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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089328
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】光受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/61 20130101AFI20240626BHJP
【FI】
H04B10/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204619
(22)【出願日】2022-12-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G通信インフラを高効率に構成するメトロアクセス光技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 和樹
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AH05
5K102AH14
5K102AH26
5K102KA16
5K102MA02
5K102MC07
5K102PA01
5K102PB01
5K102PC13
5K102PH21
5K102PH31
5K102PH42
5K102RB03
(57)【要約】
【課題】簡易な方法で反射光の影響を抑える技術を提供する。
【解決手段】光送信装置が情報を搬送する電気信号でキャリア光を強度変調することにより生成して光伝送路に送信した変調光であって、前記キャリア光に対応するキャリア成分と、前記電気信号に対応する側波帯成分と、を含む前記変調光を、前記光伝送路から受信光として受信する光受信装置は、前記受信光に含まれる前記キャリア成分を抑圧した第1光を出力するする出力手段と、ローカル光を生成する光源と、前記ローカル光と前記第1光を合波して第2光を出力する合波手段と、前記第2光の光電変換を行う光電変換手段と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光送信装置が情報を搬送する電気信号でキャリア光を強度変調することにより生成して光伝送路に送信した変調光であって、前記キャリア光に対応するキャリア成分と、前記電気信号に対応する側波帯成分と、を含む前記変調光を、前記光伝送路から受信光として受信する光受信装置であって、
前記受信光に含まれる前記キャリア成分を抑圧した第1光を出力するする出力手段と、
ローカル光を生成する光源と、
前記ローカル光と前記第1光を合波して第2光を出力する合波手段と、
前記第2光の光電変換を行う光電変換手段と、
を備えている光受信装置。
【請求項2】
前記ローカル光の周波数は、前記キャリア光の周波数に等しい、請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
前記出力手段は、前記第1光と、前記キャリア成分を含む第3光と、を分離する分離手段であり、
前記光源は、前記第3光を入力として注入同期を行う光源である、請求項2に記載の光受信装置。
【請求項4】
前記変調光に含まれる前記側波帯成分は、上側波帯成分及び下側波帯成分の内の一方のみであり、
前記出力手段が出力する前記第1光は、前記側波帯成分を含む、請求項2に記載の光受信装置。
【請求項5】
前記変調光に含まれる前記側波帯成分は、上側波帯成分及び下側波帯成分であり、
前記出力手段が出力する前記第1光は、前記上側波帯成分及び前記下側波帯成分を含む、請求項2に記載の光受信装置。
【請求項6】
前記変調光に含まれる前記側波帯成分は、上側波帯成分及び下側波帯成分であり、
前記出力手段が出力する前記第1光は、前記上側波帯成分及び前記下側波帯成分の内の一方のみを含む、請求項2に記載の光受信装置。
【請求項7】
前記変調光に含まれる前記側波帯成分は、上側波帯成分及び下側波帯成分の内の一方であり、
前記出力手段が出力する前記第1光は、前記側波帯成分を含み、
前記ローカル光の周波数は、前記キャリア光の周波数とは異なる、請求項1に記載の光受信装置。
【請求項8】
前記変調光に含まれる前記側波帯成分は、上側波帯成分及び下側波帯成分であり、
前記出力手段が出力する前記第1光は、前記上側波帯成分及び前記下側波帯成分の内の一方のみを含み、
前記ローカル光の周波数は、前記キャリア光の周波数とは異なる、請求項1に記載の光受信装置。
【請求項9】
前記第1光及び前記ローカル光の内の少なくとも1つの偏波面を制御する偏波制御手段をさらに備えている、請求項1から8のいずれか1項に記載の光受信装置。
【請求項10】
前記光伝送路は、複数の反射点を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の光受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光通信システムの光受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送路には光ファイバ同士を接続するための複数の接続点が存在する。光ファイバ同士は、光コネクタや、融着により接続される。この接続点において、光送信装置から光受信装置に送信される変調光の一部は、光送信装置に向けて反射される。光送信装置に向けて反射された変調光の一部は、さらに、別の接続点において光受信装置に向けて反射され得る。光送信装置は、送信した変調光とは逆向きに伝搬される光を阻止するアイソレータ等を有するため、反射した変調光が光送信装置に到達しても問題はない。一方、光受信装置は、光伝送路において反射することなく光受信装置に到達した変調光(以下、直接光と表記する)と、光伝送路において偶数回だけ反射して光受信装置に到達した変調光(以下、反射光と表記する)と、を含む受信光を受光する。直接光と反射光の伝搬遅延は異なるため、反射光は直接光の干渉光となり、直接光の復調に影響を与える。
【0003】
特許文献1及び非特許文献1は、干渉光の影響を抑えるためにディザリングを行う構成を開示している。具体的には、非特許文献1は、ディザリング専用の位相変調器を使用する構成を開示している。また、特許文献1は、情報を搬送する信号とディザリング用の信号の両方の信号で光源を駆動して変調光を生成する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-232764号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Byung Gon Kim,et.al.,"Reflection-Tolerant RoF-Based Mobile Fronthaul Network for 5G Wireless Systems",JOURNAL OF TECHNOLOGY,VOL.37,NO.24,2019年12月15日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ディザリングを使用することなく、より簡易な方法で反射光の影響を抑えることが求められる。
【0007】
本開示は、簡易な方法で反射光の影響を抑える技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、光送信装置が情報を搬送する電気信号でキャリア光を強度変調することにより生成して光伝送路に送信した変調光であって、前記キャリア光に対応するキャリア成分と、前記電気信号に対応する側波帯成分と、を含む前記変調光を、前記光伝送路から受信光として受信する光受信装置は、前記受信光に含まれる前記キャリア成分を抑圧した第1光を出力するする出力手段と、ローカル光を生成する光源と、前記ローカル光と前記第1光を合波して第2光を出力する合波手段と、前記第2光の光電変換を行う光電変換手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、簡易な方法で反射光の影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】幾つかの実施形態による、光通信システムの構成図。
図2】幾つかの実施形態による、変調光を示す図。
図3】幾つかの実施形態による、光受信装置の構成図。
図4】幾つかの実施形態による、光受信装置での処理の説明図。
図5】幾つかの実施形態による、光受信装置での処理の説明図。
図6】幾つかの実施形態による、光受信装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による光通信システムの構成図である。光送信装置1と光受信装置2とは、光伝送路3を介して接続される。光伝送路3は、複数の接続点(反射点)を有する。光送信装置1は、情報を搬送する電気信号(以下、情報信号)でキャリア光を強度変調して変調光を生成し、変調光を光受信装置2に送信する。光受信装置2は、変調光を復調して情報信号を生成するために、光伝送路3を介して受信する受信光の直接検波を行う。つまり、光受信装置2は、情報信号を生成するために受信光の光電変換を行って電気信号を出力する。
【0013】
図2は、光送信装置1が生成して光伝送路3に出力する変調光の周波数成分を示している。以下では、キャリア光の周波数をfcとし、情報信号の中心周波数をfdとする。図2おいて、参照符号90は、キャリア光に対応するキャリア成分であり、参照符号91は、情報信号に対応する下側波帯成分であり、参照符号92は、情報信号に対応する上側波帯成分である。
【0014】
光伝送路3に複数の反射点が存在する場合、光受信装置2が受信する受信光は、光伝送路3において反射することなく光受信装置2に到達した変調光である直接光と、偶数個の反射点での反射後に光受信装置2に到達した変調光である反射光と、を合成したものとなる。なお、受信光に含まれる反射光は1つではなく、反射位置の異なる複数の反射光が含まれ得る。例えば、光伝送路3に第1反射点~第3反射点の3つの反射点が存在する場合、受信光は、第1反射点及び第2反射点で反射した第1反射光と、第1反射点及び第3反射点で反射した第2反射光と、第2反射点及び第3反射点で反射した第3反射光の3つの反射光と、を含み得る。なお、第1反射光~第3反射光それぞれの伝搬遅延は異なり得る。さらに、光伝送路3に4つの反射点が存在する場合、受信光は、4つの反射点で反射した反射光も含み得る。
【0015】
したがって、光受信装置2における受信光の直接検波により出力される電気信号には、それぞれが伝搬遅延の異なる変調光の各成分間のビートに対応する信号が含まれる。情報信号は、直接光に含まれるキャリア成分90と直接光に含まれる側波帯成分とのビートに対応する信号であり、それ以外の成分間のビートに対応する信号は、情報信号に対する雑音成分(又は干渉成分)となる。ここで、通常、変調光に含まれるキャリア成分90のレベルは、下側波帯成分91及び上側波帯成分92のレベルより大きいため、支配的な雑音成分は、1つ以上の反射光それぞれに含まれるキャリア成分90が関与するビートに対応する成分となる。
【0016】
このため、本実施形態において、光受信装置2は、受信光に含まれるキャリア成分を除去し、光受信装置において生成したキャリア光であるローカル光の成分と、受信光に含まれる下側波帯成分91及び上側波帯成分92とを含む光の光電変換を行うことで雑音成分を抑圧する。
【0017】
図3は、本実施形態による光受信装置2の構成図である。フィルタ部21には、光伝送路3からの受信光が入力される。図4(A)は、受信光の周波数成分を示している。受信光は、キャリア成分80と、下側波帯成分81と、上側波帯成分82と、を含む。なお、キャリア成分80は、直接光に含まれるキャリア成分90と、1つ以上の反射光に含まれるキャリア成分90と、を合波したものに対応する。同様に、下側波帯成分81は、直接光に含まれる下側波帯成分91と、1つ以上の反射光に含まれる下側波帯成分91と、を合波したものに対応し、上側波帯成分82は、直接光に含まれる上側波帯成分92と、1つ以上の反射光に含まれる上側波帯成分92と、を合波したものに対応する。
【0018】
フィルタ部21は、帯域阻止フィルタであり、受信光に含まれるキャリア成分80を抑圧し、下側波帯成分81と、上側波帯成分82と、を含む光を出力する。図4(B)は、フィルタ部21が出力する光の周波数成分を示している。フィルタ部21が出力する光は、加算部23に入力される。なお、オプションの偏波制御部24が設けられている場合、フィルタ部21が出力する光は、偏波制御部24を介して加算部23に入力される。オプションの偏波制御部24は、フィルタ部21が出力する光の偏波を調整する。
【0019】
一方、光源22は、周波数fcのローカル光を生成する。周波数fcのローカル光は加算部23に入力される。なお、オプションの偏波制御部25が設けられている場合は、周波数fcのローカル光は、偏波制御部25を介して加算部23に入力される。オプションの偏波制御部25は、ローカル光の偏波を調整する。
【0020】
加算部23は、フィルタ部21が出力する光と、ローカル光と、を合波する。図4(C)は、加算部23が出力する光の周波数成分を示している。図4(C)において、参照符号70は、ローカル光に対応するキャリア成分70である。光電変換部26は、図4(C)に示す光の光電変換を行って電気信号を出力する。
【0021】
なお、オプションの偏波制御部24及び25は、加算部23に入力されるローカル光と、フィルタ部21からの光の偏波面を一致させるために設けられる。加算部23に入力されるローカル光と、フィルタ部21からの光の偏波面を一致させることで、光電変換部23が出力する、キャリア成分70と、下側波帯成分81/上側波帯成分82とのビートに対応する信号のレベルが低くなることを防ぐことができる。なお、偏波面を一致させる様に制御する場合であっても、偏波制御部24及び25の内の1つのみを設ける構成とすることができる。
【0022】
以上、光受信装置2において、1つ以上の反射光を含む受信光のキャリア成分80を抑圧し、ローカル光と、受信光に含まれる下側波帯成分81及び上側波帯成分82と、を含む光の直接検波を行う。この構成により、キャリア成分80に含まれる1つ以上の反射光のキャリア成分90により生じる雑音成分を抑圧することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、フィルタ部21においてキャリア成分80のみを抑圧していたが、さらに、下側波帯成分81及び上側波帯成分82の内のいずれか1つを抑圧する構成であっても良い。この場合、フィルタ部21は、帯域阻止フィルタではなく、低域通過フィルタ又は高域通過フィルタになる。さらに、本実施形態において、光送信装置1が光伝送路3に出力する変調光は、キャリア成分90に加えて、両方の側波帯成分、つまり、下側波帯成分91及び上側波帯成分92を含むものであった。しかしながら、変調光は、下側波帯成分91及び上側波帯成分92の内のいずれか1つと、キャリア成分90と、を含むものであっても良い。
【0024】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態において、光源22は、光送信装置1が生成するキャリア光と同じ周波数fcのローカル光を生成していた。フィルタ部21を帯域阻止フィルタとし、下側波帯成分81及び上側波帯成分82を含む光を加算部23に出力する場合、光源22が生成するローカル光の周波数は、光送信装置1が生成するキャリア光と同じ周波数fcとする必要がある。しかしながら、第一実施形態で述べた、下側波帯成分81及び上側波帯成分82の内のいずれか1つを加算部23に出力する場合、光源22が生成するローカル光の周波数については任意に設定し得る。
【0025】
例えば、図5(A)は、図4(A)と同じであり、受信光の周波数成分を示している。そして、図5(B)に示す様に、フィルタ部21を高域通過フィルタとし、上側波帯成分82を加算部23に出力する場合、光源22が生成するローカル光の周波数を周波数fcとは異なる周波数flとすることができる。したがって、光電変換部26は、図5(C)に示す周波数成分を有する光の光電変換を行う。この場合、キャリア成分71と、上側波帯成分82とのビートにより生じる信号の中心周波数は周波数flと周波数(fc+fd)との差に対応し、周波数flにより電気信号の中心周波数を制御することができる。例えば、電気信号の中心周波数を無線周波数帯の信号にすることで、レディオ・オーバ・ファイバ(RoF)システムとすることができる。なお、本実施形態では、フィルタ部21において、キャリア成分80に加えて、2つの側波帯成分の内の1つを抑圧するものとしたが、光送信装置1が、2つの側波帯成分の内の1つを抑圧して送信する構成であっても良い。
【0026】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態において、光源22は、ローカル光を光送信装置1が生成するキャリア光とは無関係に生成していた。本実施形態において、光源22は、光送信装置1からのキャリア光の注入同期によりローカル光を生成する。
【0027】
図6は、本実施形態による光受信装置2の構成図である。なお、図6では、図3に示す構成と同様の構成要素には同じ参照符号を付与し、その説明については基本的に省略する。分離部27は、受信光に含まれる成分の分離を行い、キャリア成分80に対応する光を光源22に出力し、側波帯成分に対応する光を加算部23(オプションの偏波制御部24が設けられている場合には偏波制御部24)に出力する。なお、加算部23に出力する光に含まれる側波帯成分は、第一実施形態で説明した様に、下側波帯成分81と上側波帯成分82の両方であっても、いずれか一方のみであっても良い。
【0028】
光源22は、注入同期光源であり、キャリア成分80を含む光にロックして周波数fcのローカル光を生成する。この様に、光源22が生成するローカル光をキャリア成分80に基づき生成することで、ローカル光の周波数が側波帯成分の周波数に対して変動することによる雑音成分を抑えることができる。なお、キャリア成分80は、直接光のキャリア成分90と、1つ以上の反射光のキャリア成分90と、を含むものであるが注入同期には影響がない。
【0029】
以上の構成により、簡易な方法で反射光の影響を抑えることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0030】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
21:フィルタ部、22:光源、23:加算部、26:光電変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6