特開 2024-89331 ノンアルコールビールテイスト飲料

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024089331

(43)【公開日】2024-07-03

(54)【発明の名称】ノンアルコールビールテイスト飲料

(51)【国際特許分類】

   A23L 2/56 20060101AFI20240626BHJP

   A23L 2/00 20060101ALI20240626BHJP

【ＦＩ】

A23L2/56

A23L2/00 B

A23L2/00 T

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022204622

(22)【出願日】2022-12-21

(71)【出願人】

【識別番号】303040183

【氏名又は名称】サッポロビール株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100088155

【弁理士】

【氏名又は名称】長谷川 芳樹

(74)【代理人】

【識別番号】100128381

【弁理士】

【氏名又は名称】清水 義憲

(74)【代理人】

【識別番号】100176773

【弁理士】

【氏名又は名称】坂西 俊明

(72)【発明者】

【氏名】飯田 友美

(72)【発明者】

【氏名】蝦名 史子

【テーマコード（参考）】

4B117

【Ｆターム（参考）】

4B117LC02

4B117LC14

4B117LG16

4B117LG18

4B117LK04

4B117LK06

4B117LK08

4B117LK12

4B117LK13

4B117LK30

4B117LL01

(57)【要約】

【課題】本格感に優れると共にノンアルコールビールテイスト飲料特有の酸味及び甘味による香味への悪影響が低減されたノンアルコールビールテイスト飲料を提供すること。
【解決手段】テルピネン－４－オールの含有量が７０μｇ／Ｌ以上である、ノンアルコールビールテイスト飲料。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】

【請求項1】

テルピネン－４－オールの含有量が７０μｇ／Ｌ以上である、ノンアルコールビールテイスト飲料。

【請求項2】

４－ビニルグアイアコールを更に含有する、請求項１に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。

【請求項3】

テルピネン－４－オールの含有量が５０００μｇ／Ｌ以下である、請求項１に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。

【請求項4】

アルコール度数が０．０５ｖ／ｖ％未満である、請求項１に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。

【請求項5】

麦汁を含有する、請求項１に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ノンアルコールビールテイスト飲料に関する。

【背景技術】

【0002】

近年、アルコール度数が１ｖ／ｖ％未満であるビールテイスト飲料（ノンアルコールビールテイスト飲料）の市場が拡大している。また、ビールテイスト飲料らしい香味特徴を有するノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法が種々開示されている。例えば、特許文献１には、ビール及び／又は発泡酒を希釈してアルコール度数を１ｖ／ｖ％未満とするとともに視覚的及び香味的にビール様の特徴を付与する添加物を配合することを特徴とする低アルコールビール様飲料の製造方法が開示されている。また例えば、特許文献２には、未発酵のビールテイスト飲料の製造方法であって、該飲料中の酢酸エチルの含有量が１～１５ｍｇ／Ｌの範囲内に調整されるか、および／または、該飲料中の酢酸イソアミルの含有量が０．５～１０ｍｇ／Ｌの範囲内に調整されるように原材料を調合し、かつ、苦味成分を添加することを含んでなる、製造方法が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】国際公開第２００４／０１８６１２号

【特許文献2】特開２０１７－２１６８９１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ノンアルコールビールテイスト飲料は、ビールを飲用したときに感じられる発酵に伴う香味を感じにくく、本格感に乏しいという課題があった。また、ノンアルコールビールテイスト飲料は、ビールと比較して、酸味及び甘味が感じられやすく、酸味が目立つことや、甘味により味がぼやけることで味の輪郭がはっきりと感じられにくくなることから香味に悪影響を及ぼすという課題があった。

【0005】

そこで、本発明は、本格感に優れると共にノンアルコールビールテイスト飲料特有の酸味及び甘味による香味への悪影響が低減されたノンアルコールビールテイスト飲料を提供することを課題とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明は、テルピネン－４－オールの含有量が７０μｇ／Ｌ以上である、ノンアルコールビールテイスト飲料に関する。

【0007】

本発明に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、所定量のテルピネン－４－オールを含有しているため、本格感に優れると共にノンアルコールビールテイスト飲料特有の酸味及び甘味による香味への悪影響が低減されている。

【0008】

上記ノンアルコールビールテイスト飲料は、４－ビニルグアイアコールを更に含有していてもよい。所定量のテルピネン－４－オールに加えて４－ビニルグアイアコールを更に含有することで、上述した本発明による効果がより一層顕著に奏される。

【0009】

上記ノンアルコールビールテイスト飲料は、テルピネン－４－オールの含有量が５０００μｇ／Ｌ以下であってよい。

【0010】

上記ノンアルコールビールテイスト飲料は、アルコール度数が０．０５ｖ／ｖ％未満であってよい。

【0011】

上記ノンアルコールビールテイスト飲料は、麦汁を含有するものであってよい。

【0012】

本発明は、例えば、以下の各発明を包含する。
［１］
テルピネン－４－オールの含有量が７０μｇ／Ｌ以上である、ノンアルコールビールテイスト飲料。
［２］
４－ビニルグアイアコールを更に含有する、［１］に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
［３］
テルピネン－４－オールの含有量が５０００μｇ／Ｌ以下である、［１］又は［２］に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
［４］
アルコール度数が０．０５ｖ／ｖ％未満である、［１］～［３］のいずれかに記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
［５］
麦汁を含有する、［１］～［４］のいずれかに記載のノンアルコールビールテイスト飲料。

【発明の効果】

【0013】

本発明によれば、本格感に優れると共にノンアルコールビールテイスト飲料特有の酸味及び甘味による香味への悪影響が低減されたノンアルコールビールテイスト飲料を提供することができる。

【発明を実施するための形態】

【0014】

以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。

【0015】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、テルピネン－４－オールを含有し、テルピネン－４－オールの含有量が７０μｇ／Ｌ以上である。

【0016】

本明細書において「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、アルコール度数が１ｖ／ｖ％未満であるビールテイスト飲料である。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。

【0017】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、１ｖ／ｖ％未満であればよく、０．９ｖ／ｖ％以下、０．８ｖ／ｖ％以下、０．７ｖ／ｖ％以下、０．６ｖ／ｖ％以下、０．５ｖ／ｖ％以下、０．４ｖ／ｖ％以下、０．３ｖ／ｖ％以下、０．２ｖ／ｖ％以下、０．１ｖ／ｖ％以下、０．０５ｖ／ｖ％未満、又は０．００５ｖ／ｖ％未満（０．００ｖ／ｖ％）であってもよい。また、本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、０ｖ／ｖ％超、０．００１ｖ／ｖ％以上、０．０１ｖ／ｖ％以上、０．１ｖ／ｖ％以上、０．２ｖ／ｖ％以上、０．３ｖ／ｖ％以上、０．４ｖ／ｖ％以上、０．５ｖ／ｖ％以上であってもよい。

【0018】

ビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、改訂ＢＣＯＪビール分析法（公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、２０１３年増補改訂）の「８．３．６ ビール、アルコール（アルコライザー法）」又は「８．３．７ ヘッドスペースＧＣ－ＦＩＤ法」に記載の方法によって測定することができる。

【0019】

テルピネン－４－オールは、４－メチル－１－（１－メチルエチル）－３－シクロヘキセン－１－オールとも称される化合物（ＣＡＳ登録番号（ＣＡＳ ＲＮ（登録商標））５６２－７４－３）である。本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料に含有させるテルピネン－４－オールは、Ｒ体であってもよく、Ｓ体であってもよく、Ｒ体とＳ体の混合物（例えば、Ｒ体とＳ体が１：１で含まれるラセミ混合物）であってもよい。

【0020】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料中のテルピネン－４－オールの含有量は、本発明による効果がより顕著に奏されるという観点から、８０μｇ／Ｌ以上、９０μｇ／Ｌ以上、１００μｇ／Ｌ以上、１１０μｇ／Ｌ以上、又は１２０μｇ／Ｌ以上であってよい。テルピネン－４－オールの含有量の上限に特に制限はないが、本発明による効果がより顕著に奏されることに加え、テルピネン－４－オールに起因する辛み、渋味といった香味がより抑えられるという観点から、５０００μｇ／Ｌ以下、４０００μｇ／Ｌ以下、３０００μｇ／Ｌ以下、２５００μｇ／Ｌ以下、２０００μｇ／Ｌ以下、１５００μｇ／Ｌ以下、１０００μｇ／Ｌ以下、５００μｇ／Ｌ以下、又は３００μｇ／Ｌ以下であってよい。

【0021】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料中のテルピネン－４－オールの含有量は、サンプルを適宜希釈して、固相マイクロ抽出－ガスクロマトグラフィー質量分析法（ＳＰＭＥ－ＧＣ／ＭＳ）により測定することができる。

【0022】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料中のテルピネン－４－オールの含有量は、例えば、ノンアルコールビールテイスト飲料を製造する際の任意の段階で、含有量が上記範囲になるようにテルピネン－４－オールを添加する方法、テルピネン－４－オールの含有量が高くなる、又は低くなるような原料種類を適宜選択する方法、及びこれらを併用する方法により上記範囲内に調整することができる。添加するテルピネン－４－オールは、テルピネン－４－オールそのものであってもよく、テルピネン－４－オールを含有する組成物（例えば、スパイス、香料組成物、食品添加物）等であってもよい。

【0023】

４－ビニルグアイアコールは、４－ビニル－２－メトキシフェノールとも称される化合物である。

【0024】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料中の４－ビニルグアイアコールの含有量は、本発明による効果がより顕著に奏されるという観点から、１μｇ／Ｌ以上、５μｇ／Ｌ以上、１０μｇ／Ｌ以上、１５μｇ／Ｌ以上、２０μｇ／Ｌ以上、２５μｇ／Ｌ以上、３０μｇ／Ｌ以上、３５μｇ／Ｌ以上、又は４０μｇ／Ｌ以上であってよい。４－ビニルグアイアコールの含有量の上限に特に制限はないが、本発明による効果がより顕著に奏されることに加え、４－ビニルグアイアコールに起因する辛み、渋味といった香味がより抑えられるという観点から、５００μｇ／Ｌ以下、４００μｇ／Ｌ以下、３００μｇ／Ｌ以下、２５０μｇ／Ｌ以下、２００μｇ／Ｌ以下、１５０μｇ／Ｌ以下、１００μｇ／Ｌ以下、８０μｇ／Ｌ以下、又は６０μｇ／Ｌ以下であってよい。

【0025】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料中の４－ビニルグアイアコールの含有量は、例えば、ＳＰＭＥ－ＧＣ－ＭＳ法によって測定することができる。定量は標準添加法で実施することが好ましい。

【0026】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料中の４－ビニルグアイアコールの含有量は、例えば、ノンアルコールビールテイスト飲料を製造する際の任意の段階で、含有量が上記範囲になるように４－ビニルグアイアコールを添加する方法、４－ビニルグアイアコールの含有量が高くなるような原料種類を適宜選択する方法、及びこれらを併用する方法により上記範囲内に調整することができる。添加する４－ビニルグアイアコールは、４－ビニルグアイアコールそのものであってもよく、４－ビニルグアイアコールを含有する組成物（例えば、香料組成物、食品添加物）等であってもよい。

【0027】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、原料として麦原料を含有していてもよく、原料として麦原料を含有していなくてもよい。本明細書において麦原料とは、麦又は麦加工物をいう。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦が挙げられる。麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽は麦を発芽させることにより得られる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。

【0028】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、原料としてホップを含有していてもよく、原料としてホップを含有していなくてもよい。ホップには、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが含まれ、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品も含まれる。

【0029】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、麦汁を含んでいてもよい。麦汁は、例えば、後述する仕込工程、煮沸工程及び除去工程を実施することで得ることができる。麦汁を含む場合、本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料中の麦汁の含有量は、例えば、０質量％超１００質量％以下であってよく、１０質量％以上９０質量％以下であってよく、２０質量％以上８０質量％以下であってよく、３０質量％以上７０質量％以下であってよく、４０質量％以上６０質量％以下であってよい。

【0030】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、麦芽比率（水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合）が０質量％以上１００質量％以下であってよい。麦芽比率は、１０質量％以上、２０質量％以上、３０質量％以上、４０質量％以上、５０質量％以上、６０質量％以上、６５質量％以上、６６質量％以上、６７質量％以上、７０質量％以上、８０質量％以上、９０質量％以上、９５質量％以上、９９質量％以上、又は１００質量％であってよい。また、麦芽比率は、１００質量％未満、９０質量％以下、９５質量％以下、９０質量％以下、８０質量％以下、７０質量％以下、６０質量％以下、又は５０質量％以下であってよい。

【0031】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、本発明の効果を損なわない範囲で、飲料に通常配合される着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類等を含んでいてもよい。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素を挙げることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲン、デンプンを挙げることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムＫ、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームを挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンＣ、ビタミンＥ、ポリフェノールを挙げることができる。酸味料としては、例えば、リン酸、乳酸、ＤＬ－リンゴ酸、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、ＤＬ－酒石酸、Ｌ－酒石酸、ＤＬ－酒石酸ナトリウム、Ｌ－酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、ＤＬ－リンゴ酸ナトリウムを挙げることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムを挙げることができる。

【0032】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料の苦味価（ＢＵ）は、例えば、０．０以上５０．０以下であってよい。本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料のＢＵは、例えば、４０．０以下、３０．０以下、２０．０以下，又は１５．０以下であってよく、１．０以上、２．０以上、３．０以上、４．０以上、５．０以上、又は１０．０以上であってよい。本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料の苦味価は、改訂ＢＣＯＪビール分析法（公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、２０１３年増補改訂）の「８．１５ 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。苦味価は、例えば、原料の種類及び使用量を調整することにより、上記範囲で適宜設定することができる。

【0033】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、非発泡性であってもよく、発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、２０℃におけるガス圧が０．０４９ＭＰａ（０．５ｋｇ／ｃｍ^２）未満であることをいい、発泡性とは、２０℃におけるガス圧が０．０４９ＭＰａ（０．５ｋｇ／ｃｍ^２）以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は０．２９４ＭＰａ（３．０ｋｇ／ｃｍ^２）程度としてもよい。

【0034】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製（アルミニウム製又はスチール製など）のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。

【0035】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、例えば、原料を混合して製造してもよく（調合による方法）、酵母等による発酵を経て製造してもよい。

【0036】

一実施形態に係る製造方法は、例えば、水と、テルピネン－４－オールとを原料タンクに配合する配合工程を含む。配合工程では、必要に応じて、４－ビニルグアイアコールと、アルコール（例えば、原料用アルコール、スピリッツ及びウォッカ等の蒸留アルコール、醸造により得られた発酵液）と、各種添加剤（例えば、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類等）と、麦汁とを原料タンクに更に配合してもよい。配合工程は、テルピネン－４－オール、及び必要に応じて４－ビニルグアイアコールの含有量を上記範囲内に調整することの他は、常法に従って実施することができる。テルピネン－４－オールは、テルピネン－４－オールそのものを配合してもよく、テルピネン－４－オールを含む組成物（例えば、スパイス、香料組成物、食品添加物）として配合してもよい。同様に、４－ビニルグアイアコールは、４－ビニルグアイアコールそのものを配合してもよく、４－ビニルグアイアコールを含む組成物（例えば、香料組成物、食品添加物）として配合してもよい。

【0037】

本実施形態に係る製造方法は、配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、ろ過工程でろ過したろ過液を殺菌する第一の殺菌工程と、第一の殺菌工程で殺菌した殺菌済みのろ過液をビン、缶、ペットボトル等の容器に充填する充填工程と、充填工程で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する第二の殺菌工程と、を更に含んでいてもよい。

【0038】

配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。また、ろ過工程は、例えば、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。第一の殺菌工程は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行ってもよく、同様の処理を行うことができるのであれば、これに限定されることなく適用可能である。充填工程は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填してもよい。第二の殺菌工程は、所定の温度及び所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。第一又は第二の殺菌工程は、非加熱の殺菌工程としてもよい。非加熱の殺菌工程としては、紫外線（ＵＶ）殺菌等が挙げられる。殺菌工程を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。

【0039】

他の実施形態における製造方法は、例えば、仕込工程、発酵工程、及びアルコール度数調整工程を備える。

【0040】

仕込工程では、原料及び仕込水（仕込工程で使用される水）を用いて、発酵前液を得る。つまり、仕込工程は、発酵に用いられる発酵前液を調製する工程である。仕込工程は、糖含有液を煮沸する煮沸工程、原料液中の固形分を除去する除去工程、原料液を冷却する冷却工程をこの順に含んでいてよい。

【0041】

煮沸工程では、糖含有液を煮沸して煮沸後液（煮沸後の糖含有液）を得る。糖含有液とは、酵母によるアルコール発酵が可能な成分を含有するものである。糖含有液としては、例えば、麦汁、シロップが挙げられる。麦汁とは、上述の麦原料の糖化を経て得られる液であり、未発酵のものである。麦汁は、例えば、上述の麦原料等の原料と水とを混合する工程、原料と水とを含む液を常法により糖化して糖化液を得る工程、及び糖化液をろ過する工程を経て得ることができる。

【0042】

煮沸工程では、原料液にホップを添加してよい。添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。

【0043】

除去工程では、煮沸後液中の固形分を除去して精製液を得る。除去工程は、例えば、煮沸後液に含まれる不溶性の固形分を沈殿させることにより行うことができる。固形分としては、煮沸工程により生じた熱凝固物、煮沸工程でホップを添加した場合には、ホップのかす等が挙げられる。除去工程は、ワールプール中で実施してよい。冷却工程では、酵母による発酵が可能な温度まで精製液を冷却して発酵前液を得る。

【0044】

発酵工程では、発酵前液を酵母により発酵させて発酵後液を得る。発酵工程では、酵母を添加してアルコール発酵が行われる。より具体的には、発酵前液に酵母を接種して発酵させ、酵母により生成するアルコールを含む発酵後液を得る。

【0045】

アルコール度数調整工程は、アルコール度数を上述した範囲内に調整する工程である。本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、アルコール度数が低いため、例えば、発酵工程において、発酵期間を短くする等してアルコールの生成を抑えることによって、アルコール度数を調整してもよく、発酵工程において、通常のビール等のビールテイスト飲料と同様に発酵を行ってアルコールを生成させた後に、アルコールを除去又は低減させることによって、アルコール度数を調整してもよい。アルコールを除去又は低減させる方法に特に制限はなく、例えば、蒸留、透析、希釈等の常法に従って実施することができる。

【0046】

本実施形態に係る製造方法では、発酵工程後の発酵後工程として、発酵後液をろ過する工程を備えていてもよい。ろ過工程を実施することにより、発酵後液から不溶性の固形分、酵母等を除去することができる。

【0047】

本実施形態に係る製造方法では、他の発酵後工程として、発酵後液（又はろ過工程後の発酵後液）に対して加熱（殺菌）、各種添加剤（例えば、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類）の添加等を行ってもよい。

【0048】

テルピネン－４－オールの含有量の調整は、例えば、テルピネン－４－オールを原料液に添加することにより実施することができる。本明細書において、原料液とは、ノンアルコールビールテイスト飲料のもととなる液を意味する。原料液には、各工程で使用又は製造される液（例えば、糖含有液、煮沸後液、精製液、発酵前液、発酵後液）が含まれる。また、テルピネン－４－オールの含有量が高くなる、又は低くなるような原料種類を適宜選択する方法によって、テルピネン－４－オールの含有量の調整を行ってもよい。添加するテルピネン－４－オールは、テルピネン－４－オールそのものであってもよく、テルピネン－４－オールを含有する組成物（例えば、スパイス、香料組成物、食品添加物）等であってもよい。

【0049】

４－ビニルグアイアコールの含有量の調整は、例えば、４－ビニルグアイアコールを原料液に添加することにより実施することができる。本明細書において、原料液とは、ノンアルコールビールテイスト飲料のもととなる液を意味する。原料液には、各工程で使用又は製造される液（例えば、糖含有液、煮沸後液、精製液、発酵前液、発酵後液）が含まれる。また、４－ビニルグアイアコールの含有量が高くなる、又は低くなるような原料種類を適宜選択する方法によって、４－ビニルグアイアコールの含有量の調整を行ってもよい。添加する４－ビニルグアイアコールは、４－ビニルグアイアコールそのものであってもよく、４－ビニルグアイアコールを含有する組成物（例えば、香料組成物、食品添加物）等であってもよい。

【0050】

本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料は、本格感に優れると共にノンアルコールビールテイスト飲料特有の酸味及び甘味による香味への悪影響が低減されるという効果を奏する。したがって、本発明は、テルピネン－４－オールの含有量を７０μｇ／Ｌ以上に調整することを含む、ノンアルコールビールテイスト飲料の本格感を向上させる方法、及び／又はノンアルコールビールテイスト飲料特有の酸味及び甘味による香味への悪影響を低減する方法と捉えることもできる。これらの方法は、４－ビニルグアイアコールを更に含有させることを含んでいてもよい。その他、これらの方法における具体的な態様等は、ノンアルコールビールテイスト飲料について上述した態様を特に制限なく適用することができる。

【実施例0051】

以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。

【0052】

〔試験例１：ノンアルコールビールテイスト飲料の製造及び評価〕
用水に、液糖、５０％乳酸及びホップエキスをベース液の終濃度がそれぞれ１ｗ／ｖ％、０．０５ｗ／ｖ％及び０．１ｗ／ｖ％となるように添加し、炭酸水でガス圧を２．３ｋｇ／ｃｍ^２に調整してベース液を得た。得られたベース液に対して、テルピネン－４－オール（ラセミ体）及び４－ビニルグアイアコールを表１及び表２に示す含有量となるように添加して、試験例１－１～試験例１－１１のノンアルコールビールテイスト飲料（アルコール度数０．００ｖ／ｖ％）を得た。

【0053】

試験例１－１～試験例１－１１のノンアルコールビールテイスト飲料に対して、「本格感」、「酸味のマスキング」、「味の輪郭のはっきりさ」及び「辛み、渋味」の評価項目について官能評価を実施した。官能評価は、選抜された識別能力のあるパネル４名により実施した。いずれの評価項目も評点１～５の５段階で評価し、その平均値を評価スコアとした。また、いずれの評価項目も試験例１－１のノンアルコールビールテイスト飲料の評点を１点（基準）に設定して、その他のノンアルコールビールテイスト飲料を評価した。

【0054】

「本格感」は、ビールを飲用したときに感じられる発酵に伴う香味（発酵に伴い出てくる複雑味、アルコール感、発酵感等）を感じられる感覚であり、評点が高いほど本格感を強く感じることを示す。「酸味のマスキング」は、酸味を感じない感覚であり、評点が高いほど酸味を感じにくい（酸味がマスキングされている）ことを示す。「味の輪郭のはっきりさ」は、味の輪郭がぼやけることなく感じられる感覚であり、評点が高いほど味の輪郭をはっきりと感じることを示す。「辛み、渋味」は、辛み及び／又は渋味を感じる感覚であり、評点が高いほど辛み及び／又は渋味を強く感じることを示す。すなわち、「辛み、渋味」の評価項目は、評点が低いほど好ましい。結果を表１及び表２に示す。

【0055】

【表1】

【0056】

【表2】

【0057】

表１に示すとおり、テルピネン－４－オール含有量が７０μｇ／Ｌ以上であるノンアルコールビールテイスト飲料（試験例１－２～試験例１－６）は、テルピネン－４－オール含有量が７０μｇ／Ｌ未満であるノンアルコールビールテイスト飲料（試験例１－１）と比べて、「本格感」、「酸味のマスキング」及び「味の輪郭のはっきりさ」の評点が高く、本格感が優れると共に、ノンアルコールビールテイスト飲料特有の酸味が目立ちにくく、ノンアルコールビールテイスト飲料特有の甘味により味がぼやけることで味の輪郭がはっきりと感じられにくくなるという香味への悪影響が低減されていた。

【0058】

表２に示すとおり、テルピネン－４－オール含有量が７０μｇ／Ｌ以上であることに加え、４－ビニルグアイアコールを更に含有するノンアルコールビールテイスト飲料（試験例１－８～試験例１－１１）は、「本格感」、「酸味のマスキング」及び「味の輪郭のはっきりさ」の評点がより高くなり、本格感がより一層優れると共に、ノンアルコールビールテイスト飲料特有の酸味が目立ちにくく、ノンアルコールビールテイスト飲料特有の甘味により味がぼやけることで味の輪郭がはっきりと感じられにくくなるという香味への悪影響がより一層低減されていた。

【0059】

〔試験例２：ノンアルコールビールテイスト飲料の製造及び評価〕
麦芽、コーンスターチ、ホップ及び水を原料とし、常法に従って麦汁を製造した。エキス濃度３．１重量％、ｐＨ３．８及びガス圧２．２ｋｇ／ｃｍ^２になるように、得られた麦汁を水で希釈して濃度調整を行うと共に、ｐＨ調整（乳酸を使用）及びガス圧調整を実施してベース液を得た。得られたベース液に対して、テルピネン－４－オール（ラセミ体）及び４－ビニルグアイアコールを表３に示す含有量となるように添加して、試験例２－１～試験例２－５のノンアルコールビールテイスト飲料（アルコール度数０．００ｖ／ｖ％）を得た。なお、ベース液中のテルピネン－４－オール及び４－ビニルグアイアコールの含有量は、それぞれ０μｇ／Ｌ及び４３μｇ／Ｌであった。

【0060】

試験例２－１～試験例２－５のノンアルコールビールテイスト飲料に対して、試験例１と同様の手順で官能評価を行った。結果を表３に示す。

【0061】

【表3】

【0062】

表３に示すとおり、テルピネン－４－オール含有量が７０μｇ／Ｌ以上であるノンアルコールビールテイスト飲料（試験例２－１～試験例２－５）は、麦汁を含む場合であっても、「本格感」、「酸味のマスキング」及び「味の輪郭のはっきりさ」の評点が高く、本格感が優れると共に、ノンアルコールビールテイスト飲料特有の酸味が目立ちにくく、ノンアルコールビールテイスト飲料特有の甘味により味がぼやけることで味の輪郭がはっきりと感じられにくくなるという香味への悪影響が低減されていた。