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特開2024-89321型締装置、射出成形機、および型締方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089321
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】型締装置、射出成形機、および型締方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/26 20060101AFI20240626BHJP
   B29C 45/06 20060101ALI20240626BHJP
   B29C 45/03 20060101ALI20240626BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B22D17/26 H
B29C45/06
B29C45/03
B29C45/76
B22D17/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204608
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AP04
4F206AP20
4F206JA07
4F206JC02
4F206JC08
4F206JL02
4F206JL07
4F206JM02
4F206JN31
4F206JP15
4F206JQ81
4F206JQ82
4F206JQ83
(57)【要約】
【課題】型締時に作用するタイバーの負荷を適切に評価できる型締装置を提供する。
【解決手段】複数本のタイバー(12)の少なくとも1本を張力検出タイバーとする。張力検出タイバーに、その外周面において円周方向の異なる箇所に張力検出手段(22、23)を設け、型締時における張力検出タイバーの曲がり度合いを検出する。曲がり度合いは、張力検出タイバーの円周方向における最大歪みと最小歪みの差である歪み差、または張力検出タイバーに作用する曲げモーメント、あるいは張力検出タイバーに発生している曲げ応力とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の張力検出タイバーを含む複数本のタイバーを備え、
前記張力検出タイバーには、その外周面において円周方向の異なる箇所にそれぞれ張力検出手段が設けられ、型締時に発生する前記張力検出タイバーの曲がり度合いが検出されるようになっており、
前記曲がり度合いは、前記張力検出タイバーの円周方向における最大歪みと最小歪みの差である歪み差、または前記張力検出タイバーに作用する曲げモーメント、あるいは前記張力検出タイバーに発生している曲げ応力である、型締装置。
【請求項2】
前記張力検出手段は歪みセンサからなる、請求項1に記載の型締装置。
【請求項3】
複数本の前記タイバーは全て前記張力検出タイバーになっている、請求項1または2に記載の型締装置。
【請求項4】
前記張力検出タイバーにおいて設けられている複数個の前記張力検出手段は2個からなり、一方と他方の前記張力検出手段は前記張力検出タイバーの直径方向において互いに反対に位置するように配置され、前記一方の前記張力検出手段は複数本の前記タイバーにより囲まれるエリアの中心に向かう側に設けられている、請求項1または2に記載の型締装置。
【請求項5】
前記型締装置は竪型型締装置からなる、請求項1または2に記載の型締装置。
【請求項6】
前記型締装置は制御装置を備え、
前記制御装置は型締時に前記張力検出タイバーにおいて検出される前記曲がり度合いが許容曲がり度合いを超えないように型締力を制限するようになっている、請求項1または2に記載の型締装置。
【請求項7】
型締装置と、射出装置と、を備え、
前記型締装置は、少なくとも1本の張力検出タイバーを含む複数本のタイバーを備え、
前記張力検出タイバーには、その外周面において円周方向の異なる箇所にそれぞれ張力検出手段が設けられ、型締時に発生する前記張力検出タイバーの曲がり度合いが検出されるようになっており、
前記曲がり度合いは、前記張力検出タイバーの円周方向における最大歪みと最小歪みの差である歪み差、または前記張力検出タイバーに作用する曲げモーメント、あるいは前記張力検出タイバーに発生している曲げ応力である、射出成形機。
【請求項8】
前記張力検出手段は歪みセンサからなる、請求項7に記載の射出成形機。
【請求項9】
複数本の前記タイバーは全て前記張力検出タイバーになっている、請求項7または8に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記張力検出タイバーにおいて設けられている複数個の前記張力検出手段は2個からなり、一方と他方の前記張力検出手段は前記張力検出タイバーの直径方向において互いに反対に位置するように配置され、前記一方の前記張力検出手段は複数本の前記タイバーにより囲まれるエリアの中心に向かう側に設けられている、請求項7または8に記載の射出成形機。
【請求項11】
前記型締装置は竪型型締装置からなり、前記射出成形機は竪型射出成形機からなる、請求項7または8に記載の射出成形機。
【請求項12】
前記射出成形機は制御装置を備え、
前記制御装置は型締時に前記張力検出タイバーにおいて検出される前記曲がり度合いが許容曲がり度合いを超えないように型締力を制限する、請求項7または8に記載の射出成形機。
【請求項13】
型締装置に設けられている複数本のタイバーにおいて、少なくとも1本の前記タイバーを張力検出タイバーとし、
前記張力検出タイバーには、その外周面において円周方向の異なる箇所にそれぞれ張力検出手段を設けるようにし、
前記型締装置において型締めを実施するとき、型締時に発生する前記張力検出タイバーの曲がり度合いを検出し、
検出された前記曲がり度合いが許容曲がり度合いを超ないように型締力を制限するようにし、
前記曲がり度合いは、前記張力検出タイバーの円周方向における最大歪みと最小歪みの差である歪み差、または前記張力検出タイバーに作用する曲げモーメント、あるいは前記張力検出タイバーに発生している曲げ応力である、型締方法。
【請求項14】
前記型締装置には取り付け可能な金型のサイズが規定されており、前記型締装置において規定されている最小金型寸法の金型を前記型締装置に取り付けて規定されている最大型締力を発生させたときに前記張力検出タイバーにおいて検出される曲がり度合いを前記許容曲がり度合いとする、請求項13に記載の型締方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を型締めする型締装置、射出成形機、および型締方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、金型を型締めする型締装置と射出材料を射出する射出装置とを備えている。型締装置は、例えば竪型の型締装置の場合には、フレームに固定されている固定盤と、この固定盤の上方に設けられている上可動盤と、下方に設けられている下可動盤とを備えている。上可動盤と下可動盤は複数本のタイバーで連結され、下可動盤と固定盤の間に型締機構が、例えばトグル機構が設けられている。
【0003】
このような型締装置において上可動盤には上側金型が、そして固定盤には下側金型が設けられている。もし、型締装置が特許文献1に記載されているように、ターンテーブルを備えている場合には、下側金型は固定盤ではなく、固定盤の上で回転自在に設けられているターンテーブルに設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-205877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで型締装置には、取り付けることが可能な金型に関して制約が設けられている。具体的には上可動盤等の型盤に取り付けられる金型の取付面の大きさに関して制約がある。型盤に取付面の小さい金型が取り付けられると、型締時に型盤が撓んでタイバーに負荷が作用する。そうすると長期間の運転を経てタイバーが劣化する、という問題があるからである。そこで、型締装置には取り付け可能な最小の取付面、つまり最小金型寸法が規定されている。しかしながら、ユーザには最小金型寸法より小さい取付面の金型を取り付けて成形したい要求もある。最小金型寸法より小さい取付面の金型を型締装置に取り付ける場合、型締力の大きさを比較的小さくするようにすれば、タイバーの負荷を抑制することができ、タイバーの劣化を防止できる。しかしながら、タイバーに作用する負荷を適切に評価する手段がないので、どの程度の型締力を発生させてよいのか判断できないという課題がある。
【0006】
本開示において、型締時に作用するタイバーの負荷を適切に評価することができる型締装置を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、少なくとも1本の張力検出タイバーを含む複数本のタイバーを備え、張力検出タイバーには、その外周面において円周方向の異なる箇所にそれぞれ張力検出手段が設けられ、型締時に発生する張力検出タイバーの曲がり度合いが検出されるようになっている型締装置として構成する。曲がり度合いは、張力検出タイバーの円周方向における最大歪みと最小歪みの差である歪み差、または張力検出タイバーに作用する曲げモーメント、あるいは張力検出タイバーに発生している曲げ応力とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、型締時に作用するタイバーの負荷を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る竪型射出成形機の正面図である。
図2】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す上面図である。
図3】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面図である。
図4A】型締時にタイバーに作用する垂直応力を示す図である。
図4B】型締時にタイバーに作用する型締力による張力垂直応力を示す図である。
図4C】型締時にタイバーに作用する曲げにより生じる曲げ応力を示す図である。
図5A】第1の実施形態に係る型締方法の準備段階を示すフローチャートである。
図5B】第1の実施形態に係る型締方法の運転段階を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態に係る型締方法を実施したときの、型締力とタイバーに作用する曲げ応力の関係を示すグラフである。
図7】第2の実施形態に係る型締装置の一部を示す上面図である。
図8】第2の実施形態に係る竪型射出成形機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
[第1の実施形態]
<竪型射出成形機>
第1の実施形態に係る竪型射出成形機1は、図1に示されているように、型締装置2と、この型締装置2の上部に設けられている射出装置3と、これらを制御する制御装置4と、を備えている。
【0013】
<型締装置>
型締装置2は、ベッド7に固定されている固定盤9と、この固定盤9の上方に設けられている上可動盤10と、ベッド7内に設けられている下可動盤11とを備えている。上可動盤10と下可動盤11は複数本のタイバー12、12、…で連結されている。第1の実施形態においてタイバー12、12、…は図2の上面図に示されているように、4本からなる。タイバー12、12、…は、張力検出手段が設けられている点、および張力検出手段の配置に特徴があるが後で説明する。
【0014】
型締装置2において下可動盤11と固定盤9の間には型締機構としてクロスヘッド16を備えたトグル機構14が設けられている。クロスヘッド16は、図1に示されているようにボールねじ機構17と、このボールねじ機構17を駆動する型開閉モータ18とによって駆動されるようになっている。上可動盤10には上側金型19が、そして固定盤9には下側金型20が設けられている。したがって、制御装置4の指令により型開閉モータ18によりクロスヘッド16を駆動するとトグル機構14が屈伸する。これにより金型19、20が型開閉される。
【0015】
<張力検出手段>
第1の実施形態においてタイバー12、12、…には、図1図2に示されているように、それぞれ2個ずつ張力検出手段22、23、…が設けられている。張力検出手段22、23、…は歪みセンサからなりタイバー12、12、…の伸びによる生じる歪みを検出し、これによって張力を検出するようになっている。張力検出手段22、23、…が設けられているタイバー12、12、…を本明細書では張力検出タイバーと呼んでいる。第1の実施形態においては全てのタイバー12、12、…が張力を検出する対象である張力検出タイバーになっている。
【0016】
張力検出手段22、22、…と張力検出手段23、23、…はそれぞれのタイバー12、12、…についてみると、直径方向において互いに反対側に位置するように配置されている。そして、一方の張力検出手段22、22、…は、図2に示されているように、4本のタイバー12、12、…によって囲まれたエリア24の内側に向いている。他方の張力検出手段23、23、…はこのエリア24の外方を向いている。あるいは一方の張力検出手段22、22、…は上可動盤10の中心方向に向かっており、他方の張力検出手段23、23、…は、外方に向かっていると言うこともできる。張力検出手段22、23、…はこのように配置されているので、タイバー12、12、…に作用する張力だけでなく、タイバー12、12、…に作用する曲げモーメント等を検出することができる。
【0017】
<射出装置>
射出装置3は、図1に示されているように、型締装置2の上可動盤10の上に設けられている。射出装置3は、加熱シリンダ25と、加熱シリンダ25内に設けられているスクリュ26と、スクリュ26を駆動するスクリュ駆動機構27と、射出装置3全体を昇降する昇降装置29と、を備えている。射出装置3は、スクリュ26を回転して射出材料を溶融し、スクリュ26を軸方向に駆動して射出材料を射出するようになっている。
【0018】
<型締時に生じる型締装置の弾性変形>
第1の実施形態に係る型締装置2において金型19、20を型締めすると図3に示されているように各部材が弾性変形する。まず、上可動盤10について考えると、上可動盤10にはその中央部において上側金型19から上向きの力31をそして端部においてタイバー12、12、…から下向きの力32、32をそれぞれ受ける。これらによって上可動盤10は点線で示されているように弾性変形する。
【0019】
一方、タイバー12、12、…には、下向きの力32、32の反力として同じ大きさの上向きの張力34、34が作用するので弾性変形によりタイバー12、12、…は伸びる。さらに、上可動盤10の弾性変形により上可動盤10から曲げモーメント36、36を受けるので、タイバー12、12、…は点線のように弾性変形する。つまりタイバー12、12、…は長手方向に伸びると共に内側に湾曲するように弾性変形する。金型19の上可動盤10に対する取付面の大きさが小さいと、上向きの力31が作用する面積が小さくなり上可動盤10の中心に集中するので曲げモーメント36、36、…が大きくなり、弾性変形が大きくなる。そうすると、タイバー12、12、…に負荷がかかり長期間の運転によって劣化の虞が生じることになる。
【0020】
1本のタイバー12について歪み、応力等を検討する。タイバー12には、上可動盤10(図2参照)の中心を向く位置に張力検出手段22が、そして外側に向く位置に張力検出手段23が設けられている。タイバー12には張力34と曲げモーメント36が作用するが、曲げモーメント36に比して張力34の大きさが大きいので、いずれの張力検出手段22、23にも伸び方向の歪みが検出される。ただしその歪みの大きさは、タイバー12の円周方向で考えたときに、上可動盤10の中心に近い側で歪みの大きさが最大になり、外側で歪みの大きさが最小になる。つまり、図4Aに示されているように、張力検出手段22には最大歪みが、そして張力検出手段23には最小歪みが検出される。したがって、任意の断面38について考えると、図4Aに示されているような引張り方向の垂直応力の分布40が発生することになる。
【0021】
垂直応力の分布40は、仮想的に2個の成分に分解することができる。まず、型締力による成分つまり張力34による成分は、図4Bに示されているように断面38に一様に作用する引張り応力の分布41として扱うことができる。引張り応力は断面38において一定の大きさで分布している。
【0022】
一方、曲げモーメント36による成分は、図4Cに示されているように、引張応力から圧縮応力に変化する曲げ応力の分布42として扱うことができる。曲げモーメント36による成分であるので、曲げ応力の分布42を断面38について積分すると引張応力と圧縮応力が相殺されて大きさが0になる。このように断面38について曲げ応力は曲げ応力の分布42にしたがって一様に変化しており、その最大値はタイバー12の内側と外側の表面近傍で最大になる。本明細書では、この最大になる曲げ応力のことを、単にタイバー12における曲げ応力と呼ぶことにする。つまり曲げ応力と呼ぶとき、タイバー12において発生している最大の曲げ応力のことを意味する。
【0023】
次に、第1の実施形態に係る型締方法を説明するが、端的に言うとこの型締方法ではタイバー12、12、…の曲がり度合いを検出して、型締め時における曲がり度合いが許容曲がり度合いを超えないように型締力を調整するようになっている。曲がり度合いは、タイバー12、12、…の円周方向における最大歪みと最小歪みの差分である歪み差によって評価してもよいし、歪み差から計算される曲げモーメント36、あるいは曲げ応力によって評価してもよい。
【0024】
<型締方法>
第1の実施形態に係る型締方法は、準備段階と運転段階とに分かれている。準備段階は型締装置2において許容される曲がり度合い、つまり許容曲がり度合いを決定する工程になっている。ところで第1の実施形態において曲がり度合いはタイバー12、12、…に作用する曲げ応力によって評価するようにしている。したがって、許容曲がり度合いは許容曲げ応力として決定することになる。許容曲げ応力の決定方法を説明する。
【0025】
準備段階として、図5Aに示されているステップS01を実施する。型締装置2(図1参照)において、型盤つまり上可動盤10に対して取り付け可能な金型19の大きさには制約があり、取付面の大きさによって規定されている。取り付け可能な最小の取付面を備えた金型の寸法を最小金型寸法と呼んでいる。ステップS01では、最小金型寸法の金型19と金型20とを型締装置2に取り付ける。
【0026】
次いでステップS02を実施する。つまり型締装置2において型締めを実施して、型締装置2において規定されている発生可能な最大型締力を発生させる。このときタイバー12、12、…に発生する曲げ応力を得る。曲げ応力は、タイバー12、12、…における最大歪みと最小歪みの差である歪み差から次式によって求める。
曲げ応力 = 歪み差×(1/2)×タイバーの弾性係数
図6には、最小金型寸法の金型19(図1参照)を取り付けて型締力を徐々に大きくし、最大型締力に変化させたときの曲げ応力の変化がグラフ44として示されている。最大型締力に達したときの曲げ応力を許容曲げ応力としている。制御装置4(図1参照)は、得られた曲げ応力を許容曲げ応力として記憶する。準備段階を完了する。
【0027】
運転段階を説明する。制御装置4は、図5Bに示されているようにステップS11を実行して型締めを開始する。つまりクロスヘッド16の押し込みを開始する。制御装置4は、ステップS12を実行する。すなわち、タイバー12、12、…における曲がり度合いを検出し、これが許容曲がり度合いより小さいか否かを判断する。第1の実施形態において曲がり度合いは曲げ応力として評価するようになっているので、制御装置4(図1参照)は張力検出手段22、23、…によってタイバー12、12、…において発生している歪み差を検出し、歪み差から前述した計算方法で曲げ応力を得る。検出される曲げ応力が許容曲げ応力より小さければ(YES)、ステップS13に移行する。一方、曲げ応力が許容曲げ応力に達していたら(NO)、ステップS15に移行するが、これについて後で説明する。
【0028】
制御装置4は、ステップS13においてクロスヘッド16の位置つまりクロスヘッド位置をチェックする。クロスヘッド16が型締完了位置に達していれば(YES)、設定している型締力が発生しているので、ステップS15に移行する。ステップS15において型締めを完了する。一方、クロスヘッド16が型締完了位置に達していなければ(NO)、ステップS14に移行する。ステップS14では引き続きクロスヘッド16を押し込む。そしてステップS12に戻る。
【0029】
ステップS12において、検出される曲げ応力が許容曲げ応力に達する場合について説明する。運転段階では、上で説明したステップS11によって型締めを開始した後、しばらくはステップS12、S13、S14を繰り返してクロスヘッド16の押し込みを継続する。このように型締装置2において型締力を増加させている状態が、図6のグラフ45に示されている。型締力と曲げ応力とが徐々に増加している。寸法が許容範囲にある金型19(図1参照)であれば、やがて型締力が設定型締力に達することになり、ステップS13においてクロスヘッド16が型締完了位置に達したことが判定され、ステップS15に移行して型締めが完了する。
【0030】
しかしながら、最小金型寸法より小さい金型19が型締装置2に取り付けられている場合、図6の符号46で示されているように、設定型締力にもよるが、検出される曲げ応力が許容曲げ応力に達する場合がある。そうするとステップS12においてこれが検出されることになる。これ以上の曲げ応力がタイバー12、12、…に作用すると、タイバー12、12、…の負荷が大きくなりすぎると判断し、制御装置4はステップS15に移行する。制御装置4はステップS15によって型締めを完了する。このようにすると、タイバー12、12、…を保護することができる。
【0031】
しかしながら、この場合型締力は設定型締力に達していない。制御装置4は型締力が設定型締力に到達していない旨、メッセージを出力するようにすることが好ましい。そしてメッセージ出力後、次の工程、すなわち射出装置3により射出工程を実施するようにする。あるいは、メッセージ出力後、制御装置は射出工程に移行してよいかどうかの指示をオペレータに要求するようにしてもよい。いずれにしても、第1の実施形態に係る型締方法は、最小金型寸法より小さい金型19を対象としていても、安全に型締めを実施できる型締方法になっている。第1の実施形態に係る型締方法の説明を終わる。
【0032】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る竪型射出成形機1Aが図8に示されている。第1の実施形態と同様の部材については同じ参照番号を付して説明を省略する。第2の実施形態に係る竪型射出成形機1Aは、型締装置2Aが第1の実施形態と相違している。相違している点は次の3点になる。第1の相違点は、タイバー12、12、12Aの本数が3本になっている点である。上可動盤10Aは、図7に示されているように、上面形状が略二等辺三角形になっており、3本のタイバー12、12、12Aも二等辺三角形の位置に配置されている。
【0033】
第2の相違点は、固定盤9の上にターンテーブル50が設けられている点である。ターンテーブル50は1本のタイバー12Aを中心に回転するようになっている。下側金型20はターンテーブル50に設けられている。第2の相違点は、3本のタイバー12、12、12Aのうち、2本のタイバー12、12だけが張力検出タイバーになっている点である。つまり張力検出手段22、23、…が設けられているのは2本のタイバー12、12だけで、ターンテーブル50の中心に設けられているタイバー12Aは、張力の検出はしない。
【0034】
第2の実施形態に係る竪型射出成形機1Aにおいても、張力検出タイバーについて、一方の張力検出手段22、22が、3本のタイバー12、12、12Aからなるエリア24の中心を向かう側に設けられ、他方の張力検出手段23、23が外方に向かう側に設けられている。したがって、これら張力検出タイバーも、第1の実施形態と同様に曲がり度合いを検出することができる。つまり第1の実施形態と同様にして予め許容曲がり度合いを決定し、型締時に曲がり度合いを検出して許容曲がり度合いを超えないように型締を実施することができる。
【0035】
[他の変形]
第1、第2の実施形態は色々な変形が可能である。まず、張力検出タイバーの本数を変形することができる。例えば、第2の実施形態においては、1本のタイバー12Aについても、図7に示されているように、符号51、52の位置に張力検出手段を設けるようにしてもよい。あるいは第1の実施形態において、4本のタイバー12、12、…が全て張力検出タイバーになっているとして説明したが、張力検出タイバーを1本だけ、あるいは2本だけ、等とすることができる。張力検出タイバーにおける張力検出手段22、23の個数も変形できる。第1、2の実施形態においては1本の張力検出タイバーに2個の張力検出手段22、23が設けられているように説明した。しかしながら3個以上であってもよい。
【0036】
曲がり度合いについて、第1の実施形態においてはタイバー12、12、…における曲げ応力で評価するようになっているが、前述したように最大歪みと最小歪みの差である歪み差によって評価しても、あるいは曲げモーメントによって評価してもよい。曲げモーメントは、上で説明した曲げ応力から次の式で計算することができる。
曲げモーメント = 曲げ応力×タイバーの断面係数Z
なおタイバー12、12、…の断面係数Zは、タイバーの直径dにより
断面係数Z = πd/32
により与えられる。
【0037】
第1、第2の実施形態は、いずれも竪型射出成形機1、1Aになっている。しかしながら、第1の実施形態に係る型締方法は横置き型の射出成形機であっても当然に実施することができる。つまり横置き型の射出成形機において型締装置を構成しているタイバーにおいて、少なくとも1本のタイバーを張力検出タイバーにする。そして張力検出タイバーにおいて、複数個例えば2個の張力検出手段である歪みセンサを設けるようにする。一方の歪みセンサが複数本のタイバーからなるエリアの内側に、そして他方の歪みセンサが外側になるように配置する。そうすると、型締時において張力検出タイバーの曲がり度合いを検出することができるからである。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 竪型射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
7 ベッド 9 固定盤
10 上可動盤 11 下可動盤
12 タイバー 14 トグル機構
16 クロスヘッド 17 ボールねじ機構
18 型開閉モータ 19 上側金型
20 下側金型 22 張力検出手段
23 張力検出手段 24 エリア
25 加熱シリンダ 26 スクリュ
27 スクリュ駆動機構 29 昇降装置
34 張力 36 曲げモーメント
38 断面 40 垂直応力の分布
41 引張り応力の分布 42 曲げ応力の分布
50 ターンテーブル
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8