(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089325
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】熱交換装置
(51)【国際特許分類】
F25B 37/00 20060101AFI20240626BHJP
F25B 17/08 20060101ALI20240626BHJP
F28D 20/00 20060101ALI20240626BHJP
F28F 23/00 20060101ALI20240626BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20240626BHJP
C09K 5/10 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F25B37/00
F25B17/08 Z
F28D20/00 Z
F28F23/00 Z
B01J20/20 B
C09K5/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204614
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市川 靖
(72)【発明者】
【氏名】曽根 和樹
(72)【発明者】
【氏名】青梅 亜美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】内村 允宣
(72)【発明者】
【氏名】西原 洋知
(72)【発明者】
【氏名】金丸 和也
【テーマコード(参考)】
3L093
4G066
【Fターム(参考)】
3L093NN03
3L093RR01
4G066AA04B
4G066BA05
4G066BA13
4G066BA20
4G066BA22
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA56
4G066DA01
4G066EA20
(57)【要約】
【課題】小型化およびエネルギーの消費効率の向上が可能であり、吸発熱量および吸発熱出力が高く、媒体を繰り返し吸着および脱離させた場合であっても熱交換性能の低下が生じにくい熱交換装置を提供する。
【解決手段】収縮して流体冷媒を脱離可能であり、かつ、膨張して前記流体冷媒を吸着可能であるナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体と、前記ナノ多孔質体の表面に隣接して配置され、前記流体冷媒を透過可能であり、前記ナノ多孔質材料を透過させない第1の多孔質部と、前記第1の多孔質部に隣接し、かつ、気相に露出するように配置され、前記流体冷媒に対する接触角(25℃)が前記第1の多孔質部よりも小さい、および/または細孔径が前記第1の多孔質部よりも大きい、第2の多孔質部とを有し、弾性を有する吸発熱部と、前記吸発熱部に応力を印加する動作と、前記応力を解放する動作とを行うプレス機構と、前記吸発熱部を収容する収容部とを有する、熱交換装置である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮して流体冷媒を脱離可能であり、かつ、膨張して前記流体冷媒を吸着可能であるナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体と、
前記ナノ多孔質体の表面に隣接して配置され、前記流体冷媒を透過可能であり、前記ナノ多孔質材料を透過させない第1の多孔質部と、
前記第1の多孔質部に隣接し、かつ、気相に露出するように配置され、前記流体冷媒に対する接触角(25℃)が前記第1の多孔質部よりも小さい、および/または細孔径が前記第1の多孔質部よりも大きい、第2の多孔質部と、
を有し、弾性を有する吸発熱部と、
前記吸発熱部に応力を印加する動作と、前記応力を解放する動作とを行うプレス機構と、
前記吸発熱部を収容する収容部と、
を有する、熱交換装置。
【請求項2】
前記収容部の内部において前記吸発熱部に接触して熱的に接続される接触部と、前記収容部から外部に延出する延出部と、を有する熱伝導部をさらに有する、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記第2の多孔質部の少なくとも一部が、前記熱伝導部に熱的に接続されている、請求項2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記第2の多孔質部の少なくとも一部が、複数の前記第1の多孔質部の間に介在している、請求項1または2に記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記第2の多孔質部の気相に露出した表面の少なくとも一部が凹凸形状を有している、請求項1または2に記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記第2の多孔質部が中空構造を有し、前記中空構造の内部表面が気相に露出し、かつ、前記内部表面の少なくとも一部が凹凸形状を有している、請求項1または2に記載の熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱を移動させることで対象(空間や物体)の加熱や冷却を行う熱交換装置が広く用いられている。例えば、下記特許文献1には、媒体としての水を気化させる高熱源と、気化させた水分を凝縮する低熱源とを与えるヒートポンプと、水分を集めるデシカント(乾燥材)とを用いた吸着式ヒートポンプ(デシカント空調器)が開示されている。このような吸着式ヒートポンプでは、一般に、デシカントに用いる吸着材としてシリカゲル、ゼオライトなどの多孔質体が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の吸着式ヒートポンプ(デシカント空調器)では、多孔質体中における流体冷媒の移動速度が小さい。このため、冷媒分子が蒸発する(すなわち、吸熱する)際に、冷媒分子の蒸発速度が小さく、単位時間内に十分な吸熱量を得ることが難しい。冷媒分子の蒸発を促すために、多孔質体の温度を上昇させる方法が考えられるが、この方法では入熱用のヒータが必要となるため装置の大型化を招く。また、ヒータを稼働させるためのエネルギーが必要となるため、エネルギーの消費効率が低下する。
【0005】
また、特に設置スペースの限られているカーエアコンなどに適用するために、吸発熱量および吸発熱出力がより高い熱交換装置が求められている。さらに、流体冷媒を繰り返し吸着および脱離させた場合であっても熱交換性能の低下が生じにくい熱交換装置が求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、小型化およびエネルギーの消費効率の向上が可能であり、吸発熱量および吸発熱出力が高く、流体冷媒を繰り返し吸着および脱離させた場合であっても熱交換性能の低下が生じにくい熱交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その過程で、応力を印加および解放することによって、機械的に変形して、流体冷媒を脱離および吸着可能なナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体を熱交換装置の吸着剤として用い、脱離または吸着により発生した潜熱を冷熱または温熱に直接的に利用した。この際、上記ナノ多孔質体を、流体冷媒を透過させるがナノ多孔質材料の粒子を透過させない第1の多孔質部で覆い、かつ、当該流体冷媒に対する接触角(25℃)が当該第1の多孔質部よりも小さい、および/または細孔径が当該第1の多孔質部よりも大きい第2の多孔質部を当該第1の多孔質部に隣接し、かつ、気相に露出するように配置した構造体を吸発熱部として用いることで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一形態は、収縮して流体冷媒を脱離可能であり、かつ、膨張して前記流体冷媒を吸着可能であるナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体と、前記ナノ多孔質体の表面に隣接して配置され、前記流体冷媒を透過可能であり、前記ナノ多孔質材料を透過させない第1の多孔質部と、前記第1の多孔質部に隣接し、かつ、気相に露出するように配置され、前記流体冷媒に対する接触角(25℃)が前記第1の多孔質部よりも小さい、および/または細孔径が前記第1の多孔質部よりも大きい、第2の多孔質部とを有し、弾性を有する吸発熱部と、前記吸発熱部に応力を印加する動作と、前記応力を解放する動作とを行うプレス機構と、前記吸発熱部を収容する収容部とを有する、熱交換装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型化およびエネルギーの消費効率の向上が可能であり、吸発熱量および吸発熱出力が高く、流体冷媒を繰り返し吸着および脱離させた場合であっても熱交換性能の低下が生じにくい熱交換装置が得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る空調装置の構成例を立体的に示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るユニット本体の構成例を立体的に示す模式図である。
【
図3】
図3は、吸発熱部11の構成を示す図である。
図3(A)は、
図1および
図2に示す吸発熱部11を上部からZ軸方向に見た平面図である。
図3(B)は、
図3(A)に示す吸発熱部11をB-B’線を通るY-Z平面で切断した断面図である。
【
図4】
図4は、吸発熱部11の構成の変形例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る空調装置において、空気の流れと延出部とを示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す延出部をVI-VI’線を通るY-Z平面で切断した断面図である。
【
図7】
図7は、GMS粉末にメタノールを吸着させた後、プレス機を用いてプレス処理を施す前後におけるプレス装置の様子を、サーモカメラを用いて撮影した結果を示す写真である。
【
図8】
図8は、参考例2および比較参考例3の吸発熱部サンプルについて吸熱性能を測定した結果を示す、銅板の経時的な温度変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一形態は、収縮して流体冷媒を脱離可能であり、かつ、膨張して前記流体冷媒を吸着可能であるナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体と、前記ナノ多孔質体の表面に隣接して配置され、前記流体冷媒を透過可能であり、前記ナノ多孔質材料を透過させない第1の多孔質部と、前記第1の多孔質部に隣接し、かつ、気相に露出するように配置され、前記流体冷媒に対する接触角(25℃)が前記第1の多孔質部よりも小さい、および/または細孔径が前記第1の多孔質部よりも大きい、第2の多孔質部とを有し、弾性を有する吸発熱部と、前記吸発熱部に応力を印加する動作と、前記応力を解放する動作とを行うプレス機構と、前記吸発熱部を収容する収容部とを有する、熱交換装置である。
【0012】
従来の吸着式ヒートポンプ(デシカント空調器)では、多孔質体中における流体冷媒の移動速度が小さい。このため、冷媒分子が蒸発する(すなわち、吸熱する)際に、冷媒分子の蒸発速度が小さく、単位時間内に十分な吸熱量を得ることが難しい。冷媒分子の蒸発を促すために、多孔質体の温度を上昇させる方法が考えられるが、この方法では入熱用のヒータが必要となるため装置の大型化を招く。また、ヒータを稼働させるためのエネルギーが必要となるため、エネルギーの消費効率が低下する。
【0013】
これに対し、本形態に係る熱交換装置では、応力を印加および解放することによって細孔径を変化させ、ゲスト分子として取り込まれる流体冷媒を可逆的に気液相転移させることができるナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体を吸着剤に用いる。これにより、流体冷媒の相変化によって吸熱または発熱するナノ多孔質体を熱源として、収容部外に存在する物質(例えば、空気)と熱交換することができる。この熱交換装置では、ヒータによる入熱ではなく、応力付与部によるプレスが入力エネルギーとなる。このため、前記熱交換装置は、エネルギーの消費効率(COP:Coefficient Of Performance)を向上させることができる。また、上記熱交換装置は、入熱用のヒータは不要であるため、小型化が可能である。
【0014】
また、本形態に係る熱交換装置は、ナノ多孔質体の表面に隣接して、流体冷媒を透過可能であり、ナノ多孔質材料を透過させない第1の多孔質部が配置されている点に特徴がある。このような第1の多孔質部を配置することにより、機械的に応力を印加した際にナノ多孔質体が型崩れを起こしたり、不純物が混入したりすることを防ぐことができる。そのため、ナノ多孔質体に荷重を均一に印加できるため吸発熱量が向上しうる。また、ナノ多孔質体の型崩れによる吸脱着量の低下が生じにくいため、吸発熱量が維持されうる。さらに、上記多孔質部の細孔径が制御されていることで流体冷媒の吸脱着量が改善される。すなわち、多孔質部の細孔径が流体冷媒の分子径に対して小さすぎると、流体冷媒の拡散が阻害されて流体冷媒が十分に吸脱着しない。そのため、良好な熱交換性能が得られない。一方で、多孔質部の細孔径がナノ多孔質体を構成するナノ多孔質材料の二次粒子径に対して大きすぎると、ナノ多孔質材料が多孔質部を透過して多孔質部の外に漏れ出してしまい、媒体の吸脱着量が低下してしまう。これに対し、多孔質部の細孔径を、流体冷媒を透過可能であり、ナノ多孔質材料を透過させないように制御することにより、ナノ多孔質材料が多孔質部の外部に漏れ出すことを抑制することができる。また、それと同時に、流体冷媒を選択的に透過させ、流体冷媒の拡散を妨げない構造とすることができる。このような構造とすることにより、流体冷媒の拡散を阻害しないため吸脱着量が向上しうる。また、ナノ多孔質材料が多孔質部を透過して多孔質部の外に漏れ出すことによる吸脱着量の低下が生じにくい。その結果、吸発熱量が向上しうる。また、応力の印加および解放を繰り返しても吸発熱量の低下がより生じにくい。
【0015】
さらに、本発明者らは、上記の構成を有する熱交換装置の検討を進める中で、ナノ多孔質材料に吸着した流体冷媒は、応力の印加に伴って蒸気(気体)の状態で脱離し、効率的な冷却の達成に寄与するものと予想していた。しかしながら、実際に実験を行ってみたところ、驚くべきことに、脱離する流体冷媒の少なくとも一部が液体の状態でナノ多孔質材料から漏出してくる場合があることが判明した。このように漏出した液体状態の流体冷媒を効率的に蒸発させることができれば熱交換装置の冷却効率を効果的に向上させることができる。そこで、本発明者らは、上述した第1の多孔質部から液体状態で漏出した流体冷媒を効率的に蒸発させるための構成として、第2の多孔質部を当該第1の多孔質部に隣接し、かつ、気相に露出するように配置することを試みた。そして、当該第2の多孔質部の接触角を第1の多孔質部の接触角よりも小さくするか、または第2の多孔質部の細孔径を第1の多孔質部の細孔径よりも大きくすることで、第1の多孔質部から液体状態で漏出した流体冷媒を効率的に蒸発させることを可能とし、冷却効率の著しい向上を実現したのである。
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る空調装置200の構成例を立体的に示す模式図である。
図1に示す空調装置200は、例えば、自動車の室内(内気)を冷却するカーエアコン(冷房)に適用することができる。
【0018】
図1に示すように、空調装置200は、熱交換ユニット100(本発明の一形態に係る「熱交換装置」の一例)と、空気が流れる空気導通路150と、を備える。空気導通路150は、ダクトと言い換えてもよい。熱交換ユニット100は、ユニット本体1と、ユニット本体1を厚さ方向(例えば、Z軸方向)の両側から挟むプレス機構3と、を備える。プレス機構3は、第1挟持体31と第2挟持体32との間に1つ以上のユニット本体1を挟み込んで固定している。例えば、プレス機構3は、複数のユニット本体1を固定した状態を維持しつつ、軸部33が軸方向に移動することによって、複数のユニット本体1の吸発熱部11(例えば、
図2参照)に応力を加えたり、加えた応力を解放したりする。
【0019】
図2は、本実施形態に係るユニット本体1の構成例を立体的に示す模式図である。
図2に示すように、ユニット本体1は、弾性を有する吸発熱部11と、吸発熱部11と直接または間接的に接触して吸発熱部11の熱を伝導する熱伝導部12と、吸発熱部11および熱伝導部12を収容する収容部13と、を有する。本実施形態において、ユニット本体1は、熱伝導部12を複数有する。複数の熱伝導部12が、吸発熱部11を厚さ方向(例えば、Z軸方向)の両側から挟んでいる。2つの熱伝導部12は、1つの吸発熱部11をZ軸方向の両側から挟んでいる。本実施形態において、熱伝導部12は、収容部13の内部において第1の多孔質部(詳細は後述する)に接触して熱的に接続される接触部121と、収容部13から外部に延出する延出部122とを有している。なお、
図1および
図2では、3つ以上の熱伝導部12が1つの収容部13内に収容されて、1つのユニット本体1を構成していてもよい。例えば、全ての熱伝導部12が1つの収容部13内に配置されて、1つのユニット本体1を構成していてもよい。
【0020】
図1および
図2に示す構成とすることにより、複数のユニット本体1の各々において、延出部122と、収容部13の外側に存在する物質(例えば、空気)との間の熱交換が行われる。
【0021】
図3は、吸発熱部11の構成を示す図である。
図3(A)は、
図1および
図2に示す吸発熱部11を上部からZ軸方向に見た平面図である。
図3(B)は、
図3(A)に示す吸発熱部11をB-B’線を通るY-Z平面で切断した断面図である。
図3に示すように、吸発熱部11において、ナノ多孔質体11aは、板状の形状に成形されており、さらにその周囲を第1の多孔質部11bで包囲されている。また、本実施形態では、このようなナノ多孔質体11aおよび第1の多孔質部11bからなる包装体が3つ積層されており、その外周を覆うように第2の多孔質部11cが配置されている。本実施形態において、ナノ多孔質体11aは弾性を有しているため、吸発熱部11もまた、弾性を有している。なお、「弾性」とは、外部から応力が印加されて収縮しても、応力が解放されることによって、可逆的に大きく変形してほぼ元の形状に回復する性質を意味する。吸発熱部11の弾性限度は、流体冷媒を脱離するために必要な応力印加よりも大きくなるように設計されている。吸発熱部11の弾性限度は、空調装置200の適用対象の冷却規模等に応じて適宜設計することが好ましい。以下、熱交換ユニット100の主要な構成要素について、説明する。
【0022】
(ナノ多孔質体)
ナノ多孔質体11aは、収縮して流体冷媒を脱離可能であり、かつ、膨張して前記流体冷媒を吸着可能であるナノ多孔質の材料(ナノ多孔質材料)を含む構造体である。ナノ多孔質体は、例えば、複数の粒子と、複数の粒子同士を結合するバインダとを含み、複数の粒子の各々がナノ多孔質材料である(すなわち、複数のナノレベルの細孔を有する)構造体であってもよい。また、ナノ多孔質体は、バインダを含まず、ナノ多孔質材料のみから構成される構造体であってもよい。
【0023】
また、「ナノ多孔質」とは、複数のナノレベルの細孔を有することを意味する。ナノレベルの細孔とは、好ましくは直径0.5~100nmであり、より好ましくは直径0.7~50nmであり、さらに好ましくは直径0.7~6nmのミクロ孔またはメソ孔である。なお、IUPAC(国際純正及び応用化学連合)では、直径2nm以下の細孔をミクロ孔(micropore)、直径2~50nmの細孔をメソ孔(mesopore)、直径50nm以上の細孔をマクロ孔(macropore)と定義している。
【0024】
一般的に、固体表面はファンデルワールス力によるポテンシャルエネルギーが高く、流体冷媒の分子を凝縮させる作用がある。ナノ多孔質体に吸着された媒体は、ナノレベルの小さな細孔壁に囲まれているため、固体表面のファンデルワールス力(物理吸着力)によるポテンシャルエネルギーが著しく高い。このとき、気体状態の流体冷媒は、ナノ多孔質体の細孔壁に液体の密度で吸着される。すなわち、ナノ多孔質体への吸着は気体から液体への相変化と同質の現象であり、吸着熱は凝縮潜熱にほぼ等しい。このように、流体冷媒は、ナノ多孔質体に吸着すると気体から液体へ相変化する。これに対し、流体冷媒は脱離すると液体から気体へ相変化すると本発明者らは予想していたが、実際には一部が液体状態で脱離し、他の一部は気体状態で脱離することが判明したのである。ナノ多孔質体の細孔壁に吸着された細孔内部の液体密度の媒体は、飽和蒸気圧よりも低い圧力の蒸気と平衡状態となっている。
【0025】
ナノ多孔質体を構成するナノ多孔質材料としては、収縮して流体冷媒を脱離可能で、かつ、膨張して流体冷媒を吸着可能な材料であれば特に限定されず、弾性を有する材料であることが好ましい。
【0026】
ナノ多孔質材料は、炭素を主成分とすることが好ましい。ここで、「炭素を主成分とする」とは、炭素のみからなる、実質的に炭素からなる、の双方を含む概念であり、炭素以外の元素が含まれていてもよい。「実質的に炭素からなる」とは、全体の90質量%以上、好ましくは全体の95質量%以上、全体の98質量%以上、または全体の99質量%以上(上限:100質量%)が炭素から構成されることを意味する。そのような材料としては、単層グラフェン骨格を含み、媒体の脱離および吸着に必要な多孔性および弾性特性を有する炭素材料が挙げられる。具体的には、例えば、ゼオライトテンプレートカーボン(ZTC;Zeorite Templated Carbon)、グラフェンメソスポンジ(GMS;Graphene MesoSponge)、炭素メソスポンジ(CMS;Carbon MesoSponge)等が挙げられる。ゼオライトテンプレートカーボン(以下、「ZTC」と称する。)、グラフェンメソスポンジ(以下、「GMS」と称する。)、および炭素メソスポンジ(以下、「CMS」と称する)は、いずれも単層グラフェン骨格からなり、流体冷媒の脱離および吸着に必要な多孔性および弾性特性を有している。
【0027】
ZTCは、単層のグラフェンシートにより構成される。また、均一な細孔(直径約1.2nm)が三次元的に規則配列し、相互に連結しており、極めて高いBET比表面積と細孔容積を有する(最大でBET比表面積が4100m2/g、細孔容積が1.8cc/g)ことが知られている。ZTCの製造方法については、Nishihara,H.et al.,Chemistry-European Journal 15, 5355(2009)等に記載されている。
【0028】
GMSは、細孔壁の大部分が単層グラフェンから構成され、約6nm程度の微小な細孔を有するスポンジ状のメソ多孔体であり、活性炭に匹敵する極めて高いBET比表面積(約2000m2/g)を有している。その一方で、活性炭やカーボンブラックとは異なり腐食の原因となるグラフェンの端部をほとんど含んでいないことから、優れた耐食性(酸化耐性)も備えている。また、柔軟かつ強靭であるというグラフェンの性質に起因して、GMSは柔軟性および弾性に優れ、細孔の直径が約5.8nmから約0.7nmになるまで可逆的に弾性変形することができる。GMSの製造方法については、Nishihara,H.et al.,Advanced Functional Materials,Vol.26,2016,6418-6427.に記載されている。CMSは、上記GMSの前駆体として得ることができ、上記GMSと同様に球状のメソ孔を有する。
【0029】
ナノ多孔質材料のBET比表面積は、特に制限されないが、例えば、800~4200m2/gの範囲である。これにより、媒体の吸着量を増加させることができる。
【0030】
前記ナノ多孔質材料は粉末状でありうる。前記ナノ多孔質材料の粉末の大きさは、多孔質部を透過しない大きさであれば特に限定されないが、例えば、平均二次粒子径が0.5~1000μmであり、好ましくは5~500μmであり、さらに好ましくは10~100μmである。ナノ多孔質材料の平均二次粒子径の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)などの観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。また、「粒子径」とは、観察される粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとする。
【0031】
ナノ多孔質体がバインダを含む場合、バインダとしては、特に限定されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。2種類以上のバインダを組み合わせて用いてもよい。特に、バインダとして、カルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレン-ブタジエンゴム(SBR)とを組み合わせて用いることが好ましい。この際、CMCとSBRとの混合比は特に制限されないが、例えば、SBRに対するCMCの質量比(CMC/SBR)が、固形分換算で、0.5~2であることが好ましく、1.1~1.6であることがより好ましい。
【0032】
バインダを用いてナノ多孔質材料を結合させてナノ多孔質体を構成する場合、ナノ多孔質体におけるバインダの含有量は、特に制限されないが、ナノ多孔質体の総質量に対して、固形分換算で、5~30質量%であることが好ましい。バインダの含有量が5質量%以上であれば、ナノ多孔質体の保持力が高まるため、より耐久性の高いナノ多孔質体が得られうる。一方、バインダの含有量が30質量%以下であれば、バインダがナノ多孔質材料内に入り込んで吸着質の吸着量が低下することを抑制することができる。さらにバインダの質量比が15~25質量%であると、より耐久性が向上すると共に吸着量の低下を抑制できるため好ましい。2種類以上のバインダを組み合わせて用いる場合はその合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0033】
本発明の一実施形態において、ナノ多孔質体は、バインダを含まないことが好ましい。具体的には、バインダの含有量は、ナノ多孔質体の総質量に対して、固形分換算で、例えば1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下である。バインダを用いないことで、応力をかけたときにバインダが変形して変位を吸収することがないため、ナノ多孔質材料に荷重を均一にかけることができる。また、バインダが変形してナノ多孔質体の細孔を潰してしまうことを防止することができる。その結果、流体冷媒の拡散が阻害されず、脱着が促進されるため、吸熱出力および吸熱量が増加しうる。さらに、バインダを含まないことでナノ多孔質体の質量あたりの吸熱量が増加しうる。また、同様の理由で、ナノ多孔質体は、ナノ多孔質材料のみから構成されることが好ましい。具体的には、ナノ多孔質材料の含有量は、ナノ多孔質体の総質量に対して、固形分換算で、例えば98質量%以上であり、好ましくは99質量%以上であり、より好ましくは99.5質量%以上である。本発明の好ましい実施形態において、ナノ多孔質体は、バインダを含まず、ナノ多孔質材料のみから構成される。
【0034】
(第1の多孔質部)
第1の多孔質部11bは、流体冷媒を透過可能であり、ナノ多孔質材料を透過させない細孔を有し、ナノ多孔質体11aの表面に隣接して配置される。好ましくは、ナノ多孔質体11aの表面の少なくとも一部に接するように配置される。例えば、第1の多孔質部11bは、プレス機構3とナノ多孔質体11aとの間、ナノ多孔質体11aを挟んでプレス機構3の反対側、および、ナノ多孔質体11aの側面のうち、1か所以上に配置されている。好ましくは、第1の多孔質部11bは、プレス機構3とナノ多孔質体11aとの間に配置される。より好ましくは、第1の多孔質部は、プレス機構3とナノ多孔質体11aとの間およびナノ多孔質体11aを挟んでプレス機構3の反対側に配置される。特に好ましくは、第1の多孔質部11bは、ナノ多孔質体11aの全体を覆うように配置されている。これにより、本発明の効果がより顕著に得られうる。
【0035】
第1の多孔質部11bの細孔径は、流体冷媒を透過させ、かつ、ナノ多孔質体11aを構成するナノ多孔質材料を透過させない大きさであればよいが、ナノ多孔質材料の平均二次粒子径よりも小さく、流体冷媒のサイズよりも大きいことが好ましい。
【0036】
また、第1の多孔質部11bは、弾性を有し、かつ、ナノ多孔質体11aよりも硬いことが好ましい。これにより、プレス機構3は、第1の多孔質部11bを介して、ナノ多孔質体11aに応力を付与することが可能である。
【0037】
第1の多孔質部11bは、ナノ多孔質体11aの表面に隣接して配置されることによりナノ多孔質体11aを支えることができることから、ナノ多孔質体11aの型崩れを抑制することができる。これにより、応力を印加したときにナノ多孔質体11aに荷重を均一にかけることができる。そのため、流体冷媒の拡散が阻害されず、脱離が促進されるため好ましい。また、ナノ多孔質体11aの変形によりナノ多孔質体11aの細孔が潰されることを回避できるため、吸熱出力および吸熱量が増加しうる。
【0038】
前記第1の多孔質部11bの細孔径は、下記式(1)で表される接触半径a(mm)に対して、2a(mm)以下であることが好ましい。
【0039】
【0040】
上記式(1)中、Pは、応力(N)であり、ν1およびν2は、それぞれナノ多孔質材料および第1の多孔質部のポアソン比であり、E1およびE2は、それぞれナノ多孔質材料および第1の多孔質部の縦弾性係数(MPa)であり、R1およびR2は、それぞれナノ多孔質材料および第1の多孔質部の曲率半径(mm)である。
【0041】
上記式(1)(ヘルツの公式)は、プレス荷重がナノ多孔質材料にかかったときのナノ多孔質材料の接触半径を表し、荷重に対してナノ多孔質材料がどのくらい変形するかを表す。第1の多孔質部の細孔径が2a(mm)以下であれば、ナノ多孔質材料に応力をかけたときにナノ多孔質材料と第1の多孔質部の表面の開口部以外の部分とが接触する領域が十分に大きくなる。ナノ多孔質体に応力をかけると、この接触する領域に荷重がかかるため、当該構成であるとナノ多孔質体により均一に荷重をかけることができ、流体冷媒の脱離がより促進されうる。そのため、流体冷媒の応答性がより向上し、吸熱出力および吸熱量がより増加しうる。
【0042】
また、第1の多孔質部の細孔径は、ナノ多孔質材料の平均二次粒子径の65%以下であることが好ましい。ナノ多孔質材料に荷重がかかった場合、ナノ多孔質材料が変形しうる。第1の多孔質部の細孔径がナノ多孔質材料の平均二次粒子径の65%以下であれば、前記細孔径はナノ多孔質材料に応力をかけたときの第1の多孔質部との接触面の直径以下の大きさになりうる。そのため、ナノ多孔質材料と第1の多孔質部の表面の開口部以外の部分とが接触する領域が十分に大きくなる。ナノ多孔質体に応力をかけると、この接触する領域に荷重がかかるため、当該構成であるとナノ多孔質体により均一に荷重をかけることができ、流体冷媒の脱離がより促進されうる。その結果、吸熱出力および吸熱量がより向上しうる。この観点から、第1の多孔質部の細孔径は130μm以下であることが好ましい。
【0043】
第1の多孔質部の細孔径の下限値は、流体冷媒を透過させることができるものであれば特に制限されない。第1の多孔質部の細孔径は、流体冷媒の気体分子の平均自由工程をλとすると、0.1λ以上であることが好ましい。例えば媒体がメタノール(分子径0.38nm)であると、メタノール供給時の圧力(25℃でのメタノールの飽和蒸気圧である16937Pa)での平均自由工程λは0.378μmと算出される。流体冷媒がエタノールであると、λは0.81μmと算出される。したがって、第1の多孔質部の細孔径は、好ましくは0.04μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、さらに好ましくは0.06μm以上である。上記範囲であると、細孔内のガス拡散がクヌーセン拡散および分子拡散の両者が寄与する領域であることから、流体冷媒の分子の吸脱着とこれに伴う気液相転移がより効果的に進行しうる。特に流体冷媒がエタノールである場合、上記範囲であると、本発明の効果がより一層顕著に得られうる。同様に、第1の多孔質部の細孔径が10λ以下であると、細孔内のガス拡散がクヌーセン拡散および分子拡散の両者が寄与する領域であることから、流体冷媒の分子の吸脱着とこれに伴う気液相転移がより効果的に進行しうる。この観点から、第1の多孔質部の細孔径は、例えば、8μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。流体冷媒がエタノールである場合、第1の多孔質部の細孔径は、好ましくは3μm以下である。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1の多孔質部の細孔径は、例えば20μm以下であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下であり、さらにより好ましくは3μm以下であり、さらにより好ましくは1μm以下であり、さらにより好ましくは0.5μm以下であり、さらにより好ましくは0.2μm以下である。また、第1の多孔質部の細孔径は、好ましくは0.04μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、さらに好ましくは0.06μm以上である。なお、本明細書において、第1の多孔質部および後述する第2の多孔質部の細孔径は、細孔の内接円の短軸直径をいう。これらの多孔質部の細孔径は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用いて測定することができる。多孔質部が大きさや形状の異なる細孔を有する場合は、その算術平均値として算出される値を採用するものとする。
【0045】
第1の多孔質部は、特に制限されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル等の樹脂で構成されていることが好ましい。このような樹脂であれば低温にて熱融着が可能であり、製造工程の簡易化を図ることができる。そのため、コストを削減することができ、製造工程を高効率化できる。なかでも、ポリプロピレンは融点が約160℃であり、熱融着に適するため、上記の効果がより顕著に得られうるため好ましい。
【0046】
第1の多孔質部は、特に制限されないが、フィルムの形状であることが好ましい。第1の多孔質部の厚さは特に制限されないが、例えば、5~100μmであり、好ましくは10~50μmである。第1の多孔質部の空孔率も特に制限されないが、例えば、30~70%であり、好ましくは40~60%である。なお、第1の多孔質部としては、市販の多孔質フィルムであって所定の細孔径を有するものを用いてもよい。
【0047】
(第2の多孔質部)
第2の多孔質部11cは、第1の多孔質部11bに隣接し、かつ、気相に露出するように配置される。好ましくは、第1の多孔質部11bの少なくとも一部に接するように配置される。例えば、第2の多孔質部11cは、プレス機構3と第1の多孔質部11bとの間、および、第1の多孔質部11bの側面のうち、1か所以上に配置されている。好ましくは、第2の多孔質部11cは、第1の多孔質部11bの外周の全体を覆うように配置されている。これにより、本発明の効果がより顕著に得られうる。
【0048】
第2の多孔質部11cは、「(1)流体冷媒に対する接触角(25℃)が第1の多孔質部11bよりも小さい」、「(2)細孔径が第1の多孔質部11bよりも大きい」または「(1)および(2)の双方である」のいずれかの特徴を有している。
【0049】
また、第2の多孔質部11cもまた、弾性を有し、かつ、ナノ多孔質体11aよりも硬いことが好ましい。これにより、プレス機構3は、第2の多孔質部11cを介して、ナノ多孔質体11aに応力を付与することが可能である。
【0050】
本形態における第2の多孔質部11cについて、「(1)流体冷媒に対する接触角(25℃)が第1の多孔質部11bよりも小さい」場合、第2の多孔質部11cの方が第1の多孔質部11bよりも流体冷媒に対する濡れ性に優れる。このため、応力の印加に伴ってナノ多孔質体11aから液体状態で漏出した流体冷媒の第1の多孔質部11bから第2の多孔質部11cへの移動が促進される。そして、第2の多孔質部11cが存在することで、これが存在しない場合と比較して流体冷媒が蒸発可能な面積が大幅に拡大されている。よって、第2の多孔質部11cへと移動した流体冷媒は効率的に気化することができ、結果として効率的な冷却が達成される。
【0051】
ここで、
図1において、プレス機構3が収容部13を介して吸発熱部11に応力を加えると、吸発熱部11を構成しているナノ多孔質体11aの細孔は収縮し、ナノ多孔質体11aの細孔壁に吸着していた流体冷媒は細孔壁から脱離する。このとき、液体の密度で吸着された流体冷媒は、一部は液体として、他の一部は気体としてナノ多孔質体の外部に放出される。熱交換ユニット100は、この脱離の際の蒸発潜熱を冷熱として利用することによって、対象(例えば、空気)を冷却することができる。また、上述したように、液体状態で脱離した流体冷媒は、第1の多孔質体11bおよび第2の多孔質体11cを経て効率的に気化し、その際の蒸発潜熱によってさらに対象(例えば、空気)を冷却することができる。
【0052】
ここで、第2の多孔質部11cの流体冷媒に対する接触角(25℃)の値は、第1の多孔質部11bの接触角の値よりも5°以上、好ましくは10°以上、より好ましくは15°以上、いっそう好ましくは20°以上小さいことが好ましい。また、第2の多孔質部11cの流体冷媒に対する接触角(25℃)の値は、熱交換装置において用いられる流体冷媒の種類によって異なるため一義的には規定できないが、例えば流体冷媒の一例としてメタノールに対する接触角の値は、好ましくは20~80°であり、より好ましくは30~80°であり、さらに好ましくは35~75°であり、特に好ましくは40~70°である。なお、第1の多孔質部11bの流体冷媒に対する接触角(25℃)の値についても特に制限はないが、メタノールに対する接触角の値は、好ましくは40~95°であり、より好ましくは50~95°であり、さらに好ましくは55~90℃であり、特に好ましくは60~85°である。なお、接触角は平均値(多孔質部11の孔に充填されている液体の占有率(飽和度)を一定とした上で接触角を複数回測定した際の平均値)である。
【0053】
また、本形態における第2の多孔質部11cについて、「(2)細孔径が第1の多孔質部11bよりも大きい」場合、応力の印加に伴ってナノ多孔質体11aから液体状態で漏出した流体冷媒は、細孔径がより小さい第1の多孔質部11bから、細孔径がより大きい第2の多孔質部11cへの移動が促進される。そして、第2の多孔質部11cが存在することで、これが存在しない場合と比較して流体冷媒が蒸発可能な面積が大幅に拡大されている。よって、第2の多孔質部11cへと移動した流体冷媒は効率的に気化することができ、結果として効率的な冷却が達成される。
【0054】
ここで、
図1において、プレス機構3が収容部13を介して吸発熱部11に応力を加えると、漏出した流体冷媒の第1の多孔質部11bから第2の多孔質部11cへの移動が促進され、上記(1)と同様のメカニズムにより、効率的な冷却が実現されうる。
【0055】
ここで、第2の多孔質部11cの細孔径の値は、第1の多孔質部11bの細孔径の値と比較して、1.1倍以上、好ましくは10倍以上、さらに好ましくは100倍以上、いっそう好ましくは1000倍以上であることが好ましい。また、第2の多孔質部11cの細孔径の値は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.1μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上である。一方、第2の多孔質部の細孔径は、例えば5000μm以下であり、好ましくは3000μm以下であり、より好ましくは1000μm以下である。
【0056】
第2の多孔質部もまた、特に制限されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル等の樹脂で構成されていることが好ましい。このような樹脂であれば低温にて熱融着が可能であり、製造工程の簡易化を図ることができる。そのため、コストを削減することができ、製造工程を高効率化できる。なかでも、ポリプロピレンは融点が約160℃であり、熱融着に適するため、上記の効果がより顕著に得られうるため好ましい。また、第2の多孔質部は、特に制限されないが、網、織布、スポンジなどの形状であることが好ましい。また、流体冷媒に対する接触角を小さくする目的でプラズマ処理等の表面処理が施された材料であってもよい。第2の多孔質部の厚さ(
図3(B)における横幅)は特に制限されないが、例えば、5~100mmであり、好ましくは10~5mmである。第2の多孔質部の空孔率も特に制限されないが、第1の多孔質部の空孔率よりも大きいことが好ましく、例えば、40~95%であり、好ましくは50~90%である。なお、第2の多孔質部についても、市販の樹脂スポンジが用いられうる。
【0057】
第2の多孔質部11cの少なくとも一部は、
図4に示すように、複数の第1の多孔質部11bの間に介在していることが好ましい。このような構成とすることで、第1の多孔質部11bと第2の多孔質部11cとの接触面積が増大する。その結果、液体状態で漏出した流体冷媒の蒸発がよりいっそう促進され、冷却効率もいっそう向上しうるという利点がある。
【0058】
また、第2の多孔質部11cの気相に露出した表面の少なくとも一部は凹凸形状を有していることが好ましい。このような構成とすることで、第2の多孔質部11cと気相との接触面積が増大する。その結果、液体状態で漏出した流体冷媒の蒸発がよりいっそう促進され、冷却効率もいっそう向上しうるという利点がある。なお、第2の多孔質部の表面が「凹凸形状を有する」とは、第2の多孔質部の表面に細孔径よりも大きいサイズを有する凹部および凸部が存在することを意味する。この際、第2の多孔質部11cが中空構造を有し、当該中空構造の内部表面が気相に露出し、かつ、当該内部表面の少なくとも一部が凹凸形状を有していることがさらに好ましい。このような構成を有する第2の多孔質部の例としては、スリットや内部空洞を有する中空糸から構成された網や織布、スポンジなどが挙げられる。
【0059】
(熱伝導部)
本形態に係る熱交換装置は、吸発熱部11に加えて、
図1および
図2に示すように、銅やアルミニウムなどの熱伝導体からなる熱伝導部12をさらに有することが好ましい。熱伝導部12の好ましい一実施形態は、例えば、
図1および
図2に示すように、収容部13の内部において吸発熱部11に接触して熱的に接続される接触部121と、収容部13から外部に延出する延出部122とを有する形態である。熱伝導部12は、収容部13の内部において、第1の多孔質部11bおよび第2の多孔質部11cのうち、第1の多孔質部11bの少なくとも一部が当該熱伝導部に熱的に接続されていてもよいし、第2の多孔質部11cの少なくとも一部が当該熱伝導部に熱的に接続されていてもよい。ただし、より効率的な伝熱を達成するという観点からは、第2の多孔質部11cの少なくとも一部が当該熱伝導部に熱的に接続されていることが好ましい。このような熱伝導部12の存在により、流体冷媒が脱離して蒸発する際には、吸発熱部11の温度の低下に伴って、吸発熱部11(例えば、第1の多孔質部11bおよび/または第2の多孔質部11c)と接触している熱伝導部12の温度が低下する。これにより、熱伝導部12の延出部122は、収容部13外に存在する空気等と対流または放射により熱交換して、空気を冷やすことができる。
【0060】
熱伝導部の形状は特に制限されず、銅やアルミニウムなどの金属箔であってもよく、メッシュ状であってもよい。上記金属箔の膜厚も特に制限されないが、例えば、1~1000μmである。
【0061】
なお、それぞれの吸発熱部11が、ナノ多孔質体11aをそれぞれ第1の多孔質部11bで包装した包装体を複数備える場合、当該包装体を応力印加方向に複数積層することで
図3(b)に示すような積層構造体とすることができる。このようにすることで、ナノ多孔質体11aへ流体冷媒を輸送しやすくなるので、熱交換性能をさらに高めることが可能である。積層数としては、特に制限されないが、例えば、2~400である。第1の多孔質部11bを上記のような樹脂で構成し、熱融着によりナノ多孔質体11aを包含することにより、前記積層構造体を容易に作製することができる。
【0062】
さらに、上記の積層構造体の配置例として、上記積層構造体の積層方向をZ方向として、複数の上記積層構造体をX方向およびY方向にそれぞれ並んで配置させて用いることもできる。X軸方向およびY軸方向において、上記積層構造体は互いに接していてもよいし、離れていてもよい。このようにすることで、ナノ多孔質体へ流体冷媒をより輸送し易くなるので、熱交換性能をさらに高めることができる。
【0063】
(流体冷媒)
流体冷媒としては、例えば、水またはアルコールが挙げられる。アルコールの一例として、メタノールまたはエタノールが挙げられる。流体とは、液体または気体、もしくは液体と気体とが混合したものを意味する。なかでも、流体冷媒としてメタノールを用いることが好ましい。メタノールは、炭素との相互作用が強く、炭素からなるナノ多孔質体に吸着しやすい。また、応力付与の前後での吸着量の差(脱着量)が、特に低温時に大きい。そのため、特にナノ多孔質材料に炭素材料を用いた場合に、応力印加時の脱着量が大きくなり、冷熱量がより増加しうる。
【0064】
(プレス機構)
プレス機構3は、吸発熱部11に応力を印加する動作と、前記応力を解放する動作とを行う。これにより、プレス機構3は、吸発熱部11に含まれるナノ多孔質体11aの細孔径を外部からの応力で制御することができる。ナノ多孔質体11aは、応力が印加または解放されることによって細孔径が変化し、細孔に取り込まれる流体冷媒を可逆的に気液相転移させる。
【0065】
プレス機構3は、ナノ多孔質体11aに対して接近離反する方向に往復運動してナノ多孔質体11aに応力を印加および解放することができる限りにおいてその構成は特に限定されない。プレス機構3としては、例えば、モーターの回転運動を利用した機械式プレス機や油圧等の流体圧を利用した液圧式プレス機などを使用することができる。プレス機構3は、ナノ多孔質体11aに対して、例えば、10~100MPaの応力を印加しうる。
【0066】
(収容部)
収容部13は、内部に吸発熱部11および必要に応じて熱伝導部12を収容する空間を有する容器である。収容部13の内部は、例えば真空または真空に近い低圧に保たれている。このため、流体冷媒は、比較的低い温度において液体から気体へ相変化することができる。
【0067】
収容部13は、熱伝導性に優れた材料で構成されていることが好ましく、例えばアルミニウム(Al)または銅(Cu)等の金属で構成されていることが好ましい。これにより、熱交換ユニット100は、収容部13を介して、対象(例えば、空気)と効率よく熱交換することができる。
【0068】
(制御部)
熱交換ユニット100は、図示しない制御部をさらに有していてもよい。この制御部は、例えば、プレス機構3の動作を制御する。制御部は、例えば、CPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)および記録媒体等から構成されている。記録媒体に記録されたプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行する。これにより、制御部は、プレス機構3の動作の制御を実現する。
【0069】
図5は、本実施形態に係る空調装置200において、空気152の流れと延出部122とを示す平面図である。
図6は、
図5に示す延出部122をVI-VI’線を通るY-Z平面で切断した断面図である。
図5および
図6に示す矢印は、空気152の流れ(すなわち、気流)を示している。
図5に示すように、空調装置200は送風装置151を備える。送風装置151は、空気導通路150に接続されており、空気導通路150内に空気152を送り込む。
図5および
図6に示すように、延出部122は、例えば板状である。
【0070】
延出部122は、板の側面122cが空気152の流動方向に対向し、かつ板の主面122aが空気152の流動方向と平行またはほぼ平行となるように配置されている。つまり、延出部122は、空気152の流動方向に沿って配置されている。なお、空気152の流動方向とは、空気152が流れる方向であり、
図5および
図6ではY軸の矢印方向である。
【0071】
Z軸方向で隣り合う一方の延出部122と他方の延出部122との間には、隙間Gが設けられている。空気152は、延出部122間の隙間Gを流れる。また、この際に、空気152は、隙間Gに面している延出部122の主面122a等と対流または放射により熱交換する。空気152の流動方向に沿って延出部122が配置されているため、空調装置200は、通気抵抗を抑えつつ、延出部122と空気152との間で効率的に熱交換することができ、冷風を高効率に得ることができる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係る空調装置200は、熱交換ユニット100と、熱交換ユニット100によって熱交換される空気152が流動する空気導通路150と、空気152を空気導通路150内で流動させる送風装置151と、を備える。これによれば、熱交換ユニット100は、吸発熱材料の相変化によって吸熱または発熱する吸発熱部11を熱源として、収容部13外に存在する物質(例えば、空気)と熱交換することができる。熱交換ユニット100では、ヒータによる入熱ではなく、プレス機構3によるプレス荷重が入力エネルギーとなる。このため、空調装置200は、エネルギーの消費効率(COP:Coefficint Of Performance)を向上させることができる。また、空調装置200は、入熱用のヒータは不要であるため、小型化が可能である。
【0073】
なお、以下の実施形態も本発明の範囲に含まれる:請求項2の特徴を有する請求項1に記載の熱交換装置;請求項3の特徴を有する請求項2に記載の熱交換装置;請求項4の特徴を有する請求項1~3のいずれかに記載の熱交換装置;請求項5の特徴を有する請求項1~4のいずれかに記載の熱交換装置;請求項6の特徴を有する請求項5に記載の熱交換装置。
【実施例0074】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0075】
(GMSの調製)
GMSは、単層グラフェン骨格を有し、大きな空孔率および弾性を有する。GMSの合成法はAdvanced Functional Materials,Vol.26,2016,6418-6427.を引用した。
【0076】
アルミナナノ粒子(Sasol,SBa200)を電気炉に設置し、窒素気流中1173Kまで昇温させた。1173Kに到達したら、窒素ガスを20vol%メタン、80vol%窒素に切り替え、2時間のCVDによりアルミナナノ粒子の表面に炭素を析出させた。その後、窒素のみのフローに切り替え、室温まで冷却した。得られたカーボン被覆アルミナナノ粒子をフッ酸(47wt%,Wako pure chemical industries)に浸漬し、アルミナナノ粒子を取り除いた。得られたメソポーラスカーボンは、アルゴン気流中(10Pa)2073Kで焼成し、GMSを得た。
【0077】
GMSは、主に単層グラフェンからなり、大きな弾性を持ち合わせている。特開2019-138620号公報に記載される手法に準じて、GMSは、応力印加により可逆的に形状が変形することを確認した。また、特開2019-138620号公報に記載される手法に準じて、GMSの応力無印加時(303K)と80MPaの応力印加時(288K、293K、298K、303K)におけるメタノールの脱離/吸着曲線を測定し、GMSに応力を印加/解放することによってメタノールの脱離/吸着および液体/気体の相変化が可逆的に起こることを確認した。
【0078】
また、得られたGMSの粉末を用いて、GMSの平均二次粒子径を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定したところ、20μmであった。
【0079】
[参考例1]
GMS粉末を樹脂メッシュ性のパックに入れ、メタノールを吸着させた後、プレス機を用いてプレス処理を施した。このプレス処理の前後におけるプレス装置の様子を、サーモカメラを用いて撮影した結果を
図7に示す。
図7に示すように、プレス処理後には、液体状態のメタノールがパックから流れ出ていることがわかる。このことから、GMS等のナノ多孔質材料は、本発明の一形態に係る熱交換装置における吸着剤として好適であり、第1の多孔質部に加えて第2の多孔質部をさらに配置することで冷却効率を向上させうることが示唆される。
【0080】
[参考例2]
(包装体試料の作製)
第1の多孔質部として、ポリプロピレン(PP)製のフィルム(細孔径0.064μm、空孔率55%、厚さ25μm、メタノールに対する接触角(25℃)40°、セルガード社製)を準備した。このポリプロピレンフィルムを折り曲げ、二辺をヒートシーラーで熱溶着して袋状にし、空いた一辺から上記のGMS粉末13mgを入れた。その後、空いた一辺を熱溶着して、ナノ多孔質体の周囲に第1の多孔質部が配置されたパック(包装体試料)(14mm×14mm×0.5mm)を作製した。
【0081】
(第2の多孔質部の配置)
上記で作製した包装体試料を5枚積層して積層構造体を得た。一方、第2の多孔質部として、ポリプロピレン(PP)製のスポンジ(細孔0.5μm、空孔率75%、メタノールに対する接触角(25℃)20°)を準備した。このスポンジを切り出し、上記で作製した積層構造体の積層方向に垂直な2つの面を除く外周面に1cmの幅で配置し、テープで固定した。このようにして、本参考例の吸発熱部サンプルを作製した。
【0082】
[比較参考例3]
第1の多孔質部として、ポリプロピレン(PP)製の濾布(通気性7cm/s、厚さ0.32mm、中尾フィルター株式会社製)を準備した。このポリプロピレン製濾布を2枚重ねて、三辺をヒートシーラーで熱溶着して袋状にし、空いた一辺から上記のGMS粉末20mgを入れた。その後、空いた一辺を熱溶着して、熱溶着部の外側を切除し、包装体試料(14mm×14mm×1.1mm)を得た。
【0083】
一方、第2の多孔質部としては上記参考例2と同様の手順で本比較参考例の吸発熱部サンプルを作製した。
【0084】
[吸熱性能の評価]
上記の参考例2および比較参考例3で得られた吸発熱部サンプルについて、吸熱性能の評価を行った。
【0085】
はじめに、各サンプルをメタノールに1時間浸漬した。その後、試料表面のメタノールを除去し、実験装置のステージ上にサンプルを載置し、上面に熱伝導部としての銅(Cu)板を載せて、治具を用いてセットした。そして、銅板の上部からピストンを用いて80MPaでプレスした。その際の銅板の温度変化を、温度計を用いて測定した。結果を
図8に示す。
図8は、参考例2および比較参考例3の吸発熱部サンプルについて吸熱性能を測定した結果を示す、銅板の経時的な温度変化を表すグラフである。
図8に示すように、所定の構成を備えた第2の多孔質部を有する参考例2のサンプルでは、このような第2の多孔質部を有さない比較参考例3に比べて吸熱時の温度変化(銅板の温度低下)が大きくなっていることが確認された。