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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089313
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B65H 37/02 20060101AFI20240626BHJP
   B41J 11/70 20060101ALI20240626BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B65H37/02
B41J11/70
B65H5/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204598
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】FCLコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 剛
(72)【発明者】
【氏名】矢田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】小口 達也
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】高村 陽一
【テーマコード(参考)】
2C058
3F049
3F108
【Fターム(参考)】
2C058AB02
2C058AC06
2C058AD06
2C058AE04
2C058AE09
2C058AE14
2C058AF06
2C058AF22
2C058AF31
2C058AF51
2C058LA03
2C058LA07
2C058LA09
2C058LB05
2C058LB36
2C058LB38
3F049CA32
3F049DA12
3F049DB04
3F049LA07
3F049LB01
3F108GA04
3F108HA14
(57)【要約】
【課題】装置の大型化を抑制しつつ、記録媒体への粘着剤の付加有無を切り替えて印刷物を作成できるプリンタを提供する。
【解決手段】プリンタ1は、記録紙Pに印刷を行う印字部3と、固定刃41と可動刃43とを有し、可動刃43の移動によって記録紙Pを幅方向に沿って切断するカッター4と、記録紙Pの裏面に粘着剤Gを付加する粘着剤転写ユニット7と、粘着剤転写ユニット7と対向配置され、粘着剤転写ユニット7側に記録紙Pを押圧し記録紙Pを搬送する転写ローラ17と、を備える。粘着剤転写ユニット7は、可動刃43とともに一体的に組付けられ、可動刃43の移動方向に沿って可動刃43とともに移動するよう設けられる。。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に印刷を行う印字部と、
固定刃と可動刃とを有し、可動刃の移動によって前記記録媒体を幅方向に沿って切断する切断部と、
前記記録媒体の一方の面に粘着剤を付加する粘着剤付加部と、
前記粘着剤付加部と対向配置され、前記粘着剤付加部側に前記記録媒体を押圧し前記記録媒体を搬送する転写ローラと、
を備え、
前記粘着剤付加部は、前記可動刃とともに一体的に組付けられ、前記可動刃の移動方向に沿って前記可動刃とともに移動するよう設けられてなる、
プリンタ。
【請求項2】
本体と、前記本体に対して開閉可能に設置される蓋とを含む筐体を備え、
前記印字部は、前記記録媒体に印刷を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドと対向配置され前記記録ヘッドにより印刷された記録媒体を下流側に搬送するプラテンローラとを有し、
前記記録ヘッドと、前記固定刃と、前記転写ローラとが前記蓋に配置され、
前記プラテンローラと、前記可動刃と、前記粘着剤付加部とが前記本体に配置される、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記粘着剤付加部及び前記可動刃は、
前記移動方向において、
前記粘着剤付加部と前記可動刃とが共に、搬送路上の前記記録媒体から離間する位置にある第1ポジションと、
前記粘着剤付加部が前記記録媒体に接触し、前記記録媒体に前記粘着剤を付加可能な位置にあり、前記可動刃が前記搬送路上の前記記録媒体を切断できない位置にある第2ポジションと、
前記粘着剤付加部及び前記可動刃が共に前記搬送路を超える位置にあり、前記可動刃が前記搬送路上の前記記録媒体を切断できる位置にある第3ポジションと、
の間で遷移可能であり、
前記転写ローラは、前記第3ポジションのとき前記粘着剤付加部に押圧されて移動して、前記粘着剤付加部が前記搬送路を超える位置に移動可能とするよう構成される、
請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記転写ローラは、前記粘着剤付加部に押圧されて前記記録媒体の搬送方向に移動する、
請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記記録媒体を裏面に粘着面を有するラベル紙として印刷する場合、
第1に、前記粘着剤付加部及び前記可動刃は前記第2ポジションに遷移して、前記印字部による前記記録媒体への印字を行うと共に、前記粘着剤付加部が前記記録媒体に前記粘着剤を付加し、
第2に、前記粘着剤付加部及び前記可動刃は前記第3ポジションに遷移して、前記可動刃が前記記録媒体を切断し、
前記記録媒体を裏面に粘着面を有しない普通紙として印刷する場合、
第1に、前記粘着剤付加部及び前記可動刃は前記第1ポジションに遷移して、前記印字部による前記記録媒体への印字を行い、前記粘着剤付加部による前記記録媒体への前記粘着剤の付加を行わず、
第2に、前記粘着剤付加部及び前記可動刃は前記第3ポジションに遷移して、前記可動刃が前記記録媒体を切断する、
請求項3に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙などの長尺状の記録媒体の表面に印字、裏面に粘着剤を塗布して、印刷済の記録媒体を切断して付箋紙などの印刷物を作成するプリンタが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-234293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のプリンタでは、粘着剤転写具を記録媒体から離間させることによって、記録媒体に粘着剤を転写せずに印刷を行う構成も開示されている。ただし、粘着剤転写具を記録媒体から離間させるための駆動源が必要となるので、装置が大型化する課題がある。
【0005】
本開示は、装置の大型化を抑制しつつ、記録媒体への粘着剤の付加と記録媒体の切断とを行って印刷物を作成できるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係るプリンタは、記録媒体に印刷を行う印字部と、固定刃と可動刃とを有し、可動刃の移動によって前記記録媒体を幅方向に沿って切断する切断部と、前記記録媒体の一方の面に粘着剤を付加する粘着剤付加部と、前記粘着剤付加部と対向配置され、前記粘着剤付加部側に前記記録媒体を押圧し前記記録媒体を搬送する転写ローラと、を備え、前記粘着剤付加部は、前記可動刃とともに一体的に組付けられ、前記可動刃の移動方向に沿って前記可動刃とともに移動するよう設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、装置の大型化を抑制しつつ、記録媒体への粘着剤の付加と記録媒体の切断とを行って印刷物を作成できるプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るプリンタの概略構成を示す側面図
図2】プリンタの印字部及び転写ローラの近傍の構成を示す平面図
図3】搬送ガイドの平面図
図4】転写ローラ、搬送ガイド、粘着剤転写ユニットの配置を示す図
図5】プリンタの蓋を開いた状態を示す側面図
図6】制御部の入出力関係を示すブロック図
図7】実施形態に係るプリンタの印刷制御のフローチャート
図8】普通紙プリントモードの第1段階(第1ポジション)を示す図
図9】普通紙プリントモードの第2段階(第3ポジション)を示す図
図10】普通紙プリントモードの第3段階(第1ポジション)を示す図
図11】ラベル紙プリントモードの第1段階(第2ポジション)を示す図
図12】第2ポジションの転写ローラと粘着剤転写ユニットとの位置関係を示す図
図13】ラベル紙プリントモードの第2段階(第3ポジション)を示す図
図14】ラベル紙プリントモードの第3段階(第2ポジション)を示す図
図15】第2から第3ポジションへの遷移時の転写ローラの動作を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
なお、以下の説明において、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向である。X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。X正方向側が搬送方向S2の下流側であり、X負方向側が搬送方向S2の上流側である。Y方向は記録紙Pの幅方向であり、転写ローラ17等の回転軸の延在方向である。Z方向は上下動ブロック13の移動方向である。また、以下では説明の便宜上、Z正方向側を上側、Z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0011】
<プリンタの構成>
図1図6を参照して本実施形態に係るプリンタ1の構成について説明する。
【0012】
図1は実施形態に係るプリンタ1の概略構成を示す側面図である。図2はプリンタ1の印字部3及び転写ローラ17の近傍の構成を示す平面図である。図3は搬送ガイド14の平面図である。図4は転写ローラ17、搬送ガイド14、粘着剤転写ユニット7の配置を示す図である。図5はプリンタ1の蓋2Bを開いた状態を示す側面図である。図6は制御部30の入出力関係を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態に係るプリンタ1は、記録媒体としての長尺状の記録紙Pに対して、「ラベル紙印刷」と「普通紙印刷」の2種類の印刷を行うことができる。「ラベル紙印刷」とは、記録紙Pの表面に印字を行うと共に、裏面に粘着剤Gを塗布して、裏面に粘着面を有するラベル紙として印刷する(図11図14参照)。「普通紙印刷」とは、記録紙Pの表面に印字を行うが、裏面への粘着剤Gの塗布は行わず、裏面に粘着面を有しない例えばレシートなどの普通紙として印刷する(図8図10参照)。また、本実施形態のプリンタ1は、長尺状の記録紙Pに上述のラベル紙印刷または普通紙印刷を行うと共に、印刷後の記録紙Pを切断して、紙片状の印刷物P2として出力することができる(図10図14参照)。
【0014】
図1に示すように、プリンタ1は、印字部3と、カッター4(切断部)と、粘着剤転写ユニット7(粘着剤付加部)と、転写ローラ17とを備える。
【0015】
プリンタ1は、装置本体内のロール収納部16にロール紙Rを収容する。ロール紙Rは感熱紙である記録紙Pをロール状に巻いたものである。
【0016】
ロール紙Rは、例えば図1に示すように、Y負方向側から視たときに中心側から遠心側へ反時計周りに巻回されている向きでロール収納部16に収容される。また、ロール紙Rは、ロール収納部16内でY軸を回転中心として回転可能に設置される。したがって、ロール紙Rの上端部からX正方向側に記録紙Pが引っぱられると、ロール収納部16内でロール紙Rが巻回方向と同方向S1に回転し、ロール収納部16から記録紙Pが引き出される。
【0017】
印字部3と、カッター4と、粘着剤転写ユニット7は、この順番で搬送方向S2の上流側から下流側に沿って配置される。また、転写ローラ17は、記録紙Pを搬送する搬送路を挟んで粘着剤転写ユニット7と対向配置される。
【0018】
印字部3は、記録紙Pに印刷を行うサーマルヘッド5(記録ヘッド)と、サーマルヘッド5と対向配置され記録紙Pを下流側に搬送するプラテンローラ6とを有する。図1の例では、サーマルヘッド5は記録紙Pの搬送路のZ正方向側に配置され、記録紙PのZ正方向側の面(表面)に印字を行うことができる。
【0019】
プラテンローラ6は、記録紙Pの搬送路よりZ負方向側に配置され、Z正方向側に付勢力f1により付勢されている。付勢力f1は、例えばプラテンローラ6の回転軸にバネなどの弾性部材を連結することで発生させることができる。プラテンローラ6は、この付勢力f1によって、サーマルヘッド5との間を通過する記録紙PのZ負方向側の面(裏面)を押圧しつつ回転することによって、記録紙Pを搬送方向下流側に搬送する。なお、本実施形態では記録紙Pが感熱紙であるため印字要素としてサーマルヘッド5が適用されるが、記録媒体の種類に応じてサーマルヘッド5以外の印字要素を適用してもよい。
【0020】
カッター4は、固定刃41と可動刃43とを有し、固定刃41及び可動刃43は記録紙Pの幅方向に延在する。図1に示すように、記録紙Pを挟んで固定刃41がZ正方向側、可動刃43がZ負方向側に配置されている。可動刃43は、図2などに示す第2モータM2から伝達される駆動力によって、搬送方向S2及び記録紙Pの幅方向と直交する方向S3に沿って移動可能である。カッター4は、可動刃43が記録紙Pを超えてZ正方向側に移動することによって、記録紙Pを幅方向に沿って切断することができる。
【0021】
粘着剤転写ユニット7は、記録紙Pの一方の面に粘着剤Gを付加する。粘着剤転写ユニット7は、図1の例では記録紙PよりZ負方向側に配置され、記録紙PのZ負方向側の面(裏面)に接触することで粘着剤を塗布することができる。なお、後述するように粘着剤転写ユニット7は可動刃43の移動方向S3に沿って可動刃43と一体的に移動可能である。
【0022】
転写ローラ17は、記録紙PよりZ正方向側に配置され、Z負方向側に付勢力f2により付勢されている。付勢力f2は、例えば転写ローラ17の回転軸にバネなどの弾性部材を連結することで発生させることができる。転写ローラ17と対向し、かつ、記録紙PよりZ負方向側の位置には、記録紙Pの搬送路に沿って搬送ガイド14が設置されている。搬送ガイド14のZ正方向側の上面は搬送方向S2に沿った平面が設けられている。転写ローラ17は、付勢力f2によって、搬送ガイド14との間を通過する記録紙Pの表面を押圧しつつ回転することによって、記録紙Pを搬送方向S2の下流側に搬送する。
【0023】
また、粘着剤転写ユニット7は、後述するように、搬送ガイド14の挿入孔15(図3図4図12など参照)を通って搬送ガイド14の上面よりZ正方向側に露出し、転写ローラ17と接触する位置まで上昇移動することによって、粘着剤転写ユニット7と転写ローラ17との間を通過する記録紙Pの裏面に接触して、粘着剤Gを付加することができる。
【0024】
図2に示すように、プリンタ1内には、第1モータM1と、第2モータM2と、二組のギヤ列G1、G2とが設けられる。第1モータM1はギヤ列G1と連結され、第2モータM2はギヤ列G2と連結される。ギヤ列G1は複数のギヤが互いに噛み合わされて構成され、各ギヤの回転軸はすべてY方向であり、各ギヤはX方向に沿って配置される。
【0025】
第1モータM1は、ギヤ列G1のうち搬送方向の最も上流側にあるギヤと連結されている。ギヤ列G1のうち搬送方向の最も下流側にあるギヤGLは、転写ローラ17の回転軸17Aと同軸上に配置されるギヤG17と噛み合っている。ギヤG17は、回転軸17Aに連結され、回転軸17Aと一体的に回転する。また、ギヤ列G1の中間にある1個のギヤがプラテンローラ6の回転軸と連結されている。これらのギヤ列G1の構成により、第1モータM1から出力された駆動力がギヤ列G1を介してプラテンローラ6と転写ローラ17とに伝達されて、プラテンローラ6と転写ローラ17とを回転させることができる。
【0026】
また、プラテンローラ6の回転軸とギヤ列G1との間にはクラッチCLが配置されており、クラッチCLを作動させることによってプラテンローラ6の回転軸とギヤ列G1との連結を解除できる。クラッチCLにより連結が解除されている状態では、第1モータM1から出力される駆動力はプラテンローラ6には伝達されずに転写ローラ17のみに伝達され、プラテンローラ6を回転させずに転写ローラ17のみを回転させることができる。なお、クラッチCLは、例えば電磁クラッチ、ソレノイドを用いたばねクラッチなどの任意の種類のクラッチを適用できる。
【0027】
第2モータM2は、ギヤ列G2のうち搬送方向の最も上流側にあるギヤと連結されている。ギヤ列G2のうち搬送方向の最も下流側にあるギヤは、カッター4の可動刃ラック45に設けられるラックギヤLGと噛み合っている。ラックギヤLGは各歯がZ方向に沿って配列されるよう設けられる。可動刃ラック45には、可動刃43と粘着剤転写ユニット7とが連結されている。これにより、第2モータM2から出力された駆動力がギヤ列G2及びラックギヤLGを介して可動刃ラック45に伝達されて、可動刃ラック45に連結されている可動刃43と粘着剤転写ユニット7とを上下動させることができる。
【0028】
なお、図1図2に示すプリンタ1の位置Aは、印字部3による印字が行われる「印字位置A」を示し、位置Bは、カッター4による記録紙Pの切断が行われる「カット位置B」を示し、位置Cは、粘着剤転写ユニット7による記録紙Pへの粘着剤Gの付加が行われる「粘着剤転写位置C」を示す。
【0029】
印字位置Aには、記録紙Pに対して印字を行う印字部3を備える。印字部3は、ロール紙Rからの記録紙Pの感熱面に印字するための印字情報に応じた熱を発するサーマルヘッド5と、記録紙Pをサーマルヘッド5へ不図示の加圧手段にて押圧しつつ記録紙Pを搬送させるプラテンローラ6を備える。
【0030】
カット位置Bには、記録紙Pを切断するカッター4を備える。カッター4は固定刃41、可動刃43、カッターフレーム44及び可動刃ラック45で構成され記録紙Pを切断する。その際、用紙押え部材19にて記録紙Pが可動刃43の移動動作に負けぬように押え、特に薄紙のカット性を向上させる。この機能を実現するため、用紙押さえ部材19は、記録紙PよりZ正方向側、かつ可動刃43より搬送方向の下流側、かつ、可動刃43が記録紙Pを切断する位置まで上昇したときの可動刃43の上端とZ方向の略同一の位置に配置されるのが好ましい。
【0031】
可動刃43を移動方向S3へ可動させるために、図2に示すように、プリンタ1内の第2モータM2からギヤ列G2を介して駆動力を伝達するラックギヤLGを設けた可動刃ラック45に、可動刃43が保持される。さらに、図1図2に示すように、カッターフレーム44が、プラテンローラ6と可動刃ラック45とを保持し、サーマルヘッド5及び固定刃41との相対的な位置関係を決める役割を持つ。可動刃ラック45の搬送方向S2上流側と下流側とをカッターフレーム44で押さえることで可動刃43の可動時の倒れを防止することができる。
【0032】
粘着剤転写位置Cには、粘着剤転写ユニット7を備える。粘着剤転写ユニット7は、位置Cに粘着剤テープTを供給し、粘着剤テープTの粘着剤Gを記録紙Pの裏面へ転写する転写機構9を備える。
【0033】
可動刃ラック45は、粘着剤テープTや転写機構9等を収めた粘着剤転写ユニット7を着脱可能に保持するのが好ましい。なお、このような粘着剤転写ユニット7の可動刃ラック45への連結構造は、例えば突起と孔とで係止する構造や、ネジ締結などの任意の構造を適用できる。これにより、可動刃ラック45の上下動に応じて、可動刃43と転写機構9の移動方向と移動量を連動させることができる。また、粘着剤転写ユニット7を可動刃ラック45から自由に取り外すことが可能となるので、粘着剤転写ユニット7の交換や整備をしやすくでき、装置寿命を向上できる。
【0034】
粘着剤転写ユニット7は、ケース10と、収容ローラ11と、転写機構9と、回収ローラ12とを有する。ケース10は、収容ローラ11と、転写機構9と、回収ローラ12と、粘着剤テープTとを内部に収容する。収容ローラ11は、ケース10の内部で転写前の粘着剤テープTを巻回して収容する。転写機構9は、Y軸方向に回転可能なローラ状の部材であり、ケース10の上端部から一部が露出するよう設置される。また、転写機構9は、収容ローラ11から送り出された粘着剤テープTを粘着剤側が外側になるようにローラの外周面に沿って巻回し、粘着剤テープTの粘着剤が転写対象物である記録紙Pの裏面と接触可能とする。転写機構9は、転写ローラ17により粘着剤転写ユニット7側に押圧されつつ搬送方向S2に沿って移動する記録紙Pと接触することによって、搬送方向S2側に粘着剤テープTを移動させるよう回転する。これにより、粘着剤テープTの粘着剤が記録紙Pの裏面に転写される。
【0035】
回収ローラ12は、粘着剤が転写された後のテープT´を巻回して回収する。収容ローラ11と回収ローラ12とは、例えばギヤやベルトなどを介して連結駆動されるので、粘着剤テープTの収容ローラ11からの引き出し量と、回収ローラ12への巻き取り量とを一致させることができ、これにより粘着剤転写ユニット7内で粘着剤テープTを弛ませずに移動させることができる。なお、粘着剤転写ユニット7による粘着剤の転写構造は、周知のテープのりや修正テープと同様である。粘着剤転写ユニット7は、例えばケース10を介して可動刃ラック45に連結される。
【0036】
可動刃ラック45は、第2モータM2からギヤ列G2を介してラックギヤLGに動力が伝達され、ラックギヤLGによって回転駆動力がZ方向への直線方向の駆動力に変換される。これにより、可動刃ラック45が上下方向に移動し、この移動に伴って、可動刃43と粘着剤転写ユニット7が可動刃ラック45と連動して同方向に移動する。
【0037】
可動刃43と粘着剤転写ユニット7とは、単一の第2モータM2の駆動力によって可動刃ラック45とともに一体的に上下方向S3に移動する「上下動ブロック13」と位置づけられる。
【0038】
また、図4に示すように、Y方向、すなわち記録紙Pの幅方向に沿って複数の粘着剤転写ユニット7―1、7-2、7-3を設けることができる。各粘着剤転写ユニットには、それぞれ個別に粘着剤テープT1、T2、T3が収容されている。図3図4に示すように、搬送ガイド14のうち粘着剤転写ユニット7―1、7-2、7-3と対向する位置には、それぞれ挿入孔15-1、15-2、15-3が形成されている。この構成により、粘着剤転写ユニット7―1、7-2、7-3の転写機構9-1、9-2、9-3を挿入孔15-1、15-2、15-3に通過させて転写ローラ17と接触する位置まで移動させることによって、複数の粘着剤テープT1、T2、T3で記録紙Pの裏面の幅方向の任意の複数の位置に粘着剤Gを塗布できる。複数の粘着剤塗布位置は、プリンタ1の利用者などが選択的に設定する構成としてもよい。なお、複数の粘着剤転写ユニット7―1、7-2、7-3や、複数の粘着剤テープT1、T2、T3や、複数の挿入孔15-1、15-2、15-3の個数は、図4の例では3個であるが、3個以外の複数個でもよい。
【0039】
本実施形態では、転写機構9は、Y方向を回転軸として回転可能なローラ部材であり、図4に示すようにローラ状の外周面に沿って粘着剤テープTの粘着面が外側に露出するように粘着剤テープTを設置している。このように粘着剤テープTが設置された転写機構9が転写ローラ17と接触する位置まで粘着剤転写ユニット7が上昇すると(図12参照)、転写ローラ17が転写機構9を押圧しつつ回転するので、転写機構9も回転して、転写機構9に巻き廻されている粘着剤テープTも記録紙Pとの接触部において搬送方向S2に沿って移動する。これにより、転写機構9と転写ローラ17によって挟持されている記録紙Pの裏面に、粘着剤テープTの粘着剤Gを転写させることができる。
【0040】
転写ローラ17は、転写機構9の上面が搬送ガイド14の上面よりZ負方向側に配置されるときには、回転軸17Aと転写機構9の回転軸とは搬送方向においてほぼ同じ位置に配置される。一方、転写機構9の上面が搬送ガイド14の上面よりZ正方向側に移動する際(図9参照)には、その回転軸17Aが転写機構9の回転軸より搬送方向S2の下流側に移動する機構を備える。この移動構造については図15を参照して後述する。
【0041】
図2図4などに示すように、本実施形態では、転写ローラ17は、粘着剤転写ユニット7―1、7-2、7-3と対向する位置に合わせて、粘着剤転写ユニット7―1、7-2、7-3と同数の3個の転写ローラ17-1、17-2、17-3がY方向に配置され、共通の回転軸17Aに回転可能に設置されている。ただし、転写ローラ17は、粘着剤転写ユニット7―1、7-2、7-3が複数個の場合でも、各粘着剤転写ユニットに同様の押圧力と回転力を付加できればよく、この形状に限られない。例えば、少なくとも各粘着剤転写ユニットのY方向の両端より長い寸法で形成される1本のローラ形状でもよい。以下では、説明の簡略化のため、図3図4に示す複数の要素については、纏めて「粘着剤転写ユニット7」、「転写機構9」、「挿入孔15」、「転写ローラ17」、「粘着剤テープT」と表記する。
【0042】
プリンタ1は、上述の印刷に係る各要素の動作を制御する制御部30を備える。図6に示すように、プリンタ1は、搬送路上の記録紙Pの位置を検知する要素として、例えば、前端検出センサ31と後端検出センサ32とを備える。前端検出センサ31と後端検出センサ32とは、制御部30に電気的に接続される。
【0043】
前端検出センサ31は、記録紙Pの前端部分が印字位置Aまで到達したことを検知して制御部30に出力する。後端検出センサ32は、カッター4による切断後の印刷物P2の後端が粘着剤転写位置Cまで到達したことを検知して制御部30に出力する。前端検出センサ31及び後端検出センサ32には、例えば光電センサなどの周知のセンサを適用できる。前端検出センサ31と後端検出センサ32とは、それぞれ印字位置Aと粘着剤転写位置Cにおける記録紙Pの有無を検知できるように、印字位置Aと粘着剤転写位置Cまたはその近傍に設置する。なお、前端検出センサ31と後端検出センサ32とは、記録紙Pの搬送路上の位置を検知する要素の一例であって、他の要素を適用してもよい。
【0044】
また、制御部30は、サーマルヘッド5と、第1モータM1と、第2モータM2と、クラッチCLと電気的に接続され、各要素に制御指令を出力して動作を制御する。制御部30は、例えば前端検出センサ31と後端検出センサ32による検知結果に基づき、記録紙Pの搬送路上の位置に応じた印刷に関する動作指令を、サーマルヘッド5、第1モータM1、第2モータM2、クラッチCLのいずれかに出力して、一連の印刷動作を制御することができる。
【0045】
特に本実施形態では、制御部30は、前端検出センサ31と後端検出センサ32による検知結果に基づき、上下動ブロック13を3段階のZ方向の位置の間で遷移可能である。以降では、この3段階の位置を「第1ポジション」、「第2ポジション」、「第3ポジション」と呼ぶ。
【0046】
第1ポジションは、粘着剤転写ユニット7と可動刃43とが共に記録紙Pの搬送路からZ負方向側に離間する位置にある状態である(図8図10参照)。
【0047】
第2ポジションは、粘着剤転写ユニット7が記録紙Pに粘着剤を付加可能な位置にあり、可動刃43が記録紙Pの搬送路上の記録紙Pを切断できない位置にある状態である(図11図14参照)
【0048】
第3ポジションは、粘着剤転写ユニット7及び可動刃43が共に搬送路よりZ正方向側に移動して記録紙Pの搬送路を超える位置にあり、可動刃43が搬送路上の記録紙Pを切断できる位置にある状態である(図9図13参照)
【0049】
第1ポジション、第2ポジション、第3ポジションは、この順番でZ方向の高さ位置がより上方の位置となるよう設定される。また、転写ローラ17は、第3ポジションのとき搬送路に沿って移動して、粘着剤転写ユニット7が搬送路を超える位置に移動可能とするよう構成される。
【0050】
制御部30は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置であるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)、ネットワークカード等の通信モジュール、などで構成される。制御部30の各機能は、ROM等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで通信モジュールを動作させるとともに、RAMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0051】
図1図5に示すように、プリンタ1の筐体2は、本体2Aと蓋2Bとで構成されている。図5に矢印Aで示すように、蓋2Bは、本体2Aに対して所定の回転軸まわりに回動可能に設置される。これにより、蓋2Bを本体2Aから離間するように回動させれば、筐体2を開くことができ、この開いた状態から蓋2Bを本体2Aに接近するように回動させれば筐体2を閉じることができる。
【0052】
本実施形態では、上述の構成要素のうち、可動刃43、可動刃ラック45、および粘着剤転写ユニット7(上下動ブロック13に対応)と、プラテンローラ6と、搬送ガイド14とが、本体2Aに設けられている。一方、サーマルヘッド5と、固定刃41と、転写ローラ17とが、蓋2Bに設けられている。
【0053】
プリンタ1は蓋2Bを開いたときに搬送路を開放できるので、記録紙Pの紙詰まりが発生したときの処理を容易にできる。また、蓋2B及び本体2Aに配置される各要素を容易に交換できるので、各要素のメンテナンス性も向上できる。
【0054】
<印刷制御>
図7図15を参照して本実施形態に係るプリンタ1による印刷制御について説明する。図7は、実施形態に係るプリンタ1の印刷制御のフローチャートである。図7に示すフローチャートの各処理は、利用者がプリンタ1を用いてラベル紙印刷または普通紙印刷の操作を行うときに、制御部30により実施される。
【0055】
S01では、印字情報が取得される。印字情報には、例えば記録紙Pに印字する文字や図形などの種類や配置などの情報や、プリント種類(普通紙印刷かラベル紙印刷か)の情報などが含まれる。印字情報は、例えば利用者がプリンタ1に接続されるPCなどを用いて入力操作を行うことによって、制御部30が取得する。
【0056】
S02では、プラテンローラ6と転写ローラ17が駆動される。制御部30は、第1モータM1に対して、プラテンローラ6と転写ローラ17とを回転させるための制御指令を出力する。第1モータM1は、入力された制御指令に応じて、プラテンローラ6と転写ローラ17とが記録紙Pを搬送方向S2に搬送するための駆動力を出力する。
【0057】
S03では、印字位置Aにて記録紙Pが検知されたか否かが判定される。制御部30は、例えば前端検出センサ31の検知結果に基づき、記録紙Pの先端部分が印字位置Aに到達していることを検知する。印字位置Aにて記録紙Pが検知されない場合(S03のNo)には、記録紙Pが検知されるまで待機する。
【0058】
印字位置Aにて記録紙Pが検知された場合(S03のYes)には、S04にて印字が開始される。制御部30は、S01にて取得した印字情報に基づき、印字部3のサーマルヘッド5へ制御指令を適宜出力する。サーマルヘッド5は、制御部30から出力された制御指令に応じて発熱し、記録紙Pの適切な位置に印字を行う。
【0059】
S05では、今回の印刷制御におけるプリント種類が判定される。制御部30は、例えばS01にて取得した印字情報に基づきプリント種類を判定する。プリント種類が普通紙印刷の場合にはS06に進む。一方、プリント種類がラベル紙印刷の場合にはS12に進む。
【0060】
図8図10も参照して、S06以降の普通紙印刷の流れを説明する。
【0061】
S06では、上下動ブロック13が第1ポジションへ遷移される。制御部30は、例えば上下動ブロック13を駆動させる第2モータM2に対して、第1ポジションへ遷移させる制御指令(例えば普通紙プリント信号)を出力する。
【0062】
S07では、印字が完了したか否かが判定される。印字が完了している場合(S07のYes)には、サーマルヘッド5の動作を停止させて、S08に進む。印字が完了していない場合(S07のNo)には、印字が完了するまで印字を継続する。
【0063】
S08では、記録紙Pへの印字が完了した位置(印字完了部)がカット位置Bへ来るタイミングでプラテンローラ6及び転写ローラ17が停止される。
【0064】
また、S08では、上下動ブロック13が第3ポジションに遷移され、記録紙Pが切断される。制御部30は、印字完了後に、記録紙Pの印字完了部がカット位置Bへ来るタイミングで、上下動ブロック13を駆動させる第2モータM2に対して、第3ポジションへ遷移させる制御指令(例えばカット信号)を出力する。なお、第1ポジションから第3ポジションへ遷移するときには、転写機構9は回転しておらず、転写ローラ17が矢印W方向へ逃げるため粘着剤転写に充分な押圧力が転写機構9側に付加されない、また、転写ローラ17と当接する粘着剤テープTは粘着剤転写後の空のテープ域であり粘着剤がないので、粘着剤テープTから記録紙Pへの粘着剤の転写は行われない。
【0065】
S09では、上下動ブロック13が第1ポジションへ遷移される。
【0066】
S10では、制御部30は、クラッチCLに作動信号を出力し、クラッチCLがギヤ列G1とプラテンローラ6との連結を解除することにより、プラテンローラ6への動力伝達を停止して転写ローラ17を回転させる。転写ローラ17の回転により、記録紙P2は印刷された普通紙として搬送ガイド14に沿って搬送方向S2の下流側に搬出される。
【0067】
S11では、記録紙P2の後端が粘着剤転写位置Cを通過したか否かが判定される。記録紙後端が粘着剤転写位置Cを通過していない場合(S11のNo)には、記録紙後端が粘着剤転写位置Cを通過するまで転写ローラ17の駆動を継続する。一方、記録紙後端が粘着剤転写位置Cを通過した場合(S11のYes)には、普通紙印刷が完了したものと判定され、転写ローラ17を停止して、本制御フローを終了する。
【0068】
図8は、普通紙プリントモードの第1段階を示す図であり、上下動ブロック13が第1ポジションにある状態を示す図である。図8は、図7のS06からS07の印字完了前の期間に対応する。図8に示すように、第1ポジションでは、粘着剤転写ユニット7と可動刃43とが共に搬送路上の記録紙PからZ負方向側に離間する位置にある。普通紙印刷時の第1ポジションでは、転写機構9と転写ローラ17との間には充分なギャップを有するため粘着剤テープTは移動しない。プラテンローラ6が付勢力f1によってサーマルヘッド5側に記録紙Pを押圧しつつ、矢印M1の方向に回転して記録紙Pを搬送方向S2に搬送する。また、転写ローラ17は付勢力f2によって搬送ガイド14側に押圧されつつ、矢印M2の方向に回転して記録紙Pを搬送方向S2に搬送する。
【0069】
図9は、普通紙プリントモードの第2段階を示す図であり、上下動ブロック13が第3ポジションに遷移した状態を示す図である。図9は、図7のS07の印字完了後からS08の期間に対応する。普通紙プリントモードの第2段階では印字完了しておりプラテンローラ6及び転写ローラ17は停止している。図9に矢印M3で示すように、可動刃ラック45が上方に移動される。これに伴い、矢印M4で示すように粘着剤転写ユニット7が上方に移動し、矢印M5で示すように可動刃43が上方に移動する。可動刃ラック45、粘着剤転写ユニット7、可動刃43の上昇量は同一である。さらに、粘着剤転写ユニット7の上昇に伴って転写ローラ17が押し上げられ、転写ローラ17の回転軸が矢印Wに示すように搬送方向下流側に移動する(図15参照)。第3ポジションでは、可動刃43が搬送路よりZ正方向側に進出して搬送路を超える位置となり搬送路上の記録紙Pを切断できる。
【0070】
普通紙プリントモードの第3ポジションでは、転写ローラ17が矢印W方向へ逃げるため粘着剤転写に充分な押圧力が転写機構9側に付加されず転写機構9は回転しないので、粘着剤テープTから記録紙Pへの粘着剤の転写は行われない。
【0071】
図10は、普通紙プリントモードの第3段階を示す図であり、上下動ブロック13が第1ポジションに遷移した状態を示す図である。図10は、図7のS09~S10の期間に対応する。図10に矢印M6で示すように、可動刃ラック45が下方に移動される。これに伴い、矢印M7で示すように粘着剤転写ユニット7も下方に移動し、矢印M9で示すように可動刃43も下方に移動する。可動刃ラック45、粘着剤転写ユニット7、可動刃43の下降量は同一である。さらに、図10に矢印M8で示すように、粘着剤転写ユニット7の下降に伴って転写ローラ17の回転軸が図8に示した当初の位置に復帰する。この結果、図10に示す第1ポジションでは、粘着剤転写ユニット7と可動刃43とが共に搬送路上の記録紙PからZ負方向側に離間する位置に戻る。この状態から引き続き転写ローラ17が駆動されることによって、切断後の記録紙P2がプリンタ1の外部に排出される。
【0072】
図7に戻り、さらに図11図14も参照して、S12以降のラベル紙印刷の流れを説明する。
【0073】
S12では、上下動ブロック13が第2ポジションへ遷移される。これにより転写機構9の粘着剤テープTを記録紙Pの裏面に接触させる。この状態で転写ローラ17による記録紙Pの搬送が行われることにより、記録紙Pと接触する転写機構9が回転して収容ローラ11から粘着剤テープTを引き出す。転写機構9と記録紙Pとの接触部分では、転写機構9に巻回されている粘着剤テープTも搬送方向に移動する。これにより、転写機構9と記録紙Pとの接触部分にて記録紙と接触する粘着剤テープTの粘着剤Gが記録紙Pの裏面に転写され続け、裏面に粘着面をもつラベル紙が形成される。粘着剤Gが転写された後のテープT´は、転写機構9を通過して回収ローラ12に巻き取られて回収される。
【0074】
S13では、印字が完了したか否かが判定される。印字が完了している場合(S13のYes)には、サーマルヘッド5の動作を停止させて、S14に進む。印字が完了していない場合(S13のNo)には、印字が完了するまで印字を継続する。
【0075】
S14では、記録紙Pの印字完了部がカット位置Bへ来るタイミングでプラテンローラ6及び転写ローラ17が停止される。また、上下動ブロック13が第3ポジションに遷移され、記録紙Pが切断される。
【0076】
S15では、上下動ブロック13が第2ポジションへ遷移され、記録紙P2の裏面に粘着剤Gを転写できる位置に移動される。
【0077】
S15の後のS10では、転写ローラ17の回転により、記録紙P2の裏面に粘着剤Gが塗布されて印刷されたラベル紙として搬送ガイド14に沿って搬送方向S2の下流側に搬出される。
【0078】
S11では、切断済の記録紙の後端が粘着剤転写位置C、すなわち転写ローラ17との接触位置を通過したか否かが判定される。記録紙後端が粘着剤転写位置Cを通過していない場合(S11のNo)には、記録紙後端が粘着剤転写位置Cを通過するまで転写ローラ17の駆動を継続する。一方、記録紙後端が粘着剤転写位置Cを通過した場合(S11のYes)には、ラベル紙印刷が完了したものと判定され、転写ローラ17を停止して、本制御フローを終了する。
【0079】
図11は、ラベル紙プリントモードの第1段階を示す図であり、上下動ブロック13が第2ポジションに遷移した状態を示す図である。図12は、第2ポジションの転写ローラ17と粘着剤転写ユニット7との位置関係を示す図である。図12の概要は図4と同様である。図11は、図7のS12からS13の印字完了前の期間に対応する。図11に矢印M10で示すように、可動刃ラック45が上方に移動される。これに伴い、図11図12に矢印M11で示すように粘着剤転写ユニット7は、転写機構9が転写ローラ17と接触する位置まで上方に移動する。また、可動刃43も上方に移動するが、記録紙Pからは離間した位置までしか上昇しない。可動刃ラック45、粘着剤転写ユニット7、可動刃43の上昇量は同一である。
【0080】
図11図12に示すように、第2ポジションでは、粘着剤転写ユニット7が記録紙Pに粘着剤を付加可能な位置にあり、図11に示すように、可動刃43が搬送路上の記録紙Pを切断できない位置にある。また、図11では、プラテンローラ6が付勢力f1によってサーマルヘッド5側に記録紙Pを押圧され、矢印M1の方向に回転して記録紙Pを搬送方向S2に搬送する。また、転写ローラ17は付勢力f2によって搬送ガイド14側に押圧されて矢印M2の方向に回転しており、記録紙Pに粘着剤を付加することができる。
【0081】
図13は、ラベル紙プリントモードの第2段階を示す図であり、上下動ブロック13が第3ポジションに遷移した状態を示す図である。図13は、図7のS13の印字完了後からS14の期間に対応する。ラベル紙プリントモードの第2段階では印字完了しておりプラテンローラ6及び転写ローラ17は停止している。図13に矢印M12で示すように、可動刃ラック45が第2ポジションよりさらに上方に移動される。これに伴い、矢印M13で示すように粘着剤転写ユニット7も第2ポジションよりさらに上方に移動し、矢印M14で示すように可動刃43も第2ポジションよりさらに上方に移動する。可動刃ラック45、粘着剤転写ユニット7、可動刃43の上昇量は同一である。さらに、粘着剤転写ユニット7の上昇に伴って転写ローラ17が押し上げられ、転写ローラ17の回転軸が矢印Wに示されるように搬送方向下流側に移動する(図15参照)。第3ポジションでは、可動刃43が搬送路よりZ正方向側に進出して搬送路を超える位置となり搬送路上の記録紙Pを切断できる。
【0082】
ラベル紙プリントモードの第3ポジションでは、転写ローラ17が矢印W方向へ逃げるため粘着剤転写に充分な押圧力が転写機構9側に付加されず転写機構9は回転しないので、粘着剤テープTから記録紙Pへの粘着剤の転写は行われない。ラベル紙プリントモードの第1段階で記録紙Pへの粘着剤Gの転写が行われるので、図13に示すように、記録紙Pが転写ローラ17に接触している位置より搬送方向下流側の裏面に粘着剤Gが塗布される。
【0083】
図14は、ラベル紙プリントモードの第3段階を示す図であり、上下動ブロック13が第2ポジションに遷移した状態を示す図である。図14は、図7のS15からS10の期間に対応する。図14に矢印M15で示すように、可動刃ラック45が下方に移動される。これに伴い、矢印M16で示すように粘着剤転写ユニット7も下方に移動し、可動刃43も下方に移動する。可動刃ラック45、粘着剤転写ユニット7、可動刃43の下降量は同一である。さらに、矢印M17で示すように、粘着剤転写ユニット7の下降に伴って転写ローラ17の回転軸が図11に示した当初の位置に復帰する。この結果、図14に示す第2ポジションでは、粘着剤転写ユニット7が記録紙Pに接触し、記録紙Pに粘着剤を付加可能な位置にあり、可動刃43が搬送路上の記録紙Pを切断できない位置に戻る。この状態において引き続き転写ローラ17が駆動されることによって、切断後の記録紙P2の後端部まで粘着剤Gが塗布される。記録紙Pは切断後であるため、プラテンローラ6の回転は停止している。一方、転写ローラ17は付勢力f2によって切断後の記録紙P2を搬送ガイド14側に押圧されており、転写ローラ17を矢印M2の方向に回転させることによって、記録紙P2をプリンタ1の外部に排出できる。
【0084】
図15を参照して、図9図13に矢印Wで示す方向に転写ローラ17が移動する構造の一例について説明する。
【0085】
図15は、第2ポジションから第3ポジションへの遷移時の転写ローラ17の動作を説明する図である。図15(A)は第2ポジション、(B)は第2ポジションから第3ポジションへの遷移中、(C)は第3ポジションの状態を示している。図15の各図には、転写ローラ17と、回転軸17Aと、転写機構9と、ギヤGLと、ギヤG17との位置関係が模式的に図示されている。ギヤGLは、図2に示したように、第1モータM1からの駆動力を伝達するギヤ列G1のうち搬送方向の最も下流側にあるギヤである。ギヤG17は、図2に示したように、回転軸17Aと同軸上に配置され、転写ローラ17と一体的に回転するギヤである。
【0086】
本実施形態では、回転軸17Aの先端部がガイド溝18に挿入されている。ガイド溝18は、例えば筐体2の内壁などのプリンタ1の固定要素に設けられる。ガイド溝18は、Y方向から視たときに略L字状に形成される。ガイド溝18は、ギヤGLの径方向に沿って形成される径方向部18Aと、ギヤGLの周方向に沿って形成される周方向部18Bとを有する。径方向部18AのZ正方向側の端部と、周方向部18BのX負方向側の端部とが接続され、これによりL字状の溝が形成されている。
【0087】
また、図15では、ギヤGL、G17の歯先円を実線、歯元円を点線、歯先円と歯元円との略中間の円(基準円)を一点鎖線で図示している。
【0088】
本実施形態では、回転軸17Aには、図15に矢印f3で示すように軸心側に向けて付勢力f3が常時付加されている。この付勢力f3は、例えば回転軸17Aにバネなどの弾性部材を連結することで発生させることができる。付勢力f3を弾性部材により発生させる場合には弾性部材の一方を回転軸17Aに他方を筐体2に固定する。弾性部材は、付勢力f3の方向が図15(C)に示すように第3ポジションにおけるギヤGLと、ギヤG17と、回転軸17Aとの軸心が通る直線Rと同軸線上になるようギヤG17よりZ正方向側に配置される。
【0089】
図15(A)に示すように、第2ポジションでは、転写機構9は転写ローラ17と当接する位置に配置される(図11図12参照)。このとき、回転軸17Aは、ガイド溝18の径方向部18Aの下端に配置されている。径方向部18AはZ方向に沿って延在するため、付勢力f3はZ負方向側の成分が回転軸17Aに作用し、回転軸17Aが径方向部18Aの下端に保持される。このとき作用する付勢力f3のZ負方向側成分は、図1などに示す付勢力f2と対応する。
【0090】
回転軸17Aがガイド溝18の径方向部18Aの下端にあるとき、ギヤG17はギヤGLと歯元位置まで深く噛み合っている。これにより、矢印M18で示すようにギヤGLが回転すると回転駆動力がギヤG17に伝達されて、ギヤG17と転写ローラ17とが矢印M2の方向に回転する。
【0091】
図15(B)に示すように、第2ポジションから第3ポジションへの遷移中には、転写機構9は可動刃ラック45と連動して、矢印M13で示すように上方向に移動する。転写ローラ17は転写機構9により上方に押されて、付勢力f3に反してガイド溝18の径方向部18Aに沿ってZ正方向側に移動して、矢印M19で示すように回転軸17Aは径方向部18Aの上端まで到達する。また、径方向部18Aの形状は、図15(B)に示すように、回転軸17Aが径方向部18Aの上端にあるときでも、ギヤG17の歯先円がギヤGLの基準円の位置にあり、ギヤG17とギヤGLとの噛み合いが維持されるように形成されている。したがって、図15(B)の状態でも、ギヤGLが回転するとギヤG17に回転駆動力が伝達可能となっている。
【0092】
回転軸17Aが径方向部18Aの上端に到達すると、回転軸17Aはガイド溝18の周方向部18Bに沿って移動可能となる。ここで、ギヤGLの回転駆動力M18は、付勢力f3より大きく設定されている。また、ガイド溝18の周方向部18Bは、ギヤGLの周方向に沿って形成されているので、回転軸17Aが周方向部18Bに沿って移動しても、ギヤG17の歯先円がギヤGLの基準円の位置にある状態が維持される。これにより、回転軸17Aは、ギヤGLの回転駆動力M18によってX正方向側への外力を受け、矢印M20で示すように周方向部18Bに沿って移動し、周方向部18BのX正方向側の端部へ到達する。この結果、図15(C)に示すように、転写ローラ17はギヤGLを中心にW方向へ回動し、第3ポジションへ遷移する。
【0093】
なお、図15では、第2ポジションから第3ポジションへの遷移時における転写ローラ17のW方向への移動(図13)を例示して説明したが、第1ポジションから第3ポジションへの遷移時における転写ローラ17のW方向への移動(図9)も同様の作用によって動作する。また、図10に矢印M8で示し、図14に矢印M17で示した転写ローラ17の復帰動作も、図15に示す構造を用いて(C)→(B)→(A)の順で転写機構9を移動させることで実現できる。
【0094】
このように本実施形態に係るプリンタ1は、長尺の記録媒体である記録紙Pを搬送する搬送路において記録紙Pに印刷を行うサーマルヘッド5と、サーマルヘッド5と対向配置されサーマルヘッド5により印刷された記録紙Pを下流側に搬送するプラテンローラ6とを有する印字部3と、印字部3より搬送方向S2の下流側に配置され、固定刃41と可動刃43とを有し、可動刃43の移動によって記録紙Pを幅方向に沿って切断するカッター4と、カッター4より搬送方向S2の下流側に配置され、記録紙Pの裏面に粘着剤Gを付加する粘着剤転写ユニット7と、粘着剤転写ユニット7と対向配置され、粘着剤転写ユニット7側に記録紙Pを押圧しつつ記録紙Pを下流側に搬送する転写ローラ17と、を備える。粘着剤転写ユニット7は、可動刃43の移動方向に沿って可動刃43と一体的に移動可能である。言い換えると、粘着剤転写ユニット7は、可動刃43とともに一体的に組付けられ、可動刃43の移動方向に沿って可動刃43とともに移動するよう設けられる。
【0095】
本実施形態のプリンタ1は、粘着剤転写ユニット7と可動刃43とを第2モータM2を用いて単一の駆動源により移動させることが可能となるので、粘着剤転写ユニット7を移動させるために新たな駆動源を設置する必要がなく、省スペース化を図ることができる。この結果、プリンタ1は、装置の大型化を抑制しつつ、記録紙Pへの粘着剤Gの付加と、記録紙Pの切断とを行って印刷物P2を作成できる。また、粘着剤転写ユニット7と対向配置される位置、すなわちカッター4より搬送方向S2の下流側に転写ローラ17が配置されるので、転写ローラ17を用いてカッター4により切断された後の記録紙P2をプリンタ1の外部に自動的に送り出すことが可能となり、印刷効率を向上できる。さらに、転写ローラ17が記録紙Pを粘着剤転写ユニット7側に押圧するので、粘着剤転写ユニット7から記録紙Pへの粘着剤Gの転写を確実に行うことができる。
【0096】
また、本実施形態のプリンタ1では、粘着剤転写ユニット7は、可動刃43が設置される可動刃ラック45に連結されるのが好ましい。この構成により、粘着剤転写ユニット7を、可動刃43の移動方向に沿って可動刃43とともに確実に移動させることができるまた、例えば、可動刃ラック45の幅方向に沿って複数の粘着剤転写ユニットの数より多い連結位置を設けた場合、プリンタ1の利用者が印刷物P2の用途に応じて、多数の連結位置の中から各ユニットの連結位置を任意に選択することで、印刷物P2の裏面のどの位置に粘着剤を塗布するかを容易に調整できる。また、粘着剤の塗布位置が調整できるので、印刷物P2の粘着力や貼付可能位置の調整も可能になり、さまざまな用途に応じたラベル紙の印刷が可能となる。
【0097】
また、本実施形態のプリンタ1では、粘着剤転写ユニット7は、可動刃ラック45に着脱可能に連結されるのが好ましい。この構成により、粘着剤転写ユニット7を可動刃ラック45から自由に取り外すことが可能となるので、粘着剤転写ユニット7の交換や整備をしやすくでき、装置寿命を向上できる。
【0098】
また、本実施形態のプリンタ1では、上下動ブロック13(特に粘着剤転写ユニット7及び可動刃43)は、移動方向S3において、第1ポジション、第2ポジション、第3ポジションの間で遷移可能である。第1ポジションでは、粘着剤転写ユニット7と可動刃43とが共に搬送路上の記録紙Pから離間する位置にある。第2ポジションでは、粘着剤転写ユニット7が記録紙Pに接触し、記録紙Pに粘着剤Gを付加可能な位置にあり、可動刃43が搬送路上の記録紙Pを切断できない位置にある。第3ポジションでは、粘着剤転写ユニット7及び可動刃43が共に搬送路を超える位置にあり、可動刃43が搬送路上の記録紙Pを切断できる位置にある。さらに、転写ローラ17は、第3ポジションのとき粘着剤転写ユニット7に押圧されて移動して、粘着剤転写ユニット7が搬送路を超える位置に移動可能とするよう構成される。この構成により、粘着剤転写ユニット7と可動刃43とを一体的に移動させながら、粘着剤転写ユニット7が記録紙Pに粘着剤Gを付加する動作と、可動刃43が搬送路上の記録紙Pを切断する動作とを実施できる。さらに、粘着剤転写ユニット7と対向配置されていた転写ローラ17が移動するので、粘着剤転写ユニット7が搬送路を超える位置に移動しやすくなり、粘着剤転写ユニット7と連動する可動刃43の切断動作の負荷が軽減でき、記録紙Pを切断しやすくできる。
【0099】
また、本実施形態のプリンタ1では、転写ローラ17は、第3ポジションのとき粘着剤転写ユニット7に押圧されて記録紙Pの搬送方向S2の下流側に移動するので、転写ローラ17が粘着剤転写ユニット7の移動方向(Z正方向)を避けるように転写ローラ17を転写機構9の移動方向からずらすことができる。これにより、転写ローラ17が粘着剤転写ユニット7のZ正方向への移動を阻害することなく、粘着剤転写ユニット7が搬送路を超えて移動する量を増やすことができる。これにより、粘着剤転写ユニット7と連動する可動刃43の移動量も増やすことができ、記録紙Pをより確実に切断できる。
【0100】
また、本実施形態のプリンタ1では、記録紙Pを裏面に粘着面を有するラベル紙として印刷する場合、第1に、粘着剤転写ユニット7及び可動刃43は第2ポジションに遷移して、印字部3による記録紙Pへの印字を行うと共に、粘着剤転写ユニット7が記録紙Pに粘着剤Gを付加し、第2に、粘着剤転写ユニット7及び可動刃43は第3ポジションに遷移して、可動刃43が記録紙Pを切断する。一方、記録紙Pを裏面に粘着面を有しない普通紙として印刷する場合、第1に、粘着剤転写ユニット7及び可動刃43は第1ポジションに遷移して、印字部3による記録紙Pへの印字を行い、粘着剤転写ユニット7による記録紙Pへの粘着剤Gの付加を行わず、第2に、粘着剤転写ユニット7及び可動刃43は第3ポジションに遷移して、可動刃43が記録紙Pを切断する。この構成により、上下動ブロック13(特に粘着剤転写ユニット7、可動刃43)の移動方向S3の位置を第1~第3ポジションの三段階の間で適宜遷移させることによって、ラベル紙印刷と普通紙印刷を単一のプリンタ1で選択的に行うことができ、汎用性を向上できる。
【0101】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0102】
上記実施形態では、転写機構9がローラ構造である構成を例示したが、転写機構9は粘着剤テープTを記録紙Pに押し当てて粘着剤Gを転写できればよく、ローラ構造以外の他の構造でもよい。例えば周知の修正テープのように、テープを対象物に押し当てるヘッドが板状となる構造でもよい。この構造の場合、粘着剤テープTが板状のヘッドの一方の主面から先端部をとおり他方の主面に沿ってヘッドに装着され、先端部またはいずれかの主面が転写ローラ17によって記録紙Pに押し付けられて、記録紙Pとの接触部分の粘着剤Gが記録紙Pに転写される。また、ヘッドは粘着剤テープTを記録紙Pに押し当てる形状であればよく、例えば先端の押圧方向(厚さ方向)の形状が鋭角に尖って形成されるなど、板状以外の固形形状でもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、粘着剤転写ユニット7によって粘着剤テープTに塗布されている粘着剤Gを記録紙Pに転写する構成を例示したが、少なくとも粘着剤Gを記録紙Pの裏面に付加することができればよく、例えば粘着剤Gを吐出して記録紙Pに塗布する構成など、転写以外の手法で粘着剤Gを記録紙Pに付加する構成でもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、印字部3により印字され、粘着剤転写ユニット7により粘着剤Gを付加される記録媒体として記録紙Pを例示したが、紙と同様に薄板状であり、一方の面に印字可能であり、他方の面に粘着剤を塗布可能なものであればよく、例えば樹脂製などの薄板でもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、プリンタ1は「ラベル紙印刷」と「普通紙印刷」の2種類のプリント種類の印刷を行うことができるものを例示したが、ラベル紙印刷専用のプリンタでもよい。この場合、上下動ブロック13の遷移可能な位置は上述の第1~第3ポジションの三段階ではなく、第2ポジションと第3ポジションの二段階のみとしてもよい。つまり、第1ポジションのように、粘着剤転写ユニット7と可動刃43とが共に搬送路上の記録紙PからZ負方向側に離間する位置には遷移しない構成としてもよい。これにより、上下動ブロック13の遷移構造を簡略化できるので、装置をさらに小型化できる。
【0106】
また、上記実施形態では、上下動ブロック13の移動方向であるZ方向が鉛直方向である構成を例示したが、上下動ブロック13の移動方向は例えば水平方向など鉛直方向以外の方向でもよい。この場合、記録紙Pの搬送方向S2は、例えば鉛直方向など水平方向以外の方向でもよい。
【0107】
上記実施形態では、前端検出センサ31と後端検出センサ32とを用いてそれぞれ記録紙Pの印字位置Aの通過と粘着剤転写位置Cの通過を検知して、制御部30がこの検知結果に基づき上下動ブロック13の高さ位置を遷移させるタイミングを制御する構成を例示した。しかしながら、本実施形態のプリンタ1では、制御部30が記録紙Pの搬送路上の位置を把握できればよく、前端検出センサ31及び後端検出センサ32以外の要素を用いて記録紙Pの位置を検知する構成でもよい。
【0108】
上記実施形態では、粘着剤転写ユニット7が可動刃ラック45に着脱可能に連結される構成を例示したが、可動刃ラック45に固設される構成でもよい。また、上記実施形態では、粘着剤転写ユニット7と可動刃43とが共に可動刃ラック45に連結される構成を例示したが、少なくとも粘着剤転写ユニット7と可動刃43とが一体的に移動可能であればよく、例えば粘着剤転写ユニット7と可動刃43とが直接連結されるなど、可動刃ラック45に連結される構成以外の連結構造を用いてもよい。
【0109】
上記実施形態では、上下動ブロック13が第3ポジションに遷移するとき、転写ローラ17は図9図13図15に矢印Wで示したように回転軸17Aが記録紙Pの搬送方向S2の下流側に移動して転写機構9の移動方向(Z正方向)から押し避けられる構成を例示した。少なくとも転写ローラ17が転写機構9の移動方向からずれて、粘着剤転写ユニット7のZ正方向への移動を阻害しなければよく、転写ローラ17の移動方向はこれに限られない。例えば、矢印Wとは反対方向に、回転軸17Aが搬送方向S2の上流側に移動して転写機構9の移動方向から避けられる構成でもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 プリンタ、2 筐体、2A 本体、2B 蓋、3 印字部、5 サーマルヘッド、
6 プラテンローラ、4 カッター、41 固定刃、43 可動刃、
45 可動刃ラック、7 粘着剤転写ユニット、17 転写ローラ、A 印字位置、
B カット位置、C 粘着剤転写位置、P 記録紙、G 粘着剤、
S2 記録紙搬送方向、S3 可動刃移動方向
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