさや触感が重要視される用途においては、その10%圧縮強度K10が、1~1000MPaが好ましく、10~500MPaがより好ましく、15~300MPaが更に好ましく、20~200MPaが最も好ましい。なお、更に柔らかさを追求する用途においては、2価以上の金属イオンの種類、配合比を適宜調整することで、10%圧縮強度K10を20~150MPaの範囲に調整したり、更に20~100MPaの範囲に調整したりすることも可能である。
【0033】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、耐熱性を有することが好ましく、具体的には、その溶融温度が150℃以上であることが好ましい。前記溶融温度は、好ましくは、160℃以上が好ましく、180℃以上が好ましく、200℃以上が好ましい。前記溶融温度は、架橋度を調整することで調整することができる。なお、架橋度によっては、溶融せずに分解するようにすることも可能である。
【0034】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、1価カチオンを0.01~10質量%含んでいてもよい。前記1価カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、銀イオン等の1価金属カチオン;アンモニウムカチオン等の1価有機イオンが挙げられる。これらのうち、金属カチオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンがより好ましい。1価カチオンが前記範囲で存在することで、架橋密度が低下し、柔らかさ、柔軟性等を付与する要因の1つとなると考えられる。
【0035】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、良好な架橋度を得る観点から、前記2価以上の金属カチオン当量が、180g/当量~1000g/当量であることが好ましい。また、前記ポリマー型多価アニオンが有するアニオン性置換基に対する前記2価以上の金属カチオンの当量比が、0.2:1~0.5:1であることが好ましい。
【0036】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、その平均粒子径が5mm以下であることが好ましく、1mm以下、500μm以下、100μm以下、60μm以下、30μm以下、15μm以下、10μmの順で好ましい。また、その下限は、0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、1.0μmが更に好ましい。なお、本発明において平均粒子径は、レーザー回析・散乱法による体積平均粒子径(MV)である。
【0037】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群の形状は、球状、略球状、扁平状、くぼみ状等の物理的、化学的に形状制御されたものや物理的に粉砕したもの等、特に限定されないが、風合い、滑り性、粒径分布を制御の観点から、球状、略球状、楕円状、扁平状、くぼみ状等の物理的、化学的に形状制御されたものが好ましい。更に、略球状、楕円状、扁平状、くぼみ状等の鋭角を持たない曲線で形成された粒子が、光学特性がよいため好ましい。
【0038】
また、本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、該海洋生分解性ポリマー粒子群を0.1質量%となるように3質量%塩化ナトリウム水溶液に分散させ、72時間又は240時間で当該粒子の形状が変化し、溶解を伴い、透明化していく現象が確認できる。少なくとも240時間程度で溶解化、形状変化等の兆候となる現象が確認できない場合は、例えば海洋中において環境汚染(海洋汚染)、化学物質の吸着及び生態系への悪影響が懸念されることから、これらを超過し過ぎた長期間の粒子形状維持は好ましくない。
【0039】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、必要に応じて疎水化剤を用いて疎水化処理を行ってもよい。
【0040】
前記疎水化処理に用いる化合物(以下、疎水化剤ともいう。)としては、海洋生分解性ポリマー粒子群に疎水性や撥水性等を持たせる機能を有する化合物であり、得られるポリマー粒子群全体の海洋での生分解性及び環境汚染や生態系へ悪影響を及ぼさない化合物であれば適宜選択可能である。
【0041】
前記疎水化剤は、炭素数が6以上のアニオンを有する塩化合物が好ましい。前記アニオンの炭素数は、10以上がより好ましく、12以上が更に好ましい。前記アニオンの炭素数の上限は、特に限定されないが、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。また、前記塩化合物は、1価カチオンを有する塩化合物が好ましく、1価金属カチオンを有する塩化合物がより好ましい。また、前記塩化合物は、室温又は80℃以下で水に溶解するものが好ましい。このようなものであれば、海水中によく馴染み、良好な生分解速度が得られる。また、親水性基として、カルボキシ基、エステル結合、スルホン基、エーテル結合及びアミド結合から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0042】
前記疎水化剤の具体例としては、カルボン酸塩、アミノ酸誘導体塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、乳酸エステル塩等が挙げられる。前記疎水化剤は、環境的配慮から水や塩水に対する溶解性と環境中の微生物分解性とを十分満たすよう設計すると、分子量が5000以下のものが好ましく、分子量が50~1000のものがより好ましく、分子量が100~600のものが更に好ましく、200~500のものが最も好ましい。
【0043】
前記カルボン酸塩としては、炭素数6~30のカルボン酸の塩が好ましく、炭素数10~25のカルボン酸の塩がより好ましく、炭素数12~20のカルボン酸の塩が更に好ましい。前記カルボン酸塩は、1価カルボン酸の塩でもよく、多価カルボン酸の塩でもよい。
【0044】
前記1価カルボン酸としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、オクチル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、オキシステアリン酸、アラキジン酸、ミード酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等が挙げられる。また、これらの分岐構造を有する異性体でもよい。
【0045】
前記多価カルボン酸としては、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸等のジカルボン酸が挙げられる。また、これらの分岐構造を有する異性体でもよく、3価以上の多価カルボン酸でもよい。
【0046】
前記1価カルボン酸塩は、1価の金属塩が好ましく、その具体例としては、カプリル酸カリウム、カプリル酸ナトリウム等のカプリル酸塩;オクチル酸カリウム、オクチル酸ナトリウム等のオクチル酸塩;ペラルゴン酸カリウム、ペラルゴン酸ナトリウム等のペラルゴン酸塩;カプリン酸カリウム、カプリン酸ナトリウム等のカプリン酸塩;ウンデシレン酸カリウム、ウンデシレン酸ナトリウム等のウンデシレン酸塩;ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム等のラウリン酸塩;ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム等のミリスチン酸塩;ペンタデシル酸カリウム、ペンタデシル酸ナトリウム等のペンタデシル酸塩;パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム等のパルミチン酸塩;マルガリン酸カリウム、マルガリン酸ナトリウム等のマルガリン酸塩;ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等のステアリン酸塩;イソステアリン酸カリウム、イソステアリン酸ナトリウム等のイソステアリン酸塩;オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等のオレイン酸塩;リノール酸カリウム、リノール酸ナトリウム等のリノール酸塩;リノレン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム等のリノレン酸塩;アラキドン酸カリウム、アラキドン酸ナトリウム等のアラキドン酸塩;ベヘン酸カリウム、ベヘン酸ナトリウム等のベヘン酸塩;ドコサヘキサエン酸ナトリウム等のドコサヘキサエン酸塩;ヤシ油脂肪酸カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム等のヤシ油脂肪酸塩等が挙げられる。これらのうち、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、ステアリン酸塩、アラキドン酸塩等の炭素数10~20のカルボン酸塩等が好ましい。
【0047】
前記多価カルボン酸塩としては、1価の金属塩が好ましく、その具体例としては、オクタン二酸二ナトリウム、オクタン二酸二カリウム等のオクタン二酸塩;ノナン二酸二ナトリウム、ノナン二酸二カリウム等のノナン二酸塩;デカン二酸二ナトリウム、デカン二酸二カリウム等のデカン二酸塩;ウンデカン二酸二ナトリウム、ウンデカン二酸二カリウム等のウンデカン二酸塩;ドデカン二酸二ナトリウム、ドデカン二酸二カリウム等のドデカン二酸塩;トリデカン二酸二ナトリウム、トリデカン二酸二カリウム等のトリデカン二酸塩;テトラデカン二酸二ナトリウム、テトラデカン二酸二カリウム等のテトラデカン二酸塩;ペンタデカン二酸二ナトリウム、ペンタデカン二酸二カリウムのペンタデカン二酸塩;ヘキサデカン二酸二ナトリウム、ヘキサデカン二酸二カリウム等のヘキサデカン二酸塩;ヘプタデカン二酸二ナトリウム、ヘプタデカン二酸二カリウム等のヘプタデカン二酸塩;オクタデカン二酸二ナトリウム、オクタデカン二酸二カリウム等のオクタデカン二酸塩;ノナデカン二酸二ナトリウム、ノナデカン二酸二カリウム等のノナデカン二酸塩;エイコサン二酸二ナトリウム、エイコサン二酸二カリウム等のエイコサン二酸塩等が挙げられる。また、これらの分岐構造を有する異性体でもよく、3価以上の多価カルボン酸の塩を用いてもよい。これらのうち、デカン二酸塩、ドデカン二酸塩、テトラデカン二酸塩、ヘキサデカン二酸塩、オクタデカン二酸塩、エイコサン二酸塩等の炭素数10~20のジカルボン酸塩が好ましい。
【0048】
前記アミノ酸誘導体塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。また、前記アミノ酸誘導体の塩は、1価の塩が好ましく、1価の金属塩がより好ましい。
【0049】
前記アミノ酸誘導体としては、カプリロイルサルコシン、ラウロイルサルコシン、ミリストイルサルコシン、パルミトイルサルコシン、ヤシ油脂肪酸サルコシン等のサルコシン誘導体;カプリロイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸、ミリストイルグルタミン酸、パルミトイルグルタミン酸、ステアロイルグルタミン酸、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸、ココイルグルタミン酸、アシルグルタミン酸、ジラウロイルグルタミン酸等のグルタミン酸誘導体;ラウロイルグリシン、ミリストイルグリシン、パルミトイルグリシン、パルミトイルメチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アシルグリシン、ココイルグリシン等のグリシン誘導体;ラウリルメチルアラニン、ミリストイルメチルアラニン、ココイルアラニン、ヤシ油脂肪酸メチルアラニン等のアラニン誘導体;ラウロイルリジン、ミリストイルリジン、パルミトイルリジン、ステアロイルリジン、オレイルリジン、アシル化リジン等のリジン誘導体;ラウロイルアスパラギン酸、ミリストイルアスパラギン酸、パルミトイルアスパラギン酸、ステアロイルアスパラギン酸等のアスパラギン酸誘導体;ラウロイルタウリン、ラウロイルメチルタウリン、ミリストイルタウリン、ミリストイルメチルタウリン、パルミトイルタウリン、パルミトイルメチルタウリン、ステアロイルタウリン、ステアロイルメチルタウリン等のタウリン誘導体;ラウロイルプロリン、ミリストイルプロリン、パルミトイルプロリン等のプロリン誘導体等の炭化水素基を有するアミノ酸の誘導体が挙げられる。特に、アミノ酸のN-アシル誘導体が好ましい。
【0050】
前記アミノ酸誘導体塩としては、カプリロイルサルコシンカリウム、カプリロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンカリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、パルミトイルサルコシンカリウム、パルミトイルサルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンカリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム等のサルコシン誘導体塩;カプリロイルグルタミン酸カリウム、カプリロイルグルタミン酸ナトリウム、ララウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸マグネシウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、アシルグルタミン酸カリウム、アシルグルタミン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム等のグルタミン酸誘導体塩;ラウロイルグリシンカリウム、ラウロイルグリシンナトリウム、ミリストイルグリシンカリウム、ミリストイルグリシンナトリウム、パルミトイルグリシンナトリウム、パルミトイルメチルグリシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム、ココイルグリシンカリウム、ココイルグリシンナトリウム等のグリシン誘導体塩;ラウロイルメチルアラニンカリウム、ラウリルメチルアラニンナトリウム、ミリストイルメチルアラニンナトリウム、ココイルアラニンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウム等のアラニン誘導体塩;ラウロイルアスパラギン酸カリウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ミリストイルアスパラギン酸カリウム、ミリストイルアスパラギン酸ナトリウム、パルミトイルアスパラギン酸カリウム、パルミトイルアスパラギン酸ナトリウム、ステアロイルアスパラギン酸カリウム、ステアロイルアスパラギン酸ナトリウム等のアスパラギン酸誘導体塩;ラウロイルタウリンナトリウム、ラウロイルタウリンカリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルタウリンカリウム、ミリストイルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルタウリンカリウム、パルミトイルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンカリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルタウリンカリウム、ステアロイルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム等のタウリン誘導体塩;ラウロイルプロリンナトリウム、ミリストイルプロリンナトリウム、パルミトイルプロリンナトリウム等のプロリン誘導体塩等の炭化水素基を有するアミノ酸誘導体塩が挙げられる。特に、アミノ酸のN-アシル誘導体塩が好ましい。
【0051】
前記硫酸エステル塩としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。また、前記硫酸エステル塩は、1価の塩が好ましく、アンモニウム塩又は1価の金属塩がより好ましい。
【0052】
具体的には、前記アルキル硫酸エステル塩としては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数10~25のアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数12~20のアルキル基を有するものが更に好ましい。その具体例としては、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸カリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸アンモニウム、オレイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0053】
前記ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられる。
【0054】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0055】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシブチレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体のアルキルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。前記ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン-ポリオキシアルキレンブロック共重合体のアルケニルエーテルの硫酸エステルアンモニウム塩等が挙げられる。前記ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル及びその塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステルアンモニウム等が挙げられる。
【0056】
前記スルホン酸塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。また、前記スルホン酸塩は、1価の塩が好ましく、アンモニウム塩又は1価の金属塩がより好ましい。その具体例としては、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸アンモニウム、ミリスチルスルホン酸ナトリウム、ミリスチルスルホン酸アンモニウム、セチルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸アンモニウム、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ステアリルスルホン酸アンモニウム、オレイルスルホン酸ナトリウム、オレイルスルホン酸アンモニウム等のアルキルスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のドデシルベンゼンスルホン酸塩;アルキレンジスルホン酸ナトリウム等のアルキレンジスルホン酸塩;ジアルキルサクシネートスルホン酸ナトリウム等のジアルキルサクシネートスルホン酸塩;モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム塩等のモノアルキルサクシネートスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩;オレフィンスルホン酸ナトリウム、オレフィンスルホン酸アンモニウム等のオレフィンスルホン酸塩;ラウロイルイセチオン酸カリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ミリストイルイセチオン酸ナトリウム、パルミトイルイセチオン酸ナトリウム、ステアロイルイセチオン酸ナトリウム等のイセチオン酸塩;ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸アンモニウム、ジデシルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩等が挙げられる。これらの内、炭素数12~20のアルキル基を有するスルホン酸塩が特に好ましい。
【0057】
前記リン酸エステル塩としては、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。前記アルキルリン酸エステル塩としては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数10~25のアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数12~20のアルキル基を有するものが更に好ましい。その具体例としては、例えば、オクチルリン酸カリウム等のオクチルリン酸塩;ノニルリン酸カリウム等のノニルリン酸塩;デシルリン酸カリウム等のデシルリン酸塩;ウンデシルリン酸カリウム等のウンデシルリン酸塩;ラウリルリン酸カリウム等のラウリルリン酸塩;ミリスチルリン酸カリウム等のミリスチルリン酸塩;セチルリン酸カリウム、セチルリン酸ナトリウム等のセチルリン酸塩;ステアリルリン酸カリウム等のステアリルリン酸塩等が挙げられる。
【0058】
前記乳酸エステル塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。その具体例としては、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、ラウロイル乳酸ナトリウム等が挙げられる。
【0059】
これらのうち、疎水化剤としては、カルボン酸塩、アミノ酸誘導体塩、硫酸エステル塩及びスルホン酸塩が好ましい。中でも、カチオンとして有機イオンを有する塩又は金属カチオンを有する塩が環境的観点から好ましい。前記有機イオンとしては、アンモニウムイオン等の1価有機イオンが好ましい。また、前記金属カチオンとしては、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、銀イオン等の1価金属カチオンが好ましい。中でも、環境、生体安全性、汎用性、コスト等の観点からナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが更に好ましい。このような疎水化剤を用いることで、該疎水化剤のアニオンが前記架橋ポリマーに含まれる2価金属カチオンの一部とイオン結合により結合し、前記架橋ポリマーが疎水性を示すようになる。
【0060】
前記疎水化剤には、本願発明の効果を損なわない限り、カルボン酸、アミノ酸誘導体、有機ケイ素化合物、シリコーン化合物、フッ素化合物、硫酸エステル、スルホン酸、リン酸エステル、乳酸エステル、油剤、アクリル化合物、アクリル樹脂、チタンカップリング剤、無機化合物、金属酸化物、固形潤滑剤、界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。
【0061】
前記カルボン酸は、1価でも多価でもよく、その具体例としては前述したものが挙げられる。前記アミノ酸誘導体の具体例としては、前述したものが挙げられる。
【0062】
前記有機ケイ素化合物としては、炭素数6~30のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキル化シラン、炭素数6~30のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキル化シラザン、炭素数6~30のアルコキシ基を少なくとも1つ有するトリアルコキシシラン、オクチルトリアルコキシシラン、トリエトキシカプリリルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
前記シリコーン化合物としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン(メチコン)、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、環状シリコーン、架橋型シリコーン、アクリル-シリコーン系グラフト重合体、有機シリコーン樹脂部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、フッ素化シリコーン、シリコーンガム、アクリルシリコーン、シリコーンレジン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、フッ素化シリコーン等が挙げられる。
【0064】
前記フッ素化合物としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルアルコキシシラン、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロポリエーテル、フルオロシリコーン、フッ素化シリコーン樹脂、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0065】
前記硫酸エステルとしては、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル等が挙げられる。具体的には、前記アルキル硫酸エステルとしては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましい。その具体例としては、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、セチル硫酸、ステアリル硫酸、オレイル硫酸等が挙げられる。前記ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステルとしては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルとしては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。
【0066】
前記スルホン酸としては、炭素数6~30のものが好ましい。その具体例としては、ラウリルスルホン酸、ミリスチルスルホン酸、セチルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、オレイルスルホン酸等のアルキルスルホン酸;ドデシルベンゼンスルホン酸;アルキレンジスルホン酸;ジアルキルサクシネートスルホン酸;モノアルキルサクシネートスルホン酸;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;オレフィンスルホン酸;ラウロイルイセチオン酸、ミリストイルイセチオン酸、パルミトイルイセチオン酸、ステアロイルイセチオン酸等のイセチオン酸;スルホコハク酸等が挙げられる。
【0067】
前記リン酸エステルとしては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、アルキルリン酸エステル等が挙げられる。前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルとしては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
【0068】
前記アルキルリン酸エステルとしては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましい。その具体例としては、例えば、オクチルリン酸、ノニルリン酸、デシルリン酸、ウンデシルリン酸、ラウリルリン酸、ミリスチルリン酸、セチルリン酸、ステアリルリン酸等が挙げられる。
【0069】
前記乳酸エステルとしては、炭素数6~30のものが好ましい。その具体例としては、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オレイル、乳酸オクチルドデシル等が挙げられる。
【0070】
前記油剤としては、ワセリン、流動パラフィン、スクワラン、パラフィンワックス、アマニ油、綿実油、ヤシ油、ヒマシ油、卵黄油、ラノリン脂肪酸、ジカプリン酸プロピレングリコール、トリオクタン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、牛脂、ミツロウ、鯨ロウ、木ロウ、ラノリン、カルナバロウ、カンデリラワックス等が挙げられる。
【0071】
前記アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸アルキル等が挙げられる。前記アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸とスチレン系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸とビニルエステル系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸とオレフィン系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸と共役ジエン系化合物との共重合体及びその塩等が挙げられる。
【0072】
前記チタンカップリング剤としては、アルキルチタネート、ピロリン酸型のチタネート、亜リン酸型のチタネート、アミノ酸型のチタネート等が挙げられる。
【0073】
前記無機化合物としては、アルミナ等が挙げられる。前記金属酸化物としては酸化チタン等が挙げられる。
【0074】
前記固形潤滑剤としては、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリエチレンワックス等)、パラフィンワックス(例えば、合成パラフィン、天然パラフィン等)、フッ素樹脂系ワックス(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)、脂肪酸アミド系化合物(例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等)、金属硫化物(例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン等)、グラファイト、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、ポリアルキレングリコール、アルカリ金属硫酸塩等が挙げられる。
【0075】
なお、疎水化処理方法について、詳細は後述する。
【0076】
[海洋生分解性ポリマー粒子群の製造方法]
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群の製造方法は、(A)少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマー粒子群を5質量%以上の濃度で分散させた媒体中、(B)少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマーを、水及び油性媒体を用いて5質量%以上の濃度で水中に懸濁又は乳化させた媒体中、又は(C)少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマーを5質量%以上の濃度で親水化又は溶解させた媒体中で、架橋剤として2価以上の金属カチオンを含む塩化合物を2種以上用いて、前記水溶性アニオン性ポリマーに由来する水溶性ポリマー型多価アニオンを架橋させる架橋工程を含むものである。
【0077】
前記塩化合物に含まれる2価以上の金属カチオンとなる金属元素の原子半径の最大値と最小値との差は、15Å以上であり、原子半径が150Å以上の金属元素に由来する2価以上の金属カチオンの含有量が、全ての2価以上の金属カチオン中、25質量%以上となるように、前記2種以上の塩化合物を複数回に分けて添加して架橋反応を行う。
【0078】
以下、(A)の媒体を用いる方法を方法1とし、(B)の媒体を用いる方法を方法2とし、(C)の媒体を用いる方法を方法3とする。
【0079】
方法1は、少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマー粒子群を5質量%以上の濃度で分散させた媒体中で、架橋剤として2価以上の金属カチオンを含む塩化合物を2種以上用いて、前記水溶性アニオン性ポリマーに由来する水溶性ポリマー型多価アニオンを架橋させる架橋工程を含む方法である。
【0080】
前記水溶性アニオン性ポリマー粒子群は、例えば、少なくともアルギン酸1価塩を含む水溶性アニオン性ポリマーを含む溶液を噴霧乾燥させて粒子化させることで製造することができる。
【0081】
前記溶液に用いる溶媒としては、水、親水性有機溶媒又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒が好ましい。水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセルソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トリオキサン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、アセトニトリル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0082】
前記溶媒には、必要に応じて更に疎水性有機溶媒を加えてもよい。疎水性有機溶媒としては、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等の高級アルコール類;ブチルセロソルブ等のエーテルアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ペンタン、2-メチルブタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、2,2,3-トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p-メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、カプリリルメチコン、セチルジメチコン等の環状、直鎖状又は分岐状のシリコーンオイル類及びその共重合体;ニトロプロペン、ニトロベンゼン等の硫黄、窒素含有有機化合物類等が挙げられる。
【0083】
なお、本発明において親水性有機溶媒とは、水との同容量混合液が均一な外観を維持するものを意味し、疎水性有機溶媒とは、1気圧(1.013×105Pa)において、温度20℃で同容量の純水と緩やかにかき混ぜ、流動がおさまった後に当該混合液体が均一な外観を維持できないものを意味する。
【0084】
前記方法によって得られた水溶性アニオン性ポリマー粒子群を、5質量%以上の濃度になるように、水、親水性有機溶媒、水、親水性有機溶媒又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒に分散させる。分散させた後、2価以上の金属カチオンを含む塩化合物を2種以上用いて、架橋処理を行う。
【0085】
方法2は、(B)少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマーを、水及び油性媒体を用いて5質量%以上の濃度で水中に懸濁又は乳化させた媒体中で、架橋剤として2価以上の金属カチオンを含む塩化合物を2種以上用いて、前記水溶性アニオン性ポリマーに由来する水溶性ポリマー型多価アニオンを架橋させる架橋工程を含む方法である。
【0086】
前記油性媒体の具体例としては、前述した疎水性有機溶媒の具体例と同様のものが挙げられる。
【0087】
水溶性アニオン性ポリマーを水中に懸濁又は乳化させる方法としては、特に限定されないが、例えば、容器に水溶性アニオン性ポリマー、水、油性媒体、必要に応じて界面活性剤やその他の成分を一括して仕込み、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて懸濁又は乳化させる方法が挙げられる。また、水又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒に水溶性アニオン性ポリマーを溶解させた溶液と疎水性有機溶媒とを混合し、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて懸濁又は乳化させる方法が挙げられる。
【0088】
方法2において、架橋処理は、前記懸濁液又は乳化液(油中水滴型(W/O)エマルション)に、2価以上の金属カチオンを含む塩化合物を2種以上用いて、前記2種以上の塩化合物を複数回に分けて添加して行う。
【0089】
方法3は、少なくともアルギン酸1価塩を含む1価アニオン性置換基を有する水溶性アニオン性ポリマーを5質量%以上の濃度で親水化又は溶解させた媒体中で、架橋剤として2価以上の金属カチオンを含む塩化合物を2種以上用いて、前記水溶性アニオン性ポリマーに由来する水溶性ポリマー型多価アニオンを架橋させる架橋工程を含む方法である。
【0090】
水溶性アニオン性ポリマーを親水化又は溶解させる溶媒としては、水、親水性有機溶媒、又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒が好ましい。水及び親水性有機溶媒の具体例としては、方法1の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0091】
方法1~3のいずれの方法においても、架橋処理は、2種以上の塩化合物のうち少なくとも1種を単独で添加して架橋反応を行うことが好ましい、具体的には、添加量の少ない金属カチオンを有する塩化合物から順に添加して行うこと。または、最も添加量が多い塩化合物以外をまとめて添加し、最後に最も添加量が多い金属カチオンを有する塩化合物を単独で添加することが好ましい。これによって、設計上の金属カチオン含有割合に近い金属カチオン含有割合を有する海洋生分解性ポリマー粒子群が得られ、効率よく、安定的に目的の海洋生分解性ポリマー粒子群を得ることができる。
【0092】
架橋処理は、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。加熱温度は、10~100℃が好ましく、15~80℃が好ましい。処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間が好ましい。加熱することによって、溶媒の粘性が低下するため、粒子の内部にまで金属カチオンが含浸しやすくなる。
【0093】
なお、得られた海洋生分解性ポリマー粒子群は、必要に応じて、公知の設備によって、表面処理を行ったり、粉砕処理を行ったりしてもよい。
【0094】
海洋生分解性ポリマー粒子群を疎水化剤を用いて疎水化処理する場合、その方法としては、前述した方法で得られた海洋生分解性ポリマー粒子群を疎水化処理する方法や、前述した方法1~3において、架橋と同時に疎水化処理する方法が挙げられる。疎水化剤としては、前述したものを使用することができる。
【0095】
海洋生分解性ポリマー粒子群を疎水化処理する方法としては、疎水化剤を溶媒に溶解し、そこに海洋生分解性ポリマー粒子群を入れ、分散させ、前記粒子表面又は表面と内部双方に疎水化剤を付着させる方法が挙げられる。
【0096】
方法1において架橋と同時に疎水化処理する方法としては、少なくともアルギン酸1価塩を含む水溶性アニオン性ポリマー及び前記疎水化剤を含む溶液を噴霧乾燥させて粒子化し、前述した方法で架橋処理を行う方法が挙げられる。これによって、同時に疎水化処理もなされる。
【0097】
方法2において架橋と同時に疎水化処理する方法としては、前記懸濁液又は乳化液に前記疎水化剤を添加したものを、前述した方法で架橋処理を行う方法が挙げられる。これによって、同時に疎水化処理もなされる。
【0098】
方法3において架橋と同時に疎水化処理する方法としては、前記媒体中に前記疎水化剤を添加したものを、前述した方法で架橋処理を行う方法が挙げられる。これによって、同時に疎水化処理もなされる。
【0099】
なお、疎水化処理する方法として具体的には、特開2020-125256号公報の段落[0055]~[0095]に記載された方法、特開2021-195321号公報の段落[0056]~[0100]に記載された方法、特開2021-191810号公報の段落[0061]~[0112]に記載された方法等を参考にすることができる。
【0100】
[樹脂組成物]
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群を樹脂、特に生分解性樹脂と組み合わせて使用することで、海洋中での生分解が促進される樹脂組成物を得ることができる。また、樹脂組成物の物性やハンドリング性を調整する目的で、複数種の樹脂を組み合わせて使用することもできる。ここで生分解性樹脂とは、自然界の微生物の働きによって分解し、最終的に水や二酸化炭素等の無機物にまで分解される樹脂を意味する。
【0101】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群と組み合わせ得る樹脂としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、バイオPET、バイオポリアミド、バイオポリカーボネート、バイオポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、バイオポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸ブレンド、スターチブレンドポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレートサクシネート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸等が挙げられるが、環境への負荷低減を考慮すると、特に生分解性の高い樹脂が好ましい。
【0102】
また、前記生分解性樹脂としては、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレートコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、グリコール酸/カプロラクトンコポリマー、グリコール酸/炭酸トリメチレンコポリマー等の原料が石油由来の樹脂;(ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート系)ブロックコポリマー、(ポリ乳酸/ポリカプロラクトン)コポリマー、(ポリ乳酸/ポリエーテル)コポリマー、ポリ乳酸ブレンドPBAT、乳酸/グリコール酸コポリマー、バイオポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、スターチブレンドポリエステル樹脂、ポリ(ブチレンテレフタレートサクシネート)等の原料が一部バイオマス由来の樹脂;ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリヒドロキシカプリル酸、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)等のポリヒドロキシアルカン酸、ポリ乳酸等の原料が100%バイオマス由来の樹脂;セルロース、酢酸セルロース、セルロースエステル樹脂、デンプン、エステル化デンプン、キトサン等の天然高分子由来の樹脂等が挙げられる。また、環境負荷の低減を考慮すると、組み合わせる樹脂の原料としては、バイオマス由来であることが好ましく、100%バイオマス由来原料であることが、最も好ましい。
【0103】
本発明の樹脂組成物は、溶媒を含んでもよい。前記溶媒は、前記海洋生分解性ポリマー粒子群を溶解せず粒子として残しつつ、マトリクスとなる前記樹脂を溶解するものでもよく、前記樹脂及び海洋生分解性ポリマー粒子群の両方を溶解するものでもよい。これらを適宜調整することで、キャスティング等によるフィルム化による成形体や、塗料、インク、表面処理剤等としても活用可能となる。好ましい溶媒としては、例えば、水、ヘキサン、ヘプタン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、二塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、メチルグリコール、メチルトリグリコール、ヘキシルグリコール、フェニルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0104】
溶媒を使用する場合、前記樹脂組成物中の樹脂及び海洋生分解性ポリマー粒子群の合計の濃度は、0.5~90質量%が好ましく、1~80質量%がより好ましく、5~60質量%が更に好ましく、10~50質量%が最も好ましい。また、前記樹脂に対する海洋生分解性ポリマー粒子群の割合は、質量比で、99:1~10:90が好ましく、97:3~40:60がより好ましく、95:5~50:50が更に好ましく、90:10~60:40が最も好ましい。
【0105】
また、本発明の樹脂組成物は、溶媒を含まなくてもよい。この場合は、前記樹脂を熱溶融し、そこへ溶融しない海洋生分解性ポリマー粒子群を加えて混合してもよく、前記樹脂及び海洋生分解性ポリマー粒子群を共に熱溶融させて混合してもよい。なお、前記海洋生分解性ポリマー粒子群を樹脂と共に熱溶融させて混合する場合は、前記海洋生分解性ポリマー粒子群は樹脂の溶融温度に適した軟化点又は融点を有することが好ましい。前記軟化点又は融点の下限値としては、60℃以上、80℃以上、100℃以上、120℃以上の順に好ましく、上限値としては、300℃以下、250℃以下、200℃以下、180℃以下の順に好ましい。
【0106】
本発明の樹脂組成物中、海洋生分解性ポリマー粒子群の含有量は、充分な分解促進効果が得られ、かつ、樹脂組成物の物性に影響のない範囲とすることが望ましい点から、樹脂100質量部に対し、下限値は、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、5質量部以上の順で好ましい。また、生分解性促進剤の含有量の上限値は、100質量部以下、80質量部以下、50質量部以下、30質量部以下の順で好ましい。特に、海洋生分解性ポリマー粒子群が粒子状で存在する場合、その含有量の下限値は、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、その含有量の上限値は、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0107】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて酸化防止剤、離型剤、剥離剤、表面改質剤、疎水化剤、撥水化剤、親水化剤、染顔料、着色剤、熱安定剤、光安定剤、耐候性改良剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、硬質化剤、軟質化剤、相溶化剤、難燃剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、フィラー、金属不活性化剤等の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、樹脂100質量部に対し、0.1~50質量部程度が好ましい。
【0108】
前記樹脂組成物が溶媒を含むものである場合は、例えば、樹脂、海洋生分解性ポリマー粒子群及び必要に応じて前記添加剤を、同時に又は任意の順で溶媒に添加して混合することによって調製することができる。また、前記樹脂組成物が溶媒を含まないものである場合は、例えば、前記樹脂を溶融させ、そこへ海洋生分解性ポリマー粒子群及び必要に応じて前記添加剤を同時に又は任意の順で添加して混合してもよく、前記樹脂及び海洋生分解性ポリマー粒子群を加熱してともに溶融させて混合し、必要に応じて前記添加剤を添加して混合してもよい。
【0109】
[成形体]
前記樹脂組成物を用いて成形することで、前記樹脂に海洋生分解性ポリマー粒子群が分散又は溶解した成形体を得ることができる。前記樹脂組成物が溶媒を含む場合は、該樹脂組成物をそのまま用いて成形を行えばよく、前記樹脂組成物が溶媒を含まない場合は、該樹脂組成物中の樹脂又は樹脂及び海洋生分解性ポリマー粒子群を熱で溶融した後、成形を行えばよい。
【0110】
前記成形体の形状としては、例えば、フィルム状、繊維状、板状、発泡成形体状、その他の用途に応じた形状等が挙げられる。成形方法としては、特に限定されず、従来公知の各種成形方法を用いることができる。その具体例としては、ブロー成形、射出成形、押出成形、圧縮成形、溶融押出成形法、溶液キャスティング成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。
【0111】
[表面改質剤]
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、塩水で溶解するという性質を利用して、多孔質体を製造するための孔形成剤や表面改質剤として使用することもできる。例えば、前記海洋生分解性ポリマー粒子群を含む樹脂組成物から得られた成形体を、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の1価金属塩の水溶液に浸漬することで、表層部のみ表面改質が可能であり、更に含侵を続けることで海洋生分解性ポリマー粒子群が溶解し、多孔質体を製造することができる。これらの特徴を応用して表面処理剤、塗料、インク等へ展開可能である。
【0112】
[海洋生分解性ポリマー粒子群の用途]
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、水、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒又はこれらの混合溶媒に分散させ、分散液として使用できる。
【0113】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、液体、塗膜、フィルム、板材、紙等の成型品への添加剤として利用することができる。例えば、光散乱剤や光学フィルタ材料、着色剤、化粧品、吸収剤、吸着剤、インク、接着剤、電磁波シールド材、蛍光センサー、生体マーカー、記録材料、記録素子、偏光材料、薬物送達システム(DDS)用薬物保持体、バイオセンサー、DNAチップ、検査薬、焼成空孔化成形物、アンチブロッキング剤等に広く利用することができる。
【0114】
更に、窓ガラス製品やカーテン、壁材等のインテリア製品等によって室内、及び車内等へ入射する光又はUVを遮蔽することは、人体の日焼け及び人体への悪影響を防ぐばかりでなく、室内や車内の装飾品等の劣化を防ぐことができるという点でも有用となる。
【0115】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、パーソナルケア製品や化粧品用の添加剤として好適である。このとき、本発明の海洋生分解性ポリマー粒子は、スクラブ剤、増量剤、増粘剤、感触改質剤、皮膜形成剤等の用途で添加されることが好ましい。
【0116】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、天然高分子由来の主成分であり、軽量性、触感性、流動特性、溶液分散性等を向上させつつ、リキッド系等の液状成分を多く使用する用途へ展開が可能となる。また、くぼみを有する形状の場合は、その独特の形状から一般の球状とは異なる付着力を有しており、光散乱性等の向上が得られるとともに、例えばファンデーション等の成形体の固着力、塗布後の保持力を向上させる効果がある。さらに、その光学特性によって肌を明るく見せ、ぼかし効果によりカバー力を向上できる。また、形状と複数の金属カチオンを含むことに由来する特有のすべり性と光学特性によって、肌の上でののびに優れ、更にキメの溝を細かく埋めることで、シワや毛穴を目立たなくしたり、製品全体の流れ性、光拡散性等を自由にコントロールしたりすることができる。好ましい添加量としては、製品配合量に対して0.1~50質量%であり、好ましくは0.5~30質量%である。UV散乱効果、ぼかし効果等の光散乱性、流動性、成形性、付着向上、仕上り感等用途/目的に応じて適宜調整することができる。なお、本発明者らの検討では、化粧品用添加剤としては、1~20質量%含まれることが特に好ましい。なお、市販の粒子と適宜調整し組み合わせて使用してもよい。
【0117】
特に、効果が高い化粧品として、具体的には、スキンケア製品、頭髪製品、制汗剤製品、メイクアップ製品、UV防御製品、香料製品等であってよい。例えば、乳液、クリーム、ローション、カラミンローション、サンスクリーン剤、化粧下地料、サンタン剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、パック料、クレンジング料、洗顔料、アクネ対策化粧料、エッセンス等の基礎化粧料、ファンデーション、白粉、マスカラ、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、ネイルカラー、リップクリーム、口紅等のメイクアップ化粧料、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアカラー、ヘアトニック、セット剤、ボディーパウダー、育毛剤、デオドラント、脱毛剤、石鹸、ボディーシャンプー、入浴剤、ハンドソープ、香水等が挙げられる。また、製品の形態についても特に限定は無く、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、スプレー状等であってよい。これら化粧品の添加剤として有用な効果が期待できる。
【0118】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビア印刷、タンポ印刷、コーター、インクジェット等に用いられる印刷インク用添加剤、マーキングペン用、ボールペン用、万年筆用、筆ペン用、マジック等の筆記具インク用添加剤、クレヨン、絵の具、消しゴム等の文房具類の添加剤として利用できる。
【0119】
本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等に用いられる塗料用添加剤として好適である。例えば、自動車、電車、ヘリコプター、船、自転車、雪上車、ロープウェイ、リフト、フォバークラフト、自動二輪車等の輸送用機器、サッシュ、シャッター、貯水タンク、ドア、バルコニー、建築用外板パネル、屋根材、階段、天窓、コンクリート塀等の建築用部材、建築物屋内外の外壁や内装、ガードレール、歩道橋、防音壁、標識、高速道路側壁、鉄道高架橋、橋梁等の道路部材、タンク、パイプ、塔、煙突等のプラント部材、ビニールハウス、温室、サイロ、農業用シート等の農業用設備、電柱、送電鉄塔、パラボラアンテナ等の通信用設備、電気配線ボックス、照明器具、エアコン屋外器、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ等の電気機器、及びそのカバー、モニュメント、墓石、舗装材、風防シート、防水シート、建築用養生シート等の物品に用いられる塗料用添加剤として好適である。
【0120】
塗料の形態としては、溶剤型塗料のほかに水分散型塗料、非水分散型塗料、粉体塗料、電着型塗料等、必要に応じて適宜選択することができる。
【実施例0121】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、下記実施例及び比較例において、金属カチオンの含有量及び含有比は、ICP-MS((株)島津製作所製ICPE-9820)によって測定した。粒度分布及び体積平均粒子径(MV)は、MICROTRACK MT3000(日機装(株)製)を用いて測定した。また、下記製造例及び実施例において使用したアルギン酸ナトリウム及びアルギン酸カリウムは、以下のとおりである。
・アルギン酸ナトリウム:(株)キミカ製、商品名キミカアルギンULV-L3(10質量%水溶液にしたときの粘度が40mPa・s)
・アルギン酸カリウム:(株)キミカ製、商品名キミカアルギンK-ULV-L3(10質量%水溶液にしたときの粘度が40mPa・s)
【0122】
[1]海洋生分解性ポリマー粒子群の製造
[製造例1]架橋前ポリマー粒子群A1の製造
5000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて分散させた。
アルギン酸ナトリウム 400.0g
イオン交換水 4000.0g
【0123】
その後、60℃に加熱し、アルギン酸ナトリウムを2時間かけて溶解させ、9.0質量%水溶液を調製した。次に、固形分が溶解した状態を維持したまま、噴霧乾燥機を使用して得られた水溶液を噴霧乾燥(熱風温度200℃)し、架橋前ポリマー粒子群A1を得た。得られた粒子群をSEMで観察し、形状を確認したところ、くぼみを有する略球状の粒子であり、粒度分布においてMVが6μmの単分散した粒子群であった。
【0124】
[製造例2]架橋前ポリマー粒子群A2の製造
5000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて分散させた。
アルギン酸ナトリウム 256.0g
CMCナトリウム 64.0g
イオン交換水 4260.0g
【0125】
その後、60℃に加熱し、アルギン酸ナトリウム及びCMCナトリウムを2時間かけて溶解させ、7.0質量%水溶液を調製した。次に、固形分が溶解した状態を維持したまま、噴霧乾燥機を使用して得られた水溶液を噴霧乾燥(熱風温度200℃)し、架橋前ポリマー粒子群A2を得た。得られた粒子群A2をSEMで観察し、形状を確認したところ、くぼみを有する略球状の粒子であり、粒度分布においてMVが5μmの単分散した粒子群であった。
【0126】
[製造例3]架橋前ポリマー粒子群A3の製造
2000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて分散させた。
アルギン酸ナトリウム 57.0g
ヒアルロン酸ナトリウム 3.0g
イオン交換水 798.0g
【0127】
その後、60℃に加熱し、アルギン酸ナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムを2時間かけて溶解させ、7.0質量%水溶液を調製した。次に、固形分が溶解した状態を維持したまま、噴霧乾燥機を使用して得られた水溶液を噴霧乾燥(熱風温度200℃)し、架橋前ポリマー粒子群A3を得た。得られた粒子群をSEMで観察し、形状を確認したところ、球状の粒子であり、粒度分布においてMVが30μmの単分散した粒子群であった。
【0128】
[製造例4]架橋前ポリマー粒子群A4の製造
10000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて分散させた。
アルギン酸カリウム 304.0g
パルミチン酸ナトリウム 16.0g
イオン交換水 4250.0g
【0129】
その後、60℃に加熱し、アルギン酸カリウム及びパルミチン酸ナトリウムを2時間かけて溶解させ、7.0質量%水溶液を調製した。次に、固形分が溶解した状態を維持したまま、噴霧乾燥機を使用して得られた水溶液を噴霧乾燥(熱風温度200℃)し、粒子群を得た。得られた粒子群をSEMで観察し、形状を確認したところ、くぼみを有する略球状の粒子であり、粒度分布においてMVが15μmの単分散した粒子群であった。
【0130】
[実施例1-1]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1の製造
300mLのフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて架橋前ポリマー粒子群A1の30質量%のアルコール分散液を作製した。
架橋前ポリマー粒子群A1 30.0g
イソプロピルアルコール(IPA) 70.0g
【0131】
次に、40質量%塩化マグネシウム水溶液9.4gを前記攪拌中のアルコール分散液へ滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を継続し、1次架橋処理を実施した。1次架橋処理後、前記アルコール分散液に、40質量%塩化カルシウム水溶液18.8gをゆっくりと投入し、15分間攪拌し、更に精製水50.0gを滴下し、2時間攪拌をして2次架橋処理を施した。攪拌終了後、イオン交換水を用いて、ろ過洗浄を繰り返し、最終的な分散液を凍結乾燥機により粉体化し、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1を得た。
【0132】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。なお、ICP-MSによるマグネシウム及びカルシウムの含有量は、8.2質量%であり、その含有比は、Mg:Ca=1:1.9であった。
【0133】
[実施例1-2]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-2の製造
40質量%塩化マグネシウム水溶液9.4gを40質量%の塩化マグネシウムと塩化ストロンチウムの混合水溶液9.4g(塩化マグネシウムと塩化ストロンチウムの質量比は2:3)に変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-2を得た。
【0134】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-2をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。なお、ICP-MSによるマグネシウム、ストロンチウム及びカルシウム含有量は、11.4質量%であり、その含有比は、Mg:Sr:Ca=1:3:5.7であった。
【0135】
[実施例1-3]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-3の製造
40質量%塩化マグネシウム水溶液9.4gを40質量%塩化亜鉛水溶液9.4gに変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-3を得た。
【0136】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-3をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。なお、ICP-MSによる亜鉛及びカルシウムの含有量は、12.2質量%であり、その含有比は、Zn:Ca=1:1.3であった。
【0137】
[実施例1-4]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-4の製造
300mLのフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて架橋前ポリマー粒子群A1の30質量%のアルコール分散液を作製した。
架橋前ポリマー粒子群A1 30.0g
IPA 70.0g
【0138】
次に、40質量%塩化マグネシウム水溶液7.5gを前記攪拌中のアルコール分散液へ滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を継続し、1次架橋処理を実施した。1次架橋処理後、前記アルコール分散液に、40質量%塩化ストロンチウム水溶液22.5gをゆっくりと投入し、15分間攪拌し、更に精製水50.0gを滴下後、2時間攪拌をして2次架橋処理を施した。攪拌終了後、イオン交換水を用いて、ろ過洗浄を繰り返し、最終的な分散液を凍結乾燥機により粉体化し、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-4を得た。
【0139】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-4をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。なお、ICP-MSによるマグネシウム及びストロンチウムの含有量は、15.8質量%であり、その含有比は、Mg:Sr=1:5.5であった。
【0140】
[実施例1-5]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-5の製造
40質量%塩化マグネシウム水溶液7.5gを40質量%塩化亜鉛水溶液7.5gに変更した以外は、実施例1-4と同様の方法で、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-5を得た。
【0141】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-5をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。なお、ICP-MSによる亜鉛及びストロンチウムの含有量は、20.5質量%であり、その含有比は、Zn:Sr=1:3.5であった。
【0142】
[実施例1-6]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-6の製造
300mLのフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて架橋前ポリマー粒子群A1の30質量%のアルコール分散液を作製した。
架橋前ポリマー粒子群A1 30.0g
IPA 70.0g
【0143】
次に、40質量%塩化マグネシウム水溶液5.65gを前記攪拌中のアルコール分散液へ滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を継続し、1次架橋処理を実施した。1次架橋処理後、前記アルコール分散液に、40質量%塩化ストロンチウム水溶液5.65gを上記攪拌中のアルコール分散液へ滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を継続し2次架橋処理を実施した。2次架橋処理後、前記アルコール分散液に、40質量%塩化カルシウム水溶液16.9gをゆっくりと投入し、15分間攪拌し、更に精製水50.0gを滴下後、2時間攪拌をして3次架橋処理を施した。攪拌終了後、イオン交換水を用いて、ろ過洗浄を繰り返し、最終的な分散液を凍結乾燥機により粉体化し、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-6を得た。
【0144】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-6をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。なお、ICP-MSによるマグネシウム、カルシウム及びストロンチウムの含有量は、11.0質量%であり、その含有比は、Mg:Ca:Sr=1:3.2:2.2であった。
【0145】
[実施例1-7]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-7の製造
300mLのフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて架橋前ポリマー粒子群A1の30質量%のアルコール分散液を作製した。
架橋前ポリマー粒子群A1 30.0g
IPA 70.0g
【0146】
次に、40質量%塩化マグネシウム水溶液5.25gを前記攪拌中のアルコール分散液へ滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を継続し、1次架橋処理を実施した。1次架橋処理後、前記アルコール分散液に、30質量%塩化アルミニウム水溶液3.00gを上記攪拌中のアルコール分散液へ滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を継続し2次架橋処理を実施した。2次架橋処理後、前記アルコール分散液に、40質量%塩化カルシウム水溶液13.15gをゆっくりと投入し、15分間攪拌し、更に精製水50.0gを滴下後、2時間攪拌をして3次架橋処理を施した。攪拌終了後、イオン交換水を用いて、ろ過洗浄を繰り返し、最終的な分散液を凍結乾燥機により粉体化し、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-7を得た。
【0147】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-7をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。なお、ICP-MSによるマグネシウム、アルミニウム及びカルシウムの含有量は、8.4質量%であり、その含有比は、Mg:Al:Ca=2.9:1:11.4であった。
【0148】
[実施例1-8]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-8の製造
300mLのフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて架橋前ポリマー粒子群A2の30質量%のアルコール分散液を作製した。
架橋前ポリマー粒子群A2 30.0g
IPA 70.0g
【0149】
次に、40質量%塩化マグネシウム水溶液9.4gを前記攪拌中のアルコール分散液へ滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を継続し1次架橋処理を実施した。1次架橋処理後、前記アルコール分散液に、40質量%塩化カルシウム水溶液18.8gをゆっくりと投入し、15分間攪拌し、更に精製水50.0gを滴下後、2時間攪拌をして2次架橋処理を施した。攪拌終了後、イオン交換水を用いて、ろ過洗浄を繰り返し、最終的な分散液を凍結乾燥機により粉体化し、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-8を得た。
【0150】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-8をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。なお、ICP-MSによるマグネシウム及びカルシウムの含有量は、8.0質量%であり、その含有比は、Mg:Ca=1:1.8であった。
【0151】
[実施例1-9]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-9の製造
300mLのフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて架橋前ポリマー粒子群A3の30質量%のアルコール分散液を作製した。
架橋前ポリマー粒子群A3 30.0g
IPA 70.0g
【0152】
次に、40質量%塩化マグネシウム水溶液7.5gを上記攪拌中のアルコール分散液へ滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を継続し、1次架橋処理を実施した。1次架橋処理後、前記アルコール分散液に、40質量%塩化ストロンチウム水溶液20.65gをゆっくりと投入し、15分間攪拌し、更に精製水50.0gを滴下後、2時間攪拌をして2次架橋処理を施した。攪拌終了後、イオン交換水を用いて、ろ過洗浄を繰り返し、最終的な分散液を凍結乾燥機により粉体化し、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-9を得た。
【0153】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-9をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。なお、ICP-MSによるマグネシウム及びストロンチウムの含有量は、15.5質量%であり、その含有比は、Mg:Sr=1:5.8であった。
【0154】
[実施例1-10]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-10の製造
300mLのフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて架橋前ポリマー粒子群A4の30質量%のアルコール分散液を作製した。
架橋前ポリマー粒子群A4 30.0g
IPA 70.0g
【0155】
次に、40質量%塩化亜鉛水溶液7.5gを上記攪拌中のアルコール分散液へ滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を継続し、1次架橋処理を実施した。1次架橋処理後、前記アルコール分散液に、40質量%塩化ストロンチウム水溶液20.65gをゆっくりと投入し、15分間攪拌し、更に精製水50.0gを滴下後、2時間攪拌をして2次架橋処理を施した。攪拌終了後、イオン交換水を用いて、ろ過洗浄を繰り返し、最終的な分散液を凍結乾燥機により粉体化し、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-10を得た。
【0156】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-10をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。なお、ICP-MSによる亜鉛及びストロンチウムの含有量は、18.7質量%であり、その含有比は、Zn:Sr=1:3.3であった。
【0157】
[実施例1-11]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-11の製造
5000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、ホモジナイザー(IKA社製T25)を用いて5分間攪拌し、乳化させた。
アルギン酸ナトリウム 200.0g
イオン交換水 800.0g
ヘキサン 1000.0g
ソルビタンモノオレアート 5.0g
【0158】
そこへ、40質量%塩化マグネシウム水溶液62.5gを滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を継続し、1次架橋処理を実施した。次に、40質量%塩化カルシウム水溶液125.0gを滴下し、滴下終了後、50℃で2時間攪拌を行って2次架橋処理を施した。冷却終了後、エタノール及びイオン交換水により遠心洗浄を繰り返し、最終的な水分散液を凍結乾燥機により粉体化し、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-11を得た。
【0159】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-11をSEMで観察し、形状を確認したところ、球状の粒子であり、粒度分布においてMVが10μmの単分散した粒子群であった。なお、ICP-MSによるマグネシウム及びカルシウムの含有量は、8.0質量%であり、その含有比は、Mg:Ca=1:1.5であった。
【0160】
[実施例1-12]海洋生分解性ポリマー粒子群AC-12の製造
3000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、60℃で攪拌機を用いて完全に溶解させた。
アルギン酸ナトリウム 190.0g
N-ミリストイルサルコシン酸ナトリウム 10.0g
イオン交換水 1000.0g
【0161】
そこへ、40質量%塩化マグネシウム水溶液62.5gを高速攪拌化において滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を継続し、1次架橋処理を実施した。次に、40質量%塩化ストロンチウム水溶液125.0gを滴下し、滴下終了後、50℃で2時間攪拌を行って2次架橋処理を施し、完全に粒子として析出させた。攪拌終了後、イオン交換水を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させた。得られた粒子を粉砕機(大阪ケミカル(株)製ワンダーブレンダーWB-1)を用いて粉砕することで、目的の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-12を得た。
【0162】
得られた海洋生分解性ポリマー粒子群AC-12をSEMで観察し、形状を確認したところ、異形状の粒子であり、粒度分布においてMVが8μmの単分散した粒子群であった。なお、ICP-MSによるマグネシウム及びストロンチウムの含有量は、13.4質量%であり、その含有比は、Mg:Sr=1:3.2であった。
【0163】
[比較例1-1]
製造例1で得られた架橋前ポリマー粒子群A1を、比較ポリマー粒子群BC-1とした。
【0164】
[比較例1-2]
300mLのフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて架橋前ポリマー粒子群A1の30質量%のアルコール分散液を作製した。
架橋前ポリマー粒子群A1 30.0g
IPA 70.0g
【0165】
次に、40質量%塩化カルシウム水溶液28.15gをゆっくりと投入し、15分間攪拌し、更に精製水50.0gを滴下後、2時間攪拌をして架橋処理を施した。攪拌終了後、イオン交換水を用いて、ろ過及び洗浄を繰り返し、最終的な分散液を凍結乾燥機により粉体化し、カルシウムのみで架橋された比較ポリマー粒子群BC-2を得た。
【0166】
比較ポリマー粒子群BC-2をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。
【0167】
[比較例1-3]
300mLのフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて架橋前ポリマー粒子群A1の30質量%のアルコール分散液を作製した。
架橋前ポリマー粒子群A1 30.0g
IPA 70.0g
【0168】
次に、40質量%塩化ストロンチウム水溶液31.9gをゆっくりと投入し、15分間攪拌し、更に精製水50.0gを滴下後、2時間攪拌をして架橋処理を施した。攪拌終了後、イオン交換水を用いて、ろ過洗浄を繰り返し、最終的な分散液を凍結乾燥機により粉体化し、ストロンチウムのみで架橋された比較ポリマー粒子群BC-3を得た。
【0169】
比較ポリマー粒子群BC-3をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。
【0170】
[比較例1-4]
3000mLフラスコに、以下に示す各成分を一括で仕込み、ディスパー分散翼で800rpmで懸濁液を作製し、窒素気流下、オイルバス温度80℃で8時間加熱・攪拌し、粒子分散液を得た。その後、遠心分離を5回繰り返し分級・洗浄操作を行い、平均粒子径が6μmのポリメタクリル酸メチル単一の球状ポリマー粒子群である比較ポリマー粒子群BC-4を作製した。
水 1386.5g
メタクリル酸メチル 173.4g
ラウリルパーオキサイド 8.6g
ポリビニルピロリドン(K-30) 17.3g
【0171】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12及び比較ポリマー粒子群BC-1~BC-4の形状、主原料、架橋に用いた2価以上の金属、その含有量、含有量比、原子半径差の最大値(ΔR)及びMVを、まとめて表1に示す。
【0172】
【表1】
【0173】
実施例及び比較例で用いた2価以上の金属カチオンを与える金属の原子半径は以下のとおりである。なお、原子半径は、ディプロマプログラム(DP)化学資料集記載の数値を引用した(2014年6月発行の英文原本Chemistry data bookletの日本語版2015年8月発行(2016年5月改定))。
【0174】
【表2】
【0175】
[2]基本物性の測定
[実施例2-1~2-12、比較例2-1~2-4]
海洋生分解性水粒子群AC-1~AC-12及び比較ポリマー粒子群BC-1~BC-4について、下記方法によって、吸水量を測定し、耐熱性、耐薬品性及び耐熱薬品性を評価した。
【0176】
[吸水量の測定]
500mLのビーカーに各粒子群1gを入れ、次にイオン交換水200mLを加え、30分間懸濁攪拌(150rpm、25℃)を行い、その後500mLの遠心管に移し、遠心分離機(himac CR20GII、工機ホールディングス(株)製)を用いて2000Gで30分間遠心分離を行った。遠心分離後、上清を静かに捨て遠心管より試料を取り出し重量を測定(Ww)し、その後105℃の乾燥器で恒量になるまで乾燥し乾燥重量を測定(Dw)し、下記式により吸水量を算出した。結果を表3に示す。
吸水量(mL/100g)=[(Ww-Dw)/Dw]×100
【0177】
[耐熱性の評価]
アルミシャーレに各粒子群0.5gを入れ、乾燥機内で180℃で2時間熱を加えた後、目視により粒子の溶融を確認し、SEMにより形状の確認を行い、下記評価基準に従って評価した。結果を表3に示す。
[評価基準]
目視:○:大きな変化なし、△:一部溶融、×:溶融
SEM:1:作製粒子の形状である、2:形状維持、部分的に表面溶融化、3:一部溶融、一部粒子形状維持、4:粒子形状なし(完全溶融)
【0178】
[耐薬品性の評価]
300mLフラスコに各粒子群1g及び表3に示した溶媒99g(1質量%)を入れ、室温(25℃)で2時間攪拌した後、目視により粒子の分散状態の確認を行い、SEMにより形状の確認を行い、下記評価基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0179】
[耐熱薬品性の評価]
300mLフラスコに各粒子群1g及び表3に示した溶媒99g(1質量%)を入れ、70℃で2時間攪拌した後、目視により粒子の分散状態の確認を行い、SEMにより形状の確認を行い、下記評価基準に従って評価した。結果を表4に示す。
[評価基準]
◎:目視分散、SEMで作製粒子の形状
○:目視分散、SEMで形状維持、部分的に表面溶融化
△:目視一部分散、SEMで変形有
×:目視溶解、SEMで形状無
【0180】
【表3】
【0181】
【表4】
【0182】
[3]粒子の柔らかさ評価(圧縮強度特性評価)
[実施例3-1~3-12、比較例3-1~3-4]
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12及び比較ポリマー粒子群BC-1~BC-4の各粒子について、微小圧縮試験機MCT-W201((株)島津製作所製)を使用し、粒子径が10%変位したときの10%圧縮強度K10を評価した(測定温度20℃)。結果を表5に示す。
【0183】
【表5】
【0184】
[4]官能試験及び付着力評価
[実施例4-1~4-12、比較例4-1~4-4]
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12及び比較ポリマー粒子群BC-1~BC-4について、下記方法にて、肌触り、滑り性及び粒子付着力の評価を行った。結果を表6に示す。
(1)肌触り
各粒子群を皮膚上に伸ばした際の感触を下記評価基準に従って評価した。
(2)滑り性
黒色合皮上に各粒子群1gを載せて、指で伸ばした際の長さを下記評価基準に従って評価した。
(3)粒子付着力
黒色合皮上に各粒子群1gを載せて、パフで均等に伸ばした後、合皮を3回たたき、粒子の残存量をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製VHX200)で観察し、下記評価基準に従って評価した。
[評価基準]
◎:極めて良好、○:良好、△:標準、×:不良
【0185】
【表6】
【0186】
肌触り、滑り性について、海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12は、ポリマー粒子群BC-4と同等以上の性質を有し、粒子付着力は同レベルの粒子径であれば同等の付着力が維持できた。また、使用する金属カチオンの最大差が大きいほど、肌触り、滑り性が良くなる傾向がみられた。一方、架橋処理をしない粒子群BC-1は、ベース粒子の吸湿性悪化に伴い、肌触り、滑り性が低下する傾向であった。また、単一イオンにより架橋されたBC-2~BC-3は、エッグボックス構造に起因する高架橋性と吸湿性に起因して肌触り、滑り性が若干低下する傾向であった。
【0187】
[5]塩化ナトリウム水溶液溶解試験(疑似海水溶解性試験)
[実施例5-1~5-12、比較例5-1~5-4]
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12及び比較ポリマー粒子群BC-1~BC-4を、それぞれ0.1質量%となるように、水及び3質量%塩化ナトリウム水溶液に分散させ、溶解性試験を行った。
(1)外観:分散後、72時間及び240時間経過したときの状態を目視にて確認した。
(2)形状:塩化ナトリウム水溶液に分散後、72時間及び240時間経過したときの形状の変化を粒度分布測定にて確認した。
結果を表7に示す。
【0188】
【表7】
【0189】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12は、イオン架橋により水には溶解しない構造である一方、塩化ナトリウム水溶液溶解試験において、比較ポリマー粒子群BC-2及びBC-3と同等の溶解性を示し、2種以上の金属カチオンを複数使用した構造においても溶解性に変化がないことを確認できた。一方、架橋構造を有しない比較ポリマー粒子群BC-1は、水及び塩化ナトリウム水溶液の何れにも溶解してしまうことを確認した。また、汎用ポリマー粒子群である比較ポリマー粒子群BC-4は、何れにも溶解しなかった。
【0190】
[6]光拡散性評価
[実施例6-1~6-12、比較例6-1~6-4]
20mLのサンプル瓶に、各粒子群の0.1質量%水分散液を作製した。次に、水分散液をそれぞれ石英セルに注入し、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製UV-2450)を用いて、波長560nmの可視光並びに波長400nm及び320nmのUVの透過光分析を行った。結果を表8に示す。
【0191】
【表8】
【0192】
表8に示した結果より、本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、UV領域において透過光が低下していることから明らかにUV散乱効果が高いことを確認した。また、可視光領域においても散乱効果が高いことから、隠蔽性も高いことが確認された。
【0193】
[7]光学測定シートの作製及びその評価
[実施例7-1~7-12、比較例7-1~7-4]
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12及び比較ポリマー粒子群BC-1~BC-4各15.0gに、バインダー樹脂((株)クラレ製PVA樹脂)35.0g及び精製水75.0gを加え、混合して光学測定シート用組成物を調製した。得られた各組成物を、厚み100μmのPETフィルム(東洋紡(株)製E-5000)の片面に市販のバーコーターを使用してコーティングした後、乾燥機を60℃に設定し20分間熱風乾燥を行い、塗工層の厚みが40μmの光学シート1~16を作製した。
光学シート1~16について、自動変角光度計((株)村上色彩技術研究所製Gonio Photometer GP-200)を用い、入射角45°で光を一定量照射し、反射光の光散乱分布を測定し、下記評価基準に従って拡散性能を評価した。結果を表9に示す。
[評価基準]
光学シート16(ポリマー粒子群BC-4)を基準に
A:拡散性良好
B:拡散性ほぼ同等
C:拡散性劣る
【0194】
【表9】
【0195】
2価以上の金属カチオンにより架橋処理された粒子群において、汎用的なポリマー粒子群BC-4を用いた光学シート16と同等以上の性能が得られることを確認した。特に、同一粒子径においては使用する金属カチオンの最大差が大きい方が、散乱特性に優位性がみられる傾向であった。
【0196】
[8]塗料における光学特性及び触感評価
[実施例8-1~8-12、比較例8-1~8-4]
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12及び比較ポリマー粒子群BC-1~BC-4をそれぞれ市販の油性塗料(ロックペイント(株)製プロタッチ)に5質量%となるように添加し、アルミニウム基板に塗布し、乾燥させ、乾燥後膜厚2μmの皮膜を形成し、塗膜シート1~16を作製した。
得られた塗膜シートの光の反射性及び艶の有無を目視にて評価し、触感作用の官能評価を行った。触感作用は、塗膜を指でなぞり、下記評価基準に従ってソフト感を評価した。ブランクとして、皮膜を形成していないアルミニウム基板を使用した。結果を表10に示す。
[評価基準]
○:有り、△:若干有り(感じる)、×:無し
【0197】
【表10】
【0198】
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12を含む塗膜シート1~12は、シート13~15に比べて同等以上の隠蔽性の効果が高く、艶消し剤として、また触感改質剤として使用可能となることが示された。
【0199】
[9]海水生分解性評価
[実施例9-1~9-12、比較例9-1~9-4]
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12及び比較ポリマー粒子群BC-1~BC-4及び対照材料として微結晶セルロース(Sigma-Aldrich社製Avicel PH-101)を用いて、以下の方法で海水生分解試験を実施した。結果を表11に示す。
<試験方法、条件>
生分解度測定方法:閉鎖呼吸計による酸素消費量の測定(ASTM D6691参考)
培養温度30±1℃、暗所
生分解度(%)=[(BODO-BODB)/ThOD]×100
BODO:試験又は植種源活性確認の生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
BODB:空試験の平均生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
ThOD:試験材料又は対照材料が完全に酸化された場合に必要とされる
理論的酸素要求量(計算値:mg)
海水:東京湾(千葉県:千葉港)より採取
サンプル数:各種n=3とし平均値を採用
【0200】
[評価基準]
培養期間60日とし、対照材料とした微結晶セルロースの生分解度(絶対分解度)に対する各粒子群の最大生分解度の割合を相対生分解度(%)として算出し、評価した。なお、対照材料としたセルロースの絶対分解度は66%であった。
◎:セルロースと同等の海水生分解性あり(相対生分解度90%以上)
〇:海水生分解性の特性はあり(相対生分解度60~90%未満)
△:中長期的な海水生分解性の特性がある可能性あり(相対生分解度10~60%未満)
×:海水生分解性の特性は殆ど見られない可能性高い(相対生分解度10%未満)
【0201】
【表11】
【0202】
表11に示した結果より、本発明の粒子群は海水中で良好な生分解性を有することを確認できた。
【0203】
[10]皮膚洗浄用組成物の作製及び評価
[実施例10-1~10-3、比較例10-1]
海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1、AC-9、AC-10及び比較ポリマーBC-2を用い、下記表12に示した組成に従って、皮膚洗浄用組成物(洗浄用組成物1~4)を作製した。
【0204】
【表12】
【0205】
作製した各洗浄用組成物について、下記方法により評価を行った。結果を表13に示す。
パネラーとして10人を選定し、皮膚洗浄用組成物を用いて洗顔による使用試験を行い、使用感1、使用感2、起泡性、皮膚の汚れ、角質除去効果、マッサージ効果、刺激性の6項目を下記評価基準に従って各々評価し、それに基づき総合的にスクラブ剤としての評価を行った。
・使用感1:使用中の塗心地の良さ及び肌へのなじみ
・使用感2:洗浄剤を洗い流した後のスクラブ剤の残留感や肌のツッパリ感の少なさ
・起泡性:洗浄剤を使用した際の泡立ちと泡持ちの良さ
・皮膚の汚れ、角質除去効果:使用後の化粧料の落ち具合
・マッサージ効果:洗浄後に肌のくすみ解消、顔色の改善、血行促進等のマッサージ効果を感じるかどうか
・刺激性:洗浄剤を洗い流した後の赤味やヒリヒリ感等の少なさ
【0206】
[各項目別評価基準]
◎:効果あり(好感触)[8名以上が高評価]
○:効果認められる(やや好感触)[6~7名が高評価]
□:効果認められる(やや好感触)[4~5名が高評価]
△:効果があまりない(やや不感触)[2~3名が高評価]
×:効果なし(不感触)[1名以下が高評価]
[点数評価]
◎:8点、○:6点、□:4点、△:2点、×:0点
[総合評価]
A:38点以上
B:30~37点
C:22~29点
D:21点以下
【0207】
【表13】
【0208】
表13に示したように、本発明の粒子群は触感、低刺激性の面からも身体洗浄用組成物の添加剤(素材)としても有用であることがわかった。
【0209】
[11]皮膚化粧料の確認
[参考例1~14]
下記表14の組成にしたがって、海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12、比較ポリマーBC-2又はBC-4を含むメイクアップ組成物(ファンデーション1~14)を作製した。
【0210】
【表14】
【0211】
化粧品へ汎用的に用いられている配合成分BC-2やBC-4と同様に、本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群AC-1~AC-12についても、遜色なく化粧品組成として配合することができたことから、本発明の粒子群を用いた素材を従来素材と同様に化粧品に応用できることを確認した。
【0212】
以上説明したように、主成分としてアルギン酸に由来する1価アニオン性置換基を有する水溶性ポリマー型多価アニオンが2種以上の2価以上の金属カチオンにより架橋されたポリマー化合物からなる海洋生分解性ポリマー粒子群は、凝集物等の異物も少なく、安定的に効率よく製造できるとともに、耐熱性や耐(熱)薬品性を有する架橋性の粒子も安定的に作製できるため、様々な用途へ応用可能である。
【0213】
また、本発明の海洋生分解性ポリマー粒子群は、粒径が制御され、環境にやさしい粒子であり、特に海洋汚染対策に有用な天然高分子由来の海水生分解機能を有する成分として、用途に応じて塗料、インク、成形品、化粧品等の環境対応に必要とされる用途及び添加剤として有効に活用できる。